JP2015134778A - 抗ヒトlat1モノクローナル抗体及び前立腺がんの悪性度判定キット - Google Patents
抗ヒトlat1モノクローナル抗体及び前立腺がんの悪性度判定キット Download PDFInfo
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Abstract
【課題】Gleasons分類、TMN分類に加え、新たな診断法である分子マーカーの手法を提供すると共に、手術時に摘出した材料でなく細胞針検査で採取した材料を用いた場合でも、前立腺がんの悪性度がより高精度かつ容易に判定することにより、前立腺がんの悪性度を判定(診断)して患者の予後を予測するための判定キット及び判定法の提供。
【解決手段】手術前の早期段階において生検材料を用いて、Gleasons分類と新たな診断法である抗LAT1モノクロナール抗体を用いる分子マーカーの手法との組み合せ。
【選択図】なし
【解決手段】手術前の早期段階において生検材料を用いて、Gleasons分類と新たな診断法である抗LAT1モノクロナール抗体を用いる分子マーカーの手法との組み合せ。
【選択図】なし
Description
本発明は、抗ヒトLAT1モノクローナル抗体及び前立腺がんの悪性度を判定(診断)して患者の予後を予測するための判定キットに関する。
LAT1遺伝子はがん胎児性の遺伝子であり、1998年に金井らによって単離された(Kanai,Y., Segawa,H., Miyamoto,K., Uchino,H., Takeda,E., Endou,H. : Expression Cloning and Characterization of a Transporter for Large Neutral Amino Acids Activated by the Heavy Chain of 4F2 Antigen. J.Biol.Chem 273(37): 23629-23632, 1998)。LAT1遺伝子はL型アミノ酸トランスポーターの機能を有する44KDの12回膜貫通型タンパク質をコードしており、1回膜貫通型タンパクの4F2hc(CD98とも言う)との共存下に、ロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、ヒスチジン等の大型の中性アミノ酸をNa+非依存的に輸送する古典的な輸送系Lの活性を示す。LAT1と4F2hcタンパクはシステイン-システイン結合により結合していると考えられる。LAT1遺伝子はがん由来の培養細胞、胎児肝に高い発現を認めるが、正常組織では脳、胎盤、精巣、骨髄などの限られた部位にのみ発現している(Yanagida,O.,Kanai,Y.,Chairoungdua,A.,Kim,D,Kyung.,Segawa,H.,Nii,T.,Cha,S,Ho., Matsuo,H., Fukushima,J.,Fukasawa,Y.,Tani,Y.,Taketani,Y.,Uchino,H., Kim,J,Young.,Inatomi,J., Okayasu,I.,Miyamoto,K.,Takeda,E.,Goya,T.,Endou,H.: Human L-type amino acid transporter 1 (LAT1):characterization of function and ezpression in tumor cell lines.Biochimica et Biophysica Acta 1514: 291-302, 2001)。これに対して4F2hc遺伝子は正常組織の殆ど全てとがん由来細胞などに広範囲に分布している。
LAT1のホモログであるLAT2(Segawa,H.,Fukasawa,Y.,Miyamoto,K.,Takeda,E.,Endou,H.,Kanai,Y.: Identification and Functional Characterization of a Na+independent Neutral Amino Acid Transporter with Broad Substrate Selectivity. J.Biol.Chem 274(28): 19745-19751, 1999)はLAT1タンパクと50%アミノ酸の相同性を有しており、LAT2遺伝子のヒト組織分布は調べた全てに存在していた。従って、LAT1はがん胎児性、LAT2は正常型の夫々L型アミノ酸トランスポーターと言える。LATの活性化因子である4F2hcはがんと正常の区別なく、殆ど全ての組織に分布している。
ところで、前立腺がんは世界的にみて、発症頻度の高いがんであり、アメリカにおいては男性のがんの中で羅患率は1位、死亡率は2位である。日本においても、前立腺がん患者数は近年増加傾向にあり、1975年に年間2千人程度だった患者数が、2000年には約2万人と報告されており、2020年には約8万人となり、肺がんに次いで男性のがんのうちで羅患率が第2位になると予想されている。また、前立腺がんによる死亡数は、2020年には現在の1.4倍になると予測されており、アメリカにおいては、死亡率第1位になると予想されている(日本臨床増刊号60;44-48、2002;前立腺疾患の臨床)。
前立腺がんの診断法として、血中PSA値が早期発見、スクリーニング方法として、有名であり、汎用されているが、がんに特異的ではなく、前立腺肥大や前立腺炎でも上昇することが知られている。また、近年では血中PSAは単に前立腺の大きさに比例しているのみであるという報告もなされている。通常、血中PSA値の高値が確認されると直腸診により、前立腺の大きさ、硬さなどを確認する。上述した検査によって前立腺がんが濃厚に疑われた場合には生検を採取し、ヘマトキシリン・エオジン染色により、組織病理学的診断を行う。この診断では、細胞の状態を異型度、分化度などにより診断し、その悪性の度合いを判断する。組織病理学的診断のなかでもGleasons分類は、前立腺がん特有の異型度分類であり、異型度の度合いによりスコア1〜5の5段階に分類する方法であり、近年、治療方法の決定に大きな影響を与える診断法となっている。
手術時に摘出した材料を用いた診断としては、TMN分類(T:原発腫瘍、N:リンパ節転移、M:遠隔転移)による診断が有効とされている。
これらの診断法、特にGleasons分類は、前立腺がんの予後判定方法として広く利用されており、予後との関連も報告されているが、関連分野においては、さらに精度の高い診断と治療を目指すためにGleasons分類、TMN分類に加えた新たな診断法、特に分子マーカーの出現が心待ちされている現状である。加えて、TMN分類等は、前述のように手術時に摘出した材料を用いる診断法であるため、早期にがんの悪性度を診断することは難しい。
特開平11−299489号公報
特開2000−157286号公報
そこで、本発明は、Gleasons分類、TMN分類に加え、新たな診断法である分子マーカーの手法を提供すると共に、手術前の早期段階において生検材料を用いてGleasons分類と組み合わせることによって、手術時に摘出した材料でなく細胞針検査で採取した材料を用いた場合でも、前立腺がんの悪性度がより高精度かつ容易に判定可能な手段を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは、がん由来の培養細胞、胎児肝に特異的に発現するアミノ酸トランスポーターLATlにまず着目した。そして、当該LAT1を分子マーカーとし、当該LAT1を顕在化させる各種手法を検討したところ、ある手法が、細胞針検査により採取したサンプルを用いた場合において、前立腺がん細胞の悪性度の判定に特異的に有効であることを発見し、本発明を完成させるに至ったものである。
本発明(1)は、抗ヒトLAT1モノクローナル抗体を含む、免疫組織化学染色による前立腺がんの悪性度判定用キットである。ここで、当該抗ヒトLAT1モノクローナル抗体は、LAT1を特異的に認識できる抗体である限り特に限定されず、例えば、ヒトLAT1の細胞内領域のN末端部位から1〜52位のアミノ酸残基(Met Ala Gly Ala Gly Pro Lys Arg Arg Ala Leu Ala Ala Pro Ala Ala Glu Glu Lys Glu Glu Ala Arg Glu Lys Met Leu Ala Ala Lys Ser Ala Asp Gly Ser Ala Pro Ala Gly Glu Gly Glu Gly Val Thr Leu Gln Arg Asn Ile Thr Leu)を特異的に認識する抗体(例えばヒトLAT1マウスモノクローナル抗体)を挙げることができる。尚、ヒトLAT1のアミノ酸配列及び塩基配列は、特開2000−157286号公報に記載されている。加えて、本明細書における「悪性度」については、がんが原因で患者が死に追いやられるがんを悪性度が高いがんとし、がんと診断されてもがんが直接原因で死に至らないがんを悪性度の低いがんとする。
ここで、抗ヒトLAT1モノクローナル抗体は、LAT1を抗原とし、当該抗原に結合する限り特に制限はなく、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヒツジ抗体等を適宜用いることができる。
また、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、所望の抗原や所望の抗原を発現する細胞を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞(ハイブリドーマ)をスクリーニングすることによって作製できる。ハイブリドーマの作製は、たとえば、ミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C., Methods Enzymol. (1981) 73: 3-46 )等に準じて行うことができる。そして、抗ヒトLAT1モノクローナル抗体を作製する際には、LAT1若しくは当該タンパク質の断片を抗原として使用することができ、また、LAT1若しくは当該タンパク質の断片を発現する細胞を抗原として使用することができる。なお、LAT1若しくは当該タンパク質の断片は、例えば、Molecuar Cloning: A Laboratory Manual第2版第1−3巻 Sambrook, J.ら著、Cold Spring Harber Laboratory Press出版New York 1989年に記載された方法に準じて、取得することができる。また、LAT1若しくは当該タンパク質の断片を発現する細胞も、Molecuar Cloning: A Laboratory Manual第2版第1−3巻 Sambrook, J.ら著、Cold Spring Harber Laboratory Press出版New York 1989年に記載された方法に準じて、取得することができる。
当該キットは、例えば、他に次の構成要素を含んでいてもよい。
(1)抗ヒトLAT1モノクローナル抗体に対するペルオキシダーゼで標識された抗体
(2)内因性のペルオキシダーゼを阻害する過酸化物(ペルオキシド)
(3)酸化により発色する酸化還元色素
(4)抗原タンパク(LAT1)と抗体が結合しやすくするための賦活化試薬
(5)組織中のLAT1以外のタンパクと抗体との非特異的な結合を阻害するブロッキング試薬
(6)各ステップにおいて標本に付着した試薬を取り除くための洗浄剤
(2)内因性のペルオキシダーゼを阻害する過酸化物(ペルオキシド)
(3)酸化により発色する酸化還元色素
(4)抗原タンパク(LAT1)と抗体が結合しやすくするための賦活化試薬
(5)組織中のLAT1以外のタンパクと抗体との非特異的な結合を阻害するブロッキング試薬
(6)各ステップにおいて標本に付着した試薬を取り除くための洗浄剤
ここで、(3)の酸化還元色素に関しては、強度測定が可能な信号は多々ある(例えば蛍光)が、可視光領域での変色確認ができることが重要である。これは、理由は定かでないが、他の信号の場合、本発明に係る抗ヒトLAT1モノクローナル抗体を用いても、悪性の前立腺がんと良性の前立腺がんとの区別が明確にできないからである。他方、本発明に係る抗ヒトLAT1モノクローナル抗体を用いつつ、可視光領域での変色確認ができる試薬と組み合わせることにより(免疫組織化学染色)、悪性の前立腺がんと良性の前立腺がんとの区別が明確にできるようになる。
本発明(2)は、検体組織に抗ヒトLAT1モノクローナル抗体を適用する工程を含む、免疫組織化学染色による前立腺がんの悪性度判定方法である。
ここで、当該方法は、他に次の工程のいずれか又はすべてを含んでいてもよい。
・検体組織に過酸化物を適用する工程
・賦活化試薬に検体組織を浸漬し、マイクロウエーブ処理を施す工程
・ブロッキング試薬を検体組織に適用する工程
・抗ヒトLAT1モノクローナル抗体に対する標識化抗体を適用する工程
・酸化により発色する酸化還元色素を適用する工程
・場合により、一次抗体陰性コントロールを検体組織に適用する工程
・検体組織に過酸化物を適用する工程
・賦活化試薬に検体組織を浸漬し、マイクロウエーブ処理を施す工程
・ブロッキング試薬を検体組織に適用する工程
・抗ヒトLAT1モノクローナル抗体に対する標識化抗体を適用する工程
・酸化により発色する酸化還元色素を適用する工程
・場合により、一次抗体陰性コントロールを検体組織に適用する工程
本発明(3)は、前記発明(2)の方法により前立腺がんの悪性度を判定する工程と、前記診断結果に基づき、前立腺治療薬を投与するか否かを決定する工程を含む、LAT1分子標的治療薬の適用前立腺がん症例の鑑別方法である。
本最良形態に係る診断薬は、前立腺がん細胞の鑑別及びがん細胞の増殖度合(悪性度)を診断する体外診断用の試薬キットである。本キットは、反応主薬である一次抗体を含めて、6種の試薬類で構成される。測定原理について略述すると、がん細胞に発現するLAT1は507個のアミノ酸残基を保有し、細胞の増殖に必要な必須アミノ酸の細胞膜輸送能を有する細胞膜の12回貫通型の機能性タンパク質である。本最良形態に係る診断法に使用している一次抗体(抗ヒト・マウスモノクローナルIgG抗体)は、LAT1の細胞内領域のN末端部位から1〜52位のアミノ酸残基を特異的に認識する抗体である。尚、本配列について、ヒトの遺伝子中で同じ配列を有するタンパクは、NCBIデータベースで検索した結果では、LAT1以外には認められない。
本発明に係る診断薬の対象検査標本は、前立腺がん生検材料のホルマリン固定パラフィン包埋標本の組織切片である。検出法手順としては、通常の病理診断に供与されているホルマリン固定パラフィン包埋した病理組織標本を用いて、一般的な免疫組織化学的手法で行われる。即ち、パラフィン包埋した標本と本抗体を反応後、ポリマー試薬(二次抗体)及び染色試薬を用いて染色し、光学顕微鏡で観察する(図1)。尚、図1中、染色されている部位が、悪性のがん細胞である。検出の原理を説明すれば、細胞膜に発現しているLAT1に抗LAT1抗体(一次抗体)が結合し、さらにポリマー試薬と複合体を形成する。さらにポリマー試薬のHRPが発色試薬と反応し、褐色を呈する。本抗体のLAT1との親和性は極めて強く、本法を用いた場合、その高感度検出及び選択性は初期のがん細胞(LAT1の初期発現)から進行がん細胞(LAT1過剰発現)までの癌の鑑別並びにLAT1の発現量を半定量的に識別することが可能であり、その応用結果として腫瘍の進行度合(悪性度)を評価することができる。
《製造例1 一次抗体の製造例》
一次抗体には、抗ヒトL-タイプアミノ酸トランスポーター1(hLAT1)マウスモノクローナル抗体をタンパク量として2μg/mL含有する。当該抗体は、in vitro translation法によりhLAT1クローニングベクターより合成したhLAT1の1-52位のタンパクを抗原としてBALB/cマウスに免疫し、その脾臓細胞とマウス骨髄腫細胞を融合させて得たハイブリドーマをマウス腹腔内に接種、得られた腹水より、硫安分画法及びProtein Gカップリングカラムクロマトグラフィーにより精製し、1%ウシ血清アルブミンを含む10mM PBS(pH7.4)に溶解したものである。なお、LAT1のアミノ酸配列及び当該タンパク質をコードする塩基配列は、特開2000−157286号公報に記載されている。
一次抗体には、抗ヒトL-タイプアミノ酸トランスポーター1(hLAT1)マウスモノクローナル抗体をタンパク量として2μg/mL含有する。当該抗体は、in vitro translation法によりhLAT1クローニングベクターより合成したhLAT1の1-52位のタンパクを抗原としてBALB/cマウスに免疫し、その脾臓細胞とマウス骨髄腫細胞を融合させて得たハイブリドーマをマウス腹腔内に接種、得られた腹水より、硫安分画法及びProtein Gカップリングカラムクロマトグラフィーにより精製し、1%ウシ血清アルブミンを含む10mM PBS(pH7.4)に溶解したものである。なお、LAT1のアミノ酸配列及び当該タンパク質をコードする塩基配列は、特開2000−157286号公報に記載されている。
《製造例2 判定キットの構成例》
本製造例に係る判定キットは、以下の6種類の試薬から構成される。
・ブロッキング試薬
正常ブタ血清を2%に希釈して調製する。
・一次抗体
抗LAT1マウスモノクローナル抗体(製造例1)を緩衝液(1%BSA、0.25% Casein sodium、15mM sodium Azide、0.1% Tween 20)で2μg/mLに希釈して調製する。
・ポリマー試薬
ニチレイ ヒストファイン シンプルステイン MAX-PO(M)(商標)を用いる。尚、当該試薬は、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgGヤギポリクローナル抗体(Fab’)を4 μg/mL含有している。
・一次抗体陰性コントロール
マウスIgG(Vector Laboratories)を上記緩衝液で溶解し、2μg/mLとする。
・基質緩衝液
Tris[hydroxyl methyl]amino methane及びTris[hydroxyl methyl]amino methane chlorideを精製水で希釈し、調製する。
・発色基質
DAB(3-3’Diaminobendine tetrahydrochloride)を緩衝液(上記の基質緩衝液)で溶解し、0.2mg/mLとする。
本製造例に係る判定キットは、以下の6種類の試薬から構成される。
・ブロッキング試薬
正常ブタ血清を2%に希釈して調製する。
・一次抗体
抗LAT1マウスモノクローナル抗体(製造例1)を緩衝液(1%BSA、0.25% Casein sodium、15mM sodium Azide、0.1% Tween 20)で2μg/mLに希釈して調製する。
・ポリマー試薬
ニチレイ ヒストファイン シンプルステイン MAX-PO(M)(商標)を用いる。尚、当該試薬は、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgGヤギポリクローナル抗体(Fab’)を4 μg/mL含有している。
・一次抗体陰性コントロール
マウスIgG(Vector Laboratories)を上記緩衝液で溶解し、2μg/mLとする。
・基質緩衝液
Tris[hydroxyl methyl]amino methane及びTris[hydroxyl methyl]amino methane chlorideを精製水で希釈し、調製する。
・発色基質
DAB(3-3’Diaminobendine tetrahydrochloride)を緩衝液(上記の基質緩衝液)で溶解し、0.2mg/mLとする。
更に、本製造例に係る判定キットは、染色で用いる以下の試薬を含んでいてもよい。
・内因性ペルオキシダーゼブロッキング試薬:1%H2O2/メタノール
過酸化水素水をメタノールで希釈し、1%とする。
・賦活化試薬:0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)
クエン酸一水和物(0.36g)、クエン酸三ナトリウム二水和物(2.44g)を精製水に溶解し、1Lに調製する。
・洗浄液:PBS
リン酸水素二ナトリウム12水和物(2.90g)、リン酸二水素ナトリウム二水和物(0.296g)、塩化ナトリウム(8.5g)を精製水に溶解し、1Lに調整する。
過酸化水素水をメタノールで希釈し、1%とする。
・賦活化試薬:0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)
クエン酸一水和物(0.36g)、クエン酸三ナトリウム二水和物(2.44g)を精製水に溶解し、1Lに調製する。
・洗浄液:PBS
リン酸水素二ナトリウム12水和物(2.90g)、リン酸二水素ナトリウム二水和物(0.296g)、塩化ナトリウム(8.5g)を精製水に溶解し、1Lに調整する。
《操作方法及び判定方法》
1.操作方法
表2に操作手法の概要に示す。
1−1.用手法による操作方法
検体組織スライドを脱パラフィン後、染色バット中で内因性ペルオキシダーゼブロッキング試薬に浸漬し、室温で30分間処理後、水洗する。標本の余分な水分を取り除き、賦活化試薬に浸漬し、5分間マイクロウェーブ処理する。処理後室温まで十分に冷却した後、水洗し、さらに洗浄液で洗浄する。標本の余分な水分を取り除き、ブロッキング試薬を組織切片に満遍なくいきわたる十分量滴下し、湿潤箱中で、室温30分間反応させる。標本の余分な水分を取り除き、一次抗体を十分量滴下し、湿潤箱中で室温1時間反応させた後、洗浄液で洗浄する(5分間、3回)。陰性コントロール用検体組織スライドには、一次抗体の代わりに一次抗体陰性コントロールを十分量滴下し、同様に処理する。標本の余分な水分を取り除き、ポリマー試薬を十分量滴下し、湿潤箱中で室温30分間反応させ、洗浄液で洗浄する(5分間3回)。標本の余分な水分を取り除き、検体に基質溶液を所定量滴下もしくは浸漬し、湿潤箱中、もしくは染色つぼ中で室温15分間反応させた後、洗浄液で洗浄する。標本を対比染色液(例:マイヤーのヘマトキシリン液)で染色した後、水洗する。アルコール系列で脱水して、キシレンで置換後、封入して鏡検に用いる。
1.操作方法
表2に操作手法の概要に示す。
検体組織スライドを脱パラフィン後、染色バット中で内因性ペルオキシダーゼブロッキング試薬に浸漬し、室温で30分間処理後、水洗する。標本の余分な水分を取り除き、賦活化試薬に浸漬し、5分間マイクロウェーブ処理する。処理後室温まで十分に冷却した後、水洗し、さらに洗浄液で洗浄する。標本の余分な水分を取り除き、ブロッキング試薬を組織切片に満遍なくいきわたる十分量滴下し、湿潤箱中で、室温30分間反応させる。標本の余分な水分を取り除き、一次抗体を十分量滴下し、湿潤箱中で室温1時間反応させた後、洗浄液で洗浄する(5分間、3回)。陰性コントロール用検体組織スライドには、一次抗体の代わりに一次抗体陰性コントロールを十分量滴下し、同様に処理する。標本の余分な水分を取り除き、ポリマー試薬を十分量滴下し、湿潤箱中で室温30分間反応させ、洗浄液で洗浄する(5分間3回)。標本の余分な水分を取り除き、検体に基質溶液を所定量滴下もしくは浸漬し、湿潤箱中、もしくは染色つぼ中で室温15分間反応させた後、洗浄液で洗浄する。標本を対比染色液(例:マイヤーのヘマトキシリン液)で染色した後、水洗する。アルコール系列で脱水して、キシレンで置換後、封入して鏡検に用いる。
1−2.自動免疫染色装置による操作方法
検体組織スライド、ブロッキング試薬、一次抗体、一次抗体陰性コントロール、ポリマー試薬、基質溶液、精製水、洗浄液、対比染色液を機器の所定の位置に設置し、それぞれの試薬を所定時間、室温、湿潤状態で反応させる。検体の水分をアルコール、次いでキシレンで置換後、封入して鏡検に用いる。
検体組織スライド、ブロッキング試薬、一次抗体、一次抗体陰性コントロール、ポリマー試薬、基質溶液、精製水、洗浄液、対比染色液を機器の所定の位置に設置し、それぞれの試薬を所定時間、室温、湿潤状態で反応させる。検体の水分をアルコール、次いでキシレンで置換後、封入して鏡検に用いる。
2.判定法
観察は低倍率(対物4倍)で全体の染色状態を確認した後、検体組織中の腫瘍組織の中で、もっとも染色強度の高い部分について高倍率(対物10倍〜40倍)で行い、以下の基準に従ってスコア化する(図2)。
観察は低倍率(対物4倍)で全体の染色状態を確認した後、検体組織中の腫瘍組織の中で、もっとも染色強度の高い部分について高倍率(対物10倍〜40倍)で行い、以下の基準に従ってスコア化する(図2)。
a) スコア0
LAT1過剰発現:なし
染色パターン:腫瘍組織中の細胞膜にLAT1陽性を呈している細胞が認められない(図2a)。
b) スコア1
LAT1過剰発現:なし
染色パターン:腫瘍組織中の細胞膜にLAT1陽性を呈している細胞が複数個存在するが、染色強度が弱い(図2b)。
c) スコア2
LAT1過剰発現:なし
染色パターン:腫瘍組織中の細胞膜に中程度のLAT1陽性を呈している細胞が複数個存在する。染色強度はスコア1とスコア3の中間(図2c)。
d) スコア3
LAT1過剰発現:あり
染色パターン:腫瘍組織中の細胞膜に強度のLAT1陽性を呈している細胞が複数個存在し、それぞれの腫瘍細胞の細胞膜全体に鮮明なワイヤーループ状な染色が認められる(図2d)。
LAT1過剰発現:なし
染色パターン:腫瘍組織中の細胞膜にLAT1陽性を呈している細胞が認められない(図2a)。
b) スコア1
LAT1過剰発現:なし
染色パターン:腫瘍組織中の細胞膜にLAT1陽性を呈している細胞が複数個存在するが、染色強度が弱い(図2b)。
c) スコア2
LAT1過剰発現:なし
染色パターン:腫瘍組織中の細胞膜に中程度のLAT1陽性を呈している細胞が複数個存在する。染色強度はスコア1とスコア3の中間(図2c)。
d) スコア3
LAT1過剰発現:あり
染色パターン:腫瘍組織中の細胞膜に強度のLAT1陽性を呈している細胞が複数個存在し、それぞれの腫瘍細胞の細胞膜全体に鮮明なワイヤーループ状な染色が認められる(図2d)。
《試験例1 品質確認試験》
判定キットの品質を確認するためコントロールスライド(LAT1タンパク過剰発現を示す前立腺がん由来培養細胞、PC3株)について、以下の方法に基づいてa)特異性試験、b)感度試験及びc)同時再現性試験を行った。尚、本試験例を含む以後の試験例においては、基本的には、上述した《製造例2》及び《判定法》に記載の条件で実施したが、これらと異なる条件で実施した点に関しては別途特記した。
判定キットの品質を確認するためコントロールスライド(LAT1タンパク過剰発現を示す前立腺がん由来培養細胞、PC3株)について、以下の方法に基づいてa)特異性試験、b)感度試験及びc)同時再現性試験を行った。尚、本試験例を含む以後の試験例においては、基本的には、上述した《製造例2》及び《判定法》に記載の条件で実施したが、これらと異なる条件で実施した点に関しては別途特記した。
a)特異性試験
製造例2に係る判定キットを用いて、コントロールスライド(前立腺がん由来培養細胞PC3のパラフィン切片標本)を上記「操作方法」に従い染色し、判定キット中の一次抗体と一次抗体陰性コントロールの染色結果を比較・検討した。染色結果は、上記「判定法」の基準に基づき、スコア0〜スコア3でスコア化した(表3)。いずれの試験検体キットにおいても、コントロールスライドの結果にスコア3が得られた(図3)。
製造例2に係る判定キットを用いて、コントロールスライド(前立腺がん由来培養細胞PC3のパラフィン切片標本)を上記「操作方法」に従い染色し、判定キット中の一次抗体と一次抗体陰性コントロールの染色結果を比較・検討した。染色結果は、上記「判定法」の基準に基づき、スコア0〜スコア3でスコア化した(表3)。いずれの試験検体キットにおいても、コントロールスライドの結果にスコア3が得られた(図3)。
以上の結果より、一次抗体を使用した場合、それぞれの試験対照病理組織標本のLAT1タンパク発現に対応した特異染色像が観察され、試験検体の染色態度に問題がないと判断した。
b)感度試験
製造例2に係る判定キットを用いて、判定キット中の一次抗体を比較対照として、試験検体キット中の一次抗体溶液を抗体希釈液で8倍希釈したものを用いて、管理検体スライド及びコントロールスライドを上記「操作方法」に従い染色し、試験検体キット中の一次抗体と一次抗体を8倍希釈したものを用いて染色し、結果を比較・検討した。染色結果は、上記「判定法」の基準に基づき、スコア0〜スコア3でスコア化した(表4、表5)。所定濃度の一次抗体溶液を使用した場合、コントロールスライドの細胞膜にはスコア3の染色強度が認められたが、所定濃度の一次抗体を抗体希釈液で8倍希釈したものを使用した場合、コントロールスライドの細胞膜の染色強度はスコア1に減退した(図4)。
製造例2に係る判定キットを用いて、判定キット中の一次抗体を比較対照として、試験検体キット中の一次抗体溶液を抗体希釈液で8倍希釈したものを用いて、管理検体スライド及びコントロールスライドを上記「操作方法」に従い染色し、試験検体キット中の一次抗体と一次抗体を8倍希釈したものを用いて染色し、結果を比較・検討した。染色結果は、上記「判定法」の基準に基づき、スコア0〜スコア3でスコア化した(表4、表5)。所定濃度の一次抗体溶液を使用した場合、コントロールスライドの細胞膜にはスコア3の染色強度が認められたが、所定濃度の一次抗体を抗体希釈液で8倍希釈したものを使用した場合、コントロールスライドの細胞膜の染色強度はスコア1に減退した(図4)。
以上の結果より、キット構成品である所定濃度の一次抗体を使用した場合は、コントロールスライド共にスコア3であった一方、所定濃度の一次抗体を8倍希釈した場合においては、LAT1スコアが下がることが確認されたことから、本キットには病理組織標本中のLAT1タンパク発現の有無が判定可能な感度範囲があることが確認された。
c)同時再現性試験
製造例2に係る判定キットを用いて、管理用検体組織スライドとコントロールスライドそれぞれ3枚ずつを上記「操作方法」に従い同時に染色し、染色結果を比較・検討した。染色結果は、「判定法」の基準に基づき、スコア0〜スコア3でスコア化した(表6)。3枚のコントロールスライドはいずれも同様な染色態度を示し、同様のスコアであった(図5)。
製造例2に係る判定キットを用いて、管理用検体組織スライドとコントロールスライドそれぞれ3枚ずつを上記「操作方法」に従い同時に染色し、染色結果を比較・検討した。染色結果は、「判定法」の基準に基づき、スコア0〜スコア3でスコア化した(表6)。3枚のコントロールスライドはいずれも同様な染色態度を示し、同様のスコアであった(図5)。
上記結果より、同一コントロールスライド3枚を同時に染色した場合、3ロットいずれのキットにおいても明らかな特異的な染色が認められ、スコアも同様であったことから、同時再現性及びロット間の差に問題はないと判断した。
《試験例2 がん組織標本及び培養細胞標本を用いた染色性の確認試験》
製造例2に係る判定キットを用いて、今回の標的臓器である前立腺がん由来の培養細胞PC3株及び前立腺がんの生検材料標本(いずれもホルマリン固定、パラフィン包埋の切片標本)での染色性の確認試験を行った。尚、参考までに、LAT1が高発現していることが知られている大腸がんの手術摘出材料についても確認試験を行った。なお、本試験例は、基本的には、上述した《製造例2》及び《判定法》に記載の条件で実施したが、一次抗体の濃度のみ以下の表7に示す条件で試験を行った。
製造例2に係る判定キットを用いて、今回の標的臓器である前立腺がん由来の培養細胞PC3株及び前立腺がんの生検材料標本(いずれもホルマリン固定、パラフィン包埋の切片標本)での染色性の確認試験を行った。尚、参考までに、LAT1が高発現していることが知られている大腸がんの手術摘出材料についても確認試験を行った。なお、本試験例は、基本的には、上述した《製造例2》及び《判定法》に記載の条件で実施したが、一次抗体の濃度のみ以下の表7に示す条件で試験を行った。
表9及び図6に結果を示す。
上記の結果により、いずれの標本においても、がん細胞膜にワイヤーループ状の強い染色が認められ、本抗体を用いた免疫組織化学染色によって、がん細胞におけるLAT1の高発現を観察できることが確認された。
《試験例3 臨床試験》
次に、臨床医学的見地からの証明が必要と考え、本テストの開発を試みた。前立腺がんの手術を受けた症例について、手術前に採取した生検標本を用いてLAT1の免疫組織化学染色を行った。
次に、臨床医学的見地からの証明が必要と考え、本テストの開発を試みた。前立腺がんの手術を受けた症例について、手術前に採取した生検標本を用いてLAT1の免疫組織化学染色を行った。
生検採取した後に、ホルマリン固定され、パラフィン包埋ブロックとして保存されていた生検標本から作製された薄切標本を、製造例2に係る判定キットを用いてで染色し、最終的には茶色のベンジジン染色像の強さ(スコア0〜3)で評価した。これら全症例について、スコア0〜3の4群に分けて、縦軸に生存率、横軸に経過期間(月数)をプロットするKaplan-Meierの方法により統計解析を行った。その結果、満5年までの生存率を指標にしたがんの悪性度はスコア0の症例群とスコア3の症例群の間で有意の差が認められた。また、スコア1、2については有意差こそ認められなかったが、それぞれスコアに依存した生存率を示した。従って、本法をがんの悪性度診断における新技術として用いる事が可能になった。
更に将来的にLAT1タンパクの特異的な抗体医薬品が開発される場合、並びにLAT1/4F2hc機能の特異的な抑制薬(低分子化合物)が見出される場合、これらの相手(標的分子)となるLAT1の存在を定量化することは、治療薬の適応症例の判別にとっての有用性が示唆される。
1)実施施設及び症例数
実施施設は実施機関Aと実施機関Bの二施設であり、その症例数の内訳は下表のとおりである。それぞれの施設より、別個に症例を抽出し、試験に供した。
実施施設は実施機関Aと実施機関Bの二施設であり、その症例数の内訳は下表のとおりである。それぞれの施設より、別個に症例を抽出し、試験に供した。
2)使用組織
細胞針検査により採取された前立腺がん生検材料のホルマリン固定・パラフィン包埋標本
細胞針検査により採取された前立腺がん生検材料のホルマリン固定・パラフィン包埋標本
3)方法
試験実施施設2施設において、前立腺がんと診断されて1982年〜2000年の間に細胞針検査により採取され、保存されているホルマリン固定・パラフィン包埋病理組織標本のうち、病理組織学的診断によってstageII〜stageIVとされた症例を無作為に抽出し、本キットを用いて、上記「操作方法」により、免疫組織化学染色を実施した。染色結果は上記「判定法」に従って観察、スコア化し、染色結果(LAT1スコア)と5年生存率の関連性についてKaplan-Meierの方法を用いて解析した。
試験実施施設2施設において、前立腺がんと診断されて1982年〜2000年の間に細胞針検査により採取され、保存されているホルマリン固定・パラフィン包埋病理組織標本のうち、病理組織学的診断によってstageII〜stageIVとされた症例を無作為に抽出し、本キットを用いて、上記「操作方法」により、免疫組織化学染色を実施した。染色結果は上記「判定法」に従って観察、スコア化し、染色結果(LAT1スコア)と5年生存率の関連性についてKaplan-Meierの方法を用いて解析した。
(3)結果
1)症例数と染色結果の内訳
前立腺がんと診断された症例について、製造例2に係る判定キットを用いて、腫瘍細胞におけるLAT1タンパクの発現を免疫組織化学染色により調査したところ、症例により、スコア0〜3までの染色が認められた。両施設におけるLAT1スコアの内訳を以下の表に示す。尚、全症例の結果を、スコア別に分類すると、実施機関A及びBともに、スコア0の症例が最も多く、スコア3症例は少ない傾向にあった。また、その染色態度もほぼ同様であり、製造例2に係る判定キットによる染色に施設間誤差はないと判断した。
1)症例数と染色結果の内訳
前立腺がんと診断された症例について、製造例2に係る判定キットを用いて、腫瘍細胞におけるLAT1タンパクの発現を免疫組織化学染色により調査したところ、症例により、スコア0〜3までの染色が認められた。両施設におけるLAT1スコアの内訳を以下の表に示す。尚、全症例の結果を、スコア別に分類すると、実施機関A及びBともに、スコア0の症例が最も多く、スコア3症例は少ない傾向にあった。また、その染色態度もほぼ同様であり、製造例2に係る判定キットによる染色に施設間誤差はないと判断した。
2)Kaplan-Meire法を用いたLAT1スコアにおける生存分析
1)の症例について、両施設の結果を統合し、腫瘍細胞におけるLAT1タンパクの発現度合い(LAT1スコア)と症例患者の生存期間との関係をKaplan-Meierの方法(ノンパラメトリック法)を用いて生存分析を行った結果、LAT1高発現(LAT1スコア3)と低発現群(LAT1スコア0〜2)の間に有意な差が認められた。具体的には、スコア3とスコア0の間でP<0.001の結果を得た。これらの結果から、LAT1スコア3においては、約半数例が5年以内に死亡に転帰しており、スコア0の症例群との間に有意差が認められた(図7)。
1)の症例について、両施設の結果を統合し、腫瘍細胞におけるLAT1タンパクの発現度合い(LAT1スコア)と症例患者の生存期間との関係をKaplan-Meierの方法(ノンパラメトリック法)を用いて生存分析を行った結果、LAT1高発現(LAT1スコア3)と低発現群(LAT1スコア0〜2)の間に有意な差が認められた。具体的には、スコア3とスコア0の間でP<0.001の結果を得た。これらの結果から、LAT1スコア3においては、約半数例が5年以内に死亡に転帰しており、スコア0の症例群との間に有意差が認められた(図7)。
3)スニークロープの方法を用いたLAT1スコアの変換解析
1)の全症例について、染色の強さに加え、染色範囲を3段階に分けて観察し、focal(10%以下)、partial(10〜30%)、diffuse(30%以上)と分類した。それぞれの観察結果について、スニークロープの方法に基づいてLAT1スコアに染色範囲に応じた係数(focalは1、partialは2、diffuseは3)を乗じ、LAT1スコアを変換した(図8)。それらの変換したLAT1スコアについて、2)と同様にKaplan-Meierの方法を用いて生存分析を行った結果、LAT1スコアと生存期間の間により明確な差が認められた。この結果から、スコア4以上において、スコア0との間に有意な差が認められ、特にスコア6以上の症例では、90%が5年以内に死亡に転帰した。このように、LAT1スコアの強度に発現範囲係数(focal=1、partial=2、diffuse=3)を乗じて変換したLAT1スコア(0〜9)を用いた生存分析を行うことにより、さらに精度の高い診断が可能になることが示唆された。
1)の全症例について、染色の強さに加え、染色範囲を3段階に分けて観察し、focal(10%以下)、partial(10〜30%)、diffuse(30%以上)と分類した。それぞれの観察結果について、スニークロープの方法に基づいてLAT1スコアに染色範囲に応じた係数(focalは1、partialは2、diffuseは3)を乗じ、LAT1スコアを変換した(図8)。それらの変換したLAT1スコアについて、2)と同様にKaplan-Meierの方法を用いて生存分析を行った結果、LAT1スコアと生存期間の間により明確な差が認められた。この結果から、スコア4以上において、スコア0との間に有意な差が認められ、特にスコア6以上の症例では、90%が5年以内に死亡に転帰した。このように、LAT1スコアの強度に発現範囲係数(focal=1、partial=2、diffuse=3)を乗じて変換したLAT1スコア(0〜9)を用いた生存分析を行うことにより、さらに精度の高い診断が可能になることが示唆された。
(3)PSAとの比較
同様の症例について、前立腺がんの特異マーカーとして知られているPSAとの比較を行った。今回用いた171症例のうち、手術直前のPSA値が記録されていた127症例について、PSA値4ng/mLと10ng/mLをカットオフ値として、Kaplan-Meireの方法を用いて生存解析を行って、LAT1スコアによる結果と比較した。いずれのカットオフ値においても、PSA値では、低発現群と高発現群の間に有差は認められなかった。同様の症例を用いて行ったLAT1スコアの解析では、スコア0群とスコア3群の間に有意差が認められた(図9)。
同様の症例について、前立腺がんの特異マーカーとして知られているPSAとの比較を行った。今回用いた171症例のうち、手術直前のPSA値が記録されていた127症例について、PSA値4ng/mLと10ng/mLをカットオフ値として、Kaplan-Meireの方法を用いて生存解析を行って、LAT1スコアによる結果と比較した。いずれのカットオフ値においても、PSA値では、低発現群と高発現群の間に有差は認められなかった。同様の症例を用いて行ったLAT1スコアの解析では、スコア0群とスコア3群の間に有意差が認められた(図9)。
(4)Stage分類との比較
症例群の中で、手術時の情報から、病理学的TMN分類及び手術時の転移の有無に関する情報を基にstage分類を行い、Kaplan-Meireの生存分析を行った。Stage分類では、5年生存率との間に有意差が認められなかったのに対し、LAT1分類では、いずれのStageにおいても、スコア0群とスコア3群の間で、有意差が認められた(図10)。
症例群の中で、手術時の情報から、病理学的TMN分類及び手術時の転移の有無に関する情報を基にstage分類を行い、Kaplan-Meireの生存分析を行った。Stage分類では、5年生存率との間に有意差が認められなかったのに対し、LAT1分類では、いずれのStageにおいても、スコア0群とスコア3群の間で、有意差が認められた(図10)。
(5)Gleasonsスコアとの比較
本試験で使用した生検材料の病理診断結果報告書より、診断時のGleasonsスコアを調査し、情報が得られた154症例について、Kaplan-Meire法により生存解析を行い、LAT1スコアによる結果と比較したところ、両者においては、ほぼ同等の結果を得た(図11)。このように、前立腺がん診断において最も重要視されているGleasonsスコア分類の結果(P=0.0008)と同等の有用性を示した。
本試験で使用した生検材料の病理診断結果報告書より、診断時のGleasonsスコアを調査し、情報が得られた154症例について、Kaplan-Meire法により生存解析を行い、LAT1スコアによる結果と比較したところ、両者においては、ほぼ同等の結果を得た(図11)。このように、前立腺がん診断において最も重要視されているGleasonsスコア分類の結果(P=0.0008)と同等の有用性を示した。
(6)結論
本臨床試験結果より、LAT1の発現は前立腺がん患者の生存期間と有意に逆相関しており、その有用性は、Gleasons スコアに匹敵することが示唆された。また、現在前立腺がんのマーカーとして用いられているPSA及びがんの進行度を示すとされているStage分類と比較して、がんの悪性度診断においては、優れた結果を得た。
本臨床試験結果より、LAT1の発現は前立腺がん患者の生存期間と有意に逆相関しており、その有用性は、Gleasons スコアに匹敵することが示唆された。また、現在前立腺がんのマーカーとして用いられているPSA及びがんの進行度を示すとされているStage分類と比較して、がんの悪性度診断においては、優れた結果を得た。
本手法は、前立腺腫瘍細胞に対する染色感度が良好であり、抗体の特性に関しても非特異反応が認められず、施設間誤差も無いことが証明された。
また、本手法を用いて前立腺腫瘍細胞膜に発現しているLAT1の量を定性的に可視化することにより、前立腺腫瘍細胞の悪性度を診断することが可能であると示唆され、さらに、その有用性については、Gleasonsスコアと同等であり、PSA及びStage分類に比べ、有用であると考えられる。さらに、本法は免疫組織化学染色により、細胞膜上のLAT1を定性的に診断することから、Gleasons分類やその他の病理診断法に比較して、観察と結果の判定が容易である。
更に、本手法をGleasonsスコアと組み合わせることにより、より精度の高い前立腺がんの悪性度診断が可能になると期待される。特に、Gleasons分類やTMN分類による診断法では、Gleasonsスコアがtotalで7付近になったとき、また、T3N0(いわゆるStageII)の判定を受けたとき、時として予後の診断に窮することがあるが、本発明に係る手法との併用により、それらのグレーゾーンを明確にするための一助となる。
従って、本手法は、前立腺がんの悪性度を診断し予後判定を行うとともに、その後の治療方針を決定するという新しい前立腺がんの診断薬であると言える。
Claims (2)
- hLAT1の1〜52位のタンパクを抗原として得られた抗ヒトLAT1モノクローナル抗体。
- 請求項1記載の抗ヒトLAT1モノクローナル抗体を含む、免疫組織化学染色による前立腺がんの悪性度判定用キット。
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