JP2015113492A - 電子・電気機器用銅合金、電子・電気機器用銅合金塑性加工材、電子・電気機器用部品及び端子 - Google Patents
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Description
これらのCu−Mg系合金では、図1に示すCu−Mg系状態図から分かるように、Mgの含有量が3.3原子%以上の場合、溶体化処理と、析出処理を行うことで、CuとMgからなる金属間化合物を析出させることができる。すなわち、これらのCu−Mg系合金においては、析出硬化によって比較的高い導電率と強度を有することが可能となるのである。
特に、携帯電話やパソコン等の民生品に使用される電子・電気機器用部品においては、小型化及び軽量化が求められており、強度と曲げ加工性とを両立した電子・電気機器用銅合金が求められている。しかしながら、上述のCu−Mg系合金のような析出硬化型合金においては、析出硬化によって強度及び耐力を向上させると曲げ加工性が著しく低下してしまうことになる。このため、薄肉で複雑な形状の電子・電気機器用部品を成形することはできなかった。
このCu−Mg合金は、優れた強度、導電率、曲げ性のバランスに優れており、上述の電子・電気機器用部品の素材として、特に適している。
最近では、電子・電気機器のさらなる小型化及び軽量化にともない、これら小型化及び軽量化された電子・電気機器に用いられる電子・電気機器用部品を製造する際には、プレス成型(打ち抜き加工)時の高精度化が重要な課題となっている。また、操業上では、プレス金型の摩耗や打ち抜き屑の発生による生産性の低下も問題となっている。これらの観点から、従来にも増して、せん断加工性に優れた電子・電気機器用銅合金の開発が強く求められている。
この場合、銅中に存在するSが、Mg,Ca,Sr,Y,Te及び希土類元素と反応し、金属間化合物または硫化物として晶出物や析出物を形成する。これらの晶出物や析出物は、打ち抜き加工時に破壊の起点となり、せん断加工性を大幅に向上させることが可能となる。
σ≦1.7241/(−0.0347×X2+0.6569×X)+1.7)×100の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、図1の状態図に示すように、Mgを固溶限度以上のMgを1.3mass%以上2.8mass%以下(3.3原子%以上6.9原子%以下)の範囲で含有しており、かつ、導電率が上記の範囲内とされていることから、Mgが母相中に過飽和に固溶したCu−Mg過飽和固溶体となる。
さらに、Mgを過飽和に固溶させていることから、加工硬化によって強度を向上させることが可能となる。
なお、Mgの原子%については、Cu、Mg、Ca,Sr,Y,Te及び希土類元素のみからなると仮定して算出した。また、Ca,Sr,Y,Te,希土類元素といった元素は、銅中にほとんど固溶しないことから、導電率σの計算において、これらの元素を除いて算出した。
この場合、図1の状態図に示すように、Mgを固溶限度以上の1.3mass%以上2.8mass%以下(3.3原子%以上6.9原子%以下)の範囲で含有しており、かつ、走査型電子顕微鏡観察において、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が、1個/μm2以下とされていることから、CuとMgを主成分とする金属間化合物の析出が抑制されており、Mgが母相中に過飽和に固溶したCu−Mg過飽和固溶体となる。よって、上述のように、母相中には、割れの起点となる粗大なCuとMgを主成分とする金属間化合物が多く分散されておらず、曲げ加工性が向上することができる。さらに、Mgを過飽和に固溶させていることから、加工硬化によって強度を向上させることが可能となる。
また、CuとMgを主成分とする金属間化合物の粒径は、金属間化合物の長径(途中で粒界に接しない条件で粒内に最も長く引ける直線の長さ)と短径(長径と直角に交わる方向で、途中で粒界に接しない条件で最も長く引ける直線の長さ)の平均値とする。
これらの元素は、Cu−Mg合金の強度等の特性を向上させる作用効果を有することから、要求特性に応じて適宜添加することが好ましい。ここで、上述の元素の添加量の合計が0.01mass%未満では、上述した強度向上の作用効果を十分に得ることができない。一方、上述の元素の添加量の合計が2.00mass%を超えると導電率が大きく低下することになる。そこで、本発明では、上述の元素の添加量の合計を0.01mass%以上2.00mass%以下の範囲内に設定している。
この場合、0.2%耐力が400MPa以上であることから、容易に塑性変形せず、ばね性を確保することができるため、コネクタ等の端子、リレー、リードフレーム等の電子機器用部品に特に適している。
この構成の銅合金塑性加工材においては、上述のように、強度、曲げ加工性、せん断加工性に優れた電子・電気機器用銅合金からなることから、電子・電気機器用部品の素材として特に適している。
この場合、上述の組成の銅素材を400℃以上900℃以下の温度にまで加熱することにより、Mgの溶体化を行うことができる。また、加熱された前記銅素材を、60℃/min以上の冷却速度で200℃以下にまで冷却することにより、冷却の過程で金属間化合物が析出することを抑制でき、銅素材をCu−Mg過飽和固溶体とすることが可能となる。よって、母相中に粗大なCuとMgを主成分とする金属間化合物が多く分散されておらず、曲げ加工性が向上することになる。
この場合、端子・コネクタ等を成型した際に接点同士の接触抵抗が安定するとともに、耐食性を向上させることができる。
また、本発明の端子は、上述の電子・電気機器用銅合金塑性加工材からなることを特徴としている。
この構成の電子・電気機器用部品及び端子は、機械的特性に優れた電子・電気機器用銅合金塑性加工材を用いて製造されているので、複雑な形状であっても割れ等がなく、強度も十分に確保されているので、信頼性に優れている。
本実施形態である電子・電気機器用銅合金の成分組成は、Mgを1.3mass%以上2.8mass%以下(3.3原子%以上6.9原子%以下)の範囲で含み、さらに、Ca,Sr,Y,Te及び希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.001mass%以上0.020mass%以下の範囲内で含み、残部が実質的にCu及び不可避不純物とされている。また、本実施形態においては、Sの含有量が0.1massppm以上50.0massppm以下の範囲内とされている。
さらに、本実施形態である電子・電気機器用銅合金においては、0.2%耐力が400MPa以上とされている。
σ≦1.7241/(−0.0347×X2+0.6569×X+1.7)×100の範囲内とされている。
また、走査型電子顕微鏡観察において、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が、1個/μm2以下とされている。
すなわち、本実施形態である電子・電気機器用銅合金は、CuとMgを主成分とする金属間化合物がほとんど析出しておらず、Mgが母相中に固溶限度以上に固溶したCu−Mg過飽和固溶体とされているのである。
Mgは、導電率を大きく低下させることなく、強度を向上させるとともに再結晶温度を上昇させる作用効果を有する元素である。また、Mgを母相中に固溶させることにより、優れた曲げ加工性が得られる。
ここで、Mgの含有量が1.3mass%未満では、その作用効果を奏功せしめることはできない。一方、Mgの含有量が2.8mass%を超えると、溶体化のために熱処理を行った際に、CuとMgを主成分とする金属間化合物が残存してしまい、その後の熱間加工及び冷間加工時に割れが発生してしまうおそれがある。このような理由から、Mgの含有量を、1.3mass%以上2.8mass%以下(3.3原子%以上6.9原子%以下)に設定している。
Ca,Sr,Y,Te及び希土類元素といった元素は、その多くが銅中に晶出物として存在し、この晶出物が打ち抜き加工時に破壊の起点となることから、せん断加工性が大幅に向上する。また、Ca,Sr,Y,Te,希土類元素といった元素は、不可避不純物であるOやSと反応して酸化物や硫化物を生成することから、これらの酸化物や硫化物も打ち抜き加工時に破壊の起点となり、せん断加工性の向上に寄与することになる。また、O,Sを無害化し、特性への悪影響を抑制することができる。
ここで、Ca,Sr,Y,Te,希土類元素のうちの1種または2種以上の含有量が合計で0.001mass%未満だと、所望の効果が得られない。一方、Ca,Sr,Y,Te,希土類元素のうちの1種または2種以上の含有量が合計で0.020mass%を超える場合には、導電率の低下に加え、晶出物や析出物の存在割合が多くなり、熱間加工性及び冷間加工性が劣化するおそれがある。
したがって、Ca,Sr,Y,Te及び希土類元素のうちの1種または2種以上の含有量の合計を0.001mass%以上0.020mass%以下の範囲内とした。なお、Ca,Sr,Y,Te及び希土類元素のうちの1種または2種以上の含有量の合計は、上記の範囲内でも特に0.002mass%以上0.015mass%以下の範囲内が好ましい。
Sは、単体、金属間化合物及び複合硫化物などの形態で銅中に存在する。銅中に存在するSは、Mg,Ca,Sr,Y,Te及び希土類元素と反応し、金属間化合物又は硫化物として晶出物や析出物を形成する。これらの金属間化合物又は硫化物は、せん断加工時に破壊の起点となることから、せん断加工性が大幅に向上する。ここで、Sの含有量が0.1massppm未満では、生成する金属間化合物又は硫化物が少なくなり、せん断加工性のさらなる改善が認められないおそれがある。一方、Sの含有量が50.0massppmを超えると、冷間加工性が劣化するおそれがある。
したがって、本実施形態では、Sの含有量を、0.1massppm以上50.0massppm以下とした。なお、Sの含有量は、上記の範囲内でも特に1.0massppm以上40.0massppm以下が好ましく、2.0massppm以上40.0massppm以下がさらに好ましい。
上述の成分組成とされた本実施形態である電子・電気機器用銅合金において、導電率σが、Mgの含有量をX原子%としたときに、σ≦1.7241/(−0.0347×X2+0.6569×X+1.7)×100の範囲内である場合には、金属間化合物がほとんど存在しないことになる。
すなわち、導電率σが上記式を超える場合には、金属間化合物が多量に存在し、サイズも比較的大きいことから、曲げ加工性が大幅に劣化することになる。よって、導電率σが、上記式の範囲内となるように、製造条件を調整する。
なお、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、導電率σ(%IACS)を、
σ≦1.7241/(−0.0292×X2+0.6797×X+1.7)×100の範囲内とすることが好ましい。この場合、CuとMgを主成分とする金属間化合物がより少量であるために、曲げ加工性がさらに向上することになる。
本実施形態である電子・電気機器用銅合金においては、走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が、1個/μm2以下とされている。すなわち、CuとMgを主成分とする金属間化合物がほとんど析出しておらず、Mgが母相中に固溶しているのである。
ここで、溶体化が不完全であったり、溶体化後にCuとMgを主成分とする金属間化合物が析出することにより、サイズの大きい金属間化合物が多量に存在すると、これらの金属間化合物が割れの起点となり、曲げ加工性が大幅に劣化することになる。
さらに、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、粒径0.05μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の個数が合金中に1個/μm2以下であることが、より好ましい。
また、CuとMgを主成分とする金属間化合物の粒径は、金属間化合物の長径(途中で粒界に接しない条件で粒内に最も長く引ける直線の長さ)と短径(長径と直角に交わる方向で、途中で粒界に接しない条件で最も長く引ける直線の長さ)の平均値とする。
ここで、CuとMgを主成分とする金属間化合物は、化学式MgCu2、プロトタイプMgCu2、ピアソン記号cF24、空間群番号Fd−3mで表される結晶構造を有するものである。
まず、銅原料を溶解して得られた銅溶湯に、前述の元素を添加して成分調整を行い、銅合金溶湯を製出する。なお、Mgの添加には、Mg単体やCu−Mg母合金等を用いることができる。また、Mgを含む原料を銅原料とともに溶解してもよい。さらに、本合金のリサイクル材およびスクラップ材を用いてもよい。また、Ca,Sr,Y,Te及び希土類元素の中から選択される少なくとも1種または2種以上の元素の添加にも、元素単体や母合金等を用いることができる。
ここで、銅溶湯は、純度が99.99mass%以上とされたいわゆる4NCuとすることが好ましい。また、溶解工程では、Mgの酸化を抑制するために、真空炉、あるいは、不活性ガス雰囲気または還元性雰囲気とされた雰囲気炉を用いることが好ましい。
ここで、鋳造における凝固時の冷却速度は、上述のCa,Sr,Y,Te及び希土類元素によって形成される粒子を十分に晶出させるために、30℃/sec.未満とすることが好ましく、さらには、0.1℃/sec.以上25℃/sec.未満とすることが好ましい。
次に、得られた鋳塊の均質化および溶体化のために加熱処理を行う。鋳塊の内部には、凝固の過程においてMgが偏析で濃縮することにより発生したCuとMgを主成分とする金属間化合物等が存在することになる。そこで、これらの偏析および金属間化合物等を消失または低減させるために、鋳塊を400℃以上900℃以下にまで加熱する加熱処理を行うことで、鋳塊内において、Mgを均質に拡散させたり、Mgを母相中に固溶させたりするのである。なお、この加熱工程S02は、非酸化性または還元性雰囲気中で実施することが好ましい。
ここで、加熱温度が400℃未満では、溶体化が不完全となり、母相中にCuとMgを主成分とする金属間化合物が多く残存するおそれがある。一方、加熱温度が900℃を超えると、銅素材の一部が液相となり、組織や表面状態が不均一となるおそれがある。よって、加熱温度を400℃以上900℃以下の範囲に設定している。より好ましくは400℃以上850℃以下、更に好ましくは420℃以上800℃以下とする。
そして、加熱工程S02において400℃以上900℃以下にまで加熱された銅素材を、200℃以下の温度にまで、60℃/min以上の冷却速度で冷却する。この急冷工程S03により、母相中に固溶したMgが、CuとMgを主成分とする金属間化合物として析出することを抑制し、走査型電子顕微鏡観察において、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数を1個/μm2以下とすることができる。すなわち、銅素材をCu−Mg過飽和固溶体とすることができるのである。
なお、粗加工の効率化と組織の均一化のために、前述の加熱工程S02の後に熱間加工を実施し、この熱間加工の後に上述の急冷工程S03を実施する構成としてもよい。この場合、加工方法に特に限定はなく、例えば圧延、線引き、押出、溝圧延、鍛造、プレス等を採用することができる。また、熱間加工温度は、400℃以上900℃以下の範囲内とすることが好ましい。
加熱工程S02および急冷工程S03を経た銅素材を必要に応じて切断するとともに、加熱工程S02および急冷工程S03等で生成された酸化膜等を除去するために必要に応じて表面研削を行う。そして、所定の形状へと塑性加工を行う。
なお、この中間加工工程S04における温度条件は特に限定はないが、冷間または温間加工となる−200℃から200℃の範囲内とすることが好ましい。また、加工率は、最終形状に近似するように適宜選択されることになるが、50%以上とすることが好ましく、60%以上とすることがさらに好ましい。塑性加工方法は特に限定されないが、例えば圧延、線引き、押出、溝圧延、鍛造、プレス等を採用することができる。さらに、溶体化の徹底のために、S02〜S04を繰り返しても良い。
中間加工工程S04後に、溶体化の徹底、再結晶組織化または加工性向上のための軟化を目的として熱処理を実施する。
熱処理の方法は特に限定はないが、好ましくは400℃以上900℃以下の条件で、非酸化雰囲気または還元性雰囲気中で熱処理を行う。より好ましくは400℃以上850℃以下、さらに好ましくは420℃以上800℃以下とする。
ここで、中間熱処理工程S05においては、400℃以上900℃以下にまで加熱された銅素材を、200℃以下の温度にまで、60℃/min以上の冷却速度で冷却することが好ましい。
中間熱処理工程S05後の銅素材を所定の形状に仕上加工を行う。なお、この仕上加工工程S06における温度条件は特に限定はないが、溶体化されたMgが析出しないように、冷間または温間となる−200〜200℃とすることが好ましい。また、加工率は、最終形状に近似するように適宜選択されることになるが、20%以上が好ましく、30%以上がさらに好ましい。
次に、仕上加工工程S06後の銅素材に対して、ひずみ取りのための仕上熱処理を実施する。熱処理温度は、200℃以上800℃以下の範囲内とすることが好ましい。なお、この仕上熱処理工程S07においては、溶体化されたMgが析出しないように、熱処理条件(温度、時間、冷却速度)を設定する必要がある。例えば200℃では1分〜24時間程度、400℃では1秒〜10秒程度とすることが好ましい。この熱処理は、非酸化雰囲気または還元性雰囲気中で行うことが好ましい。
さらに、上述の仕上加工工程S06と仕上熱処理工程S07とを、繰り返し実施してもよい。
この場合のSnめっきの方法は特に限定されないが、常法に従って電解めっきを適用したり、また場合によっては電解めっき後にリフロー処理を施したりしてもよい。
また、本実施形態である電子・電気機器用部品及び端子は、上述の電子・電気機器用銅合金塑性加工材に対して、打ち抜き加工、曲げ加工等を施すことによって製造される。
σ≦1.7241/(−0.0347×X2+0.6569×X+1.7)×100の範囲内とされており、Mgが母相中に過飽和に固溶したCu−Mg過飽和固溶体とされている。
さらに、本実施形態である電子・電気機器用部品及び端子は、上述の電子・電気機器用銅合金塑性加工材を用いて製造されているので、耐力が高く、かつ、曲げ加工性、せん断加工性に優れており、複雑な形状であっても精度よく成形できるとともに割れ等がなく、信頼性が向上することになる。
例えば、上述の実施形態では、電子・電気機器用銅合金の製造方法及び電子・電気機器用銅合金塑性加工材の製造方法の一例について説明したが、製造方法は本実施形態に限定されることはなく、既存の製造方法を適宜選択して製造してもよい。
Sn、Zn、Al、Ni、Si、Mn、Li、Ti、Fe、Co、Cr、Zr、Pといった元素は、Cu−Mg合金の強度等の特性を向上させる元素であることから、要求特性に応じて適宜添加することが好ましい。ここで、添加量の合計を0.01mass%以上としているので、Cu−Mg合金の強度を確実に向上させることができる。一方、添加量の合計を2.00mass%以下としているので、導電率を確保することができる。
なお、上述の元素を含有する場合には、実施形態で説明した導電率の規定は適用されないが、析出物の分布状態からCu−Mgの過飽和固溶体であることを確認することができる。
純度99.99mass%以上の無酸素銅(ASTM B152 C10100)からなる銅原料を準備し、これを高純度グラファイト坩堝内に装入して、Arガス雰囲気とされた雰囲気炉内において高周波溶解した。得られた銅溶湯内に、各種添加元素を添加して表1に示す成分組成に調製し、カーボン鋳型に注湯して鋳塊を製出した。ここで、鋳塊の大きさは、厚さ約120mm×幅約220mm×長さ約300mmとした。なお、鋳造時における冷却速度は0.1℃/sec.以上20℃/sec.未満の範囲内とした。
また、表1に示す組成のat%(原子%)は、Cu、Mgおよびその他の添加元素のみからなると仮定し、測定されたmass%の値から原子%を算出した。
このブロックを、Arガス雰囲気中において、表2に記載の温度条件で4時間保持し、その後、水焼入れを実施した。
次いで、中間熱処理として、ソルトバスを用いて表2に記載された温度条件で熱処理を行い、水焼入れを実施した。
そして、仕上圧延後に、表2に示す条件で、Ar雰囲気中で仕上熱処理を実施し、その後、水焼入れを行い、特性評価用薄板を作成した。
加工性の評価として、前述の中間圧延及び仕上圧延時における耳割れの有無を観察した。目視で耳割れが全くあるいはほとんど認められなかったものを◎、長さ1mm未満の小さな耳割れが発生したものを○、長さ1mm以上3mm未満の耳割れが発生したものを△、長さ3mm以上の大きな耳割れが発生したものを×、耳割れに起因して圧延途中で破断したものを××とした。
なお、耳割れの長さとは、圧延材の幅方向端部から幅方向中央部に向かう耳割れの長さのことである。
各試料の圧延面に対して、鏡面研磨、イオンエッチングを行った。CuとMgを主成分とする金属間化合物の析出状態を確認するため、FE−SEM(電界放出型走査電子顕微鏡)を用い、1万倍の視野(約120μm2/視野)で観察を行った。
次に、CuとMgを主成分とする金属間化合物の密度(個/μm2)を調査するために、金属間化合物の析出状態が特異ではない1万倍の視野(約120μm2/視野)を選び、その領域で、5万倍で連続した10視野(約4.8μm2/視野)の撮影を行った。金属間化合物の粒径については、金属間化合物の長径(途中で粒界に接しない条件で粒内に最も長く引ける直線の長さ)と短径(長径と直角に交わる方向で、途中で粒界に接しない条件で最も長く引ける直線の長さ)の平均値とした。そして、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の密度(個/μm2)を求めた。
特性評価用薄板から金型で角孔(8mm×8mm)を多数打抜いて、図3に示される破断面割合(打ち抜きされた部分の板厚に対する破断面の割合)及びかえり高さの測定により評価を行った。打ち抜きの切口面においては、破断面とせん断面とが存在しており、せん断面の割合が少なく破断面の割合が多いほど、せん断加工性に優れることになる。
金型のクリアランスは0.02mmとし、50spm(stroke per minute)の打ち抜き速度により打ち抜きを行った。破断面割合、かえり高さの測定は穴抜き側の切口面を観察し、各測定箇所10点の平均を評価した。
なお、かえり高さが6μm以下のものを「○」と評価し、6μmを超えるものを「×」と評価した。
特性評価用条材からJIS Z 2241に規定される13B号試験片を採取し、JIS Z 2241のオフセット法により、0.2%耐力を測定した。なお、試験片は、圧延方向に垂直な方向で採取した。
特性評価用薄板から幅10mm×長さ150mmの試験片を採取し、4端子法によって電気抵抗を求めた。また、マイクロメータを用いて試験片の寸法測定を行い、試験片の体積を算出した。そして、測定した電気抵抗値と体積とから、導電率を算出した。なお、試験片は、その長手方向が特性評価用薄板の圧延方向に対して垂直になるように採取した。
Mgの含有量が本発明の範囲よりも多い比較例2においては、中間加工の冷間圧延時に大きな耳割れが発生し、その後の特性評価を実施することが不可能であった。
Mgの含有量が本発明の範囲内であるものの、Ca,Sr,Y,Te及び希土類元素といった元素を含有していない比較例3においては、破断面割合が35%であり、せん断加工性が不十分であった。
Mgの含有量が本発明の範囲内であるものの、Ca,Sr,Y,Te及び希土類元素といった元素の含有量が本発明の範囲よりも多い比較例4においては、中間加工の冷間圧延時に大きな耳割れが発生し、その後の特性評価を実施することが不可能であった。
また、さらに、Sn、Zn、Al、Ni、Si、Mn、Li、Ti、Fe、Co、Cr、Zr、Pのうち1種または2種以上を合計で0.01mass%以上2.00mass%以下の範囲内で含む本発明例9−15においても、本発明例1−8と同様に、耐力が高く、かつ、せん断加工性にも優れていた。また、耳割れの発生もなかった。
Claims (11)
- Mgを1.3mass%以上2.8mass%以下の範囲で含み、さらに、Ca,Sr,Y,Te及び希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.001mass%以上0.020mass%以下の範囲内で含み、残部が実質的にCu及び不可避不純物とされていることを特徴する電子・電気機器用銅合金。
- Sの含有量が0.1massppm以上50.0massppm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1に記載の電子・電気機器用銅合金。
- 導電率σ(%IACS)が、Mgの含有量をX原子%としたときに、
σ≦1.7241/(−0.0347×X2+0.6569×X+1.7)×100の範囲内とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子・電気機器用銅合金。 - 走査型電子顕微鏡観察において、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が、1個/μm2以下とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金。
- さらに、Sn、Zn、Al、Ni、Si、Mn、Li、Ti、Fe、Co、Cr、Zr、Pのうち1種または2種以上を合計で0.01mass%以上2.00mass%以下の範囲内で含んでいることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金。
- 0.2%耐力が400MPa以上とされていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金。
- 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金からなる銅素材を塑性加工することによって成形されたことを特徴とする電子・電気機器用銅合金塑性加工材。
- 前記銅素材を400℃以上900℃以下の温度にまで加熱する加熱工程と、加熱された前記銅素材を60℃/min以上の冷却速度で200℃以下にまで冷却する急冷工程と、前記銅素材を塑性加工する塑性加工工程と、を有する製造方法によって成形されたことを特徴とする請求項7に記載の電子・電気機器用銅合金塑性加工材。
- 表面にSnめっきが施されていることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の電子・電気機器用銅合金塑性加工材。
- 請求項7から請求項9のいずれか一項に記載された電子・電気機器用銅合金塑性加工材からなることを特徴とする電子・電気機器用部品。
- 請求項7から請求項9のいずれか一項に記載された電子・電気機器用銅合金塑性加工材からなることを特徴とする端子。
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