JP2015113619A - 杭頭部の構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る杭頭部の構造は、杭1の地表3から所定の深さまでの範囲について、杭1の外径よりも幅広の板状体5を、杭1の外周面に当接又は近接させた状態で杭1の軸方向に沿わせて打設したことを特徴とするものである。
【選択図】 図1
Description
短い杭の水平抵抗は、地表付近の地盤特性に大きく依存するため、特許文献1に示されるように、鋼管杭の支持具を鋼管杭の地表面近傍に設けて水平抵抗を増大させるようにした発明がある。
そのため、あらかじめ、杭の所定の位置に、嵌合部材を省略して接続部材を介して抵抗部材を一体的に形成した杭と比較すると、明らかに工数が増加しており、高コストである。
また、杭を一旦打ちとめて、杭嵌合部材を一体化して施工を再開する場合、その後、地中に大きな岩石など障害物が存在した場合には、それ以上の杭の打ち込みが困難となるため、鋼管杭の支持具を所定の位置に配置できなくなる危険がある。
鋼管杭を太陽光発電パネル用架台に用いた場合、太陽光発電用架台は軽量なため、地震による水平力は支配的でなく、傾斜方向に平行な方向に作用する風荷重の検討が重要である。よって、杭に付与する水平抵抗は必ずしも全周方向で大きくする必要はない。太陽光発電用架台に作用する風荷重は正負方向(吹き上げ、吹き下ろし方向)で作用応力が異なるが、このような場合には、片側に変位が累積しないように、水平方向変位を正負同じレベルになるように調整できることが望ましい。しかしながら、特許文献1の鋼管杭の支持具は全周方向で抵抗力が同じであり、このような調整をすることができない。
よって、風荷重による水平力に抵抗するために杭に付与する水平抵抗は、必ずしも全周方向には必要なく、また正負方向で等しくなる必要もない。その一方で、太陽光発電パネルに作用する風荷重のように、正負方向で作用応力が異なる場合には、変位が片側に累積しないように、水平方向変位を同じレベルになるように調整できることが望ましい。
本発明はこのような点を検討及び考慮してなされたものであり、具体的には以下の構成からなるものである。
前記2本以上の杭から選ばれた2本の杭を第1の杭と第2の杭としたときに、第1の杭に対して板状体を、その幅方向が前記連結部材の軸線に直交するように配置すると共に、前記第1の杭及び/又は第2の杭における前記第1の杭に配置した板状体の位置と反対側に板状体を配置したことを特徴とするものである。
各杭に対して板状体をその幅方向が前記連結部材の軸方向と平行になるように配置し、かつ前記連結部材の軸方向中心に対して対称位置にある杭に配置する板状体の設置状況が同じになるようにしたことを特徴とするものである。
本発明の一実施の形態に係る杭頭部の構造は、図1に示すように、杭1の地表3から所定の深さまでの範囲について、杭1の外径よりも幅広の板状体5を、杭1の外周面に当接又は近接させた状態で杭1の軸方向に沿わせて打設したことを特徴とするものである。
以下、詳細に説明する。
杭1の種類は特に限定されないが、例えば図1に示すように先端に先端翼7を有する回転貫入杭が望ましい。回転貫入杭は、地盤に回転貫入方式によって施工され、その際には、先端翼7の外径の範囲の土が乱されて、上部から貫入容易な土壌かく乱部9を形成する。
先端翼7の形態は特に限定されず、例えば平板翼、螺旋翼など任意の形態でよい。また、先端翼7の外径は規定しないが、杭径の2倍以上が望ましく、より望ましくは3倍以上である。このようにすることで、先端支持力を確保できるからである。
板状体5は、図2に示すように、杭1の外径よりも幅広の鋼板によって形成されている。そして、板状体5は、図2に示すように、杭1の水平力が作用する方向(実線の矢印の方向)と直交方向に、その幅方向の中心を杭芯と略一致させて配置され、かつ、図1に示すように、杭1の外周面に当接又は近接させた状態で杭1の軸方向に沿わせて打設されている。
杭1に対して板状体5をどの位置に配置するかについては、杭1に最大の水平力が作用したときに杭頭が傾斜してくる方向とするが、逆方向(図1の破線の矢印の方向)に作用する水平力にも抵抗するために、図1、図2において破線で示した板状体5のように、実線で示した板状体5が設置されたのと反対側にも設置するのが望ましい。その際、作用応力の大きさに応じて、幅や長さを調整して小さくしても良い。
板状体5の幅については、鋼材のヤング係数をE、杭鋼管部の断面二次モーメントをI、杭外径をd、地盤反力係数をkhとすると、(4EI/(kh・d))0.25で与えられる換算載荷幅を目安とすればよい。
板状体5は杭1に固定されていないので、杭1および板状体5の施工終了後に、杭頭位置の微調整のため、再度杭1を回転させたとしても、その回転応力は板状体5に伝達されず、所定の位置を保持することができる。
実施の形態1においては、杭1が1本の場合について説明したが、本実施の形態2は、複数の本の杭1の杭頭部を、主となる水平力が作用する方向に連結部材11によって連結した場合の杭頭部の構造である。
本実施の形態に係る杭頭部の構造は、図3、図4に示すように、第1の杭1aと第2の杭1bの2本の杭を一組として、各杭の上部を連結部材11で直線状に連結してなり、かつ連結部材11の軸線方向に正負方向(矢印A,B)の水平荷重が作用する場合であって、第1の杭1aに対して板状体5を、その幅方向が連結部材11の軸線に直交するように配置すると共に、第1の杭1aにおける板状体5を配置した側と反対側に板状体5を配置したものである。
なお、杭の構造や板状体5の構成に関しては実施の形態1と同様であり、図3、4において、図1,2と同一部分には同一の符号を付してある。
このように、連結部材11の軸線方向であって第1の杭1aの杭芯を挟む両側に板状体5を配置することで、正負の水平荷重が作用した場合に板状体5が配置された杭の転倒を防止し、これによって構造体全体が傾斜するのを防止できる。
図5に示す例は、第1の杭1aにおける第2の杭1bから遠い側に1枚の板状体5を設置し、第2の杭1bにおける第1の杭1aにおいて板状体5を設置した側の反対側に板状体5を設置したものである。
この場合、矢印Aの方向の水平力に対しては、第2の杭1bに設置した板状体5が抵抗し、矢印Bの方向の水平力に対しては、第1の杭1aに設置した板状体5が抵抗する。
この場合、矢印Aの方向の水平力に対しては、第1の杭1aに設置した板状体5が抵抗し、矢印Bの方向の水平力に対しては、第2の杭1bに設置した板状体5が抵抗する。
さらに、第1の杭1aと第2の杭1bの両方に、連結部材11の軸線方向に沿って両側に板状体5を設置するようにしてもよい。
実施の形態2においては、複数本の杭の上部を主となる水平力の方向に連結したものであったが、本実施の形態3は、複数本の杭の上部を主となる水平力に直交する方向に連結したものである。
具体的には、図9、図10に示すように、第1の杭1aと第2の杭1bを2本一組として、第1の杭1aと第2の杭1bの上部を連結部材11で直線状に連結してなり、かつ連結部材11の軸線方向に直交する方向に正負の水平荷重が作用する場合であって、第1の杭1aと第2の杭1bに対して板状体5をその幅方向が連結部材11の軸方向と平行になるように配置し、かつ連結部材11の軸方向中心に対して対称位置にある杭(両端の杭)に配置する板状体5の設置状況が同じになるようにしたものである。
両端にある第1の杭1aと第2の杭1bに配置する板状体5の設置状況が同じになるとは、杭に対する板状体5の配置関係(配置の位置や数)が同じであり、かつ板状体5の面積が同じであることをいう。
杭や板状体5の構成に関しては実施の形態1と同様である。
第1の杭1aと第2の杭1bにおける板状体5の設置状況が同じであるので、水平荷重が作用した場合にバランスが崩れることがない。
図11、図12に示す例は、5本の杭を連結部材11で連結した場合であり、両端の杭が第1の杭1a、第2の杭1bであり、それ以外の杭を第3の杭1cとしている。
この例では、全ての杭に対して板状体5をその幅方向が連結部材11の軸方向と平行になるように配置し、かつ各杭に対して2枚の板状体5を、杭を挟んで対向するように配置している。
両端の第1の杭1aと第2の杭1bに設置した板状体5の上下長さは他の杭(第3の杭1c)に設置した板状体5の長さよりも短く設定されている。
これは、構造体に水平荷重が作用した場合に、両端の杭に作用する荷重が他の杭に作用する荷重よりも小さいことを考慮したものである。この場合であっても、連結部材11の軸方向の中心に対して対称位置にある杭に設ける板状体5の設置状況が同じである点は変わりなく、水平荷重が作用した場合において、抵抗力のバランスが崩れることはない。
試験に用いた土槽のサイズは、幅2500mm×奥行き1500mm×高さ1500mm(容積=5.625m3)である。
土層の充填材は、珪砂と、山砂の2ケースとした。珪砂は、乾燥したものを用い、締め固めはしていない。山砂は、散水と締め固めを行い、珪砂よりも強固にした。
模型試験杭は、JIS G3444一般構造用炭素鋼管に規定されるSTK400、外径48.6mm×板厚2.3mm×長さ1550mmとし、以下の2種類を準備した。
(1)単管試験体:単管のままとし、特に加工はしていない。
(2)先端翼試験体:単管の先端に、単管の径の3倍(150mm)の円盤を溶接によって取付けた。円盤の厚さは6mmとした。
土層に深さ500mmまで土を充填し、試験杭を設置した。埋め込み深さは1000mmである。杭は土層製作時に埋め込みによって配置し、冶具により位置管理を行った。
(a)珪砂(換算N値0.4)
・TP1:単管
・TP2:単管+平板水平抵抗要素配置
・TP3:先端翼
(b)山砂(換算N値0.8)
・TP1:単管
・TP2:単管+平板水平抵抗要素配置
・TP4:先端翼+平板水平抵抗要素配置
なお、平板水平抵抗要素は、実施の形態で示した板状体5に相当するもので、厚さ3mm、幅150mm、長さ300mmの鋼板を、地表部から杭に沿わせてさし込んで設置した。設置位置は、水平載荷によって、杭頭が傾斜していく側(前面)である。
珪砂を用いた土層試験(a)の場合、図15に示すように、平板水平抵抗要素のないTP1とTP3は同じ挙動であり、水平抵抗に対して、杭先端形状が影響しないことを示している。他方、TP2は、前面に平板抵抗要素を配置することで、水平抵抗が、およそ1.5倍に上昇した。
<実施形態1の実施例1>
鋼管径d=101.6mm、板厚4.2mm、長さ3000mmの鋼管の先端に、外径D=300mm、板厚12mmの先端翼を取り付けて形成した杭を用いる。杭に用いる鋼管は、材料強度400N/mm2のプレめっき鋼板を用いて製造した。
杭は回転貫入工法により施工する。杭の打ちとめは、杭頭側を1000mm突出させた位置としたが、杭長、突出寸法など、全て任意に決定でき、突出していなくてもよい。説明の便宜上、杭は、X-Y座標の原点に施工するものとする。回転貫入による施工によって、先端翼の外径範囲の土壌はかく乱され、施工直後は周囲地盤よりも軟らかい状態になっている。
幅220mm、長さ500mm、板厚4.5mmの鋼板を、その面の中心をX軸にあわせて、Y軸に平行に、杭に沿わせて差し込む。板の中心座標は、(53、0)内外である。鋼板の寸法は、任意に定めることができるが、大きく、板厚が厚いほど効果が高い。
一方で、幅は、D×(1-(2d/D)2)0.5内外とすると、土壌かく乱部の範囲内に納めることができるので、施工性が良好である。当該鋼板は、杭と接触していることが最も望ましいが、実際は若干の隙間が生じ、杭に水平力が作用することで杭と接触する。鋼板は、杭から支圧で水平力が伝達され、地盤へと応力を伝達するので、鋼板と杭は固定していない。鋼板の幅は、杭径よりも大きいため、荷重を分散させることにより、当該部分の単位地盤反力を小さく抑え、地盤の早期塑性化を防止する。逆に言えば、地表付近の地盤反力を大きくとることができるので、当該部分の水平変位を抑制することができる。
さらに、前述のように、鋼板と杭は接合されていないので、水平力が除荷され、または逆方向の水平力が作用した場合、当該鋼板と杭は離間する。時間の経過により、杭と鋼板の相対関係は自動的に初期状態まで復帰するが、鋼板と杭の離間部に楔を入れることで、早期に水平抵抗を復活させることができる。杭と鋼板を固定した場合には、水平抵抗要素となる鋼板と地盤に空隙ができるため、このように簡単な手段で早期に水平抵抗を復活させることができない。なお、ここでは鋼板を水平抵抗要素として用いたが、形鋼形状としてもよい。
実施例1では、卓越する風荷重を想定して、一方向の水平力について対処する場合の説明をしたが、ここでは、地震力など、正負方向に繰り返し作用する水平力に対抗する場合について対処する方法として実施例2を説明する。
この場合、実施例1の形態にさらに、板の中心座標を(-53、0)として、もう一枚鋼板を追加するようにすればよい。
ここでは、複数の杭を水平力が作用する方向に連結部材によって連結した前述の実施の形態2の実施例について説明する。ここでは説明の簡便化のため杭を2本として説明する。使用する杭、鋼板は、実施例1のものと同じ構造としたが、第一の杭の長さを2500mm、第二の杭の長さを3000mmとして、突出長は、それぞれ、500mm、1000mmである。杭頭部は、形鋼または鋼管等によるつなぎ梁によって連結され、つなぎ梁は傾斜して保持されている。
なお、ここでは、杭と杭に挟まれた側を内側、連結部材の両端部側を外側と称する。鋼板は、まず、応力が大きくなる第二の杭の内側に配置する。第一の杭と第二の杭はつなぎ梁によって連結しているので、相互に水平力の分担を決めて、それに応じて鋼板を設置すればよく、第一の杭の外側にも追加配置してよい。さらに、第二の杭の外側、または、第一の杭の内側に鋼板を追加配置して正負方向の応力に抵抗するようにしてもよい。第一の杭の内側と外側に鋼板を設置しても、第一の杭の外側と第二の杭の外側に鋼板を設置しても、あるいは全ての杭の内側と外側に設置してもよい。杭本数が3本以上となる場合は、鋼板の設置条件、すなわち、配置枚数、鋼板の寸法は、両端部と同等以下としてよい。
ここでは、実施例1に示した複数の杭を、水平力が作用する方向と直交する方向に連結部材によって連結した実施の形態3の実施例について説明する。ここでは、連結する杭本数を5とするが、本数に制限は設けない。杭は、2500mm間隔に配置され、杭頭高さは全て基準となる地表面から1000mmの位置に統一している。つなぎ梁は、単一部材でも、例えば、2-□-60×60×1.6として、各杭の位置でこの2つの部材を相互に連結する連結材によって、平面視で梯子状に形成してもよい。鋼板は、水平力が作用する方向と直交方向に、その幅方向の中心を杭芯と略一致させて、それぞれ同一の位置関係となるように、杭壁に沿わせて地中に差し込む必要があり、少なくとも両端部の杭については、鋼板の設置面は、杭に最大の水平力が作用したときに杭頭が傾斜してくる方向、すなわち正方向を必須とするが、風荷重が作用する場合、両端部よりも中央部の応力条件が厳しくなるため、その他の杭については、鋼板の設置条件を、両端部と同等以上とする。具体的には、両端部が正方向のみに対して、その他の部分は両方向、あるいは鋼板長さを長くするなどの方法、両端部の正負方向に鋼板を設置した場合には、その他の部分の鋼板長さを長くするなどの方法がある。
1a 第1の杭
1b 第2の杭
1c 第3の杭
3 地表
5 板状体
7 先端翼
9 土壌かく乱部
11 連結部材
Claims (8)
- 杭の地表から所定の深さまでの範囲について、前記杭の外径よりも幅広の板状体を、前記杭の外周面に当接又は近接させた状態で前記杭の軸方向に沿わせて打設したことを特徴とする杭頭部の構造。
- 前記杭が回転貫入杭であって、前記板状体の幅を、前記杭の回転貫入施工によって乱された土壌の範囲としたことを特徴とする請求項1記載の杭頭部の構造。
- 前記杭が回転貫入杭であって、前記板状体の幅を、回転貫入杭の翼の外径D、杭径dとしたとき、D×(1-(2d/D)2)0.5としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の杭頭部の構造。
- 杭を2本以上一組として、前記杭の上部を連結部材で直線状に連結してなり、かつ前記連結部材の軸線方向に正負の水平荷重が作用する場合であって、
前記2本以上の杭から選ばれた2本の杭を第1の杭と第2の杭としたときに、第1の杭に対して板状体を、その幅方向が前記連結部材の軸線に直交するように配置すると共に、前記第1の杭及び/又は第2の杭における前記第1の杭に配置した板状体の位置と反対側に板状体を配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の杭頭部の構造。 - 杭を2本以上一組として、連結部材で直線状に連結してなり、かつ前記連結部材の軸線方向に直交する方向に正負の水平荷重が作用する場合であって、
各杭に対して板状体をその幅方向が前記連結部材の軸方向と平行になるように配置し、かつ前記連結部材の軸方向中心に対して対称位置にある杭に配置する板状体の設置状況が同じになるようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の杭頭部の構造。 - 両端に配置された杭に設置される板状体について、その数を他の杭に配置される板状体の数よりも少なくするか、または、その面積が他の杭に配置される板状体の面積よりも小さくなるようにしたことを特徴とする請求項5に記載の杭頭部の構造。
- 前記杭によって支持される構造物がパネル状の構造物であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の杭頭部の構造。
- 前記杭によって支持される構造物が太陽光発電パネルであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の杭頭部の構造。
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