JP2015113850A - 一方向クラッチ - Google Patents

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Abstract

【課題】両軌道輪の相対的な偏心を抑制する。【解決手段】内側軌道輪2及び外側軌道輪3間に配置される複数の係合子5と、ばね部材6と、係合子5を保持する径方向内側の内側リテーナ7及び径方向外側の外側リテーナ8と、を備え、外側軌道輪3が内側軌道輪2に対し相対的に一方向又は他方向に回転することで、係合子5が各軌道輪2,3に噛み合ったロック状態、又は、噛み合いが解除された空転状態となり、ばね部材6が係合子5を噛み合い方向に付勢し、軌道輪2とリテーナ7との相対回転が許容され、空転状態の際に、偏心する両軌道輪2,3の間に両リテーナ7,8が介在することで、当該偏心が抑制され,軌道輪2との相対回転が許容されるリテーナ7と軌道輪2との間に、転がり軸受9が介在している。【選択図】 図1

Description

本発明は、トルクコンバータ等に使用される一方向クラッチに関する。
トルクコンバータ等に使用される一方向クラッチには、内側軌道輪及び外側軌道輪の両軌道面間に配置される複数のスプラグと、ばね部材と、スプラグを周方向に沿って所定間隔で保持する内側リテーナ及び外側リテーナと、を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
このものでは、外側軌道輪が内側軌道輪に対し相対的に一方向に回転することで、スプラグが内側軌道輪の外周面及び外側軌道輪の内周面に噛み合ったロック状態となり、外側軌道輪が内側軌道輪に対し相対的に他方向に回転することで、噛み合いが解除された空転状態となる。そして、ばね部材がスプラグを噛み合い方向に付勢している。
特開平9−126295号公報
ところで、上記一方向クラッチは、動力伝達が遮断された空転状態では、スプラグが各軌道輪の軌道面と噛み合っていないため、一部のスプラグと各軌道輪の軌道面との間に隙間が生じる場合がある。この場合、両軌道輪は相対的に偏心し易い状態となるが、両軌道輪の間に両リテーナが介在することで、両軌道輪の相対的な偏心が抑制される。つまり、各リテーナは、偏心抑制部として機能することができる。
又、上記空転状態の際に、内側軌道輪に対して相対回転が許容されている内側リテーナでは、その軸方向一端部に形成された円環部の内周面が、内側軌道輪の外周面に対して相対的に摺動する。
この場合に、一方向クラッチに大きなラジアル荷重が作用していると、内側リテーナの円環部の内周面と内側軌道輪の外周面とが大きな接触力で当接し、この状態で、両者は相対的に摺動することになる。これにより、内側リテーナの円環部が摩耗したり、一方向クラッチで伝達トルクの損失が生じる。そして、上記円環部の摩耗により、両軌道輪の偏心量は増大するという問題があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、両軌道輪の相対的な偏心を抑制できると共に、リテーナの摩耗も抑制できる一方向クラッチを提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、内側軌道輪及び外側軌道輪の両軌道面間に配置される複数の係合子と、前記係合子を周方向に沿って所定間隔で保持する径方向内側の内側リテーナ及び径方向外側の外側リテーナと、を備え、一方の前記軌道輪が他方の前記軌道輪に対し相対的に一方向に回転することで、前記係合子が前記各軌道輪の前記軌道面に噛み合ったロック状態となり、前記一方の軌道輪が前記他方の軌道輪に対し相対的に他方向に回転することで、前記噛み合いが解除された空転状態となり、前記内側軌道輪と前記内側リテーナ、及び前記外側軌道輪と前記外側リテーナの各組合せの何れか一方において、前記軌道輪と前記リテーナとの相対回転が許容され、前記空転状態の際に、偏心する前記両軌道輪の間に前記両リテーナが介在することで、当該偏心が抑制される一方向クラッチであって、前記軌道輪との相対回転が許容される前記リテーナと前記軌道輪との間に、転がり軸受が介在していることを特徴としている。
上記構成例によれば、一方向クラッチの動力伝達が遮断された空転状態においては、スプラグは各軌道輪の軌道面と噛み合っていないため、一部のスプラグと各軌道輪の軌道面との間に隙間が生じる場合がある。この場合、両軌道輪が相対的に偏心し易い状態となるが、両軌道輪の間に両リテーナが介在することで、両軌道輪の相対的な偏心が抑制される。
この際、軌道輪との相対回転が許容されたリテーナは、上記軌道輪に対して相対回転するが、上記リテーナは、転がり軸受を介して、上記軌道輪の軌道面に当接し、軌道輪に回転自在に支持される。このように、上記リテーナが軌道面に対して相対的に摺動しないので、一方向クラッチに大きなラジアル荷重が作用しても、従来のように、リテーナが摩耗したり、一方向クラッチで、伝達トルクの大きな損失が生じるのを抑制することができる。従って、リテーナの摩耗による、両軌道輪の偏心量の増大がなく、偏心量の増大による一方向クラッチの破損の惧れはない。
尚、前記転がり軸受が、前記リテーナと前記軌道面に転動可能に当接する転動体と、前記転動体を回転自在に保持する保持器と、を備えることもある。
この構成によれば、転がり軸受が軌道面に当接した際には、転動体がリテーナと軌道面に対して転動するので、一方向クラッチでは、転動体の転がり抵抗による伝達トルクの損失が生じるが、この転がり抵抗は、リテーナの軌道輪に対する従来の摺動抵抗よりも小さいので、損失トルクを従来よりも小さくできる。
又、前記外側リテーナの内周面と前記内側リテーナの外周面とが、僅かな隙間を介して、近接し、前記隙間の径方向長さが、前記両軌道輪の許容偏心量とされることもある。
この構成によれば、一方向クラッチを両軌道輪間に組み込む際に、軌道輪との相対回転が許容されるリテーナを、他のリテーナとの相対回転が許容されていない軌道輪に対して径方向に相対的に移動させることにより、組み込みを容易に行える。
又、僅かな隙間により、両軌道輪の相対的な小さな偏心は許容されるが、その偏心量は許容偏心量以下に規制されるので、両軌道輪の相対的な偏心により、一方向クラッチが破損する惧れはない。
本発明によれば、両軌道輪の相対的な偏心を抑制できると共に、リテーナの摩耗も抑制できる一方向クラッチを提供することができる。
本発明の一実施形態に係る一方向クラッチの断面図である。 図1のA−A線断面図である。 図1の一部拡大図である。 図3の軸受の斜視図である。 本発明の他の実施形態に係る一方向クラッチの断面図である。
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る一方向クラッチの断面図、図2は、図1のA−A線断面図である。
本実施形態の一方向クラッチは、例えば、自動車等の車両用自動変速装置に設けられたトルクコンバータに組み付けられるものである。図1及び図2で示すように、一方向クラッチ1は、鋼製の内側軌道輪2とこの内側軌道輪2の外周側に配置された鋼製の外側軌道輪3との間に配設される。一方向クラッチ1は、内側軌道輪2の軌道面である外周面2aと外側軌道輪3の軌道面である内周面3aとの間の環状空間4に配設された複数の鋼製のスプラグ(係合子)5と、リボンスプリング(ばね部材)6と、内側・外側リテーナ7,8と、転がり軸受9と、を備えている。
一方向クラッチ1では、外側軌道輪3が内側軌道輪2に対して相対的に一方向(図2の矢印A方向)に回転することにより、スプラグ5が内側軌道輪2の外周面2a及び外側軌道輪3の内周面3aに噛み合ったロック状態となり、動力が伝達される。又、外側軌道輪3が内側軌道輪2に対して他方向(図2の矢印B方向)に相対的に回転した場合は、スプラグ5の噛み合いが解除された空転状態となり、動力伝達が遮断される。
リボンスプリング6は、環状空間4の径方向(略)中央部に配置されており、複数の各スプラグ5を各軌道輪2,3に対して噛み合わせる方向(図2の矢印A方向)に付勢している。
内側・外側リテーナ7,8は、スプラグ5を周方向に沿って所定間隔で保持するもので、内側リテーナ7がリボンスプリング6の内周側に配置され、外側リテーナ8がリボンスプリング6の外周側に配置されている。外側リテーナ8の内周面と内側リテーナ7の外周面とは、径方向に関して、僅かな隙間11(及びリボンスプリング6)を介して、近接(対向)している。上記隙間11の径方向長さLは、両軌道輪2,3の許容偏心量とされている。各リテーナ7,8は、炭素鋼から成るが、その他の材料により形成することもある。
内側リテーナ7は、リボンスプリング6の内周側に配置された円筒部7aと、円筒部7aの軸方向一端部から径方向内側に延びる円環部7bとを有している。外側リテーナ8は、リボンスプリング6の外周側に配置された円筒部8aと、円筒部8aの軸方向一端部から径方向外側に延びる円環部8bとを有している。
各リテーナ7,8の円筒部7a,8aには、複数のポケット7a1,8a1が周方向等間隔に形成されている。各ポケット7a1,8a1には、スプラグ5の内周部側又は外周部側が挿入されて、スプラグ5は各リテーナ7,8により保持されている。内側リテーナ7の円環部7bは内側軌道輪2には固定されておらず、内側軌道輪2と内側リテーナ7との相対回転は許容されている。外側リテーナ8の円環部8bは外側軌道輪3の内周面3aに(軽)圧入されて、固定され、外側軌道輪3と外側リテーナ8との相対回転は阻止されている。
図3は図1の一部拡大図であり、図4は図3の軸受9の斜視図である。図3で示すように、転がり軸受9は、内側リテーナ7の円環部7bの内周部に備えられ、径方向に関して、円環部7bの内周面7b1と内側軌道輪2の外周面2aとの間に介装されている。図3及び図4で示すように、転がり軸受9は、保持器(ケージ)13と、複数の転動体14とを有する。
保持器13は、軸方向から視て、円の一部を切り取ったC型状とされると共に、合成樹脂により一体成型されて、弾性変形可能とされている。保持器13は、軸方向に間隔を置いて配設された一対の支持壁(リブ)13a,13bと、周方向等間隔に配設されて両支持壁13a,13bの内周側を連結する連結部13cとを有する。
保持器13の両支持壁13a,13bの間には、隣接する連結部13c間に位置する転動体14が周方向等間隔に配設され、両支持壁13a,13bに軸方向に沿った中心軸C回りに回転自在に保持されている。尚、両支持壁13a,13bの外周側は、転動体14よりも径方向外側に突出している。転動体14は、内側リテーナ7の円環部7bの内周面7b1に対して転動可能に当接している。転動体14の一部は、両支持壁13a,13bよりも、径方向内側に突出しており、内側軌道輪2の外周面2aに対して転動可能に当接する。転動体14としては、例えば、金属製のニードルローラが使用される。
一方向クラッチ1を両軌道輪2,3間に組み込む前に、転がり軸受9を内側リテーナ7の円環部7bの内周部に取り付ける。この取り付けでは、軸受9の保持器13に径方向内側への力を加えて、保持器13を径方向内側に弾性変形させ、C型状の保持器10の周方向両端部の間の隙間を小さくするように、その外径を縮ませて、円環部7bの径方向内側に挿入する。その後、上記力を加えるのを止めれば、保持器13が径方向外側に弾性変形し、各転動体14が円環部7bの内周面7b1に対して転動可能に当接して、これにより、転がり軸受9を円環部7bに嵌め込むことができる。この状態では、保持器13の両支持壁13a,13bの外周部側により円環部7bの内周部を挟み込むので、当該内周部から転がり軸受9が軸方向に脱落するのが防止される。尚、円環部7bの内径、転がり軸受9の転動体14の軸中心のピッチ円の直径、及び転動体14の外径を適宜設定することで、円環部7bと転動体14との接触力を自由に設定できる。
尚、保持器13、すなわち、転がり軸受9がC型状とされて、転がり軸受9の周方向両端部間では、1個分程度の転動体14が欠けた状態であるが、この程度では、転がり軸受9の軸受としての機能に問題はない。
又、両リテーナ7,8の間の隙間11を無くして、予め、「内側軌道輪2と転がり軸受9を介して当接する」内側リテーナ7と、「外側軌道輪3に固定された」外側リテーナ8とを当接させておけば、両軌道輪2,3の相対的な偏心を防止できる。しかし、このようにすると、一方向クラッチ1の両軌道輪2,3間への組み込み時に、内側軌道輪2との相対回転が許容される内側リテーナ7を、外側軌道輪3に対して径方向に相対的に移動させることができず、組み込み性が悪くなる。そこで、両リテーナ7,8間に僅かな隙間11を設けて、内側リテーナ7を外側両軌道輪3に対して径方向に相対的に移動させることができるようにし、上記組み込みを容易に行えるようにしている。尚、両リテーナ7,8間の僅かな隙間11により、両軌道輪2,3の相対的な小さな偏心は許容されるが、その偏心量は許容偏心量以下に規制されるので、両軌道輪2,3の相対的な偏心により、一方向クラッチ1が破損する惧れはない。
本実施形態の一方向クラッチ1によれば、動力伝達が遮断された空転状態においては、スプラグ5は各軌道輪2,3と噛み合っていないため、一部のスプラグ5と各軌道輪2,3との間に隙間が生じる場合がある。この場合、両軌道輪2,3が相対的に偏心し易い状態となる。この際、「内側軌道輪2と転がり軸受9を介して当接する」内側リテーナ7が、径方向の相対的な移動を介して、「外側軌道輪3に固定された」外側リテーナ8と当接して(この際、両リテーナ7,8が直接当接する場合と、リボンスプリング6を介して当接する場合とがある)、両軌道輪2,3の相対的な偏心が抑制される。
この場合において、内側軌道輪2と内側リテーナ7との相対回転が許容されているため、内側リテーナ7の円環部7bは内側軌道輪2の外周面2aに対して相対的に回転する。この際、内側リテーナ7の円環部7bの内周面7b1と内側軌道輪2の外周面2aとの間には、転がり軸受9の転動体14が介在するため、上記回転時には、転動体14が内周面7b1と外周面2a上を転動する。
このように、内側リテーナ7の円環部7bの内周面7b1と内側軌道輪2の外周面2aとの間には、これらに対して転動する転動体14が介在し、従来のように、円環部7bの内周面7b1が内側軌道輪2の外周面2aに対して相対的に摺動しないので、一方向クラッチ1に大きなラジアル荷重が作用しても、円環部7bが従来のように摩耗することはない。従って、円環部7bの摩耗による、両軌道輪2,3の偏心量の増大がなく、偏心量の増大による一方向クラッチ1の破損の惧れはない。
又、上記の際に、転動体14が、円環部7bの内周面7b1、及び内側軌道輪2の外周面2a上を転動するので、一方向クラッチ1では、転動体14の転がり抵抗による伝達トルクの損失が生じるが、この転がり抵抗は、円環部7bの内側軌道輪2に対する従来の摺動抵抗よりも小さいので、損失トルクを従来よりも小さくできる。
図5は本発明の他の実施形態を示すもので、外側リテーナ8の円筒部8aの軸方向一端部に、径方向内側に突出する環状の突出部8cが全周にわたって一体形成されている。外側リテーナ8は、突出部8cを介して、内側リテーナ7と当接可能とされている。突出部8cの径方向内側への突出量L1を適宜設定することで、隙間11の径方向長さLを所望の長さに設定できる。
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく適宜変更して実施可能である。例えば、上記実施形態における一方向クラッチは、トルクコンバータに用いる場合について説明したが、他の機器に適用しても良い。また、本実施形態における一方向クラッチは、係合子としてスプラグを用いているが、円筒状のころを係合子とした一方向クラッチにも適用することができる。さらに、上記実施形態における一方向クラッチでは、外側リテーナの円環部を外側軌道輪の内周面に(軽)圧入することで、外側リテーナの外側軌道輪に対する相対回転を阻止したが、これとは逆に、内側リテーナの円環部を内側軌道輪の外周面に(軽)圧入することで、内側リテーナの内側軌道輪に対する相対回転を阻止して、外側リテーナと外側軌道輪との相対回転を許容してもよい。この場合には、外側リテーナの円環部の外周部に転がり軸受が備えられる。
1:一方向クラッチ、2:内側軌道輪、2a:外周面(軌道面)、3:外側軌道輪、3a:内周面(軌道面)、5:スプラグ(係合子)、6:リボンスプリング(ばね部材)、7:内側リテーナ、8:外側リテーナ、9:転がり軸受、11:隙間、13:保持器、14:転動体、L:隙間の径方向長さ

Claims (3)

  1. 内側軌道輪及び外側軌道輪の両軌道面間に配置される複数の係合子と、前記係合子を周方向に沿って所定間隔で保持する径方向内側の内側リテーナ及び径方向外側の外側リテーナと、を備え、
    一方の前記軌道輪が他方の前記軌道輪に対し相対的に一方向に回転することで、前記係合子が前記各軌道輪の前記軌道面に噛み合ったロック状態となり、前記一方の軌道輪が前記他方の軌道輪に対し相対的に他方向に回転することで、前記噛み合いが解除された空転状態となり、
    前記内側軌道輪と前記内側リテーナ、及び前記外側軌道輪と前記外側リテーナの各組合せの何れか一方において、前記軌道輪と前記リテーナとの相対回転が許容され、
    前記空転状態の際に、偏心する前記両軌道輪の間に前記両リテーナが介在することで、当該偏心が抑制される一方向クラッチであって、
    前記軌道輪との相対回転が許容される前記リテーナと前記軌道輪との間に、転がり軸受が介在していることを特徴とする一方向クラッチ。
  2. 前記転がり軸受が、前記リテーナと前記軌道面に転動可能に当接する転動体と、前記転動体を回転自在に保持する保持器と、を備える請求項1に記載の一方向クラッチ。
  3. 前記外側リテーナの内周面と前記内側リテーナの外周面とが、僅かな隙間を介して、近接し、
    前記隙間の径方向長さが、前記両軌道輪の許容偏心量とされた請求項1又は2に記載の一方向クラッチ。
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