JP2015112701A - ワイヤソーの運転再開方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数の溝付きローラにワイヤを巻掛けることでワイヤ列を形成し、ワイヤを軸方向に往復走行させ、ワイヤ列に押し当てることで切断するワイヤソーの運転において、切断がワイヤの断線により中断した後、切断を再開する運転再開方法であって、少なくとも1本以上のワークを切断可能な長さのワイヤであり、先端から少なくともワイヤ列が形成可能な長さまでを摩耗させた摩耗ワイヤを用意する工程と、断線したワイヤを、摩耗ワイヤに交換してワイヤ列を形成する工程と、形成されたワイヤ列における摩耗ワイヤの摩耗させた箇所がワークの切り込み位置になるように、摩耗ワイヤを移動させてから切断を再開する工程を有することを特徴とするワイヤソーの運転再開方法。
【選択図】 図1
Description
図2に示すように、ワイヤソー1は、ワークWを切断するためのワイヤ2が供給側のワイヤリール6から繰り出され、溝付きローラ3に入っている。ワイヤ2がこの溝付きローラ3に300〜500回程度巻掛けられることによってワイヤ列7が形成される。更に、ワイヤ2は溝付きローラ3から巻出され、回収側のワイヤリール6’に巻き取られる。
ワークWを切断する時には、ワイヤ2を予め定められた走行距離でワイヤ軸方向に往復走行させ、ワイヤ列の供給側から回収側にワイヤ新線が徐々に供給されていく。
そこで、溝付きローラの複数の溝間のピッチを供給側より回収側の方が狭くなるようにしたものが用いられている(特許文献1)。
また、断線が発生すると、切断に使用したことで摩耗したワイヤが、摩耗の無い新線に交換されるため、ワイヤの直径の差により、ワークを断線時の切り込み位置に戻すことが困難になってしまう。更に、ワークを断線時の切り込み位置に戻して切断を再開しても、ワイヤの直径の差により、ワークの切断面に溝ができてしまう。近年、ウェーハの製造コストの削減のため、後工程におけるラッピング処理時のラップ代は小さく設計されているため、ラッピング処理で上記の溝を除去することができず、大量の不良品が発生してしまうという問題を生じる。
一般的にワークの切り代はワイヤの直径にスラリ中の砥粒の平均砥粒径の3倍を加えた値となることが知られている(非特許文献1)。ここで、スラリに含まれる砥粒の平均砥粒径をd、ワイヤ列の供給側のワイヤの直径(新線径)をR1、回収側のワイヤの直径(摩耗径)をR2、ワイヤの摩耗量をΔR(=R1−R2)とすると、上記のように供給側のワークの切り代はR1+3d、回収側のワークの切り代はR2+3d=R1−ΔR+3dと表せる。このワイヤ列の回収側のワークの切り代が新線径R1より小さければ、切断再開時に、この新線をワークの切り込み位置に戻すことができない。従って、ワークを切り込み位置に戻すには、回収側の切り代が新線径R1以上である必要が有る。すなわち、摩耗量ΔRが下記式を満たす必要が有る。
R1−ΔR+3d−R1≧0 ⇔ 3d≧ΔR …(1)
上記のように、ワイヤソーによるワークの切断中にワイヤが断線した場合、そのワークの切断を再開すると、ワイヤ列の回収側のワークの切り代よりも新線の直径の方が大きく、ワイヤを断線時の切り込み位置に戻すことができなくなってしまう。また、ワークを断線時の切り込み位置に戻して切断を再開することができても、新線の直径が太く、ワイヤの直径に差が有り、ワークの切断面に溝が発生するという問題がある。
図2に示すように、ワイヤソー1は、ワークWを切断するためのワイヤ2、ワイヤ2を巻掛けした複数の溝付きローラ3、切断するワークWを相対的に下方へと送り出すワーク送り機構4、切断時にワイヤ2にスラリを供給するためのスラリ供給手段5を有している。
ワイヤ2は、供給側のワイヤリール6から繰り出され、溝付きローラ3に入っている。ワイヤ2がこの溝付きローラ3に300〜500回程度巻掛けられることによってワイヤ列7が形成される。更に、ワイヤ2は溝付きローラ3から巻き出され、回収側のワイヤリール6’に巻き取られる。
ワークWを切断する時には、ワイヤ2を予め定められた走行距離でワイヤ軸方向に往復走行させる。この際、往復走行するワイヤのそれぞれの方向への走行距離は同じではなく、片方向の走行距離の方が長くなっている。これにより、ワイヤは往復走行を続けながら長く走行する方向、すなわち図2に示すように供給側から回収側にワイヤ新線が徐々に供給されていく。
まず、ワイヤ2の断線が発生したらワークWの切断を中断し、断線位置を確認する(図1のS101)。
ワイヤの断線が溝付きローラ3より回収側の位置で発生した場合には、切断に直接関与しない位置でワイヤの断線部同士を結線すればよいため、供給側のワイヤリール6からワイヤ2を少量巻き出すだけでよく、ワイヤの摩耗した部分を再びワークに押し当てて切断を再開できる。
ワークWの切断が完了した後、摩耗ワイヤを巻きつけたワイヤリールをワイヤソー1から取り外して、断線が発生したワイヤリール6を再度設置することで、摩耗ワイヤを断線したワイヤに再度交換してから、次のワークの切断を実施することが好ましい(図1のS108、S109)。
図2に示すようなワイヤソーを使用して、d=0.30×ΔRとなる摩耗条件の切断レシピで直径200mmのシリコンインゴットの切断を行った。そして、ワークの下端部から100mmの切り込み位置を切断中に、溝付きローラよりも供給側の位置で断線を発生させた。そして、図1に示すような、本発明のワイヤソーの運転再開方法で、ワークの切断を再開した。このとき、供給側のワイヤリールを、あらかじめ用意しておいた摩耗ワイヤを巻きつけたワイヤリールに交換することで、断線したワイヤを、先端から少なくともワイヤ列が形成可能な長さまでをd/0.30=ΔRだけ摩耗させた摩耗ワイヤに交換した。そして、ワイヤリールから摩耗ワイヤを巻き出し、ワイヤ列を再度形成し、摩耗ワイヤの摩耗させた箇所がワークの切り込み位置になるように、摩耗ワイヤを移動させてから切断を再開した。そして、切断完了後、ウェーハの表面形状を測定した。その結果を図3に示す。
その結果、ワークの切り込み位置にワイヤ列を嵌めて切断をすることができ、図3に示すように、ウェーハ表面に溝が発生しておらず、切断後の後工程の加工により不良は発生しなかった。またこの時の摩耗量は、ΔR>3dの範囲の値であったが問題なくワークの切り込み位置にワイヤ列を嵌めて切断を再開できた。このように、従来のように摩耗量を制限した切断レシピにせずとも、ワークの切り込み位置にワイヤ列を嵌めて切断を再開できる上、ウェーハに段差も発生しないことが確認された。
図2に示すようなワイヤソーを使用して、d=0.40×ΔRとなる摩耗条件の切断レシピで直径200mmのシリコンインゴットの切断を行った。そして、ワークの下端部から100mmの切り込み位置を切断中に、溝付きローラよりも供給側の位置で断線を発生させた。そして、図1に示すような、本発明のワイヤソーの運転再開方法で、ワークの切断を再開した。このとき、供給側のワイヤリールを、あらかじめ用意しておいた摩耗ワイヤを巻きつけたワイヤリールに交換することで、断線したワイヤを、先端から少なくともワイヤ列が形成可能な長さまでをd/0.40=ΔRだけ摩耗させた摩耗ワイヤに交換した。そして、ワイヤリールから摩耗ワイヤを巻き出し、ワイヤ列を再度形成し、摩耗ワイヤの摩耗させた箇所がワークの切り込み位置になるように、摩耗ワイヤを移動させてから切断を再開した。そして、切断完了後、ウェーハの表面形状を測定した。その結果を図3に示す。
その結果、ワークの切り込み位置にワイヤ列を嵌めて切断をすることができ、図3に示すように、ウェーハ表面に溝が発生しておらず、切断後の後工程の加工により不良は発生しなかった。
実施例1と同様に、図2に示すようなワイヤソーを使用して、d=0.30×ΔRとなる摩耗条件の切断レシピで直径200mmのシリコンインゴットの切断を行った。そして、ワークの下端部から100mmの切り込み位置を切断中に、溝付きローラよりも供給側の位置で断線を発生させた。そして、断線したワイヤを、摩耗させたワイヤに交換せず、そのまま断線箇所を結線し、再度ワイヤ列を形成した。このとき、供給側のワイヤリールからワイヤを巻き出して結線部を溝付きローラよりも回収側の位置まで移動させたため、ワイヤ列のワークの切断に関与する部分のワイヤは新線となっていた。
その後、ワークの切り込み位置に再度形成したワイヤ列を嵌めようとしたが、特にワークの後半でワイヤの直径がワークの切り代より大きいため、ワイヤ列を嵌めることはできず切断を再開できなかった。
実施例1と同様に、図2に示すようなワイヤソーを使用して、d=0.40×ΔRとなる摩耗条件の切断レシピで直径200mmのシリコンインゴットの切断を行った。そして、ワークの下端部から100mmの切り込み位置を切断中に、溝付きローラよりも供給側の位置で断線を発生させた。そして、断線したワイヤを、摩耗させたワイヤに交換せず、そのまま断線箇所を結線し、ワイヤ列を再度形成した。このとき、供給側のワイヤリールからワイヤを巻き出して結線部を溝付きローラよりも回収側の位置まで移動させたため、ワイヤ列のワークの切断に関与する部分のワイヤは新線となっていた。
その後、ワークの切り込み位置に再度形成したワイヤ列を嵌めることは困難であったが、ワイヤ列を嵌めこみ切断を再開した。
そして、切断完了後、ウェーハの表面形状を測定した。その結果を図3に示す。比較例2では、ワークの切り込み位置に再びワイヤ列を嵌め込み、切断を再開できたが、図3に示すように、ウェーハの表面の切断を再開した100mmの切り込み位置に深い溝ができてしまい、後工程で不良が発生してしまった。
4…ワーク送り機構、 5…スラリ供給手段、 6、6’…ワイヤリール、
7…ワイヤ列、 W…ワーク。
Claims (5)
- 複数の溝付きローラにワイヤを巻掛けることでワイヤ列を形成し、前記ワイヤを軸方向に所定のサイクルで往復走行させ、前記ワイヤに切断用のスラリを供給しつつ、ワークを相対的に押し下げて、前記ワイヤ列に押し当てることで、前記ワークをウェーハ状に切断するワイヤソーの運転において、前記ワークの切断が前記ワイヤの断線の発生により途中で一旦中断した後に、該切断を再開する場合の運転再開方法であって、
少なくとも1本以上の前記ワークを切断可能な長さのワイヤであり、先端から少なくとも前記ワイヤ列が形成可能な長さまでを摩耗させた摩耗ワイヤを用意する工程と、
前記ワイヤの断線後に、前記断線したワイヤを、前記摩耗ワイヤに交換して再度ワイヤ列を形成する工程と、
該再度形成されたワイヤ列における前記摩耗ワイヤの摩耗させた箇所が前記ワークの切り込み位置になるように、前記摩耗ワイヤを移動させてから切断を再開する工程を有することを特徴とするワイヤソーの運転再開方法。 - 前記断線したワイヤのワイヤ列の新線供給側におけるワイヤの直径である新線径R1と、前記断線したワイヤのワイヤ列の回収側におけるワイヤの直径である摩耗径R2を測定し、
前記切断を再開する工程において、前記摩耗ワイヤで再度形成されたワイヤ列の新線供給側及び前記回収側のワイヤの直径がそれぞれ前記新線径R1及び前記摩耗径R2と同じになるように、前記摩耗ワイヤを移動させてから切断を再開することを特徴とする請求項1に記載のワイヤソーの運転再開方法。 - 前記交換する摩耗ワイヤを、前記断線が発生したワークの切断と同一の切断レシピで前記ワークの切断をすることで、ワイヤを摩耗させたものと交換することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイヤソーの運転再開方法。
- 前記ワークの切断を再開し前記ワークの切断が完了した後に、前記摩耗ワイヤを前記断線したワイヤに再度交換してから、次のワークの切断を実施することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイヤソーの運転再開方法。
- 前記ワイヤの断線が前記ワイヤの供給側あるいはワイヤ列中で発生した場合に、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤソーの運転再開方法を実施することを特徴とするワイヤソーの運転再開方法。
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