JP2015120257A - インクの噴き出しを防止する中綿を用いた筆記具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】軸筒11と、繊維相互間で毛細管現象の発生する細径繊維36と繊維相互間の間隙が該細径繊維36より大きいために毛管力が弱い太径繊維35とで構成され、かつ、前記軸筒11内に収容される中綿33と、前記中綿33に一端を接触させ、他端を前記軸筒11から露出するペン先24とを備えた筆記具において、前記太径繊維35が前記中綿33全体の5〜30%の割合を占めた。
【選択図】図4
Description
このとき、中綿に細い繊維を用いると繊維の相互間に生ずる毛細管現象によってインクを細い繊維の相互間に保持することができた。
しかし、中綿内に、たとえばインク充填時に気泡が入ってしまったり、あるいは、使用中に何らかの原因で空気が侵入してしまったりすると、その細い繊維間の空間を伝って空気が外部に逃げられなくなって滞留し、その後、気圧変化又は温度変化でその滞留した空気が膨張してインクがペン先から噴き出すことがあった。
下記の特許文献2には、巻縮繊維を用いてインクを充填したマーキングペン用の中芯(前記中綿に相当。)において、中心部分の繊維の太さを1.5〜4デニール(繊維の太さを表す単位で、繊維9,000mの重量(g)で表される。)、周辺部分の繊維の太さを前記中心部分の1.5〜3倍で構成し、かつ前記中心部分の占有断面積が先芯の基部(前記ペン先が前記中綿に接触する部分に相当。)の断面積より小さくないことを特徴とした中芯が開示されている。
またこのように、筆記に必要とするインクは毛細管現象による保持力が大きい前記中心部分の繊維が保持したインクを用いているので、筆記時にインクがボタ落ちすることがない、としている。
そこで本発明は上記問題点に鑑み、中綿内に空気の逃げ道を形成することにより、中綿内に滞留した空気の膨張に起因するインク噴き出しやボタ落ち問題を解決できる筆記具を提供することを課題とする。
前記太径繊維35が前記中綿33全体の5〜30%の割合を占めることを特徴とする。
ここで、前記「太径繊維35」とは、前記「細径繊維36」よりも断面積が大きい繊維、具体的にはデニールで表される数値の大きい繊維のことをいう。
なお、前記細径繊維36は、繊維相互の間の間隙が狭いため毛細管現象が発生し、前記細径繊維36の相互間にインクを保持することが可能なものである。一方、前記太径繊維35の相互間は間隙が大きいため、前記細径繊維36の相互間と比較して毛管力が弱くなっている。そのため、インクはより毛管力の強い前記細径繊維36の相互間に吸引されるので、前記太径繊維35の相互間はインクを保持することはなく、空気の逃げ道を形成することになる。
また、前記太径繊維35は、前記中綿33全体の30%以下の割合を占めることともしている。前記太径繊維35が前記中綿33の割合のうち30%を超えると、インクを保持できる前記細径繊維36の割合が少なくなり、前記太径繊維35の間は間隙が大きいためにインクが保持できないので、前記中綿33内のインク保持量が低下してしまうためである。
ここで、毛管力が弱い部分は、前記太径繊維35の相互間に形成されるので、前記細径繊維36と前記太径繊維35とを混在させてしまうと毛管力の弱い領域を充分に確保することができない。したがって、充分な広さを有し、かつ毛管力の弱い領域を形成するためには前記中綿33内で前記太径繊維35を偏在させることが望ましい。
以下、本発明の作用により、どのように課題を解決するのかを説明する。
前記中綿33にインクを充填すると、前記太径繊維35の間は間隙が大きいためインクを保持することなく、前記中綿33内に滞留した空気を逃がす空間である空気通路34となり、前記細径繊維36の相互間がインクを保持することとなる。前記空気通路34が形成されれば仮に前記細径繊維36内に空気が入ったとしても、空気は前記空気通路34へ向かうために、前記中綿33内に空気が溜まることはない。
また、前記中綿の繊維の一部に前記太径繊維を用いるだけなので、通常の製造工程と大きな変化もなく生産することができる。
本実施形態に係る筆記具10は、図1に示すように、軸筒11の両端に2つのキャップ21が装着された外観を呈している。なお、以下の説明では、両端に各々設けられているペン先24のうち、太ペン先25が設けられている方を先端側とし、一方、細ペン先26が設けられているほうを後端側とする。
これらの前記キャップ21を取り外すと、図2に示すように、前記軸筒11の両端からは筆記用の各々前記ペン先24が露出する。
前記軸筒11は、筒状を呈する中央部12と、前記中央部12の後端側に一体形成されている細ペン先収容部13と、前記中央部12の先端側の開口部分に嵌め込んで連結する太ペン先収容部14とを有する。
また、前記中綿33の繊維は長手方向に延びていて、細径繊維36と太径繊維35とを備える。なお、前記太径繊維35は、前記細径繊維36よりも断面積が大きい繊維のことである。そして、前記細径繊維36と前記太径繊維35とは、巻きフィルム37によって包まれる。このとき、前記太径繊維35は、前記中綿33の一方側にまとめて配置される。
また、前記中綿33に充填したインクは、毛細管現象により前記細径繊維36の相互間に保持される。一方、前記太径繊維35の相互間は間隙が大きいため、前記細径繊維36の相互間と比較して毛管力が弱くなっている。そのため、インクはより毛管力の強い前記細径繊維36の相互間に吸引されるので、前記太径繊維35の相互間はインクを保持することはなく、これが空気通路34となっている(図4参照)。
(詳細な構成)
図2に示す前記中央部12と、前記細ペン先収容部13と、前記太ペン先収容部14と、前記キャップ21とは、ポリプロピレンの射出成形にて形成される。
前記細ペン先収容部13には、先端側に前記中央部12と一体形成されている細ペン先収容部大径部分18があり、後端側に細ペン先収容部小径部分20があり、前記細ペン先収容部大径部分18と前記細ペン先収容部小径部分20とを挟んで細ペン先収容部中径部分19がある。また、前記細ペン先収容部大径部分18の外周面は、細キャップ23と嵌合する面となっている。
図3に示すように、前記細ペン先26は、先端側で前記細径繊維36と接触する細中継芯32と、前記細ペン先収容部13から後端側へ露出する細先芯29とを有する。前記細先芯29は、後端方向に先細りに形成されている。
図3に示す前記太ペン先25及び細ペン先26は繊維束を固めたもので形成されている。
前記中綿33の断面は、図4(A)に示すように、比較的大きな領域を占める細径繊維領域39と、一側に偏在する太径繊維領域38とを有する。前記細径繊維領域39は、デニールの値の比較的小さい繊維を複数本纏めた束を、さらに複数束纏めたものであり、その繊維間の間隙は図4(B)に示すように比較的狭く、ここにインクを保持する毛細管力が発生することとなっている。一方、前記太径繊維領域38は、デニールの値の比較的大きい繊維を複数本纏めたものであり、その繊維間の間隙は図4(C)に示すように比較的広く、この部分にはインクを保持できるほどの毛細管力は発生せず、前記空気通路34となっている。
前記太径繊維領域38の占有範囲は、前記中綿33の断面全体の5〜30%程度の割合を占めることが望ましい。
また前記細径繊維36の太さは、5デニール未満であり、望ましくは3デニール程度である。
前記太径繊維35の太さは、前記細径繊維36の太さの1.5倍〜8倍であることが望ましい。また、前記太径繊維35の太さは、5デニール以上、できれば10デニール以上とすることが望ましく、15デニール以上とするとさらに作用効果に優れるものとなる。
前記中綿33にインクを充填すると、前記太径繊維35の間は間隙が大きいためインクを保持することなく、前記細径繊維36の相互間がインクを保持することとなる。そのため、前記太径繊維35の間に、前記中綿33内の空気を逃がす空間である前記空気通路34が形成される。
(効果)
前記ペン先24の一端を前記細径繊維36に接触させると、前記細径繊維36内のインクは、毛細管現象によって前記ペン先24の他端に浸透する。そして、前記ペン先24の他端に浸透したインクが紙面に伝わり筆記が可能となる。
また、前記中綿33に前記太径繊維35を混ぜるといっても、そのほとんどの割合を前記細径繊維36が占めている。そのためインクの充填量をさほど減少させずに済んでいる。
また、本実施の形態に係る筆記具10は両端にペン先のあるマーカーペンとであるが、これに限定されず、中綿33にインクを浸漬させて保持するタイプのサインペンやボールペン等としても実現可能である。
1.筆記具を0℃で6時間放置。
2.その後、6時間かけて徐々に40℃まで温度を上昇させる。
3.40℃に達したら、そのまま6時間放置。
4.その後、6時間かけて徐々に0℃まで温度を下降させる。
A:インク漏れ、移動が全く認められなかった。
B:インクの移動は認められるが、漏れはなかった。
C:インク漏れが発生した。
実験結果は下記表1の通りである。
上記の結果、実施例1〜7まではインク漏れは発生しなかった。
一方、比較例1の場合は、太径繊維の繊維が太すぎて、筒状に収束できなかった。
また、実施例1〜6と比較例2及び3との違いは中綿全体に対する太径繊維の占有率のみである。
比較例2の場合は、太径繊維の占有率が低すぎて、中綿内の空気の逃げ道となる空気通路を形成することができずにインク漏れが発生した。
比較例3の場合は、太径繊維の占有率が高すぎたため、細径繊維の部分が少なくなりすぎて、インクを貯留しきれずにインク噴き出しが発生した。
以上の結果を総合すると、中綿全体に対する太径繊維の占有率は5〜30%程度が好ましく、太径繊維の太さは細径繊維の1.5〜8倍程度が好ましいことが判明した。
12 中央部 13 細ペン先収容部
14 太ペン先収容部 15 太ペン先収容部大径部分
16 太ペン先収容部小径部分 17 太ペン先収容部連結部分
18 細ペン先収容部大径部分 19 細ペン先収容部中径部分
20 細ペン先収容部小径部分 21 キャップ
22 太キャップ 23 細キャップ
24 ペン先 25 太ペン先
26 細ペン先 27 先芯
28 太先芯 29 細先芯
30 中継芯 31 太中継芯
32 細中継芯 33 中綿
34 空気通路 35 太径繊維
36 細径繊維 37 巻きフィルム
38 太径繊維領域 39 細径繊維領域
Claims (5)
- 軸筒と、
細径繊維と該細径繊維と比べ繊維相互の間の間隙が大きい太径繊維とで構成され、かつ、前記軸筒内に収容される中綿と、
前記中綿に一端を接触させ、他端を前記軸筒から露出するペン先と
を備えた筆記具において、
前記太径繊維が前記中綿全体の5〜30%の割合を占めることを特徴とする筆記具。 - 前記太径繊維の太さは、前記細径繊維の太さの1.5〜8倍であることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
- 前記太径繊維の太さは、前記細径繊維の太さの3〜5倍であることを特徴とする請求項2記載の筆記具。
- 前記太径繊維の太さは、5デニール以上であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の筆記具。
- 前記中綿を構成する前記太径繊維の太さは、10デニール以上であることを特徴とする請求項4記載の筆記具。
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