JP2015129674A - 分光透過率測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】分光透過率測定装置において、軸上色収差を生じさせる被検レンズの分光測定を行う際に分光測定に用いる測定光束の光量低下を抑制することができ測定精度を向上することができるようにする。
【解決手段】分光透過率測定装置100は、光源1と、測定光束L2を形成する第1光学系2と、測定光束L2の光路上に被検レンズ3を配置するレンズ支持枠5と、被検レンズ3に起因する軸上色収差を補正する色収差補正レンズ4Aを含み被検レンズ3を透過した測定光束L3を集光する第2光学系4と、測定光束L5の集光位置に配置された絞り8aと、絞り8aを透過した測定光束L5を分光して分光強度データを取得する分光器8と、測定光束L5の集光位置を調整するために被検レンズ3および色収差補正レンズ4Aを測定光軸Oに沿う方向に移動する移動ステージ6とを備える構成とする。
【選択図】図1

Description

本発明は分光透過率測定装置に関する。
従来、屈折力を有する被検物の分光透過率測定を行う分光透過率測定装置として、被検物からの透過光束を積分球に入射させた後に、分光器による測定を行う装置が知られている。
例えば、特許文献1には、光源からの光束を被検レンズの位置に集束させる照射光学系と、被検レンズの透過光束を入射窓から取り込んで内部で拡散反射させた後、入射窓の光軸とはずれた位置にある出射窓から外部へ出射する積分球とを備え、この積分球の出射窓から射出された光束を、分光手段に入射させて分光透過率を測定する分光透過率測定装置が記載されている。
特許第3871415号公報
しかしながら、上記のような従来の分光透過率測定装置には以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、測定に用いる光束を積分球の内部で拡散反射させるため、積分球を用いない場合に比べて光量損失が大きくなり、測定に用いることができる光量が低下してしまうという問題がある。このため、分光器の出力のS/Nが悪くなり、測定精度が低下するという問題がある。
被検物の透過光束を集光して、積分球を介することなく分光器に入射させることも考えられるが、被検物が屈折力を有するレンズである場合には、このレンズに起因する軸上色収差により測定誤差が発生するという問題がある。
すなわち、軸上色収差により波長ごとの集光位置が分光器の絞り位置に対してずれると、色ズレした波長光が分光器の絞りによってけられて、正確な分光強度分布が得られなくなる。
また、測定波長内のすべての波長光が分光器の絞りに入射するように集光位置が調整できたとしても、絞り位置における波長ごとにデフォーカス量は異なる。このため、デフォーカス量が大きな波長光は、絞りと共役な位置関係にある分光器の光電変換素子上でもぼけてしまい、分光強度の測定誤差が生じてしまうという問題がある。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、軸上色収差を生じさせる被検レンズの分光測定を行う際に、分光測定に用いる測定光束の光量低下を抑制することができ、測定精度を向上することができる分光透過率測定装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の態様の分光透過率測定装置は、光源と、該光源からの光を集光して、軸上色収差を生じさせる被検レンズに照射する測定光束を形成する第1光学系と、前記測定光束の光路上に前記被検レンズを配置する被検レンズ配置部と、該被検レンズ配置部に配置された前記被検レンズに起因する軸上色収差を補正する色収差補正光学系を含み、前記被検レンズを透過した前記測定光束を集光する第2光学系と、該第2光学系による前記測定光束の集光位置に配置された絞りと、該絞りを透過した前記測定光束を分光して、分光強度データを取得する分光器と、前記第2光学系による前記測定光束の集光位置を調整するために、前記被検レンズおよび前記色収差補正光学系の少なくとも一方、または前記色収差補正光学系を除く前記第2光学系を光軸に沿う方向に移動する第1の移動機構と、を備える構成とする。
上記分光透過率測定装置においては、前記色収差補正光学系は、前記被検レンズ配置部に配置された前記被検レンズに対して前記光軸に沿う方向の位置が変更可能な第2の移動機構によって移動可能に支持され1群以上の移動レンズ群と、前記被検レンズ配置部に配置された前記被検レンズに対して前記光軸に沿う方向の位置が固定された1群以上の固定レンズ群と、を備え、前記第2の移動機構によって前記移動レンズ群を前記光軸に沿う方向に移動することにより、前記被検レンズに起因する軸上色収差を補正できるようにしたことが好ましい。
上記分光透過率測定装置においては、前記色収差補正光学系は、回折レンズを備えることが好ましい。
上記分光透過率測定装置においては、前記第2光学系は、前記色収差補正光学系を含み、前記被検レンズを透過した前記測定光束を平行光束にする前側レンズ群と、該前側レンズ群を透過した前記平行光束を前記絞りの位置に集光する後側レンズ群と、を備えることが好ましい。
本発明の分光透過率測定装置によれば、被検レンズに起因する軸上色収差を補正する色収差補正光学系を含む第2光学系によって、被検レンズを透過した測定光束を集光して分光器に入射させるため、軸上色収差を生じさせる被検レンズの分光測定を行う際に、分光測定に用いる測定光束の光量低下を抑制することができ、測定精度を向上することができるという効果を奏する。
本発明の第1の実施形態の分光透過率測定装置の構成を示す模式的な構成図である。 本発明の第1の実施形態の分光透過率測定装置の制御ユニットの機能ブロック図である。 本発明の第1の実施形態の分光透過率測定装置の動作を説明するための模式的な光路図である。 本発明の第2の実施形態の分光透過率測定装置の構成を示す模式的な構成図である。 本発明の第2の実施形態の分光透過率測定装置の制御ユニットの機能ブロック図である。 本発明の第3の実施形態の分光透過率測定装置の構成を示す模式的な構成図である。 本発明の第3の実施形態の分光透過率測定装置の動作を説明するための模式的な光路図である。
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態の分光透過率測定装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の分光透過率測定装置の構成を示す模式的な構成図である。図2は、本発明の第1の実施形態の分光透過率測定装置の制御ユニットの機能ブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の分光透過率測定装置100は、軸上色収差を生じさせる透過型光学素子である被検レンズ3の分光透過率を測定する装置である。分光透過率測定装置100では、被検レンズ3と、分光透過率が既知の基準レンズ30(被検レンズ)とにそれぞれ測定光束を照射して、それぞれの透過光束の分光強度を測定し、これら分光強度を演算処理することにより分光透過率を求める。
被検レンズ3は、有限の焦点距離を有し、軸上色収差を生じさせる適宜のレンズまたはレンズ群を採用することができる。
図1では、被検レンズ3の一例として、両凸レンズの場合の例が描かれているが、単レンズの場合の被検レンズ3の種類はこれには限定されない。例えば、平凸レンズ、両凹レンズ、平凹レンズ、正メニスカスレンズ、負メニスカスレンズでもよい。
また、被検レンズ3のレンズ面の曲面の種類も特に限定されず、例えば、球面、非球面、自由曲面などの曲面を採用することができる。
また、被検レンズ3がレンズ群からなる場合、例えば、接合レンズの形態でもよいし、複数のレンズまたはレンズ群を組み合わせたレンズユニットの形態でもよい。
基準レンズ30は、分光透過率値の基準となる分光透過率が既知の被検レンズであり、被検レンズ3と同様に、有限の焦点距離を有し、軸上色収差を生じさせる適宜のレンズまたはレンズ群を採用することができる。
基準レンズ30の焦点距離は、被検レンズ3の焦点距離と異なっていてもよい。ただし同一であれば、後述する配置位置の設定等を基準レンズ30の測定時に変えなくてもよいため、より効率的に測定を行うことができる。以下では、特に断らない限り、被検レンズ3および基準レンズ30の焦点距離が同一の場合の例で説明する。
基準レンズ30に起因する軸上色収差は、被検レンズ3と同様であるか、または後述する第2光学系4によって被検レンズ3に起因する軸上色収差以下に補正できる必要がある。
本実施形態では、基準レンズ30は、一例として、被検レンズ3として製造されたレンズの良品の1つを用いている。
基準レンズ30の分光透過率は、予め他の測定機で分光透過率を測定しておくことができる。また、基準レンズ30に用いられている硝材の屈折率の理論値などから算出した分光透過率を採用することも可能である。
基準レンズ30の分光透過率は、後述する制御ユニット9に予め記憶されている。
分光透過率測定装置100では、被検レンズとして、被検レンズ3または基準レンズ30を配置して測定を行う。以下、分光透過率測定装置100の具体的な構成や光路の説明では、特に断らない限りは、被検レンズ3を配置した場合の例で説明し、基準レンズ30に関しては、被検レンズ3を配置する場合と異なる点を必要に応じて説明する。
分光透過率測定装置100の概略構成は、光源1、第1光学系2、第2光学系4、レンズ支持枠5(被検レンズ配置部)、移動ステージ6(第1の移動機構)、分光器8、および制御ユニット9を備える。
このうち、光源1、第1光学系2、第2光学系4、および分光器8は、この順に配列され、分光器8の入射光軸で決まる測定光軸O(光軸)と同軸となるように配置されている。
光源1は、被検レンズ3を照明する測定光束L2を形成するための発散光束L0(光源からの光)を発生するもので、分光透過率の測定範囲に対応する波長帯域を有する適宜の光源を採用することができる。
本実施形態では、詳細の図示は省略するが、一例として、ハロゲンランプ、集光レンズ、およびピンホール絞りを備える。このような光源1は、ハロゲンランプから出射される白色光を集光レンズにより集光してピンホール絞りに照射することで、ピンホール絞りの開口から発散光束L0を出射することができる。
光源1は、発散光束L0の光軸が測定光軸Oに整列するように配置されている。
第1光学系2は、発散光束L0を集光して、被検レンズ3に照射する測定光束L2を形成するものである。
本実施形態では、第1光学系2は、発散光束L0を集光して、平行光束L1を形成するコリメータレンズ2Aと、平行光束L1を集光して、被検レンズ3に照射する対物レンズ2Bとを備える。
コリメータレンズ2Aおよび対物レンズ2Bは、それぞれのレンズ光軸が測定光軸Oに整列するように配置されている。
本実施形態では、第1光学系2は、色消し光学系を採用している。
図1は、模式図のため、コリメータレンズ2A、対物レンズ2Bを、両凸レンズのように描かれている。しかし、コリメータレンズ2A、対物レンズ2Bは、上記のような結像性能を備える適宜のレンズまたはレンズ群を採用することができ、レンズ構成やレンズ枚数は、特に限定されない。
測定光束L2は、対物レンズ2Bによって集光されると、対物レンズ2Bの後側焦点位置である点Pに集光された後、発散して、測定光軸Oと同軸に配置された被検レンズ3に照射される。
測定光束L2は、被検レンズ3を透過すると、被検レンズ3から測定光束L3として出射され、被検レンズ3の屈折力に応じて集光または発散されて、測定光軸Oに沿って進む。
第2光学系4は、測定光束L3を集光するレンズまたはレンズ群であり、本実施形態では、物体側である被検レンズ3の方から順に、色収差補正レンズ4A(色収差補正光学系、前側レンズ群)、集光レンズ4B(後側レンズ群)を備える。
色収差補正レンズ4Aは、測定光束L3を集光して平行光束である測定光束L4を形成するとともに、被検レンズ3に起因する軸上色収差を補正するレンズまたはレンズ群である。
集光レンズ4Bは、測定光束L4を集光して収束光束である測定光束L5を形成し、測定光束L5を測定光軸O上の点Qに集光するレンズまたはレンズ群である。
図1は、模式図のため、色収差補正レンズ4A、集光レンズ4Bは、両凸レンズのように描かれている。しかし、色収差補正レンズ4Aは、上記のような結像性能を備える適宜のレンズまたはレンズ群を採用することができ、レンズ構成やレンズ枚数は、特に限定されない。
また、集光レンズ4Bとしては、色消し光学系が採用される。このため、集光レンズ4Bは複数枚のレンズから構成されている。
色収差補正レンズ4Aのレンズ構成は、レンズ種類、硝材のアッベ数、配置位置等を仮定して、例えば、光線追跡等の光学シミュレーションにより色消し設計を行うことで、被検レンズ3の光学パラメータに応じて決定することができる。その際の収差設計の目標値は、後述する絞り8aにおけるボケ量が分光強度測定における許容誤差範囲内に収まっていればよい。
近軸理論が適用できる場合には、周知の合成光学系における色消し条件等の連立方程式を解くことで、レンズ焦点距離、アッベ数、および配置位置を求めることもできる。
集光レンズ4Bは、その後側焦点位置が測定光軸O上において後述する絞り8aの中心に一致するように配置され、図示略の保持部材によって、図示略の装置筐体に固定されている。
レンズ支持枠5は、被検レンズ3と、第2光学系4の色収差補正レンズ4Aとを、それぞれのレンズ光軸が測定光軸Oと同軸となるように、着脱可能に保持する装置部分である。
レンズ支持枠5における被検レンズ3と色収差補正レンズ4Aとの測定光軸O上の相対位置関係は、被検レンズ3および色収差補正レンズ4Aからなる合成光学系が色消しされる条件で決まる一定の位置関係に保持される。すなわち、被検レンズ3および色収差補正レンズ4Aが同軸に配置され、レンズ間隔(空気間隔)が所定の間隔に設定される。
なお、基準レンズ30の焦点距離等が被検レンズ3と異なる場合には、レンズ支持枠5に、基準レンズ30および色収差補正レンズ4Aからなる合成光学系が色消しされる相対位置関係に保持する保持部を必要に応じて設けておく。
このような構成により、レンズ支持枠5は、測定光束L2の光路上に被検レンズ3を配置する被検レンズ配置部を構成している。
移動ステージ6は、第2光学系4による測定光束L5の集光位置を調整するために、被検レンズおよび色収差補正レンズ4A、または集光レンズ4Bを測定光軸Oに沿う方向に移動する装置部分である。
本実施形態では、移動ステージ6は、レンズ支持枠5を測定光軸Oに沿う方向に移動する1軸移動ステージから構成される。1軸移動ステージとしては、例えば、送りねじとモータとを備える構成やリニアモータを備える構成などを採用することができる。
このような構成により、移動ステージ6は、被検レンズ3および色収差補正レンズ4Aを測定光軸Oに沿う方向に移動する場合の例になっている。
移動ステージ6は、後述する制御ユニット9と通信可能に接続されており、制御ユニット9からの制御信号に応じて駆動される。
移動ステージ6は、複数の被検レンズ3を交換して測定する際に、例えば、被検レンズ3の製作誤差等により測定光束L5の集光位置が測定光軸Oに沿う方向にずれた場合に、集光位置の調整を行うために用いることができる。
また、移動ステージ6は、例えば、焦点距離が異なる別の種類の被検レンズ3を測定する場合や、基準レンズ30が被検レンズ3と異なる焦点距離を有する場合に、変化する測定光束L5の集光位置を調整するために用いることもできる。
分光器8は、測定光軸O上に配置された絞り8aから入射した測定光束L5の分光強度を測定する装置部分であり、回折格子8b、およびラインセンサ8cを備える。
回折格子8bは、絞り8aから入射された測定光束L5を回折して、波長ごとに分解し、ラインセンサ8cの異なる受光素子上に結像するものである。
ラインセンサ8cは、各受光素子の受光量に応じた出力信号を取得し、この出力信号を各受光素子の位置に対応する波長の情報とともに後述する制御ユニット9に送出する光電変換素子である。
ここで、出力信号は、分光器8において、ラインセンサ8cと接続された図示略の制御回路によってA/D変換後に送出してもよいし、アナログ信号として後述の制御ユニット9に出力し、制御ユニット9においてA/D変換してもよい。以下では、一例として、分光器8内でA/D変換が行われ、デジタル化された出力信号が制御ユニット9に送出される場合の例で説明する。
制御ユニット9は、分光透過率測定装置100の動作制御を行う装置部分であり、図2に示すように、測定制御部50、データ取得部51、演算処理部52、および記憶部53を備える。
測定制御部50は、測定者が操作入力を行う操作部10、移動ステージ6、および測定結果や操作画面を表示する表示モニタ11と通信可能に接続されるとともに、制御ユニット9の内部のデータ取得部51、演算処理部52、および記憶部53と通信可能に接続されている。
これにより、測定制御部50は、操作部10からの入力に基づいて、分光透過率測定装置100の測定動作に関する制御を行うことが可能である。
操作部10からの入力としては、分光透過率測定の開始および停止の入力、被検レンズ3の測定と基準レンズ30の測定との区別の入力、被検レンズ3、基準レンズ30を測定する際のレンズ支持枠5の移動位置に関する情報等の入力が可能である。
操作部10の装置構成としては、例えば、操作スイッチ、キーボード、マウス、タッチ入力デバイスなどの適宜の装置構成を採用することができる。
測定制御部50は、操作部10から入力された情報を必要に応じて記憶部53に記憶させることができる。
測定制御部50は、制御ユニット9と通信可能に接続されたデータ取得部51に制御信号を送出することにより、データ取得部51のデータ取得動作を制御することができる。
また、測定制御部50は、演算処理部52に制御信号を送出することにより、演算処理部52による演算処理動作を制御することができる。
測定制御部50は、記憶部53に記憶された演算処理部52の演算結果を取得すると、その演算結果について、数値情報やグラフなどからなる表示用の画像情報に変換し、表示モニタ11に表示させることができる。
データ取得部51は、測定制御部50からの制御信号に基づいて、制御ユニット9からラインセンサ8cの出力信号および各受光素子の位置に対応する波長の情報を取得するものである。
データ取得部51が取得した出力信号および各受光素子の位置に対応する波長の情報は、演算処理部52に送出される。
このため、データ取得部51は、制御ユニット9、測定制御部50、および演算処理部52と通信可能に接続されている。
演算処理部52は、測定制御部50からの制御信号に基づいて、データ取得部51から送出された出力信号に演算処理を施すものであり、データ取得部51、記憶部53、および測定制御部50と通信可能に接続されている。
演算処理部52は、データ取得部51から出力信号および波長の情報が送出されると、これらのデータを配列に格納して、分光強度データとして記憶部53に記憶させる。
測定制御部50から、演算処理を開始させる制御信号が送出されると、この制御信号に基づいて、演算処理を行い、演算結果を記憶部53に記憶させる。演算処理の詳細については後述する。
制御ユニット9の装置構成は、本実施形態では、CPU、メモリ、入出力インターフェース、外部記憶装置などからなるコンピュータからなり、これにより上記のような制御信号を生成する適宜の制御プログラムや、後述する演算処理を行う演算プログラムが実行されるようになっている。
次に、分光透過率測定装置100の動作について、第2光学系4の作用を中心として説明する。
図3(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態の分光透過率測定装置の動作を説明するための模式的な光路図である。
分光透過率測定装置100によって、被検レンズ3の分光透過率を測定するには、被検レンズ3に測定光束L2を照射した際の透過光束の分光強度の測定(以下、被検レンズ3の分光強度測定という)と、基準レンズ30に測定光束L2を照射した際の透過光束の分光強度の測定(以下、基準レンズ30の分光強度測定という)とを行う。次に、それぞれの分光強度の測定結果から被検レンズ3の分光透過率を算出する。
被検レンズ3の分光強度測定と、基準レンズ30の分光強度測定とは、どちらを先に実行してもよい。以下では、一例として、被検レンズ3の分光強度測定を先に行うものとして説明する。
分光透過率測定装置100は、予め各装置部分と測定光軸Oとの位置合わせが行われており、光源1は、予め点灯され、光源1からは安定した光量の発散光束L0が出射されている。
操作者が、操作部10を通して、被検レンズ3の測定を開始する操作入力を行うと、測定制御部50は、予め記憶部53に記憶された、被検レンズ3を測定する際のレンズ支持枠5の位置情報を読み込む。そして、測定制御部50は、この位置情報に基づいて、移動ステージ6を駆動する制御信号を移動ステージ6に送出する。
これにより、移動ステージ6が駆動され、レンズ支持枠5が被検レンズ3を測定する位置に移動される。
次に、被検レンズ3をレンズ支持枠5に保持させる。これは、測定者が人手によって行ってもよいし、例えば、図示略の搬送ロボットなどを用いて行ってもよい。
これにより、被検レンズ3と色収差補正レンズ4Aとの位置関係が、色消し条件を満足する位置関係に固定される。これにより、被検レンズ3と色収差補正レンズ4Aとからなる合成光学系が色消し光学系になり、色収差補正レンズ4Aによって、被検レンズ3に起因する軸上色収差が補正されることになる。
ここで、被検レンズ3をレンズ支持枠5に保持させた場合の分光透過率測定装置100内の光路について説明する。
図1に示すように、光源1から出射された発散光束L0は、コリメータレンズ2Aによって平行光束L1とされ、対物レンズ2Bに入射する。
対物レンズ2Bに入射した平行光束L1は、対物レンズ2Bを透過すると集光されて、測定光束L2として測定光軸Oに沿って進む。
測定光束L2は、対物レンズ2Bの後側焦点位置である測定光軸O上の点Pで結像された後に発散し、被検レンズ3に到達する。
コリメータレンズ2Aおよび対物レンズ2Bからなる第1光学系2は、色消し光学系になっているため、点Pにおいて、軸上色収差は抑制されている。このため、測定光束L2における各波長光は、すべて点Pから放射された発散光束として、被検レンズ3に入射する。
被検レンズ3に入射した測定光束L2は、被検レンズ3の屈折力に応じて、集光または発散されて測定光束L3として測定光軸Oに沿って進む。
このとき、被検レンズ3は色分散を有するため、被検レンズ3のレンズ面における屈折角は波長によって異なる。
例えば、図3(a)に模式的に示すように、点Pから測定光軸Oに対して斜め方向に進む光線r1は、被検レンズ3を透過すると、例えば、赤色光成分r1(例えば、C線(波長656nm)の波長成分)と、青色光成分r2(例えば、F線(波長486nm)の波長成分)とでは、青色光成分r2の方がより顕著に屈折される。この場合、赤色光成分r1の光束径が相対的に広がり、青色光成分r2の光束径が相対的に狭まる。
本実施形態では、被検レンズ3と色収差補正レンズ4Aとの合成光学系は、色消し条件を満足している。このため、測定光束L3が色収差補正レンズ4Aを透過すると、測定光束L3に発生した光線の色ズレが補正される。これにより、色ズレを有しない測定光束L4が形成される。
測定光束L4が集光レンズ4Bに到達すると、測定光束L4が集光されて、測定光束L5として、測定光軸Oに沿って進む。
本実施形態では、集光レンズ4Bは色消し光学系で構成されるため、測定光束L5には色ズレが発生せず、各波長光はそろって集光レンズ4Bの後側焦点位置に集光される。
したがって、測定光束L5の集光位置では軸上色収差が抑制された状態になっている。
集光レンズ4Bの後側焦点位置は、絞り8aの中心の点Qに一致されている。このため、被検レンズ3に製作誤差がなければ、被検レンズ3と第2光学系4とからなる合成光学系は、点Pと点Qとを共役の位置関係にする。ただし、被検レンズ3は、一般には製作誤差を伴うため、焦点距離に誤差が生じていると、測定光束L5の集光位置がデフォーカスして、点Qの物体側または像側にずれる可能性がある。
そこで、本実施形態では、集光レンズ4Bの集光位置を点Qに位置合わせするため、移動ステージ6を備えている。
測定光束L5の集光位置が点Qからずれている場合には、操作者や、操作部10から操作入力を行って、レンズ支持枠5を測定光軸Oに沿う方向に移動して、測定光束L5の集光位置が点Qに一致するように、レンズ支持枠5の位置調整を行う。
集光位置の位置調整方法は、特に限定されない。例えば、ラインセンサ8cの総受光量をモニタし、総受光量が最大となる位置に調整することが可能である。また、例えば、測定光束L4または測定光束L5の光路を分岐し、点Qと共役な位置で、集光スポットの像を取得し、集光スポットのスポット径が最小となるように調整することが可能である。
このようにして、測定光束L5が点Qの位置に集光される。集光位置における測定光束L5は軸上色収差が抑制されているため、各波長成分が、ぼけることなく点Q上に微小スポットを形成する。このため、各波長成分が、絞り8aを通過して分光器8に入射する。
この結果、測定光束L5は、絞り8aにおいて光量損失することなく分光器8に入射する。
ここで、本実施形態の作用について、比較例と対比して説明する。図3(b)は、本実施形態の第2光学系4に代えて第2光学系40を備える比較例の模式的な光路図である。
第2光学系40は、被検レンズ3との合成光学系の焦点距離が、設計波長(例えば、d線の587nm)において、被検レンズ3と第2光学系4との合成光学系の焦点距離と一致する光学系である。しかし、この合成光学系は色消し条件を満足していない。
このような比較例の光学系では、被検レンズ3から出射された測定光束L30では、例えば、赤色光成分r1と青色光成分r2との間に色ズレが生じている。測定光束L30が第2光学系40に入射すると、測定光束L40として集光される。
測定光束L40では、第2光学系40の色分散に応じて、色ズレは変化するものの、色消しされることはないため、例えば、赤色光成分r41と、青色光成分r42とは、色ズレを残した状態で、それぞれの集光位置に集光される。
例えば、赤色光成分r41は点Qよりも像側の点Q1に集光され、青色光成分r42は点Qよりも物体側の点Q2に集光される。このため、軸上色収差が発生する。
このように軸上色収差が発生すると、点Qの位置では、波長ごとにスポット径が変化して、ボケが生じるため、波長によっては、絞り8aよりも大径となって、絞り8aにより遮光される。このため、絞り8aにおいて一部の波長成分において、波長に依存した大きさの光量損失が発生してしまうことになる。
次に、本実施形態における分光器8内の光路について説明する。
分光器8に入射した測定光束L5は、点Qから発散して回折格子8bに入射する。
回折格子8bに入射した測定光束L5は、回折格子8bにより波長ごとに分解されラインセンサ8cの受光素子上に結像され、ラインセンサ8cによって光電変換される。
各受光素子の受光量に応じた電気信号は、図示略の制御回路によってA/D変換されて、出力信号が生成される。この出力信号は、各受光素子の位置に対応する波長の情報とともに、制御ユニット9に送出される。
ここで、ラインセンサ8cの受光量を考える。回折格子8bによって、点Qと、ラインセンサ8cの各受光素子の受光面とは、共役の位置関係にある。したがって、本実施形態のように、集光位置での軸上色収差が補正されている場合には、ラインセンサ8c上の結像スポットは、波長によって一定の大きさを有しかつ絞り8aに遮光されて光量損失が生じることもない。このため、各受光素子の受光量は、受光素子の位置に対応する波長ごと光強度である測定光束L5の分光強度を表している。
これに対して、比較例の光学系の場合、測定光束L40に軸上色収差が発生するため、ラインセンサ8c上の結像スポットは、点Qにおける波長ごとの光像のボケに応じて変化する。さらに、波長によっては絞り8aで遮光されることにより光量損失が生じる。
このため、各受光素子の受光量は、長波長側および短波長側で、測定光束L40の実際の分光強度よりも低い値を示し、軸上色収差に起因する分光強度の測定誤差が発生する。
以上説明したように、被検レンズ3をレンズ支持枠5に配置し、測定光束L5の集光位置を調整したら、操作者は、操作部10から、分光強度測定の開始の操作入力を行う。
このような操作入力が行われると、測定制御部50は、データ取得部51に制御信号を送出して、ラインセンサ8cの出力信号を、波長の情報とともに取得し、分光強度データI(λ)として、演算処理部52に送出する。ここで、λは、受光素子の位置に対応する波長を表す。
演算処理部52には、測定制御部50から、現在の測定が被検レンズ3を用いた測定であることが通知されている。このため、演算処理部52は、送出された分光強度データI(λ)を、被検レンズ3の分光強度データI(λ)として、配列などの形で記憶部53に記憶させる。
以上で、被検レンズ3の分光強度測定が終了する。
次に、基準レンズ30の分光強度測定を行う。
まず、被検レンズ3をレンズ支持枠5から取り外して、基準レンズ30をレンズ支持枠5に保持させる。ただし、基準レンズ30の配置位置は、色収差補正レンズ4Aとの合成光学系が色消し光学系となる位置とする。
操作者が、被検レンズ3の測定を開始する操作入力を行うと、測定制御部50は、予め記憶部53に記憶された基準レンズ30を測定する際のレンズ支持枠5の位置情報を読み込み、この位置情報に基づいて、移動ステージ6を駆動する制御信号を移動ステージ6に送出する。
これにより、移動ステージ6が駆動され、レンズ支持枠5が基準レンズ30を測定する位置に移動される。
以下の動作は、被検レンズが、基準レンズ30である点と除いて、上記に説明した分光強度測定と略同様にして行われる。
すなわち、演算処理部52は、測定制御部50から、現在の測定が基準レンズ30を用いた測定であることが通知されているため、データ取得部51から演算処理部52に送出された分光強度データI(λ)を、基準レンズ30の分光強度データI(λ)として、配列などの形で記憶部53に記憶させる点のみが異なる。
次に、被検レンズ3および基準レンズ30の分光強度測定に基づいて、被検レンズ3の分光透過率を算出する。
基準レンズ30の分光強度測定が終了すると、測定制御部50は、演算処理部52に、分光透過率の算出を開始させる制御信号を送出する。
演算処理部52では、記憶部53から、I(λ)とI(λ)とを読み出し、次式(1)によって、被検レンズ3の分光透過率T(λ)を算出する。
T(λ)={I(λ)/I(λ)}×T(λ) ・・・(1)
ここで、T(λ)は、基準レンズ30の既知の分光透過率であり、予め記憶部53に記憶されたデータを用いる。
このようにして算出された分光透過率T(λ)は、測定制御部50に送出され、測定制御部50によって、数表データやグラフなどに加工された後、表示モニタ11に表示される。
以上で、被検レンズ3の分光透過率測定が終了する。
以上に説明したように、分光透過率測定装置100によれば、色収差補正レンズ4Aを有する第2光学系4によって、被検レンズを透過した測定光束L5を集光して分光器8に入射させる。このため、軸上色収差を生じさせる被検レンズ3であっても、軸上色収差に起因する測定光束L5の光量低下を抑制することができ、分光透過率の測定精度を向上することができる。
また、積分球を用いた従来技術に比べて、分光器8に入射する測定光束L5の光量損失を低減することができるため、分光透過率測定のS/N比を向上することができる。
また、本実施形態では、第2光学系4が、被検レンズを透過した測定光束L2を平行光束である測定光束L4にする前側レンズ群である色収差補正レンズ4Aと、色収差補正レンズ4Aを透過した測定光束L4を絞り8aの位置に集光する後側レンズ群である集光レンズ4Bとを備える。このため、測定光軸Oに沿う方向に関して、光源1および第1光学系2の配置位置と、集光レンズ4Bの配置位置とを自由に設定できるため、分光透過率測定装置100の位置調整が容易となる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態の分光透過率測定装置について説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態の分光透過率測定装置の構成を示す模式的な構成図である。図5は、本発明の第2の実施形態の分光透過率測定装置の制御ユニットの機能ブロック図である。
図4に示すように、本実施形態の分光透過率測定装置101は、上記第1の実施形態の分光透過率測定装置100の第2光学系4、レンズ支持枠5、制御ユニット9に代えて、第2光学系14、レンズ支持枠15(被検レンズ配置部)、制御ユニット19を備え、移動ステージ16(第2の移動機構)を追加したものである。
以下では、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
第2光学系14は、上記第1の実施形態の第2光学系4において、色収差補正レンズ4Aに代えて、測定光束L3を集光して平行光束である測定光束L4を形成するとともに被検レンズ3に起因する軸上色収差を補正する色収差補正光学系14A(前側レンズ群)を備える。
色収差補正光学系14Aは、測定光軸Oと同軸に配置された固定レンズ14a(固定レンズ群)と、移動レンズ14b(移動レンズ群)とを備える。
固定レンズ14aは、被検レンズ3に対する測定光軸Oに沿う方向の位置が固定されたレンズまたはレンズ群である。
移動レンズ14bは、固定レンズ14aに対する測定光軸Oに沿う方向に移動可能に設けられたレンズまたはレンズ群である。
このため、第2光学系14は、移動レンズ群として、移動レンズ14bを有し、移動レンズ14bを含めて少なくとも3群のレンズ群を有している。
また、色収差補正光学系14Aにおいては、固定レンズ14aと移動レンズ14bとのレンズ間隔を変更することにより、色収差補正光学系14Aとしての焦点距離を変更できるようになっている。
このような色収差補正光学系14Aは、固定レンズ14aと移動レンズ14bとのレンズ間隔を変更することができるため、色収差特性が異なる複数種類の被検レンズ3に対して、被検レンズ3との合成光学系を色消し光学系とする色収差補正が可能である。
このような色収差補正を行うための移動レンズ14bの配置位置は、予め、複数種類の被検レンズ3の色収差特性ごとに、光学シミュレーションなどによって求めておき、後述する制御ユニット19の記憶部53に記憶しておく。
なお、図4は模式図のため、固定レンズ14a、移動レンズ14bは、それぞれ両凸レンズのように描かれているが、固定レンズ14a、移動レンズ14bのレンズ構成やレンズ枚数は、特に限定されない。
また、図4では、被検レンズ3に近い方から順に、固定レンズ14a、移動レンズ14bが配置された場合の例を示しているが、これは一例である。
色収差補正の対象とする複数種類の被検レンズ3の色収差特性によっては、被検レンズ3に近い方から順に、移動レンズ14b、固定レンズ14aが配置された構成も可能である。
レンズ支持枠15は、被検レンズ3、固定レンズ14a、および移動レンズ14bを測定光軸Oと同軸に保持する装置部分である。
レンズ支持枠15において、被検レンズ3は着脱可能に保持されており、固定レンズ14aは、被検レンズ3の装着時に、被検レンズ3に対して一定のレンズ間隔だけ離間される位置に保持されている。
レンズ支持枠15において、移動レンズ14bは、後述する移動ステージ16を介して測定光軸Oに沿う方向に移動可能に保持されている。
レンズ支持枠15は、上記第1の実施形態のレンズ支持枠5と同様に、移動ステージ6によって、測定光軸Oに沿って移動可能に保持されている。
移動ステージ16は、被検レンズ3に起因する軸上色収差を補正するため、移動レンズ14bを測定光軸Oに沿って移動可能に保持する装置部分であり、レンズ支持枠15に固定された駆動部16aと、移動レンズ14bを保持するとともに駆動部16aによって移動される移動部16bとを備える。
駆動部16aの構成としては、上記第1の実施形態の移動ステージ6と同様な適宜の1軸移動ステージを採用することができる。
移動ステージ16は、後述する制御ユニット19と通信可能に接続されており、制御ユニット19からの制御信号に応じて、駆動されるようになっている。
制御ユニット19は、図5に示すように、上記第1の実施形態の制御ユニット9の測定制御部50に代えて、測定制御部60を備える。
測定制御部60は、上記第1の実施形態の測定制御部50が行う制御に加えて、移動ステージ16の移動動作の制御を行う点が上記第1の実施形態と異なる。
次に、分光透過率測定装置101の動作について、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
分光透過率測定装置101は、第2光学系14が、色収差補正光学系14Aを備えるため、色収差特性が異なる複数種類の被検レンズに対しても、被検レンズに起因する軸上色収差を補正することができる点が、上記第1の実施形態と異なる。
例えば、被検レンズ3の分光強度測定を行う場合、操作者は、操作部10から被検レンズ3の種類を操作入力する。
この操作入力がなされると、測定制御部60は、被検レンズ3の種類に応じ、予め記憶部53に記憶されている、被検レンズ3に起因する軸上色収差を補正するための移動レンズ14bの配置位置の情報を読み込む。そして、測定制御部60は、この位置情報に基づいて、移動ステージ16を駆動する制御信号を移動ステージ16に送出する。
これにより、移動ステージ16の駆動部16aが駆動され、移動レンズ14bと固定レンズ14aとのレンズ間隔(空気間隔)が、色収差補正を行うための所定の間隔に設定される。
このような色収差補正光学系14Aのレンズ間隔の設定は、被検レンズ3の分光強度を取得する前であれば、適宜のタイミングで行うことができる。
また、このような色収差補正光学系14Aのレンズ間隔の設定は、レンズ支持枠15に保持する被検レンズの種類を変えるごとに行う。
このため、基準レンズ30が、被検レンズ3と異なる種類のレンズ構成を有する場合には、基準レンズ30の分光強度測定においても同様にして、移動レンズ14bの移動を行う。
移動レンズ14bの位置を移動しても、被検レンズを透過した後の第2光学系14のレンズ構成は変わらないため、第2光学系14の透過率に起因する光量損失も、被検レンズ3の分光強度測定と基準レンズ30の分光強度測定とでは変わらない。
したがって、分光透過率測定装置101によれば、このようにして被検レンズ3および基準レンズ30の分光強度測定を行った後、それぞれの測定結果に基づいて、上記第1の実施形態と同様にして被検レンズ3の分光透過率を算出することができる。
本実施形態の分光透過率測定装置101によれば、上記第1の実施形態と同様に、軸上色収差を生じさせる被検レンズ3であっても、軸上色収差に起因する測定光束L5の光量低下を抑制することができ、分光透過率の測定精度を向上することができる。
また、積分球を用いた従来技術に比べて、分光器8に入射する測定光束L5の光量損失を低減することができるため、分光透過率測定のS/N比を向上することができる。
さらに、本実施形態によれば、被検レンズ3、基準レンズ30のレンズ種類を変えて測定を行う場合にも、移動ステージ16によって、色収差補正光学系14Aの配置が、被検レンズ3、基準レンズ30に起因する軸上色収差を補正する配置に自動的に設定される。
このため、被検レンズ3、基準レンズ30のレンズ種類を変えて測定を行う場合にも、容易かつ迅速に分光透過率測定を行うことができる。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態の分光透過率測定装置について説明する。
図6は、本発明の第3の実施形態の分光透過率測定装置の構成を示す模式的な構成図である。図7は、本発明の第3の実施形態の分光透過率測定装置の動作を説明するための模式的な光路図である。
図6に示すように、本実施形態の分光透過率測定装置102は、上記第2の実施形態の分光透過率測定装置101の第2光学系14、レンズ支持枠15に代えて、第2光学系24、補正レンズ支持枠25を備え、被検レンズ配置部35を追加したものである。
以下では、上記第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
被検レンズ配置部35は、被検レンズである被検レンズ3または基準レンズ30を第1光学系2から出射された測定光束L2の光路上に着脱可能に保持する装置部分である。
本実施形態では、被検レンズ配置部35は、一例として、対物レンズ2Bの後側焦点位置よりも前側(物体側)に被検レンズを配置する位置に設けられている。
以下の説明では、特に断らない限り、被検レンズ配置部35に被検レンズとして被検レンズ3を配置した場合の例で説明する。
測定光束L2は、被検レンズ配置部35に配置された被検レンズ3に入射すると、被検レンズ3の屈折力に応じて集光または発散されて、被検レンズ3から測定光束L23が出射される。
測定光束L23は、第1光学系2と被検レンズ3との合成光学系における後側焦点位置である点pに集光され、点pから発散して、第2光学系24に入射される。
第2光学系24は、上記第2の実施形態の第2光学系14の色収差補正光学系14Aに代えて、色収差補正光学系24Aを備える。
色収差補正光学系24Aは、測定光束L23を集光して平行光束である測定光束L24を形成するとともに被検レンズ3に起因する軸上色収差を補正する回折レンズを含むレンズ群である。
本実施形態では、色収差補正光学系24Aは、測定光軸Oと同軸に配置された回折レンズ24a(固定レンズ群)と、移動レンズ24b(移動レンズ群)とを備える。
回折レンズ24aは、レンズ作用を有する回折格子や回折パターンが形成された透過型光学素子である。本実施形態では、回折レンズ24aは正の屈折力を有する。
回折レンズ24aは、後述する補正レンズ支持枠25において、測定光軸Oに同軸となるように固定されている。
回折レンズ24aに入射した測定光束L23は、回折レンズ24aのレンズ作用によって集光され、測定光束L24として測定光軸Oに沿って進む。
回折レンズ24aの各光線透過位置における回折方向は、格子ピッチに応じて入射光の波長ごとに異なるため、白色光が入射すると色収差が発生する。
ただし、屈折レンズでは、長波長光ほど、短波長光に比べて屈折角が小さくなるのに対して、回折レンズでは、長波長光ほど、相対的に格子ピッチが小さくなるため、短波長光に比べて回折角が大きくなる。
例えば、d線の波長光に対して焦点距離が同一となるように設計された屈折レンズと回折レンズとを比較すると、d線よりも長波長光(短波長光)に対しては、屈折レンズの焦点距離はより長く(短く)なり、回折レンズの焦点距離はより短く(長く)なる。このため、屈折レンズと回折レンズとでは、軸上色収差の現れ方が正反対になる。
このため、回折レンズ24aによって、被検レンズ3に起因する軸上色収差を補正することが可能である。
移動レンズ24bは、回折レンズ24aに対する測定光軸Oに沿う方向に移動可能に設けられたレンズまたはレンズ群である。本実施形態では、移動レンズ24bは、後述する補正レンズ支持枠25において上記第1の実施形態と同様の移動ステージ16を介して測定光軸Oに沿う方向に移動可能に固定されている。
移動レンズ24bは、回折レンズ24aと併せて、被検レンズ3に起因する軸上色収差を補正するとともに、測定光束L24を平行光束化して、測定光束L4として出射する機能を有する。
なお、図6は模式図のため、移動レンズ24bは、両凸レンズのように描かれているが、移動レンズ24bのレンズ構成やレンズ枚数は、特に限定されない。すなわち、合成光学系である色収差補正光学系24Aとして、被検レンズ3の軸上色収差を補正できる構成であれば、移動レンズ24bのレンズ構成は特に限定されない。
例えば、移動レンズ24bは、複数枚構成による色消しレンズであってもよいし、回折レンズ24aが生じさせる軸上色収差を打ち消さない程度の軸上色収差を生じさせる単レンズまたはレンズ群でもよい。
このように、第2光学系24は、移動レンズ群として、移動レンズ24bを有し、移動レンズ24bを含めて少なくとも3群のレンズ群を有している。
また、色収差補正光学系24Aにおいては、回折レンズ24aと移動レンズ24bとのレンズ間隔(空気間隔)を変更することにより、色収差補正光学系24Aとしての焦点距離を変更できるようになっている。
このような色収差補正光学系24Aは、回折レンズ24aと移動レンズ24bとのレンズ間隔を変更することができるため、色収差特性が異なる複数種類の被検レンズ3に対して、被検レンズ3との合成光学系を色消し光学系とする色収差補正が可能である。
このような色収差補正を行うための移動レンズ14bの配置位置は、予め、複数種類の被検レンズ3の色収差特性ごとに、光学シミュレーションなどによって求めておき、制御ユニット19の記憶部53に記憶しておく。
補正レンズ支持枠25は、回折レンズ24aを測定光軸Oと同軸に保持し、移動ステージ16を介して移動レンズ24bを測定光軸Oと同軸かつ測定光軸Oに沿う方向に移動可能に保持する装置部分である。
補正レンズ支持枠25は、上記第2の実施形態のレンズ支持枠15と同様に、移動ステージ6によって、測定光軸Oに沿って移動可能に保持されている。
次に、分光透過率測定装置102の動作について、上記第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
分光透過率測定装置102は、第2光学系24が、色収差補正光学系24Aを備えるため、上記第2の実施形態と同様に、色収差特性が異なる複数種類の被検レンズに対しても、被検レンズに起因する軸上色収差を補正することができる。
例えば、被検レンズ3の分光強度測定を行う場合、操作者は、操作部10から被検レンズ3の種類を操作入力する。
この操作入力がなされると、測定制御部60は、被検レンズ3の種類に応じ、予め記憶部53に記憶されている、被検レンズ3に起因する軸上色収差を補正するための移動レンズ24bの配置位置の情報を読み込む。そして、測定制御部60は、この位置情報に基づいて、移動ステージ16を駆動する制御信号を移動ステージ16に送出する。
これにより、移動ステージ16の駆動部16aが駆動され、移動レンズ24bと回折レンズ24aとのレンズ間隔(空気間隔)が、色収差補正を行うための所定の間隔に設定される。
このような色収差補正光学系24Aのレンズ間隔の設定は、被検レンズ3の分光強度を取得する前であれば、適宜のタイミングで行うことができる。
また、このような色収差補正光学系24Aのレンズ間隔の設定は、被検レンズ配置部35に保持する被検レンズの種類を変えるごとに行う。
本実施形態では、対物レンズ2Bから出射された測定光束L2は、集光されつつ進んで、被検レンズ3に入射する。
被検レンズ3に入射した測定光束L2は、被検レンズ3の屈折力に応じて、集光または発散されて測定光束L23として測定光軸Oに沿って進む。
このとき、被検レンズ3は、軸上色収差を生じさせるため、被検レンズ3のレンズ面における屈折角は波長によって異なる。
図7に模式的に示すように、対物レンズ2Bから被検レンズ3に向かって斜め方向に進む光線r20は、被検レンズ3を透過すると、例えば、赤色光成分r21(例えば、C線(波長656nm)の波長成分)と、青色光成分r22(例えば、F線(波長486nm)の波長成分)とでは、青色光成分r22の方がより顕著に屈折される。
すなわち、対物レンズ2Bと被検レンズ3との合成光学系のd線の後側焦点位置を点pとすると、赤色光成分r21は、点pよりも後側(像側)の点p1に集光され、青色光成分r22は、点pよりも前側(物体側)の点p2に集光されてから、それぞれ発散する。
回折レンズ24aに入射した測定光束L23は、回折レンズ24aによって回折され、回折レンズ24aのレンズとしての屈折力に応じて集光されて、測定光束L24として出射される。
このとき、回折レンズ24aの特性として、赤色光成分r21と、青色光成分r22とでは、赤色光成分r21の方がより顕著に回折され、色収差が逆方向に補正される。
測定光束L24が移動レンズ24bに入射すると、測定光束L24は、移動レンズ24bによって集光されて測定光束L25として測定光軸Oに沿って進む。このとき、屈折レンズである移動レンズ24bが軸上色収差を有する場合には、移動レンズ24bに起因する色収差が付加される。
回折レンズ24aおよび移動レンズ24bの光学パラメータは、それぞれの位置が被検レンズ3に対して所定の位置関係を満足するときに、被検レンズ3に起因する軸上色収差が補正され、かつ移動レンズ24bによって集光された測定光束L25が平行光束になるように予め設定されている。
このため、測定光束L25は、集光レンズ4Bに入射すると、測定光束L26として集光されるが、赤色光成分r21と青色光成分r22とは、いずれも、集光レンズ4Bの後側焦点位置に一致した点Qに集光される。
このように、本実施形態では、第2光学系24の色収差補正光学系24Aに、回折レンズ24aを含むため、第2光学系14の合成焦点距離の波長特性は、赤色光成分r21に対してより短距離になり、青色光成分r22に対してより長距離になっている。
このため、移動ステージ6、16を適宜の位置に駆動することにより、赤色光成分r21に関しては点p1と点Qとが共役、かつ青色光成分r22に関しては点p2と点Qとが共役の位置関係となるような設定が可能である。
この場合、第1光学系2、被検レンズ3、および第2光学系24からなる合成光学系は、色消し条件を満足し、被検レンズ3に起因する軸上色収差が補正される。
被検レンズ3に製作誤差があるなどして、測定光束L26の集光位置が点Qからずれている場合は、上記第1の実施形態と同様にして、移動ステージ6によって、補正レンズ支持枠25の測定光軸Oに沿う方向の位置調整を行う。これにより、測定光束L26の集光位置を、絞り8aの中心である点Qに一致させることができる。
分光透過率測定装置102によれば、上述のようにして、被検レンズ3および基準レンズ30の分光強度測定を行った後、それぞれの測定結果に基づいて、上記第2の実施形態と同様にして被検レンズ3の分光透過率を算出することができる。
本実施形態の分光透過率測定装置102によれば、上記第2の実施形態と同様に、軸上色収差を生じさせる被検レンズ3であっても、軸上色収差に起因する測定光束L26の光量低下を抑制することができ、分光透過率の測定精度を向上することができる。
また、積分球を用いた従来技術に比べて、分光器8に入射する測定光束L26の光量損失を低減することができるため、分光透過率測定のS/N比を向上することができる。
また、本実施形態によれば、上記第2の実施形態と同様に、被検レンズ3、基準レンズ30のレンズ種類を変えて測定を行う場合にも、移動ステージ16によって、色収差補正光学系24Aの配置が、被検レンズ3、基準レンズ30に起因する軸上色収差を補正する配置に自動的に設定される。
このため、被検レンズ3、基準レンズ30のレンズ種類を変えて測定を行う場合にも、容易かつ迅速に分光透過率測定を行うことができる。
本実施形態は、第1の移動機構である移動ステージ6が、色収差補正光学系24Aのみを移動する場合の例になっている。
なお、上記各実施形態の説明では、第2光学系が、前側レンズ群と後側レンズ群とを備え、前側レンズ群と後側レンズ群との間では、平行光束が形成されている場合の例で説明したが、第2光学系はこのような光学系には限定されない。
例えば、第2光学系が複数のレンズ群からなる場合に、レンズ群の間に平行光束を形成しない構成が可能である。
また、第2光学系は、被検レンズに対するレンズ間隔が変更可能な1群のレンズまたはレンズ群から構成することも可能である。
上記各実施形態の説明では、第2光学系が、例えば、集光レンズ4Bのように、被検レンズに対する位置関係が固定された固定レンズ群を有する場合の例で説明したが、固定レンズ群を有することは必須ではない。例えば、第2光学系の全体が1以上の移動レンズ群からなる構成も可能である。
上記各実施形態の説明では、第2光学系の一部のレンズが、例えば、集光レンズ4Bのように、色消しレンズである場合の例で説明したが、第2光学系は、合成光学系として、被検レンズ3の軸上色収差を補正できる光学系であればよい。すなわち、第2光学系は色収差補正光学系のみからなる構成も可能である。
したがって、第2光学系4において、一部に色消しレンズを有すること、固定レンズ群や後側レンズ群が色消しレンズであることは必須ではない。
上記各実施形態の説明では、第1の移動機構が、被検レンズおよび色収差補正光学系を移動する場合(第1、第2の実施形態)と、色収差補正光学系を移動する場合(第3の実施形態)とを説明したが、第2光学系による測定光束の集光位置の調整は、これらには限定されない。
すなわち、測定光束の集光位置の調整は、被検レンズおよび第2光学系からなる合成光学系のフォーカス調整であるため、第1の移動機構は、被検レンズ、色収差補正光学系、および色収差補正光学系を除く第2光学系、のうちから選ばれた1以上のものを移動させる構成が可能である。
上記第3の実施形態の説明では、色収差補正光学系が、回折レンズと屈折レンズとの組み合わせからなる場合の例で説明したが、1以上の回折レンズのみで構成することも可能である。
上記に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせたり、削除したりして実施することができる。
1 光源
2 第1光学系
3 被検レンズ
4、14、24 第2光学系
4A 色収差補正レンズ(色収差補正光学系、前側レンズ群)
4B 集光レンズ(後側レンズ群)
5、15 レンズ支持枠(被検レンズ配置部)
6 移動ステージ(第1の移動機構)
8 分光器
8a 絞り
9、19 制御ユニット
14A、24A 色収差補正光学系(前側レンズ群)
14a 固定レンズ(固定レンズ群)
14b、24b 移動レンズ(移動レンズ群)
16 移動ステージ(第2の移動機構)
24a 回折レンズ(固定レンズ群)
25 補正レンズ支持枠
30 基準レンズ(被検レンズ)
35 被検レンズ配置部
100、101、102 分光透過率測定装置
I(λ)、I(λ)、I(λ) 分光強度データ
L0 発散光束(光源からの光)
L1 平行光束
L2、L3、L4、L5、L23、L24、L25、L26 測定光束
O 測定光軸(光軸)
T(λ) 分光透過率

Claims (4)

  1. 光源と、
    該光源からの光を集光して、軸上色収差を生じさせる被検レンズに照射する測定光束を形成する第1光学系と、
    前記測定光束の光路上に前記被検レンズを配置する被検レンズ配置部と、
    該被検レンズ配置部に配置された前記被検レンズに起因する軸上色収差を補正する色収差補正光学系を含み、前記被検レンズを透過した前記測定光束を集光する第2光学系と、
    該第2光学系による前記測定光束の集光位置に配置された絞りと、
    該絞りを透過した前記測定光束を分光して、分光強度データを取得する分光器と、
    前記第2光学系による前記測定光束の集光位置を調整するために、前記被検レンズおよび前記色収差補正光学系の少なくとも一方、または前記色収差補正光学系を除く前記第2光学系を光軸に沿う方向に移動する第1の移動機構と、
    を備える、分光透過率測定装置。
  2. 前記色収差補正光学系は、
    前記被検レンズ配置部に配置された前記被検レンズに対して前記光軸に沿う方向の位置が変更可能な第2の移動機構によって移動可能に支持され1群以上の移動レンズ群と、
    前記被検レンズ配置部に配置された前記被検レンズに対して前記光軸に沿う方向の位置が固定された1群以上の固定レンズ群と、
    を備え、
    前記第2の移動機構によって前記移動レンズ群を前記光軸に沿う方向に移動することにより、前記被検レンズに起因する軸上色収差を補正できるようにした
    ことを特徴とする、請求項1に記載の分光透過率測定装置。
  3. 前記色収差補正光学系は、
    回折レンズを備える
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の分光透過率測定装置。
  4. 前記第2光学系は、
    前記色収差補正光学系を含み、前記被検レンズを透過した前記測定光束を平行光束にする前側レンズ群と、
    該前側レンズ群を透過した前記平行光束を前記絞りの位置に集光する後側レンズ群と、
    を備える
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分光透過率測定装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN109186946A (zh) * 2018-09-25 2019-01-11 厦门大学 发光器件微区光度和色度学参数的测量方法及其测量装置
CN113624456A (zh) * 2021-08-05 2021-11-09 苏州维纳仪器有限责任公司 多波长激光干涉装置

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