JP2015120244A - 立体造形物及び熱変色性固形筆記体からなるセット - Google Patents

立体造形物及び熱変色性固形筆記体からなるセット Download PDF

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尚嗣 中村
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Abstract

【課題】 立体造形物への着色が容易であり、筆跡の定着性や筆跡濃度が高く、所望箇所からはみ出した場合でも素早く確実に消色できる立体造形物及び熱変色性固形筆記体からなるセットを提供する。【解決手段】 熱変色性固形筆記体11と該熱変色性固形筆記体11により表面を着色される立体造形物100とのセット。立体造形物100の表面の粗さを特定の範囲とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、立体造形物及び熱変色性固形筆記体からなるセットに関する。
特許文献1には、塗り絵の細部への着色が容易であり、筆跡の消去時に消しカスを出したり、像を剥離することなく、所望箇所を加熱することで素早く消色可能なインキを含有した筆記具と塗り絵とのセットが開示されている。
しかしながら、特許文献1の熱変色性筆記具を用いて着色する場合には、インキなどの液状物を用いているために、着色するインキと被筆記体との組み合わせによっては乾燥に時間を要したり、着色後すぐに重ね塗りができない等の問題点があった。また、被筆記体が立体造形物などの曲面をもつ表面が不安定のものに着色する場合、使用する筆記体の形状によっては滑りやすくなり、所望箇所への着色ができずにはみ出してしまう可能性が増えてしまい使用が困難な場合があった。
一方、特許文献2には、筆記具と被筆記体との組み合わせとして、被筆記体への簡便な筆記が可能であり、且つ容易に筆跡を消去可能な固形筆記体と被筆記体とのセットが開示されている。
しかしながら、特許文献2では、固形筆記体により被筆記体への筆記が円滑にでき、更に容易な筆跡の消去を可能にすることを目的としており、被筆記体の表面粗さを特定の範囲に特定することを特徴としている。これは被筆記体の表面を平坦なものに限定することで、筆跡に消去具を用いて消去する際に、被筆記体に対する固形筆記体による筆跡の定着性を低くして筆跡を直接擦って削り取ることを可能とする為であるが、固形筆記体と被筆記体の組み合わせによっては固形筆記体の付着量が少なくなり筆跡濃度が低下する問題があった。このため、定着性が低いために筆跡は剥がれやすく、筆跡の擦過性に課題があった。また、筆跡濃度が低いために装飾性を重視した立体造形物などへの使用には不向きであった。
一方、特許文献3〜5には、筆跡を消色や変色できる固形筆記体として、常温域など一定の温度域において、変色前後の状態を互変的に記憶保持できる可逆熱変色性組成物を用いた固形筆記体が開示されている。前記固形筆記体はその筆跡が、摩擦部材での擦過により生じる摩擦熱によって消色することが可能となる。しかしながら前記固形筆記体と特定の表面粗さを有する被筆記体との特段の効果に関する開示も示唆もないものであった。
特開2008−76787号公報 特開平4−279684号公報 実開平7−6248号公報 特開2008−291048号公報 特開2009−166310号公報
近藤保、小石真純共著、「マイクロカプセル−その製法・性質・応用−」三共出版(株)、1977年
本発明は上記問題を鑑み、立体造形物の着色に、消色や変色が可能な熱変色性組成物を用いた熱変色性固形筆記体を使用することで、立体造形物の表面に着色された筆跡が高い定着性を持つことで筆跡が剥がれ難く、視認性の高い筆跡濃度が得られ、所望箇所に着色できずにはみ出した場合でも温度変化により筆跡を容易に修正することが可能な立体造形物及び熱変色性固形筆記体からなるセットを提供することである。
本発明は、熱変色性固形筆記体と該熱変色性固形筆記体により表面を着色される立体造形物とのセットであって、前記立体造形物の表面粗さを規定することにより、上記問題が解決され、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
「1.熱変色性固形筆記体と該熱変色性固形筆記体により表面を着色される立体造形物とのセットであって、表面の算術平均粗さが4μm以上27μm以下である前記立体造形物と前記熱変色性固形筆記体との組み合わせを特徴とした立体造形物及び熱変色性固形筆記体からなるセット。
2.前記熱変色性固形筆記体を、少なくとも(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と賦形材とを含む固形芯により筆跡を消色又は変色可能な熱変色性固形筆記体とした1項に記載の立体造形物及び熱変色性固形筆記体からなるセット」に関する。
本発明における立体造形物は、一例として、金属や樹脂で成型した玩具や模型、コップや茶碗などガラスや陶器で成形した生活用品、あるいは紙を折り曲げたり貼り合せて形成したペーパークラフトなどが挙げられる。
また、本発明による筆跡とは、筆記体から被筆記体の表面に移動した固形物に含まれた色成分により視認可能に表示されるものであり、描画や着色なども含むものとする。
本発明によれば、熱変色性固形筆記体を用いて立体造形物の表面へ着色した筆跡の定着性が高いことで筆跡が剥がれ難く、また筆跡濃度が高いことで立体造形物の装飾性が向上し、更に、温度変化により立体造形物の表面の筆跡を容易に修正することなどが可能な立体造形物及び熱変色性固形筆記体からなるセットを提供することなどが可能となった。
本発明の立体造形物に熱変色性固形筆記体で着色している図である。 本発明の立体造形物に熱変色性固形筆記体で着色した筆跡を摩擦部材により修正している図である。 算術平均粗さを計測する為の粗さ曲線を示した図である。 最大高さ(Rmax)を計測する為の粗さ曲線を示した図である。 十点平均粗さを計測する為の粗さ曲線を示した図である。 本発明の熱変色性固形筆記体を示す縦断面図である。 図6における斜視外観図である。 本発明の熱変色性固形筆記体の後端に摩擦部材を装着した場合の縦断面図である。 図8における斜視外観図である。 摩擦部材の装着前の状態を示す縦断面図である。 筆跡の変色挙動示す説明図である。
本発明は、熱変色性固形筆記体により着色する立体造形物において、立体造形物の表面粗さを規定することを一つの特徴とし、図1に示すように立体造形物100の表面に熱変色性固形筆記体11を用いて着色し、装飾を施すことを可能とすると共に、図2に示すように所望箇所に着色できずにはみ出した場合でも摩擦部材16で筆跡を擦ることによる摩擦熱などの温度変化により筆跡を容易に修正することが可能な立体造形物及び熱変色性固形筆記体からなるセットを提供するものである。
本発明による立体造形物の形状は特に規定されるものではないが、本発明の効果を発現させるためには本発明の熱変色性固形筆記体に対し、立体造形物の表面を算術平均粗さが
4μm以上27μm以下、好ましくは4μm以上15μm以下、より好ましくは4μm以上11μm以下にすることが好ましい。
また、立体造形物を構成する材料としては、前記表面粗さの範囲であれば特に限定されず、紙、不織布、樹脂、金属、ガラス、セラミックスなどが挙げられるが、特に紙、不織布、樹脂などが成型性や表面の加工性の観点から好ましい。
本発明の立体造形物を前記材料で製造し、熱変色性固形筆記体により表面を着色した場合、立体造形物の表面の算術平均粗さが4μmより小さくなると、筆記性には特に異常はでないが、表面の凹凸が小さいために着色時の熱変色性固形筆記体の摩耗量が少なく、着色剤の付着量が減り、筆跡濃度が低くなることで視認性が低下する。また、筆跡の定着性も低いため、摩擦部材で筆跡を摩擦した際に剥がれ易くなる。
尚、立体造形物の表面の算術平均粗さが4μm以上になると、その表面の適度な凹凸により、立体造形物の表面に付着した着色剤がしっかりと表面の凹凸に絡みつくことで定着性が増し、摩擦部材で摩擦した際に筆跡が剥がれ難くなる。同時に、立体造形物表面に付着する着色剤の増加により筆跡濃度が向上し、視認性が高くなる。以上により、算術平均粗さは4μm以上が好ましい。
一方、算術平均粗さは27μmより大きくなると表面の凹凸の影響により筆記時の摩擦力が増大し筆感が重くなる。また、筆記性が低下するため、狙った通りに熱変色性固形筆記体を操作できなくなる。これにより所望箇所への着色が困難になるため、算術平均粗さは27μm以下であることが望ましい。
また、表面粗さが大きくなると表面の凹に着色剤が入り込み易いため、筆跡の定着性はある程度確保できるが、表面の凸部に付着する着色剤の量が減るため筆跡濃度が下がる傾向があり、筆跡濃度が良好な視認性を有するには算術平均粗さが15μm以下であることが好ましい。
尚、算術平均粗さが11μm以下になると、凹凸の影響を感じずに滑らかな筆感での着色が可能になる。以上の理由により、立体造形物の表面を算術平均粗さが4μm以上27μm以下、好ましくは4μm以上15μm以下、より好ましくは4μm以上11μm以下にすることが好ましい。
本発明における被筆記体の表面粗さの測定は、表面粗さ測定機(株式会社小坂研究所 SE−3400)を使用して測定し、算出された数値である。
また、前記算術平均粗さは表面粗さの高さを表す指標の一つであり、測定範囲にある大きな傷が測定値に及ぼす影響が非常に小さくなり、安定した結果が得られる指標である。算出方法としては粗さ測定機などで計測した図3に示す粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さ(L)だけを抜き取り、この抜取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x) で表したときに、次の式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
Figure 2015120244
一方、立体造形物の表面粗さの高さを表す第2の指標としては、表面粗さの最大値である最大高さ(Rmax)が挙げられる。
前記最大高さ(Rmax)を測定する方法としては、算術平均粗さ同様に粗さ測定機で計測した図4に示す断面曲線から基準長さだけ抜き取った部分(以下,抜き取り部分という)の平均線に平行な2直線で抜き取り部分をはさんだとき,この2直線の間隔を断面曲線の縦倍率の方向に計測して,その値をマイクロメートル単位(μm)で表したものを抜き取り部分の最大高さ(Rmax)とする。
また、立体造形物の表面粗さの高さを表す第3の指標としては十点平均粗さも挙げられる。
前記十点平均粗さを測定する方法としては、算術平均粗さ同様に表面粗さ測定機などで計測した図5に示す粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高(Yp)の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高(Yv)の絶対値の平均値との和を求め、この値をマイクロメートル(μm)で表したものである。
Figure 2015120244
Yp1,Yp2,Yp3,Yp4,Yp5は基準長さ(L)に対する抜き取り部分の最も高い山頂から5番目までの山頂の標高を計測した値。
Yv1,Yv2,Yv3,Yv4,Yv5は基準長さ(L)に対する抜き取り部分の最も低い山頂から5番目までの山頂の標高を計測した値である。
また、前記した表面粗さを表す2つの指標として挙げた粗さの最大高さ(Rmax)と十点平均粗さは、算術平均粗さと同様に凹凸の高さを表すものであり、算術平均粗さに置き換えて立体造形物の表面粗さを規定することが可能である。
立体造形物の粗さを最大高さ(Rmax)を用いて規定する場合、その数値は35μm以上120μm以下、好ましくは35μm以上64μm以下、より好ましくは35μm以上58μm以下になることが好ましい範囲となる。
一方、立体造形物の表面の十点平均粗さを使用する場合、十点平均粗さは26μm以上108μm以下、好ましくは26μm以上59μm以下、より好ましくは28μm以上51μm以下になることが好ましい範囲となる。
尚、表面粗さを規定する指標としては、前記したように、安定した測定結果が得られる平均算術粗さを指標として使うことが好ましいが、第2の指標である最大高さ(Rmax)は、うねり成分を含めた粗さの最大高さを表しているため、立体造形物の表面のうねりが大きい場合などは、最大高さ(Rmax)を併用することで、立体造形物として熱変色性固形筆記体を使用できる範囲であるかを正確に特定することが可能となる。
また、最大高さ(Rmax)は大きな傷が測定面にあると、数値に影響を受けやすいので、10箇所の測定点を用いて粗さの最大高さの平均を計測する十点平均粗さを更に併用することで、より柔軟な評価が可能となる。
本発明による熱変色性固形筆記体の構成の一例について、図6および図7を用いて説明する。図6および図7に示す熱変色性固形筆記体1は、木材からなる丸形の木軸2(外軸)内に、固形芯3を有する構成である。
本発明による熱変色性固形筆記体は、前記外軸の後端に空間部を設けることで固形芯に光が当たり難くなり耐光性を向上できる。また、外軸後方に摩擦部材を具備することで、さらに耐光性を向上することが出来る。このため、本発明による熱変色性固形筆記体は、前記外軸の後端に摩擦部材を具備した構成とすることが好ましい。また、固形芯と外軸との間に中間層を設けることで、木軸及び固形芯の温度や湿度による体積変化を吸収することができるため好ましい。
前記外軸の後端に摩擦部材を具備した構成の一例について、図8および図9を用いて説明する。図8及び図9に示す熱変色性固形筆記体11は、木材からなる丸形の木軸12(外軸)内に、固形芯13と、該固形芯13と木軸12間に中間層14を配してある。また、固形芯13の後端13bが、木軸12の後端12bよりも長手方向で前方に位置している。さらに、木軸12の後端部には、連結部材15を介してSEBS樹脂からなる摩擦部材16を付設してある。
また、本発明の熱変色性固形筆記体の固形芯径、中間層及び木軸の厚さは、特に限定されるものではないが、固形芯径は線幅などを考慮し、2〜5mmが好ましく、2.5〜3.5mmがより好ましい。また、中間層は、用いる材質によっても異なるが、厚くすることで移動する熱を抑制効果が高めるため好ましい反面、厚すぎると、成形性や筆跡への影響も出やすくなるため、0.1〜1.0mmが好ましく、0.3〜0.7mmがより好ましい。さらに、木軸は、熱変色性固形筆記体の外径と、固形芯径、中間層の肉厚によって決定されるが、木軸外径は、15mmを超えると、径が太く、幼児など、手の小さい使用者が把持し難く、また、ケースなどに収納し難くなり、木軸外径が5mmより小さいと、強度が低下するため、木軸外径は5mm〜15mmとすることが好ましく、厚さは削り性を考慮して、1mm〜5mmとすることが好ましく、2mm〜4mmがより好ましい。
尚、本発明では便宜上、木軸内に固形芯を1種、保持してなる熱変色性固形筆記体を例示しているが、例えば、色の異なる固形芯を2種、直列的に配し、2色鉛筆のような両頭式とすることもできる。
本発明の熱変色性固形筆記体の固形芯は、第1の発色状態と第2の発色状態を互変的に呈することができる。本発明で言う、第1の発色状態と第2の発色状態を互変的に呈するとは、有色(1)と有色(2)の二つの発色した状態、発色状態と消色状態または消色状態と発色状態を互変的に呈することを意味する。即ち、第1の発色状態から温度が上昇して第2の発色状態へ変化する場合、有色(1)から有色(2)への変化、発色状態から消色状態への変化、即ち、加熱消色型の変化を含んでいる。
本発明の熱変色性固形筆記体の着色剤として、有色から有色へと変化する熱変色性組成物を使用することで、立体造形物への着色した筆跡が、温度変化により変化することで高い装飾性を得ることができ、例えば野外に設置するオブジェなどへの着色に使用することで、自然環境の温度変化により色が変わる演出等が可能になる。
本発明の熱変色性固形筆記体で筆記した際の筆跡の変色挙動について、加熱消色型を例に、図11と共に説明する。図11において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t4(以下、完全消色温度と言うことがある)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t3(以下、消色開始温度と言うことがある)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t2(以下、発色開始温度と言うことがある)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t1(以下、完全発色温度ということがある)における濃度を示す点である。変色温度域は前記t1とt4間の温度域であり、発色状態と消色状態の両状態が共存でき、t2とt3の間の温度域において完全発色状態と完全消色状態を選択的に呈することができる温度域となる。また、線分EFの長さが変色の割合を示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ΔHと言うことがある)である。本発明において、このΔH値を有することで、一定の温度域で第1の発色状態と第2の発色状態が選択的に保持されるヒステリシス特性を示すこととなる。
本発明の熱変色性固形筆記体の筆記可能な固形芯に用いるマイクロカプセル顔料に内包する(イ)成分としては、通常、感熱紙などの感熱材料に用いられる、所謂ロイコ染料を用いることができる。具体的には、ジフェニルメタンフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類などが挙げられる。
更には、蛍光性の黄色乃至赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
本発明の固形芯に用いるマイクロカプセル顔料に内包する(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群などがある。活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂などが挙げられる。また、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩を用いることもできる。
また、前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物なども用いることができる。
さらに、電子受容性化合物として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物(特開平11−129623号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステル(特開2001−105732号公報)、没食子酸エステル(特開2003−253149号公報)等を用いた加熱発色型の可逆熱変色性組成物を適用することもできる
前記固形芯に用いるマイクロカプセル顔料に内包する前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分としては、具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリンなどを用いることができる。
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10〜16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17〜23の脂肪酸エステル化合物を用いてもよい。
また、固形芯に用いるマイクロカプセル顔料に内包する(イ)、(ロ)、(ハ)の3成分の配合比としては、濃度、変色温度変色形態や各成分の種類により決まるが、一般的に所望の特性が得られる配合比は、質量比で、(イ)成分:(ロ)成分:(ハ)成分=1:0.1〜50:1〜800であり、好ましくは、(イ)成分:(ロ)成分:(ハ)成分=1:0.5〜20:5〜200である。これらの各成分は、各々二種類以上を混合して用いてもよい。
固形芯に用いるマイクロカプセル顔料には、その機能に影響を及ぼさない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、溶解助剤、防腐・防黴剤などの各種添加剤を添加することができる。
本発明に用いるマイクロカプセル顔料は、内包物と壁膜の質量比が、内包物:壁膜=1:1〜7:1であることが好ましい。この範囲より内包物の比率が大きくなると、壁膜の厚みが薄くなり、圧力や熱に対して弱くなりマイクロカプセルが破壊される傾向があり、この範囲より小さいと、発色状態での濃度や視認性が低下する傾向がある。より好ましくは、内包物:壁膜=1:1〜6:1であり、この範囲にあると、発色状態での濃度や視認性が高く、マイクロカプセルが破壊されることがない。
固形芯に用いるマイクロカプセル顔料の大きさは、特に限定されないが平均粒子径が0.1〜50μmであることが好ましい。この範囲より小さいと、発色濃度が低くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと熱変色性固形筆記体の筆記可能な固形芯に用いる際に、分散安定性や加工性が劣る傾向が見られる。より好ましくは、0.3〜30μmである。この範囲にあると、発色状態も良好で、分散安定性や加工性がよくなる。
本発明でいうマイクロカプセル顔料の平均粒子径とは、粒子径を測定したときの体積基準で表わしたD50の値で表される。測定の一例としては、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置((株)堀場製作所製;LA−300)を用いて測定してその数値を基に平均粒子径(メジアン径)を算出した値を用いる。
また、固形芯に用いるマイクロカプセル顔料の配合割合としては、前記熱変色性固形筆記体の筆記可能な固形芯全質量に対し、1〜70質量%が好ましい。この範囲より小さいと発色濃度が低くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと熱変色性固形筆記体の筆記可能な固形芯の強度が低下する傾向が見られる。好ましくは、5〜50質量%、さらに好ましくは、10〜40質量%であり、この範囲にあると、熱変色性固形筆記体の強度と筆跡濃度を両立することができる。
前記マイクロカプセル顔料は、製造方法としては、例えば、非特許文献1(近藤保、小石真純共著、「マイクロカプセル−その製法・性質・応用−」三共出版(株)、1977年)に記載されているような一般的に知られている方法を用いることができる。具体的には、コアセルベート法、界面重合法、界面重縮合法、in−situ重合法、液中乾燥法、液中硬化法、懸濁重合法、乳化重合法、気中懸濁被覆法、スプレードライ法などが挙げられ、適宜選択される。
また、固形芯は、例えば、前記したマイクロカプセル顔料を賦形材中に分散して固めることで、固形芯とすることができる。用いる賦形材としては、例えばワックス、ゲル化剤、粘土などを用いることが出来る。ワックスとしては、従来公知のものであればいずれを用いてもよく、具体的にはカルナバワックス、木ろう、蜜ろう、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、キャンデリラワックス、ショ糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、ポリオレフィンワックス、スチレン変性ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどが挙げられる。ゲル化剤としては従来公知のものを用いることができ、例えば12ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール類、トリベンジリデンソルビトール類、アミノ酸系油、高級脂肪酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、モンモリロナイトなどが挙げられる。賦形材としては、ポリオレフィンワックス、ショ糖脂肪酸エステルまたはデキストリン脂肪酸エステルの少なくとも一種を含有していることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、αオレフィン重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のワックスなどが挙げられる。
特に、前記ポリオレフィンワックスの軟化点が100℃〜130℃の範囲にあるとともに、針入度が10以下であるものは、筆記感が高いために、好ましく用いられる。針入度が10を越えると、熱変色性固形筆記体の固形芯が柔らかすぎて筆記し難くなる傾向が見られ、しかも、擦過消去時に筆跡が紙面上で伸びてしまう(ワックスが薄層化される)ために筆記面の空白部分を汚染したり、他の紙への色移りや汚れを生じる。
尚、前記ポリオレフィンワックスの軟化点、針入度の測定方法は、JIS K2207に規格化されており、針入度の値は、0.1mmを針入度1と表す。従って、数字が小さいほど硬く、大きいほど柔らかい熱変色性固形筆記体の固形芯である。
具体的には、ネオワックスシリーズ(ヤスハラケミカル(株)製 ポリエチレン)、サンワックスシリーズ(三洋化成工業(株)製 ポリエチレン)、ハイワックスシリーズ(三井化学(株)製 ポリオレフィン)、A−Cポリエチレン(Honeywell社製 ポリエチレン)等が挙げられる。
前記した固形芯の賦形材として、ショ糖脂肪酸エステルまたはデキストリン脂肪酸エステルの少なくとも一種を含有していると、筆跡濃度の向上を図ることが出来るため好ましく用いられる。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、特にC12〜C22の脂肪酸を構成脂肪酸とするエステルが好ましく、より好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸が有用である。具体的には、三菱化学フーズ(株)製:リョートーシュガーエステルシリーズ、第一工業製薬(株)製:シュガーワックスシリーズ等が挙げられる。
また、デキストリン脂肪酸エステルとしては、特にC14〜C18の脂肪酸を構成脂肪酸とするエステルが好適であり、より好ましくは、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸が有用である。具体的には、千葉製粉(株)製:レオパールシリーズ等が挙げられる。
さらにまた、賦形材の配合割合としては、筆記可能な固形芯全質量に対し0.2〜70質量%、が好ましい。この範囲より小さいと熱変色性固形筆記体の筆記可能な固形芯としての形状を得られ難くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと十分な筆記濃度が得られ難くなる傾向が見られる。好ましくは、0.5〜40質量%であり、この範囲にあると、熱変色性固形筆記体の筆記可能な固形芯の形状と筆跡濃度を両立することができる。
本発明の固形芯には、必要に応じて、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、樹脂、フィラー、粘度調整剤、防かび剤、防腐剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、吸熱剤、香料などが挙げられる。前記樹脂としては、熱変色性固形筆記体の筆記可能な固形芯の強度などを向上する目的で配合されるが、天然樹脂、合成樹脂を用いることができる。具体的には、オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ピロリドン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、アミド系樹脂、塩基性基含有樹脂などが挙げられる。前記フィラーとしては、例えばタルク、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、窒化硼素、チタン酸カリウム、ガラスフレークなどが挙げられ、特にマイクロカプセル顔料に対する変色性能への影響などや成形性の点からタルク、炭酸カルシウムが好ましい。フィラーは、本発明の熱変色性固形筆記体の筆記可能な固形芯の強度の向上や書き味を調整する目的で配合される。また、フィラーの配合割合としては、筆記可能な固形芯全質量に対し、20〜60質量%が好ましい。この範囲より小さいと筆記可能な固形芯の強度が低下する傾向がみられ、60質量%より大きいと、発色性が低下したり、書き味が劣る傾向がみられる。
本発明の熱変色性固形筆記体は、第1の発色状態と第2の発色状態が、有色(1)と有色(2)の変化をする場合、固形芯に染料や顔料などの非熱変色性の着色剤を配合することで達成できる。
また、温度変化にともなう固形芯の膨張・収縮に伴う体積変化及び木軸の体積変化に対応するため、木軸と固形芯間に中間層を設け、前記した木軸及び固形芯の体積変化を吸収することが好ましい。
前記した中間層には、ポリビニルアルコール、スチレン樹脂、スチレン・アクリル樹脂や、固体状態である時に弾性を有する、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、塩ビ系エラストマー、フッ素系エラストマーなどのエラストマー類、天然ゴム、シリコンゴムなどの合成ゴム類、アイオノマー樹脂などの弾性体樹脂が挙げられる。この中でも温度変化にともなう固形芯の膨張・収縮に伴う体積変化の際にも好適に変形して追従し、固形芯との親和性、成形性にも優れ、強度の高い熱変色性固形筆記体を得るため、固体状態である時に弾性を有する弾性体樹脂を含有することが好ましく、中でも不飽和結合を有するモノマーを付加重合させたことにより得られる重合体が好ましい。
本発明の立体造形物に熱変色性固形筆記体で着色を行う際、前記中間層を設けることで、中間層の適度な弾性により、立体造形物が微少に波打ってる様な不安定な表面をしていても中間層が揺らぎを吸収して筆感が向上する。
また、本発明の熱変色性固形筆記体により着色された筆跡は、擦過や加熱具又は冷熱具の適用により変色させることができる。
前記加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤー等、前記冷熱具としては、ペルチエ素子を利用した冷熱変色具、冷水、氷片などの冷媒を充填した冷熱変色具や保冷剤、冷蔵庫や冷凍庫の適用などが挙げられるが、好ましくは、簡便な方法により変色可能な手段として摩擦部材が用いられる。
前記摩擦部材は、弾性感に富み、摩擦時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好ましく用いられる。また、前記摩擦部材は、例えば、筆記用紙(JIS P 3201)に熱変色性固形筆記体の固形芯(外径φ3.0mm×全長60mm)終了まで筆跡が重ならないように筆記し、外径φ7mm×全長14mmの摩擦部材を用いて前記筆跡を熱変色(例えば、消色の場合、目視にて変色前の筆跡を確認できない状態)した際、前記摩擦部材の体積減少率が10%未満、好ましくは5%未満となる材質とすることが摩擦による熱の発生効率等を考慮すると好ましい。前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体)、ポリエステル系樹脂などを好適に用いることができる。
また、前記摩擦部材の硬度としては、JIS K6253Aにおけるショア硬度Aを40度以上、好ましくは55度以上にすることが好ましい。
ショア硬度Aを40度以上とすることで、柔らか過ぎることがなく、立体造形物の表面の算術平均粗さが4μm以上27μm以下であれば、摩擦部材で筆跡を擦った際に摩擦部材が削れ難くなり、表面の粗さにより適度な摩擦係数が得られるため強い押圧力を要することなく摩擦熱を発生できる。また、ショア硬度Aを55度以上とすることで、摩擦熱の発生効率が高まると共に、摩擦部材がより削れ難くなるので、少ない擦過回数で容易に熱変色像を変色させることができる。
また、摩擦部材に弾性を付与するためにショア硬度Aを100度以下にすることが好ましい。100度以下とすることで、適度な弾性力を備えるため表面形状に合わせて変形が可能であり、立体造形物の表面の算術平均粗さが4μm以上27μm以下であれば、摩擦時の立体造形物表面への接触面積が増加し、少ない擦過回数で容易に熱変色像を変色できる。
尚、前記摩擦部材は熱変色性固形筆記体と別体であってもよいが、外軸に、摩擦部材を直接、又は連結部材を介して設けること、或いは外軸自体を摩擦部材とすることにより、携帯性に優れたものとなる。また、外軸に前記した摩擦部材を付設する場合には、前記した摩擦部材の体積減少率が10%未満、好ましくは5%未満の材質とすることで、熱変色性固形筆記体の使用終了まで、摩擦熱を得ることができるので好ましい。また、体積減少率が少ない材質を選定し、摩擦部材を着脱自在に付設することで、他の熱変色性固形筆記体の摩擦部材として使用することができるので好ましい。
以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
(立体造形物の作製)
紙(株式会社Too PMPADの裏面)を用いて以下の形状に加工し、縦15mm×横50mm×長さ100mmの断面が半円状である着色用の立体造形物を得た。
尚、表面粗さについては、前記黒両面紙を用いて縦50mm×横100mmの試験片を作製し、表面粗さ測定機(株式会社小坂研究所 SE−3400)を用い、測定速度(0.5mm/s)、基準長さ(8.00mm)、カットオフλc(2.5mm)の条件で測定した。その時の平均算術粗さは4.5μm、最大高さ(Rmax)は36.7μm、十点平均粗さは29.4μmとなった。尚、測定値は粗さ測定機により計測された粗さ曲線及び断面曲線に前記した(式1)、(式2)を用いて、測定機により計算された値である。
(熱変色性固形筆記体の作製)
(マイクロカプセル顔料Aの製造)
(イ)成分として2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン1.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0質量部からなる感温変色性色彩記憶組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0質量部、助溶剤40.0質量部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5質量部を加え、更に攪拌を続けて熱変色マイクロカプセル懸濁液を得た。前記懸濁液を遠心分離して熱変色マイクロカプセルを単離した。なお、前記マイクロカプセルの平均粒子径は2.3μmであり、t1:−20℃、t2:−10℃、t3:48℃、t4:58℃、ΔH:68℃、感温変色性色彩記憶組成物:壁膜=2.6:1.0のヒステリシス特性を有する挙動を示し、ピンク色から無色、無色からピンク色へ可逆的に色変化した。
(固形芯の製造)
マイクロカプセル顔料A 40質量部
ポリオレフィンワックス 10質量部
(三洋化成工業(株)製 サンワックス131−P 軟化点110℃ 針入度3.5)
ショ糖脂肪酸エステル 10質量部
(三菱化学フーズ(株)製 リョートーシュガーエステルP−170)
ポリビニルアルコール 2質量部
タルク 38質量部
上記配合物をニーダーにて混練し、筆記可能な固形芯の混練物を得た。
得られた混練物をプレスにて圧縮成形を行い、外径φ2mm、長さ60mmに成形して固形芯を得た。
(中間層の製造)
タルク(フィラー) 70質量部
ポリオレフィンワックス 10質量部
(三洋化成工業(株)製 サンワックス131−P 軟化点110℃ 針入度3.5)
ショ糖脂肪酸エステル 10質量部
(三菱化学フーズ(株)製 リョートーシュガーエステルP−170)
エチレン酢酸ビニル共重合体(弾性体樹脂) 10質量部
(三井・デュポンポリケミカル(株)製エバフレックスEV150(商品名)、デュロメーターA硬度68)
上記配合物をニーダーにて混練し、中間層の混練物を得た。
(摩擦部材の作製)
摩擦部材は、SEBS樹脂(アロン化成(株)製、商品名:AR−885C、ショアA硬度:88)を用いて、径φ7mm、長さ14mmの円柱状に成形して得た。
(熱変色性固形筆記体の作製)
図8〜図10に示す熱変色性固形筆記体11は、木材からなる丸形の木軸12(外軸)内に、固形芯13と、該固形芯13と木軸12間に中間層14を配してある。また、固形芯13の後端13bが、木軸12の後端12bよりも長手方向で前方に位置している。さらに、木軸12の後端部には、連結部材15を介して摩擦部材16を付設してある。
具体的には、固形芯13、中間層14は、固形芯13の混練物の外周面に、中間層14を巻き付け、プレスにて圧縮成形を行い、外径φ3mm、長さ60mm(筆記可能な固形芯13がφ2mmであり、中間層14の厚さが0.5mm)に成形し、筆記可能な固形芯13の外周面に中間層14を被覆して設けている。その後、予め製作してあった外径8mmの木軸12内に、固形芯13と中間層14からなら芯体を保持し、接着剤によって固着保持する。この時、固形芯13の後端13bは、木軸12の後端12bよりも長手方向で前方に位置し、固形芯13の後方に空間部Kを設けている。
さらに、その後、木軸12の後端部に連結部材15の先端部を被せ、木軸12に対向する部分15aの周方向の異なる3箇所を、外方から押圧加工することで、木軸12に連結部材15を固設し、さらに、連結部材15の後端部に摩擦部材16の先端部を挿入し、摩擦部材16に対向する部分15bの周方向の異なる3箇所を、外方から押圧加工することで、連結部材15に摩擦部材16を固設してある。また、図10に示す状態から木軸12の先端部12aを削り取ることで、固形芯13を、筆記可能に外部に露出させた筆記部13aを設け、熱変色性固形筆記体11を得ている。
実施例1で作製した着色用の立体造形物100に熱変色性固形筆記体11を用いて、図1のように立体造形物100の表面へ熱変色性固形筆記体11で着色を行い、滑らかな筆感で良好に着色できた。更に、筆跡濃度も濃く、高い視認性を有する装飾ができた。また、図2のようにはみ出した着色部を摩擦部材16により擦過すると、摩擦部材16へ着色剤が転写されることがなく、きれいに消色を行うことができ、筆跡の定着性も良好だった。これにより筆記性に優れ、筆跡が簡単に剥がれ事が無く、間違えて着色した箇所を容易に修正可能な立体造形物及び熱変色性固形筆記体からなるセットが得られた。
実施例2〜4
(立体造形物の作製)
表1に示した材料を用いて、実施例1と同じ方法で着色用の立体造形物を作製した。表面粗さの測定についても、実施例1と同じ方法で測定した。その結果を(表1)に記す。
Figure 2015120244
紙1(株式会社Too PMPADの裏面)
紙2(株式会社マルアイ 画用紙 エ−P8)
紙3(株式会社マルアイ 色画用紙 Pエ−N86D)
紙4(Askul マルチペーパーホワイト(コピー用紙)688−881)
ABS樹脂(日本エイアンドエル株式会社 クララスチックGA−501)
AS樹脂(日本エイアンドエル株式会社 ライタック−A 100PCF)
PC樹脂(住化スタイロンポリカーボネート株式会社 カリバー301−10)
実施例5
(立体造形物の作製)
ABS樹脂(日本エイアンドエル株式会社 クララスチックGA−501)を用いて、表面に梨地面加工(株式会社日本エッチング HN423相当)を施した型を使用し、縦15mm×横50mm×長さ100mmの断面が半円状の形状に成形し、実施例5の着色用の立体造形物を得た。また、前記表面加工を施した材料を縦50mm×横100mmの試験片に加工し、実施例1と同じ方法で表面粗さを測定した。その結果を(表1)に記す。
実施例6〜9、比較例2〜5
実施例5と同じABS樹脂を用い、表1の表面梨地面加工条件にて、実施例5と同じ方法で着色用の立体造形物を作製した。表面粗さの測定については、実施例1と同じ方法で測定した。その結果を(表1)に記す。
実施例10〜11
AS樹脂(日本エイアンドエル株式会社 ライタック−A 100PCF)を用い、表1に示した表面梨地加工条件にて、実施例5と同じ方法で着色用の立体造形物を作製した。表面粗さの測定については、実施例1と同じ方法で測定した。その結果を(表1)に記す。
実施例12〜13
PC樹脂(住化スタイロンポリカーボネート株式会社 カリバー301−10)を用い、表1に示した表面梨地加工条件にて、実施例5と同じ方法で立体造形物を作製した。表面粗さの測定については、実施例1と同じ方法で測定した。その結果を(表1)に記す。
実施例1〜13及び比較例1〜5で得られた立体造形物の表面に、実施例1により得られた熱変色性固形筆記体11を用いて、下記方法により熱変色性固形筆記体11で試験片の表面に着色した際の筆記性、筆跡濃度、定着性について評価行った。その結果を(表2)に示した。
筆記性:熱変色性固形筆記体11により試験片に筆記して着色をした際の書き味についての触感及び目視にて評価した。
○:滑らかな筆感が得られる。
△:筆感が重たいが筆記可能。
×:所望箇所を狙っての筆記ができない。
筆跡濃度:熱変色性固形筆記体11により試験片に筆記して着色された筆跡の濃度を目視にて評価した。
○:濃い筆跡が得られ、はっきりと視認できる。
△:筆跡が少し薄くなるが視認可能。
×:筆跡が薄く視認できない。
定着性:熱変色性固形筆記体11により試験片に筆記して着色された筆跡を摩擦部材16で擦った際に筆跡が剥がされて摩擦部材16へ転写されたかを目視で評価。
○:摩擦部材16への筆跡の転写は全くなく、筆跡もきれいに消色された。
△:摩擦部材16にわずかに筆跡の転写があるが、筆跡はきれいに消色された。
×:筆跡が摩擦部材16によって剥がされ、筆跡がほとんど摩擦部材に転写された。
総合評価:筆記性、筆跡濃度、定着性を総合的に判断した結果。
○:筆記性、筆跡濃度、定着性の全てが○。
●:筆記性、筆跡濃度、定着性の内、評価に△が1つある。
△:筆記性、筆跡濃度、定着性の内、評価に△が2つある。
×:筆記性、筆跡濃度、定着性の内、評価に×が1つ以上ある。
Figure 2015120244
(表2)に示した結果からも明らかなように、本発明の特定の表面粗さを備えた立体造形物は熱変色性固形筆記体11で表面に着色した際の筆記性が比較例に比べて滑らかな筆感で良好に着色でき。更に、筆跡濃度も濃く、高い視認性を有する装飾ができた。また、はみ出した着色部を摩擦部材16により擦過すると、摩擦部材16へ着色剤の付着がなく、きれいに消色を行うことができ、筆跡の定着性も良好だった。このため全ての特性で性能を満足しており、筆記性に優れ、筆跡が簡単に剥がれる事が無く、間違えて着色した箇所を容易に修正可能な立体造形物及び熱変色性固形筆記体からなるセットが得られた。一方、比較例1〜6に示した表面粗さを備えた立体造形物は、前記のように本発明の立体造形物と比較して、筆記性、筆跡濃度、定着性が同時に全ての性能を満足しておらず、本発明の熱変色性固形筆記体11を用いて着色する立体造形物として劣っていた。
本発明の立体造形物及び熱変色性固形筆記体からなるセットは、樹脂・金属・木材などで作製した模型や玩具、コップや茶碗などガラスや陶器で成形した生活用品、あるいは紙を折り曲げたり貼り合せて形成するペーパークラフトなどに利用可能である。
11 熱変色性固形筆記体
12 木軸
12a 先端部
12b 後端
13 固形芯
13a 筆記部
13b 後端
14 中間層
15 連結部材
16 摩擦部材
100 立体造形物
t1 本発明の加熱消色型の固形筆記体の筆跡の完全発色温度
t2 本発明の加熱消色型の固形筆記体の筆跡の発色開始温度
t3 本発明の加熱消色型の固形筆記体の筆跡の消色開始温度
t4 本発明の加熱消色型の固形筆記体の筆跡の完全消色温度
ΔH ヒステリシスの程度を示す温度幅

Claims (2)

  1. 熱変色性固形筆記体と該熱変色性固形筆記体により表面を着色される立体造形物とのセットであって、表面の算術平均粗さが4μm以上27μm以下である前記立体造形物と、前記熱変色性固形筆記体と、の組み合わせを特徴とした立体造形物及び熱変色性固形筆記体からなるセット。
  2. 前記熱変色性固形筆記体を、少なくとも(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と賦形材とを含む固形芯により筆跡を消色又は変色可能な熱変色性固形筆記体とした請求項1に記載の立体造形物及び熱変色性固形筆記体からなるセット。
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