JP2015123588A - 塗装金属板、塗装金属板成形物およびその製造方法 - Google Patents

塗装金属板、塗装金属板成形物およびその製造方法 Download PDF

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成寿 鈴木
Shigetoshi Suzuki
成寿 鈴木
大 平工
Masaru Hiraku
大 平工
悠悟 中根
Yugo Nakane
悠悟 中根
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Shuichi Sugita
修一 杉田
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Yuichi Okada
祐一 岡田
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Abstract

【課題】耐傷付き性を有するとともに、曲げ加工が可能な塗装金属板、および当該塗装金属板の曲げ加工による成形物を提供する。【解決手段】本発明に係る塗装金属板は、金属板を含む塗装基材の表面に、合成樹脂粒子の接合物で構成された表面塗膜を有する。合成樹脂粒子の接合物は、造膜助剤を含み、表面塗膜中の造膜助剤の含有量は、0.1〜2.0質量%である。当該塗装金属板は、耐傷付き性および曲げ加工性を有し、当該塗装金属板に曲げ加工を施すことによって、塗装金属板成形物が得られる。【選択図】なし

Description

本発明は、塗装金属板、当該塗装金属板の曲げ加工品による曲げ部を含む塗装金属板成形物、および当該塗装金属板成形物の製造方法に関する。
従来、建物の外装用建材には、金属サイディング基材に形成された印刷層と、当該印刷層上に形成されたクリア塗膜とを含む塗装金属板が知られている。当該印刷層は、凹凸を有する塗膜や、インクジェットによる特定の模様を呈する塗膜などの、意匠性を付与するための塗膜を含む。当該クリア塗膜は、主に印刷層の保護のための塗膜であり、耐傷付き性を有している。当該クリア塗膜は、水系の樹脂エマルション塗料の塗布によって形成されており、当該樹脂エマルション塗料には、水系のシリコーン変性アクリルエマルション塗料、水系のアクリル樹脂エマルション塗料、および、水系のアクリルスチレン樹脂エマルション塗料、が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−53258号公報
一方、建物の外装用建材の一種に役物が知られている。役物とは、目地や角部などの、他の外装用建材の継ぎ目や端を覆うのに特有の形状を有する外装用建材である。建物の意匠性の観点から役物と外壁材とが同じ模様を呈することが望ましく、そのため、外壁材を構成する塗装金属板の曲げ加工によって上記役物を作製することが望まれる場合がある。
しかしながら、上記塗装金属板のクリア塗膜は硬いため、塗装金属板に曲げ加工を施すと、曲げ加工部において亀裂や塗膜の剥離などが発生することがある。一方、曲げ加工性を有するクリア塗膜を作製すると、耐傷付き性が不十分となることがある。このため、耐傷付き性を有するとともに、かつ曲げ加工が可能な塗装金属板が望まれている。
本発明は、耐傷付き性を有するとともに曲げ加工が可能な塗装金属板、および当該塗装金属板の曲げ加工による成形物を提供することを目的とする。
本発明者らは、造膜助剤を含有する水系の樹脂エマルション塗料から形成したクリア塗膜が、所期の耐傷付き性を発現しつつも、塗装金属板の曲げ加工を可能とする柔軟性を有することがあることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、金属板を含む塗装基材と、前記塗装基材の表面に配置される表面塗膜と、を有する塗装金属板において、前記表面塗膜は、合成樹脂粒子の接合物で構成され、前記合成樹脂粒子の接合物は、造膜助剤を含み、前記表面塗膜中の前記造膜助剤の含有量は、0.1〜2.0質量%である、塗装金属板、を提供する。
また、本発明は、上記塗装金属板が曲げ加工によって成形された部分を含む塗装金属板成形物、を提供する。
さらに、本発明は、上記塗装金属板を曲げ加工によって曲げる工程を含む、上記塗装金属板成形物を製造する方法、を提供する。
本発明によれば、耐傷付き性を有するとともに曲げ加工が可能な塗装金属板、および当該塗装金属板の曲げ加工による成形物を提供することができる。
図1Aは、塗装基材に塗布された水系塗料中の合成樹脂粒子および造膜助剤の状態を模式的に示す図であり、図1Bは、乾燥中の水系塗料中の合成樹脂粒子および造膜助剤の状態を模式的に示す図であり、図1Cは、乾燥直後の表面塗膜中の合成樹脂粒子および造膜助剤の状態を模式的に示す図であり、図1Dは、硬化が完了した表面塗膜中の合成樹脂粒子および造膜助剤の状態を模式的に示す図である。
[塗装金属板]
本発明の実施形態に係る塗装金属板は、塗装基材および表面塗膜を有する。
上記塗装基材は、金属板を含む。上記塗装基材は、上記表面塗膜が形成される前の、塗装金属板の中間製品である。当該塗装基材は、その表面に表面塗膜を形成することが可能であればよい。塗装基材は、例えば、公知の技術を利用して作製されてもよいし、市販の金属板であってもよいし、市販の金属サイディングであってもよいし、当該金属サイディングからクリア塗膜を除去した板材であってもよい。
上記金属板の例には、溶融Zn−55%Al合金めっき鋼板などのめっき鋼板、普通鋼板やステンレス鋼板などの鋼板、アルミニウム板および銅板が含まれる。上記金属板には、エンボス加工や絞り成型加工、凹凸加工などが施されていてもよい。当該加工によって、例えば、タイル調、レンガ調、木目調などの所望のデザインに応じた表面形状を有する上記金属板が得られる。さらに、上記金属板の裏面は、断熱性や防音性を高める目的で、樹脂発泡体や石膏ボードなどの無機素材を芯材としたアルミラミネートクラフト紙などで被覆されていてもよい。
また、上記金属板には、表面処理が施されていてもよい。たとえば、上記金属板の表面には、化成処理皮膜が配置されていてもよい。化成処理皮膜は、化成処理によって上記金属板の表面に配置される膜である。化成処理は、当該金属板の表面の塗膜密着性および耐食性を向上させるための、塗装前処理の一種である。化成処理の例には、クロメート処理、クロムフリー処理、リン酸塩処理が含まれる。
化成処理皮膜の付着量は、塗膜密着性および耐食性の向上に有効な範囲において適宜に決めることが可能である。クロメート皮膜の場合、当該付着量は、全Cr換算で、例えば5〜100mg/mである。
クロムフリー処理による皮膜の例には、Ti−Mo複合皮膜およびフルオロアシッド系皮膜が含まれる。Ti−Mo複合皮膜の場合、上記付着量は、TiおよびMoの総量換算で、例えば10〜500mg/mである。フルオロアシッド系皮膜の場合、上記付着量は、フッ素換算または総金属元素換算で、例えば3〜100mg/mである。
リン酸塩皮膜の場合、上記付着量は、リン換算で、例えば5〜500mg/mである。
上記塗装基材は、上記表面塗膜以外の他の塗膜をさらに有していてもよい。当該他の塗膜の例には、下塗り塗膜、上塗り塗膜およびインキ層が含まれる。
上記下塗り塗膜は、上記金属板または上記化成処理皮膜の上に配置される。たとえば、下塗り塗膜は、金属板または化成処理皮膜の表面の全体に形成され、後述の上塗り塗膜の塗膜密着性および塗装金属板の耐食性を向上させる。下塗り塗膜は、例えば樹脂を含有する下塗り塗料を、金属板または化成処理皮膜の表面に塗布し、乾燥(または硬化)させることで形成される。
下塗り塗料に含まれる樹脂の種類の例には、ポリエステル、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂が含まれる。エポキシ樹脂は、極性が高く、かつ金属板または化成処理皮膜に対する密着性が良好なため、特に好ましい。下塗り塗膜の膜厚は、下塗り塗膜の機能を発揮することが可能な範囲において、適宜に決めることが可能である。下塗り塗膜の膜厚は、例えば5μm程度である。
上記上塗り塗膜は、下塗り塗膜の上に配置される。たとえば、上塗り塗膜は、下塗り塗膜の表面の全体に形成され、塗装金属板の意匠性を発現し、あるいは当該意匠性を高める。上塗り塗膜は、例えば、樹脂組成物を含有する上塗り塗料を、下塗り塗膜の表面に塗布し、乾燥(または硬化)させることで形成される。
上記樹脂組成物の例には、ポリエステルとメラミン樹脂およびウレタン樹脂の一方または両方とを含む組成物が含まれる。上塗り塗膜は、上記意匠性の観点から、その表面に凹凸が形成されていてもよく、また、体質顔料や着色顔料などをさらに含有していてもよい。上塗り塗膜の膜厚は、上塗り塗膜の機能を発揮することが可能な範囲において、適宜に決めることが可能である。上塗り塗膜の膜厚は、例えば10〜40μmである。
上記インキ層は、上塗り塗膜の上に配置される。インキ層は、塗装金属板の意匠性を高める目的で配置される。インキ層は、上塗り塗膜の表面の全体に形成されてもよいし、上塗り塗膜の表面の一部に形成されてもよい。インキ層は、例えば、硬化性組成物と着色剤とを含有するインキを上塗り塗膜の表面に塗布し、加熱やUV照射などにより当該硬化性組成物を硬化させることで形成される。インキの塗布方法の例には、インクジェット法が含まれる。
上記硬化性組成物の例には、エポキシ基含有シランカップリング剤、ヒドロキシル基含有オキセタン化合物、着色剤、カチオン重合性化合物および光重合開始剤を含有する組成物が含まれる。当該着色剤の例には、有機顔料および無機顔料の各種顔料が含まれる。カチオン重合性化合物の例には、芳香族エポキシド、脂環式エポキシドおよび脂肪族エポキシドが含まれる。インキ層の塗布量は、インキ層の機能を発揮することが可能な範囲において、適宜に決めることが可能である。
上記表面塗膜は、上記塗装基材の表面に配置される。表面塗膜は、塗装金属板の表面を構成する。
上記表面塗膜は、合成樹脂粒子の接合物で構成されている。合成樹脂粒子の接合物は、合成樹脂粒子が互いに接合してなる。合成樹脂粒子の接合は、例えば、合成樹脂粒子同士の接着、融着、合成樹脂粒子の表面における合成樹脂同士の化学結合、である。合成樹脂粒子の接合は、例えば、透過型電子顕微鏡により当該接合物の断面を10,000〜150,000倍に拡大して観察することによって確認することが可能である。
合成樹脂粒子の合成樹脂の例には、アクリル樹脂系、ポリエステル系、アルキド樹脂系、シリコーン変性アクリル樹脂系、シリコーン変性ポリエステル系、シリコーン樹脂系、フッ素樹脂系が含まれる。中でも、アクリル樹脂またはシリコーン変性アクリル樹脂は、耐候性および透明性が共に高いので好ましい。
上記合成樹脂粒子の接合物は、造膜助剤を含む。当該造膜助剤は、表面塗膜を形成する際に合成樹脂粒子を均す機能(レベリング)を奏する。造膜助剤は、一種でもそれ以上でもよい。表面塗膜の形成には、後述するように水性塗料を用いることができることから、造膜助剤は、通常、水溶性であり、かつ水よりも高い沸点を有する有機溶剤である。たとえば、造膜助剤の沸点は、150〜250℃であることが、平滑な表面塗膜を形成する観点から好ましい。たとえば、上記沸点が低すぎると、上記レベリングが不十分となることがあり、上記沸点が高すぎると、上記接合体中の含有量が多過ぎることによって表面塗膜の硬さが不十分となることがある。
当該造膜助剤の例には、ブチルセルソルブ、テキサノール、カルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、ジブチルカルビトールおよびN−メチル−2−ピロリドンが含まれる。
上記表面塗膜中の造膜助剤の含有量は、0.1〜2.0質量%である。当該含有量の塗装金属板は、最終製品として使用することも可能であり、かつさらに曲げ加工を要する製品の材料(中間製品)として使用することも可能となる。上記含有量が0.1質量%未満であると、上記曲げ加工における曲げ部(曲げ加工部)にひびが入ることがあり、上記含有量が2.0質量%を超えると、表面塗膜の硬度が不足し、表面塗膜の耐傷付き性が不十分となることがある。上記含有量は、最終製品に要する耐傷付き性と中間製品に要する曲げ加工性との両方を兼ね備える観点、および、中間製品の曲げ加工の加工速度をより高める観点、から、0.2〜1.0質量%であることがより好ましい。
上記含有量は、塗装金属板から採取した表面塗膜の試料の加熱発生ガス−質量分析(EGA−MS)法によって測定することが可能である。また、上記含有量は、塗装金属板の加熱によって、減少させることが可能である。さらに、ポリ塩化ビニリデン樹脂フィルムなどの、有機溶剤を透過しにくい素材で密閉された空間内で塗装金属板を保管することにより、塗装金属板中の造膜助剤の蒸発による上記含有量の低下を抑えることが可能である。当該含有量の低下を抑えることによって、塗装金属板の曲げ加工性の低下を遅らせることが可能である。表面塗膜を塗装してから曲げ加工までの期間が長い場合は、上記の保管が特に好ましい。
上記表面塗膜の膜厚は、表面塗膜の機能が発現される範囲において、適宜に決めることが可能である。表面塗膜の膜厚は、例えば10〜40μmである。また、表面塗膜は、本発明の効果が得られる範囲において、合成樹脂粒子の接合物および造膜助剤以外の他の成分をさらに含有していてもよい。たとえば、表面塗膜は、光沢の調整や機械的強度の向上の観点からシリカ粒子などの無機粒子やアクリルビーズなどの樹脂粒子を、所期の機能が得られる含有量でさらに含有していてもよい。
[塗装金属板の製造方法]
上記塗装金属板は、上記塗装基材の表面に上記表面塗膜を形成することによって、作製することが可能である。
上記表面塗膜は、上記合成樹脂のエマルションおよび上記造膜助剤を含有し、上記塗装基材の表面に塗布された水系塗料を乾燥させることによって形成することが可能である。
上記合成樹脂のエマルションは、非水溶性の上記合成樹脂の粒子が水中に分散、混合された乳液状の組成物である。合成樹脂のエマルションは、乳化重合や懸濁重合などの公知の重合方法によって作製することが可能である。また、上記合成樹脂のエマルションには、市販品を用いることが可能である。当該合成樹脂のエマルションの例には、アクリル樹脂エマルションおよびシリコーン変性アクリル樹脂エマルションが含まれる。
上記合成樹脂のエマルションにおける合成樹脂粒子の含有量は、少なすぎると、表面塗膜中に残留する造膜助剤の含有量を制御することが難しくなることがある。これは、上記合成樹脂エマルションの水を蒸発させるときに水とともに造膜助剤も所定の割合で蒸発するため、であり、例えば、蒸発させる水の量が多いと、表面塗膜における造膜助剤の含有量が所期の範囲を下回ることがある。このような観点から、上記合成樹脂のエマルションにおける合成樹脂粒子の含有量は、20質量%以上であることが好ましい。当該含有量は、均一な水系塗料を構成する観点と表面塗料の粘度を適当な粘度に調整する観点から、50質量%以下であることがより好ましい。
上記水系塗料は、本発明の効果が得られる範囲において、上記合成樹脂のエマルションおよび上記造膜助剤以外の他の成分を、当該他の成分による所期の効果が得られる量でさらに含んでいてもよい。当該他の成分の例には、前述した無機粒子および有機粒子の他に、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、ワックスおよび親水化剤が含まれる。
上記水系塗料は、上記合成樹脂のエマルションに上記造膜助剤を添加し、必要に応じて水で希釈し、あるいは上記他の成分を添加して均一に混合、分散させることによって得られる。
塗装基材に塗布された水系塗料の乾燥は、上記水系塗料中の水を蒸発させることによって行うことが可能である。当該乾燥は、例えば、水系塗料を塗布した塗装基材の加熱によって行うことが可能である。当該加熱は、温風による加熱や近赤外線の照射などの公知の方法によって行うことが可能である。上記の乾燥により、通常、水系塗料中の水が留去し、合成樹脂粒子の膜が硬化して、表面塗膜が形成される。なお、水系塗料中の水の蒸発のための乾燥(加熱)とは別の条件の加熱によって、合成樹脂粒子の膜を硬化させてもよい。
上記の乾燥により、表面塗膜中の造膜助剤の含有量を調整することが可能である。たとえば、上記乾燥の温度または時間を増やすことによって、表面塗膜中の造膜助剤の含有量を減らすことが可能である。
また、上記の乾燥は、水系塗料を塗布された塗装基材を以下のように加熱することが好ましい。たとえば、上記塗装基材を、上記金属板の到達温度を60〜110℃に制御し、塗装金属板の板面風速を4m/秒以下で1〜50分間、加熱することが好ましい。これにより、造膜助剤よりも水を優先的に蒸発させることが可能となり、表面塗膜中の造膜助剤の含有量を制御しやすくなる。
また、例えば、上記条件の加熱による乾燥の後に、後加熱をさらに施すことが好ましい。後加熱では、例えば、最大エネルギー波長が0.8〜3.0μmである近赤外線または中赤外線を上記塗装基材に照射して、上記金属板の温度を1〜30秒で120〜200℃に到達させる。これにより、表面塗膜中の造膜助剤の含有量をさらに微調整することが可能になる。
近赤外線とは、最大エネルギー波長が0.8μm以上1.8μm未満にある電磁波であり、中赤外線とは、最大エネルギー波長が1.8〜3.0μmにある電磁波である。最大エネルギー波長とは、電磁波の波長域中、エネルギーが最大の波長である。近赤外線の最大エネルギー波長は、0.8〜1.5μmであることがより好ましく、中赤外線の最大エネルギー波長は、2.0〜2.7μmであることがより好ましい。中赤外線を照射することが、プロセス速度および加熱条件の制御がより容易である観点、および、光源ランプの寿命が長い観点、から好ましい。
上記後加熱で近赤外線または中赤外線を照射して上記塗装基材を加熱する場合、上記塗装基材に塗布された水系塗料を選択的に加熱することができる。このため、塗装金属板が、断熱性や防音性を高める目的で塗装基材の裏面側に樹脂発泡体を芯材として有する金属サイディングである場合、当該樹脂発泡体に熱ダメージを与えることなく、表面塗膜中の造膜助剤の含有量をさらに微調整することができる。
上記水系塗料の最低造膜温度が十分に低い温度であると、上記の乾燥による水の蒸発と合成樹脂粒子の膜の硬化との両方を当該乾燥時に好適に行うことが可能である。このような観点から、上記水系塗料の最低造膜温度は、0〜50℃であることが好ましい。当該最低造膜温度が低すぎると、水系塗料の保存安定性が不十分となることがあり、当該最低造膜温度が高すぎると、上記膜の硬化のためのより強い加熱によって、表面塗膜中の造膜助剤の含有量が不十分となることがある。水系塗料の最低造膜温度は、例えば、造膜助剤の種類または含有量によって調整することが可能である。
塗装金属板の製造では、上記以外の他の工程をさらに含んでいてもよい。当該他の工程の例には、上記塗装基材を作製する工程、および、塗装基材の表面に上記水系塗料を塗布する工程、が含まれる。上記水系塗料を塗布する方法は、公知の方法から適宜選択することが可能である。当該塗布方法の例には、ロールコート法や、カーテンフロー法、スピンコート法、エアースプレー法、エアーレススプレー法および浸漬引き上げ法が含まれる。
[塗装金属板成形物]
本発明の実施の形態に係る塗装金属板成形物は、上記塗装金属板が曲げ加工によって成形された部分を含む。上記塗装金属板成形物は、曲げ加工された塗装金属板のみから構成されていてもよいし、曲げ加工された塗装金属板以外の部材をさらに含んでいてもよい。また、上記塗装金属板は、当該曲げ加工に加えて、切断、穿孔などの他のさらなる加工が施されていてもよい。
[塗装金属板成形物の製造方法]
上記塗装金属板成形物は、上記塗装金属板を曲げ加工によって曲げる工程を含む方法によって製造することが可能である。上記曲げ加工の加工速度は、速すぎると表面塗膜の割れや剥離などの破損を生じることがある。当該破損を防止する観点から、上記曲げ加工の加工速度は、12m/分以下であることが好ましい。上記曲げ加工は、プレス機などの、当該加工用の公知の装置を用いて行うことが可能である。
上記の製造方法は、本発明の効果が得られる範囲において、上記の曲げ加工工程以外の他の工程をさらに含んでいてもよい。当該他の工程の例には、前述した塗装金属板を作製する工程、塗装基材を作製する工程、および、塗装金属板に曲げ加工以外の加工を施す工程、が含まれる。
塗装金属板を作製する工程は、前述したように、上記塗装基材の表面に塗布された上記水系塗料を乾燥させて上記表面塗膜を形成する工程である。上記製造方法が塗装金属板を作製する工程をさらに含むことは、上記表面塗膜中の造膜助剤の含有量を調整、制御しやすく、塗装金属板成形物の曲げ加工部における表面塗膜の上記破損の発生を防止する観点から、より好ましい。
塗装基材を作製する工程は、前述したように、公知の方法を利用して行うことが可能である。また、曲げ加工以外の加工を塗装金属板に施す工程は、曲げ加工工程の前後のいずれでも行うことが可能であり、塗装金属板に適用される他の加工用の公知の装置を用いて行うことが可能である。
上記塗装金属板の曲げ加工による上記塗装金属板成形物の曲げ加工部に、表面塗膜の亀裂や剥離などの破損が発生しない理由は、以下に示されるように、造膜助剤が表面塗膜に柔軟性を付与する作用を呈するため、と考えられる。
図1Aは、塗装基材に塗布された水系塗料中の合成樹脂粒子および造膜助剤の状態を模式的に示す図であり、図1Bは、乾燥中の水系塗料中の合成樹脂粒子および造膜助剤の状態を模式的に示す図であり、図1Cは、乾燥直後の表面塗膜中の合成樹脂粒子および造膜助剤の状態を模式的に示す図であり、図1Dは、硬化が完了した表面塗膜中の合成樹脂粒子および造膜助剤の状態を模式的に示す図である。
図1Aに示されるように、塗装基材に塗布された水系塗料の塗膜10中では、合成樹脂粒子20と造膜助剤30とが水40中に分散している。
当該水系塗料が塗布された塗装基材を、例えば炉内温度70℃の熱風炉で5分間程度加熱すると、図1Bに示されるように、塗膜10からは水40が蒸発し、合成樹脂粒子20が互いに接近して集合し、規則的に配列する。このとき、造膜助剤30は、水溶性の有機溶剤であることから、合成樹脂粒子20間に介在する、と考えられる。
さらに加熱を続けると、例えば、近赤外線の照射によって炉内温度150℃で5秒間程度加熱すると、図1Cに示されるように、塗膜10から水が留去し、隣接する合成樹脂粒子20同士が融着する。上記の加熱によって、造膜助剤30の一部も蒸発する。合成樹脂粒子20同士の融着が生じる理由は、造膜助剤30によって合成樹脂粒子20における合成樹脂のガラス転位温度が低下するため、と考えられる。こうして、合成樹脂粒子20同士が接合し、合成樹脂粒子の接合体である表面塗膜100が形成される。上記の加熱によって、表面塗膜100中の造膜助剤30の含有量は、0.1〜2.0質量%となる。
表面塗膜100は、合成樹脂粒子20同士の接合によって構成されていることから、合成樹脂による硬さを呈する。こうして、表面塗膜100は、耐傷付き性を獲得する。また、表面塗膜100中に残った造膜助剤30は、合成樹脂粒子20間に介在し、合成樹脂粒子20間の柔軟な接合部を形成している、と考えられる。このため、表面塗膜100は適度な柔軟性を呈し、塗装金属板は曲げ加工性を獲得する。当該塗装金属板に曲げ加工を施すことによって、上記の塗装金属板成形物が得られる。
その後、上記塗装金属板または上記塗装金属板成形物を放置すると、合成樹脂粒子20の接合と造膜助剤30の留去がさらに進行し、図1Dに示されるように、造膜助剤が留去した、合成樹脂粒子20の接合による、さらに硬質の表面塗膜100が構成される。このときの表面塗膜100中の造膜助剤の含有量は、0.1質量%未満であり、上記曲げ特性は失われるものの、上記耐傷付き性はさらに向上する。よって、表面塗膜100は、曲げ加工部以外の平坦部のみならず、上記塗装金属板成形物の曲げ加工部においても、十分な耐傷付き性を有する。
上記塗装金属板は、上記表面塗膜が所期の耐傷付き性を有することから、例えば、建物の外壁材に使用することが可能である。また、上記塗装金属板は、上記表面塗膜が所期の曲げ加工性を有することから、塗装金属板の曲げ加工によって作製される、例えば、建物の役物の材料に使用することが可能である。当該役物は、上記塗装金属板成形物に相当する。当該役物は、上記外壁材と同じ意匠性を有することから、上記外装材および上記役物は、外装材のデザインが統一された建物用の外装材として好適である。上記役物の例には、二枚の上記外壁材によって形成された角を外側から覆うための出隅キャップ、並列する二枚の外壁材の接続端縁を覆うための目地キャップ、および、当該外壁材の縁の覆うための笠木、が含まれる。
以上の説明から明らかなように、上記塗装金属板は、上記塗装基材と、当該塗装基材の表面に配置される、上記合成樹脂粒子の接合物で構成された上記表面塗膜と、を有し、上記合成樹脂粒子の接合物が造膜助剤を含み、上記表面塗膜中の当該造膜助剤の含有量が0.1〜2.0質量%であることから、耐傷付き性を有するとともに曲げ加工が可能である。
また、上記合成樹脂粒子の合成樹脂がアクリル樹脂またはシリコーン変性アクリル樹脂であることが、表面塗膜の耐候性および透明性の向上の観点からより一層効果的である。
また、上記造膜助剤の沸点が150〜250℃であることは、均一な表面塗膜を構成する観点から一層効果的であり、上記造膜助剤が、ブチルセルソルブ、テキサノール、カルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、ジブチルカルビトールおよびN−メチル−2−ピロリドンからなる群から選ばれる一以上であることは、上記の観点からより一層効果的である。
また、上記の塗装金属板を曲げ加工することによって、塗装金属板が曲げ加工によって成形された部分(曲げ加工部)を含む上記塗装金属板成形物が提供される。
上記塗装金属板成形物の製造において、上記水系塗料を乾燥させて上記表面塗膜を形成して上記塗装金属板を作製する工程をさらに含むことは、塗装金属板成形物の曲げ加工部における表面塗膜の上記破損の発生を防止する観点からより一層効果的である。また、当該水系塗料による上記の塗装金属板の作製工程は、表面塗膜の形成における防爆(安全性)の観点からも効果的である。
また、上記水系塗料の最低造膜温度が0〜50℃であることは、耐傷付き性と曲げ加工性とを一乾燥工程で塗装金属板に発現させる観点から、より一層効果的である。
また、上記合成樹脂のエマルションが、アクリル樹脂エマルションまたはシリコーン変性アクリル樹脂エマルションであることは、表面塗膜の耐候性および透明性の向上の観点からより一層効果的である。
また、上記合成樹脂のエマルションの合成樹脂粒子の含有量が20質量%以上であることは、表面塗膜中の造膜助剤の含有量を適切な範囲に制御する観点からより一層効果的である。
また、上記曲げ加工の加工速度が12m/分以下であることは、塗装金属板成形物の製造における所期の生産性を確保しつつ、当該塗装金属板成形物における曲げ加工部の破損を防止する観点からより一層効果的である。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[塗装基板の作製]
板厚が0.27mmのA4サイズの、片面当たりのめっき付着量が90g/mの溶融Zn−55%Al合金めっき鋼板を準備した。
次いで、アルカリ脱脂した塗装原板の表面に塗布型クロメート処理液(NRC300NS;日本ペイント株式会社)を塗布し、全クロム換算付着量が50mg/mの化成処理皮膜を当該めっき鋼板の表面に形成した。
次いで、エポキシ系プライマー塗料(700P;日本ファインコーティングス株式会社)を、バーコーターを用いて化成処理皮膜の上に塗布し、到達板温215℃で焼き付けて、乾燥膜厚5μmの下塗り塗膜を上記化成処理皮膜上に形成した。
次いで、バーコーターを用いて、上記下塗り塗膜の上に、上塗り塗膜用塗料を塗布し、到達板温225℃で1分間焼き付けることで、微細な凹凸を表面に有する18μmの乾燥膜厚の上塗り塗膜を形成した。
上記上塗り塗膜用塗料は、ベース樹脂に、触媒、アミン、および顔料を配合することで調製した。上記ベース樹脂は、ポリエステル(数平均分子量5000、ガラス転移温度30℃、水酸基価28mgKOH/g;DIC株式会社)とメチル化メラミン樹脂(サイメル303;三井サイテック株式会社)とを70:30で混合して得られた。上記触媒は、ドデシルベンゼンスルフォン酸であり、当該触媒の添加量は、樹脂固形分に対して1質量%であった。上記アミンは、ジメチルアミノエタノールであり、当該アミンの添加量は、ドデシルベンゼンスルフォン酸の酸等量に対するアミン等量で1.25倍となる量であった。上記顔料としては、上塗り塗膜用塗料の固形分に対して、平均粒径0.28μmの酸化チタン(JR−603;テイカ株式会社)を45質量%、平均粒径5.5μmの疎水性シリカA(サイシリア456;富士シリシア化学株式会社)を6質量%、平均粒径10μmのマイカ(SJ−010;株式会社ヤマグチマイカ)を13質量%、および、平均粒径40μmのアクリル樹脂ビーズ(タフチック AR650S;東洋紡株式会社)を2質量%、を用いた。
次いで、上記上塗り塗膜の表面に、カチオン重合型のUVインキを均一にインクジェット法により塗布し、上記UVインキの100%ベタ画像を形成した。次いで、塗布された上記UVインキに紫外線を照射して当該UVインキを硬化させ、次いで、硬化した当該UVインキを、熱風炉中にて、70℃の炉温で5分間加熱する後加熱処理を行った。こうして、上記上塗り塗膜の表面に、インキ塗布量が8.4g/mのUVインキ塗膜を形成した。
上記UVインキは、以下のように調製した。まず、ガラス瓶に、高分子分散剤(PB822;味の素ファインテクノ株式会社)3.5質量部、ヒドロキシル基を有するオキセタン化合物(OXT−101;東亜合成株式会社)25質量部、エポキシ化合物(CEL2021P、CEL3000; 株式会社ダイセル)10質量部、オキセタン化合物(OXT−221;東亜合成株式会社)35.5質量部、および、黒色顔料(チャンネルブラック RCF♯33; 三菱化学株式会社)3.0質量部、の混合物にジルコニアビーズ(直径1mm)200質量部を入れて、当該ガラス瓶を密栓した。次いで、ペイントシェーカーで上記混合物を4時間、分散処理した。分散処理後、上記混合物からジルコニアビーズを除去して顔料分散体を得た。当該顔料分散体に、光カチオン重合開始剤(CPI−100P; サンアプロ株式会社)18質量部を混合した。
上記インクジェット法には、インクジェットプリンター(パターニングジェット;株式会社トライテック)を用いた。インクジェットヘッドのノズル径を35μm、インクジェット印刷時のインクジェットヘッドの温度を45℃、印加電圧を11.5V、パルス幅を10.0μs、駆動周波数を3483Hz、インク滴の体積を42pL、そして、解像度を360dpiとした。
上記紫外線の照射には、高圧水銀ランプ(Hバルブ;フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社)を用いた。ランプ出力を200W/cm、積算光量を600mJ/cmとした。当該積算光量は、赤外線光量計UV−351−25;株式会社オーク製作所で測定した。
上記後加熱処理には、自動排出型乾燥機AT0−101型;株式会社東上熱学製を用いた。
上記のようにして、上記金属板、上記化成処理皮膜、上記下塗り塗膜、上記上塗り塗膜および上記UVインキ塗膜を有する塗装基板を作製した。
[水系塗料1の作製]
アクリル樹脂エマルション7504(樹脂分55.5質量%、MFT=57℃、Tg=46℃、ビーエーエスエフジャパン株式会社)を100重量部、造膜助剤としてブチルセルソルブを3.0重量部、平均粒径18μmのアクリルビーズ(タフチックAR650S; 東洋紡株式会社)を3.8重量部、平均粒径12μmの親水性シリカ(サイシリア470;富士シリシア化学株式会社)を1.5重量部、水60重量部を10分間攪拌後、80メッシュでろ過して、水系塗料1を得た。水系塗料1の最低造膜温度は、熱勾配試験機(株式会社安田精機製作所製)で測定したところ46℃であった。なお、「MFT」は最低造膜温度を、「Tg」はガラス転位温度を、それぞれ意味する。
[水系塗料2の作製]
ブチルセルソルブ3.0重量部をブチルセルソルブ4.0重量部およびテキサノール1.0重量部に変更した以外は水系塗料1と同様にして、水系塗料2を得た。水系塗料2の最低造膜温度は、18℃であった。
[水系塗料3の作製]
アクリル樹脂エマルションをアクリルシリコーン系樹脂エマルションG625(樹脂分46.5質量%、MFT=43℃、Tg=26℃、旭化成ケミカルズ株式会社)に、ブチルセルソルブ3.0重量部をブチルセルソルブ4.0重量部およびテキサノール1.0重量部に、それぞれ変更した以外は水系塗料1と同様にして、水系塗料3を得た。水系塗料3の最低造膜温度は、23℃であった。
[水系塗料4の作製]
アクリル樹脂エマルションをアクリルスチレン系樹脂エマルション537J(樹脂分46.0質量%、MFT=42℃、Tg=49℃、ビーエーエスエフジャパン株式会社)に、ブチルセルソルブ3.0重量部をカルビトール2.0重量部およびテキサノール1.0重量部に、それぞれ変更した以外は水系塗料1と同様にして、水系塗料4を得た。水系塗料4の最低造膜温度は、29℃であった。
[実施例1]
上記塗装基板のUVインキ塗膜の上に、エアースプレー装置にて水系塗料1を、乾燥前の塗布量が90g/mになるように重ね塗りした。得られた水系塗料1の塗膜を、熱風炉中にて、炉温100℃、5〜40分間の範囲内の加熱時間で加熱処理(焼成)し、当該塗膜を乾燥させて、クリアオーバーコート層1を有する塗装金属板1を作製した。水系塗料1の塗膜の熱風による焼成(熱風加熱処理)には、自動排出型乾燥機AT0−101型;株式会社東上熱学製を用いた。
上記熱風加熱処理において、加熱乾燥時の塗装基板上の板面風速を4m/秒以下に制御した。板面風速が4m/秒を超えると、水分と造膜助剤が蒸発する速度が速すぎて、表面塗膜中に残留する造膜助剤の量を制御することが困難になる。
クリアオーバーコート層1中の造膜助剤の含有量は、1.92質量%であった。当該造膜助剤の含有量は、EGA−MS法によって、以下のように求めた。
まず、塗装金属板1のクリアオーバーコート層1の表面を剃刀で削り取り、分析用の試料を採取した。次いで、当該試料を、加熱炉とマススペクトル装置とを使用して、加熱炉の炉温を40℃から200℃まで昇温すると同時に、上記試料から発生したガスを連続的にマススペクトル装置に導入して当該試料中の造膜助剤を分析した。当該試料中の造膜助剤は、抽出イオンマスクロマトグラムから同定され、当該クロマトグラム中の、造膜助剤に特有の一イオンの強度から、予め作成された検量線を用いて定量された。
上記加熱炉には、フロンティア・ラボ株式会社製 Double−Shot Pyrolyzer (Model PY−2020iD)を用いた。加熱温度を40〜200℃、昇温速度を10℃/分、雰囲気をHe、試料量を7.5mgとした。
上記マススペクトル装置には、株式会社島津製作所製 質量分析装置 QP−5000を用いた。EGAチューブを不活性化キャピラリー(0.15mmφ×2.5m)、カラム温度を250℃、注入口温度を250℃、インターフェース温度を300℃、イオン化法をEI 70eV、走査質量範囲を10〜300、とした。
[実施例2および3]
水系塗料1の塗膜の焼成時間を変えた以外は実施例1と同様にして、クリアオーバーコート層2を有する塗装金属板2を作製した。クリアオーバーコート層2中の造膜助剤の含有量は、0.96質量%であった。また、水系塗料1の塗膜の焼成時間を変えた以外は実施例1と同様にして、クリアオーバーコート層3を有する塗装金属板3を作製した。クリアオーバーコート層3中の造膜助剤の含有量は、0.29質量%であった。
[実施例4]
水系塗料1の塗膜の焼成を第1加熱工程と第2加熱工程に分けて焼成時間を変えた以外は実施例1と同様にして、クリアオーバーコート層4を有する塗装金属板4を作製した。第1加熱工程では熱風炉中にて、板面風速2m/秒、炉温100℃で2分間、熱風加熱処理(焼成)を行った。第1加熱工程に引き続き第2加熱工程を行った。第2加熱工程では中赤外炉を用いて、板面風速0.5m/秒とし、塗装金属板4の到達温度を120℃とし、昇温時間を5秒間として、加熱処理(焼成)を行った。クリアオーバーコート層4中の造膜助剤の含有量は、1.12質量%であった。なお、第2加熱工程の昇温時間は、塗装金属板4の搬送速度および赤外線ヒーター出力(中赤外線の照射量)を調節することによって変化させた。
[実施例5〜7]
水系塗料1の代わりに水系塗料2を用い、かつ、水系塗料の焼成時間を変えた以外は実施例1と同様にして、クリアオーバーコート層5〜7を有する塗装金属板5〜7をそれぞれ作製した。クリアオーバーコート層5中の造膜助剤の含有量は、1.86質量%であり、クリアオーバーコート層6中の造膜助剤の含有量は、1.03質量%であり、クリアオーバーコート層7中の造膜助剤の含有量は、0.19質量%であった。
[実施例8]
水系塗料1の代わりに水系塗料2を用い、かつ、塗膜の焼成を第1加熱工程と第2加熱工程に分けて焼成時間を変えた以外は実施例1と同様にして、クリアオーバーコート層8を有する塗装金属板8を作製した。第1加熱工程では熱風炉中にて、板面風速2m/秒、炉温100℃で2分間、熱風加熱処理(焼成)を行った。第1加熱工程に引き続き第2加熱工程を行った。第2加熱工程では近赤外炉を用いて、板面風速0.5m/秒とし、塗装金属板8の到達温度を200℃とし、昇温時間を5秒間として、加熱処理(焼成)を行った。クリアオーバーコート層8中の造膜助剤の含有量は、0.99質量%であった。なお、第2加熱工程の昇温時間は、塗装金属板8の搬送速度および赤外線ヒーター出力(近赤外線の照射量)を調節することによって変化させた。
[実施例9〜11]
水系塗料1の代わりに水系塗料3を用い、かつ、水系塗料の焼成時間を変えた以外は実施例1と同様にして、クリアオーバーコート層9〜11を有する塗装金属板9〜11をそれぞれ作製した。クリアオーバーコート層9中の造膜助剤の含有量は、1.78質量%であり、クリアオーバーコート層10中の造膜助剤の含有量は、0.89質量%であり、クリアオーバーコート層11中の造膜助剤の含有量は、0.12質量%であった。
[実施例12〜14]
水系塗料1の代わりに水系塗料4を用い、かつ、水系塗料の焼成時間を変えた以外は実施例1と同様にして、クリアオーバーコート層12〜14を有する塗装金属板12〜14をそれぞれ作製した。クリアオーバーコート層12中の造膜助剤の含有量は、1.98質量%であり、クリアオーバーコート層13中の造膜助剤の含有量は、1.10質量%であり、クリアオーバーコート層14中の造膜助剤の含有量は、0.21質量%であった。
[比較例1および2]
水系塗料1の塗膜の焼成時間を変えた以外は実施例1と同様にして、クリアオーバーコート層C1、C2を有する塗装金属板C1、C2をそれぞれ作製した。クリアオーバーコート層C1中の造膜助剤の含有量は、2.27質量%であり、クリアオーバーコート層C2中の造膜助剤の含有量は、0.06質量%であった。
[比較例3および4]
水系塗料2の塗膜の焼成時間を変えた以外は実施例4と同様にして、クリアオーバーコート層C3、C4を有する塗装金属板C3、C4をそれぞれ作製した。クリアオーバーコート層C3中の造膜助剤の含有量は、2.18質量%であり、クリアオーバーコート層C4中の造膜助剤の含有量は、0.04質量%であった。
[比較例5および6]
水系塗料3の塗膜の焼成時間を変えた以外は実施例7と同様にして、クリアオーバーコート層C5、C6を有する塗装金属板C5、C6をそれぞれ作製した。クリアオーバーコート層C5中の造膜助剤の含有量は、2.30質量%であり、クリアオーバーコート層C6中の造膜助剤の含有量は、0.07質量%であった。
[比較例7および8]
水系塗料4の塗膜の焼成時間を変えた以外は実施例10と同様にして、クリアオーバーコート層C7、C8を有する塗装金属板C7、C8をそれぞれ作製した。クリアオーバーコート層C7中の造膜助剤の含有量は、2.19質量%であり、クリアオーバーコート層C8中の造膜助剤の含有量は、0.08質量%であった。
[評価]
(1)クリアオーバーコート層の密着性
塗装金属板1〜14およびC1〜C8のそれぞれについて、JIS K5600−5−6:1999(ISO 2409:1992)に準拠した碁盤目試験を実施した。具体的には、塗装金属板1〜14およびC1〜C8のそれぞれの表面に、1mm間隔の切れ目によって100個のマス目ができるように基盤目状の切り込みを入れ、形成された切り込み部にテープを貼り付け、テープを剥離後、当該切り込み部におけるクリアオーバーコート層の剥離面積を求め、以下の基準によりクリアオーバーコート層の密着性を評価した。◎、○および△は、実用可能であることを示す。
◎:上記剥離面積が0%
○:上記剥離面積が0%超10%以下
△:上記剥離面積が10%超20%以下
×:上記剥離面積が20%超
(2)耐傷付き性
塗装金属板1〜14およびC1〜C8のそれぞれについて、JIS K5600−5−4:1999(ISO/DIS 15184:1996)に準拠して、鉛筆を使用して、クリアオーバーコート層の下のUVインキ塗膜が傷付く鉛筆硬度により評価した。鉛筆硬度がH以上であれば、実用可能である。
(3)塗装金属板のプレス加工性
塗装金属板1〜14およびC1〜C8のそれぞれについて、株式会社アマダ製 プレスTP80を用いてプレス加工を行い、当該塗装金属板の曲げ加工による曲げ部を含む塗装金属板成形物1〜14およびC1〜C8をそれぞれ得た。当該プレス加工において、加工温度を23℃、プレス加工速度を8m/分、12m/分または14m/分、V溝幅を12mm、パンチ曲率を0.2mmR、とした。
塗装金属板成形物1〜14およびC1〜C8のそれぞれについて、上記曲げ部に沿ってJIS Z1522による幅18mmのセロハン粘着テープを、親指または人指し指の腹で完全に圧着した後、直ちに上記曲げ部に対して90度方向に瞬間的に引き剥がした。そして、当該テープ剥離後、クリアオーバーコート層の剥離面積を求め、以下の基準によりクリアオーバーコート層の密着性を評価した。◎および○は、実用可能であることを示す。
◎:上記剥離面積が0%
○:上記剥離面積が0%超10%以下
×:上記剥離面積が10%超
上記実施例および比較例における水系塗料の種類、クリアオーバーコート層中の造膜助剤の含有量、および、上記評価の結果、を表1に示す。
Figure 2015123588
表1から明らかなように、実施例1〜14の塗装金属板1〜14は、いずれも、外装用建材として十分なクリアオーバーコート層の密着性および塗膜の耐傷付き性を有している。特に、クリアオーバーコート層中の造膜助剤の含有量が少ないほど、塗膜の耐傷付き性が高まる傾向が見られる。これらの理由には、クリアオーバーコート層が樹脂エマルションの樹脂粒子の接着によって形成されているため、当該樹脂粒子間に造膜助剤が介在しているため、および、造膜助剤が少ないほど樹脂粒子の樹脂による硬さが発現するため、と考えられる。
また、塗装金属板1〜14の曲げ加工によって作製された塗装金属板成形物1〜14は、いずれも、プレス加工による曲げ加工が可能である。特に、クリアオーバーコート層中の造膜助剤の含有量が多いほど、より速いプレス加工速度でのプレス加工が可能となる傾向が見られる。これらの理由には、上記樹脂粒子間に介在する造膜助剤が当該粒子の接着部に柔軟性を付与し、プレス加工によるクリアオーバーコート層の割れを防止しているため、と考えられる。
以上より、表面塗膜中の造膜助剤の含有量が0.1〜2.0質量%である塗装金属板は、外装用建材に用いることが可能であり、かつ曲げ加工が可能であること、および、当該塗装金属板の曲げ加工による成形物を提供することが可能であること、が明らかになった。
一方、造膜助剤の含有量が2.0質量%を超える比較例1、3、5、7の塗装金属板C1、C3、C5、C7は、塗膜の耐傷付き性が不十分であった。これは、クリアオーバーコート層中の当該造膜助剤の含有量が多すぎ、造膜助剤によるクリアオーバーコート層の軟化作用が強すぎたため、と考えられる。
また、造膜助剤の含有量が0.1質量%未満である比較例2、4、6、8の塗装金属板C2、C4、C6、C8は、プレス加工性が不十分であった。これは、クリアオーバーコート層中の当該造膜助剤の蒸発が十分に進行し、クリアオーバーコート層が十分に硬化したため、と考えられる。
本発明に係る塗装金属板には、表面の凹凸を含む種々のデザインを付与することができ、かつ当該塗装金属板は、耐傷付き性と曲げ加工性との両方を兼ね備える。よって、塗装金属板は、最終製品として好適であるとともに、当該最終製品に付随して用いられる塗装金属板の曲げ加工品の材料としても好適である。よって、本発明に係る塗装金属板および塗装金属板成形物は、建物の外装用建材に好適に用いることが可能であり、高い意匠性を要求される製品の材料としての塗装金属板の需要の拡大に寄与することが期待される。
10 塗膜
20 合成樹脂粒子
30 造膜助剤
40 水
100 表面塗膜

Claims (11)

  1. 金属板を含む塗装基材と、前記塗装基材の表面に配置される表面塗膜と、を有する塗装金属板において、
    前記表面塗膜は、合成樹脂粒子の接合物で構成され、
    前記合成樹脂粒子の接合物は、造膜助剤を含み、
    前記表面塗膜中の前記造膜助剤の含有量は、0.1〜2.0質量%である、
    塗装金属板。
  2. 前記合成樹脂粒子の合成樹脂は、アクリル樹脂またはシリコーン変性アクリル樹脂である、請求項1に記載の塗装金属板。
  3. 前記造膜助剤の沸点は、150〜250℃である、請求項1または2に記載の塗装金属板。
  4. 前記造膜助剤は、ブチルセルソルブ、テキサノール、カルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、ジブチルカルビトールおよびN−メチル−2−ピロリドンからなる群から選ばれる一以上である、請求項3に記載の塗装金属板。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗装金属板が曲げ加工によって成形された部分を含む塗装金属板成形物。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗装金属板を曲げ加工によって曲げる工程を含む、
    請求項5に記載の塗装金属板成形物を製造する方法。
  7. 前記合成樹脂のエマルションおよび前記造膜助剤を含有し、前記塗装基材の表面に塗布された水系塗料を乾燥させて前記表面塗膜を形成して前記塗装金属板を作製する工程をさらに含む、請求項6に記載の塗装金属板成形物の製造方法。
  8. 前記水系塗料の最低造膜温度は、0〜50℃である、請求項7に記載の塗装金属板成形物の製造方法。
  9. 前記合成樹脂のエマルションは、アクリル樹脂エマルションまたはシリコーン変性アクリル樹脂エマルションである、請求項7または8に記載の塗装金属板成形物の製造方法。
  10. 前記合成樹脂のエマルションの合成樹脂粒子の含有量は、20質量%以上である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の塗装金属板成形物の製造方法。
  11. 前記曲げ加工の加工速度は、12m/分以下である、請求項6〜10のいずれか一項に記載の塗装金属板成形物の製造方法。
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