JP2015115786A - データ処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数のADC(アナログ-デジタル変換器)を並列動作させる高速のADCシステムにおける、複数のADCのベースライン電圧のずれに起因するノイズを低減する。【解決手段】データ分離部2はADCシステムから入力されるデータを時系列順に、ADCの数に応じたグループに振り分ける。平均値算出部3、4はADCシステムへの実質的な入力信号がない期間に得られる複数のデータからそれぞれ平均値を算出し、直流補正量算出部5はその平均値の差分を補正量として求める。この補正量は複数のADCのベースライン電圧のずれに対応したものとなるから、データ補正部6はデータ分離部2で振り分けられた一方のデータを上記補正量の分だけ補正し、データ再構成部7は2系統のデータを時系列順に並べて出力する。これにより、出力されるデータは複数のADCのベースライン電圧のずれが解消されたものとなり、このずれに起因するノイズ成分は抑制される。【選択図】図1

Description

本発明は、アナログ-デジタル変換器(以下「ADC」と略す)で変換されたデジタルデータを処理するデータ処理装置に関し、さらに詳しくは、並行して動作する複数のADCを備えた高速サンプリングが可能なADCシステムで得られたデータを処理するデータ処理装置に関する。
飛行時間型質量分析計などの分析装置では一般に、検出器で得られたアナログ検出信号はADCによりデジタルデータに変換されてメモリやデータバッファなどに一旦格納され、その後にスペクトル作成処理などのデータ処理が行われる。例えば近年の高性能の飛行時間型質量分析計では、測定実行時のデータ収集のために1GS/sec以上のきわめて高いアナログ-デジタル変換レート(サンプリングレート)が要求されるが、こうした高速のADCは一般にビット分解能が低いため、十分なダイナミックレンジを確保することが難しい。そのため、複数のADCを並列に動作させることで高速化を図ったADCシステムがよく用いられる。こうしたADCシステムとしては非特許文献1に記載のデジタイザなどが知られている。
図3はこうしたADCシステムの原理説明図である(特許文献1など参照)。
このADCシステムは高速動作可能であるADCを2つ備え、それら2つのADCでは同一のアナログ入力信号を交互にサンプリングして得られたサンプルをそれぞれデジタル信号に変換する。したがって、このADCシステムの出力には2つのADCにより変換されたデータが交互に現れる。図3では、2つのADCでそれぞれアナログ-デジタル変換されたサンプルを○印と●印とで示している。並列に動作させるADCの数をさらに増やすことも可能であり、その場合には、その複数のADCでそれぞれアナログ-デジタル変換されたサンプルが順番に出力されることになる。
上記ADCシステムでは、複数のADCはそれぞれアナログ値をデジタル値に変換するため、例えば前段増幅器などのアナログ回路での基準直流(DC)電圧レベルの相違のために、出力されるデジタルデータのゼロ値(ここでいう「ゼロ値」とはアナログ入力信号がゼロであるときに出力されるデータ値)に差が生じる。非特許文献1に記載のデジタイザでは、複数のADCに対するDC電圧レベル(ベースライン電圧)の補正は装置起動時に行われ、それによって装置のDC確度の仕様が保証されている。具体的に、非特許文献1に記載された「Agilent U1065A」において、仕様上のDC確度は50mVフルスケールで±1.25mVとなっている。
これは、上記のような従来のADCシステムにおいて、同じ入力電圧に対する各ADCの出力値が、装置仕様であるDC確度の範囲内でずれている可能性があることを意味しており、そうしたずれがある出力値を時系列順に並べると、そのずれがノイズ成分として残ることになる。例えば電子増倍管を検出器として用いた飛行時間型質量分析計では、検出器に到達したイオンの数に応じた波高値を持つピーク波形が検出器から出力されるが、ベースラインに重畳しているノイズ成分が大きくなると、小さな信号ピークはノイズに埋もれてしまうため検出感度が低下する。
図4(a)は2つのADCを用いたADCシステムに信号を入力しないときの出力結果を示す図、図4(b)はその出力値のヒストグラムである。図4(b)から、ヒストグラム上で2つのピーク(図中に点線で示す)が存在していることが分かる。これらピークがそれぞれADCのベースラインに対応しているから、両ADCのベースラインは約0.5mVずれていることが分かる。
特開2006−129499号公報
「Agilent U1065A Acqiris 高速cPCIデジタイザ」、アジレント・テクノロジー株式会社、[平成25年10月30日検索]、インターネット<URL: http://cp.literature.agilent.com/litweb/pdf/5989-7443JAJP.pdf>
近年、質量分析計に対する高精度化、高感度化の要求はますます高まっており、従来は殆ど問題とならなかった上記のようなADCシステムで生じるノイズ成分が検出感度の制約要因となっている。
本発明はこうした課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、並列動作する複数のADCのベースラインのずれに起因するノイズを低減することができるデータ処理装置を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明は、アナログ入力信号を複数のアナログ-デジタル変換器によりサンプリング時刻をずらして順次サンプリングしてそれぞれデジタルデータに変換したあと、各アナログ-デジタル変換器によるデジタルデータを時系列順に並べて出力するアナログ-デジタル変換システムによる出力を受けて処理するデータ処理装置であって、
a)所定の時間範囲に与えられたデジタルデータを時系列順に、前記アナログ-デジタル変換システムにおいて使用されているアナログ-デジタル変換器の数に応じたグループに振り分けるデータ分離部と、
b)前記グループ毎に振り分けられた複数のデジタルデータに対する所定の演算をグループ毎に行って各グループの代表値を求める代表値算出部と、
c)前記代表値算出部による各グループの代表値が等しくなるように各グループにおける補正量又は1つのグループを基準とした他のグループにおける補正量を算出する補正量算出部と、
d)グループ毎に前記補正量を用いて、与えられたデジタルデータの値を補正する補正処理部と、
e)前記補正処理部による補正後のデジタルデータを時系列順に戻して出力する再構成処理部と、
を備えることを特徴としている。
上記「所定の時間範囲」とはアナログ-デジタル変換システムに入力されたアナログ入力信号が実質的にゼロである筈の時間範囲である。例えば本発明に係るデータ処理装置及びその前段のアナログ-デジタル変換システムが飛行時間型質量分析計の検出器で得られる信号の処理に使用される場合には、上記「所定の時間範囲」とはイオンが検出器に入射しない期間であり、具体的には分析の合間や分析中であっても飛行を開始したイオンが検出器に到達する前の期間或いは全てのイオンが検出器に到達したあとの期間などである。
本発明に係るデータ処理装置において、データ分離部は、上述したようなアナログ入力信号が実質的にゼロである筈の時間範囲に与えられたデジタルデータを時系列順に、アナログ-デジタル変換器に対応した複数のグループに振り分ける。これにより、1つのグループには同一のアナログ-デジタル変換器で変換されたデータのみが集約される。
次に、代表値算出部は各グループ毎に、振り分けられた複数のデジタルデータに対する所定の演算を行うことでそのグループの代表値を求める。例えば、上記「所定の演算」は平均値を算出する演算とすることができる。つまり、この場合、グループ毎の代表値とは平均値である。また、例えば複数のデジタルデータの値の出現頻度の分布を求め、その分布のピーク値や重心などを代表値としてもよい。
そして、各グループの代表値が求まったならば、補正量算出部は、各グループの代表値が等しくなるように各グループにおける補正量又は1つのグループを基準とした他のグループにおける補正量を算出する。上記所定の時間範囲に与えられたデジタルデータが実質的にゼロであるアナログ入力信号に対応したものであれば、上記補正量は各アナログ-デジタル変換器(変換器本体のみならず、変換器に付随するアナログ回路も含む)のベースライン電圧のずれに対応したものとなる。そこで、補正処理部は、アナログ-デジタル変換システムから与えられたデジタルデータの値を、グループ毎の補正量の分だけ補正し、再構成処理部は、その補正後のデジタルデータを時系列順に戻して出力する。
本発明に係るデータ処理装置によれば、アナログ-デジタル変換システムにおける複数のアナログ-デジタル変換器の間のベースライン電圧のずれが修正されるので、そのずれに起因するノイズ成分の増加を抑えることができる。その結果、例えば本発明に係るデータ処理装置を飛行時間型質量分析計に用いれば、従来はノイズ成分に埋もれて観測できなかった信号ピークが観測可能となり、検出感度を向上させることができる。
本発明の一実施例によるデータ処理装置のブロック構成図。 本実施例のデータ処理装置の動作説明図。 高速のADCシステムの原理説明図。 高速のADCシステムに信号を入力しないときの出力結果を示す図(a)及びその出力値のヒストグラム(b)。
以下、本発明に係るデータ処理装置の一実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例によるデータ処理装置のブロック構成図、図2は本実施例のデータ処理装置の動作説明図である。
本実施例のデータ処理装置は、上述したように2つのADCを備えたADCシステムから出力されるデジタルデータを処理する装置であり、データ分離部2、平均値算出部3、4、直流補正量算出部5、データ補正部6、データ再構成部7、及びタイミング制御部8、を機能ブロックとして含む。
データ入力端1にはADCシステムから時系列順にデジタルデータが入力される。データ分離部2は入力されたデータを交互に振り分ける。即ち、図2中に示すように、○印で示されたデータと●印で示されたデータとをそれぞれ別のグループG1、G2に振り分け、順次出力する。平均値算出部3、4はタイミング制御部8からの指示に基づき、データ分離部2から出力されるデータの中で所定の時間範囲内のデータのみを選択的に取り込む。
この所定の時間範囲は、本実施例のデータ処理装置が使用される装置又はシステムによって決まる。例えば、このデータ処理装置が飛行時間型質量分析計の検出器(例えば電子増倍管)で得られる信号の処理に使用される場合には、タイミング制御部8は該質量分析計の動作を制御する制御部から、イオンが検出器に入射しないタイミングを示す信号を受け、この信号をトリガとしてデータを平均値算出部3、4に取り込む時間範囲を決めるようにするとよい。
具体的には、分析が行われる時間の合間の待機時間中、或いは、分析が連続的に行われる場合には分析中ではあるがイオンが検出器に入射しないことが保証されている時間中、つまり分析対象である各種イオンがイオン源から射出されてから該各種イオンの中で質量電荷比が最も小さいイオンが検出器に到達するまでの間、又は、該各種イオンの中で質量電荷比が最も大きいイオンが検出器に到達してから分析終了までの間に、データを平均値算出部3、4に取り込むようにするとよい。
なお、ADCシステムにおける複数のADCのベースライン電圧のずれは、通常、短時間で大きく変化することはないものの、電気回路部品の経時劣化のほか、周囲温度の変動などによって変化する。そのため、このずれに起因するノイズ成分を抑えて確実に高い検出感度での分析を行うには、分析に支障のない限り、高い頻度で平均値算出部3、4にデータを取り込み、後述する処理によりベースライン電圧の補正量を更新するとよい。
図2に示すように、所定の時間範囲に所定数のサンプルデータが平均値算出部3、4にそれぞれ取り込まれると、平均値算出部3、4はそれぞれ複数のサンプルデータの値の平均値を算出する。平均値算出部3、4に取り込まれるサンプルデータは、前段のADCシステムに入力されるアナログ信号が理想的にはゼロであるときのADCの出力データである。したがって、平均値算出部3、4において算出される平均値はADCのベースライン電圧をほぼ反映したものとなり、2つのADCのベースライン電圧が等しい場合には、平均値算出部3、4においてそれぞれ算出される平均値は等しくなる。
そこで、直流補正量算出部5は2つの平均値の差分を計算し、その差分値に応じた補正量を求める。図2では2つの平均値の差分をベースラインのレベルの差ΔPとして模式的に示している。2つの平均値が等しければ、即ち、ADCシステムにおいて2つのADCのベースライン電圧が等しければΔP=0であり、補正量はゼロである。図1に示した例では、データ分離部2で分離された2つのグループG1、G2の一方のデータのみをデータ補正部6により補正する構成であるため、2つの平均値の差分がそのまま補正量となる。この補正量は次の機会に更新されるまで、データ補正部6内に保持される。
データ補正部6は、データ分離部2から時系列順に送られてくる、グループG2に含まれる各データに補正量データを加算することにより該データを補正し、データ再構成部7に入力する。一方、データ分離部2から時系列順に送られてくる、グループG1に含まれる各データはそのままデータ再構成部7に入力される。データ再構成部7は2系統のデータを元の時系列順に並べて1系統のデジタルデータに再構成してデータ出力端9から出力する。このときに出力されるデータは1サンプルおきに補正が加えられた(ただし補正量がゼロでない場合)ものとなる。
データ補正部6におけるデータ補正は、前段のADCシステムへのアナログ入力信号の状態に拘わらず、つまり実質的に入力信号があってもなくても実行される。このため、図3に示したような信号波形がADCシステムに入力され、該ADCシステムにおいて2つのADCでベースライン電圧にずれが生じたときでも、そのずれはデータ補正部6で補正される。そのため、ベースライン電圧のずれに起因するノイズ成分は抑えられ、上記アナログ入力信号における小さなピーク波形もノイズ成分に埋もれずに観測される。
なお、上記実施例では、データ分離部2において2系統に分けたデータの一方のみ補正を施したが、両系統のデータに対し補正を行ってベースライン電圧のずれを補正するようにしてもよい。
また、上記実施例では、ADCシステムで使用されているADCの数が2であるため、データ分離部2においてデータを2つのグループに分けたが、ADCの数に応じて分離するグループの数を増やせばよいことは明らかである。
また、上記実施例のデータ処理装置では、所定数のデジタルデータからベースライン電圧を反映するデータとして平均値を計算していたが、平均値以外の値を用いることもできる。
例えば、図4(b)に示すように、入力信号が実質的にない状態のデジタルデータの値のヒストグラムを作成すると、ベースライン電圧のずれに応じた2つのピークが現れる。そこで、所定の時間範囲内に得られた多数のデータからこうしたヒストグラムを作成し、該ヒストグラムのバーから求まる包絡線(図4(b)中に点線で示すカーブ)を、ADCシステムで使用されているADCの数だけピークとして検出する。そして、その複数のピークのピークトップのデータ値の差分、或いは、その複数のピークのそれぞれの重心に対応するデータ値の差分などを、上記平均値の代わりに用いてもよい。
さらに、上記実施例や上記各種変形例も本発明の一例にすぎないから、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…データ入力端
2…データ分離部
3、4…平均値演算部
5…直流補正量計算部
6…データ補正部
7…データ再構成部
8…タイミング制御部
9…データ出力端

Claims (2)

  1. アナログ入力信号を複数のアナログ-デジタル変換器によりサンプリング時刻をずらして順次サンプリングしてそれぞれデジタルデータに変換したあと、各アナログ-デジタル変換器によるデジタルデータを時系列順に並べて出力するアナログ-デジタル変換システムによる出力を受けて処理するデータ処理装置であって、
    a)所定の時間範囲に与えられたデジタルデータを時系列順に、前記アナログ-デジタル変換システムにおいて使用されているアナログ-デジタル変換器の数に応じたグループに振り分けるデータ分離部と、
    b)前記グループ毎に振り分けられた複数のデジタルデータに対する所定の演算をグループ毎に行って各グループの代表値を求める代表値算出部と、
    c)前記代表値算出部による各グループの代表値が等しくなるように各グループにおける補正量又は1つのグループを基準とした他のグループにおける補正量を算出する補正量算出部と、
    d)グループ毎に前記補正量を用いて、与えられたデジタルデータの値を補正する補正処理部と、
    e)前記補正処理部による補正後のデジタルデータを時系列順に戻して出力する再構成処理部と、
    を備えることを特徴とするデータ処理装置。
  2. 請求項1に記載のデータ処理装置であって、
    前記所定の演算は平均値を算出する演算であることを特徴とするデータ処理装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017168332A (ja) * 2016-03-17 2017-09-21 日本電子株式会社 質量分析データ補正方法及び装置

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JP2017168332A (ja) * 2016-03-17 2017-09-21 日本電子株式会社 質量分析データ補正方法及び装置

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