JP2015120616A - 炭化珪素単結晶の製造方法 - Google Patents

炭化珪素単結晶の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】反りやうねりを有する種結晶を用いても結晶性の高い炭化珪素単結晶を得ることができる、単結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】第1の面を有する種基板と、第2の面を有する台座とを準備する工程(S10)と、台座の第2の面上に種基板を固定する工程(S20)と、種基板上に炭化珪素単結晶を成長させる工程(S30)とを備え、準備する工程(S10)では、室温におけるSORI値がXμmであり、第1の面における中央部と端部との面方位のずれがY°であって、Y≦(0.3/50)Xである種基板を準備する。
【選択図】図9

Description

この発明は、炭化珪素単結晶の製造方法に関し、より特定的には、結晶品質を向上可能な炭化珪素単結晶の製造方法に関する。
半導体材料として、近年、炭化珪素(SiC)の利用が活発に検討されている。SiCが有する大きなバンドギャップは半導体装置の性能を高めることに貢献し得る。SiC半導体の製造には、通常、SiC単結晶基板を必要とする。SiC単結晶基板(ウエハ)は、SiC単結晶(インゴット)をスライスすることによって形成され得る。
一般に、SiC単結晶基板の平坦性はロット間(SiC単結晶間)でばらつきを有している。つまり、SiC単結晶基板には反りやうねりが生じる場合があり、かつその程度は同一のSiC単結晶基板の製造方法を用いてもばらつきを含むことが通常である。
しかし、種結晶の反りやうねりが大きい場合には、該種結晶を坩堝蓋(台座)に取り付けることは困難である。
特開2005−314167号公報には、坩堝蓋に接する面のそり・うねりが10μm以下である炭化珪素単結晶成長用種結晶が記載されている。また、該炭化珪素単結晶成長用種結晶の結晶成長面が凹面であることが記載されている。
特開2005−314167号公報
しかしながら、SiC単結晶成長用の種結晶では、SiCエピタキシャル基板の大口径化に伴う種結晶の外径の拡大により、当該種結晶の反りやうねりを常に10μm以下に抑えることは困難である。この場合、従来の単結晶の製造方法では、種結晶に反りやうねりが生じた場合には、台座に固定できないかあるいは固定できても伝熱にムラが生じて、結晶性の高い炭化珪素単結晶を成長させることが困難である。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものである。本発明の主たる目的は、結晶性の高い炭化珪素単結晶を得ることができる、単結晶の製造方法を提供することにある。
本発明に係る炭化珪素単結晶の製造方法は、第1の主面を有する種基板と、第2の主面を有する台座とを準備する工程と、第1の主面と第2の主面とが対向するように種基板を台座上に固定する工程と、種基板上に炭化珪素単結晶を成長させる工程とを備え、準備する工程では、室温におけるSORI値がXμmであり、第1の主面における中央部と端部との面方位のずれがY°であって、Y≦(0.3/50)Xである種基板を準備する。
本発明によれば、結晶性の高い炭化珪素単結晶を得ることができる。
種基板の第1の主面における中央部と端部との面方位のずれを説明するための模式図である。 種基板の第1の主面における中央部と端部との面方位のずれを説明するための模式図である。 種基板の第1の主面における中央部と端部との面方位のずれを説明するための模式図である。 種基板の第1の主面における中央部と端部との面方位のずれを説明するための図である。 種基板の反り(SORI)を説明するための平面模式図である。 種基板の反り(SORI)を説明するための断面模式図である。 台座の反り(SORI)を説明するための平面模式図である。 台座の反り(SORI)を説明するための断面模式図である。 実施の形態1に係る単結晶の製造方法のフローチャートである。 実施の形態1に係る単結晶の製造方法を説明するための断面図である。 実施の形態1に係る単結晶の製造方法を説明するための断面図である。 実施の形態1に係る単結晶の製造方法を説明するための断面図である。 実施の形態1に係る単結晶の製造方法を説明するための断面図である。 実施の形態2に係る単結晶の製造方法に用いられる固定部材を説明するための正面図である。 実施の形態2に係る単結晶の製造方法に用いられる固定部材の変形例を説明するための正面図である。 実施例の試料1のX線回折の結果を説明するための図である。 実施例の試料1のX線回折の回折スペクトルのグラフである。 実施例の試料1のX線回折の回折スペクトルのグラフである。 実施例の試料1のX線回折の回折スペクトルのグラフである。 実施例の試料1のX線回折の回折スペクトルのグラフである。 実施例の試料1のX線回折の回折スペクトルのグラフである。 実施例の試料2のX線回折の結果を説明するための図である。 実施例の試料1のX線回折の回折スペクトルのグラフである。 実施例の試料1のX線回折の回折スペクトルのグラフである。 実施例の試料1のX線回折の回折スペクトルのグラフである。 実施例の試料1のX線回折の回折スペクトルのグラフである。 実施例の試料1のX線回折の回折スペクトルのグラフである。 実施例の試料3のX線回折の結果を説明するための図である。 実施例の試料1のX線回折の回折スペクトルのグラフである。 実施例の試料1のX線回折の回折スペクトルのグラフである。 実施例の試料1のX線回折の回折スペクトルのグラフである。 実施例の試料1のX線回折の回折スペクトルのグラフである。 実施例の試料1のX線回折の回折スペクトルのグラフである。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
[本願発明の実施形態の説明]
はじめに、本発明の実施の形態の概要を列挙する。
(1)本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法は、第1の面(第1の主面10A)を有する種基板10と、第2の面(第3の主面20A)を有する台座20とを準備する工程(S10)と、台座20の第2の面(20A)上に種基板10を固定する工程(S20)と、種基板10上に炭化珪素単結晶70を成長させる工程(S30)とを備え、準備する工程(S10)では、室温におけるSORI値がXμmであり、第1の面(第1の主面10A)における中央部と端部との面方位のずれがY°であって、Y≦(0.3/50)Xである種基板10を準備する。
ここで、種基板10のSORI値とは、種基板10の反りの程度を定量化するためのパラメータの一つである(詳細は後述する)。また、第1の面における中央部と端部との面方位のずれとは、種基板10において所定の面方位を示す格子面について、種基板10の中央部における当該格子面と端部における当該格子面との成す角度を言い、たとえばX線回折等によって測定される(詳細は後述する)。
準備する工程において準備される種基板10は、室温におけるSORI値がXμmであり、ある程度の反りやうねりを有していてもよい。さらに、種基板10は第1の主面10Aにおける中央部と端部との面方位のずれY°を有している。つまり第1の主面10A、第2の主面10Bおよび格子面(その一部を格子面10C、10D、10Eとする)はそれぞれ所定の面方位を示す格子面であり、かつそれぞれに同等程度の変形(歪み)が生じている。この場合、格子面の変形によって、種基板10には内部応力(残留応力)が蓄えられていることになる。
本願発明者らは、種基板10がY≦(0.3/50)Xの関係式を満足するときには、種基板10の反りやうねり等に起因した種基板10と台座20との接合不良の発生をより効果的に抑制することができることを見出した。具体的には、上記関係式を満足する種基板10については、たとえば成長させる工程などにおいて室温よりも高い所定の温度に加熱すると、上記内部応力(残留応力)が緩和されるように、室温における上記XよりもSORI値を小さくすることができ、かつ室温における上記Yよりも面方位のずれを小さくすることができることを本願発明者らは見出した。
これにより、成長させる工程において、種基板10と台座20とが密着性良く固定されている状態で種基板10上に炭化珪素単結晶70を成長させることができるため、結晶性の高いSiC単結晶70を得ることができる。
(2)本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法において、固定する工程(S20)では、種基板10を台座20上に接着剤を介して固定し、固定する工程(S20)の後であって成長させる工程(S30)の前に、熱処理により接着剤を硬化させる工程をさらに備えてもよい。
このようにすれば、固定させる工程において、熱処理により種基板10の内部応力を緩和させて反りやうねりを低減させた状態で接着剤を介して種基板10と台座20とを固定することができる。このとき、種基板10と台座20との間に空隙が生じている場合であっても、接着剤により当該空隙を埋め合わせることができる。この結果、成長させる工程において、種基板10と台座20とが密着性良く固定されている状態で種基板10上に炭化珪素単結晶を成長させることができるため、結晶性の高いSiC単結晶を得ることができる。
なお、空隙Sは、第2の主面10B(第2の主面10B上に被覆膜11(詳細については後述する)が形成されている場合には、第5の主面11B)と第3の主面20Aとにおいて両面が面接触していない領域に生じる空間を指し、該空間は外部に開放されていてもよいし、閉空間であってもよい。
(3)本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法において、準備する工程(S10)では、固定する工程(S20)において台座20の第2の面上に搭載された種基板10を物理的に固定可能な固定部材をさらに準備してもよい。
このようにすれば、たとえば固定させる工程において熱処理を行わずに種基板10と台座20とを固定部材を用いて物理的に固定しておき、成長させる工程において炭化珪素単結晶の成長に先だって熱処理を行うことによっても、種基板10と台座20とが密着性良く固定されている状態で炭化珪素単結晶を成長させることができる。あるいは固定させる工程以降、成長させる工程の前までのいずれかの工程において熱処理を行うことにより、種基板10と台座20とが密着性良く固定されている状態で種基板10上に炭化珪素単結晶を成長させることができる。その結果、結晶性の高いSiC単結晶を得ることができる。
(4)本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法において、準備する工程(S10)は、種基板10の第1の面における中央部と端部との面方位のずれ(Y°)を検査する工程を含んでいてもよい。
このようにしても、面方位のずれ(Y°)が上記関係式を満たすことが確認された種基板10と台座20とを固定することができるため、種基板10と台座20とが密着性良く固定されている状態で種基板10上に炭化珪素単結晶を成長させることができる。その結果、結晶性の高いSiC単結晶を得ることができる。
(5)本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法において、準備する工程(S10)では、種基板10の室温におけるSORI値と、台座20の室温における第2の面のSORI値との和が70μm以下となるように、種基板10と台座20とを準備してもよい。
つまり、種基板10の第1の面としての第2の主面10Bおよび台座20の第2の面としての第3の主面20Aの少なくともいずれかに反りやうねりが生じている場合であっても、種基板10および台座20は、種基板10の室温におけるSORI値と台座20の室温におけるSORI値との和が70μm以下であればよい。このようにしても、工程(S20)においてこのような種基板10と台座20とを密着性良く固定することができる。
(6)本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法において、種基板10の厚みは1mm以上であってもよい。このようにしても、種基板10の室温におけるSORI値と、種基板10の第1の主面における中央部と端部との面方位のずれとが、上述した関係式を満たすように設けられているため、種基板10と台座20とが密着性良く固定されている状態で種基板10上に炭化珪素単結晶を成長させることができる。その結果、結晶性の高いSiC単結晶を得ることができる。
(7)本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法において、種基板10の外径は100mm以上であってもよい。本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法において準備される種基板10は、種基板10の室温におけるSORI値と、種基板10の第1の主面における中央部と端部との面方位のずれとが、上述した関係式を満たすため、外径が100mm以上の種基板10であっても、種基板10と台座20とが密着性良く固定されている状態で種基板10上に炭化珪素単結晶を成長させることができる。その結果、結晶性の高いSiC単結晶を得ることができる。また、種基板10の外径は150mm以上であっても同様の効果を奏することができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
次に、本発明の実施の形態の詳細について説明する。
(実施の形態1)
はじめに、図1〜図4を参照して、種基板10の第1の主面10Aにおける中央部と端部との面方位のずれY(°)について説明する。
図1を参照して、本実施の形態に係る種基板10は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素からなり、第1の主面10Aと、第1の主面10Aと反対側の第2の主面10Bとを有している。種基板10の直径の最大寸法D1は、たとえば100mm以上であり、好ましくは150mm以上である。
種基板10の第1の主面10Aは、たとえば{0001}面に対して15°より小さいオフ角を有することが好ましく、10°より小さいオフ角を有することがより好ましい。図1に示す例では、種基板10は第1の主面10A側に凸状の反りが生じているが、第2の主面10B側に凸状であってもよい。
本実施の形態において種基板10の内部に位置する格子面10C,10D,10E他は、それぞれ種基板10の第1の主面10Aと略平行となるように形成されている。つまり、種基板10の第1の主面10Aにおいて、中央部と端部とでは面方位は同一である。一方で、種基板10は第1の主面10Aが上に凸状となるような反りを有している。このため、種基板10の第1の主面10Aにおける中央部および端部に対してX線回折を行うと、種基板10の回折スペクトルに反りに起因したピークシフトが確認される。なお、ここで種基板10の端部とは、種基板10の外周端から10mm内側の位置をいう。
たとえば、X線回折装置におけるX線源と検出器とを、所定の波長λを有するX線を種基板10に照射したときに入射X線に対して回折角2×θ1を成すように回転可能に設けておくとともに、種基板10をX線源および検出器に対して回転可能に設けておく。このようにすれば、種基板10の第1の主面10Aにおける中央部に対してX線を局所的に照射したときに得られる回折スペクトルと、端部に対してX線を局所的に照射したときに得られる回折スペクトルとの間でピークシフトが確認される。
図2は、種基板10の第1の主面10Aにおける中央部でのX線回折を説明するための図である。図2を参照して、第1の主面10Aに対して入射角θ1で照射された特定の波長を有する単色X線は、種基板10の各構成原子中の電子により散乱され、入射X線の進行方向に対して回折角2×θ1を成す方向に散乱される。種基板10の第1の主面10Aと格子面10C他とは平行であるため、ブラッグの条件を満たした時に回折X線が観測される。このとき、X線回折装置における特定の方向Xに対して、第1の主面10Aは所定の角度θ2だけ傾斜している。
一方、図3は、種基板10の第1の主面10Aにおける端部でのX線回折を説明するための図である。このとき、種基板10の第1の主面10Aにおける中央部と端部との間には反りが生じているが、結晶性には差異が無い(第1の主面10Aと格子面10C等とが略平行とあって、格子面間隔dが等しい)場合を考える。この場合、種基板10の第1の主面10Aの中央部と端部との間では同一のブラッグの式を満足する。一方で、種基板10には反りが生じており、中央部における第1の主面10Aおよび格子面10C他に対し、端部における第1の主面10Aおよび格子面10C他はSORI値に応じた傾斜角を有している。そのため、種基板10を上記傾斜角に応じてX線源および検出管に対して回転させることにより、種基板10の中央部と端部とで上記傾斜角によらず第1の主面10Aに対するX線の入射角を同等とすることができ、種基板10の中央部における回折スペクトルと、端部における回折スペクトルとを得ることができる。このとき、X線回折装置における上記特定の方向Xに対して、第1の主面10Aは所定の角度θ3だけ傾斜している。
つまり、種基板10の第1の主面10Aの中央部に対するX線回折により得られるスペクトルと、その端部に対するX線回折により得られるスペクトルとの間で上記傾斜角に応じたピークシフトが観測される。図2および図3において、当該ピークシフト量は図3におけるθ3と図2におけるθ2の差に対応する。図4は、種基板10の第1の主面10Aにおける中央部に対するX線回折により得られるスペクトルと、端部に対するX線回折により得られるスペクトルとの間でピークシフトを説明するためのグラフである。図4の縦軸は回折X線の強度(単位:a.u.)を示し、図4の横軸は回折角2θ(単位:°)を示す。グラフG1は、種基板10の第1の主面10Aにおける中央部に対するX線回折により得られるスペクトルであり、グラフG2は、種基板10の第1の主面10Aにおける端部に対するX線回折により得られるスペクトルである。グラフG1とグラフG2のピーク位置(ピークを示す回折角)の差(回折スペクトルのピークシフト量Y°)は、種基板10の中央部と端部との間に生じている第1の主面10Aおよび格子面10Cの変形に起因している。言い換えれば、上記ピーク位置の差は、種基板10の中央部と端部との面方位のずれに相当するものである。つまり、種基板10の第1の主面10Aにおける中央部と端部との面方位のずれY(°)は、種基板10に対してX線回折を行ったときの回折スペクトルのピークシフト量として測定される。
なお、格子面間隔dに差異が生じている可能性がある場合には、入射X線に対して得られた回折スペクトルのピークシフト量Y°だけ種基板10をθ回転させた状態で取得される回折スペクトルにより判断できる。回折スペクトルのピークシフト量Y°が格子面間隔dに起因して生じている場合、上述のように種基板10をθ回転させると回折スペクトルの極端な強度低下が確認される。これに対し、回折スペクトルのピークシフト量Y°が種基板10の中央部と端部との面方位のずれに起因して生じている場合、上述のように種基板10をθ回転させると回折スペクトルの強度は大きく変化せず、極端な強度低下は確認されない。
次に、図5〜図8を参照してSORI値の定義について説明する。図5および図6は、種基板10のSORI値を説明するための模式図である。SORI値とは、基板の反りの程度を定量化するためのパラメータの一つである。SORI値は、種基板10の第1の主面10Aの最小二乗面を基準の高さ(最小二乗面高さ2)とした場合、第1の主面10Aの最高点(図5の例では、位置3)における高さと基準の高さとの距離と最低点(図5の例では、位置4)における高さと基準の高さとの距離の合計値を表す。SORI値は距離を表すため、常に正の値となる。なお、SORI値は、クランプされていない種基板10に対して計算される。
またSORI値は、ある測定範囲における反りの程度を表す。たとえば、種基板10のある位置3から他の位置5までの間(範囲d)においてSORI値が決定される。本実施の形態において、種基板10のSORI値とは、種基板10の主面(第1の主面10Aまたは第2の主面10B)内における任意の2点間におけるSORI値のうち最大のSORI値のことを指す。
また、通常、互いに対向する第1の主面10AのSORI値と第2の主面10BのSORI値はほぼ同じ値になるので種基板10のSORI値は一義的に決定される。もし、第1の主面10AのSORI値と第2の主面10BのSORI値が異なっている場合、種基板10のSORI値とは、第1の主面10AのSORI値および第2の主面10BのSORI値のうち、大きい値のSORI値のことである。
また、上述したSORI値の定義から、種基板10のうねりの大きさは常に種基板10のSORI値以下に収まるため、種基板10のSORI値の上限値を規定することにより種基板10のうねりの上限値は規定される。
図7および図8は、台座20のSORI値を説明するための模式図である。図5および図6に示した種基板10のときと同様に、台座20の第3の主面20Aの最小二乗面を基準の高さ(最小二乗面高さ6)とした場合、第1の主面10Aの位置7(最高点)における高さと基準の高さとの距離と位置8(最低点)における高さと基準の高さとの距離の合計値を表す。SORI値は距離を表すため、常に正の値となる。
またSORI値は、ある測定範囲における反りの程度を表すものであり、たとえば台座20のある位置7から他の位置9までの間(範囲d)においてSORI値が決定される。本実施の形態において、台座20のSORI値とは、台座20の第3の主面20A内における任意の2点間におけるSORI値のうち最大のSORI値のことを指す。つまり、台座20のSORI値とは、第2の面としての第3の主面20Aの最大のSORI値のことを指す。
次に、図9〜図13を参照して、本実施の形態に係る炭化珪素(SiC)単結晶の製造方法について説明する。本実施の形態に係る単結晶の製造方法は、第1の面としての第2の主面10Bを有する種基板10と、第2の面としての第3の主面20Aを有する台座20とを準備する工程(S10)と、第2の主面10Bと第3の主面20Aとが対向するように種基板10を台座20上に固定する工程(S20)と、種基板10上に炭化珪素単結晶を成長させる工程(S30)とを備える。
まず、第1の面としての第2の主面10Bを有する種基板10と、第2の面としての第3の主面20Aを有する台座20とを準備する(工程(S10))。種基板10は、SiCからなる結晶であり、結晶構造は六方晶系であることが好ましい。結晶多形は4Hまたは6Hであることが好ましい。この場合、種基板10の面方位(図中、下面の方位)は{0001}に対して15°より小さいオフ角を有することが好ましく、10°より小さいオフ角を有することがより好ましい。種基板10のTTVは、30μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下である。種基板10の外径は、たとえば100mm以上であり、150mm以上であってもよい。種基板10の厚みは、たとえば1mm以上である。
種基板10は、室温において、第1の主面10Aにおける中央部と端部との面方位のずれY°と、種基板10のSORI値Xμmとが、Y≦(0.3/50)Xの関係式を満足するものが準備される。たとえば、中央部における第1の主面10Aおよび格子面10Cの面方位と端部における第1の主面10Aおよび格子面10Cとの面方位が同一であって、室温において、種基板10の反りに起因して面方位のずれY°が生じており、当該面方位のずれY°と種基板10のSORI値Xμmとが上記関係式を満足する種基板10を準備する。たとえば、種基板10の外径が100mmであって、種基板10のSORI値は50μmであるときには、第1の主面10Aにおける中央部と端部との面方位のずれが0.3°以下の種基板10を準備する。
種基板10の第2の主面10B上には、炭素を含有する被覆膜11(図10参照)が形成されていてもよい。この場合には、種基板10の第2の主面10Bと台座20の第3の主面20Aとは、被覆膜11および接着剤30を用いて貼り合わされる。
具体的には、被覆膜11は、本実施の形態においては有機膜である。この有機膜は、好ましくは有機樹脂から形成される。有機樹脂としては、たとえば、アクリル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂などの各種樹脂を用いることができ、また光の作用で架橋または分解される感光性樹脂として組成されたものを用いることもできる。この感光性樹脂としては、半導体装置の製造用に用いられているポジ型またはネガ型フォトレジストを用いることができ、これらについてはスピンコート法による塗布技術が確立されているので、被覆膜11の厚さを容易に制御することができる。スピンコート法は、たとえば、以下のように行われる。
まず種基板10がホルダー(図示しない)に吸着される。このホルダーが所定の回転速度で回転することで、種基板10が回転させられる。回転している種基板10上にフォトレジストが滴下された後、所定時間回転が継続されることで、薄く均一にフォトレジストが塗布される。種基板10全面に渡る均一性を確保するためには、たとえば、回転速度は1000回転/分以上10000回転/分以下、時間は10秒以上100秒以下、塗布厚は0.1μm以上とされる。
次に塗布されたフォトレジストが乾燥されることで固化される。乾燥方法は、任意の方法を採用することができる。乾燥温度および時間は、フォトレジストの材料および塗布厚によって適宜選択され得る。好ましくは、乾燥温度は100℃以上400℃以下であり、乾燥時間は5分以上60分以下である。たとえば乾燥温度が120℃の場合、乾燥(揮発)に要する時間は、たとえば、厚さ5μmで15分間、厚さ2μmで8分間、厚さ1μmで3分間である。なお、上記の塗布および乾燥からなる工程を1回行えば被覆膜11を形成することができるが、この工程が繰り返されることで、より厚い被覆膜11が形成されてもよい。このようにして、被覆膜11に覆われている第2の主面10Bを有する種基板10を準備することができる。
台座20は、後述する坩堝60の蓋として構成されており、たとえば炭素材料からなる。台座20はたとえばグラファイトからなる。台座20は、後述する工程(S20)において種基板10の第2の主面10Bと貼り合わせられて、坩堝60の内部に向いて配置される第3の主面20Aと、第3の主面20Aと反対側に位置する第4の主面20Bとを有している。なお、台座20の第3の主面20Aは、図10では凹形状を有しているが、種基板10側に凸となった凸形状であってもよい。
種基板10および台座20は、種基板10のSORI値と台座20のSORI値との和が、室温下でかつ無負荷の状態において70μm以下となるような組み合わせとして準備される。たとえば、SORI値が50μmである種基板10を搭載する台座20として、SORI値が20μm以下の台座20を準備すればよい。好ましくは、種基板10および台座20は、種基板10のSORI値と台座20のSORI値との和が50μm以下となるような組み合わせとして準備され、より好ましくは30μm以下となるような組み合わせで準備される。
ここで、種基板10および台座20は、第2の主面10Bおよび第3の主面20Aの反り形状に依らず、各SORI値の和が上記数値範囲内であればよい。たとえば、種基板10の第2の主面10Bが凹形状である場合、台座20の第3の主面20Aは凸形状または凹形状のいずれであってもよい。また、種基板10の第2の主面10Bが凸形状である場合も、台座20の第3の主面20Aは凸形状または凹形状のいずれであってもよい。種基板10の第2の主面10Bおよび台座20の第3の主面20Aが互いに逆向きの凸形状または凹形状である場合(図11参照)には、室温下でかつ無負荷状態において種基板10と台座20とを貼り合わせたときの第2の主面10Bと第3の主面20Aとの間に生じる空隙Sの高さの最大値(反り量の和)は、種基板10および台座20の各SORI値の和となり、70μm以下となる。一方、種基板10の第2の主面10Bおよび台座20の第3の主面20Aが互いに同じ向きの凸形状または凹形状である場合には、室温下でかつ無負荷状態において種基板10と台座20とを貼り合わせたときの第2の主面10Bと第3の主面20Aとの間に生じる空隙Sの高さの最大値(反り量の和)は、種基板10および台座20の各SORI値の差分となり、70μmよりもさらに小さい値となる。
また、種基板10および台座20において、反り形状が鞍型等の方向性を有している場合には、上記SORI値に加えて反り形状を考慮して空隙Sが狭くなるように種基板10と台座20とを貼り合わせる向きを適宜調整すればよい。
次に、図10および図11を参照して、第1の面としての第2の主面10Bと、第2の面としての第3の主面20Aとが対向するように種基板10を台座20上に固定する(工程(S20))。
具体的には、図10を参照して、まず接着剤30(種結晶固定剤)を介して種基板10の第2の主面10B上に形成されている被覆膜11の第5の主面11Bと台座20の第3の主面20Aとを対向配置させる(工程(S21))。図11を参照して、加熱しながら圧力をかけて両者が互いを押し付け合うように行われる。また上記工程における加圧処理は、任意の方法により処理されればよいが、たとえば種基板10の第1の主面10A上に保護シート50を介して所定の質量の重り51を載せることにより行われる。本工程(S20)において、接着剤30は硬化しておらず、種基板10と台座20とは完全には固定されていない。逆に、接着剤30は、硬化しない程度で加熱されることにより軟化する。これにより、種基板10の第2の主面10Bや台座20の第3の主面20Aに反り等が生じている場合であって、室温下でかつ無負荷の状態における種基板10のSORI値と台座20のSORI値との和が70μm以下である場合に、両面の間に生じる空隙Sが接着剤30により埋め合わされた状態とすることができる。
接着剤30は、たとえば加熱されることによって難黒鉛化炭素となる樹脂と、ダイヤモンド微粒子と、溶媒とを含む。難黒鉛化炭素とは、不活性ガス中で加熱された場合に黒鉛構造が発達することが抑制さるような不規則な構造を有する炭素である。加熱されることによって難黒鉛化炭素となる樹脂としては、たとえば、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、またはフルフリルアルコール樹脂がある。ダイヤモンド微粒子の量は、炭素原子のモル数を基準として、樹脂の量よりも少なくされることが好ましい。ダイヤモンド微粒子の粒径は、たとえば0.1μm以上10μm以下である。また接着剤30は、ダイヤモンド微粒子に加えてさらに黒鉛微粒子を含んでもよい。溶媒としては、上記の樹脂および炭水化物を溶解・分散させることができるものが適宜選択される。またこの溶媒は、単一の種類の液体からなるものに限られず、複数の種類の液体の混合液であってもよい。たとえば、炭水化物を溶解させるアルコールと、樹脂を溶解させるセロソルブアセテートとを含む溶媒が用いられてもよい。接着剤30は、所定の温度(たとえば1000℃以上)で硬化可能に設けられている。
次に、まず、所定の温度領域で第1の熱処理を実施する(工程(S22))。本工程(S22)は、加熱部材としてたとえばホットプレ−ト40を用いて実施される。ホットプレート40から台座20に伝導された熱は、台座20を伝って第3の主面20A上に配置されている接着剤30および種基板10に伝導され、接着剤30および種基板10を加熱する。
本工程(S22)における加熱温度は、接着剤30に含まれる溶媒をある程度揮発させることができる温度であり、たとえば100℃以上400℃以下の所定の温度とする。熱処理の時間は、たとえば所定の温度に到達した後5分以上60分以下である。このようにして、接着剤30を仮硬化させることができる。
ここで、種基板10は上記温度に加熱されるとその内部に蓄えられていた応力を低減させるように種基板10の反りやうねりを低減するように変形する。上述のように、室温における種基板10は、第1の主面10Aにおける中央部と端部との面方位のずれY°を有しているので、内部に応力が蓄えられている。そのため、本工程(S22)において種基板10を加熱することにより、格子振動のエネルギーが高まって、内部応力(残留応力)を低減するように変形する。これにより、種基板10のSORI値も低減する。その結果、種基板10の第2の主面10Bと台座20の第3の主面20Aとの間に生じる空隙Sを低減することができるとともに、当該空隙Sを埋め合わせている接着剤30を仮硬化させることができる。
次に、工程(S22)に連続して、かつより高い温度領域で第2の熱処理を実施する(工程(S23))。具体的には、たとえば1000℃以上、好ましくは2000℃以上の所定の温度に加熱可能とする加熱処理方法により実施される。本工程(S23)は、たとえばランプアニール装置を用いて実施される。またこの加熱は、不活性ガス中で行われることが好ましい。
本工程(S23)により、被覆膜11は炭化されて炭素膜12となる。すなわち種基板10の第1の主面10Aは炭素膜12で覆われた面となる。また、接着剤30は、接着剤30に含まれる溶媒が揮発して硬化されることにより、固定層31となる。これにより図12を参照して、種基板10は固定層31を介して台座20の第3の主面20A上に固定される。
このとき、種基板10の主面(第2の主面10B)の少なくとも90%の領域は、固定層31を介して台座20に固定されている。異なる観点から言えば、種基板10の第2の主面10Bと台座20の第3の主面20Aとの間に固定層31により埋め合わされていない領域(空隙が生じている領域)が部分的に生じていてもよい。具体的には、当該領域は、外径が5mm以下の大きさの略円状であって第2の主面10B内において分散するように配置されていればよい。このとき、第2の主面10Bでの当該領域の数密度は、0.5個/cm以下であるのが好ましい。
次に、固定層31を介して台座20上に固定されている種基板10の第1の主面10A上に単結晶を成長させる(工程(S30))。炭化珪素の種基板10を用いて炭化珪素の単結晶が製造される場合、この成長方法として昇華再結晶法を用いることができる。
すなわち、図13を参照して、まず種基板10が固定されている台座20を原料61が内に収められている坩堝60に取り付ける。具体的には、坩堝60の内部へ種基板10が面するように、坩堝60に台座20が取り付けられる。坩堝60は、たとえば炭素原料を含んで構成されている。坩堝60の内部には原料61が収められている。原料61は、たとえば炭化珪素粉末である。また、坩堝60は、その周囲に配置されている加熱部(図示しない)により後述する所定の温度に加熱可能に設けられている。
次に、原料61を昇華させることで種基板10上に昇華物を堆積させて、単結晶70を成長させることができる。この昇華再結晶法における温度は、たとえば、2100℃以上2500℃以下とされる。またこの昇華再結晶法における圧力は、好ましくは1.3kPa以上大気圧以下とされ、より好ましくは、成長速度を高めるために13kPa以下とされる。以上のようにして、本実施の形態に係る炭化珪素単結晶を得ることができる。
次に、本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法の作用効果について説明する。本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法は、室温におけるSORI値がXμmであり、第1の主面10Aにおける中央部と端部との面方位のずれY°を有しており、かつ、Y≦(0.3/50)Xの関係式を満足する種基板10を用いて実施される。種基板10は、室温において内部応力(残留応力)を蓄えているため、たとえば固定する工程(S20)において種基板10を所定の温度に加熱することにより、当該応力を緩和するように種基板10を変形させることができる。つまり、室温における上記XよりもSORI値を小さく変形し、かつ室温における上記Yよりも面方位のずれを小さく変形した状態で種基板10を台座20に固定することができる。
これにより、成長させる工程(S30)において、種基板10と台座20とが密着性良く固定されている状態で種基板10上に炭化珪素単結晶70を成長させることができるため、結晶性の高いSiC単結晶70を得ることができる。
また、種基板10と台座20との間に空隙Sが生じている場合であっても、接着剤30により当該空隙Sを埋め合わせることができる。この結果、成長させる工程(S30)において、種基板10と台座20とが密着性良く固定されている状態で種基板10上に炭化珪素単結晶70を成長させることができるため、結晶性の高いSiC単結晶70を得ることができる。
準備する工程(S10)において準備される種基板10は、厚みが1mm以上であり、かつ、外径が100mm以上であるが、種基板10の室温におけるSORI値と種基板10の第1の主面10Aにおける中央部と端部との面方位のずれとが上述した関係式を満たすように設けられているため、種基板10と台座20とが密着性良く固定されている状態で種基板10上に炭化珪素単結晶70を成長させることができる。その結果、結晶性の高いSiC単結晶を得ることができる。
本実施の形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法では、準備する工程(S10)において、種基板10の第1の面における中央部と端部との面方位のずれY°を検査する工程を含んでいても良い。たとえば、当該検査はX線回折法により行うことができ、1ロット内の複数の種基板10の中から抜き取り検査として実施しても良い。また、当該検査はX線トポグラフィにより行うこともでき、この場合は種基板10を全数検査してもよい。
このようにすれば、準備する工程(S10)において、室温におけるSORI値がXμmであり、第1の主面10Aにおける中央部と端部との面方位のずれY°を有しており、かつ、Y≦(0.3/50)Xの関係式を満足する種基板10を確実に準備することができる。
面方位のずれY°が上記関係式を満たすことが確認された種基板と台座20とを固定することができるため、種基板と台座20とが密着性良く固定されている状態で種基板上に炭化珪素単結晶を成長させることができる。その結果、結晶性の高いSiC単結晶を得ることができる。
なお、上述のように、X線回折スペクトルのピークシフト量として種基板10の面方位のずれY°を測定することが可能であるが、当該ピークシフトが種基板10の中央部と端部との間における格子面間隔dの差異に起因している場合には、種基板10の反りが必ずしも内部応力を蓄えるような反りであるとは言えず、種基板10を所定の温度に加熱することにより内部応力を緩和するように種基板10を変形させることが困難な場合がある。そのため、上述のように、種基板10をθ回転させたときの回折スペクトルの強度低下の有無を確認することにより、種基板10に生じている反りが格子面10C等の変形(歪み)を伴うものであり、種基板10が内部応力を蓄えていることを確認する工程をさらに備えていてもよい。上述のように、たとえば当該確認する工程は、検査する工程と連続して実施することができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る炭化珪素単結晶の製造方法について説明する。図14を参照して、実施の形態2に係る炭化珪素単結晶の製造方法は、基本的には実施の形態1に係る炭化珪素単結晶の製造方法と同様の構成を備えるが、固定する工程(S20)において接着剤30に替えて固定部材32を用いる点で異なる。
具体的には、固定する工程(S20)において、種基板10の第2の主面10Bと台座20の第3の主面20A上とが対向するように種基板10を台座20上に載置した後、種基板10を台座20とで挟むように種基板10の第1の主面10A側から固定部材32を台座20に取り付ける。
固定部材32はたとえば爪部32aが設けられており、爪部32aは、固定部材32を平面視したときに種基板10の第1の主面10A上に突出している。爪部32aは、図14を参照して一定の間隔を空けて複数箇所に設けられていても良いし、図15を参照して種基板10の全周に渡って設けられていても良い。
実施の形態2に係る炭化珪素単結晶の製造方法では、固定する工程(S20)において種基板10の第2の主面10Bと台座20の第3の主面20Aとの間に空隙Sが生じていても良い。この場合、種基板10は、固定部材32により台座20上に固定されている状態において、任意の加熱処理を受けることにより、種基板10の内部応力を緩和するように種基板10を変形させることができ、実施の形態1に係る炭化珪素単結晶の製造方法と同様の効果を奏することができる。
固定部材32により台座20上に固定されている状態における種基板10に対する加熱処理は、種基板10の第1の主面10A上に炭化珪素単結晶を成長させる前である限りにおいて、任意の工程において実施すればよい。たとえば、炭化珪素単結晶を成長させる工程(S30)において単結晶成長装置の坩堝60内において予備加熱処理として実施してもよい。このようにしても、実施の形態1に係る炭化珪素単結晶の製造方法と同様の効果を奏することができる。
次に、実施の形態1に係る炭化珪素単結晶の製造方法の実施例について説明する。
まず、上述した実施の形態1に係る炭化珪素単結晶の製造方法に従って、3組の種基板10と台座20を準備した。
各種基板10はSiCからなり、外径が100mmであるSiC基板とした。台座20はグラファイトからなるものを準備した。種基板10の第1の主面10Aについての反り量および台座20の第3の主面20Aについての反り量を測定し、当該測定結果を用いて種基板10および台座20のSORI値Xμmを算出した。
さらに、種基板10の第1の主面10Aにおける中央部と端部との面方位のずれを、X線回折法を用いて検査した。具体的には、種基板10の中央部の1箇所と端部の4箇所を検査し、得られた回折スペクトルから中央部のピーク値と端部4箇所のピーク値との差の最大値をピークシフト量Y°として算出した。
試料1および試料2は、関係式Y≦(0.3/50)Xを満足する種基板10とし、試料3は関係式Y>(0.3/50)Xを満足する種基板10とした。表1に試料1〜試料3の種基板10のSORI値Xμmと、面方位のずれY°と、(0.3/50)Xとをそれぞれ示す。また、試料1のX線回折法の評価結果を図16〜図21に示し、試料2のX線回折法の評価結果を図22〜図27に示し、試料3のX線回折法の評価結果を図28〜図33に示す。図17〜図21、図23〜図27、図29〜図33の各図の縦軸はX線回折のスペクトル強度(単位:arbitary unit)であり、横軸は回折角(単位:度)である。
Figure 2015120616
図16〜図21を参照して、試料1の種基板10は、オリエンテーションフラットを下にしたときに、左側端部(図17)が中央部を含む他の4箇所の領域(図18〜図21)と比べて回折角が小さいことが確認された。図22〜図27を参照して、試料2の種基板10は、オリエンテーションフラットを下にしたときに、Y軸に沿った方向に種基板10の上側端部(図27)から中央部(図25)、下側端部(図24)にかけて回折角が大きくなっていることが確認された。図28〜図33を参照して、試料3の種基板10は、オリエンテーションフラットを下にしたときに、中央部(図31)に対し、端部(図29、図32、図33)の回折角が大きくなっていることが確認された。
各種基板10はSORI値が52μm以下であり、試料2は試料1および試料3と比べてSORI値が最も高くXが大きい一方で、Yが小さいため、関係式Y≦(0.3/50)Xを満足している。一方、試料3は、試料2よりもSORI値が小さいが、Yが大きいため、関係式Y≦(0.3/50)Xを満足していない。
試料1の種基板10に対する台座20はSORI値が10μm以下のものとし、試料2の種基板10に対する台座20はSORI値が15μm以下のものとし、試料3の種基板10に対する台座20はSORI値が10μm以下のものとした。
次に、実施の形態1に係る炭化珪素単結晶の製造方法に従って、種基板10と台座20とを接着剤30を介して固定し、当該種基板10上に炭化珪素単結晶70を成長させた。
その結果、試料1および試料2の種基板10上に成長した炭化珪素単結晶は高い結晶性を有していた。一方で、試料3の種基板10上に成長した炭化珪素単結晶は、欠陥を多く含んでいた。これらの欠陥は、種基板10の直上から生じており、結晶成長の初期段階で生じたものであることが確認された。
実施例の結果から、関係式Y≦(0.3/50)Xを満たす種基板10は、当該関係式を満たさない種基板10と比べてより台座20と密着性良く固定されるため、伝熱に大きなムラが生じず、結晶性の高い炭化珪素単結晶を得ることができることが確認された。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態および実施例に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
10 種基板
10A 第1の主面
10B 第2の主面
10C,10D,10E 格子面
11 被覆膜
11B 第5の主面
12 炭素膜
20 台座
20A 第3の主面
20B 第4の主面
30 接着剤
31 固定層
32 固定部材
32a 爪部
40 ホットプレート
50 保護シート
51 重り
60 坩堝
61 原料
70 単結晶

Claims (7)

  1. 第1の面を有する種基板と、第2の面を有する台座とを準備する工程と、
    前記台座の前記第2の面上に前記種基板を固定する工程と、
    前記種基板上に炭化珪素単結晶を成長させる工程とを備え、
    前記準備する工程では、室温におけるSORI値がXμmであり、前記第1の面における中央部と端部との面方位のずれがY°であって、Y≦(0.3/50)Xである前記種基板を準備する、炭化珪素単結晶の製造方法。
  2. 前記固定する工程では、前記種基板を前記台座上に接着剤を介して固定し、
    前記固定する工程の後であって前記成長させる工程の前に、熱処理により前記接着剤を硬化させる工程をさらに備える、請求項1に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  3. 前記準備する工程では、前記固定する工程において前記台座の前記第2の面上に搭載された前記種基板を物理的に固定可能な固定部材をさらに準備する、請求項1に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  4. 前記準備する工程は、前記種基板の前記第1の面における中央部と端部との面方位のずれを検査する工程を含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  5. 前記準備する工程では、前記種基板の室温におけるSORI値と、前記台座の室温における前記第2の面のSORI値との和が70μm以下となるように、前記種基板と前記台座とを準備する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  6. 前記種基板の厚みは1mm以上である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  7. 前記種基板の外径は100mm以上である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
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