JP2015134374A - 圧延機の板厚制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】油圧圧下シリンダにおける伸縮ロッドの沈み込み補償を備えた圧延機の板厚制御方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る圧延機13の板厚制御方法は、油圧圧下シリンダ7によってギャップ量が調整可能とされた一対のワークロール5を備えた圧延機13を用いて圧延材Wを複数パスに亘ってリバース圧延するに際し、ギャップ量を制御する板厚制御方法であって、前パスでの圧延材Wの尾端部の圧延荷重の波形から、次パスでの圧延材Wの先端部の圧延荷重の波形を推定し、推定された先端部の圧延荷重の波形から、油圧圧下シリンダ7の沈み込み量の波形を推定し、推定された油圧圧下シリンダ7の沈み込み量の波形を基に、油圧圧下シリンダ7に対する補償指令値を算出し、算出された補償指令値を油圧圧下シリンダ7に適用する。
【選択図】図4

Description

本発明は、厚板を圧延する圧延機の板厚制御方法に関する。
従来から、圧延機を用いて厚鋼板(厚板)を圧延する場合には、当該圧延機に備えられた一対のワークロールの間隙(ロールギャップ)を調整して、圧延材の出側板厚を目標値に一致させる板厚制御が行われている。
板厚制御を行うため、圧延機には板厚制御部が備えられており、この板厚制御部では、自動板厚制御として、フィードフォワードAGC、BISRA−AGC、モニタAGC、絶対値AGCが採用されている。
このようなAGC制御を行うことで圧延材の板厚は目標板厚へと制御されることになるが、以下に述べる状況下では、自動板厚制御がうまくいかないことが明らかとなっている。
例えば、厚板圧延の場合、圧延材はリバース圧延を施される。リバース圧延では、圧延パスごとに圧延材は圧延機に噛み込まれることになる。圧延機への圧延材の噛み込み時(メタルイン時)には、圧延材の噛み込みの衝撃によりロールギャップが変動する現象が起こり、これに伴い、圧延材先端部の板厚が極端に厚くなる問題が発生する。この現象の原因として、圧延機に備えられてワークロールを上下動させる油圧圧下シリンダの沈み込みが挙げられる。
すなわち、図3(a)に示すように、圧延材が圧延機に噛み込んだ際、上下一対のワークロールには互いに離反する方向に作用する力が発生する。この力は油圧圧下シリンダへと伝わり、油圧圧下シリンダの伸縮ロッドが油圧圧下シリンダの本体側へ入り込んでしまう現象(油柱沈み込み)が発生する。油柱沈み込みが発生すると、ロールギャップが変動(増大)する現象が起こり、圧延材先端部の板厚が厚くなる。
このような板厚増加が起こった際は、板厚制御部によるAGC制御が働き、増加した板厚を抑制する(減少させる)制御が発動することとなる。その結果、油柱沈み込みに起因する板厚増加が減少し、板厚が所定のもの(目標値)へと変化してゆく。
以上述べたような圧延材の噛み込み時の板厚変化を抑制する制御、すなわち、油柱沈み込み補償は従来からも行われており、その概略が図3(b)に示されている。
すなわち、図3(b)に示すように、まず、圧延材の噛み込みより所定時間だけ前に、油柱沈み込み高さに対応する分だけ、ワークロールに対するギャップ指令値を縮める(減少させる)ようにする。その後、圧延材の噛み込みが起こり、噛み込み後の所定時間経過後に、変更したギャップ指令値を拡大し(増加させ)、当初設定したセットアップ値へと戻すようにする。
このような制御(油柱沈み込み補償)を行うことで、圧延材噛み込み直後の板厚は目標値とは異なるものの、その直後に追従し、目標とした板厚で圧延が行われるようになる。
図3(b)に示す油柱沈み込み補償は有益な制御ではあるものの、油柱沈み込みに対応する「ギャップの締め込み量」、言い換えれば「油柱沈み込み高さ」をどのような値にするか、また、締め込み量を元の値に戻すタイミングである「立ち上がり時間」をどのような値にするか、は非常に重要な事項となる。「油柱沈み込み高さ」及び「立ち上がり時間」を適切に決定しない場合、油柱沈み込み補償が適切に作動しない虞すらある。
油柱沈み込み補償における「ギャップの締め込み量」及び「立ち上がり時間」を決定するための技術としては、特許文献1に開示されたものがある。
特許文献1は、油圧圧下シリンダによってロール開度の調整可能な可逆圧延機を用いて板圧延を行うに当たり、前パス尻抜け時の圧延荷重から次パスにおける噛み込み荷重およびその変化パターンを予測しこれに基づいて上記油圧圧下シリンダの沈み込み補正量を求め、この沈み込み補正量に従い次パスの圧延に適したロール開度に補正することを特徴とする板圧延における圧延機のロール開度補正方法を開示している。具体的には、特許文献1の技術では、「油柱沈み込み高さ」をΔS2=Ka×F2max−Kb×Δt2で予測しており、「
立上り時間」をΔt2=Δt1×((前パス尻抜け速度) /(次パス噛み込み速度))で予測している。なお、次パス先端最大予測荷重であるF2maxは、F2max =F1max /(前パス実績平均荷重)×(次パス予測平均荷重)で予測するものとなっている。
特開平6−304631号公報
特許文献1の開示した技術を精考した場合、以下の問題点が明らかとなっている。
すなわち、特許文献1では、1つ前の圧延パス(前パス)における圧延材の尾端部での圧延荷重の最大値及びその時間を基に、続く圧延パス(次パス)での最大荷重及び最大荷重に達するまでの時間(立上り時間)を求め、その後、「油柱沈み込み高さ(最大値)」を算出するようにしている。
しかしながら、これら算出値は、一点でのデータ(一点値)であり、最大荷重に達するまでの荷重の変化具合(変動波形)、油柱沈み込みの最大値に達するまでの沈み込みの変化具合(変動波形)を考慮したものとはなっていない。例えば、圧延材の尾端部が幅方向に直線状のエッジである場合、最大荷重に達するまでの荷重の変化具合は瞬時に最大荷重に到達することとなる。また、圧延材の尾端部が幅方向に波打った曲線状のエッジである場合、最大荷重に達するまでの荷重の変化具合は徐々に(緩やかに)最大荷重に達することとなる。つまり、圧延材の尾端部の形状によって、最大荷重に達するまでの荷重の変化具合(変動波形)、油柱沈み込みの最大値に達するまでの沈み込みの変化具合(変動波形)が異なるものとなり、算出された一点値は信頼度が低いものである。
そのため、特許文献1の技術を用いたとしても、精確且つ確実な油柱沈み込み補償を行うことができない虞があった。
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、精確且つ確実な油柱沈み込み補償(油圧圧下シリンダにおける伸縮ロッドの沈み込み補償)を備えた圧延機の板厚制御方法を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明の板厚制御方法は、油圧圧下シリンダによってロールギャップ量が調整可能とされた一対のワークロールを備えた圧延機を用いて圧延材を複数パスに亘ってリバース圧延するに際し、前記ロールギャップ量を制御する板厚制御方法であって、前パスでの圧延材の尾端部の圧延荷重の波形から、次パスでの圧延材の先端部の圧延荷重の波形を推定し、推定された先端部の圧延荷重の波形から、前記油圧圧下シリンダの沈み込み量の波形を推定し、推定された油圧圧下シリンダの沈み込み量の波形を基に、前記油圧圧下シリンダに対する補償指令値を算出し、算出された補償指令値を油圧圧下シリンダに適用することを特徴とする。
好ましくは、前記油圧圧下シリンダに対する補償指令値の算出に際しては、前記推定された油圧圧下シリンダの沈み込み量の波形から、沈み込み量が最大となる値Smaxと、前記圧延材がワークロールに噛み込んでから前記沈み込み量が最大となるまでの時間dt_Smaxと、を算出し、前記圧延材がワークロールに噛み込む前に、ロールギャップ量のセットアップ値S0に対して、前記沈み込み量が最大となる値Smaxだけロールギャップ量を縮小しておき、前記圧延材がワークロールに噛み込んでから前記沈み込み量が最大となるまでの時間dt_Smaxの時間が経過した後に、ロールギャップ量をセットアップ値S0に戻すような補償指令値を算出するとよい。
好ましくは、次パスでの圧延材の先端部の圧延荷重の波形を予測するに際しては、前パスにおける圧延材の尾端部での圧延荷重の波形Pn-1(t)を時間軸に沿って反転し、反転させた圧延荷重の波形に対して、前パスにおける圧延材の尾端部での圧延速度と次パスにおける圧延材の先端部での圧延速度とに基づいた時間軸方向の補正と、前パスにおける圧延材の圧延荷重と次パスにおける圧延材の予測圧延荷重とに基づいた圧延荷重軸方向の補正
と、を行うことで、次パスにおける圧延材の先端部での圧延荷重の波形Pn(t)を求めるようにするとよい。
好ましくは、前記油圧圧下シリンダの沈み込み量の波形を予測するに際しては、油圧圧下シリンダの沈み込み量Sn(t)を、ロールギャップ量のセットアップ値S0と、油圧圧下シリンダの圧縮による伸縮ロッドの沈み込み量Fp(Pn(t))と、定位制御系によるギャップ修正量Fs(ΔSn(t))との加算で求めるようにするとよい。
好ましくは、前記伸縮ロッドの沈み込み量Fp(Pn(t))は、前記油圧圧下シリンダに付与された荷重Pn(t)に比例するものとするとよい。
好ましくは、前記時間軸方向の補正において、前記次パスにおける圧延材の先端部での圧延速度として、実際に計測された圧延速度である実圧延速度を用い、前記実圧延速度と前パスにおける圧延材の尾端部での圧延速度とに基づいて、前記反転させた圧延荷重の波形に対して前記時間軸方向の補正を行うとよい。
好ましくは、前記時間軸方向の補正において、前記次パスにおける圧延材の先端部での圧延速度として複数の圧延速度を設定して、前記複数の圧延速度の各々と前パスにおける圧延材の尾端部での圧延速度とに基づいて、前記反転させた圧延荷重の波形に対して前記時間軸方向の補正を行うとよい。
好ましくは、前記複数の圧延速度の各々について、次パスにおける圧延材の先端部での圧延荷重の波形Pn(t)を求めると共に、求めた圧延荷重の波形Pn(t)から前記油圧圧下シリンダの沈み込み量の波形を予測した上で、前記複数の圧延速度の各々と、前記油圧圧下シリンダの沈み込み量の波形から得られる前記油圧圧下シリンダの沈み込み量及び沈み込み時間との関係を沈み込みモデルとして予め保持しておき、実際に計測された圧延速度である実圧延速度が得られたときに、前記沈み込みモデルにおいて、当該得られた実圧延速度に対応する前記沈み込み量及び沈み込み時間を取得して、当該取得した沈み込み量及び沈み込み時間に基づく補償指令値を油圧圧下シリンダに適用するとよい。
本発明によれば、厚板圧延時の板厚制御に対して確実で且つ精確な油柱沈み込み補償を行うことで、厚板の先端部の板厚を確実に制御することが可能となる。
厚板の圧延ラインを模式的に示した図である。 本発明の第1実施形態による板厚制御が適用される圧延機の構成を示す概略図である。 (a)は油柱沈み込みによる板厚変動を説明する図であり、(b)は油柱沈み込み補償の方法を示した図である。 第1実施形態に係る板厚制御部のブロック図である。 油柱沈み込み量を推定する方法を示す概略図である。 前パスの尾端部の圧延荷重波形から、次パスの先端部の圧延荷重波形を推定する方法を示す図である。 実装時における前パスの尾端部の圧延荷重波形を取得する方法を示した図である。 実装時において、前パスの尾端部の圧延荷重波形から次パスの先端部の圧延荷重波形を推定する方法を示す図である。 実装時において、油柱沈み込み量を推定する方法を示す図である。 実装時において求めた油柱沈み込み量の波形を示した図である。 求めた油柱沈み込み量をもとに、ロールギャップ量の指令値を変更することを示した図である。 第1実施形態による板厚制御の結果を示した図である。 本発明の第3実施形態による板厚制御部の油柱沈み込み補償部による処理構成の概略を示すブロック図である。 圧延速度と油柱沈み込み量との関係、及び圧延速度と油柱沈み込み時間との関係(沈み込みモデル)を表すグラフを示す図である。 沈み込みモデルのうち圧延速度と油柱沈み込み量との関係を表すグラフを示す図である。 沈み込みモデルのうち圧延速度と油柱沈み込み時間との関係を表すグラフを示す図である。 荷重モデルによる結果と、単純に前パス荷重を折り返し荷重レベルを合わせたものを示すグラフであり、4パス目における圧延荷重の変化を示す図である。 荷重モデルによる結果と、単純に前パス荷重を折り返し荷重レベルを合わせたものを示すグラフであり、5パス目における圧延荷重の変化を示す図である。 荷重モデルによる結果と、単純に前パス荷重を折り返し荷重レベルを合わせたものを示すグラフであり、6パス目における圧延荷重の変化を示す図である。 油柱沈み込み補償部の動作を説明するための図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各実施形態に共通する同一の構成部材には、同一の符号及び同一の名称を付すこととする。従って、同一の符号及び同一の名称が付された構成部材については、同じ説明を繰り返さない。
[第1実施形態]
以下、図面を基に、本発明の第1実施形態にかかる圧延機の板厚制御方法を説明する。
図1に示すように、厚鋼板等の圧延材W(厚板)を圧延する圧延ライン1は、その上流側に圧延材Wを加熱する加熱炉2を有し、加熱炉2の下流側には、圧延材Wの粗圧延を行う粗圧延機3が備えられている。粗圧延機3の下流側には、仕上げ圧延を行う仕上げ圧延機4が備えられている。加熱炉2で加熱されたスラブは、粗圧延機3や仕上げ圧延機4で複数回、リバース圧延されて、製品の厚鋼板となる。
図2には、圧延ライン1に備えられている圧延機13(粗圧延機3乃至は仕上げ圧延機4)が示されている。圧延機13は、圧延材Wを圧延する一対のワークロール5とそれをバックアップする一対のバックアップロール6とを有している。
さらに、圧延機13には、ワークロール5の間隙長(ロールギャップ量と呼ぶこともある)を調整する油圧駆動の油圧圧下装置7が備えられている。油圧圧下装置7は、例えば油圧圧下シリンダなどで構成されている。
ワークロール5の両端を支持するロールチョック8には、圧延機13のフレーム9に支持された油圧圧下シリンダ7の先端が接続され、この油圧圧下シリンダ7を支持するフレーム9には圧延荷重を計測するロードセル10が設けられている。
さらに、圧延機13の出側には、圧延材Wの出側板厚を計測するための板厚計11が設けられている。板厚計11としては、γ線板厚計などを採用することができる。
圧延機13には、ロードセル10が計測した圧延荷重と板厚計11が計測した出側板厚とを受けて、圧延材Wの出側板厚が所定のものとなるように油圧圧下シリンダ7を制御する板厚制御部12が設けられている。この板厚制御部12はPLCなどから構成されており、内部には、後述するAGC制御系やベンダ制御系などがプログラムの形で組み込まれている。
本実施形態における板厚制御部12には、AGC制御系として、フィードフォワードAGC、BISRA−AGC、モニタAGC、絶対値AGCなどが組み込まれている。
ところで、「背景技術」の項目で精説したように、圧延機13への圧延材Wの噛み込み時(メタルイン時)には、圧延材Wの噛み込みの衝撃により、ロールギャップが変動する現象が起こる。これに伴い、圧延材W先端部の板厚が厚くなる問題が発生する。この現象の原因として、圧延機13に備えられてワークロール5を上下動させる油圧圧下シリンダ7の沈み込み(油圧圧下シリンダ7の本体に対する伸縮ロッドの入り込み)が挙げられる。
本実施形態の板厚制御部12は、上述した油圧圧下シリンダ7の沈み込み(以降、油柱沈み込みと呼ぶこともある)に対する補償を行う「油柱沈み込み補償部15」を備えるものとなっている(図3(b)を参照)。この油柱沈み込み補償部15も、板厚制御部12
内においてプログラムの形で実現されている。
図4に示す如く、本実施形態の板厚制御部12は、板厚の制御を行うAGC部14を有している。このAGC部14では、入力された目標板厚を基に油圧圧下装置7への指令値が計算される。算出された指令値は油圧圧下装置7へと入力され、油圧圧下装置7内の定位制御系により算出された指令値通りにギャップ操作を行う。そして、実際の圧延機13(図4のブロック図では、圧延機モデル)へと適用される。油圧圧下装置7の出力であるロールギャップの変更量と、圧延機モデルから出力された圧下荷重は、AGC部14へとフィードバックされる。
さらに、本実施形態の板厚制御部12には、油柱沈み込み補償部15が設けられており、この油柱沈み込み補償部15からは「油柱沈み込みに対する補償指令値」が出力され、この補償指令値はAGC部14から出力された油圧圧下装置7への指令値に加算され、油圧圧下装置7へ入力される。
以下、油柱沈み込み補償部15で行われる油柱沈み込み補償の詳細について述べる。
まず、図5に示すように、油柱沈み込み補償は、以下に述べる2つの予測を行うものとなっている。すなわち、油柱沈み込み補償は、
・予測(1):リバース圧延において、前パスの情報(尾端部の荷重波形など)や次パス圧延条件等から、次パスの先端部の荷重波形を予測する、
・予測(2):予測(1)で予測された次パス先端荷重波形から、油柱沈み込み量(油圧圧下シリンダ7の沈み込み量)の波形を予測する、
の2つの機能から構成されている。
図5、図6に示す如く、予測(1)においては、前パスにおける圧延材Wの尾端部での圧延荷重の波形Pn-1(t)を縦軸(圧延荷重を示す軸)を対称軸として時間軸に沿って反転することで、次パスにおける圧延材Wの先端部での圧延荷重の波形Pn(t)を求めるようにしている。
しかしながら、圧延荷重波形の単なる反転だけでは、精度のよい予測ができないため、尾端部での圧延荷重の波形Pn-1(t)に対して、前パス圧延の条件や次パス圧延の条件などから得られた値を基にした補正を適用するようにしている。具体的には、式(1)で、次パスにおける圧延材Wの先端での圧延荷重の波形Pn(t)を求める。
式(1)では、前パスの平均荷重と次パスの予測平均荷重の比により、荷重の高さの補正すると共に、前パスと次パスの圧延速度の比により荷重の立上り時間の補正をおこなうものとなっている。
次に、図5に示す如く、予測(2)においては、予測(1)で予測された次パスでの先端荷重の波形Pn(t)から、油柱沈み込み量の波形を予測する。具体的には、式(2)で求める。
ここで、Sn(t)は油圧圧下シリンダ7の沈み込み量であり、S0はロールギャップ量のセットアップ値である。Fp(Pn(t))は、圧延荷重に応じて発生する油圧圧下シリンダ7の圧縮による伸縮ロッドの沈み込み量である。このFp(Pn(t))の一例として、以下に示す式(3)で算出されるものとする。式(3)では、伸縮ロッドの沈み込み量は加えられた荷重に比例するとしている。
また、式(2)におけるFs(ΔSn(t))は、定位制御系による ギャップ修正量であり、ΔSn(t)は、ギャップ位置 Sn(t)とセットアップ値S0との差である。このFs(ΔSn(t))の一例として、式(4)で求めることとしている。式(4)は、PI制御×一次応答遅れ×ΔSn(t)を意味している。
ここで、A、Kp、Kiは定数、Tは時定数(定数)、sはラプラス演算子である。
上記した式(2)〜式(4)を整理すると、最終的に以下のようなPn(t)からSn(t)への伝達関数(式(5))が算出される。
式(5)におけるsはラプラス演算子であり、係数(a0,a1,b1,b2)は、過去の圧延実績より求めることができる。
この式(5)を用いることで、油圧圧下シリンダ7の沈み込み量Sn(t)の時間変化、すなわち沈み込み量Sn(t)の波形を得ることができる。
上述した油柱沈み込み補償は、実際の板厚制御部12では、以下のような処理のもと実行される。
まず、図7に示すように、圧延材Wの前パスでの圧延中において、 前パス圧延データ(特に尾端部の圧延荷重)を格納するようにする。具体的には、サンプリング周期dtごとに採取された前パス尾端圧延荷重P_n-1(t)、前パス全長平均荷重[Pz_n-1]、前パス尾端圧延速度V_n-1を、板厚制御部12(PLC)のメモリに記録する。
その後、図8に示すように、次パス圧延条件を入手、特に、次パス予測荷重Pz_n、次パス圧延速度V_nのデータを入手し、式(6)により、次パス圧延荷重の波形を算出する。
なお、P_n-1(-dt・k×[V_n/V_n-1])を計算する際には、サンプリングされたP_n-1(dt・k)を反転したP_n-1(-dt・k)からリサンプリングして求めるようにするとよい。
以上の計算結果を基に、図9に示すように、式(7)に基づき、次パスの油柱沈み込み波形S_n(t)を予測する。
なお、式(7)は、式(5)に対応するものであって、PLC内への実装に際して差分方程式で記載している。この式(7)におけるc1, c2, d0, d1, d2は予測モデル係数である。
その後、図10に示す如く、得られた油柱沈み込みの波形S_n(t)を利用し、油柱沈み込み高さと、長さ(立上り時間)を抽出する。すなわち、推定した油柱沈み込み波形S_n(t)の最大値を油柱沈み込み高さS_max、その最大値を取る時間を長さ(立上り時間)S_tとする。
本実施形態による油柱沈み込み補償では、図10のように油柱沈み込みの波形を精確に得ることができるため、油柱沈み込み高さS_max、立上り時間S_tは、波形全体を加味した値となっており、非常に精確なものとなっている。つまり、従来技術のように、油柱沈み込み高さS_max、立上り時間S_tは一点でのデータではなく、最大荷重に達するまでの荷重の変化具合(変動波形)、油柱沈み込みの最大値に達するまでの沈み込みの変化具合(変動波形)を考慮したものとなっている。それ故、厚板リバース圧延時の板厚制御に対して確実且つ精確な油柱沈み込み補償を実施することが可能となる。
以上述べた計算により得られた油柱沈み込み高さS_maxと油柱沈み込み長さ(立上り時間)S_tをもとに、図11に示すような油柱沈み込み補償指令値を決定し、次パスにおけ
る圧延材W噛み込み(メタルイン)の数秒前から、油柱沈み込み補償指令値の出力を、図4に示すように、AGC部14の出力に加算するようにする。
次に、以上述べた油柱沈み込み補償を用いた板厚制御のシミュレーション結果について述べることとする。
シミュレーションに用いたモデルは、図4に示すものであり、 圧延モデルとしては、次式に示す線形の近似式を使用し、出側板厚h、圧延荷重Pを求めた。
ここで、Mはミル定数、Qは塑性係数、Hは入側板厚、Sはロールギャップ量である。
また、圧延材Wの入側板厚の厚みを変化させることで、圧延荷重の立上り(早い/遅い)を模擬した。シミュレーションにおける塑性係数Qは全長で一定とし、AGC制御部における制御(ABS,BISRA)は無効とした(AGC 指令値=0)。油柱沈み込み補償に関しては、ロールギャップ指令値での締め込み量S_maxは、油柱沈み込みの高さとし、油柱沈み込み補償の開放タイミングS_tは油柱沈み込み長さ(立上り時間)後とした。
図12は、本実施形態の油柱沈み込み補償を、厚板圧延時の板厚制御に対して行った結果(シミュレーション結果)を示している。
図12(a)(b)は、本実施形態の油柱沈み込み補償が適用されない場合であって、
図12(a)は、圧延材W噛み込み時に荷重の立ち上がりが急峻な場合を示し、図12(b)は、圧延材W噛み込み時に荷重の立ち上がりが緩やかな場合を示している。
図12(a)(b)のどちらの場合であっても、油柱沈み込み補償が適用されないので、噛み込み後、板厚が大きく増大し、その後、板厚制御により、設定値へと補正されている。この部分に対応する板端部(先端部)は、板厚が規定値を超えるものとなり、製品としての出荷は不可能である。
一方、図12(c)(d)は、本実施形態の油柱沈み込み補償が適用された場合であって、 図12(c)は、圧延材W噛み込み時に荷重の立ち上がりが急峻な場合を示し、図12(d)は、圧延材W噛み込み時に荷重の立ち上がりが緩やかな場合を示している。
図12(c)(d)のどちらの場合であっても、油柱沈み込み補償が適用されている故、噛み込み後であっても板厚が大きく増大することなく、板厚制御により、板厚が設定値となっている。
上記したような油柱沈み込み補償を厚板圧延時の板厚制御に対して行うことで、厚板の先端部の板厚を確実に制御することが可能となる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態にかかる圧延機の板厚制御方法を説明する。
本実施形態による板厚制御方法は、第1実施形態で説明した板厚制御部12によって実現されて、同じく第1実施形態で説明した圧延機13に対して適用されるが、本実施形態において、板厚制御部12の油柱沈み込み補償部15の構成が若干異なるので、その相違点について説明する。
第1実施形態において、油柱沈み込み補償部15は、次パス圧延条件として、次パス予測荷重と次パス圧延速度を得て、上述の式(1)によって「次パスでの先端部の圧延荷重の波形Pn(t)」を推定した。しかし、次パス圧延条件のうち、次パス圧延速度は、圧延機13の操業状態に応じてオペレータの介入を受けることがあるので、メタルイン時の圧延速度が、次パス圧延条件として得た次パス圧延速度とは異なってしまう場合がある。
メタルイン時の圧延速度が次パス圧延速度と異なってしまうと、上述の式(1)によって推定される「次パスでの先端部の圧延荷重の波形Pn(t)」も、次パス圧延速度に基づく「次パスでの先端部の圧延荷重の波形Pn(t)」とは異る誤ったものとなってしまう。この「次パスでの先端部の圧延荷重の波形Pn(t)」の推定を誤ると、誤った波形Pn(t)に基づいて推定される「油圧圧下シリンダの沈み込み量Fp(Pn(t))」も誤ったものになってしまい、結果この沈み込み量Fp(Pn(t))に基づく「油圧圧下シリンダに対する補償指令値」が誤
ったものとなってしまう。
そこで、本実施形態による板厚制御部12の油柱沈み込み補償部15は、次パスにおける圧延材の先端部での圧延速度である「次パス圧延速度」として、次パスの前に実際に計測された圧延速度である実圧延速度を用いる。油柱沈み込み補償部15は、この実圧延速度を用い、実圧延速度と前パスにおける圧延材の尾端部での圧延速度とに基づいて、前パスでの尾端部の圧延荷重の波形を反転させた圧延荷重の波形に対して時間軸方向の補正を行い、「次パスでの先端部の圧延荷重の波形Pn(t)」を推定する。
このとき、油柱沈み込み補償部15は、次パスのメタルイン時の直前まで、圧延機13における実際の圧延速度(実圧延速度)であるワークロール5の回転数などを、例えば、数十msなどの短い周期でリアルタイムで逐次取得する。油柱沈み込み補償部15は、取得した実圧延速度に基づいて「次パスでの先端部の圧延荷重の波形Pn(t)」を逐次推定し、「油圧圧下シリンダの沈み込み量Fp(Pn(t))」(油柱沈み込み波形S_n(t))の推定を経て「油圧圧下シリンダに対する補償指令値」を数十msなどの短い周期でリアルタイムで逐次生成する。
図17に示すように、油柱沈み込み補償部15は、リアルタイムで生成された油圧圧下シリンダ7に対する補償指令値を、次パスのメタルイン時まで油圧圧下シリンダ7へ出力し、ロールギャップを変更する。そして、次パスのメタルインした瞬間で補償指令値を固定(リアルタイムでの補償指令値の生成を停止)し、その時の最後に生成された補償指令値を油圧圧下シリンダへ出力し、ロールギャップを動かす。
本実施形態による油柱沈み込み補償部15の板厚制御方法によれば、前パスのメタルオフ以降次パスのメタルインまでの間に圧延速度が変更された場合であっても、変更された圧延速度に基づく上述の油柱沈み込み補償を厚板圧延時の板厚制御に対して行うことができ、厚板の先端部の板厚を確実に制御することができる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態にかかる圧延機の板厚制御方法を説明する。
本実施形態による板厚制御方法は、第1実施形態で説明した板厚制御部12によって実現されて、同じく第1実施形態で説明した圧延機13に対して適用されるが、本実施形態において、板厚制御部12の油柱沈み込み補償部15の構成が若干異なるので、その相違点について説明する。
第1実施形態において、油柱沈み込み補償部15は、次パス圧延条件として、次パス予測荷重と次パス圧延速度を得て、上述の式(1)によって「次パスでの先端部の圧延荷重の波形Pn(t)」を推定した。しかし、次パス圧延条件のうち、次パス圧延速度は、圧延機13の操業状態に応じてオペレータの介入を受けることがあるので、メタルイン時の圧延速度が、次パス圧延条件として得た次パス圧延速度とは異なってしまう場合がある。
メタルイン時の圧延速度が次パス圧延速度と異なってしまうと、上述の式(1)によって推定される「次パスでの先端部の圧延荷重の波形Pn(t)」も、次パス圧延速度に基づく「次パスでの先端部の圧延荷重の波形Pn(t)」とは異る誤ったものとなってしまう。この「次パスでの先端部の圧延荷重の波形Pn(t)」の推定が誤ると、誤った波形Pn(t)に基づいて推定される「油圧圧下シリンダの沈み込み量Fp(Pn(t))」も誤ったものになってしまい、この沈み込み量Fp(Pn(t))に基づく「油圧圧下シリンダに対する補償指令値」が誤ったものとなってしまう。
そこで、図13に示すように、本実施形態による板厚制御部12の油柱沈み込み補償部15は、次パスにおける圧延材の先端部での圧延速度である「次パス圧延速度」として、前パスのメタルオフ直後に、次パスで採用される可能性のある複数の圧延速度を設定する。油柱沈み込み補償部15は、これら設定した複数の圧延速度を用い、複数の圧延速度の各々と前パスにおける圧延材の尾端部での圧延速度とに基づいて、前パスでの尾端部の圧延荷重の波形を反転させた圧延荷重の波形に対して前記時間軸方向の補正を行い、「次パスでの先端部の圧延荷重の波形Pn(t)」を推定する。
具体的に、図13に示すように、油柱沈み込み補償部15は、前パスのメタルオフ直後に、「次パス圧延速度」であるワークロール5の回転数として、毎秒A回転(次パス速度
1、速度A)、毎秒B回転(次パス速度2、速度B)、毎秒C回転(次パス速度3、速度C)及び毎秒D回転(次パス速度4、速度D)の4つの圧延速度を、次パスで採用される可能性のある圧延速度として設定する。油柱沈み込み補償部15は、次パスのメタルインまでに、複数の圧延速度の各々に基づいて、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、「次パスでの先端部の圧延荷重の波形Pn(t)」を推定し(図13における予測A)、「油圧圧下シリンダの沈み込み量Fp(Pn(t))」(油柱沈み込み波形S_n(t))の推定(図13における予測B)を経て「油圧圧下シリンダに対する補償指令値」を生成する。
これによって、油柱沈み込み補償部15は、次パスのメタルインまでに、速度A、速度B、速度C及び速度Dの4つの圧延速度の各々について、次パス前に予め「油圧圧下シリンダに対する補償指令値」を生成し保持することができる。
図17に示すように、油柱沈み込み補償部15は、リアルタイムで取得した実際の圧延速度に基づいて、油圧圧下シリンダ7に対する補償指令値を生成し、リアルタイムで生成された補償指令値を、次パスのメタルイン時まで油圧圧下シリンダ7へ出力し、ロールギャップを変更する。そして、次パスのメタルインした瞬間で補償指令値を固定(リアルタイムでの補償指令値の生成を停止)し、その時の最後に生成された補償指令値を油圧圧下シリンダ7へ出力し、ロールギャップを変更する。
本実施形態による上述の油柱沈み込み補償部15の板厚制御方法によれば、前パスのメタルオフ以降次パスのメタルインまでの間に圧延速度が変更された場合であっても、変更された圧延速度に基づく油柱沈み込み補償を厚板圧延時の板厚制御に対して行うことができ、厚板の先端部の板厚を確実に制御することができる。さらに、本実施形態による油柱沈み込み補償部15の板厚制御方法によれば、前パスのメタルオフから次パスのメタルインまでの間において、圧延速度を数十msなどの短い周期で取得しつつ、取得した圧延速度に基づいて逐次リアルタイムで補償指令値を生成するというような、油柱沈み込み補償部15への非常に負荷の大きな計算を必要としない。
ところで、上述の油柱沈み込み補償部15の処理において、次パスのメタルイン直前の圧延速度が、予め設定された上述の4つの圧延速度(速度A、速度B、速度C及び速度D)のいずれでもない場合がある。その場合においても、逐次リアルタイムで補償指令値を生成するよりも小さな計算負荷で補償指令値を生成する方法について、図14、図15A及び図15Bを参照しながら、本実施形態の変形例として説明する。
図14は、圧延速度と油柱沈み込み量との関係、及び圧延速度と油柱沈み込み時間との関係(沈み込みモデル)を表すグラフである。図15Aは、沈み込みモデルのうち圧延速度と油柱沈み込み量との関係を表すグラフである。図15Bは、沈み込みモデルのうち圧延速度と油柱沈み込み時間との関係を表すグラフである。
油柱沈み込み補償部15は、図14に示すように、予め設定された複数の圧延速度と、複数の圧延速度に基づいて生成された、油柱沈み込み波形S_n(t)の最大値である油柱沈み込み量、及びその油柱沈み込み波形S_n(t)において最大値となるまでの時間である油柱沈み込み時間との関係を保持し、保持された複数の油柱沈み込み量を線形補間すると共に、保持された複数の油柱沈み込み時間を線形補間する。これによって、予め設定された複数の圧延速度以外の圧延速度(メタルイン直前に実際に計測された実圧延速度)についても、圧延速度と油柱沈み込み量との関係、及び圧延速度と油柱沈み込み時間との関係(沈み込みモデル)が得られる。
例えば、図15Aのグラフに示すように、油柱沈み込み補償部15は、予め設定された4つの圧延速度(速度A、速度B、速度C及び速度D)と、これら4つの圧延速度に基づいて生成された4つの油柱沈み込み量との関係を得て、4つの油柱沈み込み量を直線により線形補間(直線補間、図中の破線で示す)することで、圧延速度の変化に対する油柱沈み込み量の変化を近似する。この近似によって、油柱沈み込み補償部15は、予め設定された4つの圧延速度以外の圧延速度についても、対応する油柱沈み込み量を得ることができる。図15Aには、この直線補間による近似のグラフに重ねて、複数点(10点)の圧延速度の各々について、「油圧圧下シリンダに対する補償指令値」を生成した結果をプロットしたグラフを示している。10点の複数点によるグラフは、4点の直線補間による近
似のグラフからほとんど乖離せずよく一致しているので、この4点の直線補間によって、予め設定された4つの圧延速度以外の圧延速度に対応する油柱沈み込み量を、非常に正確に取得することができる。
また、図15Bのグラフに示すように、油柱沈み込み補償部15は、予め設定された4つの圧延速度(速度A、速度B、速度C及び速度D)と、これら4つの圧延速度に基づいて生成された4つの油柱沈み込み時間との関係を得て、4つの油柱沈み込み時間を直線補間することで、圧延速度の変化に対する油柱沈み込み時間の変化を近似する。この近似によって、油柱沈み込み補償部15は、予め設定された4つの圧延速度以外の圧延速度についても、対応する油柱沈み込み時間を得ることができる。図15Bには、図15Aと同様に、この直線補間による近似のグラフに重ねて、複数点(10点)の圧延速度の各々について、「油圧圧下シリンダに対する補償指令値」を生成した結果をプロットしたグラフを示している。10点の複数点によるグラフは、4点の直線補間による近似のグラフからほとんど乖離せずよく一致しているので、この4点の直線補間によって、予め設定された4つの圧延速度以外の圧延速度に対応する油柱沈み込み量を、非常に正確に取得することができる。
油柱沈み込み補償部15は、次パスのメタルイン直前の圧延速度を取得すると、取得した圧延速度対応する油柱沈み込み量及び油柱沈み込み時間を、複数の圧延速度に対応する油柱沈み込み量及び油柱沈み込み時間の直線補間による近似によって取得し、取得した油柱沈み込み量及び油柱沈み込み時間に基づいて生成された補償指令値を油圧圧下シリンダへ出力(適用)する。
このように、本実施形態の変形例によれば、次パスのメタルイン直前の圧延速度が予め設定された圧延速度ではない場合においても、予め設定された複数の圧延速度と油柱沈み込み量及び油柱沈み込み時間との関係を用いた近似によって得られる沈み込みモデルによって、次パスのメタルイン直前の様々な圧延速度(実圧延速度)に対応する油柱沈み込み量及び油柱沈み込み時間を非常に正確に取得することができる。従って、本変形例によっても、上述の本実施形態とほぼ同等の演算量で、逐次リアルタイムで補償指令値を生成する場合と同様の正確な油柱沈み込み量及び油柱沈み込み時間を、油柱沈み込み補償部15への計算負荷を抑制しながら得ることができる。
以上が、本発明の実施形態である第1実施形態〜第3実施形態の説明であるが、上述の各実施形態において、「次パスでの先端部の圧延荷重の波形Pn(t)」を推定する際に用いる上述の式(6)に示す「次パス予測最大荷重(Pz_n)」を、次の式(8)に示す圧延荷重モデルに基づいて予測することが考えられる。
ここで、P1_nz(t)は荷重モデルによる推定荷重、Hn(t)は当パス入側板厚(前パス出側板厚)、h_aimは次パスの狙い板厚、Qは塑性係数である。
図16A〜図16Cを参照して、上記式(8)を用いて「次パス予測最大荷重(Pz_n)」を予測する場合について説明する。図16A〜図16Cは、上記式(8)の荷重モデルにより予測した「次パス予測最大荷重(Pz_n)」の結果と、単純に前パス荷重を折り返し荷重レベルを合わせたもの(平均荷重が実績値と合うようにしたもの)を示すグラフである。図16Aは、4パス目におけるメタルイン時の圧延荷重の変化を示すグラフを示し、図16Bは、5パス目におけるメタルイン時の圧延荷重の変化を示すグラフを示し、図16Cは、6パス目におけるメタルイン時の圧延荷重の変化を示すグラフを示す。
まず、図16A〜図16Cのグラフを見ると、特に時間(time)0以降の短い時間において、実線で示す式(8)の圧延荷重モデルによる予測荷重の最大値は、点線で示す実績荷重の最大値(実績荷重)と良く合っている。このことは、一点鎖線で示す単純に前パス荷重を折り返し荷重レベルを合わせたものと比較すれば明らかである。ただ一方で、時間(time)0秒以前において、実線で示す式(8)の圧延荷重モデルによる予測荷重の立ち上り部分については、点線で示す実績荷重と合っていない(つまり、荷重が0から立ち上
がっていない)。
このような不都合を回避するためには、図13における予測Aであって「次パスでの先端部の圧延荷重の波形Pn(t)」を推定する際に、上記式(8)に示す圧延荷重モデルに基づいて予測する「次パス予測最大荷重(Pz_n)」を用いて、前パスの圧延荷重の波形Pn-1(t)を折り返して(反転させて)得られる波形を補正する。すなわち、「次パス予測最大荷重(Pz_n)」は上記式(8)で求めるが、「次パスでの先端部の圧延荷重の波形Pn(t)」は、第1実施形態と同様に上記式(6)を用いて、反転させた前パスの圧延荷重の波形Pn-1(t)を補正することで、非常に正確な予測荷重の最大値が表現された次パスでの圧延荷重の波形Pn(t)として推定することができる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
1 圧延ライン
2 加熱炉
3 粗圧延機
4 仕上げ圧延機
5 ワークロール
6 バックアップロール
7 油圧圧下シリンダ(油圧圧下装置)
8 ロールチョック
9 フレーム
10 ロードセル
11 板厚計
12 板厚制御部
13 圧延機
14 AGC部
15 油柱沈み込み補償部
W 圧延材

Claims (8)

  1. 油圧圧下シリンダによってロールギャップ量が調整可能とされた一対のワークロールを備えた圧延機を用いて圧延材を複数パスに亘ってリバース圧延するに際し、前記ロールギャップ量を制御する板厚制御方法であって、
    前パスでの圧延材の尾端部の圧延荷重の波形から、次パスでの圧延材の先端部の圧延荷重の波形を推定し、
    推定された先端部の圧延荷重の波形から、前記油圧圧下シリンダの沈み込み量の波形を推定し、
    推定された油圧圧下シリンダの沈み込み量の波形を基に、前記油圧圧下シリンダに対する補償指令値を算出し、
    算出された補償指令値を油圧圧下シリンダに適用する
    ことを特徴とする圧延機の板厚制御方法。
  2. 前記油圧圧下シリンダに対する補償指令値の算出に際しては、
    前記推定された油圧圧下シリンダの沈み込み量の波形から、沈み込み量が最大となる値Smaxと、前記圧延材がワークロールに噛み込んでから前記沈み込み量が最大となるまでの時間dt_Smaxと、を算出し、
    前記圧延材がワークロールに噛み込む前に、ロールギャップ量のセットアップ値S0に対して、前記沈み込み量が最大となる値Smaxだけロールギャップ量を縮小しておき、
    前記圧延材がワークロールに噛み込んでから前記沈み込み量が最大となるまでの時間dt_Smaxの時間が経過した後に、ロールギャップ量をセットアップ値S0に戻すような補償指令値を算出する
    ことを特徴とする請求項1に記載の圧延機の板厚制御方法。
  3. 次パスでの圧延材の先端部の圧延荷重の波形を予測するに際しては、
    前パスにおける圧延材の尾端部での圧延荷重の波形Pn-1(t)を時間軸に沿って反転し、
    反転させた圧延荷重の波形に対して、前パスにおける圧延材の尾端部での圧延速度と次パスにおける圧延材の先端部での圧延速度とに基づいた時間軸方向の補正と、前パスにおける圧延材の圧延荷重と次パスにおける圧延材の予測圧延荷重とに基づいた圧延荷重軸方向の補正と、を行うことで、次パスにおける圧延材の先端部での圧延荷重の波形Pn(t)を求めるようにしていることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧延機の板厚制御方法。
  4. 前記油圧圧下シリンダの沈み込み量の波形を予測するに際しては、
    油圧圧下シリンダの沈み込み量Sn(t)を、ロールギャップ量のセットアップ値S0と、油圧圧下シリンダの圧縮による沈み込み量Fp(Pn(t))と、定位制御系によるギャップ修正量Fs(ΔSn(t))との加算で求めるようにしていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧延機の板厚制御方法。
  5. 前記油圧圧下シリンダの沈み込み量Fp(Pn(t))は、前記油圧圧下シリンダに付与された荷重Pn(t)に比例するものとしていることを特徴とする請求項4に記載の圧延機の板厚制御方法。
  6. 前記時間軸方向の補正において、
    前記次パスにおける圧延材の先端部での圧延速度として、実際に計測された圧延速度である実圧延速度を用い、前記実圧延速度と前パスにおける圧延材の尾端部での圧延速度とに基づいて、前記反転させた圧延荷重の波形に対して前記時間軸方向の補正を行うことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の圧延機の板厚制御方法。
  7. 前記時間軸方向の補正において、
    前記次パスにおける圧延材の先端部での圧延速度として複数の圧延速度を設定して、前記複数の圧延速度の各々と前パスにおける圧延材の尾端部での圧延速度とに基づいて、前記反転させた圧延荷重の波形に対して前記時間軸方向の補正を行うことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の圧延機の板厚制御方法。
  8. 前記複数の圧延速度の各々について、次パスにおける圧延材の先端部での圧延荷重の波形Pn(t)を求めると共に、求めた圧延荷重の波形Pn(t)から前記油圧圧下シリンダの沈み込み量の波形を予測した上で、前記複数の圧延速度の各々と、前記油圧圧下シリンダの沈み込み量の波形から得られる前記油圧圧下シリンダの沈み込み量及び沈み込み時間との関係を沈み込みモデルとして予め保持しておき、
    実際に計測された圧延速度である実圧延速度が得られたときに、前記沈み込みモデルにおいて、当該得られた実圧延速度に対応する前記沈み込み量及び沈み込み時間を取得して、当該取得した沈み込み量及び沈み込み時間に基づく補償指令値を油圧圧下シリンダに適用する請求項7に記載の圧延機の板厚制御方法。
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