JP2015125388A - 電子楽器、プログラム及び発音音高選択方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このような電子楽器については、例えば特許文献1に記載がある。
すなわち、特許文献1に記載の方式では、押鍵操作に応じて全アサイナに発音すべき音高を選択させるため、一部のアサイナについては選択する音高を変えたくない場合であっても選択音高が変わってしまう。例えば、比較的長い押鍵で伴奏を演奏しつつ、メロディの音高を次々変化させる場合、伴奏の音高を選択しているアサイナについては、メロディの押鍵があったとしても、それによらず選択を維持することが望ましいと考えられる。しかし、特許文献1に記載の方式では、このような要望に十分応えることができなかった。
しかし、この方式であっても、STの値を適切に設定することが難しいという問題がある。例えば、初めのキーオンから短時間で次のキーオンがあった場合でも、音を増やしたい場合と、伴奏の押鍵を維持しつつメロディの音高を変化させている場合とが考えられる。前者の場合には全押鍵に対してパートの再割り当てを行い、後者の場合は伴奏部分についてはパートの再割り当てを行わないことが望ましいと考えられるが、発音継続時間によりこれらを区別するのは難しい。
なお、このような問題は、電子楽器が鍵盤楽器でない場合であっても、それぞれ音高と対応する複数の操作部の操作状態に応じて、発音する音高を選択する場合には、同様に生じ得るものである。
あるいは、上記決定手段が、上記発音開始操作を検出した操作部の音高から所定音高差以内の音高を選択している選択手段を、上記発音開始操作に応じて発音する音高の選択を行わせる選択手段として決定するようにするとよい。
あるいはまた、上記決定手段が、上記複数の選択手段の中で、選択している音高が上記発音開始操作を検出した操作部の音高から最も近い選択手段を、上記発音開始操作に応じて発音する音高の選択を行わせる選択手段として決定するようにするとよい。
あるいはまた、上記決定手段が、上記複数の選択手段の中で、上記発音開始操作に応じて発音する音高を選択した場合にその発音開始操作を検出した操作部の音高を選択すると想定される選択手段を、上記発音開始操作に応じて発音する音高の選択を行わせる選択手段として決定するようにするとよい。
さらに、上記操作部の発音開始操作があった場合に、その発音開始操作から所定時間後に、上記各選択手段に発音する音高の選択を行うよう指示する再選択制御手段を設けるとよい。
この発明は、装置として実現する他、プログラム、方法、システム、その他任意の形態で実現することができる。
〔第1実施形態:図1乃至図8〕
図1は、本発明の第1実施形態である電子楽器のハードウェア構成を示すブロック図である。
図1に示すように、電子楽器10は、CPU11、ROM12、RAM13、記憶装置14、通信インタフェース(I/F)15、検出回路16、表示回路17、音源回路18を備え、これらをシステムバス19により接続している。また、電子楽器10は、CPU11に接続するタイマ21、検出回路16に接続する演奏操作子22及び設定操作子23、表示回路17に接続するディスプレイ24、音源回路18に接続するDAC(デジタルアナログ変換回路)25及びサウンドシステム26も備える。
なお、ROM12には、上記のプログラムの他、音色に対応する波形データや自動演奏データ、自動伴奏データ(伴奏スタイルデータ)などの各種データファイル、各種パラメータ及び各種テーブル等も記憶する。
記憶装置14は、ハードディスク、半導体メモリ等の記録媒体とその駆動装置の組み合わせの少なくとも1つで構成される。
通信I/F15は、サーバ、音響機器、外部コントローラ等の外部装置と通信を行うためのインタフェースであり、有線、無線を問わず、任意の規格の通信手段を用いて構成することができる。例えば、USB(Universal Serial Bus)やMIDI(Musical Instrument Digital Interface)_I/Fを用いることが考えられる。
演奏操作子22は、検出回路16に接続され、ユーザの演奏動作に従い、演奏情報(演奏データ)を供給する。演奏操作子22は、ユーザの演奏操作を受け付けるための、それぞれ音高と対応する複数の操作部を備える。そして、該ユーザの操作部に対する操作開始タイミング及び終了タイミングを、それぞれユーザが操作した操作部に対応する音高の情報を含むキーオンデータ及びキーオフデータとして、検出回路16を通じてCPU11に供給する。また、演奏操作子22は、ユーザの演奏操作に応じてベロシティ値等の各種パラメータを供給することも可能である。なお、本実施例では、鍵盤型の演奏操作子22を備え、上記各操作部が鍵であるとして説明するが、これに限るものではない。
いずれにせよ、ユーザは、設定操作子23を用いて、各種入力及び設定、選択をすることができる。
ディスプレイ24は、電子楽器10の設定のための各種情報や、電子楽器10の動作状態等を表示するための表示手段であり、例えば液晶表示装置や発光ダイオード(LED)等により構成することができる。
以上の電子楽器10において、特徴的な点は、アサイナの制御に関する点である。そこで、次にアサイナの制御についてより具体的に説明する。
図2に示すように、電子楽器10は、発音指示受付部31、操作状態検出部32、アサイナ決定部33、割当制御部34、楽音生成部35、選択状態保持部36、出力部37を備える。これらのうち、発音指示受付部31の機能は演奏操作子22及び検出回路16により実現され、楽音生成部35の機能は音源回路18により実現され、出力部37の機能はサウンドシステム26により実現される。他の各部の機能はCPU11により実現される。
そして、操作状態検出部32は、この操作状態の情報を割当制御部34の各アサイナASが音高選択の際に参照できるように保持する。
なお、人が演奏を行う場合には、同時に複数の鍵の操作を行ったつもりでも、寸分違わず同じタイミングでその操作を行うことは困難である。そこで、複数の操作のタイミング差が同時操作とみなせる程度の所定閾値(例えば15〜30ミリ秒程度)以内であれば、それらの操作は同時に行われたものとみなして取り扱うことが望ましい。ここではこの取り扱いをするとして説明する。ある鍵のキーオン操作と別の鍵のキーオフ操作が同時に行われることもあり得る。
また、必要に応じて、検出した操作の内容及びその操作を反映させた操作状態履歴を保存し、アサイナ決定部33がアサイナの選択に利用できるようにしてもよい。
そして、アサイナ決定部33は、割当制御部34に対し、上記決定したアサイナASに発音する音高の選択を行わせることを指示する機能も備える。
図3は、4つのアサイナを用いる場合の例であり、各アサイナに設定する規則は、「対象押鍵」及び「優先方式」の項目からなる。「説明」の項目は、これらの項目の情報により定められる規則の内容の理解を助けるための説明であり、選択処理には用いない。
第2アサイナについては、押鍵中の音高のうち高音側から2番目の音高を選択する規則が設定されていることがわかる。ただし、押鍵数が1ならばその音高を選択する。
第3アサイナについては、同様に、押鍵数が2以下であれば、その押鍵の中で最も高い音高を選択することになる。押鍵数が3以上であれば、低音側2音の中で最も高い音高、すなわち下から2番目の音高を選択することになる。
第4アサイナについては、押鍵中の音高全てのうち最も低い音高を選択する規則が設定されていることがわかる。
図にないアサイナについては機能が無効化されていると考えればよい。
また、各アサイナASは、操作状態検出部32からの指示に応じて、キーオフされた音高の選択を解除する。
また、複数のアサイナが同じ音高を選択しても問題ない。この場合、選択された音高について、複数の音色で発音することになる。
そして、楽音生成部35は、各発音chTCが生成した音響信号をミキシングして出力部37に供給し、楽音の出力を行わせる。
選択状態保持部36は、この図に示すように、各アサイナASと対応付けて、そのアサイナASが現在選択している音高のノートナンバを適当なメモリに記憶しておけばよい。1又は複数のアサイナASがどの音高も選択していないこともあり得る。また、必要に応じて、過去のいくつかの時点における、各アサイナASの選択音高の履歴を合わせて保持してもよい。
図5乃至図7は、その処理のフローチャートである。
CPU11は、検出回路16からキーオンデータ及び/又はキーオフデータを受信した場合に、所要のプログラムを実行することにより図5のフローチャートに示す処理を開始する。なお、所定閾値以内のタイミング差で行われた操作を同時操作とみなすことは上述の通りである。
次に、CPU11は、検出した操作にキーオン操作が含まれているか否か判断する(S12)。複数の操作を同時に検出した場合、その中に1つでもキーオン操作があればYesとなる。そして、Yesの場合、CPU11は、今回検出したキーオン操作に対応して音高の選択を行わせるアサイナを選択すべく、図6に示すリトリガーアサイナ決定処理を実行する(S13)。
この処理において、CPU11はまず、処理対象のアサイナがいずれかの音高を選択しているか否か判断する(S23)。
キーオフに応じて消音し、音高選択を解除した後次の選択をしていないアサイナや、音高選択規則に「XXXを除く」の条件が入っていたため以前のキーオンの際にどの音高も選択しなかったアサイナ等について、ステップS23でNoとなることが考えられる。
そして、ステップS26でまだ処理対象にしていないアサイナがある間はステップS22に戻って処理を繰り返し、全てのアサイナを処理対象としていれば元の処理に戻る。
なお、今回キーオンされた音高が複数ある場合、そのいずれかについて「処理対象のアサイナが選択している音高と今回キーオンされた音高との間の音高を選択しているアサイナが他にない」場合にはS24はNoとなる。
この場合、アサイナBについては、今回キーオンされた音高n3とn4のいずれについても、選択中の音高n2との間の音高を選択しているアサイナが他にないため、ステップS24の判断はNoとなり、今回キーオンに応じた音高選択を行うこととなる。一方、アサイナAについては、n3及びn4と、選択中の音高n1との間の音高n2を選択しているアサイナBがあるため、ステップS24の判断はYesとなり、今回キーオンに応じた音高選択は行わず、それまでの発音を維持することとなる。
この場合、アサイナAについては、今回キーオンされた音高n1と選択中の音高n2との間の音高を選択しているアサイナが他にないため、今回キーオンに応じた音高選択を行う。アサイナBが今回キーオンされた音高n4と選択中の音高n2との間の音高n3を選択しているが、上記n1とn2の関係のみでステップS24の判断はNoとなり、今回キーオンに応じた音高選択を行う。アサイナBについては、今回キーオンされた音高n4と選択中の音高n3との間の音高を選択しているアサイナが他にないため、ステップS24の判断はNoとなり、やはり今回キーオンに応じた音高選択を行う。
この場合、アサイナBについては、今回キーオンされた音高n4と選択中の音高n3との間の音高を選択しているアサイナが他にないため、今回キーオンに応じた音高選択を行う。
一方アサイナAについては、音高の位置関係のみを考えると、今回キーオンされた音高n2と選択中の音高n1との間の音高を選択しているアサイナが他にないため、今回キーオンに応じた音高選択を行うこととなる。
逆に、今回検出したキーオン操作は、そのキーオンの音高から遠い音高を選択しているアサイナのパートに係る操作である可能性は低いと判断し、そのようなパートについては今回キーオン操作に応じて発音音高が変化してしまうことがないよう、今回キーオン操作に応じた音高の選択をさせないようにすることである。
そして、これらのアサイナは、今回検出したキーオン操作の音高と、各アサイナが選択している音高とに基づき特定することができる。
この手法では、「あるアサイナが選択中の音高と今回キーオンされた音高との間に操作中の鍵はあるが、いずれのアサイナもその音高を選択していない」場合にもステップS24がYesとなる。たとえば、「ドミソが押されているがドとソしか発音していない」という状況において、新たにレが押鍵された場合、図6に示した基準では、ドを選択しているアサイナとソを選択しているアサイナの両方に割り当てフラグが立つが、上記の方法だと、ドを選択しているアサイナにのみ割り当てフラグが立ち、ソを選択しているアサイナには割り当てフラグが立たない(間にミの押鍵があるため)という違いがある。しかし、図6に示した基準を用いた場合と概ね同様な効果が得られる。
図6の処理の終了後、あるいはステップS12でNoの場合、CPU11は、検出した操作にキーオフ操作が含まれているか否か判断する(S14)。複数の操作を同時に検出した場合、その中に1つでもキーオフ操作があればYesとなる。
そして、Yesの場合、CPU11は、キーオフ操作と対応する処理として、検出したキーオフ操作に係る音高の発音停止を楽音生成部35に指示すると共に、その音高を選択しているアサイナの音高選択を解除する(S15)。
キーオフ操作した音高で発音していたパートが消えると発音数が減ってしまうため、消音したパートを別の音高で再発音させ、発音数を減らさないようにするための処理である。ただし、キーオフリトリガー処理によって起こる問題もあり、それについては第4実施形態の図17および図18で後述する。またこのため、キーオフリトリガーを行わないようにすることも考えられる。この場合、ステップS16の処理を省略すればよい。破線はこのことを示す。
ステップS16の後、あるいはステップS14でNoの場合、CPU11は、図7に示す発音割り当て処理を実行する(S17)。
ここでセットされていれば、CPU11は、第nアサイナAS−nについて設定されている規則に従い、操作中の鍵の音高の中から発音する音高を選択する(S33)。そして、ステップS33で選択した音高で、第nアサイナAS−nと対応する第nパートの発音を開始するよう、楽音生成部35に指示する(S34)。この場合、発音に用いる音色は、第nパートについて設定されている音色である。また、このとき、選択した音高が前回と変わらず、かつその音高が今回キーオン操作された音高でない場合、楽音生成部35に対する発音の要求を新たに行わず、それまでの発音を継続するとよいことは、上述の通りである。
ステップS32でNoの場合、第nアサイナについては音高の選択は行わないので、そのままステップS35に進む。
図8乃至図10はそれぞれ、ユーザが行う演奏操作と、それに応じて各アサイナが選択する発音音高との関係を示す図である。これらの図において、横軸が音高、縦軸が時間であり、各音高の位置に示した帯が、各音高の押鍵期間を示す。また、各アサイナと対応する矢印により、そのアサイナがいつどの音高を選択しているかを示している。
この場合、初めのt(1)のタイミングでは、図6のステップS21でNoとなり、n1〜n4の4つの音高の鍵が押鍵中の状態で全てのアサイナASが発音する音高を選択する。第1〜第4アサイナAS1〜4がn4,n3,n2,n1をそれぞれ選択する。
なお、t(4)での音高n4の押鍵については、第1実施形態では伴奏パートの音高選択が影響を受けてしまうが、この点については第2実施形態を採用するか又は第1実施形態を第2実施形態と組み合わせることにより更に改善可能である。
図9に示すのは、キーオン操作があった場合には常に全てのアサイナが音高選択を行い、かつキーオフリトリガーを行う場合の比較例である。
この場合、t(1)での音高選択は図8の場合と同じであるが、t(2)において第2アサイナAS−2も音高選択を行うため、n1〜n5の中で高音側2音のうち低い方のn4を選択する。このため、音高n3で発音中の伴奏音が途切れてしまう。
図8の例ではこのような不具合が起こらないことは、上述の通りである。
また、t(4)においては、t(2)の場合と同様に、n1〜n5の5つの音高の鍵が押鍵中の状態で全アサイナASが音高選択を行うため、第1アサイナAS−1はn5を、第2アサイナAS−2はn4を選択する。そして、t(5)でのキーオフリトリガーにより、キーオフされたn5を選択していた第1アサイナAS−1が、図8のt(5)と同様、最高音のn4を選択する。
t(4)以降の発音は、結果的には図8と同じである。
次に、本発明の第2実施形態である電子楽器について説明する。
この第2実施形態は、リトリガーアサイナ決定処理が第1実施形態と異なるのみであるので、この点についてのみ説明する。また、第1の実施形態と同じ又は対応する構成には第1の実施形態と同じ符号を用いる。この点は、以下の実施形態についても同様である。
図10に、第2実施形態におけるリトリガーアサイナ決定処理のフローチャートを示す。
次に、CPU11は、各アサイナASが選択している音高と、今回キーオンを検出した音高との音高差を算出する(S33)。キーオンが複数あった場合には、それぞれについて音高差を算出してその最小値を取ればよい。また、音高を選択していないアサイナはこの処理において考慮しない。そして、CPU11は、ステップS33で算出した音高差が所定値以下のアサイナについて発音割り当てフラグを立てて(S34)、元の処理に戻る。
図11は、ユーザが行う演奏操作と、それに応じて各アサイナが選択する発音音高との関係を示す図であり、書式は図8と同じである。また、図11の例は、図8と同じ演奏操作に応じて、図5、図10及び図7の処理により各アサイナに発音音高を選択させる場合の音高選択の例である。ただし、音高n4と音高n5との間隔はステップS34で用いる所定値より小さく、音高n4と音高n3との間隔はその所定値よりも大きいとする。
次のt(2)のタイミングでは、新たにキーオンされたn5と音高差が所定値以内の音高を選択しているアサイナは第1アサイナAS−1のみであるので、ステップS34において第1アサイナAS−1についてのみ発音割り当てフラグが立ち、第1アサイナAS−1のみが音高選択を行う。この選択は、n1〜n5の5つの音高の鍵が押鍵中の状態で行い、最高音のn5を選択する。結果的に、ここでの音高選択は図8の例と同じとなる。
t(3)のタイミングでの音高選択についても、図8の例と同じである。
この例では、図8と異なり、第2アサイナAS−2はt(4)において音高選択を行わない。第2アサイナAS−3が選択している音高n3は、新たにキーオンされた音高n4と、所定値以上離れているためである。このため、t(4)での音高n4の押鍵についても、メロディパートの押鍵により伴奏パートの音高選択が影響を受けてしまうことを防止できる。
t(6)のタイミングでの発音停止も、図8と同様である。
次に、本発明の第3実施形態である電子楽器について説明する。
第3実施形態も、リトリガーアサイナ決定処理が第1実施形態と異なるのみであるので、この点についてのみ説明する。
図12に、第3実施形態におけるリトリガーアサイナ決定処理のフローチャートを示す。
ステップS42の後、CPU11は、今回検出した各キーオンを順次処理対象としてステップS44及びS45の処理を行う(S43,S46)。すなわち、処理対象のキーオンの音高と各アサイナが選択している音高との音高差を算出し(S44)、その音高差が最も小さいアサイナについて発音割り当てフラグを立てる(S45)。このとき、音高を選択していないアサイナはこの処理において考慮しない。また、複数のキーオン操作が同時に行われた場合には1つのアサイナについて複数回発音割り当てフラグを設定することもあり得るが、2回目以降の設定に特に意味はない。
そして、ステップS46でNoになるまでステップS43に戻って処理を繰り返し、ステップS46でNoになると元の処理に戻る。
第1実施例では新規キーオンと選択音高が隣接するアサイナに、第3実施例では新規キーオンの最近傍の音高を選択しているアサイナに発音割り当てフラグを立てるため、第3実施例の方が影響を受けるアサイナが少なくなる。どちらが好ましいかは、押鍵状態や各アサイナのアサイン規則に応じて異なるが、図3のアサイン規則と図8及び図11の押鍵操作においては、第1実施例よりも第3実施例の方が意図に合った演奏となる。
次に、本発明の第4実施形態である電子楽器について説明する。
第4実施形態は、キーオフリトリガーに代えて、キーオンから所定時間経過後にアサイナによる発音音高の選択をやり直す機会を設けた点が第3実施形態と異なるのみであるので、この点についてのみ説明する。
図13に示すように、第4実施形態の電子楽器10は、第1実施形態の電子楽器10が備える構成に加え、再判定指示部38及び再判定タイマ39を備える。
また、操作状態検出部32は、キーオンデータを受信した場合に、そのデータを再判定指示部38にも供給する。
また、図18の例は、n4とn5の押鍵を、押鍵間に少し間隔が空く、スタッカート奏法で行った場合の、図5の処理(ただしリトリガーアサイナ決定処理は図12のものを用いる)に従った音高選択の例である。
また、t(3)のタイミングでは、第1アサイナAS−1及び第2アサイナAS−2が、キーオン操作されたn5に最も近いn3の音高を選択しているため、これらのアサイナが音高選択を行う。そして、第1アサイナAS−1は最高音のn5を選択し、第2アサイナAS−2は、高音側2音のうち低い方のn3を選択する。
以上のように、スタッカート奏法の演奏操作に対してキーオフリトリガーを適用すると、メロディパートの押鍵がスタッカートにより途切れた期間に、メロディパートの音高を選択させたいアサイナが伴奏パートの音高を選択してしまうことが生じる。
この所定時間は、短すぎると押鍵状態が変化する前に音高選択をやり直すこととなり、長すぎるとキーオン時の選択のまま発音する時間が長くなりその後で発音音高が変化すると却って不自然な発音になってしまう。これらを考慮すると、所定時間は、例えば50ミリ秒程度とすることが考えられる。
なお、音高選択のやり直しは、全てのアサイナについて行うことが望ましい。
まず図14に、図5と対応する、キーオンデータ及び/又はキーオフデータを受信した場合の処理のフローチャートを示す。
この図14の処理は、ステップS61及びS62が図5のステップS11及び12と対応し、ステップS63のリトリガーアサイナ決定処理は、図12に示したものである。また、ステップS65乃至S67は、図5のステップS14,S15及びS17と対応する。そして、キーオフリトリガーに係る図5のステップS16を行わず、ステップS64を追加した点が図5と異なる。
追加したステップS64の処理は、キーオン操作から所定時間を計測するための再判定タイマ39に計時をスタートさせる処理である。
CPU11は、ステップS64での再判定タイマ39のスタート後、所定時間Δt経過したことを検出すると、図15のフローチャートに示す処理を開始する。そしてまず、全てのアサイナについて発音割り当てフラグを立ててから(S71)、図7に示した発音割り当て処理を実行する(S72)。これらの処理により、全アサイナASについて、Δt経過時点での押鍵状態に応じて発音音高を選択させることができる。
そして、ステップS72の後、CPU11は、再判定タイマ39をクリアして処理を終了する。
図16及び図17はそれぞれ、ユーザが行う演奏操作と、それに応じて各アサイナが選択する発音音高との関係を示す図であり、書式は図8と同じである。
図16の例は、図8と同じ演奏操作に応じて、図14及び図15の処理により各アサイナに発音音高を選択させる場合の音高選択の例である。
そして、t(4)のキーオンからΔt経過したt(4)+Δtのタイミングで、全アサイナASが音高選択を行う。ここでは、n1〜n4の4つの音高の鍵が押鍵中の状態で選択を行うため、第1〜第4アサイナAS−1〜4はそれぞれ、n4,n3,n2,n1を選択する。ここで、第2〜第4アサイナAS−2〜4については選択結果がt(5)の時点と変わらないため、対応する発音はそのまま継続される。しかし、第1アサイナAS−1については、新たにn4を選択し、この音高での発音を開始する。
なお、図16からわかるように、Δtは、レガート奏法において前の押鍵と後の押鍵が重なる、t(2)からt(3)の期間よりも少し長い程度に設定することが望ましい。
この場合も、t(1)のタイミングでの音高選択は、図8の場合と同じである。また、t(3)及びt(5)のタイミングでは、第1アサイナAS−1がどの音高も選択していないため、少なくとも第1アサイナAS−1が音高選択を行い、それぞれキーオンされたn5及びn4を選択する。
従って、キーオンからΔt経過後の再選択を用いれば、図18を用いて説明したような問題を生じることなく、レガート奏法とスタッカート奏法の双方について、各アサイナの音高選択に、演奏者の演奏操作の意図を適切に反映することができる。
次に、本発明の第5実施形態である電子楽器について説明する。
第5実施形態は、キーオン操作に応じたアサイナによる音高の選択を行わないようにした点と、キーオフリトリガーを併用可能とした点が第4実施形態と異なるのみであるので、この点についてのみ説明する。
なお、この第5実施形態では、キーオン操作時には各アサイナが音高の選択を行わないため、図9の例で発生したような、t(2)やt(4)でのキーオンにより、音高の移動を意図していないアサイナが音高移動してしまうといった不具合が起こらない。また、キーオンから一定時間が経過してから各アサイナが音高選択を行うため、押鍵状態が安定してから音高選択を行うことができ、演奏者の意図した発音が可能となる。
この図19の処理において、ステップS81は図14のステップS61と同じ処理である。また、ステップS82及びS83は、図14のステップS65及びS66と同じ処理である。ステップS83の後ろに、ステップS84乃至S86を追加した点は図14と異なる。
すなわち、CPU11は、キーオフ操作を検出した際に(S82のYes)、再判定タイマ39がカウント中であれば(S84のYes)、検出したキーオフ操作に係る音高を選択しているアサイナについて発音割り当てフラグを立てる(S85)と共に、再判定タイマ39をクリアして停止させる(S86)。
なお、これらのステップS84乃至S86の処理は行わなくてもよい。
ステップS87でキーオンがない場合、ステップS88をスキップしてステップS89に進む。
図20は、ユーザが行う演奏操作と、それに応じて各アサイナが選択する発音音高との関係を示す図であり、書式は図8と同じである。
図20の例は、図8と同じ演奏操作に応じて、図19(ステップS84乃至S86も含む)及び図15の処理により各アサイナに発音音高を選択させる場合の音高選択の例である。
また、t(2)のn5のキーオン時にも、各アサイナASは音高選択を行わない。そして、t(2)+Δtよりもt(3)のn4のキーオフが早く来るため、ここで、キーオフされたn4の音高を選択している第1アサイナAS−1についてキーオフリトリガーを行う。その結果、第1アサイナAS−1は、その時点での押鍵の最高音高であるn5を選択し、発音を開始する。この場合、t(2)+Δtでの音高選択は行われない。
この間、第2〜第4アサイナAS−2〜4が選択する音高はそれぞれn3,n2,n1で変化せず、メロディパートの押鍵変化の影響は及ばない。
なお、図19の処理では、キーオンからΔt経過するまでの間しかキーオフリトリガーを行わないため、図18の例のように、押鍵数が減ったタイミングでキーオフリトリガーを行ってしまい、望まない音高を選択してしまうことも起こらない。
次に、本発明の第6実施形態である電子楽器について説明する。
第6実施形態は、キーオン時にも一部のアサイナについては音高選択を行うようにした点と、キーオンから所定時間経過後に行うアサイナによる音高選択を、一部のアサイナについてはキャンセルするようにした点が第5実施形態と異なる。そこで、これらの点についてのみ説明する。
この図21の処理において、ステップS101及びS102は、図5のステップS11及びS12と同じ処理である。そして、ステップS102でYesの場合、CPU11は、再判定タイマ39に計時をスタートさせると共に、全アサイナについて再判定実行フラグを立てる(S103)。再判定実行フラグは、このフラグが立っているアサイナについて、キーオンから所定時間経過後の音高選択を行うことを意味するフラグである。
なお、ステップS104及びS105の処理は、発音割り当てフラグを立てるアサイナを選択する処理であり、リトリガーアサイナ決定処理の別実施形態であると考えることができる。
そして、ステップS106でYesの場合、CPU11は、今回検出したキーオフ操作に係る音高の発音停止を楽音生成部35に指示すると共に、その音高を選択しているアサイナの音高選択を解除する(S107)。
ステップS110の発音割り当て処理においては、ステップS105で発音割り当てフラグが立ったアサイナについてのみ発音音高の選択が行われる。つまり、今回検出したキーオン操作の音高を選択して発音すべきアサイナのみが音高選択を行い、他のアサイナは音高選択を行わない。
CPU11は、ステップS103での再判定タイマ39の計時開始後、所定時間Δt経過したことを検出すると、図22のフローチャートに示す処理を開始する。そしてまず、再判定実行フラグの立っている全てのアサイナについて発音割り当てフラグを立ててから(S121)、再判定実行フラグをクリアして(S122)、図7に示した発音割り当て処理を実行する(S123)。これらの処理により、再判定実行フラグの立っているアサイナASについて、Δt経過時点での押鍵状態に応じて発音音高を選択させることができる。
そして、ステップS123の後、CPU11は、再判定タイマ39をクリアして(S124)、処理を終了する。
図23及び図24は、ユーザが行う演奏操作と、それに応じて各アサイナが選択する発音音高との関係を示す図であり、書式は図8と同じである。
また、どちらの例も、図21(ステップS108及びS109も含む)及び図22の処理により各アサイナに発音音高を選択させる場合の音高選択の例であるが、押鍵操作が異なる。
また、キーオンからΔt経過したt(1)+Δtのタイミングでは、全アサイナについて再判定実行フラグが立っているため、各アサイナASはここで再度音高選択を行うが、選択結果は、t(1)の時点と変わらない。
そして、t(2)+Δtのタイミングでは、第2アサイナAS−2以外の全アサイナについて音高選択を行う。このときの選択結果は、t(2)の時点と変わらない。なお、仮に第2アサイナAS−2が音高選択を行ったとしても、選択結果は、t(2)の時点と変わらない。
このように、図21及び図22の処理によっても、メロディパートでレガート演奏がなされた場合に、演奏者の意図に合った発音が可能である。
図24の例では、t(2)までは図23と同じ動作であるが、t(2)の直後にキーオフがないため、t(2)+Δtのタイミングで全アサイナについて再判定実行フラグが立ったままである。従って、第2アサイナAS−2も音高選択を行い、押鍵中の音高の高音側2音のうち低い方のn4を選択する。
このため、t(2)とt(2)+Δtで若干のずれは生じるが、押鍵数を増やす意図の演奏操作に応じて第1パートと第2パートの発音音高を変化させ、演奏者の意図に合った発音が可能である。
また、キーオンからΔt後に再度発音音高の選択を見直すため、キーオン直後にさらに押鍵状態に変化があった場合でも、速やかに、演奏者の意図に沿うように発音に反映させることができる。
以上で実施形態の説明を終了するが、装置の構成、演奏操作子を始めとする操作子の構成、アサイナの数やアサイナに設定する選択規則、処理に用いるデータの構成、具体的な処理の手順等が上述の実施形態で説明したものに限られないことはもちろんである。
例えば、キーオン操作に応じて、図6等のリトリガーアサイナ決定処理により音高選択を行うか否かを決定するか、必ず音高選択を行うこととするかを、アサイナ毎に設定できるようにしてもよい。
最高音(又は最低音)を選択する設定のアサイナは、基本的には低い(又は高い)音高での新規キーオンにはもともと影響を受けない。そして、新規キーオンによって意図しない影響を受けてしまうのは、中間的な音高を選択するアサイナであると考えられる。そこで、このようなアサイナにのみ「音高依存」を設定するようにすれば、各アサイナの音高選択に演奏者の演奏操作の意図を適切に反映するという効果を維持しつつ、音高選択の処理負荷を軽減することができる。
また、汎用コンピュータのキーボードや、タッチパネルに表示したGUI(グラフィカルユーザインタフェース)を、演奏操作子として用いることも考えられる。この場合において、汎用コンピュータに図2に示した各部の機能を実現させることにより、電子楽器として機能させることができる。また、いずれの場合でも、図2に示した各部の機能を、複数の装置に分散して設け、それらを協働させて電子楽器10の機能を実現させることもできる。
そして、このようなプログラムをコンピュータに実行させることにより、上述したような効果を得ることができる。
また、以上説明してきた実施形態及び変形例の構成は、相互に矛盾しない限り任意に組み合わせて実施可能であることは勿論である。
従って、この発明を適用することにより、電子楽器の利便性を向上させることができる。
Claims (9)
- それぞれ音高と対応する複数の操作部の操作状態に応じて、発音する音高を選択する複数の選択手段と、
前記操作部の発音開始操作があった場合に、前記各選択手段が選択している音高と、前記発音開始操作を検出した操作部の音高とに基づき、前記複数の選択手段の中から該発音開始操作に応じて発音する音高の選択を行わせる選択手段を決定する決定手段と、
前記決定手段が決定した選択手段に、発音する音高の選択を行うよう指示する制御手段とを備えることを特徴とする電子楽器。 - 請求項1に記載の電子楽器であって、
前記決定手段は、ある選択手段が選択している音高と、前記発音開始操作を検出した操作部の音高との間に、他の選択手段が選択している音高がない場合に、前記ある選択手段を、前記発音開始操作に応じて発音する音高の選択を行わせる選択手段として決定することを特徴とする電子楽器。 - 請求項1に記載の電子楽器であって、
前記決定手段は、前記発音開始操作を検出した操作部の音高から所定音高差以内の音高を選択している選択手段を、前記発音開始操作に応じて発音する音高の選択を行わせる選択手段として決定することを特徴とする電子楽器。 - 請求項1に記載の電子楽器であって、
前記決定手段は、前記複数の選択手段の中で、選択している音高が前記発音開始操作を検出した操作部の音高から最も近い選択手段を、前記発音開始操作に応じて発音する音高の選択を行わせる選択手段として決定することを特徴とする電子楽器。 - 請求項1に記載の電子楽器であって、
前記決定手段は、前記複数の選択手段の中で、前記発音開始操作に応じて発音する音高を選択した場合に該発音開始操作を検出した操作部の音高を選択すると想定される選択手段を、前記発音開始操作に応じて発音する音高の選択を行わせる選択手段として決定することを特徴とする電子楽器。 - 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電子楽器であって、
前記決定手段は、いずれの音高も選択していない選択手段を、前記発音開始操作に応じて発音する音高の選択を行わせる選択手段として決定することを特徴とする電子楽器。 - 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電子楽器であって、
前記操作部の発音開始操作があった場合に、該発音開始操作から所定時間後に、前記各選択手段に発音する音高の選択を行うよう指示する再選択制御手段を備えたことを特徴とする電子楽器。 - コンピュータを、
それぞれ音高と対応する複数の操作部の操作状態に応じて、発音する音高を選択する複数の選択手段と、
前記操作部の発音開始操作があった場合に、前記各選択手段が選択している音高と、前記発音開始操作を検出した操作部の音高とに基づき、前記複数の選択手段の中から該発音開始操作に応じて発音する音高の選択を行わせる選択手段を決定する決定手段と、
前記決定手段が決定した選択手段に、発音する音高の選択を行うよう指示する制御手段として機能させるためのプログラム。 - それぞれ音高と対応する複数の操作部の操作状態に応じて複数の選択手段が発音する音高を選択する選択手順と、
前記操作部の発音開始操作があった場合に、前記各選択手段が選択している音高と、前記発音開始操作を検出した操作部の音高とに基づき、前記複数の選択手段の中から該発音開始操作に応じて発音する音高の選択を行わせる選択手段を決定する決定手順とを備え、
前記選択手順は、前記決定手順で決定された選択手段が発音する音高の選択を行う手順であることを特徴とする発音音高選択方法。
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