JP2015123740A - インクセット及びインクジェット記録方法 - Google Patents

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Kenji Moribe
鎌志 森部
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勇輝 西野
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Abstract

【課題】インクと接触する部材に合成ゴムで形成された部材を用いたインクジェット記録装置を使用する場合であっても、合成ゴムの劣化を抑制することができるとともに、発色性に優れた画像を長期間にわたって記録することが可能なインクセットを提供する。【解決手段】インクと接触する部材を備えるとともに、部材を構成する材料に合成ゴムが含まれる記録装置を使用するインクジェット記録方法に用いられる、水性インクの組み合わせで構成されるインクセットである。銅フタロシアニン骨格を有する顔料、及び遊離銅イオンを含有する第1インクと、顔料骨格中に金属原子を有さず、ホスホン酸基を含む官能基が顔料の粒子表面に結合している自己分散顔料を含有する第2インクとを含む。【選択図】なし

Description

本発明は、インクセット、及びそれを用いたインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法によれば、様々な記録媒体に画像を記録することが可能である。そして、より良好な画像の記録を企図して、例えば、光沢紙などに写真画質の画像を記録するのに適したインクや、普通紙などに文書を記録するのに適したインクなど、その目的に応じた種々のインクについての提案がなされている。一般的なインクジェット記録装置は、インクを収容するインクカートリッジと、インクを吐出する吐出口を備えた記録ヘッドとが、必要に応じてチューブなどのインク供給部材を介して接続した構成を有している。さらに、このようなインクジェット記録装置には、吐出口の目詰まりによる不吐出を防ぐために、記録ヘッドのクリーニング手段を備えた回復ユニットが設けられている。
クリーニング手段の一例としては、吸引ポンプによって、記録ヘッドの吐出口が形成された面(吐出口面)を覆う、ゴムなどの弾性部材で構成されたキャップを介してインクを吐出口から吸引する構成を有するものなどがある。回復ユニットは、記録ヘッドのインク流路及びインク供給部材の内部に存在する高粘度のインク、微細なごみ、及びインク中の気泡を、吐出口から排出するように構成されている。また、クリーニング手段の他の例としては、可撓性を有するワイパーによって吐出口面をワイピングし、吐出口面に付着した微細なごみやインクを除去し、吐出口面を清浄に保つ構成を有するものなどがある。クリーニング手段のさらに他の例としては、記録のためのインクの吐出の前や途中などのタイミングで、画像の記録には利用しない少量のインクを予備吐出し、安定した吐出特性を維持する構成を有するものなどがある。
上述のような吸引動作、ワイピング動作、又は予備吐出動作に伴って排出されたインクは、廃インクとして装置内で処理される。記録装置内には、通常、このような廃インクを収納するための廃インク回収部材が設けられている。また、縁なし記録の際に記録媒体の領域外へ吐出されたインクも、廃インクとして同様に処理される。
一方、インクが銅フタロシアニン骨格を有する顔料と遊離銅イオン(詳細については後述)を含有する場合、上記のチューブ、キャップ、ワイパー、又は廃インク回収部材などのインクと接触する、合成ゴムで形成される部材が劣化する場合がある。このような現象、いわゆる銅害は、遊離銅イオンがレドックス反応により合成ゴムの自動酸化反応を促進させる触媒的な作用を示して生ずるものである。このため、遊離銅イオンの量が微かであっても、合成ゴムが劣化する。
合成ゴムで形成される部材に金属不活性化剤を添加することで、合成ゴムの劣化を抑制することが可能である。ただし、劣化原因に対応した金属不活性化剤を使用する必要があるため、必ずしも実用的であるとは言えない。また、あらゆる劣化原因に対応しうるよう、多種の金属不活性化剤を添加すれば、劣化原因によらず対策が可能ではある。しかし、多くの対策を要しない用途にも高価な金属不活性化剤を使用することとなるため、インクの調製工程が複雑化し、コストが増加してしまう。一方、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤をインクに添加して遊離銅イオンを封鎖し、樹脂部材とのレドックス反応を抑制させることが提案されている(特許文献1)。
特開平06−093218号公報
銅害を抑制するためには、インク中の遊離銅イオンの量を極力減らすことが有効である。しかし、遊離銅イオンは、インクの構成材料の不純物として意図せず混入することがある。特に、銅フタロシアニン骨格を有する顔料を用いたインクの場合には、遊離銅イオンの混入を避けるのは困難な場合がある。
また、特許文献1において提案されているように、EDTAなどのキレート剤をインクに添加して遊離銅イオンを封鎖することも有効ではある。この方法によれば合成ゴムの変形や膨潤の抑制はある程度図られるものの、特に記録媒体に普通紙を用いるような場合において、記録される画像の発色性がやや低下する場合があることがわかった。記録媒体に含まれるカルシウムイオンなどのカチオンは、記録媒体に付与されたインクに溶解する。カチオンが溶解したインク中では顔料の分散安定性が急激に低下し、記録媒体の表面やその近傍に不安定化した顔料が多く残ることにより、画像の発色性が高められる。しかし、インクにEDTAなどのキレート剤が含まれていると、顔料の分散安定性の急激な低下が阻害されてしまい、画像の発色性が低下してしまうと考えられる。
したがって、本発明の目的は、インクと接触する部材に合成ゴムで形成された部材を用いたインクジェット記録装置を使用する場合であっても、合成ゴムの劣化を抑制することができるインクセットを提供することにある。さらに、発色性に優れた画像を長期間にわたって記録することが可能なインクセットを提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記インクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、インクと接触する部材を備えるとともに、前記部材を構成する材料に合成ゴムが含まれる記録装置を使用するインクジェット記録方法に用いられる、水性インクの組み合わせで構成されるインクセットであって、銅フタロシアニン骨格を有する顔料、及び遊離銅イオンを含有する第1インクと、顔料骨格中に金属原子を有さず、ホスホン酸基を含む官能基が顔料の粒子表面に結合している自己分散顔料を含有する第2インクと、を含むことを特徴とするインクセットが提供される。
本発明によれば、インクと接触する部材に合成ゴムで形成された部材を用いたインクジェット記録装置を使用する場合であっても、合成ゴムの劣化を抑制することができるインクセットを提供することができる。さらに、本発明によれば、発色性に優れた画像を長期間にわたって記録することが可能なインクセットを提供することができる。また、本発明によれば、このインクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
<インクセット>
以下、好適な実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。以下、インクジェット用の水性インクのことを単に「インク」とも記す。
まず、遊離銅イオンについて説明する。遊離銅イオンとは、通常、他の物質と配位構造を形成しておらず、インクを構成する水性媒体に溶解した状態で存在する銅イオンのことをいう。したがって、例えば、フタロシアニン骨格の中心原子として含まれる銅イオン(すなわち、配位構造を形成している銅イオン)は、本発明における遊離銅イオンには含まれない。なお、配位構造を形成している銅イオンは、本発明が解決しようとする課題の発生原因とはならない。
例えば、以下に示す要因により、インク中に遊離銅イオンが存在することとなる。まず、画像の発色性などを向上させるために、インクに遊離銅イオンを意図的に添加してインク中の電解質濃度を高めておき、記録媒体において水分などが蒸発した後に顔料が凝集するように制御することがある。一方、意図的ではないが、色材や水溶性有機溶剤などインクを構成する各種の材料に遊離銅イオンが不純物として混入することもある。また、インクカートリッジを構成する部材などから溶出した遊離銅イオンがインク中に混入することもある。さらに、インクの色材として銅フタロシアニン骨格を有する顔料(C.I.ピグメントブルー15:3やC.I.ピグメントブルー15:4など)を用いた場合には、不純物として遊離銅イオンが混入することがある。なお、通常の脱イオン水やイオン交換水に含まれる遊離銅イオンの量は検出限界以下である。
インク中の遊離銅イオンの含有量は、公知の方法により測定することができる。例えば、インクを減圧乾燥した後、塩酸を用いて遊離銅イオンを抽出する。そして、ICP発光分光分析などの公知の方法により定量した後、インク中の含有量に換算すればよい。
前述の通り、銅フタロシアニン骨格を有する顔料及び遊離銅イオンを含有するインクと、合成ゴムで形成される部材とが接触した場合に、合成ゴムが劣化するという課題があった。この課題については、前述の通り、EDTAなどのキレート剤をインクに添加して遊離銅イオンを封鎖することで解決することが可能であったが、特に普通紙に記録した画像の発色性がやや低下するといった別の課題が生じていた。そこで、本発明者らは、EDTAなどのキレート剤によらず、銅害を抑制する手法について詳細に検討を行った。その結果、銅フタロシアニン骨格を有する顔料の粒子表面にホスホン酸基を有する化合物を結合させて、いわゆるホスホン酸型自己分散顔料とすることにより、上記のような合成ゴムの劣化をある程度抑制できることを見出した。しかし、合成ゴムで形成される部材の耐用期間の長さに応じて、顔料に結合させるホスホン酸基の量を多くする必要があることも判明した。
ここで、銅フタロシアニン骨格を有する顔料をホスホン酸型自己分散顔料とすることにより、遊離銅イオンによる銅害がある程度抑制されるメカニズムについて考察する。2つのホスホン酸基は、1つのカチオンとキレート構造を作ることができる。このため、銅フタロシアニン骨格を有する顔料をホスホン酸型自己分散顔料とすることにより、遊離銅イオンをキレート構造によりトラップできるようになり、銅害がある程度抑制されたと推測される。
しかし、前述の通り、この手法では、合成ゴムで形成される部材の耐用期間の長さに応じて顔料に結合させるホスホン酸基の量を多くする必要がある。本発明者らは、顔料に結合させるホスホン酸基の量を多くする必要が生ずる理由について、以下のように推察している。銅フタロシアニン骨格を有する顔料にホスホン酸基を有する化合物を結合させた場合、ホスホン酸基が、近傍に存在するフタロシアニンにキレートされている銅と配位構造を形成すると考えられる。これにより、遊離銅イオンを補足できる確率が下がり、銅害が進行するものと推測される。このメカニズムを踏まえてさらに詳細に検討を行った結果、合成ゴムで形成される部材が長期の使用に耐えうるようになる手法を見出した。以下、詳細に説明する。
まず、本発明者らは、多くの合成ゴムで形成される部材には、単独のインクのみが接触するのではなく、複数のインクが混ざって接触することに着目した。合成ゴムで形成される部材に複数のインクが混ざって接触するのであれば、遊離銅イオンによる影響を低減するための手法を、遊離銅イオンを含有するインク自体に取り入れる必要はない。
次に、本発明者らは、遊離銅イオンによる影響を低減する手段として、顔料にホスホン酸基を有する化合物を結合させる手法を応用することとした。すなわち、顔料骨格中に金属原子を有しない顔料の粒子表面にホスホン酸基を含む官能基を結合させた自己分散顔料を含有するインクと、遊離銅イオンを含有するインクと組み合わせたインクセットについて検討した。このインクセットを使用したところ、遊離銅イオンを含有するインクを含むにも関わらず、長期間にわたって銅害を抑制可能であることが判明した。このように長期間にわたって銅害を抑制可能となった理由について、本発明者らは以下のように推察している。
銅フタロシアニン顔料を含有するインクと、顔料骨格中に金属原子を有しないホスホン酸型自己分散顔料を含有するインクとが混ざり合った場合、これらの顔料粒子は立体反発又は静電反発により分散された状態となっている。これらの顔料粒子同士は、配位構造を形成できる距離まで接近することができず、ホスホン酸型自己分散顔料のホスホン酸基は、銅フタロシアニン顔料中の銅と配位構造を形成することが困難となる。したがって、ホスホン酸型自己分散顔料のホスホン酸基は遊離銅イオンと優先的にキレート構造を形成するため、長期間にわたって銅害を抑制することが可能となったと考えられる。
以上の結果をうけ、本発明者らは、EDTAなどのキレート剤を用いることなく、合成ゴムで形成される部材の劣化を抑制することができる水性インクの組み合わせからなるインクセットの構成を見出すに至った。すなわち、本発明のインクセットは、インクと接触する部材を備えるとともに、部材を構成する材料に合成ゴムが含まれる記録装置を使用するインクジェット記録方法に用いられる、水性インクの組み合わせで構成されるインクセットである。そして、本発明のインクセットは、銅フタロシアニン骨格を有する顔料、及び遊離銅イオンを含有する第1インクと、顔料骨格中に金属原子を有さず、ホスホン酸基を含む官能基が顔料の粒子表面に結合している自己分散顔料を含有する第2インクと、を含む。なお、本発明において、その粒子表面にホスホン酸基を含む官能基を結合させる顔料として、その顔料骨格中に金属原子を有しない顔料を用いる理由は、導入されたホスホン酸基が、顔料骨格中の金属原子と配位構造を形成することを回避するためである。
(水性インク)
本発明のインクセットは、第1インクと第2インクを含む水性インクの組み合わせで構成されるインクセットである。以下、本発明のインクセットを構成する水性インクに含有される成分及びインクの物性などについて詳細に説明する。
[銅フタロシアニン骨格を有する顔料]
第1インクは、銅フタロシアニン骨格を有する顔料を含有する。銅フタロシアニン骨格を有する顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36などを挙げることができる。これらのなかでも、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4が好ましい。
銅フタロシアニン骨格を有する顔料は、樹脂分散顔料と自己分散顔料のいずれであってもよい。樹脂分散顔料は、水溶性樹脂の立体反発により顔料に水分散性を付与したものである。また、自己分散顔料は、顔料の粒子表面に親水性基を直接又は他の原子団を介して結合させ、その静電反発により顔料に水分散性を付与したものである。第1のインクに用いる銅フタロシアニン骨格を有する顔料は、アニオン性基を含む官能基が顔料の粒子表面に結合している自己分散顔料であることが好ましい。さらに、官能基に含まれるアニオン性基がスルホン酸基であることが、静電反発を高めることができるために好ましい。これは、ホスホン酸型自己分散顔料のホスホン酸基と、銅フタロシアニン顔料中の銅との配位構造の形成を抑制する効果が高いためであると考えられる。
スルホン酸基などのアニオン性基は、他の原子団(−R−)を介して顔料の粒子表面に結合していることが好ましい。他の原子団(−R−)の具体例としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基、フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基、アミド基、スルホニル基、アミノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、及びこれらの基を組み合わせた基などを挙げることができる。これらのなかでも、他の原子団(−R−)としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基、フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基が好ましい。
第1インク中において、スルホン酸基(−SO31)は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。M1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。M1で表されるアルカリ金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどを挙げることができる。また、M1で表される有機アンモニウムの具体例としては、メチルアミン、エチルアミンなどの炭素数1以上3以下のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの炭素数1以上4以下のアルカノールアミン類などを挙げることができる。
第1インク中の銅フタロシアニン骨格を有する顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
[顔料骨格中に金属原子を有しない自己分散顔料]
第2インクは、顔料骨格中に金属原子を有さず、ホスホン酸基を含む官能基が顔料の粒子表面に結合している自己分散顔料を含有する。すなわち、第2のインクに用いる顔料は、金属フタロシアニン顔料、金属錯体顔料、及びレーキ顔料などのような、その顔料骨格中に金属原子を有する顔料以外の顔料であることを要する。そのような顔料骨格中に金属原子を有しない顔料の具体例としては、カーボンブラックなどの無機顔料;アゾ、無金属フタロシアニン、キナクドリンなどの有機顔料などを挙げることができる。これらのなかでも、カーボンブラック、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントブルー16が好ましい。
顔料骨格中に金属原子を有しない顔料は、その粒子表面にホスホン酸基を含む官能基が結合した、その静電反発により水分散性が付与された、いわゆるホスホン酸型の自己分散顔料である。ホスホン酸基に由来する表面電荷量は、顔料の質量を基準として、0.02mmol/g以上1.00mmol/g以下であることが好ましく、0.03mmol/g以上0.60mmol/g以下であることがさらに好ましい。
顔料の粒子表面に結合した官能基に含まれるアニオン性基に由来する表面電荷量は、コロイド滴定法により測定することができる。コロイド滴定法は、顔料の単位質量当たりのアニオン性基量を求める方法であって、カウンターイオンを定量してアニオン性基量を求める従来の方法よりも簡単な方法である。また、精度も高く、アニオン性基量を直接的に測定することができるというメリットがある。後述する実施例においては、流動電位滴定ユニット(PCD−500)を搭載した電位差自動滴定装置(商品名「AT−510」、京都電子工業製)を用い、電位差を利用したコロイド滴定により、顔料分散液中の顔料の表面電荷量を測定した。この際、滴定試薬としてメチルグリコールキトサンを用いた。なお、インクから適切な方法により抽出した顔料を用いて表面電荷量を測定することも勿論可能である。
また、顔料の粒子表面に結合した官能基に含まれるアニオン性基に由来する表面電荷量のうち、ホスホン酸基を含む官能基に由来する表面電荷量は、ICP発光分光分析装置及びNMRによるリン原子の定量値から算出することができる。より具体的には、ICP発光分光分析装置を用いることで、リン原子量を求めることができる。また、自己分散顔料中のリン原子全体のうち、ホスホン酸基を含む官能基に由来するリン原子の比率は、NMRなどによりその構造を解析することで特定することができる。また、ホスホン酸基のインク中での解離数は、電位差滴定などにより測定することができる。なお、一般的に用いられるインクのpH域であるpH8〜10の範囲では、ホスホン酸基の解離数は「1」である。
インク中において、ホスホン酸基−PO(O〔M1〕)2は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。すなわち、ホスホン酸基は、−PO32(酸型)、−PO3-1 +(一塩基塩)、及び−PO3 2-(M1 +2(二塩基塩)のいずれかの形態になりうる。ここで、M1は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。M1で表されるアルカリ金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどを挙げることができる。また、M1で表される有機アンモニウムの具体例としては、メチルアミン、エチルアミンなどの炭素数1以上3以下のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの炭素数1以上4以下のアルカノールアミン類などを挙げることができる。本発明においては、ホスホン酸基を含む官能基に2つのホスホン酸基が含まれていることが好ましい。なお、官能基に含まれるホスホン酸基が3つ以上であると、インクの保存安定性が低下する場合がある。
また、ホスホン酸基は、他の原子団(−R−)を介して顔料の粒子表面に結合していることが好ましい。他の原子団(−R−)の具体例としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基、フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基、アミド基、スルホニル基、アミノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、及びこれらの基を組み合わせた基などを挙げることができる。さらに、他の原子団が、アルキレン基及びアリーレン基の少なくとも一方と、水素結合性を有する基(アミド基、スルホニル基、アミノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基)とを含むことが好ましい。特に、官能基に−C65−CONH−(ベンズアミド構造)が含まれていることが好ましい。
また、顔料の粒子表面に結合した官能基に、−CQ(PO3〔M122で表される構造が含まれていることが好ましい。ここで、式中のQは、水素原子、R、OR、SR、及びNR2のいずれかであり、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アシル基、アラルキル基、及びアリール基のいずれかである。Rが炭素原子を含む基である場合、その基に含まれる炭素原子の数は1乃至18であることが好ましい。Rの具体例としては、メチル基、エチル基などのアルキル基;アセチル基、ベンゾイル基などのアシル基;ベンジル基などのアラルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基を挙げることができる。また、M1はそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。本発明においては、前記Qが水素原子である、−CH(PO3〔M122の構造を含む官能基が顔料の粒子表面に結合した自己分散顔料を用いることが好ましい。
第2インク中の自己分散顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
[第1インク中の顔料と第2インク中の顔料との関係]
本発明においては、下記式(1)により求められる第2インクのRの値が、下記式(1)により求められる第1インクのRの値よりも大きいことが好ましい。なお、下記式(1)により算出されるRの値は、それぞれのインクに含有される顔料の粒子数に相当する。このため、第2インクのRの値が、第1インクのRの値よりも大きいと、第2インク中の自己分散顔料の粒子数の方が、第1インク中の銅フタロシアニン骨格を有する顔料の粒子数よりも多いことになる。なお、Yは体積基準の平均粒子径(D50)を指し、粒度分布の累積50%粒子径のことを意味する。
R=X/(Y3×Z) ・・・式(1)
X:インク100g当たりの顔料の量(g)
Y:顔料の体積平均粒子径(μm)
Z:顔料の密度(g/cm3
第1インクに含まれる遊離銅イオンの多くは、銅フタロシアニン骨格を有する顔料に由来している。このため、遊離銅イオンは、銅フタロシアニン骨格を有する顔料の近傍に存在する確率が比較的高い。このような遊離銅イオンを速やかに捕捉するためには、銅フタロシアニン骨格を有する顔料の近傍にホスホン酸基が存在することが好ましい。したがって、第2インク中の自己分散顔料の粒子数の方が、第1インク中の銅フタロシアニン骨格を有する顔料の粒子数よりも多ければ、遊離銅イオンをより速やかに捕捉することができる。
[遊離銅イオン]
第1インク中の遊離銅イオンの含有量(ppm)は、インク全質量を基準として、200ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書における「ppm」は質量基準である。第1インク中の遊離銅イオンの含有量が200ppmを超えると、長期保存により粘度や顔料の粒子径などのインクの物性が大きく変化する場合がある。なお、第1インク中の遊離銅イオンの含有量(ppm)の下限は、好ましくは0ppmである。インク中の遊離銅イオンの含有量は、上述の方法により測定することができる。
本発明のインクセットを構成する第1インク及び第2インクは、下記式(2)の関係を満たすことが好ましい。「P/Q」の値が2.0未満であっても、合成ゴムで形成される部材の変形や膨潤をある程度抑制することはできるが、長期間にわたって使用した場合には部材の変形や膨潤が発生することがある。これは、2つのホスホン酸基と1つの遊離銅イオンとで安定なキレート構造を形成するためであると考えられる。なお、「P/Q」の値の上限は、好ましくは10,000である。Pはインク中の自己分散顔料の含有量、及びホスホン酸基に由来する表面電荷量から求められる。
P/Q≧2.0 ・・・式(2)
P:第2インク中の自己分散顔料の官能基に含まれるホスホン酸基の含有量(μmol/g)
Q:第1インク中の遊離銅イオンの含有量(μmol/g)
(水性媒体)
本発明のインクセットを構成する第1インク及び第2インクは、通常、水、又は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有する。水としては脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。第1インク及び第2インクは、いずれも水性媒体として少なくとも水を含有する水性インクである。インク中の水の含有量(質量%)は、それぞれのインクの全質量を基準として、40.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤としては、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができ、1種又は2種以上をインクに含有させることができる。また、水溶性有機溶剤は、25℃における蒸気圧が水よりも低いものが好ましい。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、それぞれのインクの全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、20.0質量%以上25.0質量%以下であることがさらに好ましい。
(水溶性樹脂)
本発明のインクセットを構成する第1インク及び第2インクには、記録する画像の耐水性や耐擦過性などを向上させるために、水溶性樹脂を含有させることができる。水溶性樹脂の具体例としては、アクリル樹脂及びウレタン樹脂の少なくとも一方を挙げることができる。なお、本明細書における「水溶性樹脂」とは、その酸価と当量のアルカリで中和した場合に、粒径を測定しうる粒子を形成しない樹脂を意味する。また、本明細書における「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルのことをいう。
アクリル樹脂の酸価は、100mgKOH/g以上160mgKOH/g以下であることが好ましい。また、ウレタン樹脂の酸価は、40mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であることが好ましい。アクリル樹脂とウレタン樹脂で好適な酸価の範囲が異なるのは、それぞれの樹脂の主たる構造の親水性/疎水性が異なるので、記録媒体において効率的に凝集する酸価の範囲も異なるためである。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される水溶性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、2,000以上200,000以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性樹脂の含有量(質量%)は、それぞれのインクの全質量を基準として、0.5質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
アクリル樹脂としては、親水性ユニット及び疎水性ユニットを有する共重合体を用いることが好ましい。親水性ユニットは、例えば、親水性基を有する単量体を重合することで形成される。また、疎水性ユニットは、例えば、疎水性基を有する単量体を重合することで形成される。親水性基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシ基を有する酸性単量体、(メタ)アクリル酸−2−ホスホン酸エチルなどのホスホン酸基を有する酸性単量体、及びこれらの酸性単量体の無水物や塩などのアニオン性単量体;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシ基を有する単量体;メトキシ(モノ、ジ、トリ、ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートなどのエチレンオキサイド基を有する単量体などを挙げることができる。アニオン性単量体の塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。なお、アクリル樹脂は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)の水酸化物やアンモニア水などの中和剤により中和することで水溶性となるものが好ましい。
疎水性基を有する単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有する単量体;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(n−、iso−)プロピル(メタ)アクリレート、(n−、iso−、t−)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの脂肪族基を有する単量体などを挙げることができる。
本発明においては、アクリル樹脂として、カルボキシ基を有する単量体に由来する親水性ユニットと、芳香環を有する単量体や脂肪族基を有する単量体に由来する疎水性ユニットとを有する水溶性の共重合体を用いることが好ましい。
ウレタン樹脂としては、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られるものが好ましく、鎖延長剤をさらに反応させたものも好ましい。なお、鎖延長剤は、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られるウレタンプレポリマーのポリイソシアネートユニットのうち、ウレタン結合を形成しなかった残存イソシアネート基と反応する化合物である。
ポリイソシアネートの具体例としては、脂肪族、脂環族、芳香族、及び芳香脂肪族のポリイソシアネートなどを挙げることができる。ポリオールの具体例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどを挙げることができる。なお、これらのポリオールは、さらに酸基を有していてもよい。ポリオールとして、ポリエーテルポリオール及び酸基を有するポリオールの両方を用いることが好ましい。酸基を有するポリオールの使用割合を調整することによって、得られるウレタン樹脂の酸価を調整することができる。
(その他の成分)
第1インク及び第2インクには、上記の成分以外にも必要に応じて、常温で固体の水溶性有機化合物をそれぞれ含有させてもよい。常温で固体の水溶性有機化合物の具体例としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、尿素、及びエチレン尿素などの含窒素化合物を挙げることができる。また、上記の成分の他に、さらに必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤などの種々の添加剤をインクに含有させてもよい。
(インクの物性)
第1インク及び第2インクの25℃における粘度は、それぞれ1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることが好ましく、1.5mPa・s以上4.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。また、第1インク及び第2インクの25℃におけるpHは、5以上9以下であることが好ましい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクセットに含まれる各インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明のインクジェット記録方法においては、上記いずれの方式も好適に採用することができる。本発明のインクセットに含まれる各インクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
本発明においては、インクと接触する部材を備えるとともに、この部材を構成する材料に合成ゴムが含まれるインクジェット記録装置を使用する。インクと接触する合成ゴムを含む材料で構成される部材としては、チューブ、キャップ、ワイパーなどを挙げることができる。これらのなかでも、ワイパーに接触した後のインクは、水分などの蒸発により遊離銅イオンの濃度が上昇しやすい。このため、本発明のインクセットを合成ゴムで形成されるワイパーを備えたインクジェット記録装置で使用すると、合成ゴムの劣化を抑制することができるとともに、発色性に優れた画像を長期間にわたって記録することができるといった効果を得ることができる。
合成ゴムとしては汎用のものを用いることができる。合成ゴムの具体例としては、アクリルゴム、ニトリルゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴムなどを挙げることができる。これらのなかでも、成形の容易さや部材の安定性から、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴムが好ましく、ウレタンゴムがさらに好ましい。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、成分量の記載について「部」、「%」及び「ppm」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。顔料の比表面積は、Brunaur−Emmett−Teller法による窒素吸着法(BET法)により測定した値である。顔料の体積平均粒子径は、動的光散乱法を利用した測定装置である粒度分析計(商品名「ナノトラックUPA150EX」、日機装製)を用いて測定した、粒度分布の累積50%粒子径(D50)である。
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1〜4)
酸価が140mgKOH/gで重量平均分子量が10,000のスチレン/α−メチルスチレン/アクリル酸共重合体(水溶性樹脂、組成(質量)比=42/40/18)4.0部を、中和当量1となる水酸化カリウムを用いてイオン交換水に溶解させた。ここに、表1に示す種類の顔料15.0部を加え、さらにイオン交換水を加えて、合計100.0部の混合物を得た。バッチ式縦型サンドミルを用いて、得られた混合物を10時間分散させて分散液を得た。得られた分散液を遠心分離することで粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過し、分散液を得た。得られた分散液にイオン交換水を加えて、顔料分散液1〜4を得た。各顔料分散液中の顔料の含有量は10.0%、水溶性樹脂(固形分)の含有量は4.0%であった。
Figure 2015123740
(顔料分散液5〜16)
表2−1に示す種類の顔料20g、表2−2に示す種類及び量の処理剤、処理剤と等モルの硝酸、並びに純水200mLを、シルヴァーソン混合機を用いて室温、6,000rpmの条件で30分撹拌して混合物を得た。なお、表2−2に示す処理剤のうち、「ホスホン酸」は((4−アミノベンゾイルアミノ)−メタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸であり、「カルボン酸」はp−アミノ安息香酸であり、「スルホン酸」はp−アミノベンゼンスルホン酸である。得られた混合物に、少量の水に溶解させた亜硝酸カリウム(処理剤と等モル)をゆっくり添加して混合した。亜硝酸カリウムの混合によって混合物の温度は60℃に達し、この状態で1時間反応させた。その後、水酸化カリウム水溶液を用いて混合物のpHを10に調整した。30分後に純水20mLを加え、スペクトラムメンブランを用いてダイアフィルトレーションして自己分散顔料を得た。得られた自己分散顔料に水を加え、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液5〜14及び16を得た。
顔料分散液15については、得られた顔料分散液にEDTA・2Naを0.1%添加した後、1時間撹拌し、スペクトラムメンブランを用いてダイアフィルトレーションを行う操作を3回繰り返した。そして、顔料の含有量が10.0%となるように水を加えて調製した。
(表面電荷量の測定)
調製した顔料分散液に含有される自己分散顔料の官能基に含まれるアニオン性基に由来する表面電荷量を、以下に示す手順にしたがって測定した。具体的には、流動電位滴定ユニット(PCD−500)を搭載した電位差自動滴定装置(商品名「AT−510」、京都電子工業製)を用い、滴定試薬としてメチルグリコールキトサンを用いた電位差滴定により測定した。自己分散顔料の官能基のホスホン酸基に由来する表面電荷量(表2−2中、「ホスホン酸基由来」と表記)は、以下のようにして測定した。測定対象となる顔料の含有量が0.03%程度になるように顔料分散液を純水で希釈してA液を調製した。また、5℃、80,000rpm、15時間の条件で顔料分散液を超遠心分離し、自己分散顔料が除去された上澄みの液体を採取し、これを純水で80倍程度に希釈してB液を調製した。上記のようにして得た測定用試料のA液及びB液について、ICP発光分光分析装置(商品名「SPS5100」、SIIナノテクノロジー製)を用いてリンを定量した。そして、得られたA液及びB液におけるリン量の差分からホスホン酸基の量を求めた。ここで、表面電荷量の測定結果とホスホン酸基の対応から、ホスホン酸基1に対して表面電荷量は1であることが確認された。そこで、ホスホン酸基の量を、ホスホン酸基を含む官能基に由来する表面電荷量とした。
自己分散顔料の官能基のスルホン酸基に由来する表面電荷量(表2−2中、「スルホン酸基由来」と表記)は、以下のようにして測定した。測定対象となる顔料の含有量が0.03%程度になるように顔料分散液を純水で希釈してA液を調製した。また、5℃、80,000rpm、15時間の条件で顔料分散液を超遠心分離し、自己分散顔料が除去された上澄みの液体を採取し、これを純水で80倍程度に希釈してB液を調製した。上記のようにして得た測定用試料のA液及びB液について、ICP発光分光分析装置(商品名「SPS5100」、SIIナノテクノロジー製)を用いて硫黄を定量した。そして、得られたA液及びB液における硫黄の差分からスルホン酸基の量を求めた。ここで、表面電荷量の測定結果とスルホン酸基の対応から、スルホン酸基1に対して表面電荷量は1であることが確認された。そこで、スルホン酸基の量を、スルホン酸基に由来する表面電荷量とした。
自己分散顔料の官能基のカルボン酸基に由来する表面電荷量(表2−2中、「カルボン酸基由来」と表記)については、ICP発光分光分析装置により測定することができない。このため、上記で測定したアニオン性基に由来する表面電荷量を、カルボン酸基に由来する表面電荷量とした。
Figure 2015123740
Figure 2015123740
<インクの調製>
表3−1及び3−2の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、各インク(インクI−1〜I−12、インクII−1〜II−11)を調製した。表3−1及び3−2中の「アセチレノールE100」は、川研ファインケミカル製の界面活性剤である。なお、インク中に存在する遊離銅イオンの含有量(ppm)が表3−1及び3−2の下段に示す値となるように、塩化銅(II)を添加し、イオン交換水で調整して合計を100.0%とした。したがって、イオン交換水の含有量は塩化銅(II)を含む値として示した。
また、色材がC.I.ピグメントブルー15:3及びC.I.ピグメントブルー15:4ではないインク、及び顔料分散液15を用いたインクについては、塩化銅(II)を添加していない場合、遊離銅イオンの含有量は検出限界以下であった。なお、遊離銅イオンの含有量が検出限界以下となったものについては、表3−2中に「ND」と表記した。
一方、色材がC.I.ピグメントブルー15:3又はC.I.ピグメントブルー15:4であるインクについては、塩化銅(II)を添加していない場合、遊離銅イオンの含有量は23ppmであった。調製したインクを減圧乾燥した後、塩酸を用いて遊離銅イオンを抽出し、ICP発光分光分析装置(商品名「SPS5100」、SIIナノテクノロジー製)を用いて銅を定量した。得られた銅の定量値から、インク中の遊離銅イオンの含有量(ppm)を算出した。
Figure 2015123740
Figure 2015123740
<評価>
調製したインクを表4に示す組み合わせのインクセット(実施例1〜25、比較例1〜7)とし、以下に示す評価(接液性)を行った。評価結果を表4に示す。本発明では、下記の評価基準において、「AA」、「A」及び「B」を好ましいレベルとし、「C」を許容できないレベルとした。画像の記録には、熱エネルギーの作用により液体を吐出させる記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS iP3100」、キヤノン製)を改造したものを用いた。評価するインクセットを構成するインクのうち、第1インクをイエローインクのポジションにセットし、第2インクをマゼンタインクのポジションにセットした。記録条件は、記録ヘッドの吐出口の配置幅分の画像を、記録ヘッドのホームポジションから開始する走査とその逆方向の走査の両方で記録を行う、1パス双方向記録とした。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチを1ピクセルと定義し、記録媒体へのインクの付与量が1ピクセル当たり10ngとなる場合を記録デューティ100%とした。
A4サイズのPB PAPER(商品名「GF−500」、キヤノン製)の全面に、第1インクと第2インクを同じ記録パスで、それぞれ記録デューティ50%としたベタ画像を記録した。この際、記録媒体1枚分の記録を行うごとに、ウレタンゴム製のワイパーを用いて、記録ヘッドの吐出口面をワイピングする操作を行った。この条件で1万枚記録した後に、5ポイント及び8ポイントの文字を記録した。その後、文字と記録ヘッドの吐出口面を目視で確認し、以下に示す基準にしたがって接液性を評価した。
AA:5ポイントの文字が判読でき、吐出口面のワイピングも正常に行われていた。ワイパーの膨潤・変形は認められなかった。
A:5ポイントの文字が判読でき、吐出口面のワイピングも正常に行われていた。軽微なワイパーの膨潤・変形が発生していた。
B:5ポイントの文字は判読できなかったが、8ポイントの文字は判読でき、吐出口面ではワイピングは一部の箇所で正常に行われず、インクが残っていた。ワイパーの膨潤・変形が発生していた。
C:いずれの文字も判読しづらく、吐出口面のワイピングは正常に行われず、インクが残っていた。著しいワイパーの膨潤・変形が発生していた。
Figure 2015123740
なお、比較例7のインクセットについての上記接液性の評価結果は「C」であったが、短い耐用期間を想定して5千枚記録後に同様の評価を行ったところ、評価結果は「B」となった。一方、比較例1〜6のインクセットについては、5千枚記録後に同様の評価を行っても評価結果は「C」であった。

Claims (9)

  1. インクと接触する部材を備えるとともに、前記部材を構成する材料に合成ゴムが含まれる記録装置を使用するインクジェット記録方法に用いられる、水性インクの組み合わせで構成されるインクセットであって、
    銅フタロシアニン骨格を有する顔料、及び遊離銅イオンを含有する第1インクと、顔料骨格中に金属原子を有さず、ホスホン酸基を含む官能基が顔料の粒子表面に結合している自己分散顔料を含有する第2インクと、を含むことを特徴とするインクセット。
  2. 前記合成ゴムが、ウレタンゴムである請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記部材が、記録ヘッドの吐出口が形成された面をワイピングするためのワイパーである請求項1又は2に記載のインクセット。
  4. 前記銅フタロシアニン骨格を有する顔料が、C.I.ピグメントブルー15:3及びC.I.ピグメントブルー15:4の少なくとも一方である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクセット。
  5. 前記銅フタロシアニン骨格を有する顔料が、アニオン性基を含む官能基が顔料の粒子表面に結合している自己分散顔料である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクセット。
  6. 前記アニオン性基が、スルホン酸基である請求項5に記載のインクセット。
  7. 下記式(1)により求められる前記第2インクのRの値が、下記式(1)により求められる前記第1インクのRの値よりも大きい請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクセット。
    R=X/(Y3×Z) ・・・式(1)
    X:インク100g当たりの顔料の量(g)
    Y:顔料の体積平均粒子径(μm)
    Z:顔料の密度(g/cm3
  8. 下記式(2)の関係を満たす請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクセット。
    P/Q≧2.0 ・・・式(2)
    P:第2インク中の自己分散顔料の官能基に含まれるホスホン酸基の含有量(μmol/g)
    Q:第1インク中の遊離銅イオンの含有量(μmol/g)
  9. インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクセットに含まれる各インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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