以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態の車両1の駆動装置の概略構成図である。図1においてエンジン2にはエンジンの始動に用いるスタータ6(エンジン始動用モータ)及びエンジン2により駆動されるオルタネータ3を備えている。
車両1の電源としてバッテリ11を備える。12Vバッテリである。オルタネータ3による発電で得られる電力がバッテリ11に蓄えられる。上記のスタータ6はバッテリ11に接続され、電力はバッテリ11から供給される。車両1には各種の電気負荷を備えている。この電気負荷には、供給電力量の多少の変動は許されるものの、大電力を必要とすると共に、相対的に低い保証電圧(例えば8V)を有する第1電気負荷14と、省電力で駆動するものの相対的に高い保証電圧(例えば10V)を有する第2電気負荷15とがある。これら保証電圧の異なる2種類の電気負荷14,15を同等に扱うことはできないので、相対的に高い保証電圧を有する第2電気負荷15は、DC/DCコンバータ12を介してバッテリ11に接続している。ここで、DC/DCコンバータ12はバッテリ11の電圧を一定圧だけ上昇させるものである。バッテリ11の電圧よりも高くした電圧を第2電気負荷15に印加することで、第2電気負荷15の作動を保証するのである。
上記の第1電気負荷14としては、スタータ6、ヘッドランプ、室内灯、デフォッガ、ビークルダイナミックコントローラなどがある。さらに、後述するエンジンコントローラ41、PTCヒータ61、PTCヒータ用アンプ62が第1電気負荷14に含まれる。上記の第2電気負荷15としては、ナビゲーションシステムなどがある。さらに、後述する自動変速機用コントローラ41、エアコン用アンプ55が第2電気負荷15に含まれる。
エンジン2及びスタータ6を制御するため、エンジンコントローラ21(エンジン始動手段、エンジン自動停止・再始動制御手段)を備える。
ここで、ガソリンエンジンの構成を図2を参照して概説すると、図2はガソリンエンジンの制御システム図である。各吸気ポート(図示しない)には燃料噴射弁7が設けられている。燃料噴射弁7は、燃料をエンジン2に間欠的に供給するものである。
吸気通路11には電子制御のスロットル弁22を備え、スロットルモータ23によってスロットル弁22の開度(以下、「スロットル開度」という。)が制御される。実際のスロットル開度はスロットルセンサ24により検出され、エンジンコントローラ31に入力されている。
エンジンコントローラ31には、アクセルセンサ33からのアクセル開度(アクセルペダル32の踏込量)の信号、クランク角センサ34からのクランク角の信号、エアフローメータ35からの吸入空気量の信号が入力されている。クランク角センサ34の信号からはエンジン2の回転速度が算出される。エンジンコントローラ31では、これらの信号に基づいて目標吸入空気量及び目標燃料噴射量を算出し、目標吸入空気量及び目標燃料噴射量が得られるようにスロットルモータ23及び各燃料噴射弁7に指令を出す。
なお、ガソリンエンジン2では、燃焼室(シリンダ)に臨んで点火プラグを備えている。エンジンコントローラ31では、圧縮上死点前の所定の時期に点火コイルの一次側電流を遮断することにより点火プラグに火花を発生させ、これによって燃焼室内の混合気に点火する。
また、エンジンコントローラ31では、燃費向上を目的としてアイドルストップ制御を行う。すなわち、アクセルペダル32が踏み込まれておらず(APO=0)、ブレーキペダル37が踏み込まれ(ブレーキスイッチ38がON)、かつ車両1が停止状態にある(車速VSP=0)のときにアイドルストップ許可条件が成立する。このときには、燃料噴射弁7から吸気ポートへの燃料噴射を遮断してエンジン2を停止する。これによって無駄な燃料消費を低減する。
その後、アイドルストップ状態でアクセルペダル32が踏み込まれたり、ブレーキペダル37が戻されたり(ブレーキスイッチ38がOFF)などすると、アイドルストップ許可条件が不成立となる。このときにはスタータ6を用いてエンジン2をクランキングし、燃料噴射弁7からの燃料噴射と点火プラグによる火花点火とを再開しエンジン2を再始動する。
図1に戻り、車両1にはCVTコントローラ41を備える。
ここで、CVT(ベルト式自動変速機)9の構成を図3を参照して概説すると、図3はCVT9の制御システム図である。エンジン2の出力軸にはトルクコンバータ8、CVT9が接続されている。トルクコンバータ8は図示しないポンプインペラ、タービンランナを有する。CVT9は、プライマリプーリ42、セカンダリプーリ43、これらプーリ42,43に掛け回されるスチールベルト45を有する。エンジン2の回転駆動力はこれらトルクコンバータ8、CVT9を介して最終的に車両駆動輪(図示しない)に伝達される。CVTコントローラ41では、車速とスロットル開度とから定まる車両の走行条件に応じて、CVT9の変速比を無段階に制御する。
エンジン2の出力軸2aにより駆動されるオイルポンプ44からの変速機オイル(以下、単に「オイル」という。)はオイルプレッシャレギュレータバルブ45によって一定圧に調整され、この一定圧のオイルが摩擦締結要素に供給される。ここでは、摩擦締結要素として常時は非締結状態にあるフォワードクラッチ(発進クラッチ)46のみを示している。このフォワードクラッチ46とプレッシャレギュレータバルブ45とを結ぶオイル通路にコントロールバルブ47とマニュアルバルブ48とが直列に介装されている。上記のコントロールバルブ47の開閉はCVTコントローラ41によって、上記のマニュアルバルブ48の開閉はシフトレバー49からの信号によって駆動される。例えば、ドライバがシフトレバー49を、NレンジからDレンジ位置に切換えると、コントロールバルブ47、マニュアルバルブ48が共に開かれ、一定圧のオイルがフォワードクラッチ46に供給され、フォワードクラッチ46が非締結状態から締結状態に切換わる。これによって、エンジン2の出力軸2aと自動変速機9の入力軸9aとがトルクコンバータ8を介して連結状態となる。
また、ポンプインペラ、タービンランナを有するトルクコンバータ8には、ポンプインペラとタービンランナとを締結・開放する機械式のロックアップクラッチを備えている。ロックアップクラッチを締結する車両の走行域はロックアップ領域(車速とスロットル開度とをパラメータとしている)として予め定めている。自動変速機用コントローラ41では車両の走行条件がロックアップ領域となったとき、ロックアップクラッチを締結してエンジン2と変速機9とを直結状態とし、車両の走行条件がロックアップ領域とないときにはロックアップクラッチを開放する。エンジン2と変速機9とを直結状態としたときにはトルクコンバータ8でのトルクの吸収がなくなり、その分燃費が良くなる。
車両1には車両空調装置の一部を構成する空調ユニット51を車内のインストルメントパネルの下方に備えている。図示しないブロアファンの回転により内外気切換ドアを介して吸い込まれた内気または外気が、空気取入口を介して空調ユニット51に送られる。空調ユニット51に送られた空気は、エバポレータを通過して冷却された後、エアミックスドアの開度に応じた割合でヒータコアを通過またはバイパスする。これによって、所定温度の空調風が生成される。
所定温度の空調風は、吹出モードに応じて開閉する吹出口ドアを介して空調ユニット51から流出し、ダクトを通って車内に送られる。例えば、ベントモード時には、空調風がベント口を介しベントダクトを通ってベント吹出口から乗員に向けて送られる。フットモード時には、空調風がフット口を介しフットダクトを通ってフット吹出口から乗員の足下に向けて送られる。
空調ユニット51内では、フット口に至る送風通路が途中で分岐して左右のフット口に連通しており、この分岐部の上流側にPTCヒータ61が配設されている。PTCヒータ61は、外気温が低く、かつエンジン冷却水温が低い場合等、ヒータコアで空調風を十分に加熱できない場合に、暖房能力の不足を補うために用いられる補助的なヒータである。寒冷地で追加的にPTCヒータ61を設けることで、フット口からはPTCヒータ61により加熱した空気を送ることが可能となる。PTCヒータ61は、ヒータ素子の温度上昇に伴い電気抵抗値が増加して消費電力が減少する、いわゆるPTC特性を有し、後述するように動作が制御される。
エアコン用アンプ55には、空調指令を入力する操作パネル56からの信号と、空調制御に必要な各種物理量(外気温度、日射量、内気温度、エバポレータ通過空気温度、エンジン冷却水温度)を検出するセンサ類57からの信号とが入力されている。
エアコン用アンプ55にはコントローラを付属している。このため、エアコン用アンプ55では、これらからの信号に基づき、空調用アクチュエータ52にそれぞれ制御信号を出力し、吸気モード、吹出口モード、エアミックドアの開閉及び送風量等を制御する。上記の空調用アクチュエータ52は内外気切換ドア、吹出口ドア、エアミックスドアの各駆動用アクチュエータ及びブロアファン駆動用モータ等から構成される。
PTCヒータ用アンプ62(PTCヒータ制御手段)にもコントローラを付属している。このため、PTCヒータ用アンプ62(PTCヒータ作動制御手段)では、次のようにPTCヒータ61の作動・非作動を制御する。まず、PTCヒータ61の作動の要否を判定する。例えば、センサ類57により検出された外気温度が所定値以下で、かつエンジン冷却水温度が所定値以下の状態であることがある。こうした状態でモードが設定されている場合には、ヒータコアによって加熱した空調風をフット口から吹出しただけでは暖房能力が不足し乗員に対し十分な暖房感を与えることができない。こうした場合にPTCヒータ61の作動が必要であると判定し、PTCヒータ要求フラグをゼロから1に切換え、PTCヒータ61を作動させる。その後にPTCヒータ61の作動が必要でなくなったと判定したときにはPTCヒータ要求フラグを1からゼロに戻し、PTCヒータ61への通電を停止する。なお、後述するようにPTCヒータ用アンプ62とエアコン用アンプ55とはCANで接続されており、PTCヒータ用アンプ62で必要なデータはエアコン用アンプ55から送られる。
上記のエンジンコントローラ31、CVTコントローラ41、エアコン用アンプ55、PTCヒータ用アンプ62の間はCAN(Controller Area Network)で接続している。
また、エンジンコントローラ21とCVTコントローラ41(Nアイドル制御実行手段)とが協調制御することで、Nアイドル制御を実行している。ここで、Nアイドル制御とは、エンジン2がアイドル状態にあるDレンジでの停車時に、エンジン2とCVT9(自動変速機)とを締結するフォワードクラッチ46を非締結としてCVT9をニュートラル状態にする制御のことである。通常であれば、CVT9のシフトレバー49の位置がDレンジにあるときには、エンジン2とCVT9とを連結し、ブレーキペダル37をドライバが踏み込んでいなければ車両1がクリープ力でゆっくりと前進するようにしている。このクリープ力で車両1が前進するのを防ぐためにドライバがブレーキペダル37を踏み込んで車両1を停止させている。
停車時のクリープ力を得るために目標アイドル回転速度NSETを高めに設定しているのであるが、このときのCVT9はエンジン2に対して負荷として作用している。一方、Nアイドル制御を行ってCVT9をニュートラル状態とすることで、CVT9がクリープ力を発生しているときより目標アイドル回転速度NSETを一定値だけ下げることができ、その分燃費を向上できるのである。具体的にはCVTコントローラ41では、コントロールバルブ47の開度を制御して、フォワードクラッチ46に作用する圧力(フォワードクラッチ圧)をクラッチ締結時の圧力AからNアイドル制御時の圧力Bまで低下させる。これによって、エンジン2とCVT9とが非連結状態となるようにする。
一方、ブレーキペダル37が離されるなどしてドライバに車両発進の意図があるときには、コントロールバルブ47の開度を制御して、フォワードクラッチ圧をNアイドル制御時の圧力Bからクラッチ締結時の圧力Aに向けて徐々に上昇させる。これによって、フォワードクラッチ46をゆっくり締結しにゆく。なぜなら、一気にフォワードクラッチ46を締結すると車両発進時のトルクショックが生じてしまうので、コントロールバルブ47によりフォワードクラッチ圧をコントロールして徐々に上げてゆき、CVT9をDレンジアイドル状態に戻すためである。そして、フォワードクラッチ46の締結を完了すればクリープ力が生じて車両1が前に出て行く。
なお、フォワードクラッチ46を徐々に締結するといっても、その締結が急であれば、アイドル状態でのエンジン回転速度に一時的な低下(変動)が生じ、この変動が車両1に伝わってショックが生じる。従って、アイドル状態でのエンジン回転速度を一定にキープしつつ、フォワードクラッチ圧を徐々に上げていってフォワードクラッチ46を締結させることで、車両発進時のトルクショックを抑制する必要がある。
さて、本実施形態のPTCヒータ61をさらに説明する。本実施形態では、PTCヒータ61を1本ではなく3本で構成している。1本のみのPTCヒータに通電する場合が1段目の暖房要求領域にある場合、2本のPTCヒータに通電する場合が2段目の暖房要求領域にある場合、3本全てのPTCヒータに通電する場合が3段目の暖房要求領域にある場合である。外気温度とエンジン冷却水温度とに応じていずれの段階の暖房要求領域にあるのかを予め定めており、その予め定まっている暖房要求領域の違いに応じて、PTCヒータ用アンプ62が、3本のPTCヒータへの通電を制御する。
PTCヒータ61の消費電力はかなり大きく、3本全てのPTCヒータの消費する電力はほぼ1kW程度にもなる。このため、3本の各PTCヒータを作動させるときには、車両の電源系から電流が、作動させる各PTCヒータに一気に供給される。通常、エンジン2で駆動しているオルタネータ3の発電によって得られる電流をバッテリ11に供給しているのであるが、各PTCヒータの作動によって各PTCヒータが急激に電力を消費すると、発電量を増やそうとオルタネータ3負荷が増大する。オルタネータ3はエンジン2で駆動しているので、オルタネータ3負荷が増大することは、オルタネータ3によるエンジン2への負荷が増大することを意味する。このため、3本の各PTCヒータを作動させた直後にアイドル状態でのエンジン回転速度Neに変動が生じる。
ここで、上記のNアイドル制御とPTCヒータ61を単に組み合わせたものを比較例1とすると、比較例1では次のような問題が生じる。すなわち、比較例1では、PTCヒータ61の作動から非作動への切換に伴うアイドル状態でエンジン回転速度の変動中にNアイドル制御を実行した場合に、エンジン回転速度Neが目標アイドル回転速度NSETを大きく上回って吹け上がる。そして、このエンジン回転速度Neが吹け上がったところでフォワードクラッチ46を締結することとなり、締結ショック(トルクショック)が発生するという問題が生じる。
これについて図4を参照して説明する。図4は比較例1でPTCヒータ61の作動から非作動への切換に伴うアイドル状態でエンジン回転速度の変動中、例えばPTCヒータ61の作動を解除した直後にNアイドル制御を実行した場合の変化を示している。具体的には、エンジン回転速度、3つの各フラグ、PTCヒータ要求フラグ、フォワードクラッチ圧等がどのように変化するのかをモデルで示している。
ここで、上記3つの各フラグとは、Nアイドル許可フラグ、Nアイドル禁止フラグ、Nアイドルスタンバイフラグの3つのフラグのことである。これら3つのフラグの関係を先に説明しておく。Nアイドル許可フラグ、Nアイドル禁止フラグはエンジンコントローラ21が有しているフラグ、NアイドルスタンバイフラグはCVTコントローラ41が有しているフラグである。エンジンコンローラ21の側(以下「エンジン側」ともいう。)ではNアイドル禁止フラグによってNアイドル制御の実行を許可するか否かを判定する。また、CVTコントローラ41の側(以下「CVT側」ともいう。)ではNアイドルスタンバイフラグによってNアイドル制御の実行を許容(許可)するか否かを判定している。具体的にはエンジン側では、アクセル開度やブレーキスイッチ38の状態に基づいてNアイドル制御の実行を禁止する条件が成立するか否かを判断し、Nアイドル制御の実行を禁止する条件が成立した場合にNアイドル禁止フラグ=1とする。Nアイドル制御の実行を禁止する条件が成立しない場合にはNアイドル禁止フラグ=0とする。
一方、CVT側では、フォワードクラッチ圧、フォワードクラッチ46の入力回転速度、シフトレバー49の信号から得られるシフトレンジ位置に基づいてNアイドル制御の実行を許容(許可)する条件が成立するか否かを判断する。Nアイドル制御の実行を許容(許可)する条件が成立する場合にNアイドルスタンバイフラグ=1とし、Nアイドル制御の実行を許容(許可)する条件が成立しない場合にNアイドルスタンバイフラグ=0とする。そして、これら2つのフラグ(Nアイドル禁止フラグ及びNアイドルスタンバイフラグ)の状態に基づいてエンジン側でNアイドル許可フラグを設定している。すなわち、Nアイドル禁止フラグ=1のときにはNアイドル許可フラグ=0である。また、Nアイドル禁止フラグ=0かつNアイドルスタンバイフラグ=1のときにNアイドル許可フラグ=1となる。
また、図4においてPTCヒータ要求フラグはPTCヒータ61の状態をも表しているものとする。すなわち、PTCヒータ要求フラグ=1であるときにPTCヒータ61が作動状態にあり、PTCヒータ要求フラグ=0であるときにPTCヒータ61が非作動状態にあるものとする。
さて、Dレンジでの停車時に(ブレーキスイッチ38がON)、エンジン2はアイドル状態にあり、目標アイドル回転速度NSETが一定値で推移している。このときPTCヒータ61の作動要求がありPTCヒータ61を作動させているとする。
t1のタイミングでファンスイッチがOFFとなるかまたは非PTC領域となったとき、PTCヒータ用アンプ62がPTCヒータ61の作動は不要であると判断し、PTCヒータ要求フラグを1よりゼロに切換えPTCヒータ61の作動を停止する。ファンスイッチをOFFとしていることよりドライバが暖房は不要であると判断しているのであるから、PTCヒータ61の作動要求がなくなったとして、PTCヒータ61を非作動状態とするのである。なお、上記のファンスイッチはブロアファン(風量調節用)をON、OFFするためインストルメントパネルに備えられているスイッチである。また、PTCヒータ用アンプ62では外気温度とエンジン冷却水温度によってPTCヒータ61の作動段数を定めている。具体的には外気温度が所定値以下でエンジン冷却水温度が所定値以下のときにPTCヒータ領域にあると判断してPTCヒータ61を作動させる。その際、PTCヒータ領域を、温度よって1段目の暖房要求領域、2段目の暖房要求領域、3段目の暖房要求領域の3つに分けている。そして、1段目の暖房要求領域にあるときには1本のPTCヒータに、2段目の暖房要求領域にあるときには2本のPTCヒータに、3段目の暖房要求領域にあるときには3本全てのPTCヒータに通電するようにしている。なお、図4には、PTCヒータ要求フラグに、0[A],33.3[A],66.6[A]を重ねて記載しているが、これらの数値はPTCヒータ61を流れる電流値を示している。図4の例ではPTCヒータ61の作動時に1段目の暖房要求領域にあるためPTCヒータ61に33.3[A]が流れることを意味している。本実施形態では、PTCヒータ61の作動時に1段目の暖房要求領域にある場合で説明するが、この場合に限られるものでなく、PTCヒータ61の作動時に2段目の暖房要求領域にある場合や3段目の暖房要求領域にある場合であってよい。
PTCヒータ領域以外のとき、つまり外気温度が所定値を超えているときやエンジン冷却水温度が所定値を超えているときには非PTCヒータ領域にあると判断してPTCヒータ61の作動(3本全てのPTCヒータの作動)を停止する。非PTCヒータ領域とは、外気温度が所定値を超えているときやエンジン冷却水温度が所定値を超えているときのことである。
PTCヒータ61が作動状態から非作動状態に切換わった直後にはアイドル状態でのエンジン回転速度Neに変動が生じる。この場合には、PTCヒータ61の作動が解除されることによってオルタネータ3負荷(エンジン2への負荷)が減少するので、図4最上段に示したように実際のエンジン回転速度Neがt1のタイミングより上昇してゆく。
Nアイドル禁止フラグ=0のとき、t2のタイミングでCVTコントローラ41がNアイドルスタンバイフラグをゼロから1に切換えると、エンジンコントローラ21ではNアイドル制御の実行を許可するためNアイドル許可フラグをゼロから1に切換える。これを受けて、CVTコントローラ41がフォワードクラッチ圧をクラッチ締結時の圧力A(完全締結圧)からNアイドル制御時の圧力Bへと低下させ、フォワードクラッチ46を非締結状態とする。これによって、CVT9がエンジン2から切り離され、その分エンジン2への負荷が減少するため、実際のエンジン回転速度Neがt2のタイミングよりさらに上昇してゆく。
t1からのエンジン回転速度Neの継続的な上昇により、CVTコントローラ41がt3のタイミングでCVT側の回転速度条件が非成立となったと判断し、Nアイドル制御を禁止するためNアイドルスタンバイフラグを1よりゼロに切換える。ここで、Nアイドル制御の解除後にはフォワードクラッチ46を締結してDレンジアイドル状態に戻すのであるが、フォワードクラッチ46の入力回転速度(つまりエンジン回転速度Ne)が高いときにフォワードクラッチ46を締結すると、トルクショックが生じる。このため、フォワードクラッチ46の入力回転速度が所定値以下でないと、Nアイドル制御の実行を許可しない(Nアイドルスタンバイフラグ=1としない)ようにしている。「CVT側の回転速度条件が非成立となった」とは、フォワードクラッチ46の入力回転速度が所定値を超えたことである。
t3でNアイドルスタンバイフラグが1からゼロに切換わると、CVTコントローラ41ではDレンジアイドル状態に戻すため、フォワードクラッチ圧を、Nアイドル制御時の圧力Bよりクラッチ締結時の圧力Aへと上昇させる。これによって、t4のタイミングでフォワードクラッチ46が完全締結される。この場合、実際のエジン回転速度Neがt2から一段と上昇し続ける途中(t4のタイミング)でフォワードクラッチ46が締結されることとなり、締結ショックが生じる。
なお、図4の最上段において、Nアイドル許可フラグがゼロから1に切換わるt2のタイミングで目標アイドル回転速度NSETがステップ的に一定値だけ低下しているのは、次の理由からである。すなわち、t2よりNアイドル制御の実行中にはCVT9によるクリープトルクは必要ない。つまり、Nアイドル制御を実行すればクリープトルク分のエンジン負荷が減少するので、その分目標アイドル回転速度NSETを低下させることができるためである。実際には、ステップ的に変化する目標アイドル回転速度NSETをなました値である目標アイドル回転速度暫定値NSET1(図4最上段の破線参照)を算出する。そして、この目標アイドル回転速度暫定値NSET1を改めて目標アイドル回転速度とし、この新たな目標アイドル回転速度と実際のエンジン回転速度Neとの差分に基づいてアイドル時のエンジン回転速度をフィードバック制御している。
次に、比較例1ではNアイドル制御の実行から非実行への切換中にPTCヒータ61を作動させた場合にも、エンジン回転速度の一時的低下の後にアイドル状態でのエンジン回転速度Neが吹け上がる。そして、このエンジン回転速度Neが吹け上がったところでフォワードクラッチ46を締結することとなり、締結ショック(トルクショック)が発生するという問題が生じる。
これについては図5を参照して説明する。図5は比較例1でNアイドル制御の実行から非実行への切換中、例えばNアイドル制御を解除した直後にPTCヒータ61を作動させた場合の変化を示している。具体的には、エンジン回転速度、3つの各フラグ、PTCヒータ要求フラグ、フォワードクラッチ圧等がどのように変化するのかをモデルで示している。
CVTコントローラ41がt11のタイミングでNアイドル制御の実行を許可しないと判断しNアイドルスタンバイフラグを1よりゼロに切換えたとき、これを受けてエンジンコントローラ21がNアイドル許可フラグを1よりゼロに切換える。CVTコントローラ41では、Nアイドル許可フラグが1よりゼロに切換わると、Dレンジアイドル状態に戻すためフォワードクラッチ46をゆっくり締結しにゆく(フォワードクラッチ圧を徐々に上昇させる)。これは、一気にフォワードクラッチ46を締結すると締結ショックが出てしまうので、これを回避するためである。具体的には実際のエンジン回転速度Neがほぼ一定である目標アイドル回転速度に保たれるように、コントロールバルブ47を介しフォワードクラッチ圧を制御してNアイドル制御時の圧力Bから徐々に上げてゆくこととなる。
さて、Nアイドル許可フラグが1よりゼロに切換わるt11のタイミングの直後にPTCヒータ61の作動要求がありPTCヒータ要求フラグがゼロより1に切換わったとする。なお、図5においてもPTCヒータ要求フラグがt11のタイミングでゼロより1に切換わるとし、PTCヒータ61もt11のタイミングで非作動状態から作動状態へと切換わるとする。
このようにt11でPTCヒータ61が非作動状態から作動状態へと切換わるとき、切換わった直後にアイドル状態でのエンジン回転速度Neに変動が生じ得る。この場合には、PTCヒータ61の作動でオルタネータ3負荷(エンジン2への負荷)が増大するところに、フォワードクラッチ46を締結することによるエンジン2への負荷増大が加わるので、実際のエンジン回転速度Neがt11以降で低下してしまう。
一方、t11のタイミングでは目標アイドル回転速度NSETがステップ的に所定値だけ上昇する。これは次の理由からである。すなわち、Nアイドル制御の実行を解除してDレンジアイドル状態に戻すことは、エンジン2にCVT9が付加してエンジン負荷となるので、その分、エンジン回転速度Neを安定させるために目標アイドル回転速度NSETを上昇させる必要があるためである。この目標アイドル回転速度NSETの上昇を受けて、図5最上段に示したように目標アイドル回転速度暫定値NSET1がt12のタイミングより遅れて立ち上がり、t13のタイミングで目標アイドル回転速度NSETに追いついている。
この場合、エンジンコントローラ21では、実際のエンジン回転速度Neが目標アイドル回転速度暫定値NSET1と一致するようにフィードバック制御を行うのであるが、このフィードバック制御には応答遅れがある。このため、PTCヒータ61の作動及びクラッチ締結に伴うエンジン負荷の増大により、実際のエンジン回転速度Neの低下が続きt14のタイミングで目標アイドル回転速度暫定値NSET1と実際のエンジン回転速度Neとの偏差が最大となっている。このように偏差が大きくなると、その分フィードバック制御の比例分が大きくなるため、t14のタイミングでやっとフィードバック制御が効くこととなり、実際のエンジン回転速度Neが急激に上昇する。そして、フィードバック制御の常として実際のエンジン回転速度Neは目標アイドル回転速度暫定値NSET1を大きく超えるオーバーシュートを生じている。このエンジン回転速度のオーバーシュート中のt15のタイミングでフォワードクラッチ46が締結されると、締結ショックが生じる。
このように、比較例1ではPTCヒータ61の作動解除直後よりエンジン回転速度Neが増大する区間でNアイドル制御を実行することでさらにエンジン回転速度Neを増大させ、エンジン回転速度Neの吹け上がりを招いた。そしてエンジン回転速度Neが吹け上がった途中でフォワードクラッチ46を締結することとなり締結ショックを生じた。また、Nアイドル制御の実行解除直後よりエンジン回転速度Neが低下する区間でPTCヒータ61を作動することでさらにエンジン回転速度Neを低下させ、その反動としてエンジン回転速度の吹け上がりを招いた。そしてエンジン回転速度Neが吹け上がった途中でフォワードクラッチ46を締結することとなり締結ショックを生じた。つまり、PTCヒータ61の作動解除とNアイドル制御の実行とが重なったから、またNアイドル制御の実行解除とPTCヒータの作動とが重なったからその後の締結ショックにつながったと本発明者が判断し、次の方策を考えた。すなわち、Nアイドル制御の実行中及びNアイドル制御の実行から非実行への切換中にPTCヒータ61の作動を禁止する第1のフラグを新たに導入する。同様に、PTCヒータ61の作動中及びPTCヒータ61の作動から非作動への切換に伴うエンジン回転速度の変動中にNアイドル制御の実行を禁止する第2のフラグを新たに導入する。ただし、これら2つのフラグを独立に導入するのでは制御が煩雑になるので、これら2つのフラグの機能を併せ持つ1つのフラグをNアイドルPTCヒータ禁止要求フラグ(以下、単に「禁止要求フラグ」ともいう。)として導入することで制御の煩雑さを回避する。
この場合に、比較例1に対して禁止要求フラグを導入したものを比較例2とする。この比較例2ではNアイドル制御の非実行から実行への切換指令と、PTCヒータ61の非作動から作動への切換指令とが同時に発生した場合に新たな問題が生じることが判明している。
これについて図6,図7を参照して説明する。図6は比較例2でNアイドル制御の非実行から実行への切換指令(つまりNアイドル制御の作動要求)と、PTCヒータ61の非作動から作動への切換指令(つまりPTCヒータ61の作動要求)とが同時に発生した場合の変化を示している。具体的には、エンジンコントローラ21の側に読み込まれる信号と、PTCヒータ用アンプ62の側に読み込まれる信号とを分けてモデルで示している。
さて、Nアイドル制御の実行開始タイミング(Nアイドル許可フラグがゼロから1に切換わるタイミング)とPTCヒータの作動開始タイミング(PTCヒータ要求フラグがゼロから1に切換わるタイミング)とが同じt21のタイミングであったとする。この場合、エンジンコントローラ21とPTCヒータ用アンプ62とはCAN通信によってお互いの状態をモニターしている。
エンジンコントローラ21では、t21のタイミングでNアイドル制御の実行を開始しようとすると共に、同じt21のタイミングでPTCヒータ61の作動を禁止するためNアイドルPTCヒータ禁止要求フラグをゼロから1に切換える。この禁止要求フラグの状態が変化したことをt21のタイミングでPTCヒータ用アンプ62に送信すると、PTCヒータ用アンプ62ではPTCヒータ61の作動を禁止するためt22のタイミングでPTCヒータ要求フラグを1からゼロに切換える。これによってPTCヒータ61が非作動状態に切換わる。ここで、PTCヒータ用アンプ62に対してPTCヒータ61の作動を禁止する要求を出したt21より、PTCヒータ用アンプ62においてPTCヒータ要求フラグが1からゼロに切換わるt22までの区間がCAN通信による遅れ(約100ms)である。
一方、PTCヒータ用コントローラ62では、PTCヒータ要求フラグがゼロから1に切換わったt21のタイミングでPTCヒータ61の作動を開始しようとする。また、同じt21でPTCヒータ要求フラグの状態が変化したことをエンジンコントローラ2に送信するが、CAN通信による遅れがあるため、エンジンコントローラ21では、t22のタイミングでPTCヒータ要求フラグがゼロから1に切換わる。エンジンコントローラ21では、このt22でのPTCヒータ要求フラグの切換を受けてNアイドル制御の実行を禁止するため、Nアイドル禁止フラグをt22のタイミングでゼロから1に切換える。Nアイドル禁止フラグがt22でゼロから1に切換わると、Nアイドル許可フラグがt22のタイミングで1からゼロに切換わる。
Nアイドル許可フラグがt22のタイミングで1からゼロに切換わると、PTCヒータ用コントローラ62ではt22のタイミングでNアイドルPTCヒータ禁止要求フラグを1からゼロに戻す。この禁止要求フラグの状態が変化したことをt22のタイミングでPTCヒータ用アンプ62に送信すると、PTCヒータ用アンプ62ではPTCヒータ61の作動を許可するためt23のタイミングでPTCヒータ要求フラグをゼロから1に切換える。これによってPTCヒータ61が作動状態に切換わる。
言い換えると、エンジンコントローラ21では、t21のタイミングでNアイドル制御の実行を開始するけれども、その直後のt22のタイミングでPTCヒータ61が作動したという情報を受けて、Nアイドル制御の実行が禁止される。一方、PTCヒータ用アンプ62に対してもエンジンコントローラ21がNアイドル制御の実行中はPTCヒータ61の作動禁止を要求する。このため、PTCヒータ用アンプ62では、t21のタイミングで一旦はPTCヒータ61を作動させるものの、t22のタイミングで直ぐにPTCヒータ61の作動を禁止する。また、t22のタイミングでNアイドル制御の実行が解除されたことによって、禁止要求フラグが1からゼロに切換わり(PTCヒータ用アンプ62に対する禁止要求の解除になって)、PTCヒータ61がt23のタイミングからまた作動する。このように、大電流を消費するPTCヒータ61が作動、非作動を短い時間で繰り返すという問題が生じるのである。
次に、図7は図6と同じに比較例2でNアイドル制御の実行要求とPTCヒータ61の作動要求が同時にあった場合の変化を示している。具体的には、エンジン回転速度、3つの各フラグ、NアイドルPTCヒータ禁止要求フラグ、PTCヒータ要求フラグ等がどのように変化するのかをモデルで示している。
エンジンコントローラ21ではNアイドル許可フラグがゼロから1に切換わるt31のタイミングで、PTCヒータ61の作動を禁止するため、NアイドルPTCヒータ禁止要求フラグをゼロから1に切換える。一方、PTCヒータ用コントローラ62がt31のタイミングでPTCヒータ要求フラグを1に切換えPTCヒータ61を作動状態としても、NアイドルPTCヒータ禁止要求フラグがt31のタイミングで1に切換わると、t31直後のt32のタイミングでPTCヒータ要求フラグが1からゼロに戻され、PTCヒータ61が非作動状態となる。
このように、PTCヒータ61は一時的に作動させるだけとし、Nアイドル制御の実行を継続させた場合であっても、Nアイドル制御が行われる期間が短くt34のタイミングでアイドル許可フラグが1からゼロに戻されるときには、次のような問題が生じる。すなわち、t31よりt32までのPTCヒータ61の短い作動に伴って一時的にオルタネータ3の負荷増大(負荷変動)があるためt32の直後にエンジン回転速度Neが暫定値NSET1を離れて低下する。このときにもフィードバック制御が働くため、実際のエンジン回転速度Neはt33で最も低くなった後に急上昇し目標アイドル回転速度NSETを大きく超えるオーバーシュートを生じる。そして、この回転速度Neのオーバーシュート中のt34でNアイドル制御の実行が解除され、フォワードクラッチ46を締結しにいくため、フォワードクラッチ圧がt35のタイミングでクラッチ締結時の圧力Aに一致し、クラッチ46が完全締結される。t35のタイミングでは、まだエンジン回転速度Neがオーバーシュート中であり、オーバーシュート中の高い回転速度の状態でフォワードクラッチ46が締結されると、締結ショックが発生する。
そこで本発明の第1実施形態では、PTCヒータ61の作動中またはPTCヒータの作動から非作動への切換に伴うエンジン回転速度の変動中にNアイドル制御の実行を禁止する。また、Nアイドル制御の実行中またはNアイドル制御の実行から非実行への切換中(具体的にはフォワードクラッチの締結中)にPTCヒータ61の作動状態の変更を禁止する。
これについては図8,図9を参照して説明する。図8は、図4の比較例1と同じに、PTCヒータ61の作動から非作動への切換に伴うアイドル状態でエンジン回転速度の変動中、例えばPTCヒータ61の作動を解除した直後にNアイドル制御を実行しようとした(本実施形態では結果的に実行されない)場合の変化を示している。具体的には、エンジン回転速度、3つの各フラグ、PTCヒータ要求フラグ、フォワードクラッチ圧等がどのように変化するのかをモデルで示している。
本実施形態では、図8の第5段目に示したように、NアイドルPTCヒータ保持要求フラグ(以下、単に「保持要求フラグ」ともいう。)を新たに導入している。ここで、NアイドルPTCヒータ保持要求フラグはNアイドル制御の実行中またはNアイドル制御の実行から非実行への切換中にPTCヒータの状態の変更を禁止するフラグである。ここでは、Nアイドル制御の実行中でもNアイドル制御の実行から非実行への切換中でもないので、機能させる必要はなく、当初からNアイドルPTCヒータ保持要求フラグ=0となっている。
本実施形態では、PTCヒータ61が作動しているt41以前では、Nアイドル制御の実行を禁止するためNアイドル禁止フラグ=1としている。CVTコントローラ41ではNアイドル制御の実行を許容する(Nアイドルスタンバイフラグ=1)ものの、エンジンコントローラ21ではNアイドル禁止フラグ=1を受けてNアイドル許可フラグ=0としている。Nアイドル制御が実行されていないので、PTCヒータ用アンプ62ではPTCヒータ要求フラグ=1としてPTCヒータ61を作動させている。
その後、t41のタイミングでPTCヒータ要求フラグがゼロに切換わりPTCヒータ61が非作動状態に切換わると、その直後よりアイドル状態でのエンジン回転速度Neに目標アイドル回転速度からの上昇(変動)が生じ得る。このため、t41のタイミングよりエンジン回転速度Neの上昇(変動)が落ち着くまでNアイドル制御の実行が許可されないようにNアイドル禁止フラグ=1を継続する。そして、実際のエンジン回転速度Neの上昇(変動)が収まったタイミングでNアイドル制御の実行を許可するためNアイドル禁止フラグを1からゼロに切換える。
このように、本実施形態では、PTCヒータ61の作動中やPTCヒータ61の作動から非作動への切換に伴うエンジン回転速度Neの変動中にはNアイドル制御の実行を禁止する。これによって、エンジン回転速度Neの吹け上がりや吹け上がり途中でフォワードクラッチ46を締結することによる締結ショックが生じることを回避できる。
アイドル状態での実際のエンジン回転速度Neの変動が落ち着いた否かはエンジン回転速度Neに基づいて判定してもよいのであるが、ここではそうしていない。すなわち、車両1が走り出すt42のタイミングでアイドル状態での実際のエンジン回転速度Neの変動が落ち着いたと判断し、Nアイドル制御の実行を許可するためNアイドル禁止フラグを1からゼロに切換える。車両1が走り出すt42のタイミングよりも前にエンジン回転速度Neの変動が落ち着くことも考えられるが、ここでは確実にNアイドル制御の実行を禁止するため、車両1が走り出すt42のタイミングまでNアイドル制御の実行を許可しないようにしている。ここで、ブレーキスイッチ38がONからOFFに切換わり、かつ車速がゼロでない所定値(例えば3km/h)以上となったときに、車両1が走り出したと判定している。
なお、t42のタイミングで目標アイドル回転速度NSETがステップ的に一定値だけ低下している理由は、ブレーキペダル37を戻したことに伴うものである。
本実施形態では、エンジンがアイドル状態にあるDレンジでの停車中にNアイドル制御を行う場合で説明したが、これに限られない。例えば、停車する直前の走行状態においてもNアイドル制御を行うものがある。このものについても本発明を適用できる。
次に、図9はNアイドル制御の実行中またはNアイドル制御の実行から非実行への切換中、例えばNアイドル制御の実行を解除した直後にPTCヒータ61を作動させようとした(本実施形態では結果的に作動されない)場合の変化を示している。具体的には、エンジン回転速度、3つの各フラグ、PTCヒータ要求フラグ、フォワードクラッチ圧等がどのように変化するのかをモデルで示している。
t51以前には、Nアイドル禁止フラグ=0かつNアイドルスタンバイフラグ=1を受けてNアイドル許可フラグ=1となり、これによって、Nアイドル制御が行われている。
本実施形態では、Nアイドル制御を行っているt51以前では、エンジンコントローラ21が(PTCヒータ61の作動を禁止するため)NアイドルPTCヒータ保持要求フラグ=1としている。NアイドルPTCヒータ保持要求フラグはNアイドル制御の実行中またはNアイドル制御の実行から非実行への切換中にPTCヒータの状態の変更を禁止するフラグである。ここでは、t51までのNアイドル制御の実行中にNアイドルPTCヒータ保持要求フラグ=1として、PTCヒータ61を非作動上にしている。
t51においてCVT側でNアイドル制御の実行が許容されなくなった(Nアイドルスタンバイフラグがゼロに切換わった)ためにアイドル許可フラグがゼロに切換わったときにはエンジン回転速度Neを一定の目標アイドル回転速度に維持しながらフォワードクラッチ46を締結する必要がある。比較例1ではNアイドル制御の実行から非実行への切換中、例えばNアイドル制御の実行解除直後のt51でPTCヒータ61の作動要求があるとそのままPTCヒータ61を作動させていたため(図9第6段目の二点鎖線参照)、締結ショックを生じていた。
一方、本実施形態によれば、t51のタイミングでNアイドルPTCヒータ保持要求フラグ=1であることより、PTCヒータ61の状態変更は許されない。つまり、t51の直前にPTCヒータ61は非作動状態にあるので、t51でPTCヒータ61の作動要求があっても、その作動要求が保留され(PTCヒータ要求フラグ=0の保持)、PTCヒータ61は非作動状態のままである。
クラッチ締結中にPTCヒータ61を作動させることによってエンジン回転速度に変動が生じるのであるから、PTCヒータ61の作動要求の保留を終了するタイミングは、フォワードクラッチ46が締結するタイミングである。具体的にはフォワードクラッチ46の締結が完了するt52のタイミングから少し余裕代を採ったt53のタイミングを、PTCヒータ61の作動要求の保留(PTCヒータ要求フラグ=0の保持)を終了するタイミングとする。PTCヒータ61の作動要求をt51からt53まで保留するということは、PTCヒータ61の作動要求をt51からt53まで遅延(ディレイ)させることでもある。そこで、t51からt53までの時間はPTCヒータ作動移行ディレイとして予め適合により求めておく。
このように、本実施形態では、Nアイドル制御の実行中またはNアイドル制御の実行から非実行への切換中(フォワードクラッチ46の締結中)にPTCヒータ61の作動状態の変更を禁止してPTCヒータ61を非作動状態に保つ。フォワードクラッチ46の締結中のようにアイドル状態でのエンジン回転速度に変動が起こり得るような条件ではPTCヒータ61の状態変更を禁止して非作動状態を保つのである。これによって、クラッチ切換中にPTCヒータ61を作動させることに伴うエンジン回転速度Neの吹け上がりや吹け上がり途中でフォワードクラッチ46を締結することによる締結ショックが生じることを回避できる。
そして、PTCヒータ作動移行ディレイが経過するt53のタイミングでPTCヒータ61の作動要求の保留を解除し(PTCヒータ要求フラグをゼロより1へと切換え)、PTCヒータ61を作動させる。t53以降はDレンジアイドル状態であるので、Dレンジ状態でPTCヒータ61を作動させる分には、アイドル状態でのエンジン回転速度に大きな変動が生じることはない。
t53でPTCヒータ要求フラグがゼロより1へと切換わると、エンジンコントローラ21では、Nアイドル制御の実行を禁止するためt53のタイミングでNアイドル禁止フラグをゼロから1に切換える。
次に、本実施形態では、Nアイドル制御の非実行から実行への切換指令とPTCヒータ61の非作動から作動への切換指令とが同時に発生した場合、Nアイドル制御の非実行から実行への切換を禁止し、PTCヒータは切換指令が発生したときの状態を維持する。これについては図10を参照して説明する。図10は本実施形態でNアイドル制御の非実行から実行への切換指令と、PTCヒータ61の非作動から作動への切換指令が同時にあった場合の変化を示している。具体的には、エンジン回転速度、3つの各フラグ、NアイドルPTCヒータ保持要求フラグ、PTCヒータ要求フラグ等がどのように変化するのかをモデルで示している。ただし、図10においてPTCヒータ要求フラグは、CAN通信を介してエンジンコントローラ21が読み込む信号ではなく、PTCヒータ用アンプ62が読み込む信号である。
ここで、上記「Nアイドル制御の非実行から実行への切換指令」とは、Nアイドル許可フラグのゼロから1への切換指令(つまりNアイドル制御の実行要求)のことである。また、上記「PTCヒータ61の非作動から作動への切換指令」とは、PTCヒータ要求フラグのゼロから1への切換指令(つまりPTCヒータ61の作動要求)のことである。
アイドル許可フラグがゼロから1に切換わるt61のタイミング61で、PTCヒータ61の状態変更を禁止するため、NアイドルPTCヒータ保持要求フラグがゼロから1に切換わる。
一方、t61のタイミングでPTCヒータ61が非作動状態から作動状態へと切換わった(PTCヒータ要求フラグがゼロから1に切換わった)ので、この信号がエンジンコントローラ21にCAN通信のディレイ(約100ms)だけ遅れて伝えられる。このCAN通信のディレイ(約100ms)だけ遅れて伝えられるエンジンコントローラ21では、Nアイドル制御の実行を禁止するためt62のタイミングでNアイドル禁止フラグをゼロから1に切換える。このNアイドル禁止フラグのゼロから1への切換を受けてNアイドル許可フラグがt62のタイミングで1からゼロに切換わる。Nアイドル許可フラグが1となるt61からt62までの短い区間はCAN通信のディレイである。この区間は実際にはもっと短い期間であるが、分かり易くするため図面上では幅を拡大して示している。このt62のタイミングでのNアイドル許可フラグの1からゼロへの切換を受けてPTCヒータ作動移行ディレイが設定される。PTCヒータ作動移行ディレイは図9に示したPTCヒータ作動移行ディレイと同じものである。すなわち、PTCヒータ作動移行ディレイとして、Nアイドル許可フラグのゼロへの切換タイミングより、フォワードクラッチ46の締結が完了するタイミングから少し余裕代を採ったタイミングまでの区間が設定されている。
t61でNアイドルPTCヒータ保持要求フラグがゼロから1に切換わると、PTCヒータ61の状態変更を禁止する信号がPTCヒータ用コントローラ62にCAN通信のディレイ(約100ms)だけ遅れて伝えられる。このため、PTCヒータ用コントローラ62ではPTCヒータ61の状態変更を禁止する信号が伝わるt62移行も、PTCヒータ61は作動状態のままである(PTCヒータ要求フラグ=1に保持される)。
そして、PTCヒータ作動移行ディレイが経過するt63のタイミングでNアイドルPTCヒータ要求保持フラグが1からゼロに切換わる。つまり、PTCヒータ61の状態変更の禁止はディレイが経過するt63のタイミングまで続く。
このように、本実施形態ではNアイドル制御の非実行から実行への切換指令と、PTCヒータ61の非作動から作動への切換指令とがt61のタイミングで同時に発生した場合、t62のタイミングでNアイドル制御の非実行から実行への切換を禁止する。さらに、PTCヒータ61は切換指令がt61のタイミングで発生したときの状態を維持する。つまり、切換指令がt61のタイミングで発生したときPTCヒータ61は作動状態にあったので、t62以降もPTCヒータを作動状態に維持する。これによって、比較例2で生じていた、大電流を消費するPTCヒータが短い周期で作動、非作動を繰り返すことを回避できる。
t63以降は、図8のt41以降と同様である。すなわち、t63以降もPTCヒータ61の作動要求があるので(PTCヒータ要求フラグ=1)、PTCヒータ用アンプ62では、PTCヒータ61を作動させる。その後、PTCヒータ61の作動が不要となってPTCヒータ要求フラグが1からゼロに切換わりPTCヒータ61が非作動状態になると、その直後よりアイドル状態でのエンジン回転速度Neに目標アイドル回転速度からの上昇(変動)が生じ得る。このため、t64のタイミングよりアイドル状態でのエンジン回転速度Neの上昇(変動)が落ち着くまでNアイドル制御の実行を許可しない(Nアイドル禁止フラグ=1を継続する)。そして、アイドル状態での実際のエンジン回転速度Neの上昇(変動)が収まったタイミングでNアイドル制御の実行を許可するためNアイドル禁止フラグを1からゼロに切換える。実際のエンジン回転速度Neの変動が落ち着いた否かはエンジン回転速度Neに基づいて判定してもよいのであるが、ここでも車両1が走り出すt65のタイミングでNアイドル制御の実行を許可するためNアイドル禁止フラグを1からゼロに切換える。
また、上記のように同時要求のあったt61のタイミングよりt62のタイミングまでの短い期間(約100ms)でNアイドル制御の実行を許可する(Nアイドル許可フラグ=1)が、これによってトルク変動は起きない。
これについて図11を参照して補足すると、図11はt61のタイミングからのフォワードクラッチ圧(指示圧)、エンジン回転速度、タービン回転速度(=フォワードクラッチ46の入力回転速度)の各変化を示している。
Nアイドル許可フラグがゼロから1に切換わるt61のタイミングからNアイドル制御の実行を開始する。つまり、Nアイドル制御に移行する際にはフォワードクラッチ46に所定の指示圧が与えられるように、CVTコントローラ41がコントロールバルブ47を制御する。ここでは、通常のクラッチ解放時の指示圧の変化(図11最上段の実線参照)を先に説明し、その後に本実施形態の場合の指示圧の変化(図11最上段の破線参照)を説明する。
まず、通常のクラッチ解放時であれば、指示圧をクラッチ締結時の圧力Aからゆっくり低下させていき、最終的にNアイドル制御時の圧力Bに到達させる。フォワードクラッチ46が開放されたか否かはトルクコンバータ8のタービン回転速度(=フォワードクラッチ46の入力軸回転速度)よりわかる。つまり、t63のタイミングよりタービン回転速度が立ち上がるので、t63のタイミングがフォワードクラッチ46の開放開始タイミングである。このように、指示圧を低下させる指令をt61で出してから実際にフォワードクラッチ46が開放を開始するt63までには、ある程度の時間を要している。
次に、本実施形態の場合には、t62のタイミングでNアイドル許可フラグが1からゼロに切換わる。図11にこのt62のタイミングを記入してみると、t61からt62までの区間はCAN通信の遅れ(ほぼ100ms)でしかないので、t62のタイミングはフォワードクラッチの開放が開始されるt63よりも早い時期にくることとなる。言い換えると、同時要求時にPTCヒータ用コントローラ62からNアイドル制御の実行禁止要求がエンジンコントローラ21に約100ms遅れて送信されるとしても、100msであればフォワードクラッチ46が開放される前の締結状態にある。そして、フォワードクラッチ46が開放される前の締結状態でNアイドル許可フラグをゼロに戻すので、本実施形態の場合には指示圧はt62のタイミングから上昇して、Nアイドル制御時の圧力Aに戻る(図11最上段の破線参照)。よって、本実施形態の場合にはフォワードクラッチ46が開放されることがなく締結状態を維持し得るので、フォワードクラッチ46の開放に伴うエンジン回転速度Neの変動や開放した後にフォワードクラッチ46を再び締結するときのショックなどが生じることはないのである。
エンジンコントローラ21、PTCヒータ用アンプ65、CVTコントローラ41で協働して実行されるこの制御を以下のフローチャートを参照して詳述する。図12のフローチャートは、Nアイドル禁止フラグを設定するためのもので、エンジンコントローラ21が一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
ステップ1ではアイドル中であるか否かをみる。アイドル中であれば、ステップ2に進みNアイドル制御の実行を禁止する条件であるか否かをみる。Nアイドル制御の実行を禁止する条件であるときにはステップ3に進み、Nアイドル禁止フラグ=1とする。
ステップ4では、車両1が走行を経験したか否かをみる。ここで、ブレーキスイッチ38がONでありかつ車速が所定値(例えば3km/h)を超えたときには車両1が走行を経験したと判断する。車速は図示しない車速センサにより検出すればよい。このステップ4での判定部分は、Nアイドル制御の解除直後に生じるエンジン回転速度の変動が落ち着いたか否かをみる判定部分の代用である。車両が走行を経験したときにはNアイドル制御の解除直後に生じるエンジン回転速度の変動が落ち着いたと判断し、ステップ3でNアイドル禁止フラグ=1としていても、ステップ5でNアイドル禁止フラグ=0とする。
ステップ4,5は本実施形態で新たに導入した部分である。ステップ4でブレーキスイッチ38がOFFである場合やブレーキスイッチ38がONであっても車速が所定値未満であれば車両が走行を経験していないきには、Nアイドル制御の解除直後に生じるエンジン回転速度の変動が落ち着いてないと判断する。このときにはNアイドル制御の実行禁止を継続するため、Nアイドル禁止フラグ=1のままとする(そのまま今回の処理を終了する)。
ステップ2でNアイドル制御の実行を禁止する条件でないときにはステップ6に進み、Nアイドル禁止フラグ=0とする。
例えば、図8,図10においてt42,t65のタイミングでは、図12のステップ1→2→3→4→5と流れてNアイドル禁止フラグが1からゼロに切換えられる。
ステップ4,5も本実施形態で新たに導入した部分である。ステップ7ではPTCヒータ要求フラグをみる。PTC要求フラグは、PTCヒータ用アンプ62が外気温度とエンジン冷却水温度とに基づいて設定している。PTCヒータ要求フラグ=1であるときには、Nアイドル制御の実行を禁止するためステップ8に進みNアイドル禁止フラグ=1とする。
ステップ7でPTCヒータ要求フラグ=0であるときにはそのまま今回の処理を終了する。
例えば、図8においてt41以前の区間、図9においてt53以降の区間、図10においてt62からt64までの区間で図12のステップ1→2→6→7→8と流れてNアイドル禁止フラグ=1とされる。
このように設定されるNアイドル禁止フラグの状態と、CVTコントローラ41から送られてくるNアイドルスタンバイフラグの状態とからエンジンコントローラ21における図示しないフローにおいてNアイドル許可フラグが設定される。
図13のフローチャートは、本実施形態で新たに導入したディレイフラグを設定するためのもので、エンジンコントローラ21が一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。ここで、ディレイフラグは、図9,図10に示したようにNアイドル許可フラグが1からゼロに切換わったタイミングからPTCヒータ作動移行ディレイの間、PTCヒータ61の作動を遅らせるために必要となるフラグである。
ステップ11,12ではNアイドル許可フラグ=0であるか否か、前回はNアイドル許可フラグ=1であったか否かをみる。今回にNアイドル許可フラグ=0でありかつ前回はNアイドル許可フラグ=1であった、つまり今回にNアイドル許可フラグが1からゼロに切換わったときには、ステップ13に進みタイマを起動する(タイマ値t1=0)。このタイマは、Nアイドル許可フラグが1からゼロに切換わったタイミングからの経過時間を計測するためのものである。ステップ14では、ディレイフラグ=1とする。
ステップ11,12で今回にNアイドル許可フラグ=0でありかつ前回もNアイドル許可フラグ=0であった、つまりNアイドル許可フラグ=0を継続しているときには、ステップ15に進みタイマ値t1と所定値を比較する。ここで、所定値はNアイドル制御の解除タイミングでPTCヒータの作動要求があったとしても、PTCヒータ61の作動をフォワードクラッチ46の締結後まで遅延させるため時間で、予め定めておく。ステップ15に進んだ当初はタイマ値t1が所定値未満にあるので、ステップ14に進み、ステップ14の操作を実行する。
ステップ15でタイマ値t1が所定値未満にある間は、ステップ14の操作を繰り返す。やがてステップ15でタイマ値t1が所定値以上になると、ステップ16に進みディレイフラグ=0とする。このように、ディレイフラグは、Nアイドル許可フラグが1からゼロに切換わったタイミングからPTCヒータ作動移行ディレイの間、1となるフラグである。
図13のフローで設定されたディレイフラグは、図14のフローで用いられる。
次に、図14のフローチャートは、本実施形態で新たに導入したNアイドルPTCヒータ保持要求フラグを設定するためのもので、図13のフローに続けてエンジンコントローラ21が一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
ステップ21ではNアイドル許可フラグをみる。Nアイドル許可フラグ=1であるときにはステップ22に進み、NアイドルPTCヒータ保持要求フラグ=1とする。NアイドルPTCヒータ保持要求フラグは、Nアイドル制御の実行中及びNアイドル制御の実行解除タイミングよりPTCヒータ作動移行ディレイが経過するまで、PTCヒータ61の状態を現状に維持する(状態の変更を禁止する)ためのフラグである。NアイドルPTCヒータ保持要求フラグ=1のとき、Nアイドル制御の実行中及びNアイドル制御の実行解除タイミングよりPTCヒータ作動移行ディレイが経過するまで、PTCヒータ61の状態が現状に維持される(状態の変更が禁止される)。
ステップ21でNアイドル許可フラグ=0であるときにはステップ23に進み、ディレイフラグ(図13により既設定)をみる。ディレイフラグ=1であるときには、Nアイドル許可フラグが1からゼロに切換わったタイミング後のPTCヒータ作動移行ディレイ中もPTCヒータ61の状態を現状に維持させるため、ステップ22に進みステップ22の操作を実行する。ステップ23でディレイフラグ=1である間、ステップ22の操作を繰り返す。
やがて、Nアイドル許可フラグが1からゼロに切換わったタイミング後のPTCヒータ作動移行ディレイが経過すればステップ23でディレイフラグ=0となる。このときにはステップ24に進んで、NアイドルPTCヒータ保持要求フラグ=0とする。
このように設定される保持要求フラグは、図9に示したようにNアイドル制御の実行中(t51以前)及びNアイドル制御の実行解除タイミングよりPTCヒータ作動移行ディレイが経過するまで(t51からt53までの区間)1となるフラグである。また、図10に示したように保持要求フラグは、Nアイドル制御の実行中(t61からt62まdの区間)及びNアイドル制御の実行解除タイミングよりPTCヒータ作動移行ディレイが経過するまで(t62からt63までの区間)1となるフラグである。
図14のフローで設定されたNアイドルPTCヒータ保持要求フラグは、図15のフローで用いられる。
次に、図15のフローチャートは、PTCヒータ61の作動・非作動を制御するためのもので、PTCヒータ用アンプ62が図14のフローに続けて一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
ステップ31,32は本実施形態で新たに導入した部分である。ステップ31ではNアイドルPTCヒータ保持要求フラグ(図15では「PTCヒータ保持要求フラグ」で略記。)(図14により既設定)をみる。NアイドルPTCヒータ保持要求フラグ=1であるときにはステップ32に進み保持要求フラグが1に切換わったタイミングでのPTCヒータ61の作動状態を保持させる(状態の変更を禁止する)。例えば図10においてt61のタイミングで保持フラグが1に切換わったとき、t61ではPTCヒータ61が作動状態にあった(PTCヒータ要求フラグ=1)ので、t62以降もPTCヒータ61が作動状態(PTCヒータ要求フラグ=1)に保持される。
一方、ステップ31でNアイドルPTCヒータ保持要求フラグ=0であるときにはステップ33に進み、PTCヒータ要求フラグをみる。ステップ33でPTCヒータ要求フラグ=1であるときにはステップ34に進みPTCヒータ61を作動させる。ステップ33でPTCヒータ要求フラグ=0であるときにはステップ35に進みPTCヒータ61を非作動状態とする。
次に、図16のフローチャートは、フォワードクラッチ46を締結するためのもので、CVTコントローラ41が一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。図16のフローは比較例1,2、本実施形態に共通である。
ステップ41では、クラッチ締結完了フラグをみる。ここではクラッチ締結完了フラグ=0であるとしてステップ42に進みクラッチ締結作動フラグをみる。ここではクラッチ締結作動フラグ=0であるとしてステップ43,44に進む。
ステップ43,44では今回にNアイドル許可フラグ=0であるか否か、前回にNアイドル許可フラグ=1であったか否かをみる。今回にNアイドル許可フラグ=0でありかつ前回にNアイドル許可フラグ=1であった、つまり今回にNアイドル許可フラグが1からゼロに切換わったときには、ステップ45,46に進む。ステップ45,46では、フォワードクラッチ46を締結するためクラッチ締結作動フラグ=1とすると共に、フォワードクラッチ46に与える指示圧(以下単に「指示圧」という。)PcmdのNアイドル制御時の圧力Bからの上昇を開始させる。
ステップ45でクラッチ締結作動フラグ=1としたことより次回にはステップ42よりステップ47以降に進む。
ステップ47では、指示圧Pcmdと所定値を比較する。ここで、所定値はフォワードクラッチ締結時の圧力Aで、予め設定しておく。指示圧Pcmdが所定値未満であるときにはステップ48に進み、指示圧Pcmdを所定の速度で上昇させる。
ステップ48の操作を繰り返すことで指示圧Pcmdが徐々に上昇する。やがてステップ47で指示圧Pcmdが所定値以上となればフォワードクラッチ46が締結を完了したと判断してステップ49に進みクラッチ締結完了フラグ=1とする。ステップ50では次回のフォワードクラッチ46締結に備えてクラッチ締結作動フラグ=0とする。
ステップ49で1とされたクラッチ締結完了フラグは、図示しないフォワードクラッチを開放するためのフローでゼロに戻される。
なお、ここでは、クラッチ締結に際して指示圧PcmdをNアイドル制御時の圧力Bからクラッチ締結時の圧力Aへと徐々に上昇させる場合で説明したが、この場合に限られるものでない。図9に示したように、クラッチ締結当初にプリチャージを行わせ、その後に2段階の速度で指示圧を制御するものであってよい。
このように構成した場合の本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態では、VTコントローラ41(Nアイドル制御実行手段)と、空調ユニット51と、PTCヒータ用アンプ62(PTCヒータ作動制御手段)とを備えている。上記のCVTコントローラ41は、エンジン2がアイドル状態にあるDレンジでの停車時に、エンジン2とCVT9(自動変速機)とを締結するフォワードクラッチ46を非締結としてCVT9をニュートラル状態にするNアイドル制御を実行する。上記の空調ユニット51は、PTCヒータ61を内蔵しPTCヒータ61の作動で加熱した空気を車内に送風する。上記のPTCヒータ用アンプ62は、PTCヒータ51の作動・非作動を切換え可能である。さらに、本実施形態では、PTCヒータ61の作動中またはPTCヒータ61の作動から非作動への切換に伴う前記アイドル状態にあるエンジン回転速度の変動中にNアイドル制御の実行を禁止する。本実施形態によれば、PTCヒータ61が先に作動しているときには暖房を優先させるため、PTCヒータ61の作動を優先しNアイドル制御の実行を禁止する。これによって、PTCヒータ61の作動解除直後にNアイドル制御を実行することによるエンジン回転速度の吹け上がりや吹け上がり途中にフォワードクラッチ46を締結することに伴う締結ショックの発生を防止できる。
本実施形態では、Nアイドル制御の実行中またはNアイドル制御の実行から非実行への切換中にPTCヒータ61の状態の変更を禁止する。言い換えると、Nアイドル制御を先に実行しているときには、消費電力が大きいPTCヒータ61の作動を禁止する。これによって、Nアイドル制御の実行解除直後のクラッチ締結中にPTCヒータ61を作動させることによるエンジン回転速度の一時的低下後の吹け上がりや吹け上がり途中にフォワードクラッチ46を締結することに伴う締結ショックの発生を防止できる。
本実施形態によれば、Nアイドル制御の非実行から実行への切換指令と、PTCヒータ61の非作動から作動への切換指令とが同時に発生した場合、次のようにする。すなわち、Nアイドル制御の非実行から実行への切換を禁止すると共に、PTCヒータ61は切換指令が発生したときの状態を維持するので、大電流を消費するPTCヒータ61が短い時間で作動、非作動を繰り返すことを回避できる。
(第2実施形態)
図17のフローチャートは、第2実施形態で、第1実施形態の図12のフロー置き換わるものである。図12のフローと同じ部分には同じ符号を付している。
第1実施形態と相違する部分を主に説明すると、ステップ61ではエンジン回転速度Neの変動が落ち着いたか否かをみる。エンジン回転速度Neの変動が落ち着いてなれけばそのまま今回の処理を終了する。エンジン回転速度Neの変動が落ち着けば、Nアイドル制御を許可するためステップ5に進み、Nアイドル禁止フラグ=0とする。
第2実施形態でも第1実施形態と同様の作用効果を奏する。