JP6533749B2 - 質量分析装置及び質量分析方法 - Google Patents

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本発明は、イオン化した試料の質量を分析する質量分析装置及び質量分析方法に関する。
質量分析装置は、試料から生成するイオンを真空中で飛行させ、飛行の過程で質量の異なるイオンを分離して、スペクトルとして記録する装置である。質量分析装置の1つの方式として、質量によるイオンの飛行時間の違いを利用してイオンを分離する飛行時間型質量分析装置が知られている。
図7は、従来の飛行時間型質量分析装置の概要を示す図である。
イオン源1で生成したイオンビームは、イオン輸送部2を経由して、質量分離部3内のイオン加速部4に導入される。イオン加速部4において垂直方向に加速されたイオンビームiは、ドリフト空間5を飛行した後、イオン反射部6で反射されて、時間的な収束を起こしながらイオン検出器7に向かって飛行する。このようなイオンビームの飛行で、質量分離処理が行われる。イオンビームiの飛行距離は、例えば数mから十数m程度である。
イオン検出器7の近傍において時間収束したイオンビームiは、時間幅が極めて短いパルス信号としてイオン検出器7に到達し、イオン検出器7により電気信号に変換される。
イオン検出器7から出力される電気信号は、前置増幅器8により電気的に増幅された後、デジタル変換部であるデジタイザ9で、アナログ信号からデジタルデータに変換される。デジタイザ9でデジタル変換処理が行われて得られたデジタルデータが、データ処理部10に供給される。データ処理部10では、入力したデジタルデータにデータ処理を施すことで、質量スペクトルデータを得る質量スペクトルデータ取得処理が行われる。この質量スペクトルデータ取得処理は、データ処理部10に実装されたデータ処理ソフトウェア(プログラム)により実行される。
特許文献1には、質量分析装置の一例についての記載がある。
特開2000−57992号公報
質量分析装置で試料(分析試料)の分析を行う際には、既知の標準試料についても分析を行い、その標準試料の分析結果で校正情報を取得して、分析試料の分析結果を校正情報で校正することが行われる。例えば特許文献1には、分析試料と標準試料とを個別に用意して、それぞれをイオン化することが記載されている。
標準試料を使って校正情報を得る第一の手法(校正手法1)としては、例えば測定中のある時間に、分析試料と同量の標準試料をイオン源に投入し、分析試料と標準試料のイオン強度が同程度となるマススペクトルを取得する。そして、取得したマススペクトルから質量校正情報又はドリフト校正情報を得る。なお、得られた質量校正情報又はドリフト校正情報は、測定時間内の全てのマススペクトルに適用されて校正が行われ、質量軸補正が行われる。
また、標準試料を使って校正情報を得る第二の手法(校正手法2)として、例えば分析試料と同量の標準試料を常に同時にイオン源に投入し、分析試料と標準試料が常に同一マススペクトルに存在するようにデータ取得を行い、全てのデータ取得ポイントで質量校正又はドリフト校正を行う方法が知られている。この校正方法2によると、常に分析試料と標準試料とを同一マススペクトルに存在させることで、時間経過に伴う質量軸ずれを補正することができる。
ところが、校正手法1の場合には、標準試料をイオン源に投入する期間に、イオン強度が標準試料の分だけ加算されて、バックグラウンドピークが増えてしまうため、分析試料の精確なマススペクトルやクロマトグラムが得られない場合がある。また、測定時間の中で質量軸補正を正しく行えるのは、標準試料が混入した期間だけであるため、時間経過に伴って発生する質量軸ずれを補正しきれないという問題がある。
また、校正手法2の場合には、標準試料が常にイオン源に投入されているため、バックグラウンドのノイズピークとして常に標準試料が存在するので、精確なクロマトグラム(或いはマススペクトル)を得るためには、測定したクロマトグラム(或いはマススペクトル)からバックグラウンドのノイズピークを差し引く必要がある。しかしながら、標準試料の導入量は温度や圧力などの環境条件で増減するため、ノイズピーク強度は一定ではなく、バックグラウンドの影響を残さずに完全に除去することは極めて困難であるという問題があった。
図8は、従来の飛行時間型質量分析装置で、標準試料を常にイオン源に投入した状態で分析試料のマススペクトルを観察した例を示す。図8の下側に示すように、クロマトグラム上では、標準試料のノイズピークが常にある程度の強度で存在し、そのノイズピークに重畳された状態で、分析試料のイオン強度Paが検出される。
また、図8の上側に示すように、クロマトグラム上の任意の点におけるマススペクトルについても、分析試料のスペクトルα,α,α,αと、標準試料のスペクトルβとが混在した状態である。特に、標準試料のスペクトルβについては、クロマトグラム上のどの点でも高い強度で存在しており、標準試料のスペクトルβの影響を排除して分析試料のスペクトルα〜αを取り出すことは非常に困難である。なお、図8の上側に示すクロマトグラム上のそれぞれの点におけるマススペクトルは、質量mと電荷zの比である[m/z]値の軸上に検出されるスペクトルである。
本発明の目的は、標準試料を使って質量軸ずれを補正する処理を精確に行うことができる質量分析装置及び質量分析方法を提供することにある。
本発明の質量分析装置は、所定の強度レベルの分析試料と、分析試料の強度レベルよりも低い強度レベルでスペクトル位置が既知の標準試料とが供給されるイオン源と、イオン源で発生したイオンを飛行させて質量分離する質量分離部と、質量分離部で質量分離されたイオンを検出するイオン検出器と、イオン検出器で得られた検出信号をデジタルデータに変換するデジタイザとを備える。
デジタイザは、分析試料の強度レベルに対応したレベルで第1のデジタルデータに変換すると共に、標準試料の強度レベルに対応したレベルで第2のデジタルデータに変換する。
さらに、デジタイザで変換された第2のデジタルデータからスペクトル位置が既知の標準試料のスペクトルを抽出する標準試料スペクトル抽出部と、標準試料スペクトル抽出部で得た標準試料のスペクトルに基づいて、第1のデジタルデータを校正する校正部と、校正部で校正されたデータから分析試料のスペクトルを取得する分析試料スペクトル取得部とを備える。
また、本発明の質量分析方法は、所定の強度レベルの分析試料と、分析試料の強度レベルよりも低い強度レベルでスペクトル位置が既知の標準試料とをイオン源に供給する試料供給処理と、イオン源に供給された試料によるイオンを飛行させて質量分離する質量分離処理と、質量分離処理で質量分離されたイオンを検出するイオン検出処理と、イオン検出処理で得られた検出信号を、分析試料の強度レベルに対応したレベルで第1のデジタルデータに変換すると共に、標準試料の強度レベルに対応したレベルで第2のデジタルデータに変換するデジタル変換処理と、デジタル変換処理で変換された第2のデジタルデータからスペクトル位置が既知の標準試料のスペクトルを抽出する標準試料スペクトル抽出処理と、標準試料スペクトル抽出処理で得た標準試料のスペクトルに基づいて、第1のデジタルデータを校正する校正処理と、校正処理で校正されたデータから分析試料のスペクトルを取得する分析試料スペクトル取得処理と、を含む。
本発明によると、強度レベルが異なる分析試料と標準試料をイオン源に供給することで、分析試料の強度レベルに対応した第1のデジタルデータと、標準試料の強度レベルに対応した第2のデジタルデータとを同時に得ることができ、標準試料の検出を常時行いながら、その検出された標準試料のスペクトル位置に基づいて分析試料の校正を常時行うことができ、分析試料の校正を常時適切に行うことが可能になる。しかも、分析試料に含まれる標準試料は微量であるため、分析試料の検出に標準試料が影響を及ぼす影響は非常に小さく、この点からも分析試料が精確に検出できるようになる。
本発明の一実施の形態例による質量分析装置の例を示す構成図である。 本発明の一実施の形態例による質量分析処理の流れを示す説明図である。 本発明の一実施の形態例による質量分析処理時のスペクトル検出状況の例を示す特性図である。 本発明の一実施の形態例による標準試料のスペクトルの検出状況を示す特性図である。 本発明の一実施の形態例によるクロマトグラム上の任意の点におけるマススペクトルを示す特性図である。 本発明の他の実施の形態例による質量分析装置の例を示す構成図である。 従来の質量分析装置の一例を示す構成図である。 従来の質量分析装置で測定した、クロマトグラム上の任意の点におけるマススペクトルを示す特性図である。
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する。)に係る質量分析装置について、図1〜図5を参照して説明する。
[1.質量分析装置の構成]
図1は、本例の質量分析装置の構成を示す。
本例の質量分析装置には、クロマトグラフ101及び標準試料容器102が接続され、イオン源103に、クロマトグラフ101から分析試料が供給されると共に、標準試料容器102から標準試料が供給される。標準試料はスペクトル位置が既知の試料である。本例の場合の試料供給処理では、標準試料が連続的にイオン源103に供給されるようになっている。分析試料は、本例の質量分析装置を使って質量数を測定する試料であり、標準試料は質量数が既知の試料である。
ここで、クロマトグラフ101からイオン源103に供給される分析試料は、分析に必要なイオン強度が得られる所定の強度レベルになっている。また、標準試料容器102から供給される標準試料は、分析試料のイオン強度よりも低いイオン強度となるように、微量にイオン源103に供給される。例えば、標準試料容器102は、分析試料の1/100程度の微量の標準試料をイオン源103に供給する。分析試料と標準試料のイオン強度の具体的な例の詳細については後述する。
イオン源103は、供給される分析試料と標準試料をイオン化する。イオン源103で生成したイオンビームiは、イオン輸送部104を経由して、質量分離部110内のイオン加速部111に導入される。イオン加速部111において垂直方向に加速されたイオンビームiは、ドリフト空間112を飛行した後、イオン反射部113で反射されて、時間的な収束を起こしながらイオン検出器114に向かって飛行する。このようなイオンビームiの飛行で、質量分離処理が行われる。イオンビームiの飛行距離は、例えば数mから十数m程度である。
イオン検出器114の近傍において時間収束したイオンビームiは、時間幅が極めて短いパルス信号としてイオン検出器114に到達し、イオン検出器114により電気信号に変換される。このイオン検出器114でイオンビームiが電気信号に変換される処理が、イオン検出処理に相当する。
イオン検出器114が出力する電気信号は、前置増幅器121により電気的に増幅された後、デジタル変換部であるデジタイザ122で、アナログ信号からデジタルデータに変換されるデジタル変換処理が行われる。
本例のデジタイザ122は、2系統の変換処理を並行して行う。すなわち、供給されるアナログ信号に含まれる分析試料の検出信号を、第1のデジタルデータに変換する。また、供給されるアナログ信号に含まれる標準試料の検出信号を、第2のデジタルデータに変換する。既に説明したように分析試料のイオン強度と標準試料のイオン強度は、非常に大きな強度レベルの差がある(例えば、100倍)。
したがって、第1のデジタルデータは、分析試料のイオン検出信号を適正にデジタルデータ化できるスケールでデジタル化したデータであり、第2のデジタルデータは、標準試料のイオン検出信号を適正にデジタルデータ化できるスケールでデジタル化したデータである。例えば、分析試料と標準試料との強度差が1/100であるとき、第1のデジタルデータは、デジタイザ122に供給される検出信号(電圧信号)の0V−5Vの範囲をフルスケールとしてデジタル化したデータであり、第2のデジタルデータは、デジタイザ122に供給される検出信号の0V−50mVの範囲をフルスケールとしてデジタル化したデータである。
なお、第2のデジタルデータには分析試料の成分も含まれるが、分析試料は強度レベルが標準試料の強度レベルよりも十分に高いため、第2のデジタルデータには、分析試料の成分がフルスケールのデータとして存在する。逆に第1のデジタルデータに含まれる標準試料の強度レベルは、分析試料の強度レベルから見たとき、ノイズレベルとほぼ同じかノイズレベルよりも若干高い程度の非常に低いレベルになる。
そして、デジタイザ122が出力する第1のデジタルデータが、ノイズ除去部123に供給され、ノイズ除去処理が行われる。ノイズ除去部123でのノイズ除去処理は、例えばデジタルデータのピークレベルから所定レベル低下した閾値以下のデータをノイズとしてカットする処理である。ここでは、例えばピークレベルの1/100のレベルがノイズカット閾値に設定される。
ノイズ除去部123でノイズ除去処理が行われた第1のデジタルデータは、質量軸校正部(分析試料)127に供給される。この質量軸校正部(分析試料)127で、分析試料の質量軸が校正処理される。
また、デジタイザ122が出力する第2のデジタルデータは、標準試料スペクトル抽出部125に供給される。標準試料スペクトル抽出部125では、第2のデジタルデータから標準試料スペクトルのデータを抽出する処理が行われる。標準試料は、スペクトル位置が既知であるため、その既知のスペクトル位置の近傍のデータを抽出することで、標準試料スペクトルの成分のデータが抽出される。
なお、標準試料スペクトル抽出処理を行う際には、第2のデジタルデータの内で、フルスケールのデータを除去する処理を行うようにしてもよい。すなわち、第2のデジタルデータに含まれる分析試料の成分は標準試料よりも強度レベルが十分に高いため、フルスケールのデータとなる。したがって、フルスケールのデータを除去することで、分析試料の成分を除去することができる。但し、このフルスケールのデータ除去は行わなくても、標準試料スペクトルのデータを抽出することは可能である。
標準試料スペクトル抽出部125で標準試料スペクトルの成分を抽出した第2のデジタルデータは、質量軸校正部(標準試料)126に供給される。質量軸校正部(標準試料)126では、標準試料の質量軸を校正する処理が行われる。ここでは、標準試料のスペクトル位置が既知であることを利用して、実際に検出したデータで示されるスペクトル位置と、既知のスペクトル位置との質量軸の差を校正する処理が行われる。そして、質量軸校正部(標準試料)126での質量軸の校正量のデータが、質量軸校正部(分析試料)127に供給される。
質量軸校正部(分析試料)127では、質量軸校正部(標準試料)126から供給される校正量のデータを使用して、ノイズ除去部123から供給される第1のデジタルデータの質量軸を校正する処理が行われる。
質量軸校正部(分析試料)127で質量軸が校正処理された第1のデジタルデータは、分析試料スペクトル取得部128に供給される。分析試料スペクトル取得部128では、供給される第1のデジタルデータにデータ処理を施すことで、質量スペクトルデータを得る質量スペクトルデータ取得処理が行われる。この質量スペクトルデータ取得処理は、例えば質量分析装置に実装されたデータ処理ソフトウェア(プログラム)により実行される。
[2.検出処理の説明]
図2は、本例の質量分析装置で行われる質量数検出処理の流れの概要を示す。
イオン源103への標準試料の供給量は、分析試料の1/100等のように微量であるため、分析試料と標準試料とをそれぞれ適切に取り出す処理が行われる。すなわち、質量分析装置のイオン検出器114(図1)が出力する検出信号がデジタイザ122に供給されると、デジタイザ122では、信号をデジタル化する際のスケール軸を可変してデジタル化処理が行われる。
例えば、フルスケールを0V−5Vのように設定して、入力信号を大きなスケールでデジタル化して、第1のデジタルデータを得る。また、フルスケールを0V−50mVのように設定して、入力信号を小さなスケールでデジタル化して、第2のデジタルデータを得る。
そして、第1のデジタルデータについては、ノイズ除去部123で、所定の閾値以下のデータをカットするノイズ除去処理が行われる。このノイズ除去処理が行われたデータに対して、質量軸校正部(分析試料)127で質量軸校正処理が行われて、分析試料スペクトルが得られる。
一方、第2のデジタルデータについては、標準試料のスペクトル位置が既知であることを利用して、標準試料スペクトル抽出部125で、標準試料スペクトルの成分を抽出する処理が行われる。このとき、必要により第2のデジタルデータからフルスケールのデータ(つまり分析試料のデータ)を除去する処理を行うようにしてもよい。
そして、標準試料スペクトル抽出部125で抽出された標準試料スペクトルのデータに対して、質量軸校正部(標準試料)126で標準試料の質量軸校正処理が行われる。
次に、スペクトルの検出状況の例を図で説明しながら、本例の質量分析装置で分析試料スペクトルと標準試料スペクトルとが検出される例を説明する。
図3は、分析試料のスペクトルの検出状況を示し、図4は、標準試料のスペクトルの検出状況を示す。
まず、分析試料のスペクトルについて説明すると、図3の左側に示すように、イオン検出器114から検出信号(飛行時間信号)が得られると、図3の右上に示すように、この検出信号から分析試料のマススペクトルが得られる。図3は、横軸をm/z値、縦軸を強度で示す。図3では、分析試料のスペクトルSP1,SP2,SP3,SP4,SP5が検出された状態を示す。このそれぞれのスペクトルSP1,SP2,SP3,SP4,SP5の強度が、デジタイザ122で第1のデジタルデータとしてデータ化される。
ここで、図3の右下に、分析試料のスペクトルSP1〜SP5のベースライン付近を拡大して示すと、ベースライン付近には電気ノイズNが定常的に存在する。このため、電気ノイズNが定常的に存在する範囲をカットするノイズカット閾値TH1を設定し、ノイズ除去部123で、このノイズカット閾値TH1を越える信号成分のみを取り出す。
なお、図3の右下に示すように、ベースライン付近の信号には、標準試料のスペクトルが存在するが、この標準試料のスペクトルの強度は電気ノイズNとほぼ同じか、あるいは電気ノイズNより若干強い程度の強度であるため、ノイズ除去部123でのノイズ除去で大部分が除去される。また、ノイズ除去時には、ノイズカット閾値TH1よりも高いレベルの標準試料のスペクトルが残るが、残った標準試料のスペクトルについても、分析試料のスペクトルSP1〜SP5と比較すると非常に強度が弱く、分析試料の質量数を検出する上での標準試料の影響が極めて小さいことになる。
次に、図4を参照して標準試料のスペクトルについて説明する。図4の左側に示すように、イオン検出器114から検出信号(飛行時間信号)が得られるとき、この検出信号のベースライン付近を取り出したマススペクトルは、図4の右側に示すようになる。
このベースライン付近を取り出したマススペクトルには、標準試料のスペクトルSPa,SPb,SPc,SPd,SPe,SPfが含まれる。また、分析試料のスペクトルSP1′,SP2′,SP3′,SP4′,SP5′が含まれる。
ここで、デジタイザ122が標準試料のスペクトルを第2のデジタルデータとして取り出す際には、分析試料のスペクトルSP1′,SP2′,SP3′,SP4′,SP5′は、フルスケールのデータとして含まれる。
この第2のデジタルデータには、スペクトル位置が既知の標準試料のスペクトルが含まれ、この既知の標準試料のスペクトル位置の近傍のデータの抽出で、標準試料のスペクトルが抽出される。したがって、標準試料スペクトル抽出部125では、標準試料のスペクトルSPa,SPb,SPc,SPd,SPe,SPfだけを取り出すことができる。なお、標準試料スペクトル抽出部125では、フルスケールのデータである、分析試料のスペクトルSP1′,SP2′,SP3′,SP4′,SP5′を除去する処理を行うようにしてもよい。
したがって、本例の質量分析装置によると、分析試料と標準試料が同時にイオン源103に供給されるが、分析試料と標準試料の強度差が非常に大きいため、分析試料と標準試料の双方を精確に検出することができる。標準試料を精確に検出できることで、分析試料の質量軸校正を精確に行うことができ、時間経過に伴って発生する質量軸ずれについても精確に校正できるようになる。また、本例の質量分析装置の場合には、使用する標準試料が微量であるため、標準試料の使用量が非常に少なくてすむという効果も有する。
図5は、本例の質量分析装置を使用して、クロマトグラム上の任意の点におけるマススペクトルを検出した例を示す。
図5の下側に示すように、クロマトグラム上では、分析試料のスペクトルに対応したイオン強度P1,P2が検出される。このときのイオン強度P1,P2は、分析試料のイオン強度に基づいたものであり、図8の従来に示すような強度の大きな標準試料のノイズは検出されない。
また、図5の上側に示すように、クロマトグラム上の任意の点におけるマススペクトルについても、分析試料のスペクトルα,α,α,αと、標準試料のスペクトルβ,β,β,β4,・・・,β19のそれぞれが確実に検出される。このとき、分析試料のスペクトルα〜αと標準試料のスペクトルβ〜β19とが、全く異なる強度で検出されるので、それぞれを確実に判別できる。すなわち、同一スペクトル内に標準試料のピークが混在しないため、分析試料の質量の解析が精確にできるようになる。
[3.他の実施の形態例の質量分析装置]
図6は、本発明の他の実施の形態例の質量分析装置を示す。
図6の例の質量分析装置についても、図1の例の質量分析装置と同様に、イオン源103に、クロマトグラフ101から分析試料が供給されると共に、標準試料容器102から微量の標準試料が供給される。
そして、図6の例では、イオン検出器114から出力される検出信号が、2つの前置増幅器121a,122bで個別に増幅された後、デジタイザ122に供給される。このとき、一方の前置増幅器121aでの増幅率と、他方の前置増幅器122bでの増幅率とを、約100倍程度異なるように設定する。すなわち、一方の前置増幅器121aの増幅率をx、他方の前置増幅器122bの増幅率をyとしたとき、y=100xに設定する。
一方の前置増幅器121aで増幅された信号は、デジタイザ122で第1のデジタルデータに変換する。また、前置増幅器122bで増幅された信号は、デジタイザ122で第2のデジタルデータに変換する。デジタイザ122でデジタルデータに変換する際には、第1のデジタルデータと第2のデジタルデータとで、同じ電圧範囲の信号をフルスケールとしてデジタル化する。
そして、デジタイザ122は、第1のデジタルデータを、ノイズ除去部123に供給する。また、デジタイザ122は、第2のデジタルデータを、標準試料スペクトル抽出部125に供給する。
図6に示す質量分析装置のその他の部分は、図1に示す質量分析装置と同様に構成する。図6に示す構成の質量分析装置で質量分析処理を行う流れについても、図2で説明した質量分析処理がそのまま適用される。
この図6の例の質量分析装置の場合にも、図1の例の質量分析装置と同様に、分析試料と標準試料の強度差が非常に大きいことを利用して、分析試料と標準試料の双方を精確に検出することができ、分析試料の質量軸ずれを常時精確に校正できるようになる。
[4.変形例]
なお、上述した各実施の形態例では、イオン源103に供給する標準試料の強度を、分析試料の1/100とした。この1/100とするのは一例であり、他の比率としてもよい。例えば、イオン源103に供給する標準試料の強度を、分析試料の1/50程度としてもよい。この強度差は、質量分析装置のデジタイザ122でデジタル化した第1のデジタルデータから分析試料を取り出すことができると共に、質量分析装置のデジタイザ122でデジタル化した第2のデジタルデータで標準試料を取り出すことができる程度であればよい。
また、図1の例の質量分析装置では、デジタイザ122でデジタル化する際の電圧範囲の可変で、2つのデジタルデータのレベルを調整するようにした。また、図6の例の質量分析装置では、デジタイザ122の前段の前置増幅器121a,122bでの増幅率の変化で、2つのデジタルデータのレベルを調整するようにした。これに対して、図6の例のように前置増幅器121a,122bでの増幅率を変化させる処理と、図1の例のようにデジタイザ122でデジタル化する際の電圧範囲の可変とを組み合わせるようにしてもよい。
また、図6に示すように2つの前置増幅器121a,122bを用意した場合、第2のデジタルデータを得る前置増幅器122bについては、標準試料のスペクトルの検出条件によって増幅率を可変できるようにしてもよい。
また、図1や図6の例では、デジタイザ122が出力する第2のデジタルデータを直接標準試料スペクトル抽出部125に供給するようにしたが、第1のデジタルデータからノイズ除去を行うノイズ除去部123と同様のノイズ除去部を第2のデジタルデータの処理系にも設けて、第2のデジタルデータに含まれるノイズを除去するようにしてもよい。
また、図1の例や図6の例に示すデジタイザ122は、イオンの飛行時間ごとに入力信号を加算して出力するアベレージャーとしての機能を持つようにしてもよい。
また、図1や図6に示す構成では、デジタイザ122で得た2つのデジタルデータを処理する各処理部(ノイズ除去部123、標準試料スペクトル抽出部125、質量軸校正部126,127など)を配置するようにした。これに対して、これらの処理部でのデータ処理は、ソフトウェア化してコンピュータが演算処理で実行するようにしてもよい。
また、図1や図6に示す質量分析装置の構成は、飛行時間型質量分析装置の一例を示すものであり、その他の構成の質量分析装置としてもよい。すなわち、図1や図6の構成では、反射型の飛行時間型質量分析装置の例としたが、直線型、リフレクトロン型、多重反射型、多重周回型、らせん型などを含むその他の構成の飛行時間型質量分析装置に、本発明の処理を適用してもよい。
また、本発明は上述した実施の形態例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
1…イオン源、2…イオン輸送部、3…質量分離部、4…イオン加速部、5…ドリフト空間、6…イオン反射部、7…イオン検出器、8…前置増幅器、9…デジタイザ、10…データ処理部、101…クロマトグラフ、102…標準試料容器、103…イオン源、104…イオン輸送部、110…質量分離部、111…イオン加速部、112…ドリフト空間、113…イオン反射部、114…イオン検出器、121,121a,121b…前置増幅器、122…デジタイザ、123…ノイズ除去部、125…標準試料スペクトル抽出部、126…質量軸校正部(標準試料)、127…質量軸校正部(分析試料)、128…分析試料スペクトル取得部

Claims (5)

  1. 所定の強度レベルの分析試料と、前記分析試料の強度レベルよりも低い強度レベルでスペクトル位置が既知の標準試料とが供給されるイオン源と、
    前記イオン源で発生したイオンを飛行させて質量分離する質量分離部と、
    前記質量分離部で質量分離されたイオンを検出するイオン検出器と、
    前記イオン検出器で得られた検出信号を、前記分析試料の強度レベルに対応したレベルで第1のデジタルデータに変換すると共に、前記標準試料の強度レベルに対応したレベルで第2のデジタルデータに変換するデジタイザと、
    前記デジタイザで変換された前記第2のデジタルデータからスペクトル位置が既知の標準試料のスペクトルを抽出する標準試料スペクトル抽出部と、
    前記標準試料スペクトル抽出部で得た標準試料のスペクトルに基づいて、前記第1のデジタルデータを校正する校正部と、
    前記校正部で校正されたデータから前記分析試料のスペクトルを取得する分析試料スペクトル取得部とを備えた
    質量分析装置。
  2. 前記イオン検出器の出力を、前記分析試料の強度レベルに対応して増幅を行う第1の前置増幅器と、前記イオン検出器の出力を、前記標準試料の強度レベルに対応して増幅を行う第2の前置増幅器とを備え、
    前記デジタイザは、前記第1の前置増幅器の出力から前記第1のデジタルデータを得、前記第2の前置増幅器の出力から前記第2のデジタルデータを得るようにした
    請求項1に記載の質量分析装置。
  3. 前記第2の前置増幅器の増幅率は、標準試料のスペクトルの検出条件によって可変できるようにした
    請求項2に記載の質量分析装置。
  4. 前記標準試料スペクトル抽出部は、前記デジタイザで変換された前記第2のデジタルデータから、スケールオーバーしたデータを除去するようにした
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の質量分析装置。
  5. 所定の強度レベルの分析試料と、前記分析試料の強度レベルよりも低い強度レベルでスペクトル位置が既知の標準試料とをイオン源に供給する試料供給処理と、
    前記イオン源に供給された試料によるイオンを飛行させて質量分離する質量分離処理と、
    前記質量分離処理で質量分離されたイオンを検出するイオン検出処理と、
    前記イオン検出処理で得られた検出信号を、前記分析試料の強度レベルに対応したレベルで第1のデジタルデータに変換すると共に、前記標準試料の強度レベルに対応したレベルで第2のデジタルデータに変換するデジタル変換処理と、
    前記デジタル変換処理で変換された前記第2のデジタルデータからスペクトル位置が既知の標準試料のスペクトルを抽出する標準試料スペクトル抽出処理と、
    前記標準試料スペクトル抽出処理で得た標準試料のスペクトルに基づいて、前記第1のデジタルデータを校正する校正処理と、
    前記校正処理で校正されたデータから前記分析試料のスペクトルを取得する分析試料スペクトル取得処理と、を含む
    質量分析方法。
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