ヘッド部を傾斜させて観察対象物を観察するときには、ヘッド部が直立しているときに比べてヘッド部が観察対象物やステージ面に近づくため、ヘッド部の傾斜角度を制限しないと、ヘッド部が観察対象物やステージ面に衝突する虞がある。
従来の拡大観察装置において、たとえばヘッド部を傾斜させる回転軸に目盛が設けられたものがある。使用者はこの回転軸の目盛を目視してカメラの傾き角度(チルト角度)を知ることができるものがあるが、目盛を目視しながらヘッド部を傾斜させるのは手間が掛かる。
本発明は、従来のこのような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、傾斜観察をするときに、ヘッド部が観察対象物やステージ面に衝突することを防止することができる拡大観察装置を提供することである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
上記の目的を達成するために、本発明の拡大観察装置によれば、観察対象物を載置するための載置部と、ベース部と、前記載置部に載置された観察対象物を撮像するカメラ部と、該カメラ部の先端に装着されるレンズ部とを備えたヘッド部と、前記ヘッド部を光軸に沿って移動させることで、該レンズ部の焦点を調整可能な上ステージ昇降部と、前記ヘッド部を、前記載置部と平行な姿勢で前記ベース部に設けられた揺動軸を中心として揺動可能に支持する揺動機構と、前記ヘッド部の前記載置部に対する傾斜角度に応じて警告を発するための警告手段と、傾斜角度閾値を記憶するためのメモリ部と、前記ヘッド部の前記載置部に対する傾斜角度を検出するための角度検出手段とを備えた拡大観察装置において、前記警告手段は、前記角度検出手段が検出した、前記ヘッド部の前記載置部に対する傾斜角度と、前記メモリ部に記憶された傾斜角閾値とを比較して、前記ヘッド部の前記載置部に対する傾斜角度が前記角度検出手段で検出された傾斜角閾値を超えている場合には前記警告手段が警告を発することを特徴とする。
上記構成によれば、傾斜角閾値を設けて、ヘッド部の傾斜角度が傾斜角閾値を超えて傾斜した場合には警告手段が警告を発するので、使用者は警告に従ってヘッド部を傾斜させることを止めて、ヘッド部が観察対象物やステージ面に衝突することを防止することができる。さらに、使用者はヘッド部を傾斜させる回転軸の目盛を目視してヘッド部の傾き角度(チルト角度)を確認しながらヘッド部を傾斜さる手間を省くことができる。
また、請求項1に記載の拡大観察装置であって、さらに前記ベースに固定され前記載置部を上下方向に移動させて焦点を調整する下ステージ昇降部と、前記ヘッド部、または前記上ステージ昇降部に設置され、重力加速度に対する前記カメラ部の光軸の傾斜角度である第一傾斜角度を検出する第一加速度センサと、前記載置部、前記下ステージ昇降部または前記ベースに設置されて、重力加速度に対する前記載置部の傾斜角度である第二傾斜角度を検出する第二加速度センサと、前記第一加速度センサで検出された第一傾斜角度と前記第二加速度センサで検出された第二傾斜角度とに基づいて前記載置部に対する前記カメラ部の光軸の傾斜角度である第三傾斜角度を算出する演算手段とを備えていることを特徴とする。
上記構成によれば、拡大観察装置が傾斜した状態で設置された場合でも、載置部に対する撮像手段の光軸の傾斜角度を算出することができるので、拡大観察装置が設置された傾斜角度に関わらずチルト角度を正確に知ることができる。
また、前記カメラ部で撮像した画像を表示させるための表示手段を備えており、前記警告手段は、前記表示手段上に警告を表示させることを特徴とする。
上記構成によれば、表示手段に警告表示がされるので、表示手段を目視している観察者は確実に警告表示に気付くことができる。
また、前記上ステージ昇降部を前記ベースに係止するストッパが設けられており、前記上ステージ昇降部が、予め定められた揺動可能角度まで傾斜したとき、前記上ステージ昇降部は前記ストッパによって前記ベースに係止されることを特徴とする。
上記構成によれば、揺動可能な角度範囲が予め設定されているので、使用者は、レンズ部やレンズ部に装着する照明部の種別に関わらず、揺動可能な角度範囲において安心して上ステージ昇降部を揺動させることができる。
また、観察対象物が載置される載置部と、ベース部と、前記載置部に載置された観察対象物を撮像するカメラ部と、該カメラ部の先端に装着されるレンズ部とを備えたヘッド部と、前記ヘッド部を光軸に沿って移動させることで、該レンズ部の焦点を調整可能な上ステージ昇降部と、前記ヘッド部を、前記載置部と平行な姿勢で前記ベース部に設けられた揺動軸を中心として揺動可能に支持する揺動機構と、前記ヘッド部の前記載置部に対する相対距離に応じて警告を発するための制御手段と、距離閾値を記憶するためのメモリ部と、前記ヘッド部の前記載置部に対する相対距離を演算する演算手段とを備えた拡大観察装置において、前記制御手段は警告手段を備えており、前記演算手段が演算した前記ヘッド部の前記載置部に対する相対距離と、メモリ部に記憶された距離閾値とを比較して、前記ヘッド部の前記載置部に対する相対距離が前記メモリ部に記憶された距離閾値を超えて短い場合には前記警告手段が警告を発することを特徴とする。
上記構成によれば、距離閾値を設けて、ヘッド部が距離閾値を超えて観察対象物やステージ面に接近した場合には警告手段が警告を発するので、使用者は警告に従ってヘッド部を下降させることを止めて、ヘッド部が観察対象物やステージ面に衝突することを防止することができる。さらに、使用者はヘッド部が観察対象物やステージ面に接近していないことを目視で確認する手間を省くことができる。
また、観察対象物が載置される載置部と、ベース部と、前記載置部に載置された観察対象物を撮像するカメラ部と、該カメラ部の先端に装着されるレンズ部とを備えたヘッド部と、前記ヘッド部を光軸に沿って移動させることで、該レンズ部の焦点を調整可能な上ステージ昇降部と、前記ヘッド部を、前記載置部と平行な姿勢で前記ベース部に設けられた揺動軸を中心として揺動可能に支持する揺動機構と、前記ヘッド部の前記載置部に対する相対距離に応じて警告を発するための制御手段と、距離閾値を記憶するためのメモリ部と、前記ヘッド部の前記載置部に対する相対距離を演算する演算手段とを備えた拡大観察装置において、前記制御手段は警告手段と表示手段とを備えており、前記制御手段は、前記演算手段が演算した前記ヘッド部の前記載置部に対する相対距離と、メモリ部に記憶された距離閾値とを比較して、前記ヘッド部の前記載置部に対する相対距離が前記メモリ部に記憶された距離閾値を超えて短い場合には、前記警告手段は、前記表示手段に警告表示をさせることを特徴とする。
上記構成によれば、表示手段に警告表示がされるので、表示手段を目視している観察者は確実に警告表示に気付くことができる。
また、観察対象物が載置される載置部と、ベース部と、前記載置部に載置された観察対象物を撮像するカメラ部と、該カメラ部の先端に装着されるレンズ部とを備えたヘッド部と、前記ヘッド部を光軸に沿って移動させることで、該レンズ部の焦点を調整可能な上ステージ昇降部と、前記ヘッド部を、前記載置部と平行な姿勢で前記ベース部に設けられた揺動軸を中心として揺動可能に支持する揺動機構と、前記ヘッド部の前記載置部に対する相対距離に応じてヘッド部の下降を停止させるための制御手段と、距離閾値を記憶するためのメモリ部と、前記ヘッド部の前記載置部に対する相対距離を演算する演算手段と、を備えた拡大観察装置において、前記制御手段は、前記演算手段が演算した前記ヘッド部の前記載置部に対する相対距離と、メモリ部に記憶された距離閾値とを比較して、前記ヘッド部の前記載置部に対する相対距離が前記メモリ部に記憶された距離閾値を超えて短くなっている場合にはヘッド部の下降を停止させることを特徴とする。
上記構成によれば、ヘッド部の載置部に対する相対距離が距離閾値を超えて短い場合にはヘッド部の下降を停止させて、ヘッド部が観察対象物やステージ面に衝突することを確実に防止することができる。
また、観察対象物が載置される載置部と、ベース部と、前記載置部に載置された観察対象物を撮像するカメラ部と、該カメラ部の先端に装着されるレンズ部とを備えたヘッド部と、前記ヘッド部を光軸に沿って移動させることで、該レンズ部の焦点を調整可能な上ステージ昇降部と、前記ヘッド部を、前記載置部と平行な姿勢で前記ベース部に設けられた揺動軸を中心として揺動可能に支持する揺動機構と、前記ヘッド部の前記載置部に対する相対距離に応じてヘッド部を載置部から離れる方向に移動させるための制御手段と、距離閾値を記憶するためのメモリ部と、前記ヘッド部の前記載置部に対する相対距離を演算する演算手段とを備えた拡大観察装置において、前記制御手段は、前記演算手段が演算した前記ヘッド部の前記載置部に対する相対距離と、メモリ部に記憶された距離閾値とを比較して、前記ヘッド部の前記載置部に対する相対距離が前記メモリ部に記憶された距離閾値を超えて短くなっている場合にはヘッド部を載置部から離れる方向に移動させることを特徴とする。
上記構成によれば、ヘッド部の載置部に対する相対距離が距離閾値を超えて短い場合にはヘッド部を載置部から離れる方向に移動させて、ヘッド部が観察対象物やステージ面に衝突することを一層確実に防止することができる。
また、前記制御部はカメラ部3が撮像した投影画像に基づいて観察対象物の高さ情報を生成可能であり、距離閾値は、前記制御手段が生成した高さ情報に基づいて決定されることを特徴とする。
上記構成によれば、最適な距離閾値を決定することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための拡大観察装置及びこれを用いた画像撮像方法を例示するものであって、本発明は拡大観察装置及びこれを用いた画像撮像方法を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
以下、図1〜図22を用いて、本発明の一実施の形態に係る拡大観察装置100を説明する。なお、水平面内で直交する2方向をX軸およびY軸とし、X軸およびY軸に垂直な方向をZ軸とする。拡大観察装置100は、図1Aに示すように観察対象物(又はワークその他の被写体)Sを照明するための照明手段2と、照明手段2により照明された観察対象物Sを撮像するカメラ部3と、カメラ部3で撮像された拡大画像を表示する表示手段4を有する本体部5とを備える。カメラ部3はヘッド部6として、ケーブル部7を介して本体部5と接続される。カメラ部3の先端にはカメラ部3と光軸を一致させたレンズ部20が設けられている。レンズ部20は複数の光学レンズで構成されている。ヘッド部6は取付部材25に取り付けられており、上ステージ昇降部31によって光学系9の光軸10方向に移動可能である。拡大観察装置100は、さらに観察対象物Sが載置されるステージ8と、光学系9を介して入射するステージ8に載置された観察対象物Sからの反射光又は透過光を電気的に読み取る撮像素子12と、ステージ8とヘッド部6との光学系9の光軸10方向における相対距離を変化させ焦点を調整する焦点調整部として下ステージ昇降部13とを備える。上ステージ昇降部31と下ステージ昇降部13とは拡大観察装置100が設置される設置面に当接するベース部42に取り付けられる。
本体部5は、図2に示すように下ステージ昇降部13によって焦点を調整したときのステージ8と光学系9の光軸10方向における相対距離に関する焦点距離情報を、光軸10方向とほぼ垂直な面内における観察対象物Sの2次元位置情報と共に記憶する焦点距離情報記憶部としてメモリ部14と、撮像素子12によって読み取られた画像を表示する表示手段4と、ヘッド部6、下ステージ昇降部13、上ステージ昇降部31とデータを通信するためのインターフェイス15とを備える。この拡大観察装置100は、光学系9を介して入射するステージ8に固定された観察対象物Sからの反射光又は透過光を電気的に読み取る撮像素子12を用いて観察像を撮像し、表示手段4に表示させる。
さらに拡大観察装置100は、表示手段4によって表示された画像上で領域を設定可能な領域設定部として操作部16と、領域設定部によって設定された領域に対応する観察対象物Sの一部又は全部に関するメモリ部14に記憶された焦点距離情報に基づいて、領域設定部によって設定された領域に対応する観察対象物Sの光軸10方向における高さを演算する制御手段19を備える。この拡大観察装置100は、撮像素子12を用いて指定された領域に対応する観察対象物Sの光軸10方向における平均高さ(深さ)を演算できる。
操作部16は本体部5又はコンピュータと有線もしくは無線で接続され、あるいはコンピュータに固定されている。一般的な操作部16としては、例えばマウスやキーボード、スライドパッド、トラックポイント、タブレット、ジョイスティック、コンソール、ジョグダイヤル、デジタイザ、ライトペン、テンキー、タッチパッド、アキュポイント等の各種ポインティングデバイスが挙げられる。またこれらの操作部16は、拡大観察用操作プログラムの操作の他、拡大観察装置100自体やその周辺機器の操作にも利用できる。さらに、インターフェース画面を表示するディスプレイ自体にタッチスクリーンやタッチパネルを利用して、画面上をユーザが手で直接触れることにより入力や操作を可能としたり、又は音声入力その他の既存の入力手段を利用、あるいはこれらを併用することもできる。図1の例では、操作部16はマウス等のポインティングデバイスで構成される。
(照明手段2)
照明手段2は、撮像素子12に結像される観察対象物Sを照明する照明光を生成する。照明手段2の照明光源は、本体部5に内蔵され、光ファイバ21を介して照明光がヘッド部6の照明手段2に伝達される。照明手段2は、ヘッド部6に組み込み式としたり、ヘッド部6と脱着可能な別体のいずれも採用できる。また照明光の照明方式としては、落射照明や透過照明等が適宜利用できる。図1に示す照明手段2は、観察対象物Sに落射光を照射するための落射照明2Aと、透過光を照射するための透過照明2Bを備えている。これらの照明は、光ファイバー21を介して本体部5と接続される。本体部5は光ファイバー21を接続するコネクタ22を備えると共に、コネクタ22を介して光ファイバー21に光を送出するための照明光源を内蔵する。また落射照明2Aはリング状照明としている。リング状照明は、全周照明と側射照明を切り替えることができる。これを実現するため、照明光の一部をカットするターレット式のマスクや、リング状照明として複数のLEDを環状に配置し、一部のLEDをON/OFFする構成等が利用できる。
(照明光源)
照明光源としては、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)といった半導体発光素子が利用できる。例えば、RGBの波長域を有するLEDを用意32によって白色光を得ることができる。特にLEDはON/OFF応答性に優れるため、測定のスループットを向上できる利点も得られる。また長寿命で低消費電力であり、発熱量も少なく、機械的衝撃に強いといった特長も備える。あるいは、光源光の紫外線や可視光線で励起される蛍光体等の波長変換部材を利用した光源とすることもできる。これにより、1個のLEDでも白色光を発光できる。さらに、可視光以外に紫外光や赤外光を照射可能なLEDを光源として用いることもできる。例えば赤外光による観察は、不良品の解析や生体組織の組織分布等において有用である。なお照明光源には半導体発光素子に限らず、幅広い波長域の白色光を発する白色光源として、ハロゲンランプ、キセノンランプ、HIDランプ等を利用してもよい。また可視光のみならず赤外光を照射可能な光源としてもよい。特にハロゲンランプは、発光波長の波長域が広いため好ましい。また、単一の光源を利用するのみならず、複数の光源を備え、これらを同時に点灯して混色光を照明光としたり、あるいは切り替えて照明することもできる。
(カメラ部3)
カメラ部3は、照明手段2により照明された観察対象物Sから、光学系9を介して入射する反射光を電気的に読み取る撮像素子12を備える。撮像素子12は、この例ではCMOSを利用しているが、CCD等、他の受光素子も利用できる。
(レンズ部20)
カメラ部3の先端にはカメラ部3と光軸を一致させたレンズ部20が設けられている。レンズ部20は複数の光学レンズで構成されている。
(アタッチメント)
カメラ部3の先端には複数の光学レンズで構成されたレンズ部20が設けられいるが、このレンズ部20には、照明用アタッチメントや偏光フィルタ等のアタッチメントを装着可能である。
(表示手段4)
画像データやメモリ部14に保持された設定内容は、表示手段4にて表示させることができる。表示手段4はCRTや液晶ディスプレイ、有機EL等のモニタが利用できる。また、制御手段19に対して、ユーザが各種操作を行うための操作部16を接続している。操作部16はコンソールやマウス等の入力デバイスである。なおこの例においても表示手段4や操作部16は、本体部5と一体的に組み込むことも、外付けの部材とすることもできる。さらに表示手段4をタッチパネルで構成すれば、表示手段4と操作部16を一体に構成することもできる。
本体部5は、モータ制御回路28に対してステッピングモータ29の制御に関する制御データを入力することによって、ステージ8と、光学系9および撮像素子12を有するヘッド部6との光軸10方向における相対距離、ここではz方向における高さを変化させる。具体的には、本体部5は、下ステージ昇降部13の制御に必要な制御データをモータ制御回路28に入力することによってステッピングモータ29の回転を制御し、ステージ8の高さz(z方向の位置)を昇降させる。ステッピングモータ29は、回転に応じた回転信号を生成する。本体部5は、モータ制御回路28を介して入力される回転信号に基づいて、ステージ8と光学系9の光軸10方向における相対距離に関する情報としてのステージ8の高さzを記憶する。このステージ8は、観察対象物Sに対して観察位置の位置決めを行う観察位置決め手段として機能する。
本体部5は、モータ制御回路32に対してステッピングモータ33の制御に関する制御データを入力することによって、撮像素子12を有するヘッド部6の光軸方向における高さを変化させる。具体的には、本体部5は、上ステージ昇降器31の制御に必要なレンズ部11の種別情報等に基づいた制御データをモータ制御回路32に入力することによってステッピングモータ33の回転を制御し、撮像素子12を有するヘッド部6の高さz(z方向の位置)を昇降させる。ステッピングモータ33は、回転に応じた回転信号を生成する。本体部5は、モータ制御回路32を介して入力される回転信号に基づいてステージ8と光学系9の光軸10方向における相対距離に関する情報としてのヘッド部6の高さzを記憶する。
撮像素子12は、x方向およびy方向に2次元状に配置された画素毎に受光量を電気的に読み取ることができる。撮像素子12上に結像された観察対象物Sの像は、撮像素子12の各画素において受光量に応じて電気信号に変換され、撮像素子制御回路17においてさらにデジタルデータに変換される。本体部5は、撮像素子制御回路17において変換されたデジタルデータを受光データDとして、光軸10方向(図2中のz方向)とほぼ垂直な面内(図2中のx、y方向)における観察対象物Sの2次元位置情報としての画素の配置情報(x、y)と共にメモリ部14に記憶する。ここで、光軸10方向とほぼ垂直な面内とは、厳密に光軸10に対して90°をなす面である必要はなく、その光学系および撮像素子における解像度において観察対象物Sの形状を認識できる程度の傾きの範囲内にある観察面であればよい。
(制御手段19)
制御手段19は、撮像した観察画像を、表示手段4で表示可能な解像度に変換して表示するよう制御する。図2の拡大観察装置100においては、カメラ部3が撮像素子12によって観察対象物Sを撮像した観察画像を表示手段4に表示する。一般にCMOSやCCD等の撮像素子12の性能は、表示手段4での表示能力を上回ることが多いので、撮像した観察画像を一画面に表示するためには画像を間引く等して解像度を一画面で表示可能なサイズまで落とし、縮小表示している。カメラ部3で読み取ったときの読取解像度を第一の解像度とすると、表示手段4においては第一の解像度よりも低い第二の解像度で表示されることとなる。
(ステージ8)
下ステージ昇降部13の上面側に設置されたステージ8は、たとえばステッピングモータなどで駆動されて、X軸方向およびY軸方向に移動可能であり、ステージ8の任意の位置をカメラ部3の光軸10に合致させることができる。さらにステージ8は、Z軸を回転中心軸として回転自在なθステージ35に取り付けられており、使用者はカメラ部の光軸10に合致している観察対象面を回転させて観察することができる。
一方でこの拡大観察装置100は、ヘッド部6をステージ8に対して傾斜させるためのヘッド傾斜機構を備えている。ヘッド傾斜機構は、図3に示すようにヘッド部6をステージ8に対して傾斜させるため、揺動軸37を介してヘッド部6を揺動自在にベース部42に支持している。揺動軸37は、Y軸方向(図3において紙面に垂直な方向)に設けられている。ヘッド部6を揺動自在にベース部42に固定する構造の詳細は、後述する図18、図21等に示す。
(支持台40)
拡大観察装置100の撮像系1の外観構成の一例を図1に示す。この図に示す撮像系101は、観察対象物Sを載置する載置部とヘッド部6を支持する支持台40を備えている。支持台40は、載置部を水平面内あるいは上下移動可能な状態に保持するステージ固定機構44と、載置部を保持した状態でヘッド部6を傾斜させるヘッド傾斜機構45を備えている。これらステージ固定機構44及びヘッド傾斜機構45は、ベース部42に固定されている。ベース部42は平板状として、安定的に支持台40を自立させる。
(ステージ固定機構44)
ステージ固定機構44は、載置部を水平面内(XY軸方向)及び垂直方向(Z軸方向)に移動可能な一以上の移動機構を介して、載置部をベース部42に固定している。具体的には、ここでは移動機構として、載置部をZ軸方向に移動させるためのZ軸方向移動機構(第一焦点調整部)、載置部をXY軸方向に移動させるためのXY軸移動機構、載置部をθ方向に回転させるための回転移動機構が利用できる。図1に示す例では、Z軸移動機構として下ステージ昇降器13を実現し、さらに回転移動機構として、θステージ35上に固定された中間連結部38でもって載置部を回転可能とし、加えてXY軸移動機構として、中間連結部38上に固定されたステージ8でもって、載置部をXY軸方向に移動可能としている。
(ヘッド傾斜機構45)
揺動機構であるヘッド傾斜機構45は、ヘッド部6を載置部に対して傾斜させるため、ベース部42に揺動軸37を介して揺動自在に連結された上ステージ昇降器31と、上ステージ昇降器31にヘッド部6を固定するための取付部材25とを備える。上ステージ昇降器31は、下端に揺動軸37を設けており、揺動軸37を中心として旋回するようにベース部42に支持される。上ステージ昇降器31は、ステージ8と平行な姿勢でベース部42に設けられた揺動軸37を中心として揺動可能である。また取付部材25の先端には、ヘッド部6を固定する固定機構が設けられる。ここでは、固定機構はヘッド部6の外周を囲むリング状に形成されて、リング状の中心にヘッド部6を挿入して、周囲の複数の位置から止めねじで螺合されて固定される。
ベース部42の上面には、下方に向かって末広がりとしたブロック42aが固定され、このブロック42aの上部に軸受部42bを形成している。軸受部42bは、離間して固定された一対のガイド部42cを備えており、一対のガイド部42cは側面視において凹形状に形成されている。各ガイド部42cは、Y軸方向に平行な軸を中心軸として形成された円形の孔部を開口している。これらの孔部には揺動軸37がY軸方向に沿って嵌合されている。この例では、揺動軸37に目盛を設けており、ヘッド部6を揺動させる角度を目盛でもって目視できるように構成している。
(物理的接続機構)
また顕微鏡装置100は、カメラ部3とレンズ部20とを、相対的に回転不可の状態で物理的に連結すると共に、着脱自在とする物理的接続機構を備える。具体的にカメラ部10は、レンズ部20と物理的に接続するためのカメラ側接続面71を備える。またレンズ部20は、カメラ側接続面71と物理的に接合されるレンズ側接続面73を備える。カメラ側接続面71の一例を図4の斜視図に、レンズ側接続面73の一例を図5の斜視図に、それぞれ示す。これらの図に示すように、カメラ側接続面71とレンズ側接続面73とは、物理的接続機構、具体的には係合構造や嵌合構造によって機械的に接続される。例えば図4、図5の例では、カメラ側接続面71の中央に、円柱状に突出させた円柱状突出部を形成し、円柱状突出部の側面の端縁側に、円弧状の鍔部を部分的に突出させている。一方レンズ側接続面73は、円柱状突出部を挿入可能な円筒状窪みを中央に形成しており、さらに円筒状窪みの内面には、鍔部を係合させるためのスリットを形成している。スリットを部分的に切り欠くことで、円柱状突出部を円筒状窪みに挿入可能とし、さらにカメラ側接続面71をレンズ側接続面73とを相対的に回転させることで、鍔部をスリットに案内して係合させ、ロック状態としてカメラ部3とレンズ部20とを連結できる。また、カメラ部3とレンズ部20とを相対的に回転させてロック状態を解除することで、カメラ部3とレンズ部20とを分離することも容易に行える。なお、上述した物理的接続機構でいう相対的に回転不可の状態とは、ロック状態においてカメラ部3とレンズ部20とが連結された状態を意味し、連結又は着脱動作時にカメラ部3とレンズ部20とを相対的に回転させてロック状態、ロック状態の解除を行う動作を意味するものでない。また、以上の係合構造は一例であって、本発明においてはカメラ部3とレンズ部20とを着脱自在に連結する物理的接続機構として、既知の構成を適宜採用できる。
(電気的接続機構)
さらにカメラ部3とレンズ部20とは、互いに電気的に接続するための電気的接続機構を備えている。具体的には、撮像部はカメラ側接続面71に、このレンズ部20と電気的に接続するためのカメラ側接続端子72を備えている。またレンズ部20は、同じくレンズ側接続面73に、レンズ部20をカメラ部3に装着した際にカメラ側接続端子72と電気的に接続されるレンズ側接続端子74を備えている。これらのカメラ側接続端子72、レンズ側接続端子74は、カメラ側接続面71、レンズ側接続面73にそれぞれ配置されており、カメラ側接続面71とレンズ側接続面73とを物理的接続機構でもって機械的に連結した状態、すなわちロック状態におけるレンズ部20とカメラ部3との回転位置において、対応するカメラ側接続端子72とレンズ側接続端子74とが接触されるよう、位置や大きさ、形状が設計されている。いいかえると、物理的接続機構でもってカメラ部3とレンズ部20とが連結されると、同時に電気的接続機構の接続も実現される。この結果、従来のように、別途ケーブル等を介してレンズ部を制御系あるいは撮像系と電気的に接続する必要がない。これにより、特に頻繁にレンズ交換を行うような観察においては、レンズ交換時の作業を簡略化できる利点が得られる。またケーブルの本数を減らして、取り回しの点でも有利となる。
なお図4、図5の例では、カメラ側接続端子72、レンズ側接続端子74は、それぞれカメラ側接続面71、レンズ側接続面73の円周部分に設けられている。このような配置によって、ヘッド部4とカメラ部3との連結の際に端子が他の端子などと接触して表面を擦られるため、表面のごみや異物を削ぎ落として接触抵抗の増大を回避できる。ただし、端子の配置構造はこの例に限定されるものでない。また図4、図5の例では、カメラ側接続端子72、レンズ側接続端子74はそれぞれ7個の端子を備えているが、端子の数はこれに限定されない。
さらにカメラ部3は、複数の異なる仕様のレンズ部20を交換式に装着可能としている。また各レンズ部20は、それぞれのレンズ部20の種別を示すレンズ種別情報を保持しており、レンズ側接続端子74を介してレンズ種別情報を送出できる。すなわち物理的接続機構によって、カメラ部3にレンズ部20を物理的に装着することで、同時に電気的接続機構による電気的接続も図られる。この結果、本体部5は現在装着されているレンズ部20の種別を、ケーブルレスで取得できるので、現在接続されているレンズ部の種別に応じた適切な動作制御を図ることが可能となる。
(レンズ種別情報)
レンズ種別情報には、レンズの型式、焦点距離の位置、レンズの筒体の長さ等の情報が含まれる。上述の通り、撮像系101と制御系102とはケーブル部3を介して接続されているので、制御系102で現在装着されているレンズの種別を判別することで、適切な制御を行える。例えば、レンズ部20の物理的な長さを把握することで、レンズ部20をZ上ステージで降下させる際に、観察対象物Sや載置部に接触しないように降下できる下限移動距離を把握して、これよりも降下しないように制限をかけることができる。
またレンズ種別情報として、レンズ部の情報を直接記録する他、レンズ部の識別情報、例えば型式のみを記録させ、一方型式と対応するレンズ部の詳細情報は、予め本体部5のメモリ部14等に、型式と関連付けられたルックアップテーブルとして記憶しておくこともできる。これにより、本体部5はカメラ部3を通じてレンズ識別情報である型式を取得すると、この型式と対応する詳細情報を、メモリ部14を参照して取得し、取得された情報に基づいてレンズ部20に合致した制御を行うことが可能となる。この方法であれば、レンズ部側に保持すべき情報量を少なくしつつ、必要な情報を本体部5側で把握することが可能となる。
顕微鏡装置においては、カメラ部を載置部に対して光軸回りに回転させたいことがある。例えば観察対象物を載置部上で移動させる際には、表示手段の画面上で表示される画像の、上下左右の移動方向が、実際の観察対象物の上下左右の移動方向と感覚的に一致させることが望まれる。また、レンズ部を載置部の上部で傾斜させて観察する傾斜観察においては、傾斜方向を表示手段の左右方向とするよりも、上下方向とした方が感覚的に画像の変化を把握し易いことが多い。このような観察を実現するためには、物理的にカメラ部を載置部に対して回転させる必要がある。
しかしながら、カメラ部の先端に装着されたレンズ部については、必ずしも回転させる必要がない。寧ろ、レンズ部は特に高倍率するにつれて大型化する傾向にあることから、重量も重くなり、レンズ部の保持にはそれなりの機械強度が要求される。このため、十分な剛性を維持しつつレンズ部を回転式としようとすれば、ユーザにおいては重くて大きいレンズ部を回転させる作業が面倒になる上、構成が複雑化してコストも高くなるという問題があった。また、レンズ部はカメラ部から載置部側に突出する姿勢で固定されているため、レンズ部が観察対象物に接触しないように留意する必要もあり、この点においてもレンズ部を回転させる構成は不便となる。
そこで、レンズ部を支持台に固定する一方で、カメラ部をレンズ部に対して相対的に光軸回りで回転可能とさせる構成が考えられる。しかしながらこの場合は、カメラ部とレンズ部との着脱構造が複雑になるという問題があった。すなわち、一般にカメラ部よりも重厚長大になる傾向にあるレンズ部を、カメラ部の先端から外れないように固定しつつも、必要なときには着脱自在とする機械構造とし、さらに一方ではレンズ部とカメラ部との回転をも許容するような構成とすることは、容易でない。特に、接続部分の剛性と信頼性を高めようとすればするほど、着脱が困難乃至面倒となるため、観察用途や目的に応じて頻繁にレンズ部を交換したいような場面では、レンズ交換作業が極めて煩雑になりかねないというる懸念もあった。
そこで本実施例においては、レンズ部20とカメラ部3との接続部分と、カメラ部3を相対的に回転させる部位とを分離することで、レンズ部20とカメラ部3の着脱構造及びカメラ部3を光軸回りに相対的に回転させる構造を簡素化することに成功したものである。具体的には、図6に示すように、レンズ部20にマウント部26を設け、マウント部26を介してカメラ部3とレンズ部20とを着脱式に接続する一方、マウント部26とレンズ本体27との間は回転自在としている。
(マウント部22)
図6に示すレンズ部20は、複数の光学レンズで構成されたレンズ本体27と、このレンズ本体27の端面に装着され、レンズ側接続面73を構成するマウント部26とで構成される。またマウント部26は、カメラ部10と接続するためのマウント側カメラ接続面34aと、その裏面側でレンズ本体27と接続するためのマウント側レンズ接続面34bとを備える。マウント側カメラ接続面34aは、レンズ側接続端子74を備えるレンズ側接続面73としている。よってマウント側カメラ接続面34aは、カメラ部3のカメラ側接続面71と着脱自在に連結する物理的連結機構を設けている。このような物理的連結機構としては、上述した図5等と同様の構成が利用できる。いいかえると、物理的連結機構ではカメラ部3とレンズ部20との光軸回りの回転は許容されず、所定の回転位置すなわち回転角度で固定される状態となる。
(回転機構)
これに対してマウント側レンズ接続面34bは、レンズ本体27との接続面でカメラ部3の光軸回りに回転自在に連結されている。このためマウント側レンズ接続面34bとレンズ本体27との接続面は、回転機構を備えている。回転機構として、図6の例では、マウント部26の中心から突出されたマウント円柱部を、レンズ本体27の端縁に形成された筒状体に挿入し、さらに筒状体の側面に開口されたねじ穴に螺合された止めネジの進行でもって、筒状体とマウント円柱部とを連結する。止めネジを緩めると、レンズ本体27とマウント部26とを相対的に回転させることができ、所定の回転位置でもって止めネジを締結することで、この回転角度にて固定できる。なお回転機構の例は、この構成に限られず、カメラ部の光軸回りにレンズ部20を回転自在として任意の角度で保持可能な既知の構成が適宜採用できる。
なお図6の例では、説明の都合上マウント部26とレンズ本体27とを分離しているが、実際にはマウント部26とレンズ本体27とは分離できず、光軸回りに回転自在に連結している。
また変形例として、マウント部をヘッド傾斜機構に固定することもできる。ヘッド傾斜機構は載置部と物理的に接続されているため、マウント部が載置部に対して位置が固定されることとなって、マウント部に装着されたレンズ部も載置部に対して位置が固定される。この結果、レンズ部を可動式とする構成に比べ、レンズ部が観察対象物に接触する事態を回避できる。
このようにして、カメラ部3とマウント部26との接続面は着脱構成とし、マウント部26とレンズ本体27との接続面は回転自在とすることで、カメラ部3を載置部に対して光軸回りに回転させることを許容しつつも、カメラ部3は所定の姿勢で保持させることができ、拡大観察の自由度を高めることができる。
以上のマウント部26によって、カメラ部3を載置部に対して、カメラ部3の光軸回りにおいて任意の回転角度で保持することができる。この結果、レンズ部20の光軸回りの姿勢すなわち回転角度によらず、カメラ部3を任意の姿勢すなわち回転角度に調整できるので、載置部の移動やカメラ部3の姿勢などに応じて観察に適した相対角度に調整することが可能となる。
またこの構成であれば、レンズ部20を移動させることなく保持させたままカメラ部3を回転できる。このため、レンズ部20の移動によって対物レンズが観察対象物Sや載置部と接触する事態を回避しやすくできる。例えば、ヘッド部6をヘッド傾斜機構45に装着して、揺動軸37を中心に揺動可能とした顕微鏡装置100においては、ヘッド部6を揺動させた状態で観察対象物Sに接触しないように留意する必要があるところ、少なくともレンズ部20を光軸回りに回転させなくても済む構成とすることで、無用な可動を排除して接触事故を回避できる。
各レンズ部20は、さらにアタッチメントの情報を示すアタッチメント情報を保持しており、アタッチメントの装着の有無およびアタッチメントを装着している場合には装着しているアタッチメント情報を本体部5に送出できる。アタッチメント情報には、アタッチメントの型式、アタッチメントの筒体の長さ、筒体の外径等の情報が含まれる。後に詳述するが、本体部5は現在接続されているアタッチメントに応じた適切な動作制御を図ることが可能となる。
(平面観察)
たとえば使用者が不図示の初期化ボタンを押すと、本体部5がモータ制御回路28に対してステッピングモータ29の制御データを入力し、下ステージ昇降器13が駆動されて、ステージ8が最下位置に移動する。このときの状態を図8に示す。
本体部5は、レンズ部20の種別情報等に基づいた制御データをモータ制御回路32に入力し、上ステージ昇降器31は、撮像素子12を有するヘッド部6の高さz(z方向の位置)を昇降させる。本体部5は、ステージ8に観察対象物Sが載置され、観察対象面の高さが揺動軸37の高さに合致していると仮定したならば、カメラ部3のピントが観察対象面に合致する高さzにヘッド部6を保持する。このときの状態を図9に示す。
なお、ヘッド部6の高さz(z方向の位置)の制御に必要なレンズ部20の種別情報等が本体部5に記憶されていない場合には、本体部5はヘッド部6を所定の最上位置に移動させ、最上位置に移動したヘッド部6を最上位置から下降させる。本体部5は、ステージ8に観察対象物Sが載置され、観察対象面の高さが揺動軸37の高さに合致していると仮定したならば、カメラ部3のピントが観察対象面に合致する高さzにヘッド部6を保持する。
次に、使用者は最下位置に位置したステージ8の上面に観察対象物Sを載置する。このときの状態を図10に示す。ステージ8は最下位置に位置しているので、観察対象物Sがステージ8に載置されるときに、観察対象物Sが、撮像素子12を有するヘッド部6に接触することを防止することができる。
本体部5は、ステージ8に載置された観察対象物Sの観察対象面にカメラ部3のピントが合致するように、載置部である、ステージ8とθステージ35とをZ軸に沿って上昇させ、観察対象物Sの観察対象面を揺動軸37に合致させる。このときの状態を図11に示す。観察対象面がカメラ部3の光軸上に位置していない場合には、本体部5は、ステージ8をX軸方向および/又はY軸方向に移動させて観察対象面をカメラ部3の光軸上に位置させた後に、ステージ8とθステージ35とをZ軸に沿って上昇させて、観察対象物Sの観察対象面を揺動軸37に合致させる。使用者は、表示手段4を用いて、揺動軸37と合致している観察対象物Sの観察対象面を平面観察することができる。使用者は、また本体部5がθステージ35を駆動して、観察対象面を回転させた状態で平面観察することもできる。
(傾斜観察)
ヘッド部6を揺動させた傾斜観察を行う場合は、使用者は、揺動軸37を中心として、上ステージ昇降器31を手動で揺動させて、ヘッド部6を傾斜させた状態で観察対象面を傾斜観察することができる(図11を参照のこと。)。このとき、このヘッド部6を傾斜させた状態で、カメラ部3のピントが観察対象面に合致しており、平面観察時に表示手段4に表示されていた観察対象面が、表示手段4の画面上で移動することなく、平面観察時に表示されていた位置にそのまま表示された状態での観察であるユーセントリック観察を行うことができる。
平面観察しているとき、ステージ8を水平方向に移動して、ステージ8に載置している新たな部位を観察したい場合がある。このような場合には、本体部5は、ステージ8をX軸方向および/又はY軸方向に移動させて新たな部位の観察対象面を揺動軸37上に位置させる。このときの状態を図12に示す。本体部5は、ステージ8を再び最下位置に移動させた後、観察対象面にカメラ部3のピントが合致するように、載置部(ステージ8およびθステージ35)をZ軸に沿って移動させて、観察対象面を揺動軸37上に合致させる。このときの状態を図13に示す。使用者は、この状態で、表示手段4などを用いて観察対象面を平面観察することができる。
この場合に、観察対象面に関する焦点距離情報がメモリ部14に記憶されている場合には、制御手段19はメモリ部14に記憶されている焦点距離情報に基づいて観察対象物Sの光軸方向における高さを演算して、観察対象面を前記揺動軸37上に合致させることができる。この場合にはステージ8を最下位置に移動させる工程を省くことができ、観察対象面を迅速に撮像することができる。
なお、上ステージ昇降器31は、本体部5とモータ制御回路32とステッピングモータ33とによって、載置部であるステージ8とθステージとを電動で移動可能に支持しているが、これに限定されるものではない。上ステージ昇降器13に設置されたツマミを使用者が回して、ステージ8とθステージとを手動で移動させるものでも良い。
(加速度センサ41,43)
取付部材25には第一加速度センサ41が設置されている。第一加速度センサ41は、拡大観察装置100の重力加速度に対するカメラ部3の光軸10の傾斜角度である第一傾斜角度を検出する。ベース42には第二加速度センサ43が設置されている。第二加速度センサ43は、重力加速度に対する載置部(ステージ8,θステージ35)の回転中心軸48の傾斜角度である第二傾斜角度を検出する。第一加速度センサ41と第二加速度センサ43とは角度検出手段である。
ここで第一傾斜角度と第二傾斜角度とに基づいて載置部に対するカメラ部3の光軸10の傾斜角度である第三傾斜角度(チルト角度)を算出する方法について図14と図15とを用いて説明する。なお、第一加速度センサ41と第二加速度センサ43として3次元の加速度センサが用いられているが、簡単のために2次元で説明する。
第一加速度センサ41は、重力加速度を、カメラ部3の光軸10方向と、カメラ部3の光軸10方向と直交する方向に分解して、カメラ部3の光軸10方向の値と、カメラ部3の光軸10方向と直交する方向の値とを検出する。一方で、載置部(ステージ8,θステージ35)は回転中心軸48を中心として回転するが、第二加速度センサ43は、重力加速度を、載置部の回転中心軸48方向と、載置部の回転中心軸48方向と直交する方向とに分解して、載置部の回転中心軸48方向の値と、載置部の回転中心軸48と直交する方向の値とを検出する。
図14においては、載置部の回転中心軸48が鉛直線方向に向いており、カメラ部3の光軸10が鉛直線方向に対して傾いている場合を示す。第一加速度センサ41は、重力加速度のカメラ部3の光軸10方向の値であるY1と、重力加速度のカメラ部の光軸10方向と直交する方向の値であるX1とを検出する。一方で第二加速度センサ43は、重力加速度の載置部の回転中心軸48方向の値であるY2として重力加速度の値を検出し、載置部の回転中心軸48と直交する方向の値として0を検出する。
演算手段24は、第一加速度センサ41が検出したY1とX1とによって、重力加速度に対するカメラ部3の光軸10方向の傾斜角度θ1を算出し、第二加速度センサ43が検出したY2(重力加速度の値)とX2(X2=0)とによって、鉛直線方向に対する載置部の回転中心軸48方向の傾斜角度θ2(θ2=0)を算出する。演算手段24は、さらにθ1とθ2とによって、第三傾斜角度θ12(=θ1+θ2)を算出する。
図15は図14の状態から拡大観察装置全体を傾斜させ、載置部の回転中心軸48とカメラ部3の光軸10とがともに鉛直線方向に対して傾いている場合を示す。この場合には、第一加速度センサ41は、重力加速度のカメラ部3の光軸10方向の値であるY3と、重力加速度のカメラ部3の光軸10方向と直交する方向の値であるX3とを検出する。一方で第二加速度センサ43は、重力加速度の載置部の回転中心軸48方向の値であるY4と、重力加速度の載置部の回転中心軸48方向と直交する方向の値であるX4とを検出する。
演算手段24は、第一加速度センサ41が検出したY3とX3とによって、カメラ部3の光軸10方向の傾斜角度θ3を算出し、第二加速度センサ43が検出したY4とX4とによって、鉛直線方向に対する載置部の回転中心軸48方向の傾斜角度θ4を算出する。演算手段24は、さらにθ3とθ4とによって、第三傾斜角度θ34(θ34=θ3+θ4)を算出する。角度検出手段は、第一加速度センサ41と第二加速度センサ43と演算手段24とを備えている。表示手段4は、図1Bに示すように演算手段24が算出した第三傾斜角度(θ12,θ34)を表示手段4に設けたチルト角度表示部50に表示することができる。
なお、第一加速度センサ41を設置する場所は取付手段25に限定されるものではなく、カメラ部3や上ステージ昇降部31に設置することもできる。同様に第二加速度センサ43を設置する場所も載置部に限定されるものではなく、下ステージ昇降部13またはベース部42に設置することもできる。さらに上述した例では、第一加速度センサ41と第二加速度センサ43との2つの加速度センサを使用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、3つ以上の加速度センサを使用することもできる。
第一加速度センサ41はカメラ部3に設置され、第二加速度センサ43はベース部42に設置されるので、上ステージ昇降部31を支持する揺動軸37にエンコーダなどの角度検知センサを設置した場合のように、機器が複雑になり大型化し、あるいは耐振性、耐久性を損なうことはない。また、第一加速度センサ41に加えて第二加速度センサ43を設置して、重力加速度に対する載置部の傾斜角度を検出しているので、拡大観察装置100が傾斜した状態で設置された場合でも、載置部に対するカメラ部3の観察角度である第三傾斜角度を算出して表示手段4に表示することができる。このように、拡大観察装置100が設置された傾斜角度に関わらずチルト角度を正確に再現することができる。
(回転角度センサ)
ステージ8は、Z軸を中心として回転自在なθステージ35に取り付けられているが、このθステージ35の回転中心軸48には回転角度センサ49が取り付けられている(図16を参照のこと。)。回転角度センサ49によって、載置部の回転角度を検出することができる。回転角度センサ49が検出した載置部の回転角度は、図1Bに示すように表示手段4に設けた載置部回転角度表示部54に表示することができる。これによって、チルト角度に加えて載置部の回転角度も正確に再現することができる。図17に示すように、観察対象物が載置される載置部の載置面が傾いている場合であっても、使用者は、表示手段4に表示される、載置部のチルト角度と回転角度とによって、傾斜観察における観察状態を正確に再現することができる。
(傾斜時衝突回避)
ヘッド部6を揺動させて傾斜観察を行う場合には、使用者は揺動軸37を中心として、上ステージ昇降器31を手動で揺動させる(図21参照)。レンズ部20には照明手段である照明用アタッチメントが装着され、さらに偏光フィルタなどのアタッチメントが装着されることがある。
図19に示すように、レンズ部20の外径が小さい場合や、作動距離30が長い場合には、ヘッド部6を傾斜させたとき、レンズ部20やレンズ部20に装着したアタッチメント18が観察対象物やステージ面23に接触する可能性は低い。ところが、 図20に示すように、レンズ部20やアタッチメント18の外径が大きい場合や、作動距離30が短い場合には、揺動軸37を中心としてヘッド部6を傾斜させたとき、レンズ部20やアタッチメント18が傾いた状態で観察対象物Sやステージ面23に接近するので、レンズ部20やアタッチメント18の角部が観察対象物Sやステージ面23に接触し易くなる。このため、意図しない接触によって観察対象物等が破損する事態を回避することが求められる。
そこで本実施の形態では、このようなヘッド部の傾斜時の接触を回避する機能を備えている。具体的には、制御手段19は、演算手段24が算出した第三傾斜角度(θ12,θ34)と、メモリ部14が記憶している傾斜角閾値とを比較して、第三傾斜角度(θ12,θ34)が、傾斜角閾値を超えている場合には、表示手段19に警告表示をさせる。傾斜角閾値は、レンズ部20の種別を示すレンズ種別情報と、アタッチメント情報とに基づいて決定される。
あるいは、揺動機構に支持された前記ヘッド部の揺動可能な角度を予め制限することもできる。たとえば、図23(a)に示すように、ストッパー63が設けられる。ベース部42にはプランジャ64が螺合されており、上ステージ昇降器31が揺動制限された角度位置に達したとき、プランジャ64のボール65がばね力によって上ステージ昇降器31側に突出して、上ステージ昇降器31に形成された孔部66に係合する。これによって、ヘッド部の揺動角度が予め制限される。使用者は、レンズ部11やレンズ部11に装着するアタッチメント18の種別に関わらず、揺動可能な角度範囲において安心してヘッド部6を揺動させることができる。
予め定めた角度範囲を超えてヘッド部6を揺動させる場合には、使用者は、上ステージ昇降器31を予め定めた角度範囲の外側に押す。そうすると、図23(b)に示すようにボール65が孔部66から押し出されてストッパー63が解除される。これによって、使用者は、予め定めた角度範囲を超えてヘッド部6を傾斜させることができる。予め定めた揺動可能な角度は、例えば45°〜90°、好ましくは60°に設定する。
(ヘッド部下降時衝突回避)
使用者がヘッド部6を手動で揺動させて、ヘッド部6が特定の傾斜角度に設定された状態で、本体部5が、ヘッド部6と観察対象物10との距離を段階的に変化させながらヘッド部6を下降させて、カメラ部3のピントが合致した位置の画素を合成して深度合成を行い、あるいはオートフォーカスを行う場合がある。このとき図20に示すように、レンズ部20の外径が大きく作動距離30が短い場合や、レンズ部20にアタッチメント18が装着されている場合には、レンズ部20やアタッチメント18の角部が観察対象物Sやステージ面23に衝突し易くなる。
レンズ種別情報とアタッチメント情報とは、本体部5のメモリ部14に記憶されており、メモリ部14に記憶されたレンズ種別情報及びアタッチメント情報と、演算手段24が算出した第三傾斜角度とに基づいて距離閾値が決定される。制御部は、ヘッド部6の載置部に対する相対的高さを読み取り、相対的高さが距離閾値を超えて低くなっている場合には、制御部は、表示手段4に警告表示をさせる。
制御部はさらにステッピングモータの駆動を停止させるための信号をモータ制御回路32に入力して、ヘッド部6の下降を停止させることができる。さらに制御部は、モータ制御回路32に回転信号を入力してステッピングモータを駆動し、ヘッド部6を観察対象物Sやステージ面23から離れる方向に移動させる(退避させる)こともできる。
このようにすると、深度合成を行い、あるいはオートフォーカスを行うときのヘッド部の可動範囲を一層細かく制御することができる。
制御手段が、カメラ部3が撮像した投影画像に基づいて三次元演算処理をして、観察対象物の高さ情報を生成可能であれば、生成した高さ情報に基づいて距離閾値を決定することができる。これによって最適な距離閾値を決定することができる。