JP2015115521A - 金属複合体、回路基板、半導体装置、及び金属複合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】絶縁層11と、この絶縁層11の一方の面に配設された金属部材12と、前記金属部材のうち前記絶縁層が配設された面と反対側の面に配設されたAg焼結接合用Ag下地層12aとを備えた金属複合体10であって、前記Ag下地層12aは酸化銀の焼結体からなり、前記金属部材12と前記Ag下地層12aとが直接接合されていることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
風力発電、電気自動車等の電気車両などを制御するために用いられる大電力制御用のパワー半導体素子においては、発熱量が多いことから、これを搭載する基板としては、例えばAlN(窒化アルミ)などからなるセラミックス基板(絶縁層)上に導電性の優れた金属板を回路層(金属部材)として接合した回路基板が、従来から広く用いられている。また、セラミックス基板のうち回路層とは反対側の面に、金属板を金属層(金属部材)として接合されることもある。
特許文献1に示すパワーモジュールにおいては、回路基板の一方の面にはんだを介して半導体素子が接合されるとともに、他方の面にヒートシンクが接合されており、半導体素子で発生した熱を、セラミックス基板側に伝達し、ヒートシンクを介して外部へ放散する構成とされている。
非特許文献1に記載されたAgペーストにおいては、Ag粒子と有機物とを含有しており、Ag粒子が焼結することで、導電性の焼成体からなる接合層が形成され、この接合層を介して半導体素子等の電子部品が回路層上に接合されることになる。このAgペーストを用いた接合では、予め回路層や電子部品の表面にNiAuやAg等のメッキを形成した後に、上述の接合層を介して回路層と電子部品とが接合されている。
特許文献3に記載された酸化銀ペーストにおいては、酸化銀粒子が還元剤によって還元されることによって生成するAg粒子が焼結することで、導電性の焼成体からなる接合層が形成され、この接合層を介して半導体素子等の電子部品が回路層上に接合されることになる。
このように、Ag粒子の焼成体によって接合層を形成した場合には、比較的低温条件で接合層を形成できるとともに接合層自体の融点は高くなるため、高温環境下においても接合強度が大きく低下しない。
本発明の回路基板によれば、回路基板の回路層に酸化銀の焼結体からなるAg焼結接合用Ag下地層が形成されているので、Ag粒子及び酸化銀粒子の少なくとも一方又は両方と有機物とを含む接合材の焼成体からなる接合層を介して、半導体素子等と回路層とを接合する場合に、半導体素子等と回路層との接合強度を確保することができる。
本発明の回路基板によれば、回路基板の金属層に酸化銀の焼結体からなるAg焼結接合用Ag下地層が形成されているので、Ag粒子及び酸化銀粒子の少なくとも一方又は両方と有機物とを含む接合材の焼成体からなる接合層を介して、金属層とヒートシンク等とを接合する場合に、金属層とヒートシンク等との接合強度を確保することができる。
本発明の回路基板によれば、回路基板の回路層に酸化銀の焼結体からなるAg焼結接合用Ag下地層が形成されているので、Ag粒子及び酸化銀粒子の少なくとも一方又は両方と有機物とを含む接合材の焼成体からなる接合層を介して、半導体素子等と回路層とを接合する場合に、半導体素子等と回路層との接合強度を確保することができると共に、絶縁層の他方の面に配設された金属部材からなる金属層が備えられているので、回路基板とヒートシンク等が接合され、熱応力が負荷された場合に、回路基板とヒートシンク等の接合信頼性を確保することができる。
本発明の半導体装置によれば、上述のようなAg下地層と半導体素子とが、Ag粒子及び酸化銀粒子の少なくとも一方又は両方と有機物とを含む接合材の焼成体からなる接合層によって接合されているので、回路基板と半導体素子との接合強度を高くし、接合信頼性を向上させることができる。
そして、このように形成されたAg下地層は、Ag粒子及び酸化銀粒子の少なくとも一方又は両方と有機物とを含む接合材の焼成体からなる接合層との接合性が良好であり、金属部材と他の部材を、接合層を介して接合した場合に、接合信頼性を向上させることができる。
図1に、本発明の一実施形態に係る半導体装置1を示す。この半導体装置1は、回路基板10(金属複合体)と、この回路基板10の一方の面(図1において上面)に接合層2を介して接合された半導体素子3と、回路基板10の他方の面に接合層5を介して接合されたヒートシンク30とを備えている。
この回路層12の一方の面には、酸化銀の焼結体からなるAg下地層12aが形成されている。
この金属層13のうちセラミックス基板11が接合された面と反対側の面には、酸化銀の焼結体からなる第2Ag下地層13aが形成されている。
Ag下地層12a及び第2Ag下地層13aの焼結後における厚さは、0.003mm以上0.1mm以下の範囲に設定されており、本実施形態においては、0.01mmに設定されている。なお、回路層12上に形成されたAg下地層12aは、回路層12の一方の面のうち、半導体素子3と接合される領域に形成されている。また、金属層13上に形成された第2Ag下地層13aは、金属層13の全面に形成されている。
ヒートシンク30は、熱伝導性が良好な材質で構成されることが望ましく、本実施形態においては、A6063(Al合金)で構成されている。図1及び図3に示すとおり、このヒートシンク30には、冷却用の流体が流れるための流路31が設けられている。
ヒートシンク30の一方の面(図3において上面)には、酸化銀の焼結体からなる第3Ag下地層30aが形成されている。この第3Ag下地層30aは、上述のAg下地層12a及び第2Ag下地層13aと同様の構成とされており、Ag焼結接合用の下地層として形成されている。
接合層2は、Ag粒子及び酸化銀粒子の少なくとも一方又は両方と有機物とを含む接合材の焼成体とされており、本実施形態においては、酸化銀粒子と有機物からなる還元剤とを含む酸化銀ペーストの焼成体とされている。すなわち、接合層2は、酸化銀が還元されたAgの焼成体とされているのである。ここで、酸化銀を還元することにより生成される粒子は、例えば粒径10nm〜1μmと非常に微細であることから、緻密なAgの焼成層が形成されることになる。
酸化銀粉末の含有量が酸化銀ペースト全体の60質量%以上92質量%以下とされ、還元剤の含有量が酸化銀ペースト全体の5質量%以上20質量%以下とされ、有機金属化合物粉末の含有量が酸化銀ペースト全体の0質量%以上10質量%以下とされており、残部が溶剤とされている。この酸化銀ペーストにおいては、焼結によって得られるAg下地層12a、第2Ag下地層13a、第3Ag下地層30a及び接合層2に未反応の有機物が残存することを抑制するために、分散剤及び樹脂は添加していない。
アルコールであれば、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の1級アルコールを用いることができる。なお、これら以外にも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、その他のグリコール、グリセリンなどの多価アルコール類を用いてもよい。
有機酸であれば、例えば、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナンデカン酸などの飽和脂肪酸を用いることができる。なお、これら以外にも、不飽和脂肪酸を用いてもよい。
有機金属化合物は、熱分解によって生成する有機酸によって酸化銀の還元反応や有機物の分解反応を促進させる作用を有するものであり、例えば蟻酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀、安息香酸銀、シュウ酸銀などのカルボン酸系金属塩等が適用される。
溶剤は、酸化銀ペーストの保存安定性、印刷性を確保する観点から、高沸点(150℃〜300℃)のものを用いることが好ましい。具体的には、2−メチルプロパノエート、α−テルピネオール、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸3−メチルブチル等を用いることができる。
なお、この酸化銀ペーストは、ティー・エイ・インスツルメント社製の回転粘度計AR−1000を用いた場合、回転数が10回転/分のときの粘度が10Pa・s以上500Pa・s以下、より好ましくは50Pa・s以上300Pa・s以下に調整されている。
まず、Ag及び窒化物形成元素を含む銅部材接合用ペーストを用いてセラミックス基板11の一方の面に銅板22を接合し、回路層12を形成する(回路層形成工程S01)。ここで、銅部材接合用ペーストは、Agおよび窒化物形成元素を含む粉末成分と、樹脂と、溶剤と、分散剤と、可塑剤と、還元剤と、を含有するものであり、粉末成分は、Ag及び窒化物形成元素以外に、In、Sn、Al、Mn及びZnから選択される1種又は2種以上の添加元素を含有するものとされている。ここで、窒化物形成元素はTi、Zr、Hf及びNbから選択される1種又は2種以上の元素である。
ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力は10−6Pa以上10−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は790℃以上850℃以下の範囲内に設定している。
なお、凝固が終了した後では、Ag及び窒化物形成元素層25のAgが十分に拡散されており、セラミックス基板と銅板との接合界面にAg及び窒化物形成元素層25が残存することはない。
ここで、金属層形成工程S02において、真空加熱炉内の圧力は10−6Pa以上10−3Pa以下の範囲内に、加熱温度550℃以上650℃以下、保持時間は30分以上180分以下の範囲内に設定している。
上記のようにして、図5(d)に示すようにセラミックス基板11の一方の面に回路層12、他方の面に金属層13が接合される。
次いで、回路層12、金属層13上にAg下地層形成用酸化銀ペースト22a、23aが形成されたセラミックス基板11、及びAg下地層形成用酸化銀ペースト40aが形成されたヒートシンク30をそれぞれ真空加熱炉内に挿入し加熱して、Ag下地層形成用酸化銀ペースト22a、23a、40aを還元焼結するとともに回路層12、金属層13、ヒートシンク30に直接接合し、図6(b)及び図7(b)に示すように、酸化銀の焼結体からなるAg焼結接合用Ag下地層12a,13a、30aを形成する(Ag下地層形成工程S04)。この図6(b)に示すものが本実施形態の回路基板10である。
なお、回路層12、金属層13及びヒートシンク30と酸化銀ペースト22a、23a、30aとが接合される面は、予め当該面の傷が除去されて平滑にされた後に、直接接合されている。
なお、酸化銀ペースト4,6を塗布する際には、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、感光性プロセス等の種々の手段を採用することができる。本実施形態では、スクリーン印刷法によって酸化銀ペースト4,6を印刷した。
そして、半導体素子3と回路基板10、及びヒートシンク30とを積層した状態で加熱炉内に装入し、接合層形成用酸化銀ペースト4,6の焼成を行う(接合層形成用酸化銀ペースト焼成工程S07)。このとき、半導体素子3と回路基板10とを積層方向に加圧した状態で加熱することによって、より確実に接合することができる。この場合、加圧圧力は0.5〜10MPaとすることが望ましい。
このようにして、Ag下地層12aの上に接合層2が形成され、半導体素子3と回路層12とが接合される。また、回路基板10とヒートシンク30とが接合層5を介して接合される。これにより、本実施形態である半導体装置1が製造される。
さらに、Ag下地層13aが形成された回路基板10とAg下地層30aが形成されたヒートシンク30とが、接合層形成用酸化銀ペースト6の焼成体からなる接合層5を介して接合されているので、Ag下地層13a、30aと接合層5とが同種の金属(Ag)同士の接合となり、Ag下地層13a、30aと接合層5との接合強度を向上させることができる。したがって、回路基板10とヒートシンク30との接合強度を十分に確保することが可能となり、接合信頼性を向上させることができる。
さらに、絶縁層としてAlN等からなるセラミックス基板を用いたものとして説明したが、これに限定されることはなく、絶縁樹脂によって絶縁層を構成しても良い。
(本発明例1〜4)
表1に示す金属部材上に、Ag下地層形成用酸化銀ペーストを塗布し、還元焼結することによって、金属部材に直接接合された厚さ10μmのAg下地層を形成した。なお、このAg下地層の形成は、真空加熱炉内の圧力を10−6Pa以上、10−3Pa以下の範囲内に設定し、表1に示す条件で実施した。
また、焼成条件として、焼成温度を300℃、焼成時間を10分、加圧圧力を5MPaとした。さらに、本発明例1、2は真空雰囲気で接合層形成用酸化銀ペーストの焼成を行い、本発明例3、4は大気雰囲気で接合層形成用酸化銀ペーストの焼成を実施した。
上記のようにして、本発明例1〜4の接合体を作製した。
比較例1、2については、金属部材上にAg下地層を形成しないこと以外は本発明例1、2と同様にして作製した。すなわち、金属部材上にAg下地層を形成せずに、接合層形成用酸化銀ペーストを焼成した接合層によって、金属部材とSi板とを接合することにより比較例1、2の接合体を作製した。なお、比較例1、2は、真空雰囲気で酸化銀ペーストの焼成を実施した。
比較例3は、金属部材上にAgめっきを施した後に、接合層形成用酸化銀ペーストを焼成した接合層によって、金属部材とSi板とを接合した。また、比較例4は、金属部材上にAgめっきを施した後にAg下地層を形成し、そのAg下地層の上に接合層形成用酸化銀ペーストを塗布して焼成した接合層によって、金属部材とSi板とを接合した。
得られた接合体において、シェアテストによって、シェア強度(せん断強度)の測定を行った。Si板を上にして金属部材を水平に固定し、Si板をシェアツール(レスカ社製PTR−1101)でシェア速度0.1mm/秒、高さ20μmの位置を横から水平に押圧して、金属部材とSi板との接合が破壊されたときの強度及び破壊の位置(破壊モード)を確認した。なお、強度は、3回のシェア強度試験を実施してその平均値とした。結果を表2に示す。
金属部材にAg下地層を形成しなかった比較例1、2では、シェア強度が20MPa以下と低く、破壊も接合層と金属部材の界面で発生していた。
また、金属部材にAg下地層ではなくAgめっきを施した比較例3は、シェア強度が20MPa以下と低く、破壊も接合層とAgめっき層の界面で発生していた。
金属部材にAgめっき層を介してAg下地層を接合した比較例4では、シェア強度が20MPa以下と低く、破壊もAg下地層とAgめっき層の界面で発生していた。
2、5 接合層
3 半導体素子(他の部材)
22a、23a、40a Ag下地層形成用酸化銀ペースト
4、6 接合層形成用酸化銀ペースト(接合材)
10 回路基板(金属複合体)
11 セラミックス基板(絶縁層)
12 回路層(金属部材)
12a Ag下地層
13a 第2Ag下地層
30a 第3Ag下地層
13 金属層(金属部材)
Claims (6)
- 絶縁層と、この絶縁層の一方の面に配設された金属部材と、前記金属部材のうち前記絶縁層が配設された面と反対側の面に配設されたAg焼結接合用Ag下地層とを備えた金属複合体であって、
前記Ag下地層は、酸化銀の焼結体からなり、
前記金属部材と前記Ag下地層とが直接接合されていることを特徴とする金属複合体。 - 請求項1に記載の金属複合体からなり、前記金属部材は、前記絶縁層の一方の面に配設された回路層であることを特徴とする回路基板。
- 請求項1に記載の金属複合体を有し、前記絶縁層の他方の面に回路層が配設されていることを特徴とする回路基板。
- 請求項2に記載の金属複合体を有し、前記絶縁層の他方の面に金属層が配設され、前記金属層のうち前記絶縁層が配設された面と反対側の面にAg焼結接合用第2Ag下地層が配設され、
前記第2Ag下地層は酸化銀の焼結体からなり、
前記金属層と前記第2Ag下地層とが直接接合されていることを特徴とする回路基板。 - 請求項2又は請求項4に記載の回路基板と、前記回路層上のAg下地層に接合された半導体素子と、を備え、
Ag粒子及び酸化銀粒子の少なくとも一方又は両方と有機物とを含む接合材の焼成体からなる接合層によって、前記Ag下地層と前記半導体素子とが接合されていることを特徴とする半導体装置。 - 絶縁層の一方の面に金属部材が配設された金属複合体の製造方法であって、
前記絶縁層の一方の面に前記金属部材を配設する工程と、
前記金属部材のうち前記絶縁層が配設された面と反対側の面に、酸化銀ペーストを塗布する工程と、
前記酸化銀ペーストを焼結することにより、前記金属部材と直接接合したAg焼結接合用Ag下地層を形成する工程と、を備えることを特徴とする金属複合体の製造方法。
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