JP2015113372A - プリプレグ及びそれを用いた積層板、プリント配線板 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高いガラス転移温度と低熱膨張性、銅箔接着性、耐熱性に優れたプリプレグ及び、これを用いた積層板、プリント配線板を提供する。【解決手段】 末端にフェノール性水酸基を有するシロキサン樹脂(a1)と、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(a2)をエーテル化反応させることにより得られる、分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物(b)を、有機溶媒中でイミノカーボネ−ト化反応、及びトリアジン環化反応させ、(b)成分の反応率が30〜70モル%であるイミノカーボネート構造及びトリアジン構造を有する相容化樹脂(A)と、トリメトキシシラン化合物により表面処理された溶融シリカ(B)を含有する熱硬化性樹脂組成物を有機繊維基材に含浸、乾燥して得られるプリプレグ。【選択図】 なし
Description
本発明は、特に優れた低熱膨張性、銅箔接着性、耐熱性を示し、また、毒性が低く安全性や作業環境に優れる、電子部品等に好適な熱硬化性樹脂組成物が得られる相容化樹脂を用いた熱硬化性樹脂組成物と有機繊維基材からなるプリプレグ及び、そのプリプレグを用いた積層板、プリント配線板に関する。
熱硬化性樹脂組成物は、架橋構造を有し、高い耐熱性や寸法安定性を発現するため、電子部品等の分野において広く使われる。特に銅張積層板や層間絶縁材料においては、近年の高密度化や高信頼性への要求から、高い銅箔接着性や耐熱性、良好な低熱膨張性等の特性を有することが必要とされる。
また、近年の環境意識の高まりから、鉛フリーはんだによる電子部品の搭載やハロゲンフリー基板が要求されている。しかし、鉛フリーはんだは、従来のはんだよりも使用温度が高い。このため従来のものよりも高い耐熱性が必要とされる。
本発明者らは既に、フェノール水酸基を有するシロキサン樹脂とエポキシ基を有するエポキシ樹脂を反応させることにより得られる分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物、シアネート樹脂、及びトリメトキシシラン化合物により表面処理された溶融シリカから成る特許文献1に記載の熱硬化性樹脂とSガラスクロスを組み合わせ、250℃以上のガラス転移温度を有し、且つ、30℃以上、100℃以下の範囲における線熱膨張係数が4ppm/K以下のパッケージ基板を得ている。Sガラスクロス自体の線熱膨張係数は3−5ppm/Kであるため、ガラスクロス自身の熱膨張を樹脂が抑制することで、基板の線熱膨張係数値を4ppm/K以下にしている。しかし、近年は基板の熱膨張係数を限りなく小さくすることが求められており、一般的な無機物繊維であるSガラスクロスの使用では、上記の要求を満たすことは困難である。
また、近年の環境意識の高まりから、鉛フリーはんだによる電子部品の搭載やハロゲンフリー基板が要求されている。しかし、鉛フリーはんだは、従来のはんだよりも使用温度が高い。このため従来のものよりも高い耐熱性が必要とされる。
本発明者らは既に、フェノール水酸基を有するシロキサン樹脂とエポキシ基を有するエポキシ樹脂を反応させることにより得られる分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物、シアネート樹脂、及びトリメトキシシラン化合物により表面処理された溶融シリカから成る特許文献1に記載の熱硬化性樹脂とSガラスクロスを組み合わせ、250℃以上のガラス転移温度を有し、且つ、30℃以上、100℃以下の範囲における線熱膨張係数が4ppm/K以下のパッケージ基板を得ている。Sガラスクロス自体の線熱膨張係数は3−5ppm/Kであるため、ガラスクロス自身の熱膨張を樹脂が抑制することで、基板の線熱膨張係数値を4ppm/K以下にしている。しかし、近年は基板の熱膨張係数を限りなく小さくすることが求められており、一般的な無機物繊維であるSガラスクロスの使用では、上記の要求を満たすことは困難である。
そこで本発明は、用いる基材に着目し、負の熱膨張を示す有機繊維基材を用いることで、高いガラス転移温度と低熱膨張性、銅箔接着性、耐熱性に優れたプリプレグ及び、これを用いた積層板、プリント配線板を提供することを目的としている。
本発明は、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、末端にフェノール性水酸基を有するシロキサン樹脂と、エポキシ樹脂を反応させて得られた水酸基とエポキシ基を有する化合物(a)とシアネート化合物(b)を特定の反応率に反応させて得られる相容化樹脂(A)とトリメトキシシラン化合物により表面処理された溶融シリカ(B)を含有する樹脂組成物と有機繊維基材(C)を組み合わせることにより、上記のような特性を有する優れたプリプレグが得られること見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
即ち本発明は、以下の相容化樹脂を用いた熱硬化性樹脂組成物と有機繊維基材からなるプリプレグ及び、このプリプレグを用いた積層板、プリント配線板を提供するものである。
1. 下記一般式(I)で示される末端にフェノール性水酸基を有するシロキサン樹脂(a1)と、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(a2)をエーテル化反応させることにより得られる、分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物(b)を、有機溶媒中で反応させ、(b)成分の反応率が30〜70モル%であることを特徴とするイミノカーボネート構造及びトリアジン構造を有する相容化樹脂(A)及び、下記式(II)で示される化合物により表面処理された溶融シリカ(B)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物を有機繊維基材に含浸、乾燥して得られるプリプレグ。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
即ち本発明は、以下の相容化樹脂を用いた熱硬化性樹脂組成物と有機繊維基材からなるプリプレグ及び、このプリプレグを用いた積層板、プリント配線板を提供するものである。
1. 下記一般式(I)で示される末端にフェノール性水酸基を有するシロキサン樹脂(a1)と、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(a2)をエーテル化反応させることにより得られる、分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物(b)を、有機溶媒中で反応させ、(b)成分の反応率が30〜70モル%であることを特徴とするイミノカーボネート構造及びトリアジン構造を有する相容化樹脂(A)及び、下記式(II)で示される化合物により表面処理された溶融シリカ(B)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物を有機繊維基材に含浸、乾燥して得られるプリプレグ。
3.上記有機繊維基材が、シランカップリング剤、コロナ、プラズマのいずれか1以上で処理されてなる上記1または2に記載のプリプレグ。
4.上記1〜3のいずれかに記載のプリプレグを用いて積層形成された積層板。
5.上記4に記載の積層板の表面又は表面とその内部に導体パターンが形成されたプリント配線板。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を有機繊維基材に含浸、又は塗工して得たプリプレグ、及び該プリプレグを積層成形することにより製造した積層板は、低熱膨張性、銅箔接着性、耐熱性の全てに優れ、鉛フリーはんだを使用できる耐熱性を有しており環境問題や製品の安全性にも優れることから、電子機器用プリント配線板として極めて有用である。
以下、本発明について詳細に説明する。
先ず、本発明で用いる相容化樹脂(A)の製造方法は、下記一般式(I)で示される末端にフェノール性水酸基を有するシロキサン樹脂(a1)と、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(a2)をエーテル化反応させることにより得られる、分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物(b)を、好ましくは有機金属塩の存在下、有機溶媒中で反応させ、(b)成分の反応率を30〜70モル%とする方法である。
先ず、本発明で用いる相容化樹脂(A)の製造方法は、下記一般式(I)で示される末端にフェノール性水酸基を有するシロキサン樹脂(a1)と、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(a2)をエーテル化反応させることにより得られる、分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物(b)を、好ましくは有機金属塩の存在下、有機溶媒中で反応させ、(b)成分の反応率を30〜70モル%とする方法である。
相容化樹脂(A)の製造に用いられる分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物(a)は、一般式(I)で示される末端にフェノール性水酸基を有するシロキサン樹脂(a1)と、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(a2)をエーテル化反応させることにより得られるものである。
このエーテル化反応に用いられるシロキサン樹脂(a1)は、上記一般式(I)で示される構造の両末端にフェノール性水酸基を含有するシロキサン樹脂であれば特に限定されない。一般式(I)中のR1は、各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられる。
一般式(I)で示される末端にフェノール性水酸基を有するシロキサン樹脂(a1)として、例えば信越化学工業株式会社製の商品名X−22−1876(水酸基価:120KOHmg/g)、商品名X−22−1857(水酸基価:60KOHmg/g)、商品名X−22−1821(水酸基価:30KOHmg/g)、商品名X−22−1822(水酸基価:20KOHmg/g)、商品名X−26−1064(水酸基価:25KOHmg/g)、東レ・ダウコーニング株式会社製の商品名BY16-752A(水酸基価:30KOHmg/g)、商品名BY16-799(水酸基価:60KOHmg/g)等が挙げられる。これらの中で、耐熱性、低熱膨張性、及び溶剤溶解性に優れる点から、信越化学工業株式会社製、商品名X−22−1876(水酸基価:120KOHmg/g)、商品名X−22−1875(水酸基価:60KOHmg/g)、商品名X−22−1821(水酸基価:30KOHmg/g)、東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名BY16−752A(水酸基価:30KOHmg/g)、商品名BY16−799(水酸基価:60KOHmg/g)が特に好ましい。
このエーテル化反応に用いられるシロキサン樹脂(a1)は、上記一般式(I)で示される構造の両末端にフェノール性水酸基を含有するシロキサン樹脂であれば特に限定されない。一般式(I)中のR1は、各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられる。
一般式(I)で示される末端にフェノール性水酸基を有するシロキサン樹脂(a1)として、例えば信越化学工業株式会社製の商品名X−22−1876(水酸基価:120KOHmg/g)、商品名X−22−1857(水酸基価:60KOHmg/g)、商品名X−22−1821(水酸基価:30KOHmg/g)、商品名X−22−1822(水酸基価:20KOHmg/g)、商品名X−26−1064(水酸基価:25KOHmg/g)、東レ・ダウコーニング株式会社製の商品名BY16-752A(水酸基価:30KOHmg/g)、商品名BY16-799(水酸基価:60KOHmg/g)等が挙げられる。これらの中で、耐熱性、低熱膨張性、及び溶剤溶解性に優れる点から、信越化学工業株式会社製、商品名X−22−1876(水酸基価:120KOHmg/g)、商品名X−22−1875(水酸基価:60KOHmg/g)、商品名X−22−1821(水酸基価:30KOHmg/g)、東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名BY16−752A(水酸基価:30KOHmg/g)、商品名BY16−799(水酸基価:60KOHmg/g)が特に好ましい。
また、このエーテル化反応に用いられる1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(a2)としては、例えば、ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、ビフェニル系、ノボラック系、ジシクロペンタジエン系、多官能フェノール系、ナフタレン系、アラルキル変性系、脂環式系及びアルコール系等のグリシジルエーテル、グリシジルアミン系並びにグリシジルエステル系等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
これらの中で、高剛性、誘電特性、耐熱性、難燃性、耐湿性、低熱膨張性、及び室温で固形であるためプリプレグを製造した際にプリプレグのタック性がなく取り扱い易い点から、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ビフェニル基含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましい。
また、芳香族系有機溶剤への溶解性の点からナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂がより好ましい。
更に、多層材料をプレス成形する際の成形性の点から、下記式(III)に示すナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂、下記式(IV)に示すビフェニル型エポキシ樹脂、下記一般式(V)で表されるビフェニルアラルキルエポキシ樹脂が特に好ましい。
これらの中で、高剛性、誘電特性、耐熱性、難燃性、耐湿性、低熱膨張性、及び室温で固形であるためプリプレグを製造した際にプリプレグのタック性がなく取り扱い易い点から、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ビフェニル基含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましい。
また、芳香族系有機溶剤への溶解性の点からナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂がより好ましい。
更に、多層材料をプレス成形する際の成形性の点から、下記式(III)に示すナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂、下記式(IV)に示すビフェニル型エポキシ樹脂、下記一般式(V)で表されるビフェニルアラルキルエポキシ樹脂が特に好ましい。
上記の(a1)成分と(a2)成分をエーテル化反応させることにより、分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物(a)が得られる。ここで、上記一般式(I)で示される末端にフェノール性水酸基を有するシロキサン樹脂(a1)と、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(a2)の使用量は、(a2)のエポキシ基数((a2)の使用量/(a2)のエポキシ基当量)が、(a1)の水酸基数((a1)の使用量/(a1)の水酸基当量)を超えるように使用されることが望ましく、(a2)のエポキシ基数と(a1)の水酸基数との比率((a2)のエポキシ基数/(a1)の水酸基数)が1.5〜10.0の範囲であることがより望ましい。
このエーテル化反応において、(a1)の水酸数が(a2)のエポキシ基数以上であると、分子構造中にエポキシ基を有する所望の生成物が得られない。また、(a2)のエポキシ基数と(a1)の水酸基数との比率((a2)のエポキシ基数/(a1)の水酸基数)が1.5以上であると、合成中に不溶化を起こしたり、また、これをもとに得られる積層板の耐湿性が低下することがなく、また、この比率が10.0以下であると、合成中にゲル化を起こしたり、また、これをもとに得られる積層板の銅箔接着性が低下することがない。
このエーテル化反応において、(a1)の水酸数が(a2)のエポキシ基数以上であると、分子構造中にエポキシ基を有する所望の生成物が得られない。また、(a2)のエポキシ基数と(a1)の水酸基数との比率((a2)のエポキシ基数/(a1)の水酸基数)が1.5以上であると、合成中に不溶化を起こしたり、また、これをもとに得られる積層板の耐湿性が低下することがなく、また、この比率が10.0以下であると、合成中にゲル化を起こしたり、また、これをもとに得られる積層板の銅箔接着性が低下することがない。
このエーテル化反応には有機溶媒を使用してもよく、有機溶媒使用量は、(a1)成分と(a2)成分の合計量100質量部当たり、40〜1000質量部とすることが好ましい。有機溶媒の配合量を40質量部以上とすることにより、原料の溶解性が不足したり、増粘により合成不能になることがなく、また1000質量部以下では合成に長時間を要したり製造コストが高くなってしまうことがない。
この反応で使用される有機溶媒には、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤、炭化水素系溶剤、石油系溶剤、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤等が好ましい。これらの有機溶剤を1種又は2種以上を混合して使用できる。
なお、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤を使用した場合、得られる積層板の耐湿性が低下する場合があり好ましくない場合がある。
前記の有機溶媒の中で、溶解性や揮発性が高くプリプレグの製造時に残溶剤として残りにくい点から、また、得られる積層板の耐湿耐熱性、銅箔接着性、低誘電率性の点から、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤が特に好ましい。
なお、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤を使用した場合、得られる積層板の耐湿性が低下する場合があり好ましくない場合がある。
前記の有機溶媒の中で、溶解性や揮発性が高くプリプレグの製造時に残溶剤として残りにくい点から、また、得られる積層板の耐湿耐熱性、銅箔接着性、低誘電率性の点から、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤が特に好ましい。
このエーテル化反応には、必要により任意に反応触媒を使用することができ、特に限定されないが、反応触媒の例としては、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。得られる積層板の耐湿耐熱性、銅箔接着性の点から、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒が特に好ましい。
(a)成分の分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物は、上記の合成原料、有機溶媒、必要により反応触媒を合成釜に仕込み、必要により加熱・保温しながら0.1時間から10時間攪拌しエーテル反応させることによりが製造される。合成温度は25〜200℃が好ましく、合成温度を25℃以上とすることにより反応速度が大となり、また200℃以下とすることにより合成溶媒に高沸点の溶媒を不要となり、また、プリプレグを製造する際、残溶媒が残り耐熱性が低下することがない。また、合成反応の終点確認、及び分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物(a)の生成の確認は、少量の試料を取り出し中和滴定により酸価を測定することにより、合成原料である成分(a1)のシロキサン樹脂のフェノール性水酸基の減少を確認することにより判別できる。
この中和滴定による酸価の測定方法はJIS規格(K 0070 1992 化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法)による方法に準拠し、例えば、取り出した少量の試料に、指示薬としてフェノールフタレインを添加し、このものをエタノール性の水酸化カリウム溶液により滴定し、中和点を確認する方法等が望ましい。合成反応の終点の酸価は、反応初期の酸価の1/2以下になっていることが望ましい。終点での酸価が、反応初期の酸価の1/2より大きい値であると、生成される分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物(a)の生成量が不足し、相容性が不足する場合がある。
この中和滴定による酸価の測定方法はJIS規格(K 0070 1992 化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法)による方法に準拠し、例えば、取り出した少量の試料に、指示薬としてフェノールフタレインを添加し、このものをエタノール性の水酸化カリウム溶液により滴定し、中和点を確認する方法等が望ましい。合成反応の終点の酸価は、反応初期の酸価の1/2以下になっていることが望ましい。終点での酸価が、反応初期の酸価の1/2より大きい値であると、生成される分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物(a)の生成量が不足し、相容性が不足する場合がある。
1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(a2)の例を下記一般式(VI)に、また、これを原料として製造される分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物(a)の例を下記一般式(VII)及び(VIII)に示す。
相容化樹脂の製造に用いられる(b)成分の1分子中に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物としては、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、ビスフェノールF型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中で、誘電特性、耐熱性、難燃性、低熱膨張性、及び安価である点から、ビスフェノールA型シアネート樹脂、下記一般式(IX)に示すノボラック型シアネート樹脂が特に好ましい。
相容化樹脂の製造に用いられる有機金属塩は、反応触媒となるものであり、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸錫、オクチル酸コバルト等が挙げられる。アミン系やイミダゾール系の窒素原子含有反応触媒は得られる樹脂の硬化物が脆くなり、耐熱性や接着性が低下するので好ましくない。
相容化樹脂(A)の製造方法では、(a)成分と(b)成分の合計量100質量部あたりの(a)成分の使用量を10〜60質量部、(b)成分の使用量を40〜90質量部の範囲として、これらを予め溶媒中に均一に溶解し、80〜120℃の反応温度でイミノカーボネ−ト化反応、及びトリアジン環化反応させ、(b)成分のシアネート基を有する化合物の反応率(消失率)を30〜70モル%となるようにプレ反応を行うことが望ましい。
ここで、反応溶媒には、トルエン、キシレン、メシチレンから選ばれる芳香族系有機溶剤が特に好ましく、必要により少量の他の溶剤を用いてもよいが、他の溶剤では所望反応の進行が遅くなり、耐熱性等が低下するおそれがある。また、ベンゼンは毒性が強く、メシチレンよりも分子量の大きい芳香族系溶媒はプリプレグの製造塗工時に残溶剤となりやすいので好ましくない。プレ反応による反応率が30モル%未満であると、得られる樹脂が相容化されておらず、樹脂が分離、白濁しBステージの塗工布が製造できない。また、反応率が70モル%を超えると、得られる熱硬化性樹脂が溶剤に不溶化し、Aステージのワニス(熱硬化性樹脂組成物)が製造できなくなったり、プリプレグのゲルタイムが短くなり過ぎ、プレスの際に成形性が低下する場合がある。
なお、イミノカーボネ−ト化反応は、水酸基とシアネート基の付加反応によりイミノカーボネ−ト結合(−O−(C=NH)−O−)が生成される反応であり、トリアジン環化反応は、シアネート基が3量化しトリアジン環を形成する反応である。また、このシアネート基が3量化しトリアジン環を形成する反応により3次元網目構造化が進行するが、この時に1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(a2)が3次元網目構造中に均一に分散され、これによって(a)成分と(b)成分が均一に分散された相容化樹脂が製造される。
なお、イミノカーボネ−ト化反応は、水酸基とシアネート基の付加反応によりイミノカーボネ−ト結合(−O−(C=NH)−O−)が生成される反応であり、トリアジン環化反応は、シアネート基が3量化しトリアジン環を形成する反応である。また、このシアネート基が3量化しトリアジン環を形成する反応により3次元網目構造化が進行するが、この時に1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(a2)が3次元網目構造中に均一に分散され、これによって(a)成分と(b)成分が均一に分散された相容化樹脂が製造される。
この相容化樹脂の製造方法において、(a)成分と(b)成分の合計量100質量部あたり、(a)成分の使用量を10質量部以上とすることにより、得られる基材の面方向の低熱膨張性が低下することがなく、また、60質量部以下とすることにより、耐熱性や耐薬品性が低下することがない。(b)成分の使用量を40質量部以上とすることにより、得られる樹脂の相容性が低下することがなく、また、90質量部以下とすることにより、得られる基材の面方向の低熱膨張性が低下することがない。
反応触媒の使用量は、(a)成分と(b)成分の合計量100質量部に対して、0.0001〜0.004質量部が好ましい。0.0001質量部以上とすることにより、反応に長時間を要したり、所望の反応率に達しないことがない。また、0.004重量部以下とすることにより、反応速度が速すぎて終点管理が難しくなることがない。ここで、(b)成分のシアネート基を有する化合物の反応率は、GPC測定により反応開始時の(b)のシアネート基を有する化合物のピーク面積と、所定時間反応後のピーク面積を比較し、ピーク面積の消失率から求められる。
このようなプレ反応の反応温度は80〜120℃であり、好ましくは100〜110℃である。反応温度を80℃以上とすることにより製造時間(反応時間)が長くなりすぎることがなく、120℃以下とすることによりエポキシ樹脂の副反応が生じてゲル化することがない。
プレ反応の反応率は、シアネート基を有する化合物(b)の反応率(消失率)を30〜70モル%となるようし、好ましくは40〜68モル%となるようする。反応率が30モル%未満であると、得られる樹脂が相容化されておらず、樹脂が分離して白濁し、Bステージの塗工布が製造でない。また、反応率が70モル%を超えると、得られる熱硬化性樹脂が溶剤に不溶化し、Aステージのワニス(熱硬化性樹脂組成物)が製造できなくなったり、プリプレグのゲルタイムが短くなり過ぎ、プレスの際に成形性が低下する場合がある。
上記熱硬化性樹脂組成物は、以上の方法により製造された相容化樹脂(A)及び、下記式(II)で示される化合物であるトリメトキシシラン化合物により表面処理された溶融シリカ(B)を含有することを特徴とするものである。
(B)成分のトリメトキシシラン化合物により表面処理された溶融シリカは、溶融シリカを上記の式(II)で示されるトリメトキシシラン化合物を使用し、表面処理(湿式処理)することにより得られる。
(B)成分は、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤やエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系有機溶剤に、溶融シリカを添加して混合した後、上記の式(II)で示されるトリメトキシシラン化合物を添加して60〜120℃で、0.5〜5時間程度攪拌しながら表面処理(湿式処理)させることにより得られる。該溶融シリカは、株式会社アドマテックス等から商業的にも入手でき、例えば、株式会社アドマテックス製の商品名SC-2050KNKや、SC-2050HNK等がある。
(B)成分の溶融シリカの使用量は、固形分換算の(A)成分100質量部に対し、10〜300質量部とすることが好ましく、100〜250質量部とすることがより好ましく、150〜250質量部とすることが特に好ましい。10質量部以上であることにより、基材の剛性や、耐湿耐熱性、難燃性が不足することがなく、また、300質量部以下とすることにより、成形性や耐めっき液性等の耐薬品性が低下することがない。
上記熱硬化性樹脂組成物には、(B)成分以外の無機充填剤を使用しても良い。無機充填剤としては、例えば、破砕シリカ、マイカ、タルク、ガラス短繊維又は微粉末及び中空ガラス、炭酸カルシウム、石英粉末、金属水和物等が挙げられる。これらの中で、低熱膨張性や高弾性、耐熱性、難燃性の点から、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物が好ましい。さらに金属水和物の中でも、高い耐熱性と難燃性が両立する点から熱分解温度が300℃以上である金属水和物、例えばベーマイト型水酸化アルミニウム(AlOOH)、あるいはギブサイト型水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を熱処理によりその熱分解温度を300℃以上に調整した化合物、水酸化マグネシウム等がより好ましく、特に、安価であり、350℃以上の特に高い熱分解温度と、高い耐薬品性を有するベーマイト型水酸化アルミニウム(AlOOH)が好ましい。
無機充填剤の使用量は、固形分換算の(A)成分100質量部に対し、0〜200質量部とすることが好ましく、10〜150質量部とすることがより好ましく、50〜150質量部とすることが特に好ましい。10質量部以上であると難燃性が不足することがなく、200質量部以下であると耐めっき液性等の耐薬品性や成形性が低下することがない。
上記熱硬化性樹脂組成物には、耐熱性や難燃性、銅箔接着性等の向上化のため硬化促進剤を用いることが望ましく、硬化促進剤の例としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸錫、オクチル酸コバルト等の有機金属塩、イミダゾール類及びその誘導体、第三級アミン類及び第四級アンモニウム塩等が挙げられる。硬化促進剤を使用することにより、耐熱性や銅箔接着性等が不足することがない。
本発明のプリプレグは、上記熱硬化性樹脂組成物を、有機繊維基材に含浸又は塗工し、加熱等により半硬化(Bステージ化)して本発明のプリプレグを製造することができる。
本発明のプリプレグの有機繊維基材を構成する樹脂としては、アラミド樹脂、ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、超高分子ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のプリプレグの有機繊維基材を構成する樹脂としては、アラミド樹脂、ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、超高分子ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの有機繊維基材の形状としては、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット及びサーフェシングマット等の形状を有するが、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され、必要により、単独又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせることができる。
基材の厚さは、特に制限されず、例えば、約0.03〜0.5mmのものを使用することができ、シランカップリング剤、コロナ、プラズマのいずれか1以上で表面処理したものは、耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。
本発明のプリプレグは、該基材に対する熱硬化性樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で20〜90質量%となるように基材に含浸又は塗工した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて得ることができる。
本発明のプリプレグは、該基材に対する熱硬化性樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で20〜90質量%となるように基材に含浸又は塗工した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて得ることができる。
本発明の積層板は本発明のプリプレグを用いて形成されたものであり、前述のプリプレグを用いて、積層成形して、形成することができる。
即ち、本発明の積層板は、前述のプリプレグを、例えば1〜20枚重ね、その片面又は両面に銅及びアルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。金属箔は、電気絶縁材料用途で用いるものであれば特に制限されない。
また、成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力2〜100kg/cm2(0.2〜10MPa)、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形することができる。また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せ、積層成形して、多層板を製造することもできる。
即ち、本発明の積層板は、前述のプリプレグを、例えば1〜20枚重ね、その片面又は両面に銅及びアルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。金属箔は、電気絶縁材料用途で用いるものであれば特に制限されない。
また、成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力2〜100kg/cm2(0.2〜10MPa)、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形することができる。また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せ、積層成形して、多層板を製造することもできる。
本発明のプリント配線板は、前記積層板の表面に回路を形成して製造される。すなわち、本発明に係る積層板の金属箔層を通常のエッチング法によって配線加工したり、前述のプリプレグを介して配線加工した積層板を複数積層し、加熱プレス加工することによって一括して表面とその内部に導体パターンが形成されるように多層化する。その後、ドリル加工又はレーザ加工によるスルーホール又はブラインドビアホールの形成と、メッキ又は導電性ペーストによる層間配線の形成を経て多層プリント配線板を製造することができる。
下記の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味においても制限するものではない。
なお、以下の実施例および比較例において得られた銅張積層板を以下の方法により測定し、評価を行った。
(1)銅箔接着性(銅箔ピール強度)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより1cm幅の銅箔を形成して評価基板を作製し、引張り試験機を用いて銅箔の接着性(90°剥離、ヘッドスピード50mm/min、ピール強度)を測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、評価基板の面方向の熱膨張特性を観察することにより評価した。
(3)吸湿はんだ耐熱性
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5cm角の評価基板を作製し、株式会社平山製作所製プレッシャー・クッカー試験装置を用いて、121℃、2atm(0.2MPa)の条件で4時間までプレッシャー・クッカー処理を行った後、温度288℃のはんだ浴に、評価基板を20秒間浸漬した後、外観を観察することによりはんだ耐熱性を評価した。外観に変化が無いものを「良好」、ふくれが発生したものを「ふくれ」として評価した。
(4)線熱膨張係数
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、評価基板の面方向の30〜100℃の線熱膨張率を測定した。
なお、以下の実施例および比較例において得られた銅張積層板を以下の方法により測定し、評価を行った。
(1)銅箔接着性(銅箔ピール強度)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより1cm幅の銅箔を形成して評価基板を作製し、引張り試験機を用いて銅箔の接着性(90°剥離、ヘッドスピード50mm/min、ピール強度)を測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、評価基板の面方向の熱膨張特性を観察することにより評価した。
(3)吸湿はんだ耐熱性
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5cm角の評価基板を作製し、株式会社平山製作所製プレッシャー・クッカー試験装置を用いて、121℃、2atm(0.2MPa)の条件で4時間までプレッシャー・クッカー処理を行った後、温度288℃のはんだ浴に、評価基板を20秒間浸漬した後、外観を観察することによりはんだ耐熱性を評価した。外観に変化が無いものを「良好」、ふくれが発生したものを「ふくれ」として評価した。
(4)線熱膨張係数
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、評価基板の面方向の30〜100℃の線熱膨張率を測定した。
製造例1:相容化樹脂(A−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(a2)として下記式(X)に示すビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製;商品名YX-4000、エポキシ当量;186):317.4g、一般式(I)で示される末端にフェノール性水酸基を有するシロキサン樹脂(a1)として下記式(XI)に示すシロキサン樹脂(信越化学工業株式会社製;商品名X−22−1821、水酸基当量;1,600):682.6g、トルエン:1000.0g、及びトリフェニルホスフィン:3.17gを投入した(反応の当量比はエポキシ基/水酸基=4.0である)。
次いで、攪拌しながら還流温度(約115℃)に昇温し、還流温度で反応を行い、1時間おきにサンプリングを行い中和滴定により酸価を測定した。5時間反応後に酸価が0KOHmg/gになったことを確認し、室温(25℃)に冷却して、下記式(XII)に示す構造の分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物(K−1)の溶液を得た。
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(a2)として下記式(X)に示すビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製;商品名YX-4000、エポキシ当量;186):317.4g、一般式(I)で示される末端にフェノール性水酸基を有するシロキサン樹脂(a1)として下記式(XI)に示すシロキサン樹脂(信越化学工業株式会社製;商品名X−22−1821、水酸基当量;1,600):682.6g、トルエン:1000.0g、及びトリフェニルホスフィン:3.17gを投入した(反応の当量比はエポキシ基/水酸基=4.0である)。
次いで、攪拌しながら還流温度(約115℃)に昇温し、還流温度で反応を行い、1時間おきにサンプリングを行い中和滴定により酸価を測定した。5時間反応後に酸価が0KOHmg/gになったことを確認し、室温(25℃)に冷却して、下記式(XII)に示す構造の分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物(K−1)の溶液を得た。
次いで、温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物(a)として上記の化合物(K−1)の溶液:800.0g(固形分:400.0g)と、1分子中に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物(b)としてビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製;商品名Primaset BADCy):600.0gと、トルエン:600.0gを投入した。次いで、攪拌しながら還流温度(約115℃)に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.06g添加し、約110℃で4時間反応を行った。その後、室温に冷却し相容化樹脂(A−1)の溶液を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.4分付近に出現する合成原料のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率〔すなわち(b)成分の反応率〕が61モル%であった。また、約10.9分付近、及び8.0〜10.0分付近に出現する熱硬化性樹脂の生成物のピークが確認された。さらに、少量取り出した反応溶液を、メタノールとベンゼンの混合溶媒(混合質量比1:1)に滴下して再沈殿させることにより、精製された固形分を取り出し、FT−IR測定を行ったところ、イミノカーボネート基に起因する1700cm−1付近のピーク、また、トリアジン環に起因する1560cm−1付近、及び1380cm−1付近の強いピークが確認でき、相容化樹脂(A−1)が製造されていることを確認した。
製造例2:トリメトキシシラン化合物により表面処理(湿式処理)された溶融シリカ(B−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、溶融シリカ(株式会社アドマテックス製;商品名SO−25R):700.0gと、プロピレングリコールモノメチルエーテル:1000.0gを配合し、攪拌しながら式(II)で示される化合物(C)であるN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製;商品名KBM−573):7.0gを添加した。次いで80℃に昇温し、80℃で1時間溶融シリカの表面処理(湿式処理)を行った後、室温に冷却し、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランにより表面処理(湿式処理)された溶融シリカ(B−1)の溶液を得た。
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、溶融シリカ(株式会社アドマテックス製;商品名SO−25R):700.0gと、プロピレングリコールモノメチルエーテル:1000.0gを配合し、攪拌しながら式(II)で示される化合物(C)であるN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製;商品名KBM−573):7.0gを添加した。次いで80℃に昇温し、80℃で1時間溶融シリカの表面処理(湿式処理)を行った後、室温に冷却し、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランにより表面処理(湿式処理)された溶融シリカ(B−1)の溶液を得た。
比較製造例1:(樹脂(A−2):(b)成分の反応率19%)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製;商品名Primaset BADCy):600.0gと、前記の式(XI)に示すシロキサン樹脂(信越化学工業株式会社製;商品名X−22−1821、水酸基当量;1600):200.0gと、前記の式(X)に示すビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製;商品名YX−4000、エポキシ当量;186):200.0gと、トルエン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら還流温度(約115℃)に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約110℃で1時間反応を行った。その後、室温に冷却し、樹脂(A−2)の溶液を得た。
この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.4分付近に出現する合成原料のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率〔(b)成分の反応率〕が19モル%であった。
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製;商品名Primaset BADCy):600.0gと、前記の式(XI)に示すシロキサン樹脂(信越化学工業株式会社製;商品名X−22−1821、水酸基当量;1600):200.0gと、前記の式(X)に示すビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製;商品名YX−4000、エポキシ当量;186):200.0gと、トルエン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら還流温度(約115℃)に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約110℃で1時間反応を行った。その後、室温に冷却し、樹脂(A−2)の溶液を得た。
この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.4分付近に出現する合成原料のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率〔(b)成分の反応率〕が19モル%であった。
比較製造例2:(樹脂(A−3):(b)成分の反応率77%)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製;商品名Primaset BADCy):600.0g、前記の式(XI)に示すシロキサン樹脂(信越化学工業株式会社製;商品名X−22−1821、水酸基当量;1,600):200.0g、前記の式(X)に示すビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製;商品名YX−4000、エポキシ当量;186):200.0g及びトルエン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら還流温度(約115℃)に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、還流温度で6時間反応を行った。その後、室温に冷却し、樹脂(A−3)の溶液を得た。
この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.4分付近に出現する合成原料のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率〔(b)成分の反応率〕が77モル%であった。
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製;商品名Primaset BADCy):600.0g、前記の式(XI)に示すシロキサン樹脂(信越化学工業株式会社製;商品名X−22−1821、水酸基当量;1,600):200.0g、前記の式(X)に示すビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製;商品名YX−4000、エポキシ当量;186):200.0g及びトルエン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら還流温度(約115℃)に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、還流温度で6時間反応を行った。その後、室温に冷却し、樹脂(A−3)の溶液を得た。
この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.4分付近に出現する合成原料のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率〔(b)成分の反応率〕が77モル%であった。
実施例1〜3、比較例1〜4
製造例1により得られた(A)成分の相容化樹脂、又は比較製造例1及び2で得られた樹脂、製造例2により得られた(B)成分、硬化促進剤、また希釈溶剤としてメチルエチルケトンを使用して、表1及び表2に示した配合割合(質量部)で混合して樹脂分60質量%の均一な熱硬化性樹脂組成物ワニスを得た。
次に、得られた熱硬化性樹脂組成物ワニスを各種基材に含浸塗工し、160℃で10分加熱乾燥して樹脂含有量60質量%のプリプレグを得た。
このプリプレグを4枚重ね、18μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力25kg/cm2(2.5MPa)、温度185℃で90分間プレスを行って、銅張積層板を得た。
このようにして得られた銅張積層板を用いて、銅箔接着性(銅箔ピール強度)、ガラス転移温度、吸湿はんだ耐熱性、線膨張係数について前記の方法で測定・評価した。評価結果を表1及び表2に示した。
製造例1により得られた(A)成分の相容化樹脂、又は比較製造例1及び2で得られた樹脂、製造例2により得られた(B)成分、硬化促進剤、また希釈溶剤としてメチルエチルケトンを使用して、表1及び表2に示した配合割合(質量部)で混合して樹脂分60質量%の均一な熱硬化性樹脂組成物ワニスを得た。
次に、得られた熱硬化性樹脂組成物ワニスを各種基材に含浸塗工し、160℃で10分加熱乾燥して樹脂含有量60質量%のプリプレグを得た。
このプリプレグを4枚重ね、18μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力25kg/cm2(2.5MPa)、温度185℃で90分間プレスを行って、銅張積層板を得た。
このようにして得られた銅張積層板を用いて、銅箔接着性(銅箔ピール強度)、ガラス転移温度、吸湿はんだ耐熱性、線膨張係数について前記の方法で測定・評価した。評価結果を表1及び表2に示した。
表中の数字は、固形分の質量部により示されている。注書きは、それぞれ
*1:旭化成イーマテリアルズ株式会社製;アラミド繊維クロス(60μm)(製品名:テクノーラ)
*2:旭化成イーマテリアルズ株式会社製;芳香族ポリエステル繊維クロス(70μm)(製品名:ゼクシオン)
*3:旭化成イーマテリアルズ株式会社製;ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維クロス(65μm)(製品名:ザイロン)
*4:破砕シリカ(株式会社アドマテックス製;商品名SO−G1)
*5:日東紡績株式会社製;#2118スタイルSガラスクロス(95μm)(GAT−2118)
*1:旭化成イーマテリアルズ株式会社製;アラミド繊維クロス(60μm)(製品名:テクノーラ)
*2:旭化成イーマテリアルズ株式会社製;芳香族ポリエステル繊維クロス(70μm)(製品名:ゼクシオン)
*3:旭化成イーマテリアルズ株式会社製;ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維クロス(65μm)(製品名:ザイロン)
*4:破砕シリカ(株式会社アドマテックス製;商品名SO−G1)
*5:日東紡績株式会社製;#2118スタイルSガラスクロス(95μm)(GAT−2118)
表1、2から明らかなように、1分子中に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物(b)の反応率を30〜70モル%とし、有機繊維基材を用いたプリプレグから製造される実施例の積層板は、高いガラス転移温度と低熱膨張性、銅箔接着性、はんだ耐熱性に優れる。(b)の反応率を19モル%とした比較例2では、ガラス転移温度、熱膨張係数、銅箔接着性、はんだ耐熱性のいずれも劣り、(b)の反応率を77モル%とした比較例3は、成形性不良により、積層板を作製できなかった。
有機繊維基材を使用した本発明の実施例で得られたプリプレグは、30〜100℃における線熱膨張係数が2.5ppm/Kを下回り、比較例1の従来のSガラスクロスを用いたプリプレグと比較しても、優れた低熱膨張性を発現することがわかる。そして、溶融シリカ(B)を用いず破砕シリカを用いた比較例4では、ガラス転移温度が低く、はんだ耐熱性でふくれが発生してしまった。また、ガラス転移温度は有機繊維基材を使用することで、値が低くなってしまう傾向があるが、いずれも250℃以上の高いガラス転移温度を発現することがわかる。また、併せて優れた銅箔ピール強度とはんだ耐熱性を有していることがわかる。
有機繊維基材を使用した本発明の実施例で得られたプリプレグは、30〜100℃における線熱膨張係数が2.5ppm/Kを下回り、比較例1の従来のSガラスクロスを用いたプリプレグと比較しても、優れた低熱膨張性を発現することがわかる。そして、溶融シリカ(B)を用いず破砕シリカを用いた比較例4では、ガラス転移温度が低く、はんだ耐熱性でふくれが発生してしまった。また、ガラス転移温度は有機繊維基材を使用することで、値が低くなってしまう傾向があるが、いずれも250℃以上の高いガラス転移温度を発現することがわかる。また、併せて優れた銅箔ピール強度とはんだ耐熱性を有していることがわかる。
Claims (5)
- 下記一般式(I)で示される末端にフェノール性水酸基を有するシロキサン樹脂(a1)と、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(a2)をエーテル化反応させることにより得られる、分子構造中に水酸基とエポキシ基を有する化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物(b)を、有機溶媒中で反応させ、(b)成分の反応率が30〜70モル%であるイミノカーボネート構造及びトリアジン構造を有する相容化樹脂(A)及び、下記式(II)で示される化合物により表面処理された溶融シリカ(B)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物を有機繊維基材に含浸、乾燥して得られるプリプレグ。
- 請求項1に記載の有機繊維基材を構成する樹脂が、アラミド樹脂、ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、超高分子ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂であるプリプレグ。
- 前記有機繊維基材が、シランカップリング剤、コロナ、プラズマのいずれか1以上で処理されてなる請求項1または請求項2に記載のプリプレグ。
- 前記請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグを用いて積層形成した積層板。
- 請求項4に記載の積層板の表面又は表面とその内部に導体パターンが形成されたプリント配線板。
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