JP2015106521A - 酸化物超電導薄膜とその製造方法、および酸化物超電導薄膜線材 - Google Patents

酸化物超電導薄膜とその製造方法、および酸化物超電導薄膜線材 Download PDF

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Abstract

【課題】酸化物超電導体結晶の2軸配向を良好に維持して酸化物超電導薄膜の厚膜化を図ることと、有効なピンニング中心を導入して磁場中におけるJcの改善を図ることの双方を同時に実現することができる酸化物超電導技術を提供する。
【解決手段】塗布熱分解法を用いて形成された酸化物超電導薄膜であって、表面に2軸配向している結晶配向組織を有する金属基板と、金属基板の表面に形成されて2軸配向している中間層と、中間層の表面に角柱状に形成されて、上面および側面が酸化物超電導薄膜の2軸配向成長をアシストする多数の析出物を有している3次元テンプレートとを備えている酸化物超電導薄膜用基体上に形成されている酸化物超電導薄膜。
【選択図】図1

Description

本発明は、酸化物超電導薄膜とその製造方法、および前記酸化物超電導薄膜が設けられた酸化物超電導薄膜線材に関する。
酸化物超電導薄膜線材は、金属基板上に、例えば、REBaCu7−X(REは、Y(イットリウム)、Gd(ガドリウム)、Ho(ホルミウム)等の希土類元素)で表されるRE123系酸化物等の酸化物超電導体の薄膜が形成されて構成されているが、高い臨界電流密度Jcを実現するためには酸化物超電導体結晶の2軸の方位を揃えて配向させる必要がある。
このような酸化物超電導薄膜を形成するための有力な方法の一つとして、塗布熱分解法(Metal Organic Decomposition:略称MOD法)がある。MOD法は、RE(希土類元素)およびBa(バリウム)、Cu(銅)の各有機酸塩を溶解した原料溶液を2軸配向した金属基板上に塗布して塗膜を形成した後、焼成することにより酸化物超電導体をエピタキシャル成長させて薄膜を形成するものであり、大きく分けて、原料としてフッ素を含む原料を用いるTFA−MOD(Metal Organic Deposition using TriFluoroAcetates)法とフッ素を含まない原料を用いるFF−MOD法とがある。
TFA−MOD法は、MOD法として従来より一般的に用いられている方法であるが、フッ素を含む原料を用いているため、酸化物超電導薄膜の形成に際して、フッ酸の発生を制御しなければならないことや、薄膜表面に凹凸が発生することなどの問題を有している。このため、近年は、フッ酸が発生せず、また、短時間で良質な酸化物超電導体結晶を生成させることができるFF−MOD法(Fluorine−free Metal Organic Deposition)が注目されている。
しかし、その一方で、FF−MOD法は結晶性が高すぎるため本質的に磁場中でのJc(臨界電流密度)が低いことが問題となっている。
そこで、FF−MOD法を用いて作製された酸化物超電導薄膜の磁場中におけるJcを改善するために、ナノサイズの化合物の微粒子等を不純物(ピン化合物)として酸化物超電導体中に導入することにより、酸化物超電導体中にピンニング中心を形成させて、超電導体中における量子化磁束の運動を抑制し、抵抗の発生を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
また、FF−MOD法を用いて作製された酸化物超電導薄膜における臨界電流Icの向上を図るためには、酸化物超電導薄膜を厚膜化する必要があるが、膜厚が厚くなるにつれて酸化物超電導体結晶の2軸配向を維持することが困難となって、膜厚の増加に比べてIcが充分に増加しない。
そこで、酸化物超電導薄膜を厚膜化した場合でも酸化物超電導体結晶の2軸配向が維持されるように、全金属イオン質量に対して2ppm以上、2000ppm未満の塩素を添加した原料溶液を用いて、結晶化の過程でCuOやCuOなどの融点の高い酸化物が生成されることを抑制して、酸化物超電導体結晶をエピタキシャル成長させる技術が提案されている(例えば、特許文献3)。
特開2012−174564号公報 特開2012−174565号公報 特開2013−122847号公報
しかしながら、ピンニング中心となる不純物をドープした場合には、厚膜化する際に結晶配向が損なわれる恐れがあるという問題がある。
また、微量の塩素を添加した原料溶液を用いて酸化物超電導薄膜を厚膜化した場合には、前記した磁場中におけるJcの低下の改善を充分に図ることができないという問題がある。
このように、従来の技術においては、酸化物超電導体結晶の2軸配向を良好に維持して酸化物超電導薄膜の厚膜化を図ることと、有効なピンニング中心を導入して磁場中におけるJcの改善を図ることの双方を同時に実現することができないという問題があった。
そこで、本発明は、酸化物超電導体結晶の2軸配向を良好に維持して酸化物超電導薄膜の厚膜化を図ることと、有効なピンニング中心を導入して磁場中におけるJcの改善を図ることの双方を同時に実現することができる酸化物超電導技術を提供することを課題とする。
本発明の酸化物超電導薄膜は、
塗布熱分解法を用いて形成された酸化物超電導薄膜であって、
表面に2軸配向している結晶配向組織を有する金属基板と、
前記金属基板の表面に形成されて2軸配向している中間層と、
前記中間層の表面に角柱状に形成されて、上面および側面が酸化物超電導薄膜の2軸配向成長をアシストする多数の析出物を有している3次元テンプレートと
を備えている酸化物超電導薄膜用基体上に形成されている酸化物超電導薄膜である。
また、本発明の酸化物超電導薄膜の製造方法は、
塗布熱分解法を用いて酸化物超電導薄膜を形成する酸化物超電導薄膜の製造方法であって、
表面に2軸配向している結晶配向組織を有する金属基板を準備する金属基板準備工程と、
塩素が添加された酸化物超電導薄膜形成用の原料溶液を準備する原料溶液準備工程と
を備え、
前記金属基板の表面に、2軸配向している中間層を形成する中間層形成工程と、
前記中間層上に前記原料溶液を塗布する原料溶液塗布工程と、
塗布された前記原料溶液を加熱して、BaCuClの結晶を前記中間層の表面に角柱状にエピタキシャル成長させて、上面および側面が酸化物超電導薄膜の2軸配向成長をアシストする多数の析出物を析出させて3次元テンプレートを形成する3次元テンプレート形成工程と、
酸化物超電導体の結晶化温度以上、BaCuClの蒸発温度未満の温度で焼成することにより、前記3次元テンプレートにアシストされて2軸配向した酸化物超電導薄膜を形成する酸化物超電導薄膜形成工程と
をさらに備えている酸化物超電導薄膜の製造方法である。
また、本発明の酸化物超電導薄膜は、
前記酸化物超電導薄膜の製造方法により製造された酸化物超電導薄膜である。
また、本発明の酸化物超電導薄膜線材は、
表面に2軸配向している結晶配向組織を有する金属基板と、
前記金属基板の表面に形成されて2軸配向している中間層と、
前記中間層の表面に角柱状に形成されて、上面および側面が酸化物超電導薄膜の2軸配向成長をアシストする多数の析出物を有する3次元テンプレートと
を備えた酸化物超電導薄膜用基体上に、
塗布熱分解法を用いて形成された酸化物超電導薄膜を備えている酸化物超電導薄膜線材である。
本発明によれば、酸化物超電導体結晶の2軸配向を良好に維持して酸化物超電導薄膜の厚膜化を図ることと、有効なピンニング中心を導入して磁場中におけるJcの改善を図ることの双方を同時に実現することができる酸化物超電導技術を提供することができる。
本発明の酸化物超電導薄膜に用いられている酸化物超電導薄膜形成用基体の一形態を模式的に示す斜視図である。 本発明の一実施の形態と従来の焼成条件で作製されたY123薄膜の表面および断面の2次電子像である。 本発明の一実施の形態と従来の焼成条件で作製されたY123薄膜の磁化率の温度依存性の測定結果を示す図である。 本発明の一実施の形態と従来の焼成条件で作製されたY123薄膜のJcの磁場依存性の測定結果を示す図である。 本発明の一実施の形態のY123薄膜の断面TEM像とBaCuClの結晶(Ba2342結晶)の電子線回折像である。 Ba2342結晶とY123の結晶構造を示す図である。 本発明の一実施の形態と従来のY123薄膜のJcの磁場依存性の測定結果を示す図である。 Y123薄膜の77Kでの最大ピンニング力密度FとBa2342(002)ピーク強度との関係を示す図である。 Y123薄膜の40Kでの5Tにおけるピンニング力密度FとBa2342(002)ピーク強度との関係を示す図である。 本発明の一実施の形態のY123薄膜の製造フローおよび構成を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施の形態と従来のY123薄膜の磁化率の温度依存性の測定結果を示す図である。 本発明の一実施の形態と従来のY123薄膜のJcの磁場依存性の測定結果を示す図である。 本発明の一実施の形態の5層厚膜タイプのY123薄膜の製造フローおよび構成を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施の形態と従来の5層厚膜タイプのY123薄膜のJcの磁場依存性の測定結果を示す図である。 本発明の一実施の形態と従来の5層厚膜タイプのY123薄膜のIcの磁場依存性を示す図である。 Hfを添加したY123薄膜のY123(005)ピーク強度とHfの添加比率との関係を示す図である。 Hfを添加したY123薄膜のJcの磁場依存性の測定結果を示す図である。 Hf添加および無添加のY123薄膜のXRDパターンである。 Hf添加および無添加のY123薄膜の断面のTEM像である。 磁場中におけるJc測定の測定結果を示す図である。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)第1の実施態様は、
塗布熱分解法を用いて形成された酸化物超電導薄膜であって、
表面に2軸配向している結晶配向組織を有する金属基板と、
前記金属基板の表面に形成されて2軸配向している中間層と、
前記中間層の表面に角柱状に形成されて、上面および側面が酸化物超電導薄膜の2軸配向成長をアシストする多数の析出物を有している3次元テンプレートと
を備えている酸化物超電導薄膜用基体上に形成されている酸化物超電導薄膜である。
本実施態様における3次元テンプレートは、2軸配向している中間層(2次元テンプレート)の表面に角柱状に形成されて、上面および側面が酸化物超電導薄膜の2軸配向成長をアシストする多数の析出物を有している。このため、このような3次元テンプレートを備えた酸化物超電導薄膜用基体上にMOD法を用いて酸化物超電導薄膜を形成した場合、酸化物超電導体結晶が、析出物の上面により2軸配向成長するだけでなく、側面によっても2軸配向成長していく。即ち、従来のab面における2軸配向成長に加えて、c軸方向にも2軸配向成長する。この結果、膜厚が厚くなっても、酸化物超電導体結晶の2軸配向を充分に維持することができ、膜厚の増加に合わせてIcを充分に向上させることができる。
そして、この析出物は、形成された酸化物超電導薄膜において、ピンニング中心としても機能するため、磁場中におけるJcの低下を充分に抑制することができる。
以上のように、本実施態様によれば、酸化物超電導体結晶の2軸配向を良好に維持して酸化物超電導薄膜の厚膜化を図ることと、有効なピンニング中心を導入して磁場中におけるJcの改善を図ることの双方が同時に実現された酸化物超電導薄膜を提供することができる。
(2)第2の実施態様は、
前記酸化物超電導薄膜が、REBaCu7−X(RE:希土類元素)で表されるRE123系酸化物超電導体結晶を含んでいる酸化物超電導薄膜である。
2軸配向したRE123系酸化物超電導体結晶を含んでいる酸化物超電導薄膜は、優れた超電導特性を有しており、本発明を適用することにより、厚膜化しても、酸化物超電導体結晶の2軸配向を良好に維持させることができるため、極めて高いIc、Jcを有する酸化物超電導薄膜を提供することができる。
(3)第3の実施態様は、
前記析出物が、BaCuClの結晶である酸化物超電導薄膜である。
2軸配向している中間層上を微細な角柱状に形成されてエピタキシャル成長することにより析出したBaCuClの結晶(Ba2342結晶)は、格子定数がRE123系酸化物超電導体結晶とab方向でほぼ同じであり、また、その上面および側面において2軸配向成長が可能であるため、Ba2342結晶の析出物を有している3次元テンプレートを用いることにより、酸化物超電導体結晶の2軸配向が良好に維持された酸化物超電導薄膜を提供することができる。
また、Ba2342結晶は、RE123系酸化物超電導体結晶の成長後、その界面がピンニング中心として機能することによる磁場中におけるJcの改善効果が大きい。
(4)第4の実施態様は、
塗布熱分解法を用いて酸化物超電導薄膜を形成する酸化物超電導薄膜の製造方法であって、
表面に2軸配向している結晶配向組織を有する金属基板を準備する金属基板準備工程と、
塩素が添加された酸化物超電導薄膜形成用の原料溶液を準備する原料溶液準備工程と
を備え、
前記金属基板の表面に、2軸配向している中間層を形成する中間層形成工程と、
前記中間層上に前記原料溶液を塗布する原料溶液塗布工程と、
塗布された前記原料溶液を加熱して、BaCuClの結晶を前記中間層の表面に角柱状にエピタキシャル成長させて、上面および側面が酸化物超電導薄膜の2軸配向成長をアシストする多数の析出物を析出させて3次元テンプレートを形成する3次元テンプレート形成工程と、
酸化物超電導体の結晶化温度以上、BaCuClの蒸発温度未満の温度で焼成することにより、前記3次元テンプレートにアシストされて2軸配向した酸化物超電導薄膜を形成する酸化物超電導薄膜形成工程と
をさらに備えている酸化物超電導薄膜の製造方法である。
Ba2342結晶は、RE123系酸化物が結晶化する温度より低い温度で生成される。このため、本実施態様においては、Cl添加された原料溶液を加熱するだけで、RE123系酸化物超電導薄膜が形成する前に多数のBa2342結晶を生成、析出させて、3次元テンプレートを形成することができる。
そして、Ba2342結晶をエピタキシャル成長させることにより3次元テンプレートを生成させた後、酸化物超電導体の結晶化温度以上、BaCuClの蒸発温度未満の温度で焼成することにより、酸化物超電導体の結晶が、3次元テンプレートのBa2342結晶の上面および側面によって2軸配向成長する。この結果、酸化物超電導体結晶の2軸配向を良好に維持して酸化物超電導薄膜の厚膜化を図ることと、有効なピンニング中心を導入して磁場中におけるJcの改善を図ることの双方が同時に実現された酸化物超電導薄膜を得ることができる。
このようなBa2342結晶は、酸化物超電導薄膜形成用の原料溶液に塩素を添加して、2軸配向している中間層の上に塗布し、加熱することにより形成される。
(5)第5の実施態様は、
前記塩素が添加された酸化物超電導薄膜形成用の原料溶液に、さらに、Hfが共添加されている酸化物超電導薄膜の製造方法である。
原料溶液に塩素に加えてHfを共添加することにより、形成された酸化物超電導薄膜中に、Ba2342結晶とBaHfOナノ粒子、即ち3次元テンプレートとピンニング中心を形成させることができる。
Hfは結晶配向度を低下させる特性を有しているため、酸化物超電導薄膜へHfを添加してピンニング中心導入を行おうとすると、酸化物超電導薄膜の配向組織に乱れを生じさせやすい。しかし、本実施態様においては、酸化物超電導薄膜の成長に先立ってBa2342結晶が生成されており、Hf添加に伴うピンニング中心導入を行っても、良好な2軸配向組織を維持して厚膜化することができる。
(6)第6の実施態様は、
前記塗布熱分解法が、FF−MOD法である酸化物超電導薄膜の製造方法である。
本発明の実施の形態において適用される塗布熱分解法としては、TFA−MOD法、FF−MOD法のいずれを採用してもよいが、フッ酸が発生せず、また、短時間で良質な酸化物超電導体結晶を生成させることができるFF−MOD法を適用した場合、本発明の効果をより顕著に発揮させることができる。
(7)第7の実施態様は、
前記酸化物超電導薄膜の製造方法により製造された酸化物超電導薄膜である。
酸化物超電導薄膜が前記した酸化物超電導薄膜の製造方法を用いて製造されていることにより、酸化物超電導体結晶の2軸配向を良好に維持して酸化物超電導薄膜の厚膜化を図ることと、有効なピンニング中心を導入して磁場中におけるJcの改善を図ることの双方が同時に実現された酸化物超電導薄膜を提供することができる。
(8)第8の実施態様は、
表面に2軸配向している結晶配向組織を有する金属基板と、
前記金属基板の表面に形成されて2軸配向している中間層と、
前記中間層の表面に角柱状に形成されて、上面および側面が酸化物超電導薄膜の2軸配向成長をアシストする多数の析出物を有する3次元テンプレートと
を備えた酸化物超電導薄膜用基体上に、
塗布熱分解法を用いて形成された酸化物超電導薄膜を備えている酸化物超電導薄膜線材である。
3次元テンプレートを備える酸化物超電導薄膜用基体上にMOD法を用いて酸化物超電導薄膜を形成することにより、酸化物超電導体結晶の2軸配向を良好に維持して酸化物超電導薄膜の厚膜化を図ることと、有効なピンニング中心を導入して磁場中におけるJcの改善を図ることの双方が同時に実現された酸化物超電導薄膜を提供することができる。そして、このような酸化物超電導薄膜を用いることにより、優れた超電導特性を有する酸化物超電導薄膜線材を提供することができる。
即ち、3次元テンプレートを備える酸化物超電導薄膜用基体上にMODを用いて形成されているRE123系酸化物超電導薄膜は、前記のように厚膜化により、効果的にIcを増大させることができ、また同時に、磁場中でのJcの低下が抑制される。このため、実用に好適な酸化物超電導薄膜線材を提供することができる。
[本発明の実施の形態の詳細]
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
(1)酸化物超電導薄膜形成用基体
図1は本発明の一実施の形態における酸化物超電導薄膜形成用基体の表面部分を模式的に示す斜視図であり、本実施の形態で特徴的な3次元テンプレートを説明するための図である。図1において、1は3次元テンプレートであり、1aはその上面、1bは側面である。
なお、以下においては、酸化物超電導薄膜としてY123酸化物超電導薄膜、3次元テンプレートとしてBa2342結晶、Ba2342結晶を成長させるための2軸配向した結晶配向組織を有している基材(2次元テンプレート)としてSTO単結晶基板を用いている。
3次元テンプレート1は、2軸配向した結晶配向組織を有しているSTO単結晶基板上にBa2342結晶をc軸方向に析出させることにより、図1に示すように、STO単結晶基板上に浮かぶ島のように多数角柱状に形成されている。このBa2342結晶は、前記したように、格子定数がRE123系酸化物超電導体結晶とab方向でほぼ同じであり、また、その上面および側面において2軸配向成長が可能であるため、酸化物超電導薄膜の形成に際しては、ab面からSTO単結晶基板の表面に平行な矢印で示す方向に2軸配向成長するだけでなく、c軸方向からも上向きの矢印で示す方向に2軸配向成長する。
このように、本実施の形態においては、3次元テンプレートの析出物が、酸化物超電導薄膜の2軸配向成長をab面だけでなくc軸方向にもアシストするため、厚膜化した場合であっても、良好な2軸配向組織が維持される。
3次元テンプレート1は、例えば、酸化物超電導薄膜の形成用の原料溶液にCl(塩素)を添加(ドープ)して、加熱することにより形成される。即ち、Ba2342結晶は、RE123結晶が成長するよりも低い温度で、STO単結晶基板の表面からc軸方向にエピタキシャル成長して析出されるため、酸化物超電導薄膜の形成に際しては、テンプレートとして機能して酸化物超電導薄膜をab面だけでなくc軸方向にも2軸配向成長させることができる。なお、Clの添加は、例えば、原料溶液に塩酸(HCl)を添加することにより行うことができる。
また、このとき、原料溶液中の希土類元素(例えば、Y)およびBa、Cu、Clの比率をモル比で、Y:Ba:Cu:Cl=1:2+2x:3+3x:2xとし、xを0.025≦x≦0.05とすることが好ましい。これにより、3次元テンプレートの形成においてBa2342結晶を充分に形成させることができると共に、Y123酸化物超電導体結晶を充分に2軸配向成長させることができる。x>0.05では、原料溶液に塩酸に混合する際沈殿が生じて完全に溶けないなどの恐れがある。一方、x<0.025では、Clドープ効果を顕著に発揮させることができず、x=0.01では殆ど効果が見られない。
そして、形成されたBa2342結晶は、形成されたY123酸化物超電導薄膜中においてピンニング中心となる。さらに、Hfなど従来酸化物超電導薄膜の配向度を下げてしまう不純物を添加しても、本実施の形態においては配向組織が保たれる。このため、Hfなどの不純物を添加してさらなるピンニング中心の導入を行っても上記したように、Y123酸化物超電導体結晶の2軸配向成長を妨げることがない。
この結果、酸化物超電導体結晶の2軸配向を良好に維持して酸化物超電導薄膜の厚膜化を図ることと、有効なピンニング中心を導入して磁場中におけるJcの改善を図ることの双方が同時に実現された酸化物超電導薄膜を得ることができる。
このBa2342結晶は、1気圧O/Ar気流中、O分圧(PO)10Paの条件下において、550℃以上で生成され、840℃で殆どが蒸発する。この550℃はRE123酸化物超電導体結晶の前駆体の1つであるBaCuOの生成温度(約580℃)よりも低い温度であり、840℃はRE123酸化物超電導体結晶を成長させる焼成温度(約800℃)よりも高い温度である。このため、形成されたBa2342結晶は、RE123酸化物超電導体結晶を成長させる焼成においても蒸発せず、その上面および側面によってRE123酸化物超電導体結晶を2軸配向成長させると共に、効率よく、ピンニング中心を導入させることができる。
なお、2軸配向した結晶配向組織を有する金属基板には、Niを表側に配置したSUS/Cu/Niのクラッド基板等が好ましく用いられ、金属基板の表面に形成されて2軸配向している中間層としては、上記STOや例えばCeO/YSZ/CeOの3層構造の中間層等、公知の薄膜が好ましく用いられる。
(2)酸化物超電導薄膜の形成
酸化物超電導薄膜の形成は、好ましくはFF−MOD法を用いて行われる。なお、原料溶液には前記したClを添加した原料溶液、例えばY、Gd、Ho等のREおよびBa、Cuのアセチルアセトナート(acac)を所定の比率、所定の濃度で含有し、所定量の塩酸を添加したメタノール溶液等のアルコール溶液が好ましく用いられる。
なお、酸化物超電導薄膜の厚膜化は、原料溶液の塗布と仮焼を繰り返し実施し、厚手の仮焼膜を形成した後、本焼(焼成)を実施して複数の層を積層させる方法を採用することが好ましい。
また、前記したように、Ba2342結晶のRE123系酸化物超電導体結晶との界面は、ピンニング中心として機能するが、用途によっては、Ba2342結晶を生成させただけではピンニングの機能が充分ではない場合がある。この場合には、例えば、前記のClが添加された原料溶液にさらにHfを共添加して、さらにピンニングを導入することが好ましい。これにより、より顕著なピンニング中心導入効果を得ることができる。
なお、Hfの添加量としては、0.5〜1.5mol%が好ましく、特に1mol%程度が好ましい。これにより20nm以下の微細な析出物や積層欠陥が多数生成して、ピンニング中心として機能するため、磁場中でのJcが大幅に向上する。
また、複数の層を積層して厚膜化する場合、第1層の酸化物超電導薄膜層として、Hfを含まない層をseed layerとして形成させると、全体としてよりc軸配向に優れた酸化物超電導薄膜を形成することができる。
(3)酸化物超電導薄膜線材
上記のように、酸化物超電導薄膜形成用基体上に、酸化物超電導薄膜を形成させることにより得られた酸化物超電導薄膜線材は、厚膜化に見合ったIcの増加を図ることができると共に、磁場中でのJc(Ic)の低下を充分に抑制することができるため、優れた超電導特性の酸化物超電導薄膜線材を提供することができる。
なお、酸化物超電導薄膜線材の製造に際しては、通常、長尺帯状の基体上に酸化物超電導薄膜形成後、酸化物超電導薄膜の表面に例えば銀(Ag)保護層を形成し、所定の幅にスリットした後、周囲に銅(Cu)安定化層が形成される。
[実施例]
以下に記載する実施例において、FF−MOD法を用いてY123酸化物超電導薄膜の作製を行った。
(1)実験1(Ba2342結晶の形成とピンニング中心としての可能性評価)
まず、Ba2342結晶を形成するための焼成条件について検討した、その結果、従来よりも低温、低酸素雰囲気下での焼成が有効であることが分かった。
具体的には、Clを微量添加した原料溶液を用いて、従来と同様の条件(PO=100Pa、840℃)で3min焼成を行ってSTO基板上にY123酸化物超電導薄膜を形成すると共に、従来よりも低温、低酸素の条件(PO=10Pa、800℃)で3min焼成を行ってSTO基板上にY123酸化物超電導薄膜を形成した。
得られた各Y123酸化物超電導薄膜のSTO基板上に形成されたY123酸化物超電導薄膜の表面と断面について、図2に示す2次電子像を得た。なお、図2において、上段が従来の条件で焼成されたY123酸化物超電導薄膜であり、下段が従来よりも低温、低酸素の条件で焼成されたY123酸化物超電導薄膜である。そして、左側が表面、右側が断面の2次電子像である。
図2より、従来よりも低温、低酸素の条件で焼成されたY123酸化物超電導薄膜の場合、従来の条件で焼成されたY123酸化物超電導薄膜に比べて、表面の微細な凹凸が減少して、より均質な膜が形成されていることが分かる。
次に、上記と同じ低温、低酸素の条件で、1min、3min、10min、20minと焼成時間を変化させて、Y123酸化物超電導薄膜を形成させ、得られた各Y123酸化物超電導薄膜について、ゼロ磁場(ZFC)下で80Kから徐々に温度を上昇させながら磁化率を測定して、各Y123酸化物超電導薄膜における磁化率の温度依存性を調査した。結果を図3に示す。なお、図3において、縦軸は磁化率(規格化)であり、横軸は温度(K)である。
図3より、低温、低酸素で焼成した場合、焼成時間を変えても磁化率の温度依存性は殆ど変わらず、臨界温度Tcに大きな差が見られないことが分かる。
併せて、77Kと40Kにおいて磁束密度を変化させながらその磁束密度下におけるJcを測定して、Jcの磁場依存性を調査した。調査結果を図4に示す。なお、図4において、縦軸はJc(A/cm)であり、横軸はμH(T)である。
図4より、低温、低酸素で焼成した場合、焼成時間に関わらず、Jcが向上することが分かる。
また、低温焼成を行ったY123酸化物超電導薄膜を断面TEM観測し、原料溶液中に添加された微量のClがBa2342結晶としてSTO基板とY123酸化物超電導薄膜との界面に配向体を作っていることを、図5に示す断面TEM像とBa2342結晶の電子線回折像により確認した。
次に、焼成条件をPO=10Pa、800℃、10minに固定して、塩素を含むピンニング中心の導入を狙いとして焼成を行った。その結果、焼成したいずれの試料でもc軸配向膜が得られ、またXRDの測定結果からCl添加した試料ではc軸配向したBa2342結晶のピークが鋭く表れており、Y123酸化物超電導結晶の配向を乱すことなく、Ba2342結晶が析出することを確認した。
図6にBa2342結晶とY123酸化物超電導結晶の結晶構造を示す。図6の左、中央はBa2342結晶の結晶構造を示す図であり、右がY123の結晶構造を示す図である。正方晶であるBa2342結晶の軸長はa=b=5.517Åであり、Y123酸化物超電導結晶のa=3.814Å、b=3.881Åと比較して格子不整が大きいが、中央の図に示すように、Cl−Cl間で作られる正方格子は一辺が3.90Åであり、Y123酸化物超電導結晶と非常によく一致している。このことが、配向の乱れが殆ど生じなかった理由と推測される。
次に、Cl無添加、Ba2342結晶が0.5%、1%のY123酸化物超電導薄膜を用いて、Cl添加Y123酸化物超電導薄膜におけるJcの磁場依存性について調査した。結果を図7に示す。なお、図7において、縦軸はJc(Acm−2)であり、横軸はμH(T)である。
図7より、Clを添加した場合、無添加に比べて77K、40Kともに磁場中でのJcが向上していることが分かる。これによりClを添加して形成されたB2342がピンニング中心として有効に寄与することが推測される。
次に、Ba2342結晶のピンニング力を評価するため、Ba2342結晶の(002)ピーク強度と最大ピンニング力密度Fとの関係を調べた。なお、40Kに場合は測定範囲ではピンニング力密度Fが最大値をとらないため、5Tでのピンニング力密度Fを採用した。調査結果を図8、図9に示す。図8は77Kにおける調査結果であり、図9は40Kにおける調査結果である。図8、図9において、縦軸はそれぞれ最大ピンニング力密度F(GNm−3)、5Tでのピンニング力密度F(GNm−3)であり、横軸はともにBa2342(002)ピーク強度(cps)である。
図8、図9より77K、40KともにBa2342(002)ピーク強度とピンニング力密度Fの間に正の相関が認められ、Ba2342(002)ピーク強度が大きい程、最大ピンニング力密度F、5Tでのピンニング力密度Fが大きくなることが分かる。
(2)実験2(Ba2342結晶のテンプレートとしての評価)
本実験においては、10×10mmサイズのSTO単結晶基板上にY123酸化物超電導結晶からなる膜厚〜0.33μm、3層構成のY123酸化物超電導薄膜を形成し、Y123酸化物超電導薄膜へのBa2342結晶からなるピンニング中心の導入を試みた。
図10に本実験の方法を示す。図10の左側の図は本実験の手順を示すフローであり、右側の図は3層積層させたY123酸化物超電導薄膜の構成を模式的に示す断面図である。原料溶液には、総カチオン濃度が1mol/Lの(Y、Ba、Cu)−acac溶液を用いた。スピンコートによるコーティングと仮焼を3回繰り返し実施した。原料溶液にはY:Ba:Cu:Cl=1:2+2x:3+3x:2x、x=0、0.008、0.017の3水準でHClを添加した原料溶液を用いた。
Cl添加によるTcへの影響を調べるため、作製した酸化物超電導薄膜をゼロ磁場下で80Kから徐々に温度を上昇させながら磁化率を測定し、磁化率の温度依存性を調べた。また、77Kと40Kにおいて各磁束密度下におけるJcを測定し、Jcの磁場依存性を調査した。それぞれの調査結果を図11と図12に示す。
図11において、縦軸は磁化率(規格化)であり、横軸は温度(K)である。そして、xは、Y:Ba:Cu:Cl=1:2+2x:3+3x:2xにおけるxである。図11より、Clを添加しない場合(x=0)に比べて、Clを添加しても磁化率の温度依存性に変化がなく、Tcが変化しないことが分かる。
図12において、縦軸は臨界電流密度Jc(Acm−2)であり、横軸は磁束密度(T)である。そして、xは、Y:Ba:Cu:Cl=1:2+2x:3+3x:2xにおけるxである。図12より、Clを添加しない場合(x=0)に比べて、Clを添加することにより、77Kと40Kのいずれの温度でもJcが高く、また磁束密度を5Tまで増大させても、いずれの磁束密度でも高いJcが得られることが分かる。
これは、Clを添加したことにより、Ba2342結晶からなる3次元テンプレートが形成されたため、良好なY123薄膜の2軸配向組織が維持されると共に、3次元テンプレートの界面がピンニング中心として機能しているためと推測される。
(3)実験3(厚膜の作製)
次に、図13に示す手順で、5層からなる厚み〜0.53μmの厚膜のY123酸化物超電導薄膜を形成した。図13の左側の図は本実験の手順を示すフローであり、右側の図は5層積層させた酸化物超電導薄膜の構成を模式的に示す断面図である。なお、仮焼と焼成とは1〜3層をコーティングした後と4および5層をコーティングした後の2回分けて行った(焼成時間は、1回目10min、2回目30minとした)。原料溶液のxをx=0、0.20の2水準とした。
作製した酸化物超電導薄膜を77Kと40Kにおいて各磁束密度下におけるJcを測定した。また、Jcに膜厚を掛けてIcを求めた。得られた結果からJcおよびIcの磁場依存性を調べた。調査結果をそれぞれ図14と図15に示す。
図14において、縦軸は臨界電流密度Jc(Acm−2)であり、横軸は磁束密度(T)である。図14よりx=0.17の3層薄膜に比べて、x=0.20の5層薄膜の方が40KにおいてJcが更に改善していることが分かった。
図15において縦軸は臨界電流値Ic(A/cm−1)であり、横軸はμH(T)である。図15より、x=0.17の3層薄膜に比べて、x=0.20の5層薄膜の方がIcが大きく向上していることが分かった。
(4)実験4(Hfの添加)
次に、原料溶液へのHf添加により、Y123酸化物超電導薄膜へのBaHfOナノ粒子の導入を試みた。具体的には、膜中の組成をY0.98BaCuHf(z=0〜0.1)とした3層からなるY123酸化物超電導薄膜を840℃で75min、PO=30Paの下で焼成した。
作製したY123酸化物超電導薄膜のc軸配向の良否を評価するため、Y123酸化物超電導薄膜の(005)のピーク強度を測定した、図16に測定結果を示す。図16において、縦軸は(005)のピーク強度(cps)であり、横軸はzの値である。図16より、Hf添加溶液を全ての層に適用した場合には(005)のピーク強度が低くc軸配向が著しく抑制されるが、一方、第1層にHfを含まないY123酸化物超電導層をseed layerとして導入した場合にはc軸配向が大きく向上することが分かる。
次に、Hf無添加のY123酸化物超電導薄膜と、第2層および第3層にHfを添加したY123酸化物超電導薄膜についての77kでの磁場中におけるJc測定、XRD測定を行った。図17にJc測定結果を示す。図17において、縦軸はJc(MAcm−2)であり、横軸はμH(T)である。図17より、第2層および第3層にHfをドープすることにより、磁場中におけるJcが大きく向上することが分かる。
図18に作製したY123酸化物超電導薄膜のXRDパターンを示す。図18において、縦軸は回折強度(cps)であり、横軸は2θ(deg)である。図18より、第2層および第3層Hfをドープした場合、BaHfO(110)の回折ピークが観察され、BaHfOが析出していることが確認された。また、焼成時間を3minのみとした実験を行ったところ、75minの焼成を行った場合と同様にJcが向上することが分かった。この結果は、焼成時間が3min以上の場合にはHf添加によるJc向上効果が焼成時間に依存しないことを意味している。
次に、3min焼成で得られたY123酸化物超電導薄膜をTEMを用いて観察した。図19に得られた明視画像を示す。(a)図は無添加のY123酸化物超電導薄膜、(b)図はHf添加Y123酸化物超電導薄膜の画像である。(b)図からHfを添加した場合は、○で囲った部分に大きさ20nm以下の析出物や、ab面と平行に白く筋状に見える多数の積層欠陥(重荷ダブルCuO鎖と思われる)が見られ、Hf添加により生じたこれらの析出物や積層欠陥がピンニング中心となり、磁場中でのJcの向上に寄与していると考えられる。
次に、原料溶液へのClとHfの共添加により、良好なc軸配向組織を有するY123酸化物超電導薄膜へのBaHfOナノ粒子の導入を試みた。具体的には、膜中の組成をY0.98BaCuHf0.007Cl0.05とした3層からなるY123酸化物超電導薄膜を800℃で10min、PO=10Paの下で焼成した。
ClとHfの共添加を行ったY123酸化物超電導薄膜についての40Kおよび77Kで磁場中におけるJc測定を行った。図20にJc測定結果を示す。図20において、縦軸はJc(MAcm−2)であり、横軸はμH(T)である。図20より、ClとHfの共添加により、磁場中におけるJcが大きく向上することが分かる。
以上、Clドープにより、Y123とコヒーレントに接合し、Y123母相の配向を乱さずに膜中に析出するBa2342結晶からなる新規なピンニング中心が形成され、これにより臨界温度Tcが低下せず、Jcが大きく改善することが確認された。また、Ba2342結晶は3次元テンプレートとして機能するため、Clドープには配向を促進させる効果があり、この効果を利用することにより、Jcを低下させずに5層厚膜(〜0.53μm)を作成することができた。
以上、上記実施例ではFF−MOD法を適用対象として採り上げたが、本発明は、FF−MOD法に限定されず、TFA−MOD法など他の方法を用いて作製されるRE123系酸化物超電導薄膜にも適用することが可能である。
酸化物超電導線材の用途は広く、量産化が現在進められている。本発明は、より低コスト、高生産性のRE123系酸化物超電導薄膜線材の開発を導くものである。
1 Ba2342結晶
1a 上面
1b 側面

Claims (8)

  1. 塗布熱分解法を用いて形成された酸化物超電導薄膜であって、
    表面に2軸配向している結晶配向組織を有する金属基板と、
    前記金属基板の表面に形成されて2軸配向している中間層と、
    前記中間層の表面に角柱状に形成されて、上面および側面が酸化物超電導薄膜の2軸配向成長をアシストする多数の析出物を有している3次元テンプレートと
    を備えている酸化物超電導薄膜用基体上に形成されている酸化物超電導薄膜。
  2. 前記酸化物超電導薄膜が、REBaCu7−X(RE:希土類元素)で表されるRE123系酸化物超電導体結晶を含んでいる請求項1に記載の酸化物超電導薄膜。
  3. 前記析出物が、BaCuClの結晶である請求項1または請求項2に記載の酸化物超電導薄膜。
  4. 塗布熱分解法を用いて酸化物超電導薄膜を形成する酸化物超電導薄膜の製造方法であって、
    表面に2軸配向している結晶配向組織を有する金属基板を準備する金属基板準備工程と、
    塩素が添加された酸化物超電導薄膜形成用の原料溶液を準備する原料溶液準備工程と
    を備え、
    前記金属基板の表面に、2軸配向している中間層を形成する中間層形成工程と、
    前記中間層上に前記原料溶液を塗布する原料溶液塗布工程と、
    塗布された前記原料溶液を加熱して、BaCuClの結晶を前記中間層の表面に角柱状にエピタキシャル成長させて、上面および側面が酸化物超電導薄膜の2軸配向成長をアシストする多数の析出物を析出させて3次元テンプレートを形成する3次元テンプレート形成工程と、
    酸化物超電導体の結晶化温度以上、BaCuClの蒸発温度未満の温度で焼成することにより、前記3次元テンプレートにアシストされて2軸配向した酸化物超電導薄膜を形成する酸化物超電導薄膜形成工程と
    をさらに備えている酸化物超電導薄膜の製造方法。
  5. 前記塩素が添加された酸化物超電導薄膜形成用の原料溶液に、さらに、Hfが共添加されている請求項4に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法。
  6. 前記塗布熱分解法が、FF−MOD法である請求項4または請求項5に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法。
  7. 請求項4に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法により製造された酸化物超電導薄膜。
  8. 表面に2軸配向している結晶配向組織を有する金属基板と、
    前記金属基板の表面に形成されて2軸配向している中間層と、
    前記中間層の表面に角柱状に形成されて、上面および側面が酸化物超電導薄膜の2軸配向成長をアシストする多数の析出物を有する3次元テンプレートと
    を備えた酸化物超電導薄膜用基体上に、
    塗布熱分解法を用いて形成された酸化物超電導薄膜を備えている酸化物超電導薄膜線材。
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