以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。図1は本発明の実施形態としての廃棄物処理システム1000の全体構成をブロック視して示す説明図である。図示するように、本実施形態の廃棄物処理システム1000は、水熱処理ブロック1100と、曝気ブロック1200と、消化ブロック1300とを備え、各ブロック間において液状成分或いはガス成分を移送しつつ、被処理物である有機物含有廃棄物を処理する。この被処理物は、水熱処理ブロック1100に投入され、水熱処理ブロック1100に含まれる後述の水熱処理装置100にて水熱処理される。当該処理にて得られた液状成分は、曝気ブロック1200に含まれる後述の曝気処理装置300に移送される。この曝気処理装置300に移送された液状成分は、当該装置にて後述するように重金属が除去され、重金属除去後の液状成分は、消化ブロック1300に含まれる後述の消化処理装置400に移送される。この消化処理装置400に移送された液状成分は、当該装置にて後述するように嫌気性消化処理を受ける。以下、各ブロックの機器構成について説明する。図2は水熱処理ブロック1100に含まれる水熱処理装置100の概略構成を示す説明図、図3は曝気ブロック1200に含まれる曝気処理装置300の概略構成を示す説明図、図4は消化ブロック1300に含まれる消化処理装置400の概略構成を示す説明図である。
図2に示すように、本実施形態の水熱処理ブロック1100には、水熱処理装置100と、水蒸気供給機器群200とが含まれる。水熱処理装置100は、中空の処理装置本体1と、貯留タンク2と、中空の脱水管11と、水熱処理制御装置110とを備える。処理装置本体1は、筒状の外筒3と、排気管4と、吸気管5と、排液管6と、蓋部7と、固定治具8と、回転スライド機構9と、シャフト10と、脱水管11とを有して構成されている。貯留タンク2は、処理装置本体1の下方側に配設され、処理装置本体1の底部から排出される液体、即ち被処理物から脱水分離した液状成分を貯留する。そして、この貯留タンク2は、給排気管21と給液管22とを備え、給液管22を開閉バルブ23を介して処理装置本体1の排液管6と連結させている。この他、貯留タンク2は、下部側に、ドレン管24を備え、管路途中の開閉バルブ24aの開弁を経て、タンク内の液体を後述の曝気処理装置300に移送(排出)する。
処理装置本体1の外筒3は円筒形状の部分を有し、その円筒形状の回転スライド機構9側の一端にフランジ部3aが設けられている。外筒3のフランジ部3aとは反対側の一端には、固定治具8によって、蓋部7が固定されている。そして、この固定治具8で蓋部7が固定された状態において、処理装置本体1は、外筒3の内部領域において中空となり、固定治具8にて、蓋部7を後述の脱水管蓋部11aと共に外筒3から取り外すことができる。
脱水管11は、外筒3に沿った有底の円筒形状をなし、外筒3の内部に正逆回転自在に配設される。この脱水管11は、その円筒周壁に、複数の開口部11bを備え、固定治具8の側の解放端の側に脱水管蓋部11aを着脱自在に備える。脱水管蓋部11aは、外筒3の蓋部7に連結されており、蓋部7を外筒3から取り外すときに、併せて脱水管蓋部11aも脱水管11から取り外すことができる。よって、脱水管蓋部11aが固定治具8にて蓋部7と共に取り外された状態で、脱水管11には被処理物が投入可能となり、脱水管11は、被処理物が投入された状態で処理装置本体1に収納され、後述の水蒸気供給機器群200により、外筒3の内部において、被処理物と共に亜臨界雰囲気下に置かれる。脱水管11の内部には、12が配設されており、このピストン12は、ピストン外周壁と脱水管内周壁のキーとキー溝等により脱水管11と係合された上、脱水管11の円筒の内面に沿って摺動(スライド)自在とされている。そして、シャフト10が、フランジ部3aおよび脱水管11の底部を貫通して、このピストン12に連結されている。外筒3および脱水管11は、その長手方向が水平であり、この長手方向に平行なシャフト10の長手方向が重力に対してほぼ垂直になる横型に設置されており、外筒3の内部においては、重力に従った下側の円筒部分が外筒3の底部となる。
回転スライド機構9は、ピストン12から延びたシャフト10と係合し、内蔵する図示しないギヤ機構により、シャフト10の長手方向に沿った前後退のスライド運動とシャフト10の軸を中心とした正逆の回転運動とを、それぞれ単独で、或いは並行して実行可能に構成されている。ピストン12は、既述したように脱水管11と係合していることから、回転スライド機構9によるシャフト10の回転運動により、脱水管11は、ピストン12と共に回転する。ピストン12と脱水管11の係合は、図1に示す脱水管11の底部の原位置の他、後述の圧縮終端位置、圧縮解放位置においても維持されるので、図2の原位置での回転スライド機構9によるシャフト10の回転運動により、脱水管11は、ピストン12と共に回転し、投入済みの被処理物を攪拌する。後述の圧縮終端位置や圧縮解放位置においても、脱水管11は、ピストン12と共に、回転スライド機構9により回転運動する。この他、ピストン12は、回転スライド機構9によって、シャフト10の長手方向に沿って単独で、脱水管11の内部をスライド駆動する。なお、回転スライド機構9による上記したスライド運動や回転運動は、後述の水熱処理制御装置110の制御下でなされる。
排気管4は、外気側の一端に開閉バルブ4aを備え、当該バルブの開弁を経て、外筒3の内部を外気や外部装置に開放する。吸気管5は、水蒸気供給機器群200と接続されており、水蒸気供給機器群200が生成する高温・高圧の亜臨界状態の水蒸気を処理装置本体1の内部に導入する。この水蒸気導入のタイミングは、後述の水熱処理制御装置110にて設定され、水熱処理制御装置110の制御下で、処理装置本体1の内部は、亜臨界状態の水蒸気により亜臨界雰囲気となる。排液管6は、処理装置本体1の下方側に配設された貯留タンク2と処理装置本体1の底部とを結ぶ管路を給液管22と共に形成し、開閉バルブ23の開弁を経て、外筒3の内部の液体、即ち被処理物から脱水分離した液状成分を貯留タンク2に導く。また、貯留タンク2の給排気管21は、その一端に開閉バルブ21aを備え、当該バルブを介して水蒸気供給機器群200と接続されており、水蒸気供給機器群200が生成する高温・高圧の亜臨界状態の水蒸気を貯留タンク2の内部に導入する。この水蒸気導入のタイミングは、後述の水熱処理制御装置110にて設定され、水熱処理制御装置110の制御下で、貯留タンク2の内部は亜臨界状態の水蒸気により加圧され、貯留タンク2は、処理装置本体1の亜臨界雰囲気と等圧とされる。開閉バルブ21aは、いわゆる三方弁として構成されて給排気管21を水蒸気供給機器群200に繋ぐほか、給排気管21を大気解放管21bとも接続し、貯留タンク2の内部の水蒸気を給排気管21と大気解放管21bを経て大気放出する。上記した各種バルブは、水熱処理制御装置110にて駆動制御される。
水熱処理制御装置110は、論理演算を実行するCPUや、ROM、RAMを有するコンピューターとして構成され、水熱処理装置100を統括制御する。つまり、この水熱処理制御装置110は、図示しない各種スイッチやセンサーの入力を受けつつ、既述した各種バルブを開閉制御すると共に、水蒸気供給機器群200からの亜臨界状態の水蒸気の導入制御、回転スライド機構9の駆動制御を実行する。
図3に示すように、本実施形態の曝気ブロック1200には、曝気処理装置300と、曝気後固液分離装置360と、ボイラー機器380とが含まれる。曝気処理装置300は、中空密閉状の処理容器302と、ガス曝気機構304と、硫化水素ガス予備タンク306と、曝気管308と、攪拌機器310と、曝気制御装置330とを備える。処理容器302は、水熱処理装置100の貯留タンク2(図2参照)とドレン管24を介して接続されている。そして、この処理容器302には、水熱処理装置100にて水熱処理を受けた被処理物(有機物含有廃棄物)から分離された液状成分(以下、水熱処理済み液状成分We)が貯留タンク2からドレン管24を経て移送され、処理容器302は、この水熱処理済み液状成分Weを貯留する。
ガス曝気機構304は、後述の消化処理装置400の消化槽402とガス放出管422を介して接続されている。そして、このガス曝気機構304は、ガス放出管422を消化槽402から移送されてきたガス(後述の消化処理ガスSg)を、処理容器302の底部まで延びる曝気管308に導いて処理容器底部から曝気し、処理容器302に貯留された水熱処理済み液状成分Weに消化処理ガスSgを接触させる。この際の消化処理ガスSgの曝気量や継続時間は、水熱処理装置100から処理容器302に移送されて当該容器に貯留された水熱処理済み液状成分Weの液量に応じて定められている。この他、ガス曝気機構304は、ガス放出管422から移送される消化処理ガスSgのガス量と当該ガスに含まれる硫化水素ガス量(硫化水素濃度)とを検出するセンサー305を備え、そのセンサー出力により、次のように働く。センサー出力から、消化処理ガスSgに含まれる硫化水素ガス量が規定ガス量より少ない、或いは消化処理ガスSgのガス量自体が規定ガス量より少ないと、ガス曝気機構304は、後述の曝気制御装置330の制御を受けて、硫化水素ガス予備タンク306に貯留済みの硫化水素ガスを、ガス管路307を経て、曝気管308に導く。硫化水素ガス予備タンク306からの硫化水素ガス導入を定める上記の規定ガス量は、既述した水熱処理済み液状成分Weの液量に応じて定められている。
曝気制御装置330は、論理演算を実行するCPUや、ROM、RAMを有するコンピューターとして構成され、曝気処理装置300とその付属機器である曝気後固液分離装置360やボイラー機器380を統括制御する。つまり、この曝気制御装置330は、図示しない各種スイッチやセンサー305の入力を受けつつ、既述したガス曝気機構304による曝気や、硫化水素ガスの補給、各管路のバルブ開閉の他、水熱処理装置100からの水熱処理済み液状成分Weの移送、攪拌機器310の駆動等を統括制御する。
曝気後固液分離装置360は、導入管362を介して処理容器302の底部と連通し、バルブ364の開放を経て、処理容器302から水熱処理済み液状成分Weを受け入れ、当該液状成分を凝集法や濾過機器等を用いて固液分離に処する。この場合、バルブ364の開放制御は、曝気制御装置330にて消化処理ガスSgの曝気終了のタイミングに合わせてなされる。そして、この曝気後固液分離装置360は、水熱処理済み液状成分Weの固液分離を経て得た固形成分を、バルブ372の開放制御を経て固形成分排出管370から排出する。また、曝気後固液分離装置360は、水熱処理済み液状成分Weの固液分離を経て得た液状成分(以下、曝気処理済み液状成分Be)を、移送管366を経て後述の消化処理装置400(詳しくは、その消化槽402)に移送する。この移送は、曝気制御装置330の制御を受けたポンプ368にて所定のタイミングでなされる。
ボイラー機器380は、ガス導入管382を介して処理容器302の液面上部と連通し、ガス吸引ファン384の吸引回転を経て、処理容器302の液面上部からガスを吸引する。処理容器302の液面上部のガスは、処理容器302の底部から曝気されて水熱処理済み液状成分Weを浮上して液面から放出された消化処理ガスSgであり、この消化処理ガスSgは、後述の嫌気性消化処理により生成されたバイオガスであって、ガス中にメタン等の可燃性ガスを含む。よって、ボイラー機器380は、吸引した消化処理ガスSgを燃焼させ、その燃焼熱を、水熱処理装置100の水蒸気供給機器群200に伝搬することで、水熱処理装置100の処理装置本体1における亜臨界雰囲気の発現または維持に用いる。この場合、ガス吸引ファン384の回転制御は、曝気制御装置330にて消化処理ガスSgの曝気開始のタイミングに合わせてなされる。なお、ボイラー機器380を水蒸気供給機器群200に近接すれば、燃焼熱の伝搬効率が高まるので、ボイラー機器380を水蒸気供給機器群200の付属機器としてもよい。
図4に示すように、本実施形態の消化ブロック1300には、消化処理装置400と、消化処理後固液分離装置410と、ガス圧送機器420とが含まれる。消化処理装置400は、中空密閉状の消化槽402と、攪拌機器404と、消化制御装置430とを備える。消化処理装置400は、消化槽402の内部を嫌気性に維持して、消化槽内を、例えば嫌気性メタン発酵菌等の各種の嫌気性細菌の生育環境とする。消化処理装置400は、こうした好気性細菌を適宜、消化槽402に補充等することで、これら嫌気性細菌による嫌気性消化処理を消化槽402にて継続維持する。消化槽402は、曝気処理装置300の曝気後固液分離装置360(図3参照)と移送管366を介して接続されている。そして、この消化槽402には、曝気処理装置300にて消化処理ガスSgの曝気を受けた後に曝気後固液分離装置360にて固液分離された曝気処理済み液状成分Beが移送管366を経て移送され、消化槽402は、この曝気処理済み液状成分Beを貯留する。つまり、消化処理装置400では、曝気処理済み液状成分Beを消化槽402にて嫌気性消化処理し、曝気処理済み液状成分Beに含まれる有機成分を生物分解し、その分解の結果として消化処理ガスSgを曝気処理済み液状成分Beの液面から放出する。
消化制御装置430は、論理演算を実行するCPUや、ROM、RAMを有するコンピューターとして構成され、消化処理装置400とその付属機器である消化処理後固液分離装置410やガス圧送機器420を統括制御する。つまり、この消化制御装置430は、図示しない各種スイッチやセンサーの入力を受けつつ、各管路のバルブやファンの駆動の他、攪拌機器404や消化処理後固液分離装置410等を駆動制御する。
消化処理後固液分離装置410は、導入管412を介して消化槽402の底部と連通し、バルブ413の開放を経て、消化槽402から水熱処理済み液状成分Weを受け入れ、当該液状成分を凝集法や濾過機器等を用いて固液分離に処する。この場合、バルブ413の開放制御は、消化制御装置430にて、消化槽402における嫌気性消化処理の進行状況に合わせてなされる。そして、この消化処理後固液分離装置410は、水熱処理済み液状成分Weの固液分離を経て得た固形成分を、バルブ415の開放制御を経て固形成分排出管414から排出する。また、消化処理後固液分離装置410は、水熱処理済み液状成分Weの固液分離を経て得た液状成分(処理完了液状成分)を、排出管416を経て排出する。この固形成分や処理完了液状成分の排出は、消化制御装置430の制御を受けたバルブ413とバルブ417にて所定のタイミングでなされる。
ガス圧送機器420は、ガス放出管422を介して消化槽402の液面上部と連通し、ガス吸引ファン424の吸引回転を経て、消化槽402の液面上部からガスを吸引する。消化槽402の液面上部のガスは、曝気処理済み液状成分Beに含まれる有機成分を嫌気性消化処理により生物分解した結果として生成され、曝気処理済み液状成分Beを浮上して液面から放出された消化処理ガスSgであり、この消化処理ガスSgは、嫌気性消化処理により生成されたバイオガスであって、ガス中にメタン等の可燃性ガスの他、硫化水素を含有する。そして、ガス圧送機器420は、硫化水素含有のバイオガスたる消化処理ガスSgの総てを、曝気処理装置300のガス曝気機構304(図3参照)に移送する。この場合、ガス吸引ファン424の回転制御は、消化制御装置430にて、消化槽402での嫌気性消化処理の進行状況に応じてなされる。なお、ガス圧送機器420によるガス曝気機構304への消化処理ガスSgの移送を、その一部のガスの移送とするようにしてもよく、未移送の消化処理ガスSgについては、これを曝気処理装置300のボイラー機器380に送るようにしてもよい。
次に、以上のように構成された本実施形態の水熱処理装置100を用いた水熱処理を含む有機物含有廃棄物の処理プロセスについて説明する。まず、水熱処理の処理プロセスについて説明する。図5は水熱処理プロセスの手順を示すフローチャートである。なお、図5に示す水熱処理の実行に先立って、水熱処理制御装置110は、開閉バルブ23等の各種バルブを閉弁制御し、図示しないスタートスイッチの操作を経て、図5の水熱処理を実行する。
図5に示すように、本実施形態による水熱処理方法においては、まず、亜臨界処理工程を行う(ステップST1)。図6は亜臨界処理工程における水熱処理装置100の駆動の様子を模式的に示す説明図である。なお、図6では、理解の便を図るため、処理装置本体1については、透視して内部の様子を示している。図7以降においても同様である。この亜臨界処理工程の開始前において、蓋部7および脱水管蓋部11aを取り外して、脱水管11の内部に被処理物としての有機物含有廃棄物(以下、有機性汚泥31)を収納した後、図6に示すように、蓋部7および脱水管蓋部11aを閉めて固定治具8により外筒3と蓋部7とを密着固定させて外筒3の内部を密閉する。これ以降において、亜臨界処理工程がなされる。
水熱処理制御装置110は、排気管4の開閉バルブ4a、排液管6の開閉バルブ23、給排気管21の開閉バルブ21a、およびドレン管24の開閉バルブ24aを閉状態に維持しつつ、水蒸気供給機器群200から吸気管5を通じて、高温・高圧の亜臨界状態の水蒸気を処理装置本体1の内部、詳しくは外筒3の内部に導入する。ここで、本実施形態においては、水蒸気供給機器群200から供給する水蒸気の温度を133℃以上212℃以下、具体的には例えば210℃とする。これによって、外筒3の内部が高温・高圧で亜臨界状態の水蒸気で満たされるとともに、脱水管11の内部にも円筒部分の開口部11bを通じて水蒸気が浸入して、高温高圧で亜臨界状態の水蒸気で満たされる。つまり、処理装置本体1は、導入された亜臨界状態の水蒸気により、その内部が亜臨界雰囲気とされ、脱水管11にあっては、有機性汚泥31が投入された状態で処理装置本体1に収納されて、有機性汚泥31と共に亜臨界雰囲気下に置かれることになる。本実施形態では、この亜臨界雰囲気を亜臨界処理工程に亘って維持しており、その圧力は、0.1MPa以上22.1MPa以下、好適には、0.2MPa以上1.6MPa以下、より好適には、0.7MPa以上1.1MPa以下、具体的には例えば0.9MPaとし、温度については、これを、120℃以上200℃以下、好適には、160℃以上180℃以下、具体的には例えば170℃とした。本実施形態では、こうした高温・高圧の水蒸気により亜臨界雰囲気を発現もしくは維持するに当たり、図3の曝気処理装置300におけるボイラー機器380が消化処理ガスSgを燃焼済みであれば、その燃焼熱を亜臨界雰囲気の発現もしくは維持に用いる。
水熱処理制御装置110は、この亜臨界雰囲気において、回転スライド機構9を駆動制御して、シャフト10をその軸中心に正逆回転させる。ピストン12は、図示する原位置に位置して脱水管11と既述したように係合していることから、シャフト10の正逆回転は、ピストン12を介して脱水管11に伝達される。これにより、脱水管11は、有機性汚泥31を収納したまま正逆回転、即ち揺動し、有機性汚泥31を攪拌するので、有機性汚泥31の全体に亜臨界状態の水蒸気が有機性汚泥31の各所に行き渡る。これによって、有機性汚泥31に対する亜臨界処理、即ち亜臨界雰囲気下での有機性汚泥31の水熱処理が行われる。この亜臨界処理工程がなされている間において、外筒3の底部には、供給された水蒸気が凝集したり、有機性汚泥31から水分などの液状成分が漏出したりすることによって、処理水32が貯留する。
次に、図5に示すように、亜臨界中圧縮脱水工程を行う(ステップST2)。亜臨界処理工程から亜臨界中圧縮脱水工程への推移は、水熱処理制御装置110の計測した経過時間等に応じてなされる。図7は亜臨界中圧縮脱水工程における水熱処理装置100の駆動の様子を模式的に示す説明図である。この亜臨界中圧縮脱水工程においては、既述した亜臨界処理工程で発現させた亜臨界雰囲気を処理装置本体1にて維持したまま、水熱処理制御装置110は、回転スライド機構9を駆動制御してシャフト10を外筒3の内部に向けて前進スライドさせる。この際、水熱処理制御装置110は、回転スライド機構9によるシャフト10の回転を起こさない。これにより、ピストン12が脱水管蓋部11aに向かってスライド移動して、ピストン12と脱水管蓋部11aとの間で有機性汚泥31が圧縮され、脱水処理が行われる。この際のピストン12の位置が既述した圧縮終端位置となる。この圧縮終端位置まで前進スライドしたピストン12により有機性汚泥31が脱水管11の内部で圧縮されると、有機性汚泥31に含まれる水分などの液状成分(脱水ろ液)が脱水管11の開口部11bを通じて排出される。これにより、外筒3内にさらに処理水32が貯留される。この亜臨界雰囲気を維持したままの亜臨界中圧縮脱水工程では、亜臨界雰囲気においてステップST1の水熱処理(亜臨界処理)を受けた有機性汚泥31から液状成分が圧縮を経て脱水分離され、その分離した液状成分を処理水32として処理装置本体1の底部に導くことになる。こうして分離した処理水32は、水熱処理装置100にて水熱処理を受けた被処理物(有機物含有廃棄物)たる有機性汚泥31から分離された液状成分であって、既述した水熱処理済み液状成分Weに他ならない。
このとき、亜臨界処理がされた有機性汚泥31の内部に含まれる液体状の水分の粘度は、処理装置本体1が亜臨界雰囲気下にあって高温高圧である故に、見かけ上、低下する。このため、亜臨界処理がされた有機性汚泥31を、亜臨界状態の高温高圧雰囲気において圧縮脱水することにより、圧縮による脱水性を向上させることができ、高温高圧の亜臨界状態を脱水処理に有効利用することができる。
次に、貯留タンク昇圧工程を行う(ステップST3)。亜臨界中圧縮脱水工程から貯留タンク昇圧工程への推移は、水熱処理制御装置110の計測した経過時間等に応じてなされる。図8は貯留タンク昇圧工程における水熱処理装置100の駆動の様子を模式的に示す説明図である。この貯留タンク昇圧工程においては、処理装置本体1の内部にあっては既述した亜臨界雰囲気を維持したまま、水熱処理制御装置110は、給排気管21の開閉バルブ21aを駆動制御して、水蒸気供給機器群200から給排気管21を通じて、高温・高圧の亜臨界状態の水蒸気を貯留タンク2の内部に導入する。これにより、貯留タンク2の内部は、加圧され、処理装置本体1における亜臨界雰囲気と等圧となる。
次に、図5に示すように、亜臨界中脱液工程を行う(ステップST4)。貯留タンク昇圧工程から亜臨界中脱液工程への推移は、水熱処理制御装置110の計測した経過時間、或いは図示しないセンサーにて計測した処理装置本体1と貯留タンク2の内圧対比(等圧化)等に応じてなされる。図9は亜臨界中脱液工程における水熱処理装置100の駆動の様子を模式的に示す説明図である。この亜臨界中脱液工程においては、水熱処理制御装置110は、まず、開閉バルブ21aを閉弁制御して、貯留タンク2への水蒸気導入を停止し、その後、開閉バルブ23を開弁制御する。これにより、処理装置本体1にあっては既述した亜臨界雰囲気が維持されたまま、処理装置本体1と貯留タンク2とが等圧の状況下で、処理装置本体1の底部から、ここに貯まっていた処理水32(水熱処理済み液状成分We)が、自重により排液管6と給液管22を結ぶ流出経路32rに沿って貯留タンク2に移送(排出)される。貯留タンク2では、処理装置本体1からの処理水32の排水に伴い、タンク内の処理水32(水熱処理済み液状成分We)の水位が上昇し、処理装置本体1の底部に貯まっていた処理水32は、全て貯留タンク2に排出される。
次に、図5に示すように、亜臨界環境下での再脱水工程を行う(ステップST5)。亜臨界中脱液工程から亜臨界環境下での再脱水工程への推移は、水熱処理制御装置110の計測した経過時間、或いは図示しないセンサーにて計測した処理装置本体1と貯留タンク2の処理水32の水位変化等に応じてなされる。図10は亜臨界環境下での再脱水工程における水熱処理装置100の駆動の様子を模式的に示す説明図である。この亜臨界環境下での再脱水工程においては、水熱処理制御装置110は、開閉バルブ21aの閉弁制御と開閉バルブ23の開弁制御を継続して亜臨界雰囲気のまま、回転スライド機構9を駆動制御して、シャフト10をその軸中心に例えば正回転させる。ピストン12は、図示する圧縮終端位置に位置して脱水管11と既述したように係合していることから、シャフト10の回転は、ピストン12を介して脱水管11に伝達される。これにより、脱水管11は、有機性汚泥31をピストン12にて圧縮したまま回転する。水熱処理制御装置110は、この亜臨界環境下での再脱水工程でシャフト10を高速回転させるので、ピストン12にて圧縮状態の有機性汚泥31には大きな遠心力が作用する。これにより、有機性汚泥31に残存していた液状成分は、有機性汚泥31から遠心脱水されて開口部11bを通過し、図示する内部流出流32ruのように処理装置本体1の底部に到って、既述した流出経路32rを経て貯留タンク2に流れ込む。この際、貯留タンク2は、処理装置本体1と等圧状況であることから、有機性汚泥31から遠心脱水された液状成分(水熱処理済み液状成分We)は、脱水管11の開口部11bおよび流出経路32rを経て円滑に貯留タンク2に流れ込む。また、処理装置本体1は、亜臨界雰囲気下にあり高圧であることから、有機性汚泥31に残存する液状成分には既述したように見かけ上の粘度低下が起きるので、このことからも、有機性汚泥31からの液状成分の遠心脱水は促進される。なお、水熱処理制御装置110は、亜臨界環境下での再脱水工程の完了に合わせて、回転スライド機構9によるシャフト10の高速回転を停止制御する。
上記した亜臨界中脱液工程(ステップST4)と亜臨界環境下での再脱水工程(ステップST5)とにおいて貯留タンク2に流れ込んだ処理水32(水熱処理済み液状成分We)は、既述した亜臨界雰囲気での水熱処理を経て結果得られた液状成分であることから、有機物含有廃棄物たる有機性汚泥31に含まれていた各種の重金属の多くを、亜臨界雰囲気での活性化を経て溶解させている。
次に、図5に示すように、脱水に関与していた圧縮力を解除する解除工程を行う(ステップST6)。亜臨界環境下での再脱水工程から圧縮力の解除工程への推移は、水熱処理制御装置110の計測した経過時間等に応じてなされる。図11は圧縮力の解除工程における水熱処理装置100の駆動の様子を模式的に示す説明図である。この圧縮力の解除工程においては、水熱処理制御装置110は、まず、開閉バルブ23を閉弁制御して処理装置本体1を亜臨界雰囲気に維持したまま、回転スライド機構9を駆動制御してシャフト10を既述した図10の圧縮終端位置から後退スライドさせる。これにより、ピストン12は圧縮終端位置よりも脱水管蓋部11aから離れるので、ピストン12により有機性汚泥31に付与されていた圧縮力は解除される。こうして圧縮力が解除されたピストン12の位置は、圧縮解除位置となる。なお、シャフト10の高速回転に伴う遠心力は、亜臨界環境下での再脱水工程の完了時点で既に解除されている。そして、上記した圧縮力解除により、有機性汚泥31は、亜臨界雰囲気下におかれているとは言え、汚泥の固形成分が非圧縮となることにより、その自重により圧縮形状を崩して脱水管11の底部に広がり、その表面積は拡大する。
次に、図5に示すように、脱気工程を行う(ステップST7)。圧縮力の解除工程から脱気工程への推移は、水熱処理制御装置110の計測した経過時間等に応じてなされる。図12は脱気工程における水熱処理装置100の駆動の様子を模式的に示す説明図である。この脱気工程においては、水熱処理制御装置110は、排気管4の開閉バルブ4aの開弁制御と、給排気管21の開閉バルブ21aの切換制御と、ドレン管24の開閉バルブ24aの開弁制御とを行う。開閉バルブ21aの切換制御は、給排気管21を大気解放管21bに連通する切換制御である。これらバルブ制御は、同時になされてもよく、時系列的になされてもよい。この場合、開閉バルブ21aの切換制御と開閉バルブ24aの開弁制御とをこの順で行えば、貯留タンク2における処理水32(水熱処理済み液状成分We)の液面より上に残る水蒸気が先に大気解放管21bを経て大気放出される。そして、貯留タンク2の内圧が大気圧程度に低下してから、貯留タンク2の処理水32(水熱処理済み液状成分We)は、貯留タンク2からドレン管24を経て処理容器302(図3参照)に移送され、処理容器302は、この水熱処理済み液状成分Weを貯留する。この処理水移送に図示しないポンプを用いてもよい。その一方、開閉バルブ24aの開弁制御を開閉バルブ21aの切換制御より先に行えば、貯留タンク2の処理水32(水熱処理済み液状成分We)を、その液面より上に残る水蒸気の圧力により急速にドレン管24を経て処理容器302に移送でき、ポンプは不要となる。上記したバルブ制御を伴う脱気工程では、外筒3の内部の水蒸気放出がなされ、外筒3の内部は、その内圧が亜臨界状態の高温高圧雰囲気による雰囲気圧未満の所定の圧力、具体的には例えば大気圧まで低下する。一方、貯留タンク2においては、既述したように水蒸気放出と処理容器302への処理水移送がなされる。このように処理水32(水熱処理済み液状成分We)の移送を受ける処理容器302は、処理水移送の時点で容器内の水熱処理済み液状成分Weが消化槽402(図4参照)に移送済みとされているので、新たな水熱処理済み液状成分Weの移送に支障を来さないようにされている。
次に、図5に示すように、取り出し工程を行う(ステップST8)。脱気工程から取り出し工程への推移は、水熱処理制御装置110の計測した経過時間、或いは図示しないセンサーにて計測した処理装置本体1の内圧(大気圧化)、図示しないセンサーにて計測した貯留タンク2の処理水水位(=ゼロ)等に応じてなされる。図13は取り出し工程における水熱処理装置100の駆動の様子を模式的に示す説明図である。この取り出し工程においては、水熱処理制御装置110は、固定治具8による蓋部7の固定解除制御と、回転スライド機構9の駆動制御によるシャフト10の後退スライドとを行う。この両制御は、同時並行的になされてもよく、順次実行されてもよい。固定治具8の固定解除制御により、外筒3からの蓋部7の取り外しと、脱水管11からの脱水管蓋部11aの取り外しがなされるので、圧縮脱水と遠心脱水を受けた有機性汚泥31の脱水ケーキが脱水管11から取り出される。この有機性汚泥31の脱水ケーキは、焼却処分又は埋め立て処理がされる。また、シャフト10の後退スライドにより、ピストン12は、図に示す原位置に復帰するので、次回の水熱処理に備え、脱水管11へは新たに処理される有機性汚泥31の投入が可能となる。上記した脱水管蓋部11aの取り外し後の脱水ケーキの取り出しの際、水熱処理制御装置110の制御下で回転スライド機構9によりシャフト10を前進スライドさせ、ピストン12にて脱水ケーキを脱水管11の開口端側に押し出すことができる。こうすれば、脱水ケーキの取り出しが容易となる。そして、この押出のための前進スライドを行った後、後退スライドによりピストン12を原位置に復帰させればよい。なお、水熱処理制御装置110は、開閉バルブ4a等の各種バルブを全て閉状態に駆動制御し、次回の亜臨界処理工程の開始に備える。
本実施形態の廃棄物処理システム1000は、上記した水熱処理装置100による水熱処理プロセスと関連付けて、曝気処理装置300での曝気処理プロセス、消化処理装置400での嫌気性消化処理プロセスを行う。曝気処理装置300での曝気処理プロセスは、図5の脱気工程(ステップST7)により貯留タンク2の処理水32(水熱処理済み液状成分We)が処理容器302(図3参照)に移送されるタイミングに合わせてなされる。まず、曝気処理装置300は、新たな水熱処理済み液状成分Weの移送を受ける以前において、処理容器302に既に貯留済みの水熱処理済み液状成分Weについての曝気処理を完了させた上で、その水熱処理済み液状成分Weを消化槽402(図4参照)に移送させておき、新たな水熱処理済み液状成分Weの移送に備える。処理容器302から消化槽402に曝気処理済み液状成分Beの移送を受ける消化処理装置400においても同様である。つまり、水熱処理装置100による水熱処理プロセス、曝気処理装置300による曝気処理プロセス、および消化処理装置400による嫌気性消化処理プロセスは、いずれもバッチ処理であるため、同時並行的に行われ、曝気処理装置300での曝気処理プロセスは、その一つ前のバッチにおいて水熱処理装置100の水熱処理を経た水熱処理済み液状成分Weを処理する。消化処理装置400での嫌気性消化処理プロセスにあっては、その一つ前のバッチにおいて曝気処理装置300の曝気処理を経た曝気処理済み液状成分Be、即ち二つ前のバッチにおいて水熱処理装置100の水熱処理を経た水熱処理済み液状成分Weを曝気処理済み液状成分Beとして処理する。以下、これを踏まえて説明する。
曝気処理装置300は、水熱処理装置100によるあるバッチでの水熱処理プロセスの一つ前のバッチにおいて、貯留タンク2から処理容器302に水熱処理済み液状成分Weの移送を受け、既に処理容器302に水熱処理済み液状成分Weを貯留済みである。よって、曝気処理装置300は、曝気処理と曝気処理済み液状成分Beの移送に要する時間を確保した上で、水熱処理プロセスとしての図5の適宜工程、例えば最初の亜臨界処理工程(ステップST1)に合わせて、ガス曝気機構304により水熱処理済み液状成分Weへの消化処理ガスSgの曝気を開始し、所定の曝気時間に亘って曝気を継続する。消化処理ガスSgの曝気を受ける水熱処理済み液状成分Weは、既述したように各種の重金属を溶解している。そして、曝気される消化処理ガスSgは、400での嫌気性消化処理で得られたものであるため、既述したように硫化水素を含有する。よって、曝気処理装置300での消化処理ガスSgの曝気により、水熱処理済み液状成分Weに溶解している重金属は硫化水素との接触により金属硫化物に変遷し、金属硫化物として曝気後固液分離装置360にて分離されて、排出される。
消化処理装置400は、水熱処理装置100によるあるバッチでの水熱処理プロセスの二つ前のバッチにおいて、処理容器302から消化槽402に曝気処理済み液状成分Beの移送を受け、既に消化槽402に曝気処理済み液状成分Beを貯留済みである。よって、消化処理装置400は、嫌気性消化処理に要する時間を確保した上で、水熱処理プロセスとしての図5の適宜工程、例えば最初の亜臨界処理工程(ステップST1)に合わせて、嫌気性消化処理を進行させ、その間に得られる消化処理ガスSgをガス圧送機器420によりガス曝気機構304に送り出す。そして、消化処理装置400は、所定期間経過後に、消化処理後固液分離装置410にて曝気処理済み液状成分Beを固液分離して、分離された固形成分および液状成分を排出する。
以上説明した構成を備える本実施形態の廃棄物処理システム1000は、有機物含有廃棄物たる有機性汚泥31を、亜臨界状態の水蒸気の導入を受けて亜臨界雰囲気とされた処理装置本体1で水熱処理した後に(ステップST1)、有機性汚泥31を固形成分と水熱処理済み液状成分Weに分ける(ステップST2〜ST7)。この水熱処理は、処理装置本体1の内部において亜臨界雰囲気で行われるので、有機性汚泥31に含まれている重金属は、亜臨界雰囲気での活性化を経て、その多くが水熱処理済み液状成分Weに溶解する。そして、この水熱処理済み液状成分Weを、曝気処理装置300の処理容器302において、硫化水素を含有した消化処理ガスSgにて曝気するので、水熱処理済み液状成分Weに溶解している重金属は硫化水素との接触により金属硫化物に変遷する。よって、本実施形態の廃棄物処理システム1000によれば、有機性汚泥31に含まれていた重金属を固形成分たる金属硫化物として、曝気後固液分離装置360での固液分離により、曝気の処理容器302から、容易に、分離除去もしくは分離回収できる。
また、有機性汚泥31に含まれている有機物については、亜臨界雰囲気とされた処理装置本体1での水熱処理により、低分子化された状態で、水熱処理済み液状成分Weに溶解もしくは混濁、溶融する。そして、この水熱処理済み液状成分Weは、硫化水素を含む消化処理ガスSgの曝気後固液分離装置360による固液分離を経て、曝気処理済み液状成分Beとして消化処理装置400の消化槽402に移送され、この消化槽402にて嫌気性消化処理を受ける。よって、本実施形態の廃棄物処理システム1000によれば、消化槽402の曝気処理済み液状成分Beに低分子の形態で溶解等している有機物を、嫌気性細菌により効率よく生物分解して、消化処理ガスSgを活発に生成できる。そして、本実施形態の廃棄物処理システム1000は、この消化処理ガスSgを、嫌気性細菌による嫌気性消化処理を経ているが故に、バイオガス化が進んだガスとでき、メタン等の可燃性ガスを始め、硫化水素ガスを高い割合で含有させ、処理容器302での水熱処理済み液状成分Weの曝気に用いる。このことから、本実施形態の廃棄物処理システム1000によれば、硫化水素を含有する消化処理ガスSgの曝気による重金属の固液分離を図るに当たり、消化処理ガスSgに含まれる硫化水素ガスを、重金属の硫化物化という今までにない新たな用途に有効利用できる。これらの結果、本実施形態の廃棄物処理システム1000によれば、有機物含有廃棄物たる有機性汚泥31の処理の過程で重金属を効果的に取り除くことができると共に、嫌気性消化処理にて生成された消化処理ガスSgの新たな用途の提供を通して、有機物含有廃棄物プロセスのコスト低減を可能とする。しかも、処理容器302における消化処理ガスSgの曝気と曝気後の固液分離を追加した上で、消化処理ガスSgをガス曝気機構304を経て曝気管308に導けば足りるので、既存設備機器の有効利用を通して、有機物含有廃棄物プロセスのコスト低減のみならず、有機物含有廃棄物プロセスの簡略化も可能となる。
本実施形態の廃棄物処理システム1000は、処理容器302において消化処理ガスSgの曝気を受けて水熱処理済み液状成分Weの液面から放出される消化処理ガスSgをボイラー機器380にて燃焼させ、その燃焼熱を水熱処理装置100における水蒸気供給機器群200に送り込み、亜臨界雰囲気の発現または維持に用いる。曝気のための処理容器302における水熱処理済み液状成分Weの液面から放出される消化処理ガスSgは、消化処理装置400の消化槽402での嫌気性消化処理にて生成・放出されるガスであることから、メタン等の可燃性ガスを含むことになる。よって、本実施形態の廃棄物処理システム1000によれば、曝気のための処理容器302における液状成分の液面から放出される消化処理ガスSgについても有効利用を図ることができる。
本実施形態の廃棄物処理システム1000は、その曝気処理装置300において、硫化水素ガス予備タンク306を備え、消化処理ガスSgに含まれる硫化水素ガスが規定のガス量より少ないとき、または消化処理ガスSgのガス量自体が規定のガス量より少ないときには、硫化水素ガス予備タンク306の貯留した硫化水素ガスを曝気管308に導く。よって、本実施形態の廃棄物処理システム1000によれば、水熱処理済み液状成分Weに溶解している重金属の金属硫化物への変遷を維持もしくは確保できるので、金属硫化物としての重金属の分離除去・分離回収の確実性を担保できる。
本実施形態の廃棄物処理システム1000は、消化槽402にて嫌気性消化処理がなされた後に、消化槽402の曝気処理済み液状成分Beを消化処理後固液分離装置410により固液分離する。そして、固液分離後の固形成分については、これを重金属の含有量が低いものとできるので、環境や農作物飼育に適した堆肥等とでき、有益性が高まる。
また、本実施形態の水熱処理装置100は、水蒸気供給機器群200から高温・高圧の亜臨界状態の水蒸気を処理装置本体1に導入して、脱水管11に投入済みの有機性汚泥31を、亜臨界雰囲気において水熱処理する(ステップST1:図3)。そして、こうして水熱処理を受けた有機性汚泥31にピストン12により圧縮力を付与して液状成分を脱水分離し(ステップST2:図4)、この脱水分離した液状成分たる処理水32を処理装置本体1の下方の貯留タンク2に排出する(ステップST4:図6)。これにより、本実施形態の水熱処理装置100は、処理装置本体1においては、圧縮脱水済みの有機性汚泥31を、亜臨界雰囲気においたまま、液状成分との接触を断つ。その上で、本実施形態の水熱処理装置100は、圧縮脱水済みの有機性汚泥31を圧縮力から解放するので(ステップST6:図8)、有機性汚泥31を、亜臨界雰囲気におかれているとは言え、その固形成分が非圧縮となることにより、圧縮形状から崩し、亜臨界雰囲気下で有機性汚泥31の表面積を拡大させる。本実施形態の水熱処理装置100は、こうして形状が崩れて表面積の拡大した有機性汚泥31が残った処理装置本体1の内部を大気解放して亜臨界雰囲気を解消する(ステップST7:図9)。
有機性汚泥31が残った処理装置本体1の内部を大気解放して亜臨界雰囲気を解消する以前において、有機性汚泥31に残存している液状成分の多くは、亜臨界雰囲気下である故に100℃より高い温度となっている。そして、この状態から、亜臨界雰囲気が解消されて処理装置本体1、詳しくは外筒3の内圧が大気圧まで減圧されるので、圧縮された有機性汚泥31に含有された100℃以上の水分は水蒸気となって減圧蒸発し、外筒3の外部に放出される。これにより、亜臨界中圧縮脱水工程において脱水処理がされた有機性汚泥31からさらに水分が除去され、脱水効率は高まる。その上で、本実施形態の水熱処理装置100は、有機性汚泥31の表面積を拡大させているので、有機性汚泥31に残存している液状成分の減圧蒸発を、有機性汚泥31の表面積拡大により促進させる。この結果、本実施形態の水熱処理装置100によれば、水熱処理と脱水処理とを受けた有機性汚泥31の脱水ケーキの含水率を確実により一層低減できる。
本実施形態の水熱処理装置100は、処理水32を処理装置本体1の下方の貯留タンク2に排出した(ステップST4:図6)においても、圧縮脱水を受けた有機性汚泥31に回転遠心力を付与して、液状成分を脱水分離し(ステップST5:図7)、その後に、圧縮力を解放する。有機性汚泥31にピストン12により圧縮力を付与して脱水を図る場合、圧縮の程度は、有機性汚泥31に含まれる固形分の割合や物性等により定まり、圧縮による脱水を経ても有機性汚泥31には液状成分が残り得る。しかしながら、本実施形態の水熱処理装置100によれば、圧縮脱水後の有機性汚泥31に残存していた液状成分を、有機性汚泥31に遠心力を付与して脱水分離するので、その分だけ、脱水ケーキの含水率をより一層低減できる。しかも、本実施形態の水熱処理装置100によれば、遠心力による液状成分(処理水32)の脱水分離についても、これを亜臨界雰囲気下の高圧環境にて実行するので、液状成分の見かけ上の粘度低下により、有機性汚泥31からの液状成分の遠心脱水を促進でき、更なる含水率の低減を図ることができる。
本実施形態の水熱処理装置100は、処理水32を処理装置本体1の下方の貯留タンク2に排出するに当たり(ステップST4:図6)、貯留タンク2の内部を加圧して処理装置本体1の亜臨界雰囲気と等圧化を図る。よって、本実施形態の水熱処理装置100によれば、処理装置本体1の底部に貯まった処理水32を、その自重により、支障なく貯留タンク2に排出できると共に、この有機性汚泥31の排出の際は元より、処理装置本体1からの処理水32の排出の後にあっても、処理装置本体1の内部をより確実に亜臨界雰囲気のままとでき、処理装置本体1の降圧を招かない。この結果、本実施形態の水熱処理装置100によれば、有機性汚泥31に残存している液状成分の遠心分離による脱水の実効性と、その後の減圧による蒸発脱水の実効性とを、共に高めることができる。
本実施形態の水熱処理装置100は、貯留タンク2に水蒸気供給機器群200から亜臨界状態の水蒸気を導入してタンク加圧を図るので、貯留タンクを容易に処理装置本体1と等圧化できる。
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、或いは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
上記した実施形態の水熱処理装置100では、圧縮脱水を受けた有機性汚泥31に回転遠心力を付与して液状成分を脱水分離するが(再脱水工程:ステップST5:図7)、この再脱水工程を省略して、ステップST4の亜臨界中脱液工程に続いてステップST6の圧縮力の解除工程を行うようにしてもよい。こうしても、圧縮脱水済みの有機性汚泥31を、その表面積の増大下で減圧蒸発に処すことができるので、含水率低減を図ることができる。
上記した本実施形態の水熱処理装置100では、貯留タンク2の加圧を亜臨界状態の水蒸気導入により図るようにしたが、高圧空気を貯留タンク2に導入してタンク加圧を図るようにしてもよい。
上記した本実施形態の水熱処理装置100では、圧縮力の解除工程(ステップST6)において、ピストン12の後退スライドを行ったが、この後退スライドに加え、脱水管11の揺動を起こすようにしてもよい。つまり、まずは既述したようにピストン12を圧縮解除位置まで後退スライドさせ、このピストン位置において、回転スライド機構9によりシャフト10を正逆回転させる。こうすると、ピストン12を圧縮解除位置に位置させたまま、脱水管11は、ピストン12と共に正逆回転して揺動するので、ピストン12の後退スライドにより圧縮形状を崩した有機性汚泥31は、脱水管11において攪拌されて形状がより崩れるので、表面積は更に拡大する。この際、処理装置本体1は、亜臨界雰囲気のままであるので、圧縮力の解除工程に続く脱気工程(ステップST7)での減圧脱水は、より一層促進される。よって、圧縮力の解除工程において、ピストン12の後退スライドに加え、脱水管11の揺動を起こす実施形態によれば、含水率をより一層、且つ確実に低減できる。
上記した本実施形態の水熱処理装置100では、貯留タンク昇圧工程(ステップST3)において、貯留タンク2を加圧して処理装置本体1と等圧化を図ったが、亜臨界処理工程(ステップST1)の際に、貯留タンク2を処理装置本体1と等圧にしてもよい。つまり、亜臨界処理工程(ステップST1)の際に、排液管6の開閉バルブ23を開放し、ドレン管24の開閉バルブ24aと給排気管21の開閉バルブ21aとを閉鎖しておき、水蒸気供給機器群200から処理装置本体1に導入される亜臨界状態の水蒸気の一部を予め貯留タンク2に導入する。その上で、処理装置本体1での水熱処理のための回転スライド機構9の駆動前に、開閉バルブ23を閉鎖する。こうすれば、水蒸気供給機器群200から給排気管21に到る管路を用いなくても、貯留タンク2を処理装置本体1と等圧化できる。
本実施形態の廃棄物処理システム1000では、亜臨界環境下での再脱水を行う構成の水熱処理装置100を用いたが、有機物含有廃棄物たる有機性汚泥31を、亜臨界状態の水蒸気の導入を受けて亜臨界雰囲気とされた処理槽で水熱処理する既存の水熱処理装置としてもよい。
本実施形態の廃棄物処理システム1000では、処理容器302で消化処理ガスSgの曝気を行い、消化槽402で嫌気性消化処理を行うようにしたが、処理容器302だけで、消化処理ガスSgの曝気と嫌気性消化処理を行うようにしてもよい。例えば、処理容器302を嫌気性環境とできる構成とした上で、この処理容器302にて消化処理ガスSgの曝気を行い、曝気後固液分離装置360で分離した曝気処理済み液状成分Beを、曝気後の処理容器302に環流させ、環流した曝気処理済み液状成分Beを処理容器302にて嫌気性最近による嫌気性消化処理に処す。