JP2015128821A - 熱融着性ポリイミドフィルム、熱融着性ポリイミドフィルムの製造方法及び熱融着性ポリイミドフィルムを用いたポリイミド金属積層体 - Google Patents

熱融着性ポリイミドフィルム、熱融着性ポリイミドフィルムの製造方法及び熱融着性ポリイミドフィルムを用いたポリイミド金属積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】 耐熱性に優れ、かつ金属との接着性に優れた熱融着性ポリイミドフィルム、熱融着性ポリイミドフィルムの製造方法及び熱融着性ポリイミドフィルムを用いたポリイミド金属積層体を提供する。【解決手段】 熱融着性ポリイミド層と、前記熱融着性ポリイミド層に接して積層された耐熱性ポリイミド層とを含む多層の熱融着性ポリイミドフィルムであって、熱融着性ポリイミド層は、全テトラカルボン酸二無水物成分中、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含み、全ジアミン中、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを50モル%超含み、耐熱性ポリイミド層は、全テトラカルボン酸二無水物成分中、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含み、JIS C6471の方法で測定した剥離強度が0.5N/mm以上であることを特徴とする熱融着性ポリイミドフィルム。【選択図】 なし

Description

本発明は、熱融着性ポリイミドフィルム、熱融着性ポリイミドフィルムの製造方法及び熱融着性ポリイミドフィルムを用いたポリイミド金属積層体に関する。
ポリイミドフィルムは、フレキシブルプリント板(FPC)やテープ・オートメイティッド・ボンディング(TAB)などの基板材料として幅広く使用されている。
FPCやTABの製造において、ポリイミドフィルムと銅箔とを張り合わせる方法としては、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などの接着剤を用いることが挙げられる。
また、接着剤を用いることなく銅箔と張り合わせることができるポリイミドフィルムとして、特許文献1には、耐熱性ポリイミド層に熱融着性ポリイミド層が積層されてなる熱融着性を有するポリイミドフィルムが開示されている。
特開2004−230670号公報
しかしながら、FPCやTABの高機能化に伴い、熱融着性ポリイミドフィルムの耐熱性や、熱融着性ポリイミドフィルムと被着体である銅箔などの金属層との接着性の更なる改善が望まれていた。
本発明は、耐熱性に優れ、かつ金属層との接着性に優れた熱融着性ポリイミドフィルム及びその製造方法、熱融着性ポリイミドフィルムを用いたポリイミド金属積層体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、熱融着性ポリイミドフィルムの構成成分としてのテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の種類および配合割合、ポリイミドフィルムを製造するための条件を鋭意検討した結果、後述する自己支持性フィルムの乾燥温度を特定の条件に設定することにより、ポリイミド金属積層体の剥離強度が向上するという知見を見出し、発明を完成させた。
本発明は、以下の事項に関する。
(1)熱融着性ポリイミド層と、前記熱融着性ポリイミド層に接して積層された耐熱性ポリイミド層とを含む多層の熱融着性ポリイミドフィルムであって、
前記熱融着性ポリイミド層は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とから得られ、前記テトラカルボン酸二無水物成分は、全テトラカルボン酸二無水物成分中、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含み、前記ジアミン成分は、全ジアミン中、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを50モル%超含み、
前記耐熱性ポリイミド層は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とから得られ、前記テトラカルボン酸二無水物成分は、全テトラカルボン酸二無水物成分中、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含み、
熱融着性ポリイミドフィルムの両面に18μmの銅箔を重ね合わせ、熱融着性ポリイミド層を構成する熱融着性ポリイミドのガラス転移温度より30℃以上高く、且つ420℃以下の温度の範囲で、プレス圧力3MPa、プレス時間1分で熱圧着して得られたポリイミド金属積層体について、JIS C6471の方法で測定した剥離強度が0.5N/mm以上であることを特徴とする熱融着性ポリイミドフィルム。
(2)前記熱融着性ポリイミド層は、全ジアミン中、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを70モル%以上含む上記(1)記載の熱融着性ポリイミドフィルム。
(3)前記熱融着性ポリイミド層は、全ジアミン中、パラフェニレンジアミンを25モル%以上含む上記(1)または(2)記載の熱融着性ポリイミドフィルム。
(4)耐熱性ポリイミド層を与えるポリイミド前駆体溶液(a)と、熱融着性ポリイミド層を与えるポリイミド前駆体溶液(b)とを押出成形用ダイスから支持体上に流延し積層された薄膜状体を形成し、前記薄膜状体を140℃以上の温度で乾燥し自己支持性フィルムを形成し、自己支持性フィルムを支持体から剥離し、剥離した自己支持性フィルムを加熱する熱融着性ポリイミドフィルムの製造方法であって、
前記ポリイミド前駆体溶液(a)は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とから得られ、前記テトラカルボン酸二無水物成分は、全テトラカルボン酸二無水物成分中、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含み、
前記ポリイミド前駆体溶液(b)は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とから得られ、前記テトラカルボン酸二無水物成分は、全テトラカルボン酸二無水物成分中、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含み、前記ジアミン成分は、全ジアミン中、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを50モル%超含むことを特徴とする熱融着性ポリイミドフィルムの製造方法。
(5)145℃以上の温度で乾燥する上記(4)記載の熱融着性ポリイミドフィルムの製造方法。
(6)上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の熱融着性ポリイミドフィルムの熱融着性ポリイミド層に接して金属層が積層されてなるポリイミド金属積層体。
本発明によれば、耐熱性に優れ、かつ金属との接着性に優れた熱融着性ポリイミドフィルムを得ることができる。また、この熱融着性ポリイミドフィルムと銅箔などの金属層とを熱圧着することにより、ポリイミドフィルムと金属層との剥離強度が高い積層体(ポリイミド金属積層体)を得ることができる。
[熱融着性ポリイミドフィルム]
本発明の熱融着性ポリイミドフィルムは、熱融着性ポリイミド層と、前記熱融着性ポリイミド層に接して積層された耐熱性ポリイミド層とを含む多層の熱融着性ポリイミドフィルムである。
ここで、「熱融着性」とは、ポリイミドフィルム表面の軟化点が350℃未満であることをいう。軟化点は、対象物が加熱時に急激に軟化する温度であり、非結晶性ポリイミドではTg、結晶性ポリイミドでは融点が軟化点となる。以下においては、「熱融着性」を「熱可塑性」ということがある。
<熱融着性ポリイミド層>
熱融着性ポリイミド層は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを重合して得られる。
熱融着性ポリイミドは、少なくとも全テトラカルボン酸二無水物成分中、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含む。
全テトラカルボン酸二無水物成分中、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む。
また、全テトラカルボン酸二無水物成分中、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%未満、好ましくは10〜30モル%含んでも良い。これにより剥離強度が高いポリイミド金属積層体を得ることができる。
さらに、ジアミン成分は、全ジアミン中、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを50モル%超える量を含む。全ジアミン中、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを60モル%以上、好ましくは65モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上100%以下含むことが、後述する耐熱性に優れ、吸水率が低いポリイミドフィルムを得る観点から好ましい。
テトラカルボン酸二無水物成分は、上記2つの酸成分と、他のテトラカルボン酸二無水物成分とを併用することができる。他のテトラカルボン酸二無水物成分としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,4−ヒドロキノンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。併用するテトラカルボン酸二無水物成分は、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
ジアミン成分は、上記2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンと、他のジアミン成分とを併用することができる。併用するジアミン成分の具体例としては、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンなどが挙げられる。この中で、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンを好ましく用いることができる。さらに、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンが特に好ましい。併用するジアミン成分は、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、本発明の特性を損なわない範囲で、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミンなどの芳香族ジアミンやその変性物、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミンも併用することができる。この中で、パラフェニレンジアミンを併用することが好ましい。熱融着性ポリイミド層は、全ジアミン中、パラフェニレンジアミンを25モル%以上含むことが好ましい。これにより、ポリイミド金属積層体の耐熱性がさらに向上し、金属層との剥離強度も高い。
<耐熱性ポリイミド層>
耐熱性ポリイミドを与えるテトラカルボン酸二無水物成分は、全テトラカルボン酸二無水物成分中、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含む。他のテトラカルボン酸二無水物成分を含んでも良い。例えば、
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含み、ピロメリット酸二無水物及び1,4−ヒドロキノンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物より選ばれる成分を少なくとも1種含む酸成分を含み、それらの合計量が70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む酸成分と、
p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、m−トリジン及び4,4’−ジアミノベンズアニリドより選ばれる成分を少なくとも1種含むジアミン成分、好ましくはこれらのジアミン成分を少なくとも70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含むジアミン成分、とから得られるポリイミドなどが挙げられる。
耐熱性ポリイミドを得ることができる酸成分とジアミン成分との組み合わせとしては、例えば、次のものが挙げられる。
(1)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)と、p−フェニレンジアミン(PPD)と、必要により4,4−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)を含む組み合わせ。この場合、PPD/DADE(モル比)は100/0〜85/15であることが好ましい。
(2)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)及びピロメリット酸二無水物(PMDA)と、p−フェニレンジアミン(PPD)と、必要により4,4−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)を含む組み合わせ。この場合、s−BPDA/PMDAは50/50〜90/10であることが好ましい。PPDとDADEを併用する場合、PPD/DADEは、例えば90/10〜10/90が好ましい。
(3)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)とp−フェニレンジアミン(PPD)とを主成分(合計100モル%中の50モル%以上)として得られるもの。
上記(1)および(2)において、4,4−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)の一部または全部を、目的に応じて3,4’−ジアミノジフェニルエーテルに置き換えることもできる。
上記(1)の組み合わせは、耐熱性に優れるために好ましい。さらに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を主成分(例えば、70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上)として含むテトラカルボン酸二無水物成分と、パラフェニレンジアミンを主成分(例えば、70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む)として含むジアミン成分とから得られる耐熱性ポリイミドを用いることにより、低い線膨張係数、高い弾性率、寸法安定性に優れた熱融着性ポリイミドフィルムを得ることができる。
耐熱性ポリイミドを得ることができる酸成分は、上記の酸成分の他に、目的の特性を損なわない範囲で、他のテトラカルボン酸二無水物成分および/または他のジアミン成分を併用することができる。他のテトラカルボン酸二無水物成分としては、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物などが挙げられる。他のジアミン成分としては、m−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンなどのビス(アミノフェノキシ)ベンゼン類、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルなどが挙げられる。
熱融着性ポリイミドフィルムの厚みは、耐熱性ポリイミド層の両面に熱融着性ポリイミド層を有する3層構造の熱融着性ポリイミドフィルムの場合は、耐熱性ポリイミド層の厚みは3〜70μmであることが好ましく、8〜50μmであることがより好ましい。熱融着性ポリイミド層の単層の厚みは0.5〜15μmであることが好ましく、1〜12.5μmであることがより好ましい。両面の熱融着性ポリイミド層の厚みの合計は1〜30μmであることが好ましく、2〜25μmであることがより好ましい。
本発明で得られた熱融着性ポリイミドフィルムは耐熱性、特に半田耐熱性に優れる。また、熱融着性ポリイミドフィルムの熱融着層の吸水率は、例えば、0.6%以下、好ましくは0.5%である。さらに、熱融着性ポリイミドフィルムの線膨張係数は、例えば16〜22ppm/℃である。また、熱融着性ポリイミドフィルムの弾性率は、例えば5.5〜8GPaである。吸水率、線膨張係数および弾性率の測定方法については、実施例の項で説明する。
[熱融着性ポリイミドフィルムの製造方法]
次に、本発明の熱融着性ポリイミド層を含む多層の熱融着性ポリイミドフィルムの製造方法の一例として、耐熱性ポリイミド層の片面または両面に熱融着性ポリイミド層を有する熱融着性ポリイミドフィルムの製造方法について説明する。
(共押出し−流延製膜法による熱融着性ポリイミドフィルムの製造方法)
本発明の多層のポリイミドフィルムは、共押出し−流延製膜法(単に、共押出法ともいう。)によって、耐熱性ポリイミド層のドープ液(ポリアミック酸溶液、ポリイミド前駆体溶液ともいう)と、熱融着性ポリイミド層のドープ液とを積層、乾燥、イミド化して多層ポリイミドフィルムを得る方法で製造することもできる。この共押出法は、例えば、特開平3−180343号公報(特公平7−102661号公報)に記載されている方法を用いることができる。
より具体的に説明すると、この共押出法は、まず二層以上の押出成形用ダイスを有する押出成形機を使用し、前記ダイスの吐出口から耐熱性ポリイミド層のドープ液と熱融着性ポリイミド層のドープ液とを支持体上に流延し積層された薄膜状体を形成する。そして、前記支持体上の薄膜状体を乾燥し多層の自己支持性フィルムを形成し、次いで、支持体上から多層の自己支持性フィルムを剥離し、最後に多層の自己支持性フィルムを加熱処理するというものである。この際、前記乾燥は、薄膜状体を135℃を超える温度、具体的には140℃以上、好ましくは145℃以上の温度で乾燥し自己支持性フィルムを形成する。これにより、後述するポリイミド金属積層体の剥離強度が向上する。
二層押出成形用ダイスとしては、例えば、ドープ液の供給口を有し、ドープ液の通路が、その各供給口から各マニホールドに向かってそれぞれ形成されており、そのマニホールドの底部の流路が合流点で合流して、その合流した後のドープ液の通路(リップ部)がスリット状の吐出口に連通していて、この吐出口からドープ液が薄膜状に支持体上に吐出される構造(マルチマニホールド型二層ダイス)になっているものを挙げることができる。
前記リップ部は、リップ調整ボルトによって、その間隔を調整できるようになっている。
また、各マニホールドの底部(合流点に近い箇所)は、各チョークバーによってその流路の空隙部の間隔が調節される。前記の各マニホールドは、ハンガーコートタイプの形状を有していることが好ましい。また、ニ層押出成形用ダイスとしては、ダイス上部の左右に各ドープ液の供給口を有し、ドープ液の通路が、仕切り板を備えた合流点で直ちに合流するようになっている。その合流点からマニホールドにドープ液の流路が連通していて、そのマニホールドの底部のドープ液の通路(リップ部)がスリット状の吐出口に連述している。この吐出口からドープ液が溝膜状に支持体上に吐出される構造(フィードブロック型二層ダイスまたはシングルマニホールド型二層ダイス)になっているものであってもよい.
ここで、熱融着性ポリイミド層を与えるポリイミド前駆体溶液(b)は、テトラカルボン酸二無水物成分は、全テトラカルボン酸二無水物成分中、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含み、前記ジアミン成分は、全ジアミン中、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを50モル%超含む。また、耐熱性ポリイミド層を与えるポリイミド前駆体溶液(ポリアミック酸溶液)(a)は、全テトラカルボン酸二無水物成分中、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含む。熱融着性ポリイミド層を与えるポリイミド前駆体溶液(b)は、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含んでも良い。この場合、全テトラカルボン酸二無水物成分中、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%未満、好ましくは10〜30モル%含んでも良い。これにより、剥離強度が高いポリイミド金属積層体を得ることができる。
耐熱性ポリイミド層を与えるポリイミド前駆体溶液(a)は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、実質的に等モル、またはどちらかの成分を少し過剰にして、有機溶媒中で反応させて得られる。
一方、熱融着性ポリイミド層を与えるポリイミド前駆体溶液(b)も、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、実質的に等モル、またはどちらかの成分を少し過剰にして、有機溶媒中で反応させることにより得られる。
ポリイミド前駆体溶液を製造するための有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルスルホルアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジメチルスルホン、ジエチルスルホンなどのスルホン類を挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
ポリイミド前駆体の重合反応を実施する際の有機溶媒中の全モノマーの濃度は、使用する目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリイミド前駆体溶液(a)および(b)は、有機溶媒中の全モノマーの濃度が5〜40質量%であることが好ましく、6〜35質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることが特に好ましい。
ポリイミド前駆体溶液(a)およびポリイミド前駆体溶液(b)の製造例の一例として、例えば、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを実質的に等モル、またはどちらかの成分(酸成分、またはジアミン成分)を少し過剰にして混合し、反応温度100℃以下、好ましくは80℃以下で約0.2〜60時間反応させることによりポリアミック酸(ポリイミド前駆体)溶液を得ることができる。
ポリイミド前駆体溶液(a)およびポリイミド前駆体溶液(b)の溶液粘度は、このポリイミド前駆体溶液を取り扱う作業性の面からは、30℃で測定した回転粘度が約100〜5000ポイズであることが好ましく、500〜4000ポイズであることがより好ましく、1000〜3000ポイズ程度であることが特に好ましい。
なお、耐熱性ポリイミド層は、必要に応じて、微細な無機または有機フィラー(添加剤)を配合することができる。無機の添加剤としては、粒子状あるいは偏平状などの無機フィラーを挙げることができ、微粒子状の二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素(シリカ)粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム(アルミナ)粉末、酸化亜鉛粉末などの無機酸化物粉末、微粒子状の窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末などの無機窒化物粉末、炭化ケイ素粉末などの無機炭化物粉末、微粒子状の炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末などの無機塩粉末を挙げることができる。有機の添加剤としては、ポリイミド粒子、熱硬化性樹脂の粒子などを挙げることができる。これらの添加剤は2種以上を組み合わせて使用してもよい。添加剤の使用量および形状(大きさ、アスペクト比)については、使用目的に応じて選択することが好ましい。また、これらの添加剤を均一に分散させるために、それ自体公知の手段を適用することができる。
ポリイミド前駆体溶液(a)の自己支持性フィルムにポリイミド前駆体溶液(b)を塗工した後、次いで、これを加熱・イミド化して多層の熱融着性ポリイミドフィルムを得ることができる。イミド化のための熱処理の最高加熱温度は350℃〜600℃が好ましく、380〜520℃がより好ましく、390〜500℃がより好ましく、400〜480℃がより好ましい。
イミド化のための加熱処理は段階的に行うことが好ましく、まず200℃以上300℃未満の温度で1分〜60分間第一次加熱処理した後に、300℃以上350℃未満の温度で1分〜60分間第二次加熱処理し、その後、最高加熱温度350℃〜600℃、好ましくは450〜590℃、より好ましくは490〜580℃、さらに好ましくは500〜580℃で1分〜30分間第三次加熱処理することが望ましい。この加熱処理は、熱風炉、赤外線加熱炉などの公知の装置を使用して行うことができる。
また、この加熱処理は、ポリイミド前駆体溶液(b)を塗工したポリイミド前駆体溶液(a)の自己支持性フィルムをピンテンター、クリップなどで固定して行うことが好ましい。
ポリイミド前駆体溶液(b)および/またはポリイミド前駆体溶液(a)は、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)のゲル化を制限する目的で、リン系安定剤、例えば亜リン酸トリフェニル、リン酸トリフェニル等をポリアミック酸重合時に固形分(ポリマー)濃度に対して0.01〜1%の範囲で添加することができる。
また、ポリイミド前駆体溶液(b)および/またはポリイミド前駆体溶液(a)は、イミド化を促進する目的で、塩基性有機化合物を添加することができる。例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、置換ピリジン等をポリアミック酸(ポリイミド前駆体)100質量部に対して0.0005〜0.1質量部、特に0.001〜0.02質量部の割合で添加することができる。これらは、比較的低温でポリイミドフィルムを形成するためにイミド化が不十分となることを避けるために使用することができる。
上記二層押出に加えて、三層以上押出成形用ダイスを使用することにより、二層押出成形と同様の成形方法で、多層押出ポリイミドフィルムを製造することもできる。すなわち、耐熱性ポリイミド層のドープ液と熱融着性ポリイミド層のドープ液とを使用すれば、二層の熱融着性ポリイミドフィルムを得ることができる。また、熱融着性ポリイミド層のドープ液−耐熱性ポリイミド層のドープ液−熱融着性ポリイミド層のドープ液の層構成とした場合には、3層の熱融着性ポリイミドフィルムを得ることもできる。
[ポリイミド金属積層体]
次に、本発明のポリイミド金属積層体について説明する。本発明のポリイミド金属積層体は、本発明の熱融着性ポリイミドフィルムの熱融着性ポリイミド層上に金属層を積層してなる。熱融着性ポリイミドフィルムの両面に金属層を積層してもよく、熱融着性ポリイミドフィルムの片面にのみ金属層を積層してもよい。また、本発明のポリイミド金属積層体は、最外層の片面または両面に前記熱融着性ポリイミド層を有する前記熱融着性ポリイミドフィルムと、前記熱融着性ポリイミド層の片面または両面上に積層しても良い。
金属層は、金属箔が好ましい。金属箔としては、銅、アルミニウム、金、またはこれらの合金の箔など各種金属箔を用いることができる。この中で、銅箔が好ましく使用される。銅箔の具体例としては、圧延銅箔、電解銅箔などが挙げられる。
熱融着性ポリイミドフィルムの両面に金属層を積層する場合には、同種または異種の金属を用いることができる。
金属箔の厚さは特に制限はないが、2〜35μm、特に5〜18μmであるものが好ましい。金属箔の厚みが5μm以下のものは、キャリア付き金属箔、例えばアルミニウム箔キャリア付き銅箔が使用できる。
本発明においては、熱融着性ポリイミドフィルムの両面に金属層(金属箔など)を重ねて熱融着性ポリイミドフィルムと金属層とを熱圧着することにより、熱融着性ポリイミドフィルムの両面に金属層が積層されたポリイミド金属積層体を得ることができる。また、熱融着性ポリイミドフィルムの片面に金属層(金属箔など)を重ねて熱融着性ポリイミドフィルムと金属層とを熱圧着することにより、熱融着性ポリイミドフィルムの片面に金属層が積層されたポリイミド金属積層体を得ることができる。なお、金属層を積層する熱融着性ポリイミドフィルムの表面は、熱融着性ポリイミド層(またはフィルム)である。
熱融着性ポリイミドフィルムと金属箔は、少なくとも一対の加圧部材で連続的に、加圧部の温度が熱融着性ポリイミドのガラス転移温度より30℃以上高く、且つ420℃以下の温度の加熱下で熱圧着することが好ましい。
加圧部材としては、一対の圧着金属ロール(圧着部は金属製、セラミック溶射金属製のいずれでもよい)、ダブルベルトプレスおよびホットプレスが挙げられ、特に加圧下に熱圧着および冷却できるものであって、その中でも特に液圧式のダブルベルトプレスを好適に挙げることができる。また、一対の圧着金属ロールによるロールラミネートでも、簡便にポリイミド金属積層体を得ることができる。
本発明においては、前記の加圧部材、例えば金属ロール、好適にはダブルベルトプレスを使用し、熱融着性ポリイミドフィルムと金属箔と補強材とを重ね合わせて、連続的に加熱下に圧着して、長尺状のポリイミド金属積層体を製造することができる。
また、熱融着性ポリイミドフィルムおよび金属箔が、ロール巻きの状態で用いられ、加圧部材にそれぞれ連続的に供給され、ポリイミド金属積層体をロール巻きの状態で得られる場合に特に好適である。
本発明のポリイミド金属積層体は、熱融着性ポリイミドフィルムおよび金属箔が強固に積層される。本発明によれば、例えば、JIS C6471の方法で測定した剥離強度が0.5N/mm以上、好ましくは0.7N/mm以上、より好ましくは0.9N/mm以上、さらに好ましくは1.3N/mm以上であるポリイミド金属積層体を得ることができる。尚、耐熱性ポリイミド層の両面に熱融着性ポリイミド層が積層された三層の熱融着性ポリイミドフィルムのうち、熱融着性ポリイミド層に金属層が積層されたポリイミド金属積層体においては、剥離の状態(剥離モード)は、耐熱性ポリイミド層と熱融着性ポリイミドフィルムの界面で剥離するケース、熱融着性ポリイミド層と金属層の界面で剥離するケースなどがある。従って、測定された剥離強度は、より接着力の弱い面の剥離強度である。剥離強度の測定方法は、次のとおりである。まず、熱融着性ポリイミドフィルムの両面に銅箔(三井金属株式会社製、3EC-VLP、厚み18μm)を重ね合わせ、熱融着性ポリイミドのガラス転移温度より30℃以上高く、且つ420℃以下の温度で、余熱5分、プレス圧力3MPa、プレス時間1分で熱圧着することにより、熱融着性ポリイミドフィルムの両面に銅箔が積層されたポリイミド金属積層体を得る。次に、このポリイミド金属積層体の剥離強度をJIS C6471の方法で測定する。尚、剥離強度の測定に用いられる銅箔の種類については特に限定されない。また、熱融着性ポリイミドのガラス転移温度は、熱融着性ポリイミドを構成するテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の種類によって異なる。上記熱圧着温度は、使用される熱融着性ポリイミドのガラス転移温度に応じて適宜設定される。
本発明の熱融着性ポリイミドフィルムは、接着シートや接着テープとして用いることができる。
本発明のポリイミド金属積層体は、成形加工性が良好で、そのまま穴あけ加工、折り曲げ加工や絞り加工、金属配線形成などを行うことができる。また、本発明の熱融着性ポリイミドフィルムは、配線上への電子回路の熱圧着に使用することができる。本発明の熱融着性ポリイミドフィルムおよびポリイミド金属積層体は、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、TABテープ等の電子部品や電子機器類の素材として用いることができる。さらに、本発明の熱融着性ポリイミドフィルムは、アルミラミネートフィルムを外装袋として使用するリチウムイオン電池、ポリマー電池、電気二重層キャパシタ等のタブリードの封止材、フレキシブルプリント基板のカバーレイ、セラミックパッケージとキャップとの接合材など、高温下での信頼性が要求される接着性シートとして好適に使用することができる。
尚、上記においては、熱融着性ポリイミドフィルムに積層する被着物として金属層を挙げたが、これに限定されるものではない。金属以外の被着物としては、例えばセラミック、ガラスやポリイミドフィルムなどが挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。但し、本発明は実施例により制限されるものでない。
1.単層の熱融着性ポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)の測定
得られたフィルムを、Rheometric Scientific,inc製 Rheometrics Solid Analyzer IIを用いて、動的粘弾性測定(昇温速度10℃/min、周波数6.28rad/sec)tanδのピーク温度により評価した。
2.単層の熱融着性ポリイミドフィルムの吸水率の測定
水中で23℃、24時間以上吸水させたサンプルの絶乾重量からの重量増加を測定し、[(吸水重量)-(絶乾重量)]/(絶乾重量)で算出した。
3.三層熱融着性ポリイミドフィルムの線膨張係数(CTE)の測定
長さ15mm/幅3mmにサンプリングしたサンプルを、引張りモード、荷重4gf、昇温速度20℃/minで測定を行い、50℃から200℃のTMAカーブより算出した。
4.ポリイミド金属積層体の剥離強度の測定
ポリイミド金属積層体の剥離強度は、JIS C6471の方法で測定した。
5.ポリイミド金属積層体の半田耐熱性の評価
得られたポリイミド金属積層体の片面にレジストを印刷し、30℃で20〜30分エッチング液に浸漬し、片面の金属層がエッチングされた積層体を得た。得られた積層体を80℃で30分乾燥を行い、23℃-60%RHの環境下で24時間以上調湿したサンプルを種々の温度の半田浴へ10秒間フロートし、サンプルの発泡の有無を確認した。発泡が確認されない最高温度を半田耐熱温度とした。
[耐熱性ポリイミド層(コア層)を与えるポリアミック酸溶液Aの合成]
攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、ジメチルアセトアミド(DMAc)を加え、さらに、パラフェニレンジアミン(PPD)と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)とを該等モル反応させ、モノマー濃度が18重量%、25℃における溶液粘度が1500ポイズのポリアミック酸溶液Aを得た。
[耐熱性ポリイミド層(コア層)を与えるポリアミック酸溶液Bの合成]
攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、DMAcを加え、さらに、ジアミン成分としてのPPD、4,4−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)および2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)と、テトラカルボン酸二無水物成分としてのs−BPDAおよびピロメリット酸二無水物(PMDA)とを供給し、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを反応させ、モノマー濃度が18重量%のポリアミック酸溶液Bを得た。PPD、DADEおよびBAPPのモル比は、50:30:20であった。また、s−BPDAとPMDAのモル比は20:80であった。
[熱融着性ポリイミド層(融着層)を与えるポリアミック酸溶液Cの合成]
攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、DMAcを加え、さらに、BAPPを加えた。続いて、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)とs−BPDAを加えて、モノマー濃度が18重量%、25℃における溶液粘度は800ポイズのポリアミック酸溶液Cを得た。a−BPDAとs−BPDAのモル比は、10:90であった。
[熱融着性ポリイミド層(融着層)を与えるポリアミック酸溶液Dの合成]
攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、DMAcを加え、さらに、BAPPと
1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)を加えた。続いて、s−BPDAを加えてモノマー濃度が18重量%のポリアミック酸溶液Dを得た。BAPPとTPE−Rのモル比は70:30であった。
[熱融着性ポリイミド層(融着層)を与えるポリアミック酸溶液Eの合成]
攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、DMAcを加え、さらに、BAPPとs−BPDAを加えて、モノマー濃度が18重量%のポリアミック酸溶液Eを得た。
[熱融着性ポリイミド層(融着層)を与えるポリアミック酸溶液Fの合成]
攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、DMAcを加え、さらに、BAPPと
TPE−Rを加えた。続いて、a−BPDAとs−BPDAを加えてモノマー濃度が18重量%のポリアミック酸溶液Fを得た。a−BPDAとs−BPDAのモル比は、10:90であった。BAPPとTPE−Rのモル比は50:50であった。
[熱融着性ポリイミド層(融着層)を与えるポリアミック酸溶液Gの合成]
攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、DMAcを加え、さらに、TPE−Rと1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)を加えた。続いて、a−BPDAとs−BPDAを加えてモノマー濃度が18重量%のポリアミック酸溶液Gを得た。
a−BPDAとs−BPDAのモル比は、30:70であった。TPE−RとTPE−Qのモル比は30:70(BAPPは0モル%)であった。
[熱融着性ポリイミド層(融着層)を与えるポリアミック酸溶液Hの合成]
攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、DMAcを加え、さらに、BAPPとPPDを加えた。続いて、a−BPDAとs−BPDAを加えてモノマー濃度が18質量%のポリアミック酸溶液Hを得た。a−BPDAとs−BPDAのモル比は、20:80であった。BAPPとPPDのモル比は70:30であった。
[熱融着性ポリイミド層(融着層)を与えるポリアミック酸溶液Iの合成]
攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、DMAcを加え、さらに、BAPPとPPDを加えた。続いて、s−BPDAを加えてモノマー濃度が18質量%のポリアミック酸溶液Iを得た。BAPPとPPDのモル比は90:10であった。
[熱融着性ポリイミド層(融着層)を与えるポリアミック酸溶液Jの合成]
攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、DMAcを加え、さらに、BAPPとPPDを加えた。続いて、s−BPDAを加えてモノマー濃度が18質量%のポリアミック酸溶液Jを得た。BAPPとPPDのモル比は80:20であった。
[熱融着性ポリイミド層(融着層)を与えるポリアミック酸溶液Kの合成]
攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、DMAcを加え、さらに、BAPPとPPDを加えた。続いて、s−BPDAを加えてモノマー濃度が18質量%のポリアミック酸溶液Kを得た。BAPPとPPDのモル比は75:25であった。
[熱融着性ポリイミド層(融着層)を与えるポリアミック酸溶液Lの合成]
攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、DMAcを加え、さらに、BAPPとPPDを加えた。続いて、s−BPDAを加えてモノマー濃度が18質量%のポリアミック酸溶液Lを得た。BAPPとPPDのモル比は70:30であった。
[熱融着性ポリイミド層(融着層)を与えるポリアミック酸溶液Mの合成]
攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、DMAcを加え、さらに、BAPPとPPDを加えた。続いて、s−BPDAを加えてモノマー濃度が18質量%のポリアミック酸溶液Mを得た。BAPPとPPDのモル比は65:35であった。
[熱融着性ポリイミド層(融着層)を与えるポリアミック酸溶液Nの合成]
攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、DMAcを加え、さらに、BAPPを加えた。続いて、s−BPDAとPMDAを加えてモノマー濃度が18質量%のポリアミック酸溶液Nを得た。s−BPDAとPMDAのモル比は、10:90であった。
[参考例1]
ポリアミック酸溶液Eをガラス板状へコーターを用いてキャストし、乾燥炉内で120℃で12分間乾燥させ自己支持性フィルムを得た。得られた自己支持フィルムを四方テンターへ貼り付け、150℃、200℃、250℃、340℃で各2分ずつ保持しながら昇温し、厚み20μmの単層の熱融着性ポリイミドフィルムを得た。熱融着性ポリイミドフィルムのガラス転移温度と吸水率を表1に示す。
[参考例2から5]
ポリアミック酸溶液を表1のように変更した以外は、参考例1と同様にして単層の熱融着性ポリイミドフィルムを得た。熱融着性ポリイミドフィルムのガラス転移温度と吸水率を表1に示す。表1の結果から、ジアミン成分中のBAPPが50モル%を超える、特に70モル%以上の場合には、吸水率が低い熱融着性ポリイミドフィルムを得ることができることが明らかとなった。
Figure 2015128821
[参考例7から13]
ポリアミック酸溶液をEから、H〜Nに変更した以外は、参考例1と同様にして単層の熱融着性ポリイミドフィルムを得た。
(多層熱融着性ポリイミドフィルムおよびポリイミド金属積層体)
[実施例1]
三層押し出しダイスから、平滑な金属製支持体の上面に、ポリアミック酸溶液E(熱融着層)−ポリアミック酸溶液A(コア層)−ポリアミック酸溶液E(熱融着層)の層となるように、ポリアミック酸溶液Aとポリアミック酸溶液Eを押し出して流延した。薄膜状体の流延物を145℃の熱風で連続的に乾燥し、自己支持性フィルムを形成した。自己支持性フィルムを支持体から剥離した後、加熱炉で、200℃から460℃まで徐々に加熱し(最高加熱温度は460℃)、溶媒を除去とイミド化を行ない、厚み25μm(2つの熱融着層の厚みは、それぞれ4.5μmであり、コア層の厚みは16μm)の三層構造の多層の熱融着性ポリイミドフィルムを得た。熱融着性ポリイミドフィルムの線膨張係数および弾性率を表2に示す。
次に、得られた熱融着性ポリイミドフィルムの両面に銅箔(三井金属株式会社製、3EC-VLP、厚み18μm)を重ね合わせ、温度300℃、余熱5分、プレス圧力3MPa、プレス時間1分で熱圧着することにより、熱融着性ポリイミドフィルムの両面に銅箔が積層されたポリイミド金属積層体を得た。このポリイミド金属積層体の剥離強度および半田耐熱の各評価を行った。その結果を表2に示す。
[実施例2および3、比較例1から4]
ポリアミック酸溶液の種類および流延物の乾燥温度を表2のように変えた以外は、実施例1と同じ方法で、熱融着性ポリイミドフィルムを得た。熱融着性ポリイミドフィルムの線膨張係数および弾性率を表2に示す。また、実施例1と同様な方法によりポリイミド金属積層体を得た。このポリイミド金属積層体の剥離強度および半田耐熱の各評価を行った。その結果を表2に示す。
[実施例4〜9、比較例5]
ポリアミック酸溶液の種類および流延物の乾燥温度を表2のように変えた以外は、実施例1と同じ方法で、熱融着性ポリイミドフィルムを得た。熱融着性ポリイミドフィルムの線膨張係数および弾性率を表2に示す。また、実施例1と同様な方法によりポリイミド金属積層体を得た。このポリイミド金属積層体の剥離強度および半田耐熱の各評価を行った。その結果を表2に示す。
Figure 2015128821
表2のすべての実施例および比較例において、剥離強度測定時には、耐熱性ポリイミド層と熱融着性ポリイミド層の界面で剥離した。表2の結果から主に明らかになったことを以下に示す。
(1)自己支持性フィルムの乾燥温度が、140℃以上であると、ポリイミド金属積層体の剥離強度(耐熱性ポリイミド層と熱融着性ポリイミド層の界面強度)が向上する。
(2)熱融着層について、ジアミン成分中のBAPPが50モル%を超える、好ましくは65モル%以上、特に70モル%以上の場合には、ポリイミド金属積層体の半田耐熱性に優れる。
(3)コア層について、テトラカルボン酸二無水物成分としてs-BPDAが少ないと、熱融着性ポリイミドフィルムの線膨張係数の値が増加し、弾性率が低下する。
(4)熱融着層について、ジアミン成分としてBAPPとPPDを併用し、かつ全ジアミン成分中、PPDの量が25モル%以上の場合には、ポリイミド金属積層体の剥離強度と半田耐熱性がさらに優れる。
本発明によれば、耐熱性に優れ、かつ金属層との接着に優れたポリイミドフィルムを得ることができる。また、耐熱性に優れ、ポリイミドフィルムと金属層との剥離強度が高い積層体(ポリイミド金属積層体)を得ることができる。

Claims (6)

  1. 熱融着性ポリイミド層と、前記熱融着性ポリイミド層に接して積層された耐熱性ポリイミド層とを含む多層の熱融着性ポリイミドフィルムであって、
    前記熱融着性ポリイミド層は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とから得られ、前記テトラカルボン酸二無水物成分は、全テトラカルボン酸二無水物成分中、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含み、前記ジアミン成分は、全ジアミン中、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを50モル%超含み、
    前記耐熱性ポリイミド層は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とから得られ、前記テトラカルボン酸二無水物成分は、全テトラカルボン酸二無水物成分中、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含み、
    熱融着性ポリイミドフィルムの両面に18μmの銅箔を重ね合わせ、熱融着性ポリイミド層を構成する熱融着性ポリイミドのガラス転移温度より30℃以上高く、且つ420℃以下の温度の範囲で、プレス圧力3MPa、プレス時間1分で熱圧着して得られたポリイミド金属積層体について、JIS C6471の方法で測定した剥離強度が0.5N/mm以上であることを特徴とする熱融着性ポリイミドフィルム。
  2. 前記熱融着性ポリイミド層は、全ジアミン中、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを70モル%以上含む請求項1記載の熱融着性ポリイミドフィルム。
  3. 前記熱融着性ポリイミド層は、全ジアミン中、パラフェニレンジアミンを25モル%以上含む請求項1または2記載の熱融着性ポリイミドフィルム。
  4. 耐熱性ポリイミド層を与えるポリイミド前駆体溶液(a)と、熱融着性ポリイミド層を与えるポリイミド前駆体溶液(b)とを押出成形用ダイスから支持体上に流延し積層された薄膜状体を形成し、前記薄膜状体を140℃以上の温度で乾燥し自己支持性フィルムを形成し、自己支持性フィルムを支持体から剥離し、剥離した自己支持性フィルムを加熱する熱融着性ポリイミドフィルムの製造方法であって、
    前記ポリイミド前駆体溶液(a)は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とから得られ、前記テトラカルボン酸二無水物成分は、全テトラカルボン酸二無水物成分中、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含み、
    前記ポリイミド前駆体溶液(b)は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とから得られ、前記テトラカルボン酸二無水物成分は、全テトラカルボン酸二無水物成分中、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含み、前記ジアミン成分は、全ジアミン中、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを50モル%超含むことを特徴とする熱融着性ポリイミドフィルムの製造方法。
  5. 145℃以上の温度で乾燥する請求項4記載の熱融着性ポリイミドフィルムの製造方法。
  6. 請求項1から3のいずれか1項に記載の熱融着性ポリイミドフィルムの熱融着性ポリイミド層に接して金属層が積層されてなるポリイミド金属積層体。
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