JP2015134864A - 熱可塑性樹脂組成物、及びこれを用いた成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた成形品外観及び高いノッチ付シャルピー衝撃強度を併せ持ち、建築材料分野、電気・電子分野、自動車分野、光学部品分野等において好適に用いることができる熱可塑性樹脂組成物及びその熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品を提供する。
【解決手段】(A)特定のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、
(B)シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂とシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(以下、SAS樹脂ともいう)とを含む熱可塑性樹脂組成物に関する。本発明はまた、この熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品、フィルム、プレートに関する。
従来、芳香族ポリカーボネート樹脂は優れた耐熱性、耐衝撃性、透明性を有するエンジニアリングプラスチックとして、自動車、OA機器分野などの種々の用途に幅広く使用されている。一方、芳香族ポリカーボネート樹脂は一般的に石油資源から誘導される原料を用いて製造されているが、石油資源の枯渇が危惧されている近年の情勢を考えると、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたプラスチック成形品の提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が、気候変動などをもたらすことが危惧されていることからも、使用後の廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな、植物由来モノマーを原料としたプラスチックからのプラスチック成形品資材部品の開発が求められており、特に大型成形品の分野においてはその要求は強い。
そこで、従来、植物由来モノマーを原料とした種々のポリカーボネート樹脂が開発されている。
例えば、植物由来モノマーとしてイソソルビドを使用し、炭酸ジフェニルとのエステル交換により、ポリカーボネート樹脂を得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、イソソルビドと他のジヒドロキシ化合物との共重合ポリカーボネートとして、ビスフェノールAを共重合したポリカーボネート樹脂が提案されており(例えば、特許文献2参照)、更に、イソソルビドと脂肪族ジオールとを共重合することにより、イソソルビドからなるホモポリカーボネート樹脂の剛直性を改善する試みがなされている(例えば、特許文献3参照)。
一方、脂環式ジヒドロキシ化合物である1,4−シクロヘキサンジメタノールを重合したポリカーボネート樹脂(例えば、特許文献4、5参照)や、イソソルビドと炭酸ジフェニルとのエステル交換により得られたポリカーボネート樹脂にゴム質重合体を添加したポリカーボネート樹脂組成物(例えば、特許文献6参照)も提案されている。
さらには、イソソルビドと炭酸ジフェニルとのエステル交換により得られたポリカーボネート樹脂にスチレン系樹脂を添加したポリカーボネート樹脂組成物が提案されている(特許文献7および8参照)。
また、イソソルビドと炭酸ジフェニルとのエステル交換により得られたポリカーボネート樹脂にシリコーン系ゴムを添加したポリカーボネート樹脂組成物が提案されている(特許文献9参照)。
また、従来広く用いられてきた芳香族ポリカーボネート樹脂の場合には樹脂そのものの耐衝撃性に優れていたが、原料ジヒドロキシ化合物としてイソソルビドを使用したポリカーボネート樹脂では、従来の芳香族ポリカーボネート樹脂と比べて耐衝撃性に劣り、改良が必要となる。この問題に対し、前述の如く、ガラス転移温度の高いポリカーボネート樹脂とゴム質重合体とを含有するポリカーボネート樹脂組成物が耐衝撃性を高めるものとして提案されている(上記特許文献6参照)。
英国特許第1079686号明細書 特開昭56−55425号公報 国際公開第04/111106号パンフレット 特開平6−145336号公報 特公昭63−12896号公報 国際公開第08/146719号パンフレット 特開2007−70438号公報 特開2009−144016号公報 特開2011−132316号公報
しかしながら、植物由来モノマーとしてイソソルビドを使用し、炭酸ジフェニルとのエステル交換により得られる前述のポリカーボネート樹脂は、褐色であり、透明性という観点において満足できるものではない。
また、脂環式ジヒドロキシ化合物である1,4−シクロヘキサンジメタノールを重合した前述のポリカーボネート樹脂は、その分子量が高々4000程度と低く、ガラス転移温度が低いものが多い。
また、イソソルビドと炭酸ジフェニルとのエステル交換により得られたポリカーボネート樹脂にゴム質重合体を添加したポリカーボネート樹脂組成物は、ガラス転移温度が高いため、実用的な強度を有する分子量のものを得ようとした場合、溶融粘度が高くなりすぎ、工業的な方法での重合が困難になるだけでなく、得られたポリカーボネート樹脂組成物の流動性が不足して成形が困難となったり、流動性を確保しようとして成形温度を高くするとポリカーボネート樹脂の着色、分子量の低下、及び分解ガスの発生等を招いたりするという問題がある。一方、流動性を確保するために分子量を下げると、耐衝撃性等の強度に劣るポリカーボネート樹脂しか得られず、たとえゴム質重合体を添加してもその効果は限定的である。また、スチレン系樹脂を添加したポリカーボネート樹脂組成物は、成形品外観の点で満足できるものではなく、衝撃強度改質剤を添加したポリカーボネート樹脂組成物は、YI値、全光線透過率、ヘーズの値に改善が必要であった。
このように、従来より、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネート樹脂が種々提案されてきたが、成形品外観が良好であり、強度を併せ持つことが要求される建築材料分野、電気・電子分野、自動車分野、光学部品分野等において満足に用いることができるものはなかった。
特にスイッチ保護用透明カバー、消し忘れ防止のための点灯式スイッチ、樹脂製盾、二輪車前面のスクリーン、採光用透明建材、カーポート屋根等の用途においては、成形品外観が良好であり、強度を併せ持つことが要求される。しかし、バイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネート樹脂において、従来、これらの用途に充分に適したものは得られていない。
また、本発明者らは上述の背景技術における次のような問題点に着目した。
即ち、特許文献1に開示されている技術において得られたポリカーボネートは、褐色であり、幅広い分野での使用に耐え得る外観を有するものではない。また、特許文献2及び特許文献3に開示されている技術においては、機械強度、特に耐衝撃性に劣るため、幅広い分野において使用するには不十分であった。加えて、特許文献4及び特許文献5に開示されているポリカーボネートの数平均分子量は4,000程度であり、一般的な芳香族ポリカーボネート樹脂と比較して低く、耐衝撃性、耐熱性に劣るものが多い。
さらに、特許文献7に開示されている技術においては、イソソルビドを含有するポリカ
ーボネートにアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体(以下、ABS樹脂ともいう)を配合することで耐衝撃性の向上を図っているものの、十分な耐衝撃性向上効果は見られず、また、ABS樹脂を配合することで成形品外観が悪化するため、幅広い分野で使用することは困難である。加えて、特許文献6に開示されている技術においては、ゴム質重合体による耐衝撃性向上効果はABS樹脂と比較して高いものの、成形品外観が悪化することは不可避であり、特許文献1と同様に用途が限定される。
さらに、特許文献8に開示されている技術においては、イソソルビドを含有するポリカーボネートにABS樹脂およびアクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合体(以下、ASA樹脂ともいう)を配合することで成形時の流動性、衝撃強度、ウエルド部の強度及び耐熱性を図っているものの、十分な耐衝撃性向上効果は見られず、外観も良くない。
さらに、特許文献9に開示されている技術においては、イソソルビドを含有するポリカーボネートに透明ABS樹脂を配合することで透明性が損なわれず外観は良好であるが、十分な耐衝撃性向上効果は見られない。
以上のように、従来の技術においては、成形品外観、衝撃強度の全てに優れたポリカーボネート樹脂組成物のような熱可塑性樹脂組成物を提供することは非常に困難であった。
本発明の目的は上記従来の課題を解決し、優れた成形品外観と衝撃強度を兼ね備え、電気・電子分野、自動車分野、雑貨分野等において好適に用いることができる熱可塑性樹脂組成物及びこれを用いた成形品を提供することにある。
本発明者らが検討を行った結果、特定の部位を有するジヒドロキシ化合物由来の構造単位を含有するポリカーボネート樹脂と、衝撃強度改質剤として、特定の共重合体樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物が、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1](A)下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、
(B)シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物。
Figure 2015134864
[2]熱可塑性樹脂組成物中、ポリカーボネート樹脂(A)およびシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体(B)の構成重量比率が95/5〜5/95の範囲である[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]可塑性樹脂組成物中、ポリカーボネート樹脂(A)およびシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体(B)の合計重量が熱可塑性樹脂組成物全体の重量の50%以上である[1]または[2]記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]前記ポリカーボネート樹脂(A)が、下記式(2)〜(5)で表されるジヒドロキ
シ化合物に由来する構造単位よりなる群から選ばれる何れかの構造単位を有する[1]〜[
3]いずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
HO−R−OH (2)
(式(2)中、Rは炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
HO−CH−R−CH−OH (3)
(式(3)中、Rは炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
H−(O−R−OH (4)
(式(4)中、Rは炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルキレン基を表し、pは2〜100の整数である。)
HO−R−OH (5)
(式(5)中、Rは炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基、又は置換若しくは無置換のアセタール環を有する基を表す。)
[5]前記ポリカーボネート樹脂(A)の造単位(1)とジヒドロキシ化合物(2)〜(5)に由来する構造単位とのモル比率(モル%)が20:80〜99:1の範囲である[4]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6]シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)の荷重たわみ温度(℃)が、60℃〜120℃である[1]〜[5]のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[7][1]〜[6]のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明によれば、優れた成形品外観及び強度を併せ持ち、建築材料分野、電気・電子分野、自動車分野、光学部品分野等において好適に用いることができるポリカーボネート樹脂組成物及びポリカーボネート樹脂成形品を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
本発明において、「重量%」と「質量%」、「重量ppm」と「質量ppm」、及び「重量部」と「質量部」は、それぞれ同義である。
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネートと、
(B)シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物である。
Figure 2015134864
[ポリカーボネート樹脂(A)]
<式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物>
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位(以下「構造単位(1)」と称す場合がある。)を含むものである。
Figure 2015134864
上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。
これらのジヒドロキシ化合物(1)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
これらのジヒドロキシ化合物(1)のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能であり、種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。
尚、イソソルビド等、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物(1)は、酸素によって徐々に酸化されやすい。このため、保管や、製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下で取り扱うことが肝要である。イソソルビドが酸化されると、蟻酸をはじめとする分解物が発生し、例えば、これら分解物を含むイソソルビドを用いてポリカーボネート樹脂(A)を製造すると、得られるポリカーボネート樹脂(A)に着色が発生したり、物性を著しく劣化させる原因となる。また、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られないこともあり、好ましくない。
そこで、ジヒドロキシ化合物(1)には安定剤を用いることが好ましい。安定剤としては、還元剤、制酸剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、pH安定剤、熱安定剤等の安定剤を用いることが好ましく、特に酸性下ではジヒドロキシ化合物(1)が変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが好ましい。このうち還元剤としては、ナトリウムボロハイドライド、リチウムボロハイドライド等が挙げられ、制酸剤としては水酸化ナトリウム等のアルカリが挙げられる。ただし、このようなアルカリ金属塩の添加は、添加したアルカリ金属がポリカーボネート樹脂(A)製造時の重合触媒となる場合があるので、過剰に添加し過ぎると重合反応を制御できなくなり、好ましくない。
塩基性安定剤としては、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における1族又は2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩、脂肪酸塩や、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロ
キシド等の塩基性アンモニウム化合物、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等のアミン系化合物が挙げられる。その中でも、その効果と後述する蒸留除去のしやすさから、ナトリウム又はカリウムのリン酸塩、亜リン酸塩が好ましく、中でもリン酸水素2ナトリウム、亜リン酸水素2ナトリウムが好ましい。
これら塩基性安定剤のジヒドロキシ化合物(1)中の含有量に特に制限はないが、少なすぎるとジヒドロキシ化合物(1)の変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎるとジヒドロキシ化合物(1)の変性を招く場合があるので、通常、ジヒドロキシ化合物(1)に対して、0.0001重量%〜1重量%、好ましくは0.001重量%〜0.1重量%である。
これらの安定剤を添加したジヒドロキシ化合物(1)をポリカーボネート樹脂(A)原料として用いると、安定剤の種類によっては、得られるポリカーボネート樹脂(A)に着色を発生したり、物性を著しく劣化させたりする場合がある。例えば、上記の塩基性安定剤を含有したジヒドロキシ化合物(1)をポリカーボネート樹脂(A)の製造原料として用いると、塩基性安定剤自体が重合触媒となり、重合速度や品質の制御が困難になるだけでなく、初期色相の悪化を招き、結果的に得られるポリカーボネート樹脂(A)の成形品の耐光性を悪化させる。
このため、ジヒドロキシ化合物(1)をポリカーボネート樹脂(A)の製造原料として使用する前に、塩基性安定剤等の安定剤は、イオン交換樹脂や蒸留等で除去することが好ましい。
また、前述の如く、ジヒドロキシ化合物(1)の酸化分解生成物を含むジヒドロキシ化合物(1)をポリカーボネート樹脂(A)の製造原料として使用すると、得られるポリカーボネート樹脂(A)の着色を招く可能性があり、また、物性を著しく劣化させる可能性があるだけではなく、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られないことがある。
このため、酸化分解物を含まないジヒドロキシ化合物(1)を得るために、また、前述の塩基性安定剤を除去するために、ジヒドロキシ化合物(1)の蒸留精製を行うことが好ましい。この場合の蒸留とは単蒸留であっても、連続蒸留であってもよく、特に限定されない。蒸留の条件としてはアルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気において、減圧下で蒸留を実施することが好ましく、熱による変性を抑制するためには、250℃以下、好ましくは200℃以下、特には180℃以下の条件で行うことが好ましい。
このような蒸留精製により、ジヒドロキシ化合物(1)中の酸化分解生成物、例えば、蟻酸含有量を20重量ppm以下、好ましくは10重量ppm以下、特に好ましくは5重量ppm以下にすることにより、ポリカーボネート樹脂(A)製造時の重合反応性を損なうことなく、色相や熱安定性に優れたポリカーボネート樹脂(A)の製造が可能となる。
なお、ジヒドロキシ化合物(1)の蟻酸含有量の測定はイオンクロマトグラフィーを使用し、以下の手順に従い行われる。以下の手順では、代表的なジヒドロキシ化合物(1)として、イソソルビドを例とする。
イソソルビド約0.5gを精秤し50mlのメスフラスコに採取して純水で定容する。標準試料として蟻酸ナトリウム水溶液を用い、標準試料とリテンションタイムが一致するピークを蟻酸とし、ピーク面積から絶対検量線法で定量する。
イオンクロマトグラフは、Dionex社製のDX−500型を用い、検出器には電気
伝導度検出器を用いる。測定カラムとして、Dionex社製ガードカラムにAG−15、分離カラムにAS−15を用いる。測定試料を100μlのサンプルループに注入し、溶離液に10mM−NaOHを用い、流速1.2ml/分、恒温槽温度35℃で測定する。サプレッサーには、メンブランサプレッサーを用い、再生液には12.5mM−HSO水溶液を用いる。
<ジヒドロキシ化合物(1)以外のジヒドロキシ化合物>
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は構造の一部に前記構造単位(1)以外に、下記式(2)〜(5)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位よりなる群から選ばれる何れかの構造単位を有することが好ましい。
以下において、式(2)、(3)、(4)、(5)で表されるジヒドロキシ化合物をそれぞれ、「ジヒドロキシ化合物(2)」、「ジヒドロキシ化合物(3)」、「ジヒドロキシ化合物(4)」、「ジヒドロキシ化合物(5)」と称し、ジヒドロキシ化合物(2)、(3)、(4)、(5)に由来する構造単位をそれぞれ「構造単位(2)」、「構造単位(3)」、「構造単位(4)」、「構造単位(5)」と称す場合がある。
HO−R−OH (2)
(式(2)中、Rは炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
HO−CH−R−CH−OH (3)
(式(3)中、Rは炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
H−(O−R−OH (4)
(式(4)中、Rは炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルキレン基を表し、pは2〜100の整数である。)
HO−R−OH (5)
(式(5)中、Rは炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基、又は置換若しくは無置換のアセタール環を有する基を表す。)
上記ジヒドロキシ化合物(2)〜(5)のうち、特に、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことが好ましく、なかでも、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことが好ましく、この場合には、得られるポリカーボネート樹脂(A)に柔軟性を付与することができる。
(脂肪族ジヒドロキシ化合物)
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物のうち、Rが炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基である脂肪族ジヒドロキシ化合物が挙げられ、このような脂肪族ジヒドロキシ化合物として、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、水素化ジリノレイルグリコール、水素化ジオレイルグリコール等が挙げられる。
尚、前記例示化合物は、本発明に使用し得る脂肪族ジヒドロキシ化合物の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。これらの脂肪族ジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
(脂環式ジヒドロキシ化合物)
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、通常、5員環構造又は6員環構造を含む化合物が挙げられる。脂環式ジヒドロキシ化合物が5員環構造又は6員環構造であることにより、得られるポリカーボネート樹脂(A)の耐熱性が高くなる可能性が
ある。6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素数は通常70以下であり、好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。炭素数が過度に大きいと、耐熱性が高くなるが、合成が困難になったり、精製が困難になったり、コストが高価になる傾向がある。炭素数が小さいほど、精製しやすく、入手しやすい傾向がある。
5員環構造又は6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、具体的には前記ジヒドロキシ化合物(2),(3)が挙げられる。
前記式(3)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジメタノールとしては、前記式(3)において、Rが下記式(3a)(式中、Rは水素原子、又は、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数12のアルキル基を表す。)で示される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
Figure 2015134864
前記式(3)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジメタール、ペンタシクロペンタデカンジメタノールとしては、前記式(3)において、Rが下記式(3b)(式中、nは0又は1を表す。)で表される種々の異性体を包含する。
Figure 2015134864
前記式(3)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジメタノール又は、トリシクロテトラデカンジメタノールとしては、前記式(3)において、Rが下記式(3c)(式中、mは0、又は1を表す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール等が挙げられる。
Figure 2015134864
また、前記式(3)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジメタノールとしては、前記式(3)において、Rが下記式(3d)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール等が挙げられる。
Figure 2015134864
前記式(3)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジメタノールとしては、前記式(3)において、Rが下記一般式(3e)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,3−アダマンタンジメタノール等が挙げられる。
Figure 2015134864
また、前記式(2)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジオールは、前記式(2)において、Rが下記式(2a)(式中、Rは水素原子、置換又は無置換の炭素数1〜炭素数12のアルキル基を表す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
Figure 2015134864
前記式(2)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオールとしては、前記式(2)において、Rが下記一般式(2b)(式中、nは0又は1を表す。)で表される種々の異性体を包含する。
Figure 2015134864
前記式(2)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジオール又は、トリシクロテトラデカンジオールとしては、前記式(2)において、Rが下記一般式(2c)(式中、mは0、又は1を表す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6−デカリンジオール、1,5−デカリンジオール、2,3−デカリンジオール等が用いられる。
Figure 2015134864
前記式(2)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジオールとして
は、前記式(2)において、Rが下記一般式(2d)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3−ノルボルナンジオール、2,5−ノルボルナンジオール等が用いられる。
Figure 2015134864
前記式(2)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジオールとしては、前記式(2)において、Rが下記式(2e)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては具体的には、1,3−アダマンタンジオール等が用いられる。
Figure 2015134864
上述した脂環式ジヒドロキシ化合物の具体例のうち、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類、アダマンタンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類が好ましく、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが特に好ましい。
尚、前記例示化合物は、本発明に使用し得る脂環式ジヒドロキシ化合物の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。これらの脂環式ジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
(ポリオキシアルキレンジヒドロキシ化合物)
前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物であるポリオキシアルキレンジヒドロキシ化合物は、Rに炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜5の置換若しくは無置換のアルキレン基を有する化合物である。pは2〜100、好ましくは2〜50、より好ましくは6〜30、更に好ましくは12〜15の整数である。
前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物であるポリオキシアルキレンジヒドロキシ化合物の具体例としては、具体的にはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量150〜4000)などが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物としては、分子量300〜2000のポリエチレングリコールが好ましく、中でも分子量600〜1500のポリエチレングリコールが好ましい。
これらは得られるポリカーボネート樹脂(A)の要求性能に応じて、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
尚、前記例示化合物は、本発明に使用し得るポリオキシアルキレンジヒドロキシ化合物の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。これらのポリオキシアルキレンジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
(アルキレン基、又はアセタール環を有する基を有するジヒドロキシ化合物)
前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物は、Rに炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルキレン基、又は置換若しくは無置換のアセタール環を有する基を有するジヒドロキシ化合物である。Rのアルキレン基が置換基を有す
る場合、当該置換基としては炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。また、Rのアセタール環を有する基が置換基を有する場合、当該置換基としては炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。
ジヒドロキシ化合物(5)のうち、Rが炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基であるジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール等のプロパンジオール類、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等のブタンジオール類、1,5−ヘプタンジオール等のヘプタンジオール類、1,6−ヘキサンジオール等のヘキサンジオール類などが挙げられるが何らこれらに限定されるものではない。これらの中で、ヘキサンジオール類が好ましい。
一方、Rが置換若しくは無置換のアセタール環を有する基であるジヒドロキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、中でも、下記式(8)、式(9)で表されるようなスピロ構造を有するジヒドロキシ化合物が好ましく、特には下記式(8)で表されるような複数の環構造を有するジヒドロキシ化合物が好ましい。
Figure 2015134864
これらのジヒドロキシ化合物のなかでも、入手のし易さ、取扱いの容易さ、重合時の反応性の高さ、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相の観点からは、ジヒドロキシ化合物(5)としては、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。また耐熱性の観点からは、アセタール環を有する基を有するジヒドロキシ化合物類が好ましく、特には上記式(8)に代表されるような複数の環構造を有するものが好ましい。
これらは得られるポリカーボネート樹脂(A)の要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)が脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有する場合、本発明のポリカーボネート樹脂(A)中の構造単位(1)と、前述のジヒドロキシ化合物(2)〜(5)に由来する構造単位とのモル比率は、任意の割合で選択できるが、前記モル比率を調整することで、衝撃強度(例えば、ノッチ付きシャルピー衝撃強度)が向上する可能性があり、更にポリカーボネート樹脂(A)に所望のガラス転移温度を得ることが可能である。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)において、構造単位(1)とジヒドロキシ化合物(2)〜(5)に由来する構造単位とのモル比率は、20:80〜99:1であることが好ましく、30:70〜95:15であることがより好ましく、40:60〜90:10であるのが更に好ましく、50:50〜80:20であることが特に好ましい。前記の好ましい範囲であれば、着色が少なく、高分子量であり、衝撃強度が高く、さらに、ガラス転移温度を高いポリカーボネート樹脂(A)を得ることができる。
(その他のジヒドロキシ化合物)
本発明のポリカーボネート樹脂(A)においては、上記構造単位(1)及び構造単位(2)〜(5)に加えて、更にその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいても良い。その他のジヒドロキシ化合物としては、芳香族系ジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
芳香族系ジヒドロキシ化合物としては、置換若しくは無置換のビスフェノール化合物が挙げられ、具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェ・BR>Jル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等の芳香族環上に置換基を有しないビスフェノール化合物;ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族環上に置換基としてアリール基を有するビスフェノール化合物;ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−(sec−ブチル)フェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)シクロヘキサン等の芳香族環上に置換基としてアルキル基を有するビスフェノール化合物;ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン等の芳香族環を連結する2価基が置換基としてアリール基を有するビスフェノール化合物;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等の芳香族環をエーテル結合で連結したビスフェノール化合物;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン等の芳香族環をスルホン結合で連結したビスフェノール化合
物;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等の芳香族環をスルフィド結合で連結したビスフェノール化合物等が挙げられるが、好ましくは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」と略記することがある。)が挙げられる。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)において、上述の芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有量は、本発明のポリカーボネート樹脂(A)に含まれる全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対して、0モル%以上かつ1モル%未満が好ましく、0モル%以上かつ0.8モル%未満がより好ましく、0モル%以上かつ0.5モル%未満がさらに好ましい。ポリカーボネート樹脂(A)が芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことにより、耐熱性、耐面衝撃性、成形加工性等の改良が期待できるが、芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有量が多すぎる場合には、着色が顕著になってしまうおそれがある。
上述のその他のヒドロキシ化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
<炭酸ジエステル>
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、一般に用いられる重合方法で製造することができ、その重合方法は、ホスゲンを用いた界面重合法、炭酸ジエステルとエステル交換反応させる溶融重合法のいずれの方法でもよいが、重合触媒の存在下に、ジヒドロキシ化合物を、より環境への毒性の低い炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法が好ましい。
この場合、本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、上述したジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応させる溶融重合法により得ることができる。
用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(6)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
Figure 2015134864
上記式(6)において、A及びAは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜18の脂肪族基、又は、置換若しくは無置換の芳香族基である。
上記式(6)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、これらの不純物は重合反応を阻害したり、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
炭酸ジエステルは、溶融重合に使用した全ジヒドロキシ化合物に対して、0.90〜1.20のモル比率で用いることが好ましく、0.95〜1.10のモル比率で用いることがより好ましく、0.96〜1.10のモル比率で用いることがさらにより好ましく、特
に好ましくは、0.98〜1.04のモル比率で用いることがよい。
このモル比率が0.90より小さくなると、製造されたポリカーボネート樹脂(A)の末端ヒドロキシル基が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化し、熱可塑性樹脂組成物を成形する際に着色を招いたり、エステル交換反応の速度が低下したり、所望の高分子量体が得られない可能性がある。
また、このモル比率が1.20より大きくなると、同一条件下ではエステル交換反応の速度が低下し、所望とする分子量のポリカーボネート樹脂(A)の製造が困難となるばかりか、製造されたポリカーボネート樹脂(A)中の残存炭酸ジエステル量が増加し、この残存炭酸ジエステルが、成形時、或いは成形品の臭気の原因となり好ましくない場合があり、重合反応時の熱履歴を増大させ、結果的に得られたポリカーボネート樹脂(A)の色相や耐候性を悪化させる可能性がある。
更には、全ジヒドロキシ化合物に対する、炭酸ジエステルのモル比率が増大すると、得られるポリカーボネート樹脂(A)中の残存炭酸ジエステル量が増加し、これらが紫外線を吸収してポリカーボネート樹脂(A)の耐光性を悪化させる場合があり、好ましくない。本発明のポリカーボネート樹脂(A)に残存する炭酸ジエステルの濃度は、好ましくは200重量ppm以下、更に好ましくは100重量ppm以下、特に好ましくは60重量ppm以下、中でも30重量ppm以下が好適である。ただし、現実的にポリカーボネート樹脂(A)は未反応の炭酸ジエステルを含むことがあり、ポリカーボネート樹脂(A)中の未反応の炭酸ジエステル濃度の下限値は通常1重量ppmである。
<エステル交換反応触媒>
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、上述のようにジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と前記式(6)で表される炭酸ジエステルをエステル交換反応させて製造することができる。より詳細には、エステル交換反応させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。この場合、通常、エステル交換反応触媒の存在下でエステル交換反応により溶融重合を行う。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の製造時に使用し得るエステル交換反応触媒(以下、「触媒」と称する場合がある)としては、例えば長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における1族又は2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。これらの中でも、好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用される。
1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
また、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の形態としては通常、水酸化物、又は炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステア
リン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられ、中でもセシウム化合物、リチウム化合物が好ましい。
2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられ、中でもマグネシウム化合物、カルシウム化合物、バリウム化合物が好ましく、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物が更に好ましい。
塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
上記の中でも、第2族金属化合物及びリチウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を触媒として用いるのが、得られるポリカーボネート樹脂(A)の透
明性、色相、耐光性等の種々の物性を優れたものとするために好ましい。
また、上記ポリカーボネート樹脂(A)の透明性、色相、耐光性を特に優れたものとするために、触媒が、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物であるのが好ましい。
前記触媒の使用量は、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の場合、反応に供する全ジヒドロキシ化合物1モルに対して、金属換算量として、好ましくは0.1〜300μモル、より好ましくは0.1〜100μモル、さらに好ましくは0.5〜50μモル、更により好ましくは1〜25μモルの範囲内である。
上記の中でもリチウム及び2族金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を含む化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物を用いる場合は、金属換算量として、反応に供する全ジヒドロキシ化合物1モル当たり、好ましくは0.1μモル以上、更に好ましくは0.5μモル以上、特に好ましくは0.7μモル以上とする。また上限としては、好ましくは20μモル、更に好ましくは10μモル、特に好ましくは3μモル、最も好ましくは2.0μモルである。
触媒の使用量が少なすぎると、所望の分子量のポリカーボネート樹脂(A)を製造するのに必要な重合活性が得られず、充分な破壊エネルギーが得られない可能性がある。一方、触媒の使用量が多すぎると、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相が悪化するだけでなく、副生成物が発生したりして流動性の低下やゲルの発生が多くなり、脆性破壊の起因となる場合があり、目標とする品質のポリカーボネート樹脂(A)の製造が困難になる可能性がある。
<ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法>
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、ジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応により溶融重合させることによって得られるが、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一に混合することが好ましい。
混合の温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上であり、その上限は通常250℃以下、好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。中でも100℃以上120℃以下が好適である。混合の温度が低すぎると溶解速度が遅かったり、溶解度が不足する可能性があり、しばしば固化等の不具合を招き、混合の温度が高すぎるとジヒドロキシ化合物の熱劣化を招く場合があり、結果的に得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相が悪化し、耐光性に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを混合する操作は、酸素濃度10体積%以下、更には0.0001体積%〜10体積%、中でも0.0001体積%〜5体積%、特には0.0001体積%〜1体積%の雰囲気下で行うことが、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相悪化防止の観点から好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、触媒を用いて、複数の反応器を用いて多段階で溶融重合させて製造することが好ましい。溶融重合を複数の反応器で実施する理由は、溶融重合反応初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いために、必要な重合速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制してやることが重要であり、溶融重合反応後期においては、平衡を重合側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去させることが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するには、直列に配置された複数の反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。前記反応器は、上述の通り、少なくとも2つ以上であればよいが、生産効率などの観点からは、3つ以上、好ましくは3〜5つ、特に好ましくは、4つである。
反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
更には、留出するモノマーの量を抑制するために、重合反応器に還流冷却器を用いることは有効であり、特に未反応モノマー成分が多い重合初期の反応器でその効果は大きい。還流冷却器に導入される冷媒の温度は使用するモノマーに応じて適宜選択することができるが、通常、還流冷却器に導入される冷媒の温度は該還流冷却器の入口において45〜180℃であり、好ましくは80〜150℃、特に好ましくは100〜130℃である。還流冷却器に導入される冷媒の温度が高すぎると還流量が減り、その効果が低下し、低すぎると、本来留去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率が低下する傾向にある。冷媒としては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、蒸気、熱媒オイルが好ましい。
重合速度を適切に維持し、モノマーの留出を抑制しながら、最終的に得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相や熱安定性、耐光性等を損なわないようにするためには、前述の触媒の種類と量の選定が重要である。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の製造にあたっては、前記反応器が2つ以上であれば、その反応器中で、更に条件の異なる反応段階を複数持たせる、連続的に温度・圧力を変えていく、などしてもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の製造において、触媒は原料調製槽、原料貯槽に添加することもできるし、反応器に直接添加することもできるが、供給の安定性、溶融重合の制御の観点からは、反応器に供給される前の原料ラインの途中に触媒供給ラインを設置し、好ましくは水溶液で供給する。
重合条件としては、重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させることが好ましいが、各分子量段階でのジャケット温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相や耐光性の観点から重要である。例えば、重合反応が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を狂わせ、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりして結果的に本発明の目的を達成することができない可能性がある。
エステル交換反応の温度は、低すぎると生産性の低下や製品への熱履歴の増大を招き、高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、ポリカーボネート樹脂(A)の分解や着色を助長する可能性がある。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の製造において、ジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを触媒の存在下、エステル交換反応させる方法は、通常、2段階以上の多段工程で実施される。具体的には、第1段目のエステル交換反応温度(以下、「内温」と称する場合がある)は好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上、さらにより好ましくは200℃以上であることがよい。また、第1段目のエステル交換反応温度は、好ましくは270℃以下、より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは230℃以下、さらにより好ましくは220℃以下であることがよい。第1段目のエステル交換反応における滞留時間は通常0.
1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間であり、第1段目のエステル交換反応は、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。第2段目以降はエステル交換反応温度を上げていき、通常、210〜270℃、好ましくは220〜250℃の温度でエステル交換反応を行い、同時に発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げながら最終的には反応系の圧力が200Pa以下となるように、通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜6時間、特に好ましくは1〜3時間重縮合反応が行われる。
エステル交換反応温度が過度に高いと、成形品としたときに色相が悪化し、脆性破壊しやすい可能性がある。エステル交換反応温度が過度に低いと、目標とする分子量が上がらず、また、分子量分布が広くなり、衝撃強度が劣る場合がある。また、エステル交換反応の滞留時間が過度に長いと、脆性破壊しやすい場合がある。滞留時間が過度に短いと、目標とする分子量が上がらず衝撃強度が劣る場合がある。
副生したモノヒドロキシ化合物は、資源有効活用の観点から、必要に応じ精製を行った後、炭酸ジエステルや、各種ビスフェノール化合物の原料として再利用することが好ましい。
特にポリカーボネート樹脂(A)の着色や熱劣化あるいはヤケを抑制し、衝撃強度が高い良好なポリカーボネート樹脂(A)を得るには、全反応段階における反応器内温の最高温度が255℃未満、より好ましくは250℃以下、特に225〜245℃であることが好ましい。また、重合反応後半の重合速度の低下を抑止し、熱履歴によるポリカーボネート樹脂(A)の熱劣化を最小限に抑えるために、反応の最終段階でプラグフロー性と界面更新性に優れた横型反応器を使用することが好ましい。
また、衝撃強度の高いポリカーボネート樹脂(A)を企図し、分子量の高いポリカーボネート樹脂(A)を得るため、出来るだけ重合温度を高め、重合時間を長くする場合があるが、この場合には、ポリカーボネート樹脂(A)中の異物やヤケが発生し、脆性破壊しやすくなる傾向にある。よって、衝撃強度が高くすることと脆性破壊をしにくくすることの双方を満足させるためには、重合温度を低く抑え、重合時間短縮のための高活性触媒の使用、適正な反応系の圧力設定等の調整を行なうことが好ましい。更に、反応の途中あるいは反応の最終段階において、フィルター等により反応系で発生した異物やヤケ等を除去することも脆性破壊をしにくくするために好ましい。
なお、前記式(6)で表される炭酸ジエステルとして、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートを用いてポリカーボネート樹脂(A)を製造する場合は、フェノール、置換フェノールが副生し、ポリカーボネート樹脂(A)中に残存することは避けられないが、フェノール、置換フェノールも芳香環を有することから紫外線を吸収し、耐光性の悪化要因になる場合があるだけでなく、成形時の臭気の原因となる場合がある。ポリカーボネート樹脂(A)中には、通常のバッチ反応後は1000重量ppm以上の副生フェノール等の芳香環を有する芳香族モノヒドロキシ化合物が含まれているが、耐光性や臭気低減の観点からは、脱揮性能に優れた横型反応器や真空ベント付の押出機を用いて、ポリカーボネート樹脂(A)中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量を好ましくは700重量ppm以下、更に好ましくは500重量ppm以下、特には300重量ppm以下にすることが好ましい。ただし、芳香族モノヒドロキシ化合物を工業的に完全に除去することは困難であり、ポリカーボネート樹脂(A)中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量の下限は通常1重量ppmである。尚、これら芳香族モノヒドロキシ化合物は、用いる原料により、当然置換基を有していてもよく、例えば、炭素数が5以下であるアルキル基等を有していてもよい。
また、1族金属、中でもリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、特にはナトリウム、カリウム、セシウムは、使用する触媒からのみではなく、原料や反応装置から混入する場合があるが、これらの金属がポリカーボネート樹脂(A)中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性があるため、本発明のポリカーボネート樹脂(A)中のこれらの化合物の合計の含有量は、少ない方が好ましく、ポリカーボネート樹脂(A)中の金属量として、通常1重量ppm以下、好ましくは0.8重量ppm以下、より好ましくは0.7重量ppm以下である。
なお、ポリカーボネート樹脂(A)中の金属量は、従来公知の種々の方法により測定可
能であるが、湿式灰化等の方法でポリカーボネート樹脂(A)中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光、Inductively Coupled Plasma(ICP)等の方法を使用して測定することが出来る。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、上述の通り溶融重合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。
ペレット化の方法は限定されるものではないが、例えば、最終重合反応器からポリカーボネート樹脂(A)を溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終重合反応器から溶融状態で一軸又は二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸又は二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
その際、押出機中で、残存モノマーの減圧脱揮や、通常知られている、熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤等を添加、混練することも出来る。
押出機中の、溶融混練温度は、ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度や分子量に依存するが、通常150〜300℃、好ましくは200〜270℃、更に好ましくは230〜260℃である。溶融混練温度が150℃より低いと、ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、ポリカーボネートの熱劣化が激しくなり、分子量の低下による機械的強度の低下や、着色、ガスの発生、異物の発生、更にはヤケの発生を招く。前記異物やヤケの除去のためのフィルターは該押出機中あるいは押出機出口に設置することが好ましい。
前記フィルターの異物除去の大きさ(目開き)は、99%以上の異物を除去するという濾過精度を目標として、通常400μm以下、好ましくは200μm以下、特に好ましくは100μm以下である。フィルターの目開きが過度に大きいと、異物やヤケの除去に漏れが生じる場合があり、ポリカーボネート樹脂(A)を成形した場合、脆性破壊を起こす可能性がある。また前記フィルターの目開きは、本発明の熱可塑性樹脂組成物の用途に応じて調整することができる。例えばフィルム用途に適用する場合には、欠陥を排除するという要求から前記フィルターの目開きは40μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
更に、前記フィルターは複数個を直列に設置して使用してもよく、また、リーフディスク型ポリマーフィルターを複数枚積層した濾過装置を使用してもよい。
また、溶融押出されたポリカーボネート樹脂(A)を冷却してペレット化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用することが好ましい。空冷の際に使用する空気は、HEPAフィルター(JIS Z8112で規定されるフィルターが好ましい。)等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐことが望ましい。より好ましくはJIS B 9920(2002年)に定義されるクラス7、更に好ましくはクラス6より清浄度の高いクリーンルームのなかで実施することが好ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、更にフィルターにて水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの目開きは種々あるが、10〜0.45μmのフィルターが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)を溶融重合法で製造する際に、着色を防止する目的で、リン酸化合物や亜リン酸化合物の1種又は2種以上を重合時に添加することができる。
リン酸化合物としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸トリアルキル
の1種又は2種以上が好適に用いられる。これらは、反応に供する全ヒドロキシ化合物に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが好ましく、更に好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することが好ましい。リン化合物の添加量が前記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、前記上限より多いと、透明性が低下する原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりする。
また、亜リン酸化合物としては、下記に示す熱安定剤を任意に選択して使用できる。特に、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトの1種又は2種以上が好適に使用できる。これらの亜リン酸化合物は、反応に供する全ヒドロキシ化合物に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが好ましく、更に好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することが好ましい。亜リン酸化合物の添加量が前記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、前記上限より多いと、透明性が低下する原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
上記のリン酸化合物と亜リン酸化合物は併用して添加することもできるが、その場合の添加量は、リン酸化合物と亜リン酸化合物の総量で、反応に供する全ヒドロキシ化合物に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下とすることが好ましく、更に好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下である。この添加量が前記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、前記上限より多いと、透明性が低下する原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
また、このようにして製造されたポリカーボネート樹脂(A)には、成形時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤の1種又は2種以上が配合されていてもよい。
かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸、及びこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。
かかる熱安定剤は、溶融重合時に添加した添加量に加えて更に追加で配合することがで
きる。即ち、適当量の亜リン酸化合物やリン酸化合物を配合して、ポリカーボネート樹脂(A)を得た後に、後に記載する配合方法で、更に亜リン酸化合物を配合すると、重合時の透明性の低下、着色、及び耐熱性の低下を回避して、更に多くの熱安定剤を配合でき、色相の悪化の防止が可能となる。
これらの熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.2重量部が更に好ましい。
<ポリカーボネート樹脂(A)の物性>
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の好ましい物性について、以下に示す。
(ガラス転移温度)
本発明のポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、145℃未満である。この範囲を超えてポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度が高すぎる場合には、着色し易くなり、衝撃強度を向上させることが困難になるおそれがある。また、この場合には、成形時において金型表面の形状を成形品に転写させる際に、金型温度を高く設定する必要がある。そのため、選択できる温度調節機が制限されてしまったり、金型表面の転写性が悪化したりするおそれがある。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は、より好ましくは140℃未満、さらに好ましくは135℃未満である。
また、本発明のポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は通常90℃以上であり、好ましくは95℃以上である。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度を145℃未満とする方法としては、ポリカーボネート樹脂(A)中の構造単位(1)の割合を少なくしたり、ポリカーボネート樹脂(A)の製造に用いるジヒドロキシ化合物として、耐熱性の低い脂環式ジヒドロキシ化合物を選定したり、ポリカーボネート樹脂(A)中のビスフェノール化合物等の芳香族系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合を少なくしたりする方法等が挙げられる。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は、後述の実施例に記載の方法で測定されたものである。
(還元粘度)
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の重合度は、溶媒としてフェノールと1,1,2,2,−テトラクロロエタンの重量比1:1の混合溶媒を用い、ポリカーボネート樹脂(A)濃度を1.00g/dlに精密に調整し、温度30.0℃±0.1℃で測定した還元粘度(以下、単に「還元粘度」と記す場合がある。)として、好ましくは0.40dl/g以上、更に好ましくは0.42dl/g以上、特に好ましくは0.45dl/g以上であるが、本発明の熱可塑性樹脂組成物の用途によっては、0.60dl/g以上、更には0.85dl/g以上のものが好適に用いられる場合がある。また、本発明のポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度は、好ましくは2.0dl/g以下、更に好ましくは1.7dl/g以下、特に好ましくは1.4dl/g以下である。ポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度が過度に低いと、機械的強度が弱くなる場合があり、ポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度が過度に高いと、成形する際の流動性が低下し、サイクル特性を低下させ、成形品の歪みが大きくなり熱により変形し易い傾向がある。
[シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明のポリカーボネート樹脂(A)と、特定のシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)(以下、「SAS樹脂」と称す場合がある。)とを含有する。
<シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)の物性>
本発明のシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)の好ましい物性について、以下に示す。なお、シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)は、モノマーから使用することができ、シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)の構造がコア/シェル構造をとっていてもよい。例えば、ポリブタジエンをコアにして、アクリル酸エステルをシェルにしたシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)とすることもできる。
また、シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.1〜2.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5μmである。
シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)の平均粒子径は、グラフト重合前であれば、光学的な方法(例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた方法など)で測定することができる。また、グラフト重合後であれば、染色剤によりシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)を染色した後に、TEMを用いて平均粒子径を算出することができる。
シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)の荷重たわみ温度(℃)は、特に限定されるものではないが、成形後の外観が良好となるため、60℃以上が好ましく、70℃以上がさらに好ましく、80℃以上が特に好ましい。また、120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましく、90℃以下が特に好ましい。
シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)の荷重たわみ温度(℃)は、ISO試験法75に準拠し、1.80MPa、4mm、フラットワ
イズ法で荷重たわみ温度(℃)を測定できる。
<シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)の製造方法>
シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)は、シリコン−アクリル複合ゴムに対し、アクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体およびスチレン共重合体などの芳香族ビニル系単量体を共重合して得られた樹脂である。また、シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)を構成する単量体成分としては、以下のとおりである。
(シリコン−アクリル複合ゴム)
シリコーン−アクリル複合ゴムのシリコーン成分は、ポリオルガノシロキサンを主成分とするものであり、中でも、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンが好ましい。
シリコーン−アクリル複合ゴムにおけるアクリルゴム成分は、アルキル(メタ)アクリレートと多官能性単量体とが重合されたものである。
ここで、アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート;ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能性単量体としては、例えば、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタ
クリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリコーン−アクリル複合ゴムの複合化構造としては、ポリオルガノシロキサンゴムのコア層の周囲がアルキル(メタ)アクリレート系ゴムで覆われたコアシェル構造、アルキル(メタ)アクリレート系ゴムのコア層の周囲がポリオルガノシロキサンゴムで覆われたコアシェル構造、ポリオルガノシロキサンゴムとアルキル(メタ)アクリレート系ゴムが相互に絡み合っている構造、ポリオルガノシロキサンのセグメントとポリアルキル(メタ)アクリレートのセグメントが互いに直線的および立体的に結合しあって網目状のゴム構造となっている構造等が挙げられる。
(シアン化ビニル系単量体)
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等が挙げられる。これらの単量体の中でも、耐熱性および耐衝撃性のバランスにより優れた樹脂成形品を成形できる観点から、アクリロニトリルが特に好ましい。
(芳香族ビニル系単量体)
具体的な芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。 芳香族ビニル系単量体は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
また、シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)を構成する単量体成分としては、芳香族ビニル系単量体を主成分として、該芳香族ビニル系単量体と共重合可能なその他の単量体を併用することができる。
また、その他の単量体としては、場合により官能基により変性された単量体を用いてもよく、このような単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。
その他の単量体は、それぞれ1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
(重合方法)
これらの単量体の重合は、公知の乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合により行うことができ、これらの重合方法を組み合わせた方法でもよい。
シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)は、1種類のグラフト共重合体から構成されていてもよいし、重合方法や成分組成の異なる2種以上のグラフト共重合体の混合物から構成されていてもよい。
<シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)の具体例>
本発明のシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)の具体例としては、特に制限されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
アクリロニトリル・ジメチルシロキサン・ブチルアクリレート・スチレンの共重合体(例えば、UMG ABS社製、商品名ダイヤラックS351)、アクリロニトリル・ジメ
チルシロキサン・ブチルアクリレート・スチレンの重合体およびアクリロニトリル・N−フェニルマレイミド・スチレンの重合体からなる混合物(例えば、UMG ABS社製、
商品名ダイヤラックTW15G)、アクリロニトリル・ジメチルシロキサン・ブチルアクリレート・スチレンの重合体およびアクリル系樹脂からなる混合物(例えば、UMG A
BS社製、商品名ダイヤラックWH30)、アクリロニトリル・ジメチルシロキサン・ブ
チルアクリレート・スチレンの重合体およびメタクリル酸メチル・アクリル酸アルキル共重合体からなる混合物(例えば、UMG ABS社製、商品名ダイヤラックS359E)
などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性が高いことから、アクリロニトリル・ジメチルシロキサン・ブチルアクリレート・スチレンの共重合体(例えば、UMG ABS社製
、商品名ダイヤラックS351)、アクリロニトリル・ジメチルシロキサン・ブチルアクリレート・スチレンの重合体およびアクリロニトリル・N−フェニルマレイミド・スチレンの重合体かならる混合物(例えば、UMG ABS社製、商品名ダイヤラックTW15
G)、アクリロニトリル・ジメチルシロキサン・ブチルアクリレート・スチレンの重合体およびアクリル系樹脂からなる混合物(例えば、UMG ABS社製、商品名ダイヤラッ
クWH30)が好ましく、アクリロニトリル・ジメチルシロキサン・ブチルアクリレート・スチレンの共重合体(例えば、UMG ABS社製、商品名ダイヤラックS351)、
アクリロニトリル・ジメチルシロキサン・ブチルアクリレート・スチレンの重合体およびアクリロニトリル・N−フェニルマレイミド・スチレンの重合体かなる混合物(例えば、UMG ABS社製、商品名ダイヤラックTW15G)が最も好ましい。
<ポリカーボネート樹脂(A)およびシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体(B)の構成重量比率>
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、本発明のポリカーボネート樹脂(A)およびシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体(B)の構成重量比率が95/5〜5/95の範囲であることが、耐衝撃性が高いことから好ましい。また、85/15〜15/85の範囲であることがより好ましく、75/25〜25/75の範囲であることが最も好ましい。
<ポリカーボネート樹脂(A)およびシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体(B)の合計重量>
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、本発明のポリカーボネート樹脂(A)およびシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体(B)の合計重量が熱可塑性樹脂組成物全体の重量の50%以上であることが、耐衝撃性が高いことから好ましい。また、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが最も好ましい。
[熱可塑性樹脂組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明のポリカーボネート樹脂(A)と本発明のシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体(B)とを混合することにより製造することができる。
具体的には、例えばペレット状の本発明のポリカーボネート樹脂(A)と、本発明のシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体(B)とを押出機を用いて混合し、ストランド状に押出し、回転式カッター等でペレット状にカットすることにより本発明の熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
<添加剤>
本発明のポリカーボネート樹脂(A)と本発明のシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体(B)との混合時には、必要に応じて適宜下記の酸化防止剤、離型剤等の添加剤を添加することができる。
(酸化防止剤)
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤の1種又は2種以上を配合することができる。
酸化防止剤を用いる場合には、本発明のポリカーボネート樹脂100重量部に対し、通常0.0001重量部以上1重量部以下であり、好ましくは0.001重量部以上、より
好ましくは0.01重量部以上であり、また、通常1重量部以下であり、好ましくは0.5重量部以下、より好ましくは0.3重量部以下である。
酸化防止剤の含有量が上記下限以上であると成形時の着色抑制効果が良好となる傾向があるが、酸化防止剤の含有量が上記上限より多いと射出成形時における金型への付着物が多くなったり、押出成形によりフィルムを成形する際にロールへの付着物が多くなったりすることにより、製品の表面外観が損なわれるおそれがある。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスフェイト系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、フェノール系酸化防止剤及び/又はホスフェイト系酸化防止剤が更に好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどの化合物が挙げられる。
これらの化合物の中でも、炭素数5以上のアルキル基によって1つ以上置換された芳香族モノヒドロキシ化合物が好ましく、具体的には、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが好ましく、ペンタエリスリトール−テトラキス{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが更に好ましい。
ホスフェイト系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
これらの中でも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが更に好ましい。
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ビス[2−メチル−4−(3−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1,1’−チオビス(2−ナフトール)などが挙げられる。上記のうち、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が好ましい。
(離型剤)
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、シート成形時の冷却ロールからのロール離れ、或いは射出成形時の金型からの離型性をより向上させるなどのために、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤が配合されていてもよい。
かかる離型剤としては、一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、パラフィンワックス、蜜蝋、オレフィン系ワックス、カルボキシ基及び/又はカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。離型剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
高級脂肪酸エステルとしては、炭素数1〜炭素数20の一価又は多価アルコールと炭素数10〜炭素数30の飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルが好ましい。かかる一価又は多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸モノグリセリド、ベヘニン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられる。なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ベヘニン酸ベヘニルが好ましく用いられる。離型性と透明性の観点から離型剤としてより好ましいのはステアリン酸エステルである。
ステアリン酸エステルとしては、置換又は無置換の炭素数1〜炭素数20の一価又は多価アルコールとステアリン酸との部分エステル又は全エステルが好ましい。かかる一価又は多価アルコールとステアリン酸との部分エステル又は全エステルとしては、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ステアリン酸ステアリル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、ブチルステアレート、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレートなどがより好ましい。なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリルステアレートが更に好ましく、エチレングリコール
ジステアレート、ステアリン酸モノグリセリドが特に好ましい。
高級脂肪酸としては、置換又は無置換の炭素数10〜炭素数30の飽和脂肪酸が好ましい。なかでも無置換の炭素数10〜炭素数30の飽和脂肪酸がより好ましく、このような高級脂肪酸としては、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等が挙げられる。中でも炭素数16〜18の飽和脂肪酸が更に好ましく、このような飽和脂肪酸としてパルミチン酸、ステアリン酸などが挙げられるが、ステアリン酸が特に好ましい。
離型剤を用いる場合には、その配合量は本発明のポリカーボネート樹脂100重量部に対し、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であり、また、通常2重量部以下、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下である。離型剤の含有量が過度に多いと成形時に金型付着物が増える場合があり、大量に成形を実施した場合には金型の整備に労力を要する可能性があり、また、得られる成形品に外観不良をきたす可能性がある。熱可塑性樹脂組成物中の離型剤の含有量が上記下限以上であると成形時、成形品が金型から離型しやすくなり、成形品が取得しやすいという利点がある。
(紫外線吸収剤・光安定剤)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、紫外線による変色は従来の熱可塑性樹脂組成物に比較して著しく小さいが、更に改良の目的で、本発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤の1種又は2種以上が配合されていてもよい。
ここで、紫外線吸収剤としては、紫外線吸収能を有する化合物であれば特に限定されない。紫外線吸収能を有する化合物としては、有機化合物、無機化合物が挙げられる。なかでも有機化合物はポリカーボネート樹脂との親和性を確保しやすく、均一に分散しやすいので好ましい。
紫外線吸収能を有する有機化合物の分子量は特に限定されないが、通常200以上、好ましくは250以上である。また。通常600以下、好ましくは450以下、より好ましくは400以下である。分子量が過度に小さいと、長期間使用での耐紫外線性能の低下を引き起こす可能性がある。分子量が過度に大きいと、長期間使用での樹脂組成物の透明性低下を引き起こす可能性がある。
好ましい紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、サリチル酸フェニルエステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、マロン酸エステル系化合物、シュウ酸アニリド系化合物などが挙げられる。なかでも、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、マロン酸エステル系化合物が好ましく用いられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ベンゾトリアゾール系化合物のより具体的な例としては、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−ヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−ヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ドデシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−t−ドデシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物としては、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノンなどのヒドロキシベンゾフェノン系化合物などが挙げられる。
マロン酸エステル系化合物としては、2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類、テトラエチル−2,2’−(1,4−フェニレン−ジメチリデン)−ビスマロネートなどが挙げられる。
トリアジン系化合物としては、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソオクチルオキシフェニル)−s−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(チバガイギー社製、Tinuvin1577FF)などが挙げられる。
シアノアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2’−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどが挙げられる。
シュウ酸アニリド系化合物としては、2−エチル−2’−エトキシ−オキサルアニリド(Clariant社製、SanduvorVSU)などが挙げられる。
かかる紫外線吸収剤、光安定剤の含有量は、紫外線吸収剤、光安定剤の種類に応じて適宜選択することが可能であるが、熱可塑性樹脂組成物全体に対して、紫外線吸収剤、光安定剤を0.001〜5重量%含有することが好ましく、本発明のポリカーボネート100重量部に対する添加量で、0.01〜2重量部が好ましい。
(ブルーイング剤)
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、黄色味を打ち消すためにブルーイング剤の1種又は2種以が配合されていてもよい。ブルーイング剤としては、従来のポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。
具体的なブルーイング剤としては、例えば、一般名Solvent Violet13[CA.No.(カラーインデックスNo.)60725]、一般名Solvent V
iolet31[CA.No.68210]、一般名Solvent Violet33
[CA.No.60725]、一般名Solvent Blue94[CA.No.61500]、一般名Solvent Violet36[CA.No.68210]、一般名
Solvent Blue97[バイエル社製「マクロレックスバイオレットRR」]、及び一般名Solvent Blue45[CA.No.61110]等が代表例として
挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるこれらブルーイング剤の含有量は、通常、本発明のポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.1×10−4〜2×10−4重量部
が好ましい。
(その他の添加剤等)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記の添加剤の他、本発明の目的を損なわない範囲で、周知の種々の添加剤、例えば、難燃剤、難燃助剤、加水分解抑制剤、帯電防止剤、発泡剤、染顔料等を含有した樹脂組成物であってもよい。また、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン等の合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性樹脂等が混合された樹脂組成物であってもよい。
<配合方法>
本発明の熱可塑性樹脂組成物への上述のような各種の添加剤等の配合方法としては、例えばタンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合・混練する方法、或いは、例えば塩化メチレン等の共通の良溶媒に溶解させた状態で混合する溶液ブレンド方法等があるが、これは特に限定されるものではなく、通常用いられるブレンド方法であればどのような方法を用いてもよい。
こうして得られる本発明の熱可塑性樹脂組成物は、これに各種添加剤等が添加され、直接に、或いは溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、押出成形法、射出成形法、圧縮成形法等の通常知られている成形方法で、所望形状に成形することができる。
[熱可塑性樹脂組成物の物性]
以下に、本発明の熱可塑性樹脂組成物の好ましい物性について示す。
<YI>
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、透明淡色着色時の明度を考慮すると、240℃で溶融成形して得られた3mmの厚さの成形品を、JIS K7105に従って測定したYIが30以下であることが好ましく、より好ましくは10以下である。このYIの下限値としては、同様の理由で、好ましくは−5以上、より好ましくは0以上である。
このYIは重合触媒の種類、添加量や触媒失活剤の種類、添加量により制御することができる。
なお、上記YIは、より具体的には後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
<全光線透過率>
本発明の熱可塑性樹脂組成物の全光線透過率が60%未満の場合には、建築材料分野、電気・電子分野、自動車分野、光学部品分野等において好適に用いることが困難になるおそれがある。本発明の熱可塑性樹脂組成物の全光線透過率は好ましくは70%以上がよく、より好ましくは80%以上がよい。
また、実現の困難性という観点から、全光線透過率の上限は94%である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の全光線透過率は、本発明のポリカーボネート樹脂の製造に用いるジヒドロキシ化合物の種類とそのモル比率、本発明のシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体(B)の種類とその含有量等を調整することにより制御することができる。
なお、熱可塑性樹脂組成物の全光線透過率は、具体的には、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
<ノッチ付シャルピー衝撃強度>
本発明の熱可塑性樹脂組成物のノッチ付シャルピー衝撃強度は、15kJ/m2以上が
好ましく、20kJ/m2以上がより好ましく、25kJ/m2以上がさらに好ましく、40kJ/m2以上がさらにより好ましく、49kJ/m2以上が特に好ましい。また、実現の困難性という観点から、本発明の熱可塑性樹脂組成物のノッチ付シャルピー衝撃強度の上限は200kJ/m2である。
ノッチ付シャルピー衝撃強度は、本発明の熱可塑性樹脂組成物における本発明のポリカーボネート樹脂の分子量(還元粘度)、本発明のポリカーボネート樹脂の製造に用いるジヒドロキシ化合物の種類とモル比率、本発明のシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体(B)の種類とその含有量等を調整することにより制御することができる。
なお、熱可塑性樹脂組成物のノッチ付シャルピー衝撃強度は、具体的には、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
<溶融粘度>
本発明の熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は100Pa・s以上が好ましい。溶融粘度が上記下限よりも低すぎる場合には、機械的強度が不足し、射出成形等の成形後に金型から取り出す際に成形品が割れたり、成形品の使用時にクラックが発生したりするおそれがある。本発明の熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は、より好ましくは200Pa・s以上、さらに好ましくは500Pa・s以上がよい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は800Pa・s以下が好ましい。溶融粘度が上記上限より高すぎる場合には、強度の高い成形品を工業的に製造することが困難になるおそれがある。また、この場合には、流動性の悪化や成形温度の上昇による着色、分子量の低下、分解ガスの発生等を招きやすくなるおそれがある。本発明の熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は、より好ましくは700Pa・s以下、さらに好ましくは640Pa・s以下がよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は、重合反応の温度、圧力、重合時間を調整することにより制御することができる。
なお、熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は、キャピログラフを用いて、測定温度240℃、剪断速度912sec−1にて測定される。
〔ポリカーボネート樹脂成形品〕
本発明のポリカーボート樹脂組成物を成形することにより、本発明のポリカーボネート樹脂成形品を得ることができる。
好ましくは、本発明のポリカーボネート樹脂成形品は、射出成形法により成形されたものである。
この場合には、複雑な形状の本発明のポリカーボネート樹脂成形品が作成可能となる。そして、複雑な形状に成形すると応力集中部が発生し易くなるが、本発明の熱可塑性樹脂組成物においては上述のごとく衝撃強度の向上効果が得られるため、応力集中による破断を抑制することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂成形品はまた、本発明の熱可塑性樹脂組成物の押出成形法等によりフィルム又はシートに成形されたものであってもよい。
また、本発明のポリカーボネート樹脂成形品は、射出成形法又は押出成形法等により成形されたプレートであってもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
以下において、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性樹脂組成物及び成形品の物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
(1)試験片の作成方法
熱可塑性樹脂組成物のペレットを、熱風乾燥機を用いて、80℃で6時間乾燥した。次に、乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、樹脂温度240℃、金型温度60℃、成形サイクル40秒間の条件で、射出成形板(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)及び機械物性用ISO試験片を成形した。
(2)ノッチ付シャルピー衝撃強度
前記(1)で得られた機械物性用ISO試験片についてISO179(2000年)に準拠してノッチ付シャルピー衝撃試験を実施した。ポリカーボネート樹脂のシャルピー衝撃強度が、向上しているものが本願の効果を有するものである。
(3)成形品外観
前記(1)で得られた射出成形板について外観を確認した。外観が著しいパール調である場合を不合格、そうでない場合を合格とした。(4)荷重たわみ温度(℃)
ISO試験法75に準拠し、1.80MPa、4mm、フラットワイズ法で荷重たわみ
温度(℃)を測定した。
また、以下の実施例及び比較例で用いた化合物の略号は次の通りである。
ISB:イソソルビド(ロケットフルーレ社製、商品名POLYSORB)
CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール(イーストマン社製)
DPC:ジフェニルカーボネート(三菱化学(株)製)
また、SAS樹脂、ASA樹脂およびその他の添加剤は下記の市販品を用いた。
S351:SAS樹脂(UMG ABS社製、商品名ダイヤラックS351)
荷重たわみ温度:82℃
TW15G:SAS樹脂(UMG ABS社製、商品名ダイヤラックTW15G)
荷重たわみ温度:92℃
S510:ASA樹脂(UMG ABS社製、商品名ダイヤラックS510)
荷重たわみ温度:79℃
TW15F:ASA樹脂(UMG ABS社製、商品名ダイヤラックTW15F)
荷重たわみ温度:92℃
その他の添加剤は以下の通りである。
<酸化防止剤>
アデカスタブ2112:ホスファイト系酸化防止剤(ADEKA社製)
イルガノックス1010:フェノール系酸化防止剤(BASFジャパン社製)
<離型剤>
ユニスターE−275:ジステアリン酸グリコール(日油社製)
Figure 2015134864
[実施例1]
撹拌翼及び100℃に制御された還流冷却器を具備した重合反応装置に、反応原料として、ISBとCHDM、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPC及び酢酸カルシウム1水和物を、モル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.50/0.50/1.00/1.3×10-6になるように仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005〜0.001体積%)。
続いて熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温が100
℃になるように制御しながら内容物を融解させ均一にした。その後、昇温を開始し、40分で内温を210℃にし、内温が210℃に到達した時点でこの温度を保持するように制御すると同時に、減圧を開始し、210℃に到達してから90分で13.3kPa(絶対圧力、以下同様)にして、この圧力を保持するようにしながら、さらに60分間保持した。
重合反応とともに副生するフェノール蒸気は、還流冷却器への入口温度として100℃に制御された蒸気を冷媒として用いた還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を重合反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は続いて45℃の温水を冷媒として用いた凝縮器に導いて回収した。
このようにしてオリゴマー化させた内容物を、一旦大気圧にまで復圧させた後、撹拌翼及び前記同様に制御された還流冷却器を具備した別の重合反応装置に移し、昇温及び減圧を開始して、60分で内温220℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて内温230℃、圧力133Pa以下にして、所定撹拌動力になった時点で復圧し、内容物をストランドの形態で抜出し、回転式カッターでペレット(ポリカーボネート樹脂1)にした。
次に、得られたポリカーボネート樹脂1のペレットと、更に上記の表1に示した組成(重量部)となるようにSAS樹脂としてS351、離型剤としてユニスターE−275、更に酸化防止剤としてイルガノックス1010及びアデカスタブ2112とを2つのベント口を有する日本製鋼所社製2軸押出機(LABOTEX30HSS−32)を用いて、押出機出口の樹脂温度が250℃になるようにストランド状に押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化した。この際、ベント口は真空ポンプに連結し、ベント口での圧力が500Paになるように制御した。熱可塑性樹脂組成物の評価を行い、結果を表1に示した。
[実施例2]
SAS樹脂としてS351の代わりにTW15Gを用いた以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例3]
ポリカーボネート樹脂1(80重量部)に対して、SAS樹脂としてTW15Gの配合量を20重量部としたこと以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例4]
撹拌翼及び100℃に制御された還流冷却器を具備した重合反応装置に、ISB及びCHDMと、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPC及び酢酸カルシウム1水和物を、モル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.70/0.30/1.00/1.3×10-6になるように仕込んだこと以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂2を得た。
次に、得られたポリカーボネート樹脂2のペレットと、更に上記の表1に示した組成となるようにSAS樹脂としてTW15G、離型剤としてユニスターE−275、更に酸化防止剤としてイルガノックス1010及びアデカスタブ2112とを2つのベント口を有する日本製鋼所社製2軸押出機(LABOTEX30HSS−32)を用いて、押出機出口の樹脂温度が250℃になるようにストランド状に押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化した。この際、ベント口は真空ポンプに連結し、ベント口での圧力が500Paになるように制御した。熱可塑性樹脂組成物の評価を行い、結果を表1に示した。
[比較例1]
SAS樹脂S351の代わりにASA樹脂としてS510を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
[比較例2]
SAS樹脂TW15Gの代わりにASA樹脂としてS510を用いた以外は、実施例4と同様に行った。
[比較例3]
SAS樹脂TW15Gの代わりにASA樹脂としてTW15Fを用いた以外は、実施例4と同様に行った。
[比較例4]
SAS樹脂S351を含有しなかった以外は、実施例1と同様に行った。
[比較例5]
SAS樹脂TW15Gを含有しなかった以外は、実施例4と同様に行った。
[比較例6]
ポリカーボネート樹脂を含有しなかった以外は、実施例1と同様に行った。
[比較例7]
ポリカーボネート樹脂を含有しなかった以外は、実施例4と同様に行った。
表1より明らかなように、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、比較例の熱可塑性樹脂組成物に比べて良好な外観と高いノッチ付シャルピー衝撃強度を示した。したがって、本発明のポリカーボネート樹脂成形品は、優れた外観性と衝撃強度を兼ね備え、電気・電子分野、自動車分野、雑貨分野等において好適に用いることができることが分かる。

Claims (7)

  1. (A)下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、
    (B)シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2015134864
  2. 熱可塑性樹脂組成物中、ポリカーボネート樹脂(A)およびシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体(B)の構成重量比率が95/5〜5/95の範囲である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 熱可塑性樹脂組成物中、ポリカーボネート樹脂(A)およびシリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体(B)の合計重量が熱可塑性樹脂組成物全体の重量の50%以上である請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記ポリカーボネート樹脂(A)が、下記式(2)〜(5)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位よりなる群から選ばれる何れかの構造単位を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
    HO−R−OH (2)
    (式(2)中、Rは炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
    HO−CH−R−CH−OH (3)
    (式(3)中、Rは炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
    H−(O−R−OH (4)
    (式(4)中、Rは炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルキレン基を表し、pは2〜100の整数である。)
    HO−R−OH (5)
    (式(5)中、Rは炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基、又は置換若しくは無置換のアセタール環を有する基を表す。)
  5. 前記ポリカーボネート樹脂(A)の造単位(1)とジヒドロキシ化合物(2)〜(5)に由来する構造単位とのモル比率(モル%)が20:80〜99:1の範囲である請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. シリコン−アクリル複合ゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(B)の荷重たわみ温度(℃)が、60℃〜120℃である請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
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