以下、本発明の一実施形態を図1〜図40に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係る画像形成装置としての複合機2000の概略構成が示されている。
この複合機2000は、複写機、プリンタ、及びファクシミリの機能を有し、本体装置1001、読取装置1002、及び自動原稿給紙装置1003などを備えている。
本体装置1001は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、中間転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着ローラ2050、給紙コロ2054、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
読取装置1002は、本体装置1001の上側に配置され、原稿を読み取る。すなわち、読取装置1002は、いわゆるスキャナ装置である。ここで読み取られた原稿の画像情報は、本体装置1001のプリンタ制御装置2090に送られる。
自動原稿給紙装置1003は、読取装置1002の上側に配置され、セットされた原稿を読取装置1002に向けて送り出す。この自動原稿給紙装置1003は、一般にADF(Auto Document Feeder)と呼ばれている。
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信、及び公衆回線を介したデータ通信を制御する。
プリンタ制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路などを有している。そして、プリンタ制御装置2090は、読取装置1002からの画像情報あるいは通信制御装置2080を介した画像情報を光走査装置2010に送る。
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転する。
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
光走査装置2010は、プリンタ制御装置2090からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)に基づいて色毎に変調された光により、対応する帯電された感光体ドラムの表面をそれぞれ走査する。これにより、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。また、各感光体ドラムがそれぞれ像担持体である。そこで、以下では、各感光体ドラムの表面を被走査面あるいは像面ともいう。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像装置の方向に移動する。なお、この光走査装置2010の構成については後述する。
ところで、各感光体ドラムにおいて、光によって走査される領域は「走査領域」と呼ばれ、該走査領域のなかで画像情報が書き込まれる領域は、「有効走査領域」、「画像形成領域」、「有効画像領域」などと呼ばれている。また、各感光体ドラムにおける回転軸に平行な方向は「主走査方向」と呼ばれ、感光体ドラムの回転方向は「副走査方向」と呼ばれている。
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジ(図示省略)からのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(トナー画像)は、感光体ドラムの回転に伴って中間転写ベルト2040の方向に移動する。
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで中間転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出す。該記録紙は、所定のタイミングで中間転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出される。これにより、中間転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。カラー画像が転写された記録紙は、定着ローラ2050に送られる。
定着ローラ2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。トナーが定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次積み重ねられる。
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
次に、前記光走査装置2010の構成について説明する。
光走査装置2010は、一例として図2〜図5に示されるように、2つの光源(2200A、2200B)、4つのカップリングレンズ(2201a、2201b、2201c、2201d)、4つの開口板(2202a、2202b、2202c、2202d)、4つのシリンドリカルレンズ(2204a、2204b、2204c、2204d)、光偏向器2104、4つの走査レンズ(2105a、2105b、2105c、2105d)、8枚の折り返しミラー(2106A、2106B、2107a、2107b、2107c、2107d、2108a、2108d)、及び不図示の走査制御装置などを備えている。そして、これらは、光学ハウジング2300の所定位置に組み付けられている。
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向(回転軸方向)に沿った方向をY軸方向、光偏向器2104の回転軸に沿った方向をZ軸方向として説明する。また、以下では、便宜上、各光学部材における主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
光源2200Aと光源2200Bは、X軸方向に関して離れた位置に配置されている。各光源は、いずれも2つの発光部を有しており、少なくともZ軸方向に関して離間している2つの光束を射出する。
ここでは、光源2200Aから射出される2つの光束のうち、+Z側の光束を「光束La」といい、−Z側の光束を「光束Lb」という。また、光源2200Bから射出される2つの光束のうち、+Z側の光束を「光束Ld」といい、−Z側の光束を「光束Lc」という。
カップリングレンズ2201aは、光源2200Aから射出された光束Laの光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
カップリングレンズ2201bは、光源2200Aから射出された光束Lbの光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
カップリングレンズ2201cは、光源2200Bから射出された光束Lcの光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
カップリングレンズ2201dは、光源2200Bから射出された光束Ldの光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
シリンドリカルレンズ2204aは、カップリングレンズ2201aを介した光束Laの光路上に配置され、該光束をZ軸方向に関して集光する。
シリンドリカルレンズ2204bは、カップリングレンズ2201bを介した光束Lbの光路上に配置され、該光束をZ軸方向に関して集光する。
シリンドリカルレンズ2204cは、カップリングレンズ2201cを介した光束Lcの光路上に配置され、該光束をZ軸方向に関して集光する。
シリンドリカルレンズ2204dは、カップリングレンズ2201dを介した光束Ldの光路上に配置され、該光束をZ軸方向に関して集光する。
開口板2202aは、開口部を有し、シリンドリカルレンズ2204aを介した光束Laを整形する。
開口板2202bは、開口部を有し、シリンドリカルレンズ2204bを介した光束Lbを整形する。
開口板2202cは、開口部を有し、シリンドリカルレンズ2204cを介した光束Lcを整形する。
開口板2202dは、開口部を有し、シリンドリカルレンズ2204dを介した光束Ldを整形する。
各開口板の開口部を通過した光束は、光偏向器2104に入射する。
各光源と光偏向器2104との間の光路上に配置されている光学系は、「偏向器前光学系」とも呼ばれている。
光偏向器2104は、2段構造の回転多面鏡を有している。各回転多面鏡には6面の鏡面がそれぞれ形成されており、各鏡面が偏向反射面である。そして、1段目(下段)の回転多面鏡では、開口板2202bの開口部を通過した光束Lb及び開口板2202cの開口部を通過した光束Lcがそれぞれ偏向され、2段目(上段)の回転多面鏡では、開口板2202aの開口部を通過した光束La及び開口板2202dの開口部を通過した光束Ldがそれぞれ偏向されるように配置されている。
ここでは、光束La及び光束Lbは光偏向器2104の+X側に偏向され、光束Lc及び光束Ldは光偏向器2104の−X側に偏向される。
走査レンズ2105a及び走査レンズ2105bは、光偏向器2104の+X側に配置され、走査レンズ2105c及び走査レンズ2105dは、光偏向器2104の−X側に配置されている。
そして、走査レンズ2105aと走査レンズ2105bはZ軸方向に積層され、走査レンズ2105aは2段目の回転多面鏡に対向し、走査レンズ2105bは1段目の回転多面鏡に対向している。また、走査レンズ2105cと走査レンズ2105dはZ軸方向に積層され、走査レンズ2105cは1段目の回転多面鏡に対向し、走査レンズ2105dは2段目の回転多面鏡に対向している。
光偏向器2104で偏向された光束Laは、走査レンズ2105a、折り返しミラー2106A、折り返しミラー2107a、及び折り返しミラー2108aを介して、感光体ドラム2030aに照射され、光スポットが形成される。
光偏向器2104で偏向された光束Lbは、走査レンズ2105b、折り返しミラー2106A、及び折り返しミラー2107bを介して、感光体ドラム2030bに照射され、光スポットが形成される。
光偏向器2104で偏向された光束Lcは、走査レンズ2105c、折り返しミラー2106B、及び折り返しミラー2107cを介して、感光体ドラム2030cに照射され、光スポットが形成される。
光偏向器2104で偏向された光束Ldは、走査レンズ2105d、折り返しミラー2106B、折り返しミラー2107d、及び折り返しミラー2108dを介して、感光体ドラム2030dに照射され、光スポットが形成される。
各感光体ドラム上の光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って該感光体ドラムの長手方向(主走査方向)に沿って移動する。感光体ドラム2030a及び感光体ドラム2030bでは、−Y方向に光走査が行われ、感光体ドラム2030c及び感光体ドラム2030dでは、+Y方向に光走査が行われる(図6参照)。
光偏向器2104と各感光体ドラムとの間の光路上に配置されている光学系は、「走査光学系」とも呼ばれている。
ここで、図7に示されるように、Z軸方向からみたとき、回転多面鏡の回転中心を通り、X軸に平行な軸を「基準軸」とする。
Z軸方向からみたとき、光源から射出され、偏向反射面に入射する光束の進行方向と上記基準軸とのなす角をθinと表記する。ここでは、θin=55.0°となるように設定されている。
また、図8に示されるように、Z軸方向からみたとき、開口板の開口部を通過した光束の幅をdinと表記する。この光束が光偏向器2104に入射する。ここでは、din=3.8mmとなるように設定されている。
回転多面鏡に内接する円(図9参照)の直径は18mmである。そこで、回転多面鏡の回転中心から各偏向反射面に下ろした垂線の長さは9mmである。また、6つの偏向反射面を区別する必要があるときは、反時計まわりに面1、面2、面3、面4、面5、面6とする。
次に、光源2200Aから射出され、光偏向器2104に入射する光束と、光偏向器2104で偏向された光束について図10〜図12を用いて説明する。ここでは、回転多面鏡の面1で反射された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域に向かうものとする。
図10には、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域における走査開始位置に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光束と反射光束とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光束の全てが回転多面鏡の面1に入射するのではなく、光偏向器2104に入射する光束の一部は面6に入射するように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査開始位置に向かう光束の幅dsは、光偏向器2104に入射する光束の幅dinよりも小さくなる。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光束の一部が「けられ」ることとなる。ここでは、ds=3.5mmとなるように設定されている。
このとき、回転多面鏡の面1で反射された光束の進行方向と基準軸とのなす角θsは、40.0°である。また、基準軸に対する面1の傾斜角θ1は、42.5°である。
図11には、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域の中央位置に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光束と反射光束とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光束の全てが回転多面鏡の面1に入射するように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査領域の中央位置に向かう光束の幅dcは、光偏向器2104に入射する光束の幅dinと同じである。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光束の「けられ」はない。このとき、基準軸に対する面1の傾斜角θ1は、62.5°である。
図12には、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域における走査終了位置に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光束と反射光束とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光束の全てが回転多面鏡の面1に入射するのではなく、光偏向器2104に入射する光束の一部は面2に入射するように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査終了位置に向かう光束の幅deは、光偏向器2104に入射する光束の幅dinよりも小さくなる。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光束の一部が「けられ」ることとなる。ここでは、de=3.5mmとなるように設定されている。
このとき、回転多面鏡の面1で反射された光束の進行方向と基準軸とのなす角θeは、40.0°である。また、基準軸に対する面1の傾斜角θ1は、82.5°である。
|θs|+|θe|は、いわゆる走査画角(図13参照)に対応する角度であり、ここでは80.0°である。また、θs及びθeは、「走査半画角」と呼ばれている。ここでは、|θs|=|θe|である。
ここでは、感光体ドラムの走査領域における走査開始位置は、主走査方向に関する該走査領域の一側端部であり、感光体ドラムの走査領域における走査終了位置は、主走査方向に関する該走査領域の他側端部である。
なお、光源2200Bから射出され、光偏向器2104に入射する光束と、光偏向器2104で偏向された光束についても、上記光源2200Aから射出された光束と同様に設定されている。
ところで、回転多面鏡にレーザ光を入射させる方式として、アンダーフィルドタイプとオーバーフィルドタイプとがある。以下では、便宜上、アンダーフィルドタイプを「UFタイプ」、オーバーフィルドタイプを「OFタイプ」ともいう。
UFタイプでは、主走査方向に対応する方向に関して、上記偏向反射面の長さよりも入射光の幅が小さい(例えば、特開2005−92129号公報参照)。この場合、入射光のすべてが感光体ドラムに導光される。
OFタイプでは、主走査方向に対応する方向に関して、上記偏向反射面の長さよりも入射光の幅が大きい(例えば、特開平10−206778号公報、特開2003−279877号公報参照)。この場合、入射光における周辺の光は感光体ドラムに導光されない。
従来のUFタイプの光走査装置では、画像形成の高速化や画素密度の高密度化に対応するには、主走査方向に対応する方向に関して、偏向反射面の長さを大きくする必要があるため、回転多面鏡における面数を少なくするか、回転多面鏡における内接円の直径を大きくする必要があった。
しかしながら、上記面数を少なくすると、回転多面鏡の回転数を大きくしなければならない不都合があった。一方、上記内接円の直径を大きくした場合は、回転多面鏡の風損が増加し、消費電力が増加するという不都合があった。なお、光源数を増やし1つの偏向反射面で偏向されるビーム数を多くすることが考えられるが、光源数の増加とともに光源の駆動回路も大型化し、高コスト化を招く。
また、従来のOFタイプの光走査装置では、画像形成の高速化や画素密度の高密度化に対応するには、10面以上の回転多面鏡を用いる必要があるため、走査画角が小さくなり、光走査装置の大型化を招くという不都合があった。また、光束の周辺部が使用されないため、光利用効率が低いという不都合があった。
本実施形態における光走査装置2010では、(1)従来のUFタイプの光走査装置よりも、回転多面鏡を小型化することができる。そのため、消費電力を増加させることなく、回転多面鏡を高速で回転させることが可能となる。そして、光源数を増加させることなく、すなわち、高コスト化を招くことなく、画像形成の高速化や画素密度の高密度化に対応することができる。
また、本実施形態における光走査装置2010では、(2)従来のOFタイプの光走査装置よりも、走査画角を大きくすることができる。そのため、大型化を招くことなく、画像形成の高速化や画素密度の高密度化に対応することができる。
ところで、光学ハウジング2300は、金型を用いた樹脂成型品である。そして、光学ハウジング2300は、厚さ(板厚)tが約2mmであり、強度を確保するため、複数箇所にリブが設けられている。
図14〜図17には、本実施形態の光学ハウジング2300における光偏向器2104の取り付け部(以下では、便宜上、「偏向器取り付け部」ともいう)2310が示されている。なお、図15は、図14のA−A断面図であり、図16は、図14のB−B断面図である。また、図17は、偏向器取り付け部2310の斜視図である。
この偏向器取り付け部2310には、低速回転用の光偏向器及び高速回転用の光偏向器のいずれかを取り付けることができる。
この偏向器取り付け部2310は、中央部が−Z側にへこんでいる形状を有している。ここでは、へこんでいる部分を面P1とし、該面P1をとり囲む部分を面P2とする。面P1及び面P2は、いずれもZ軸に直交する平面に略平行である。
そして、面P1には、低速回転用の光偏向器のZ軸方向に関する位置決めを行うための4つの第1位置決め部(201、202、203、204)が設けられている。各第1位置決め部は面P1に対し+Z側に突出した部分であり、中央にねじ穴が形成されている。ここでは、各第1位置決め部の面P1に対する突出量h1(図18(A)及び図18(B)参照)を約0.5mmとしている。
各第1位置決め部の+Z側の面は、Z軸に直交する平面に平行であり、Z軸方向に関する位置が同じである。すなわち、4つの第1位置決め部の+Z側の面は、Z軸に直交する同一平面上にある。以下では、各第1位置決め部の+Z側の面を「第1基準面」ともいう。ここでは、各第1基準面は、1辺の長さが約10mmの正方形状である。
また、面P2には、高速回転用の光偏向器のZ軸方向に関する位置決めを行うための4つの第2位置決め部(205、206、207、208)が設けられている。各第2位置決め部は面P2に対し+Z側に突出した部分であり、中央にねじ穴が形成されている。ここでは、各第2位置決め部の面P2に対する突出量h2(図19(A)及び図19(B)参照)を約0.5mmとしている。
各第2位置決め部の+Z側の面は、Z軸に直交する平面に平行であり、Z軸方向に関する位置が同じである。すなわち、4つの第2位置決め部の+Z側の面は、Z軸に直交する同一平面上にある。以下では、各第2位置決め部の+Z側の面を「第2基準面」ともいう。ここでは、各第2基準面は、1辺の長さが約10mmの正方形状である。
ここで、低速回転用の光偏向器(光偏向器2104Aという)について説明する。光偏向器2104Aは、回転数としては30000〜40000回転以下の比較的低速回転用で低コストな光偏向器である。
この光偏向器2104Aは、一例として図20及び図21に示されるように、回転部材10、回路基板41、駆動IC43、コネクタ44などを有している。
図22には、回転部材10のYZ断面が示されている。この回転部材10は、回転多面鏡12、保持部材13、シャフト15、ロータ31などを有している。
回転多面鏡12は、アルミニウム合金製であり、偏向反射面の加工は複数の回転多面鏡で同時に行い、低コスト化を図っている。ここでは、回転多面鏡12の内接円の直径は18mmである。
保持部材13は、回転多面鏡12を保持する鋼製部材である。シャフト15は、ステンレス鋼製の棒状部材であり、保持部材13に取り付けられている。ロータ31は、樹脂をバインダに使用したボンド磁石であり、径方向に着磁されている。
図23には、図20において、回転部材10を取り外した状態が示されている。シャフト15が挿入される軸受部材21が回路基板41に固定されている。そして、軸受部材21にステータコア32が取り付けられ、該ステータコア32に巻き線コイル33が取り付けられている。
ロータ31とステータコア32と巻き線コイル33とからモータが構成されている(図24参照)。このモータは、ステータコア32の外周部近傍にロータ31が配置されているアウターロータ型の直流ブラシレスモータである。ロータ31は、ステータコア32の外周部とで回転トルクを発生し回転する。
駆動IC43は、不図示のホール素子の出力信号を回転部材10の位置信号として参照し、巻き線コイル33の励磁切り替えを行う。これにより、回転部材10の回転が継続される。
コネクタ44には不図示のハーネスが接続され、走査制御装置からの電力供給、モータの起動、停止、及び回転数等の制御信号の入出力が行われる。
回路基板41には、巻き線コイル33と駆動IC43とを電気的に接続する配線パターン、ホール素子と駆動IC43とを電気的に接続する配線パターン、コネクタ44とホール素子及び駆動IC43とを電気的に接続する配線パターンなどが形成されている。
光偏向器2104Aでは、回路基板41の−Z側の面と、回転多面鏡12の−Z側の偏向反射面の中心との距離D1(図21参照)は、11mmである。
次に、高速回転用の光偏向器(光偏向器2104Bという)について説明する。光偏向器2104Bは、回転数が30000〜40000回転以上で用いても、耐久性が高い。
この光偏向器2104Bは、一例として図25及び図26に示されるように、回転部材11、回路基板42、駆動IC43、コネクタ44などを有している。
図27には、回転部材11のYZ断面が示されている。この回転部材10は、回転多面鏡16、シャフト15、ロータ31などを有している。
回転多面鏡16は、アルミニウム合金製であり、単品毎に加工され、前記光偏向器2104Aの回転多面鏡12よりも高コストである。ここでは、回転多面鏡16の内接円の直径は18mmである。
シャフト15及びロータ31は、回転多面鏡16に取り付けられている。回転部材11は、前記光偏向器2104Aの回転部材10よりも重心が低い。
図28には、図25において、回転部材11を取り外した状態が示されている。シャフト15が挿入される軸受部材22が回路基板42に固定されている。そして、軸受部材22にステータコア32が取り付けられ、該ステータコア32に巻き線コイル33が取り付けられている。
軸受部材22は、前記光偏向器2104Aの軸受部材21よりも高速回転に耐えるように設定されており高コストである。すなわち、光偏向器2104Bは、光偏向器2104Aよりも高価である。
光偏向器2104Bでは、回路基板42の−Z側の面と、回転多面鏡16の−Z側の偏向反射面の中心との距離D2(図25参照)は、3mmである。
光偏向器2104Aと光偏向器2104Bとを比較すると、図29に示されるように、Z軸方向に関する長さ(高さ)が異なっている。ここでは、Z軸方向に関して、光偏向器2104Bにおける偏向反射面の位置は、光偏向器2104Aにおける偏向反射面の位置よりも、8(=11−3)mmだけ低い。
光偏向器2104Aは、回路基板41の−Z側の面が4つの第1基準面上に載置され、ねじ固定される(図30及び31参照)。光偏向器2104Aが偏向器取り付け部2310に固定されている状態が図32に示されている。
光学ハウジング2300は、回転多面鏡のくもりや、光学部材の汚れとそれに伴う光学性能の劣化を防止するため、感光体ドラムに向けて光が射出される窓に防塵ガラスを設けるとともに、さらに蓋部材を設けて、光学ハウジング2300の内部を略密閉構造としている。そこで、4つの第2位置決め部(205、206、207、208)のねじ穴が貫通孔であれば、図33に示されるように、該ねじ穴をシール部材40で塞ぐことで外部からの塵埃の進入を防止することができる。例えば、直径10mm程度の樹脂シートを両面テープ貼り付けても良い。なお、シール部材40に代えて、接着剤をねじ穴に充填しても良い。
光偏向器2104Bは、回路基板42の−Z側の面が4つの第2基準面上に載置され、ねじ固定される(図34及び35参照)。光偏向器2104Bが偏向器取り付け部2310に固定されている状態が図36に示されている。
本実施形態では、第1基準面と第2基準面のZ軸方向に関する位置の差Dz(図37参照)を8mmとしている。そこで、図38に示されるように、光偏向器2104Aが取り付けられても、光偏向器2104Bが取り付けられても、Z軸方向に関する偏向反射面の位置を同じとすることができる。その結果、光偏向器2104A及び光偏向器2104Bのどちらが取り付けられても、所望の結像特性を得ることができる。
ところで、最近のデジタル複合機(MFP:Multi−function Printer)、複写機、及びプリンタなどの画像形成装置では、印刷速度が異なる複数機を同一機種群とし、低速機(例えば、20枚/分)から高速機(例えば60枚/分)までを同じプラットフォームで製造している。印刷速度が異なる複数機における光走査装置では、例えば、20000rpm〜60000rpmで回転多面鏡が回転する光偏向器が用いられ、印刷速度に対応した回転数で回転多面鏡が回転する。
しかしながら、上述したように、低速回転用の光偏向器と高速回転用の光偏向器とでは、回転部材の構造が異なり、取り付け基準面からの回転多面鏡の高さが異なるため、低速機から高速機までを含む一の機種群では、高速回転用の光偏向器を低速機に対しても使用しており、高コストになっていた。
特許文献1には、種類の異なる偏向器を接続板を介して共通の筐体に取り付ける偏向器の取付構造、及び該取付構造を備える走査光学装置が開示されている。この場合、筐体の取り付け面に直交する方向と光偏向器の回転軸の方向とを一致させたいが、接続板を介在させることで傾き誤差が加わり、走査光学系の結像性能が劣化するおそれがあった。
本実施形態では、Z軸方向に直交する面に平行な第1基準面と第2基準面を、Z軸方向に関して異なる位置に設けている。この場合は、低速回転用の光偏向器及び高速回転用の光偏向器のいずれを使用しても、走査光学系の結像性能が劣化するおそれはない。
また、本実施形態では、4つの第1基準面を含む平面と4つの第2基準面を含む平面とでは、基準面間の距離が大きい4つの第2基準面を含む平面のほうが、Z軸に直交する平面に対する誤差が少ない。そこで、光偏向器を第2位置決め部に取り付けたときのほうが第1位置決め部に取り付けたときよりも光偏向器の回転軸の傾き誤差を小さく抑えることができる。
すなわち、第2基準面は、高解像の画像形成用の光偏向器の取り付け基準面としても好適である。
このように、光走査装置2010は、結像性能仕様が異なる機種間、あるいは、将来的な結像性能アップやコストダウンに対応しつつ、光偏向器以外は共通利用が可能な光走査装置である。
なお、光偏向器2104Bが取り付けられる際に、回路基板42の−Z側の面と接するように、第1基準面上に放熱部材500を載置しても良い(図39及び図40参照)。なお、図40は、図39のA−A断面図である。これにより、熱容量が増加し、高速回転により発熱量が大きくなっても、光偏向器2104Bの温度上昇を抑えることができる。そして、その結果、光偏向器2104Bにおける回転部材の不釣合い振動の増加が低減され、該振動に伴う走査位置のばらつきやバンディング等の画像劣化要因を抑制することができる。
放熱部材500としては、アルミニウム合金板、鋼板、金属粉を含む樹脂、熱伝導性に優れたセラミックスなどを用いることができる。また、放熱部材500は、光偏向器2104Bの回路基板42の−Z側の面に貼り付けられても良い。
また、光偏向器2104Bが取り付けられたときに、回路基板42の−Z側の面と接するように、第1基準面上に防振部材を載置しても良い。これにより、高速回転しても、振動及び騒音を小さくすることができる。防振部材としては、樹脂を間に挟んで複数の鋼板が積層された制振鋼板を用いることができる。なお、この防振部材は、回路基板42の−Z側の面に貼り付けられても良い。
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置2010によると、光学ハウジング2300の偏向器取り付け部2310に、接続板などを介在させずに、印刷速度に対応した光偏向器を選択して取り付けることができる。この場合は、いずれの光偏向器が選択されても、走査光学系の結像性能が劣化するのを抑制することができる。すなわち、走査光学系の結像性能を劣化させることなく、低コスト化を図ることができる。
また、回転多面鏡で反射された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域の中央部に向かうタイミングでは、回転多面鏡に入射する光束の全てが、一の反射面で反射され、回転多面鏡で反射された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域の各端部に向かうタイミングでは、回転多面鏡に入射する光束の一部が、一の反射面で反射され、その残りが他の反射面で反射されるように設定されている。この場合は、回転多面鏡を小型化するとともに、走査画角を大きくすることができる。
そこで、光走査装置2010は、画像品質の低下を招くことなく、低コストで更なる小型化及び高速化を図ることができる。
そして、複合機2000は、光走査装置2010を備えているため、結果として、画像(出力画像)品質を低下させることなく、低コストで小型化及び高速化を図ることができる。
なお、上記実施形態では、各基準面の形状が正方形状の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、各基準面の形状が円形状であっても良い。
また、各基準面の大きさも上記実施形態に限定されるものではない。
また、上記実施形態では、各基準面の形状が同じ場合について説明したが、これに限定されるものではない。
また、上記実施形態では、各基準面にねじ穴が設けられている場合について説明したが、これに限定されるものではない。一例として図41に示されるように、基準面とは異なる位置にねじ穴が設けられていても良い。
また、上記実施形態では、第1基準面が4つ設けられている場合について説明したが、これに限定されるものではない。第1基準面が3つ以上設けられ、そのうち2つが回転部材の回転軸(シャフト)を間に挟んで設けられていても良い。
また、上記実施形態では、第2基準面が4つ設けられている場合について説明したが、これに限定されるものではない。第2基準面が3つ以上設けられ、そのうち2つが回転部材の回転軸(シャフト)を間に挟んで設けられていても良い。
また、上記実施形態において、2つの第1基準面が繋がっていても良い(図42参照)。同様に、2つの第2基準面が繋がっていても良い(図42参照)。
また、上記実施形態において、4つの第1基準面が繋がっていても良い(図43参照)。同様に、4つの第2基準面が繋がっていても良い(図43参照)。
また、上記実施形態における寸法は一例であり、これに限定されるものではない。
なお、上記実施形態では、走査領域における走査開始位置に向かうタイミング及び走査終了位置に向かうタイミングの両方において、入射光束が光偏向器2104で「けられ」る場合について説明したが、これに限定されるものではなく、走査領域における走査開始位置に向かうタイミング及び走査終了位置に向かうタイミングのいずれかにおいて、入射光束が光偏向器2104で「けられ」ても良い。
また、上記実施形態では、dinが3.8mmの場合について説明したがこれに限定されるものではない。
また、上記実施形態では、回転多面鏡に内接する円の直径が18mmの場合について説明したがこれに限定されるものではない。
また、上記実施形態では、回転多面鏡に6面の鏡面が形成されている場合について説明したがこれに限定されるものではない。
また、上記実施形態において、走査領域の一側端部に向かう光束の光偏向器での「けられ」量と、走査領域の他側端部に向かう光束の光偏向器での「けられ」量とが異なっていても良い。
また、上記実施形態では、|θs|=|θe|の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
また、上記実施形態において、回転多面鏡にレーザ光を入射させる方式が、従来のUFタイプであっても良いし、従来のOFタイプであっても良い。
また、上記実施形態において、光源にモノリシックな端面発光レーザアレイや面発光レーザアレイを用いても良い。
また、上記実施形態では、感光体ドラムの数が4つの場合について説明したが、これに限定されるものではない。
また、上記実施形態では、本体装置1001が多色カラープリンタの場合について説明したが、これに限定されるものではなく、モノクロプリンタであっても良い。
また、上記実施形態では、それぞれ2つの発光部を有する2つの光源が用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、それぞれ1つの発光部を有する4つの光源を用いても良い。また、それぞれ1つの発光部を有する2つの光源を用い、各光源から射出された光束を2分割しても良い。
また、上記実施形態では、画像形成装置として複合機の場合について説明したが、これに限定されるものではない。画像形成装置が、単独の複写機、プリンタ、及びファクシミリ装置であっても良い。
また、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。