JP2015113361A - 光学層形成用組成物および光学フィルム - Google Patents

光学層形成用組成物および光学フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】酸素等による半導体ナノ粒子の劣化を長期に亘って抑制できる耐久性を有し、透明性および発光効率に優れる光学層を形成することができる光学層形成用組成物を提供する。
【解決手段】分散媒と、半導体ナノ粒子と、バインダー樹脂と、を含み、前記分散媒の溶解度パラメータと前記バインダー樹脂の溶解度パラメータとの差の絶対値が、5〜10(cal/cm1/2である、光学層形成用組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、光学層形成用組成物および光学フィルムに関する。
近年、半導体ナノ粒子(量子ドット)は、そのサイズ可変な(size−tunable)電子特性から商業的関心が持たれている。半導体ナノ粒子は、例えば、生体標識、太陽光発電、触媒作用、生体撮像、発光ダイオード(Light Emitting Diode;LED)、一般的な空間照明、および電子発光ディスプレイ等、非常に多岐の分野での利用が期待されている。
例えば、半導体ナノ粒子を利用した光学デバイスでは、LED光を半導体ナノ粒子に照射して発光させることで、液晶表示装置(Liquid Crystal Display;LCD)に入射する光の光量を増大させ、当該LCDの輝度を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、半導体ナノ粒子は酸素に接触すると劣化することが知られており、半導体ナノ粒子が酸素に接触することを防止する手段が種々採用されている。そのような手段としては、例えば、半導体ナノ粒子をバリア性フィルムや封止材で封止する方法が挙げられるが、酸素遮断性能は確保できるものの、N雰囲気下で封止作業を行う必要がある等、製造設備が高価、高度なものになり、汎用性に劣る。
これに対し、半導体ナノ粒子自体をシリカやガラスで被覆することによって、半導体ナノ粒子が酸素に接触することを防止する方法が提案されている(例えば、特許文献2および3参照)。
特開2011−202148号公報 国際公開第2007/034877号 特表2013−505347号公報
上記特許文献2および3に記載の技術によれば、酸素遮断性能を得ることはできる。しかしながら、半導体ナノ粒子のシリカ凝集体が形成されて粒径が大きくなり、樹脂中における分散性が低下して透明性が低下したり、外部環境の影響により酸素遮断性能が低下して輝度が低下したりする等、透明性や耐久性の点で不十分であるという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、酸素等による半導体ナノ粒子の劣化を長期に亘って抑制できる耐久性を有し、透明性および発光効率に優れる光学層を形成することができる、光学層形成用組成物を提供することにある。
本発明者は鋭意研究を行った。その結果、分散媒と、半導体ナノ粒子と、バインダー樹脂と、を含み、かつ前記分散媒の溶解度パラメータと前記バインダー樹脂の溶解度パラメータとの差の絶対値が特定の範囲である光学層形成用組成物により、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の上記課題は、以下の手段により達成される。
1.分散媒と、半導体ナノ粒子と、バインダー樹脂と、を含み、前記分散媒の溶解度パラメータと前記バインダー樹脂の溶解度パラメータとの差の絶対値が、5〜10(cal/cm1/2である、光学層形成用組成物。
2.前記半導体ナノ粒子と前記分散媒との質量比は、1:50〜1:1000である、上記1.に記載の光学層形成用組成物。
3.さらに酸化防止剤を含む、上記1.または2.に記載の光学層形成用組成物。
4.基材上に、上記1.から3.のいずれか1つに記載の光学層形成用組成物を用いて形成された光学層を有する光学フィルム。
5.前記光学層上にさらにガスバリア層を有する、上記4.に記載の光学フィルム。
本発明によれば、酸素等による半導体ナノ粒子の劣化を長期に亘って抑制できる耐久性を有し、透明性および発光効率に優れる光学層を形成することができる、光学層形成用組成物が提供される。
本発明は、分散媒と、半導体ナノ粒子と、バインダー樹脂と、を含み、前記分散媒の溶解度パラメータと前記バインダー樹脂の溶解度パラメータとの差の絶対値が、5〜10(cal/cm1/2である、光学層形成用組成物である。このような構成とすることにより、酸素等による半導体ナノ粒子の劣化を長期に亘って抑制できる耐久性を有し、透明性および発光効率に優れる光学層を形成することができる、光学層形成用組成物となる。
半導体ナノ粒子は酸素に接触すると劣化することが知られており、半導体ナノ粒子が酸素に接触することを防止する手段が種々採用されている。そのような手段としては、例えば、半導体ナノ粒子をバリア性フィルムや封止材で封止する方法が挙げられるが、酸素遮断性能は確保できるものの、N雰囲気下で封止作業を行う必要がある等、製造設備が高価、高度なものになり、汎用性に劣る。
このような問題に対し、上記特許文献2および3では、半導体ナノ粒子自体をシリカやガラスで被覆することによって、半導体ナノ粒子が酸素に接触することを防止する方法が提案されている。しかしながら、これらの技術では、半導体ナノ粒子のシリカ凝集体が形成されて粒径が大きくなり、樹脂中における分散性が低下して透明性が低下したり、外部環境の影響により酸素遮断性能が低下して輝度が低下したりする等、透明性や耐久性の点で不十分であるという問題があった。
これに対し、本発明の光学層形成用組成物は、分散媒と、半導体ナノ粒子と、バインダー樹脂と、を含む。このような成分を有する本発明の光学層形成用組成物は、酸素等による半導体ナノ粒子の劣化を長期に亘って抑制することができ、透明性に優れた光学層を形成することができる。
また、本発明の組成物は、分散媒の溶解度パラメータとバインダー樹脂の溶解度パラメータとの差の絶対値が、5〜10(cal/cm1/2である。この範囲であれば、半導体ナノ粒子が光学層中で適度な粒子間距離を維持することができ、量子サイズ効果を十分に発揮させることができ、その結果、発光効率に優れた光学層を形成することができる。
さらに、上記の光学層形成用組成物から形成される光学層を有する本発明の光学フィルムは、酸素等による半導体ナノ粒子の劣化を長期に亘って抑制できる耐久性を有し、透明性および発光効率に優れる。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには限定されない。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」および「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
[分散媒]
本発明の光学層形成用組成物に含まれる分散媒は、半導体ナノ粒子を酸素から保護する役割を担う。
本発明で用いられる分散媒としては、常温で液状の化合物は言うまでもなく、常温では固体であるが、加熱により容易にオイル状に変化し得るような、130℃以下の融点または軟化点を有する化合物も好適に用いることができる。具体例としては、フタル酸エステル類、トリメリット酸エステル類、アジピン酸エステル類、飽和または不飽和カルボン酸エステル類、クエン酸エステル類、エポキシ化大豆やエポキシステアリン酸等のエポキシ類、正リン酸エステル類(例えば、トリクレジルホスフェート)、亜燐酸エステル類、グリコールエステル類、テトラデカン等の脂肪族炭化水素類、アルキルナフタレン等の芳香族炭化水素類等の他に「11290の化学商品」化学工業日報社、843〜857頁等に記載の化合物等も好適に用いることができる。
また、分散媒として、常温で固体であり、加熱時に可逆的に液体となる化合物も用いることができる。その具体例としては、テルピネオール、メントール等のアルコール類、アセトアミド、ベンズアミド等のアミド類、クマリン、桂皮酸ベンジル等のエステル類、ジフェニルエーテル、(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル(例えば、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル)、クラウンエーテル(例えば、15−クラウン−5−エーテル)等のエーテル類、カンファー、p−メチルアセトフェノン等のケトン類、バニリン、ジメトキシベンズアルデヒド等のアルデヒド類、p−ベンジルビフェニル、スチルベン等の炭化水素類、マルガリン酸等の高級脂肪酸、エイコサノール等の高級アルコール、パルミチン酸セチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ベヘニルアミン等の高級アミン等に代表される単分子化合物;蜜ロウ,キャンデリンワックス,パラフィンワックス、流動パラフィン、エステルワックス、モンタンロウ、カルナバワックス、アミドワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス等のワックス類、エステルガム、ロジンマレイン酸樹脂、ロジンフェノール樹脂等のロジン誘導体、フェノール樹脂、ケトン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、テルペン系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカプロラクトン樹脂等に代表される高分子化合物等を挙げることができる。これら分散媒は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
本発明の組成物は、上記分散媒の溶解度パラメータ(SP値)とバインダー樹脂の溶解度パラメータとの差の絶対値が、5〜10(cal/cm1/2の範囲であることを特徴とする。ここで、溶解度パラメータとは、ヒルデブラント(Hildebrand)によって導入された正則溶液論により定義された値であり、溶剤や有機化合物の溶解性や相溶性の指標として用いられる。該溶解度パラメータは、化学物質の構造や物理特性から公知の方法で求めることができる。
分散媒の溶解度パラメータとバインダー樹脂の溶解度パラメータとの差の絶対値が5(cal/cm1/2未満であると、分散媒とバインダー樹脂とが混ざり合い、量子ドットが酸素による影響を受け性能が劣化してしまう。一方、差の絶対値が10(cal/cm1/2を超えると、バインダー中で均一分散ができなくなり均一な発光ができなくなる。該溶解度パラメータの差の絶対値は、好ましくは5.0〜9.0(cal/cm1/2であり、より好ましくは5.1〜7.5(cal/cm1/2である。
本発明においては、分散媒の溶解度パラメータとバインダー樹脂の溶解度パラメータとの差の絶対値が上記範囲となるように、分散媒とバインダー樹脂とを適宜選択すればよい。しかしながら、分散媒としては、量子ドットの耐久性の観点から、溶解度パラメータが7.5〜18.0(cal/cm1/2のものを選択することが好ましい。このような好ましい分散媒としては、以下のものが挙げられる。なお、カッコ内は溶解度パラメータ(単位:(cal/cm1/2)の値である。
パラフィンワックス(8.19)、流動パラフィン(16.4)。
なお、分散媒を2種以上用いる場合の溶解度パラメータは、加成性が成立すると仮定し、各々の分散媒の溶解度パラメータと重量比率とから計算した加重平均値を分散媒の溶解度パラメータとする。
本発明の組成物中の分散媒の含有量は、組成物の全質量に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
[半導体ナノ粒子]
本発明の光学層形成用組成物は、半導体ナノ粒子を含む。
本発明に係る半導体ナノ粒子とは、半導体材料の結晶で構成され、量子閉じ込め効果を有する所定の大きさの粒子をいい、その粒子径が数nm〜数十nm程度の微粒子であり、下記に示す量子ドット効果が得られるものをいう。
本発明に係る半導体ナノ粒子の粒子径としては、具体的には1〜20nmの範囲内であることが好ましく、1〜10nmの範囲内であることがより好ましい。
このような半導体ナノ粒子のエネルギー準位Eは、一般に、プランク定数を「h」と、電子の有効質量を「m」と、半導体ナノ粒子の半径を「R」としたとき、下式(1)で表される。
式(1)で示されるように、半導体ナノ粒子のバンドギャップは、「R−2」に比例して大きくなり、いわゆる、量子ドット効果が得られる。このように、半導体ナノ粒子の粒子径を制御、規定することによって、半導体ナノ粒子のバンドギャップ値を制御することができる。すなわち、微粒子の粒子径を制御、規定することにより、通常の原子にはない多様性を持たせることができる。そのため、光によって励起させたり、光を所望の波長の光に変換して出射させたりすることができる。本発明では、このような発光性の半導体ナノ粒子材料を半導体ナノ粒子と定義する。
半導体ナノ粒子の平均粒子径は、上述したように、数nm〜数十nm程度であるが、目的とする発光色に対応する平均粒子径に設定する。例えば、赤色発光を得たい場合には、半導体ナノ粒子の平均粒子径としては、3.0〜20nmの範囲内に設定することが好ましく、緑色発光を得たい場合には、半導体ナノ粒子の平均粒子径を1.5〜10nmの範囲内に設定することが好ましく、青色発光を得たい場合には、半導体ナノ粒子の平均粒子径を1.0〜3.0nmの範囲内に設定することが好ましい。この半導体ナノ粒子の平均粒子径は、公知の方法により制御することができる。
平均粒子径の測定方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により半導体ナノ粒子の粒子観察を行い、そこから粒子径分布の数平均粒子径として求める方法や、電子間力顕微鏡(AFM)を用いて平均粒子径を求める方法、動的光散乱法による粒径測定装置、例えば、Malvern社製、「ZETASIZERNano Series Nano−ZS」を用いて測定することができる。その他にも、X線小角散乱法により得られたスペクトルから半導体ナノ粒子の粒子径分布シミュレーション計算を用いて粒子径分布を導出する方法などが挙げられるが、本発明においては、電子間力顕微鏡(AFM)を用いて平均粒子径を求める方法が好ましい。
また、本発明に係る半導体ナノ粒子においては、アスペクト比(長軸径/短軸径)の値が、1.0〜2.0の範囲であることが好ましく、1.1〜1.7の範囲であることがより好ましい。本発明に係る半導体ナノ粒子に係るアスペクト比(長軸径/短軸径)についても、例えば、電子間力顕微鏡(AFM)を用いて、長軸径および短軸径を測定して求めることができる。なお、測定する個体数としては、300個以上であることが好ましい。
(1)半導体ナノ粒子の構成材料
半導体ナノ粒子の構成材料としては、例えば、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ等の長周期型周期表第14族元素の単体;リン(黒リン)等の長周期型周期表第15族元素の単体、セレン、テルル等の長周期型周期表第16族元素の単体;炭化ケイ素(SiC)等の複数の長周期型周期表第14族元素からなる化合物;酸化スズ(IV)(SnO)、硫化スズ(II、IV)(Sn(II)Sn(IV)S)、硫化スズ(IV)(SnS)、硫化スズ(II)(SnS)、セレン化スズ(II)(SnSe)、テルル化スズ(II)(SnTe)、硫化鉛(II)(PbS)、セレン化鉛(II)(PbSe)、テルル化鉛(II)(PbTe)等の長周期型周期表第14族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;窒化ホウ素(BN)、リン化ホウ素(BP)、ヒ化ホウ素(BAs)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)等の長周期型周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体);硫化アルミニウム(Al)、セレン化アルミニウム(AlSe)、硫化ガリウム(Ga)、セレン化ガリウム(GaSe)、テルル化ガリウム(GaTe)、酸化インジウム(In)、硫化インジウム(In)、セレン化インジウム(InSe)、テルル化インジウム(InTe)等の長周期型周期表第13族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;塩化タリウム(I)(TlCl)、臭化タリウム(I)(TlBr)、ヨウ化タリウム(I)(TlI)等の長周期型周期表第13族元素と長周期型周期表第17族元素との化合物;酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)等の長周期型周期表第12族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体)、硫化ヒ素(III)(As)、セレン化ヒ素(III)(AsSe)、テルル化ヒ素(III)(AsTe)、硫化アンチモン(III)(Sb)、セレン化アンチモン(III)(SbSe)、テルル化アンチモン(III)(SbTe)、硫化ビスマス(III)(Bi)、セレン化ビスマス(III)(BiSe)、テルル化ビスマス(III)(BiTe)等の長周期型周期表第15族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化銅(I)(CuO)、セレン化銅(I)(CuSe)等の長周期型周期表第11族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)等の長周期型周期表第11族元素と長周期型周期表第17族元素との化合物;酸化ニッケル(II)(NiO)等の長周期型周期表第10族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化コバルト(II)(CoO)、硫化コバルト(II)(CoS)等の長周期型周期表第9族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物、四酸化三鉄(Fe)、硫化鉄(II)(FeS)等の長周期型周期表第8族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化マンガン(II)(MnO)等の長周期型周期表第7族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;硫化モリブデン(IV)(MoS)、酸化タングステン(IV)(WO)等の長周期型周期表第6族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化バナジウム(II)(VO)、酸化バナジウム(IV)(VO)、酸化タンタル(V)(Ta)等の長周期型周期表第5族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化チタン(TiO、Ti、Ti、Ti等)等の長周期型周期表第4族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)等の長周期型周期表第2族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr)、セレン化カドミウム(II)クロム(III)(CdCrSe)、硫化銅(II)クロム(III)(CuCr)、セレン化水銀(II)クロム(III)(HgCrSe)等のカルコゲンスピネル類、バリウムチタネート(BaTiO)等が挙げられる。
これらの中でも、SnS、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe等の長周期型周期表第14族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等のIII−V族化合物半導体、Ga、Ga、GaSe、GaTe、In、In、InSe、InTe等の長周期型周期表第13族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe等のII−VI族化合物半導体、As、As、AsSe、AsTe、Sb、Sb、SbSe、SbTe、Bi、Bi、BiSe、BiTe等の長周期型周期表第15族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;MgS、MgSe等の長周期型周期表第2族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物が好ましく、中でも、Si、Ge、GaN、GaP、InN、InP、Ga、Ga、In、In、ZnO、ZnS、ZnSe、CdO、CdS、CdSeがより好ましい。これらの物質は、毒性の高い陰性元素を含まないので耐環境汚染性や生物への安全性に優れており、また、可視光領域で純粋なスペクトルを安定して得ることができるので、発光デバイスの形成に有利である。これらの材料のうち、InP、CdSe、ZnSe、CdSは、発光の安定性の点で好ましい。発光効率、高屈折率、安全性、経済性の観点から、ZnO、ZnSの半導体ナノ粒子が好ましい。また、上記の材料は、1種で用いるものであってもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、上述した半導体ナノ粒子には、必要に応じて微量の各種元素を不純物としてドープすることができる。このようなドープ物質を添加することにより発光特性を大きく向上させることができる。
本発明でいう発光波長(バンドギャップ)とは、無機物である半導体ナノ粒子の場合は、価電子帯と伝導帯のエネルギー差を半導体ナノ粒子におけるバンドギャップ(eV)であり、発光波長(nm)=1240/バンドギャップ(eV)で表される。半導体ナノ粒子のバンドギャップ(eV)は、Taucプロットを用いて測定することができる。
バンドギャップ(eV)の光科学的測定手法の一つであるTaucプロットについて説明する。Taucプロットを用いたバンドギャップ(E0)の測定原理を以下に示す。
半導体材料の長波長側の光学吸収端近傍の比較的吸収の大きい領域において、光吸収係数αと光エネルギーhν(ただし、hはプランク常数、νは振動数)、およびバンドキャップエネルギーE0の間には次式(A)、が成り立つと考えられている。
したがって、吸収スペクトルを測定し、そこから(αhν)の0.5乗に対してhνをプロット(いわゆる、Taucプロット)し、直線区間を外挿したα=0におけるhνの値が求めようとする半導体ナノ粒子のバンドギャップエネルギーE0となる。
なお、半導体ナノ粒子の場合は、吸収と発光のスペクトルの差異(ストークスシフト)が小さく、また波形もシャープであるため、簡便には発光スペクトルの極大波長をバンドギャップの指標として用いることもできる。
また、他の方法として、これら有機および無機機能材料のエネルギー準位を見積もる方法としては、走査型トンネル分光法、紫外線光電子分光法、X線光電子分光法、オージェ電子分光法により求められるエネルギー準位から求める方法および光学的にバンドギャップを見積もる方法が挙げられる。
半導体ナノ粒子の表面は、無機物の被覆層または有機配位子で構成された被膜で被覆されたものであるのが好ましい。すなわち、半導体ナノ粒子の表面は、半導体ナノ粒子材料で構成されたコア領域と、無機物の被覆層または有機配位子で構成されたシェル領域とを有するコア・シェル構造であることが好ましい。
このコア・シェル構造は、少なくとも2種類の化合物で形成されていることが好ましく、2種類以上の化合物でグラジエント構造(傾斜構造)を形成していてもよい。これにより、塗布液中における半導体ナノ粒子の凝集を効果的に防止することができ、半導体ナノ粒子の分散性を向上させることができるとともに、輝度効率が向上し、本発明の光学層を用いたデバイス等を連続駆動させた場合に、色ズレの発生を抑制することができる。また、被覆層の存在により、安定的に発光特性が得られる。
また、半導体ナノ粒子の表面が被膜(シェル部)で被覆されていると、後述するような表面修飾剤を半導体ナノ粒子の表面付近に確実に担持させることができる。
被膜(シェル部)の厚さは、特に限定されないが、0.1〜10nmであることが好ましく、0.1〜5nmであることがより好ましい。
一般に、半導体ナノ粒子の平均粒子径により発光色を制御することができ、被膜の厚さが上記範囲内の値であれば、被膜の厚さが原子数個分に相当する厚さから半導体ナノ粒子1個に満たない厚さであり、半導体ナノ粒子を高密度で充填することができ、十分な発光量が得られる。また、被膜の存在により、お互いのコア粒子の粒子表面に存在する欠陥、ダングリングボンドへの電子トラップによる非発光の電子エネルギーの転移を抑制でき、量子効率の低下を抑えることができる。
(2)機能性の表面修飾剤
本発明の光学層形成用組成物においては、半導体ナノ粒子の表面近傍に、表面修飾剤が付着していることが好ましい。これにより、光学層形成用組成物中における半導体ナノ粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、半導体ナノ粒子の製造時において、半導体ナノ粒子表面に表面修飾剤を付着させることにより、形成される半導体ナノ粒子の形状が真球度の高いものとなり、また、半導体ナノ粒子の粒子径分布を狭く抑えられるため、特に優れたものとすることができる。
本発明で適用可能な機能性の表面修飾剤としては、半導体ナノ粒子の表面に直接付着したものであってもよいし、シェルを介して付着したもの(表面修飾剤が直接付着するのはシェルで、半導体ナノ粒子のコア部には接触していないもの)であってもよい。
表面修飾剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類;ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;トリ(n−ヘキシル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン、トリ(n−デシル)アミン等の第3級アミン類;トリプロピルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド等の有機リン化合物;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;ピリジン、ルチジン、コリジン、キノリン類の含窒素芳香族化合物等の有機窒素化合物;ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等のアミノアルカン類;ジブチルスルフィド等のジアルキルスルフィド類;ジメチルスルホキシドやジブチルスルホキシド等のジアルキルスルホキシド類;チオフェン等の含硫黄芳香族化合物等の有機硫黄化合物;パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;アルコール類;ソルビタン脂肪酸エステル類;脂肪酸変性ポリエステル類;3級アミン変性ポリウレタン類;ポリエチレンイミン類等が挙げられる。半導体ナノ粒子が後述するような方法で調製されるものである場合、表面修飾剤としては、高温液相において半導体ナノ粒子の微粒子に配位して、安定化する物質であるのが好ましく、具体的には、トリアルキルホスフィン類、有機リン化合物、アミノアルカン類、第3級アミン類、有機窒素化合物、ジアルキルスルフィド類、ジアルキルスルホキシド類、有機硫黄化合物、高級脂肪酸、アルコール類が好ましい。このような表面修飾剤を用いることにより、塗布液中における半導体ナノ粒子の分散性を特に優れたものとすることができる。また、半導体ナノ粒子の製造時において形成される半導体ナノ粒子の形状をより真球度の高いものとし、半導体ナノ粒子の粒度分布をよりシャープなものとすることができる。
上述したように、本発明において、半導体ナノ粒子のサイズ(平均粒子径)としては、1〜20nmであることが好ましい。本発明において、半導体ナノ粒子のサイズとは、半導体ナノ粒子材料で構成されたコア領域と、不活性な無機物の被覆層または有機配位子で構成されたシェル領域および表面修飾剤で構成されるトータルのサイズを表す。表面修飾剤やシェルが含まれない場合は、それを含まないサイズを表す。
(3)半導体ナノ粒子の製造方法
半導体ナノ粒子の製造方法としては、従来行われている公知の任意の方法を用いることができる。また、Aldrich社、CrystalPlex社、NNLab社等から市販品として購入することもできる。
例えば、高真空下のプロセスとしては、分子ビームエピタキシー法、CVD法等;液相製造方法としては、原料水溶液を、例えば、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等のアルカン類、またはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の非極性有機溶媒中の逆ミセルとして存在させ、この逆ミセル相中にて結晶成長させる逆ミセル法、熱分解性原料を高温の液相有機媒体に注入して結晶成長させるホットソープ法、さらに、ホットソープ法と同様に、酸塩基反応を駆動力として比較的低い温度で結晶成長を伴う溶液反応法等が挙げられる。これらの製造方法から任意の方法を使用することができるが、中でも、液相製造方法が好ましい。
なお、液相製造方法において、半導体ナノ粒子の合成に際して、表面に存在する有機表面修飾剤を初期表面修飾剤という。例えば、ホットソープ法における初期表面修飾剤の例としては、トリアルキルホスフィン類、トリアルキルシリルホスフィン類、トリアルキルホスフィンオキシド類、アルキルアミン類、ジアルキルスルホキシド類、アルカンホスホン酸等が挙げられる。これらの初期表面修飾剤は、交換反応により上述の機能性表面修飾剤に交換することが好ましい。
具体的には、例えば、前述したホットソープ法により得られるトリオクチルホスフィンオキシド等の初期表面修飾剤は、機能性表面修飾剤を含有する液相中で行う交換反応により、上述の機能性表面修飾剤と交換することが可能である。
本発明の組成物中の半導体ナノ粒子の含有量は、特に制限されないが、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜2質量%であることがより好ましい。この範囲であれば、発光効率を良好にすることができる。
また、本発明の組成物中の半導体ナノ粒子と分散媒との質量比は、1:50〜1:1000であることが好ましく、1:55〜1:75であることがより好ましい。この範囲であれば、量子ドット間での発光阻害を防止することができる。
[バインダー樹脂]
本発明の光学層形成用組成物は、バインダー樹脂を含む。バインダー樹脂の例としては、光学層の形成が容易となる紫外線硬化性樹脂が挙げられる。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート樹脂が好ましい。
紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物にさらに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシ基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号公報に記載のものを用いることができる。例えば、ユニディック(登録商標)17−806(DIC株式会社製)100質量部とコロネート(登録商標)L(日本ポリウレタン株式会社製)1質量部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
これら紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾインおよびその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等およびこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。上記光重合開始剤も光増感剤として使用できる。また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光重合開始剤または光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
紫外線硬化樹脂の単量体としては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上有するモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。市販品としては、アデカオプトマー(登録商標)KR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、ADEKA株式会社製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学株式会社製);セイカビーム(登録商標)PHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業株式会社製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー株式会社製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、DIC株式会社製);オーレックスNo.340クリヤ(以上、中国塗料株式会社製);サンラッド(登録商標)H−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業株式会社製);SP−1509、SP−1507(以上、昭和高分子株式会社製);RCC−15C(以上、グレース・ジャパン株式会社製)、アロニックス(登録商標)M−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成株式会社製)、NKハードB−420、NKエステルA−DOG、NKエステルA−IBD−2E(以上、新中村化学工業株式会社製)等を適宜選択して利用できる。
さらに具体的な化合物の例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジオキサングリコールアクリレート、エトキシ化アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
また、バインダー樹脂として、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂や、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂も用いられる。
バインダー樹脂は、半導体発光素子から放出される光(例えば、緑色光または赤色光等)、または光源から放出される可視光を吸収しないことが好ましい。発せられる可視光に対して十分な透明性と耐久性とを有していることが好ましい。
また、ポリシラザンもバインダー樹脂として好適に用いることができる。ポリシラザンとしては、特に制限されないが、例えば、下記の一般式(I)で表される単位からなる主骨格を有する化合物であることが好ましい。
上記一般式(I)において、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、またはアルコキシ基を表す。
ポリシラザンは、R、R、およびRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(以下、「PHPS」とも称する)であることがより好ましい。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6員環および8員環を中心とする環構造とが存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、分子量によって液体または固体の物質でありうる。当該パーヒドロポリシラザンは、市販品を使用してもよく、市販品としては、NN120−10、NN120−20、NAX120−20、NN110、NAX120、NAX110、NL120A、NL110A、NL150A、NP110、NP140(以上、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)等が挙げられる。
また、ポリシラザンの別の例としては、上記一般式(I)で表されるポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(例えば、特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(例えば、特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(例えば、特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(例えば、特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
これらバインダー樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。また、これらの樹脂の共重合体であってもよい。
バインダー樹脂は、半導体発光素子から放出される光(例えば、緑色光または赤色光等)、または光源から放出される可視光を吸収しないことが好ましい。発せられる可視光に対して、十分な透明性と耐久性とを有していることが好ましい。
バインダー樹脂としては、分散媒との混合性の観点から、溶解度パラメータが好ましくは8〜15(cal/cm1/2、より好ましくは9〜12(cal/cm1/2のものを選択する。このような好ましいバインダー樹脂としては、以下のものが挙げられる。なお、カッコ内は溶解度パラメータ(単位:(cal/cm1/2)の値である。
PMMA(10.9)、ポリエチレン(7.8)、ポリスチレン(9)、フェノール樹脂(11.3)。
なお、バインダー樹脂を2種以上用いる場合の溶解度パラメータは、加成性が成立すると仮定し、各々のバインダー樹脂の溶解度パラメータと重量比率とから計算した加重平均値をバインダー樹脂の溶解度パラメータとする。
また、本発明の組成物中のバインダー樹脂と分散媒との質量比は、90:10〜25:75であることが好ましく、80:20〜40:60であることがより好ましい。この範囲であれば、発光効率を良好にすることができる。
[他の成分]
本発明の光学層形成用組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、有機溶媒、酸化防止剤、界面活性剤等、他の成分をさらに含んでもよい。以下、好ましい他の成分である有機溶媒、酸化防止剤について説明する。
〔有機溶媒〕
本発明の光学層形成用組成物には有機溶媒が含まれていてもよい。当該組成物に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒からも適宜選択し、またはこれらを混合し利用できる。
〔酸化防止剤〕
本発明の組成物は、酸化防止剤を含むことができる。酸化防止剤を添加することにより、半導体ナノ粒子の劣化をより抑制することができる。本発明で用いられる酸化防止剤としては公知の種々の化合物を使用でき、例えば、L−アスコルビン酸およびそのエステル、D−アスコルビン酸およびそのエステル、α−トコフェロール、セザモール等が挙げられる。また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤も使用することができ、具体例としては、2−メチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,6−ジメチル−4−オクチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−オクチルフェノール、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシシンナマイド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネートジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン等が挙げられる。
これら酸化防止剤は、単独でもまたは2種以上混合して用いることもできる。
酸化防止剤の添加量は、組成物の全質量に対して、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。
[光学層形成用組成物の製造方法]
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されないが、半導体ナノ粒子を分散媒中に分散させた分散物を得た後、バインダー樹脂や必要に応じて他の成分を加え、攪拌混合する方法が好ましい。
半導体ナノ粒子を分散媒に分散させる方法としては、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ペブルミル、コボルミル、トロンミル、サンドミル、サンドグラインダー、Sqegvariアトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ディスパー、高速ミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機、オープンニーダー、連続ニーダー等の従来から用いられている分散機を適時選択して用いることができる。
なお、分散する際に、分散粒径等組成物塗工液の安定性を確保するために、界面活性剤等の分散剤を添加することができる。
[光学フィルム]
本発明の光学層形成用組成物は、光学層を備えた光学フィルムの製造に好適に用いられる。すなわち、本発明は、基材上に光学層形成用組成物を用いて形成された光学層を有する光学フィルムをも提供する。
本発明の光学フィルムは、基材および光学層を有し、必要に応じてガスバリア層、アンカーコート層、平滑層、クリアハードコート層等を有してもよい。下記では、これらの層について説明する。
〔基材〕
本発明の光学フィルムに用いることができる基材としては、ガラス、プラスチック等、特に限定はないが、透光性を有するものが用いられる。透光性を有する基材として好ましく用いられる材料は、例えば、ガラス、石英、樹脂フィルム等を挙げることができる。特に好ましくは、光学フィルムにフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
基材の厚さとしては、特に制限されるものではなく、いずれの厚さであってもよいが、5〜500μmであることが好ましく、25〜250μmであることがより好ましい。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン(登録商標)、ポリメチルメタクリレート、アクリルまたはポリアリレート類等の樹脂を含むフィルムや、アートン(登録商標、JSR株式会社製)またはアペル(登録商標、三井化学株式会社製)といったシクロオレフィン樹脂フィルムが挙げられる。
基材の上面および/または下面には、下記で説明するアンカーコート層、平滑層、クリアハードコート層等、他の層が適宜形成されていてもよい。
〔光学層〕
光学層は、本発明の光学層形成用組成物を基材上に塗布および乾燥した後、必要に応じて紫外線照射処理を行うことにより形成される。
光学層形成用組成物の塗布方法は、特に制限されず、例えば、エアーナイフコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ローラーコート法、ディップコート法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、スピンコート法、インクジェット法等が挙げられる。また、乾燥方法も特に制限されず、例えば、ホットプレート、オーブン、ファーネス等を使用した乾燥方法が採用される。
乾燥温度は、適用する支持体の熱による変形等がなければ特に限定されず、例えば50〜200℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。乾燥時間は、乾燥温度との兼ね合いもあるが、短時間に設定することが好ましく、例えば30秒〜15分であることが好ましく、1分〜5分であることがより好ましい。
乾燥の雰囲気は、大気雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、真空雰囲気下、酸素濃度をコントロールした減圧雰囲気下等のいずれの条件下であってもよく、その際の酸素濃度は、特に限定されないが、半導体ナノ粒子の酸素による劣化防止の観点から、1〜2000体積ppmであることが好ましく、1〜1000体積ppmであることがより好ましい。
光学層の紫外線照射処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、紫外線の照射量は、好ましくは5〜500mJ/cm、より好ましくは5〜150mJ/cmである。また、紫外線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、さらに好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これにより、さらに平面性に優れたフィルムを得ることができる。
バインダー樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合には、光学層として最適な硬度を呈するような温度および時間で熱硬化処理を行ってもよい。同様にバインダー樹脂としてポリシラザンを用いた場合には、光学層として最適な硬度を呈するような条件でポリシラザンの改質処理(例えば後述の真空紫外線照射処理)を行ってもよい。
光学層の厚さは、20〜800μmであることが好ましく、30〜500μmであることが好ましい。光学層が2層以上ある場合は、光学層の合計の厚さを指す。
また、本発明の光学フィルムは、光学層が2層設けられることが好ましく、当該2層の光学層には、それぞれ互いに異なる発光波長を有する半導体ナノ粒子が含有されていることが好ましい。これにより、光学フィルムの耐久性および透明性をさらに向上させることができる。
〔ガスバリア層〕
本発明の光学フィルムは、ガスバリア層を有することが好ましい。ガスバリア層の位置は特に制限されないが、光学層の上部であることが好ましい。ガスバリア層を有することにより、光学層に含まれる半導体ナノ粒子の劣化をより防止することができ、光学フィルムの耐久性および透明性がより向上する。
ガスバリア層としては、例えば、JIS K 7129:1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m・24h・atm)以下のガスバリア層であることが好ましい。さらには、JIS K 7126:1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3ml/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度が、1×10−5g/(m・24h・atm)以下の高ガスバリア性を有するガスバリア層であることがより好ましい。
本発明で用いられるガスバリア層の材料としては、特に制限されず、様々な無機バリア材料を使用することができる。無機バリア材料の例としては、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、銅(Cu)、セリウム(Ce)およびタンタル(Ta)からなる群より選択される少なくとも1種の金属の単体、上記金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物または酸化炭化物などの金属化合物が挙げられる。
前記金属化合物のさらに具体的な例としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオビウム、アルミニウムシリケート(SiAlO)、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ケイ素、酸素含有炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、酸窒化アルミニウム、酸窒化ケイ素、酸窒化ホウ素、酸化ホウ化ジルコニウム、酸化ホウ化チタン、およびこれらの複合体などの金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸窒化物、金属酸化ホウ化物、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、ならびにこれらの組み合わせなどの無機バリア材料が挙げられる。酸化インジウムスズ(ITO)、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミニウムシリケート(SiAlO)、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素およびこれらの組み合わせは、特に好ましい無機バリア材料である。ITOは、それぞれの元素成分を適切に選択することによって導電性になり得るセラミック材料の特殊部材の一例である。
また、本発明に係るガスバリア層は、有機ポリマーを含む有機層を含んでいてもよい。すなわち、前記ガスバリア層は、上記無機バリア材料を含む無機層と有機層との積層体であってもよい。
本発明の光学フィルムにおいて、ガスバリア層は、単層でもまたは2層以上の同様なガスバリア層または異なるガスバリア層を積層して有していてもよい。また、本発明に係るガスバリア層が2層以上積層している場合には、同じ形成方法によって形成されるガスバリア層であってもよく、異なる形成方法によって形成されるガスバリア層であってもよい。
本発明に係るガスバリア層の膜厚は、10〜500nmであることが好ましく、20〜300nmであることがより好ましい。この範囲であれば、膜厚を均一にでき、また高いガスバリア性が得られることから好ましい。
本発明に係るガスバリア層の形成方法は、特に限定されないが、物理気相成長法(PVD法)、スパッタ法、化学気相成長法(CVD法)、または原子層堆積法(ALD法)などの気相成膜法、または無機化合物を含む塗布液、好ましくはポリシラザンを含む塗布液を塗布して形成される塗膜を改質処理して形成する方法(以下、単に「塗布法」とも称する)が好ましく用いられる。
《気相成膜法》
物理気相成長法(Physical Vapor Deposition、PVD法)は、気相中で物質の表面に物理的手法により、目的とする物質、例えば、炭素膜などの薄膜を堆積する方法であり、例えば、スパッタ法(DCスパッタ法、RFスパッタ法、イオンビームスパッタ法、およびマグネトロンスパッタ法など)、真空蒸着法、イオンプレーティング法などが挙げられる。
スパッタ法は、真空チャンバ内にターゲットを設置し、高電圧をかけてイオン化した希ガス(通常はアルゴン)を、例えば酸化ケイ素(SiO)などのターゲットに衝突させて、ターゲット表面の原子をはじき出し、支持体に付着させる方法である。このとき、チャンバ内に窒素ガスや酸素ガスを流すことにより、アルゴンガスによってターゲットからはじき出された元素と、窒素や酸素とを反応させて無機層を形成する、反応性スパッタ法を用いてもよい。
化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition、CVD法)は、支持体上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、支持体表面または気相での化学反応により膜を堆積する方法である。また、化学反応を活性化する目的で、プラズマなどを発生させる方法などがあり、熱CVD法、触媒化学気相成長法、光CVD法、真空プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法など公知のCVD方式などが挙げられる。特に限定されるものではないが、成膜速度や処理面積の観点から、真空プラズマCVD法または大気圧プラズマCVD法などのプラズマCVD法を適用することが好ましい。
原子層堆積法(Atomic Layer Deposition、ALD法)は、複数の低エネルギーガスの支持体表面に対する化学吸着および化学反応を利用する方法である。スパッタ法やCVD法が高エネルギー粒子を利用するがゆえに生成した薄膜のピンホールや損傷を引き起こしてしまうのに対して、この方法では複数の低エネルギーガスを利用する方法であるためピンホールや損傷が生じることが少なく高密度の単原子膜が得られるという利点がある(特開2003−347042号公報,特表2004−535514号公報,国際公開第2004/105149号参照)。
《塗布法》
本方法は、ポリシラザンを含む塗布液を塗布して形成される塗膜を改質処理して、ガスバリア層を形成する。
本発明において、ポリシラザンとしては、特に制限されないが、後述の改質を考慮すると、比較的低温でセラミック化してシリカに変性し、本発明に係るガスバリア層を形成できる化合物であることが好ましく、例えば、上記の一般式(I)で表される単位からなる主骨格を有する化合物であることが好ましい。
ポリシラザンは、得られるガスバリア層の緻密性の観点から、R、R、およびRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(以下、「PHPS」とも称する)であることが特に好ましい。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6員環および8員環を中心とする環構造とが存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、分子量によって液体または固体の物質でありうる。当該パーヒドロポリシラザンは、市販品を使用してもよく、市販品としては、NN120−10、NN120−20、NAX120−20、NN110、NAX120、NAX110、NL120A、NL110A、NL150A、NP110、NP140(以上、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)等が挙げられる。
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、上記一般式(I)で表されるポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(例えば、特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(例えば、特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(例えば、特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(例えば、特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
〔アミン触媒および金属触媒〕
また、ポリシラザンを含む塗布液は、後述する改質を促進する観点から、アミン触媒および/または金属触媒を含むことができ、特にアミン触媒をさらに含むことが好ましい。
アミン触媒としては、特に制限されないが、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンが挙げられる。
金属触媒としては、特に制限されないが、白金アセチルアセトナート等の白金化合物、プロピオン酸パラジウム等のパラジウム化合物、ロジウムアセチルアセトナート等のロジウム化合物が挙げられる。
この際、添加する触媒の濃度としては、ポリシラザンを基準としたとき、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%、さらに好ましくは0.5〜2質量%の範囲である。触媒添加量をかような範囲とすることで、反応の急激な進行による過剰なシラノール形成および膜密度の低下、膜欠陥の増大を避けることができる。
〔溶媒〕
本発明に係るポリシラザンを含む塗布液を調製する際に、溶媒を用いてもよい。かような溶媒としては、ポリシラザンと反応しないものであれば特に限定されず、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等の炭化水素系溶媒;脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。より具体的に、炭化水素溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン、塩化メチレン、トリクロロエタン等が挙げられる。また、エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で、または2種以上を混合して用いられうる。
〔塗布・乾燥〕
ポリシラザンを含む塗布液の塗布方式としては、特に限定されず、従来公知の湿式塗布方式を適宜選択して適用することができる。具体的には、例えば、スピンコート法、ダイコート法、ローラーコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
また、塗布する際の酸素濃度は、特に限定されないが、半導体ナノ粒子の酸素による劣化防止の観点から、1〜2000体積ppmであることが好ましく、1〜1000体積ppmであることがより好ましい。
塗布厚さは、目的に応じて適切に設定することができる。例えば、塗布厚さは、形成するガスバリア層の膜厚の好適な範囲内になるようにすればよい。
塗布液を塗布した後、形成された塗膜を乾燥させることが好ましい。乾燥することによって、当該塗膜中に含有される有機溶剤を除去することができる。この際、当該塗膜に含有された有機溶剤は、全てを乾燥させてもよいが、一部残存させていてもよい。一部の有機溶剤を残存させる場合であってもよく、残存する有機溶剤は後に除去されうる。
乾燥の温度は、適用する基材の熱による変形等がなければ特に限定されず、例えば50〜200℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。上記温度は、ホットプレート、オーブン、ファーネス等を使用することによって設定されうる。乾燥時間は、乾燥温度との兼ね合いもあるが、短時間に設定することが好ましく、例えば30秒〜15分であることが好ましい。
乾燥の雰囲気は、大気雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、真空雰囲気下、酸素濃度をコントロールした減圧雰囲気下等のいずれの条件下であってもよく、その際の酸素濃度は、特に限定されないが、半導体ナノ粒子の酸素による劣化防止の観点から、1〜2000体積ppmであることが好ましく、1〜1000体積ppmであることがより好ましい。
〔改質〕
改質とは、ポリシラザンの一部または全部を、酸化ケイ素または酸窒化ケイ素へ転化させる反応を意味する。改質は、例えば加熱処理、紫外線照射処理、およびプラズマ処理の少なくとも1つの処理によって行う。以下では、好ましい改質処理である紫外線照射処理について説明する。
(紫外線照射処理)
本発明にいて、「紫外線」とは、一般的に10〜400nmの波長を有する電磁波をいうが、後述する真空紫外線(10〜200nm)処理以外の紫外線照射処理の場合は、好ましくは210〜375nmの紫外線を用いる。
紫外線の照射は、照射されるガスバリア層を担持している基材がダメージを受けない範囲で、照射強度や照射時間を設定することが好ましい。
一般的に、紫外線照射処理時の支持体温度が150℃以上になると、プラスチックフィルム等の場合には、基材が変形したり、その強度が劣化したりする等、基材の特性が損なわれることになる。しかしながら、ポリイミド等の耐熱性の高いフィルムや、金属等の基板の場合には、より高温での改質処理が可能である。したがって、この紫外線照射時の基材温度としては、一般的な上限はなく、基材の種類によって当業者が適宜設定することができる。また、紫外線照射処理の雰囲気は特に制限されない。
このような紫外線の発生手段としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ(172nm、222nm、308nmの単一波長、例えば、ウシオ電機株式会社製や株式会社エム・ディ・コム製)、UV光レーザー等が挙げられるが、特に限定されない。また、発生させた紫外線を照射する際には、効率向上と均一な照射を達成する観点から、発生源からの紫外線を反射板で反射させてから目的の塗膜に当てることが望ましい。
紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、使用する基材または支持体の形状によって適宜選定することができる。例えば、SAMCO社製のUVオゾンクリーナーUV−1、アイグラフィクス株式会社製の紫外線焼成炉等の装置を使用することができる。紫外線照射に要する時間は、使用する基材もしくは基材またはガスバリア層の組成、濃度にもよるが、一般に0.1秒〜60分であり、好ましくは0.5秒〜30分である。
以下では、本発明において最も好ましい改質としての真空紫外線照射による処理(エキシマ照射処理)について詳細に説明する。
(真空紫外線照射処理:エキシマ照射処理)
真空紫外線の照射により、ポリシラザンがシラノールを経由することなく直接酸化されることから(光量子プロセスと呼ばれる光子の作用)、当該酸化過程において体積変化が少なく、高密度で欠陥の少ない酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素等を含む膜が得られうる。また、真空紫外線では、反応雰囲気中に存在する酸素等から高い酸化能力を有するオゾンや活性酸素が生成され、当該オゾンや活性酸素によってもポリシラザンの改質処理を行うことができる。その結果、より緻密な酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素等の膜が得られうる。したがって、真空紫外線照射処理により、ポリシラザンが改質されて得られるガスバリア層は、高いバリア性を有しうる。なお、真空紫外線照射は、ガスバリア層の塗膜形成後であればいずれの時点で実施してもよい。
真空紫外線照射処理において、受ける塗膜面での該真空紫外線の照射強度は、30〜200mW/cmの範囲であることが好ましく、50〜160mW/cmの範囲であることがより好ましい。30mW/cm以上では、改質効率が低下する懸念がなく、200mW/cm以下では、ガスバリア層の塗膜にアブレーションを生じず、基材にダメージを与えないため好ましい。
塗膜面における真空紫外線の照射エネルギー量は、200〜10000mJ/cmの範囲であることが好ましく、500〜7000mJ/cmの範囲であることがより好ましい。この範囲であれば、クラック発生や支持体の熱変形がない。
真空紫外線光源としては、Xe、Kr、Ar、Neなどの希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
これのうち、Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。
また、波長の短い172nmの光のエネルギーは、有機物の結合を解離させる能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でシラザン結合を有する化合物(例えば、ポリシラザン)の改質を実現できる。
紫外線照射時の反応には、酸素が必要であるが、真空紫外線は、酸素による吸収があるため紫外線照射工程での効率が低下しやすいことから、真空紫外線の照射は、可能な限り酸素濃度および水蒸気濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、真空紫外線照射時の酸素濃度は、1〜10000体積ppmの範囲とすることが好ましく、より好ましくは1〜5000体積ppmの範囲、更に好ましく1〜1000体積ppmの範囲である。
真空紫外線照射時に用いられる、照射雰囲気を満たすガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点からドライ窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
〔アンカーコート層〕
本発明に係る基材の表面には、接着性(密着性)の向上を目的として、アンカーコート層を易接着層として形成してもよい。アンカーコート層の構成材料、形成方法等は、特開2013−52561号公報の段落「0229」〜「0232」に開示される材料、方法等が適宜採用される。
〔平滑層〕
基材は平滑層を有していてもよい。平滑層は突起等が存在する基材の粗面を平坦化するために設けられる。平滑層の構成材料、形成方法、表面粗さ、膜厚等は、特開2013−52561号公報の段落「0233」〜「0248」に開示される材料、方法等が適宜採用される。
〔クリアハードコート層〕
クリアハードコート層は、基材と光学層との密着性向上、高温高湿下での基材および光学層の膨張・収縮の差から生じる内部応力の緩和、光学層を設ける下層の平坦化、基材からのモノマー、オリゴマー等の低分子量成分のブリードアウト防止等の機能を有する。
クリアハードコート層は、感光性樹脂組成物を基材上に塗布した後、硬化させることによって形成されうる。クリアハードコート層は、この機能を有していれば、基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。クリアハードコート層の構成材料、形成方法、膜厚等は、特開2013−52561号公報の段落「0249」〜「0262」に開示される材料、方法等が適宜採用される。
本発明の光学フィルムは、各種発光デバイスに適用可能であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)において、光源と偏光板との間に配置される高輝度フィルムとして用いることが可能である。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、下記操作において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行う。
(半導体ナノ粒子Aの合成)
ミリスチン酸インジウム0.1mmol、ステアリン酸0.1mmol、トリメチルシリルホスフィン0.1mmol、ドデカンチオール0.1mmol、ウンデシレン酸亜鉛0.1mmolを、オクタデセン8mlとともに三口フラスコに入れ、窒素雰囲気下で還流を行いながら300℃で1時間加熱し、InP/ZnS(半導体ナノ粒子A)を得た。
半導体ナノ粒子Aを透過型電子顕微鏡により直接観察することで、InPの表面をZnSが覆ったコア・シェル構造であることを確認した。なお、本明細書中、コア・シェル構造を有する半導体ナノ粒子の表記法として、例えばコアがInP、シェルがZnSの場合、InP/ZnSと表記する。また、当該観察により、上記で合成したInP/ZnS半導体ナノ粒子は、コア部の粒子径が2.1〜3.8nmであり、コア部の粒子径分布が6〜40%であった。ここで、当該観察には、日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡JEM−2100を用いた。
また、半導体ナノ粒子Aを含むオクタデセン溶液を測定することで、InP/ZnS半導体ナノ粒子Aの光学特性を得た。すなわち、発光ピーク波長が、430〜720nmであり、発光半値幅が、35〜90nmであることを確認した。発光効率が、最大で70.9%に達した。ここで、InP/ZnS半導体ナノ粒子Aの発光特性の測定には、JOBIN YVON社製の蛍光分光光度計FluoroMax−4を使用し、InP/ZnS半導体ナノ粒子Aの吸収スペクトル測定には、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計U−4100を用いた。
(半導体ナノ粒子Bの合成)
セリウム(Se)粉末0.7896gを、トリオクチルホスフィン(TOP)7.4gへ添加し、得られた混合物を150℃まで加熱して(窒素気流下)、TOP−Seストック溶液を調製した。別途、酸化カドミウム(CdO)0.450gおよびステアリン酸8gをアルゴン雰囲気下で、三口フラスコ中で150℃まで加熱した。CdOが溶解した後、このCdO溶液を室温まで冷却した。このCdO溶液に、トリオクチルホスフィンオキサイド(TOPO)8gおよび1−ヘプタデシル−オクタデシルアミン(HDA)12gを添加し、得られた混合物を再び150℃まで加熱し、ここで、上記で調製したTOP−Seストック溶液を素早く添加した。その後、チャンバの温度を220℃まで加熱し、さらに一定の速度で120分間かけて250℃まで上昇させた(0.25℃/分)。その後、温度を100℃まで下げ、酢酸亜鉛二水和物を添加し、攪拌して溶解させた後、ヘキサメチルジシリルチアンのトリオクチルホスフィン溶液を滴下し、数時間攪拌を続けて反応を終了させ、CdSe/ZnS(半導体ナノ粒子B)を得た。
半導体ナノ粒子Aと同様に、半導体ナノ粒子Bを透過型電子顕微鏡により直接観察することで、CdSeコア部の表面をZnSシェルが覆ったコア・シェル構造であることを確認した。また、CdSe/ZnS半導体ナノ粒子Bは、コア部の粒子径が2.0〜4.0nmであり、コア部の粒子径分布が6〜40%であることを確認した。
また半導体ナノ粒子Aと同様に測定を行い、半導体ナノ粒子Bの光学特性を得た。すなわち、発光ピーク波長が、410〜700nmであり、発光半値幅が、35〜90nmであることを確認した。発光効率が、最大で73.9%に達した。
(実施例1:光学層形成用組成物1、光学フィルム1の作製)
半導体ナノ粒子Aを赤色と緑色とに発光するように粒径を調整し、赤色発光用の半導体ナノ粒子A(粒径:5.2nm)0.75mgと、緑色発光用の半導体ナノ粒子A(粒径:3.2nm)4.12mgとを、分散媒である流動パラフィン 1gに分散させた。その後、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂溶液を加え、半導体ナノ粒子Aの含有量が1質量%である光学層形成用組成物1を調製した。
上記光学層形成用組成物を、両面に易接着加工された厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、KDL86WA)に乾燥膜厚100μmになるようにバーコート法で塗布し、60℃で3分間乾燥し、光学フィルム1を作製した。
(実施例2:光学層形成用組成物2、光学フィルム2の作製)
半導体ナノ粒子Aを半導体ナノ粒子Bに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光学層形成用組成物2および光学フィルム2を作製した。
(比較例1:光学層形成用組成物3、光学フィルム3の作製)
流動パラフィンを加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして、光学層形成用組成物3および光学フィルム3を作製した。
(比較例2:光学層形成用組成物4、光学フィルム4の作製)
流動パラフィンを加えなかったこと以外は、実施例2と同様にして、光学層形成用組成物4および光学フィルム4を作製した。
(比較例3:光学層形成用組成物5、光学フィルム5の作製)
ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂溶液の代わりに、ポリテトラフルオロエチレンを加えたこと以外は、実施例1と同様にして、光学層形成用組成物5および光学フィルム5を作製した。
(実施例3:光学層形成用組成物6、光学フィルム6の作製)
ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂溶液の代わりに、ポリエチレンを加えたこと以外は、実施例1と同様にして、光学層形成用組成物6および光学フィルム6を作製した。
(実施例4:光学層形成用組成物7、光学フィルム7の作製)
ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂溶液の代わりに、ポリスチレンを加えたこと以外は、実施例1と同様にして、光学層形成用組成物7および光学フィルム7を作製した。
(実施例5:光学層形成用組成物8、光学フィルム8の作製)
ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂溶液の代わりに、フェノール樹脂を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、光学層形成用組成物8および光学フィルム8を作製した。
(比較例4:光学層形成用組成物9、光学フィルム9の作製)
ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂溶液の代わりに、ポリ塩化ビニリデンを加えたこと以外は、実施例1と同様にして、光学層形成用組成物9および光学フィルム9を作製した。
《光学フィルムの評価》
上記のようにして作製した光学フィルム1〜9について、下記の評価を行った。
(透明性の評価:Hazeの測定)
日本電色工業株式会社製、ヘーズメーター NDH5000を用いて、光学フィルム1〜9のHazeを測定し、下記基準で評価した。本発明の光学フィルムは、発光デバイスに用いられる点から、1.5%未満であることが好ましい。
5:0.5%未満
4:0.5%以上1%未満
3:1%以上1.5%未満
2:1.5%以上3%未満
1:3%以上
(発光効率の評価)
光学フィルム1〜9を405nmの青紫光で励起したときに、色温度が7000Kの白色発光の発光効率を測定した。測定には、大塚電子株式会社製の発光測定システムMCPD−7000を用いた。比較例1の光学フィルム1を100とした時の発光効率を下記の基準で評価した。本発明の光学フィルムは、発光デバイスに用いられる点から、105以上であることが好ましい。
5:125以上
4:115以上125未満
3:105以上115未満
2:95以上105未満
1:85以上95未満。
(耐久性の評価)
上記作製した光学フィルム1〜9に対し、85℃、85%RHの環境下で3000時間の加速劣化処理を施した後、上記発光効率を測定し、加速劣化処理前の発光効率に対する加速劣化処理後の発光効率の比を求め、下記の基準で評価した。本発明の光学フィルムは、発光デバイスに用いられる点から、0.80以上であることが好ましい。
5:比が0.95以上
4:比が0.90以上0.95未満
3:比が0.80以上0.90未満
2:比が0.50以上0.80未満
1:比が0.50未満。
光学フィルム1〜9の構成および評価結果を下記表1に示す。
上記表1から明らかなように、本発明の光学層形成用組成物を用いて作製した光学フィルムは、耐久性に優れ、透明性および発光効率にも優れる。

Claims (5)

  1. 分散媒と、半導体ナノ粒子と、バインダー樹脂と、を含み、
    前記分散媒の溶解度パラメータと前記バインダー樹脂の溶解度パラメータとの差の絶対値が、5〜10(cal/cm1/2である、光学層形成用組成物。
  2. 前記半導体ナノ粒子と前記分散媒との質量比は、1:50〜1:1000である、請求項1に記載の光学層形成用組成物。
  3. さらに酸化防止剤を含む、請求項1または2に記載の光学層形成用組成物。
  4. 基材上に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学層形成用組成物を用いて形成された光学層を有する光学フィルム。
  5. さらにガスバリア層を有する、請求項4に記載の光学フィルム。
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