JP2015105541A - 防水シートの敷設方法及び防水シート - Google Patents

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Abstract

【課題】 作業者の熟練した技量のみに依存することなく、敷設時の皺を簡易に解消すると共に防水シートを所定の位置に簡易に確実に敷設することにより、防水シートの適正な敷設を容易に、かつ、安全に達成する。【解決手段】 防水シート10を構造物の躯体1に設置されたシート接合部材12に固定して敷設する防水シート10の敷設方法において、巻物状の防水シート10を設置箇所に転がして展開し、シート接合部材12の設置箇所毎に防水シート10をシート接合部材12に接合しながら敷設していく。防水シート10としては、60℃にて168時間加熱した場合における加熱収縮率が、0.1%以上のものを使用する。この場合、好ましくは、60℃にて168時間加熱した場合における加熱収縮率が、0.35%以下とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば、ビル等の構造物の屋上等に、シート接合部材を介して防水シートを敷設して防水構造を施工する防水シートの敷設方法及びそのような方法に使用することができる防水シートの改良に関し、特に、敷設時の皺を簡易に解消すると共に所定の位置に確実に敷設して、防水シートの適正な敷設を容易に実現することに関するものである。
例えば、オフィスビルや学校等の構造物の屋上等に防水施工する場合には、防水シートを下地となる構造物の躯体には直接は接着しないことにより、躯体の亀裂や振動、目地の挙動等の影響を受けることが少なく、地震等の際にも防水性を確保することができる、いわゆる絶縁工法(機械的固定工法)が採用されることがある。
この工法においては、表面に防水シートと同質の合成樹脂が被覆された鋼板等から成るシート接合部材を使用し、構造物の躯体のうち、端末には、例えば帯状の形状を有するシート接合部材を設置し、端末以外の箇所においては、例えばディスク状の形状を有するシート接合部材を所定のピッチで設置して、これらのシート接合部材を釘等の固定具で躯体に取付け、その後、これらのシート接合部材上から防水シートを敷設して、所要のシート接合部材に防水シートを溶着させて接合することにより、防水シートを、シート接合部材を介して構造物の躯体に固定する。
この場合、この防水シートのシート接合部材への溶着は、従来、防水シートを広げてシート接合部材が設置された箇所を含めて敷設箇所に全面的に敷設した後、ディスク状のシート接合部材上の防水シートに注射器の針を貫通させて防水シートの裏面とディスク状のシート接合部材の表面との間に溶剤を注入するか、又は、帯状の複数の防水シートを、その長手方向の両端を部分的に重畳させて敷設した後、防水シートと躯体との間に刷毛ブラシを挿入し、ディスク状のシート接合部材に溶剤を塗布して、防水シートをシート接合部材に溶着していた(例えば、特許文献1〜3等参照)。
しかし、これらの従来の方法では、防水シートを転がして展開する際に、作業者に熟練した技術がないと、防水シートに皺が生じたまま、敷設されてしまう問題があった。特に、防水シートは、所定の箇所でシート接合部材に溶着等により固定され、当該シート接合部材に接着された箇所は変位することができないため、溶着後において皺を解消することは非常に困難であり、慎重で丁寧な作業が求められる結果、作業効率が低下して結果的に、施工に日数を要する問題も生じうる。
このため、本発明者は、構造物の躯体に設置されたシート接合部材に固定して構造物に敷設される防水シートであって、80℃にて168時間(7日間)加熱した場合において0.62%以上の加熱収縮率を有することを特徴とする防水シートを提案した(特願2013−029131号)。これは、真夏の屋根に敷設した防水シート10の温度は、直射日光に照らされて、80℃程度まで上昇するため、仮に真冬の0℃で敷設した場合には、敷設時と最高温度との温度差は最大で約80℃となることから、80℃にて加熱した場合における加熱収縮率、即ち、加熱により収縮する割合を問題としたものである。これにより、80℃にて0.62%以上の加熱収縮率を有すれば、多少の皺が生じた状態で防水シートを敷設しても、敷設後の時間の経過による温度の上昇、即ち、加熱により、防水シートが縮んで自然に皺が解消されるため、作業者の熟練した技量のみに頼ることなく、非常に簡易に皺を解消させることができ、防水シートを適切に敷設することを簡易に実現することができる。
この場合、防水シートを、構造物の躯体上に敷設された断熱材を介して構造物に固定されたシート接合部材に接合して敷設する場合には、上述したように、真夏において防水シートの温度は約80℃前後まで上昇するが、防水シートを、断熱材を介することなく、コンクリート等の構造物の躯体上に直接固定されたシート接合部材に接合して敷設する場合、即ち、構造物が非断熱仕様である場合には、後述するように、約60℃前後までしか上昇しないことが判明した。このため、非断熱仕様の構造物に適用する場合には、60℃の加熱下において、適切に皺が解消される加熱収縮率を問題とする必要が生ずる。更に、断熱仕様の構造物においても、防水シートの温度が約80℃程度まで上昇する夏場を待つまでもなく、より早期に皺を解消するためには、それよりも低い温度にて皺を解消できることが望ましい。
また、皺の防止のみならず、防水シートを適正な所定の位置に転がして展開することも熟練した作業者でないと必ずしも容易ではなく、作業者によっては、所定の方向とずれた方向に展開したり、あるいは、防水シートが蛇行したりした状態で敷設してしまうこともあった。これらの修正には、防水シートの巻き戻し等、非常に手間が掛かる作業を要するため、同様に作業効率の側面からは望ましくない事態であった。
一方で、作業効率や作業時間の短縮を求めるあまり、安全性の確保に怠りが生じることは絶対に避けなければならず、特に、防水シートは、屋上等の比較的高所に敷設されるものであるため、落下に対する配慮は、充分に行う必要がある。
特公昭58−036705号公報 特開平8−246609号公報 特開平11−200563号公報
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、作業者の熟練した技量のみに依存することなく、敷設時の皺を簡易に解消すると共に防水シートを所定の位置に簡易に確実に敷設することにより、防水シートの適正な敷設を容易に、かつ、安全に達成することができる防水シートの敷設方法及びそのような方法に使用することができる防水シートを提供することにある。
(1.防水シートの敷設方法)
本発明は、上記の課題を解決するための第1の手段として、防水シートを構造物の躯体上に設置されたシート接合部材に固定して敷設する防水シートの敷設方法において、防水シートとして60℃にて168時間加熱した場合における加熱収縮率が0.1%以上の防水シートを使用し、巻物状の防水シートを設置箇所に転がして展開し、シート接合部材の設置箇所毎に防水シートをシート接合部材に接合しながら敷設していくことを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
また、本発明は、上記の課題を解決するための第2の手段として、上記第1の解決手段において、防水シートとして60℃で168時間加熱した場合における加熱収縮率が0.35%以下の防水シートを使用することを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2のいずれかの解決手段において、防水シートを、押出成形によりシート状に加工することを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第4の手段として、上記第1乃至第3のいずれかの解決手段において、防水シートを、断熱材を介することなく、構造物の躯体上に直接固定されたシート接合部材に接合して敷設することを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第5の手段として、上記第1乃至第4のいずれかの解決手段において、防水シートを敷設すべき箇所に対応したガイドラインを設置し、防水シートをガイドラインに合わせて転がして展開することを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第6の手段として、上記第1乃至第5のいずれかの解決手段において、防水シートとして、長辺の端面が直線性を有するものを使用することを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第7の手段として、上記第1乃至第6のいずれかの解決手段において、防水シートを、表面に防水シートと同質の合成樹脂が被覆されたシート接合部材に溶剤により溶着して、シート接合部材に接合して固定する場合において、溶剤を、シート接合部材の表面のみならず、防水シートのうちシート接合部材に重なる部分にも塗布して溶着することを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第8の手段として、上記第1乃至第7のいずれかの解決手段において、防水シートを敷設すべき箇所の終端から手前の所定の位置に、落下防止用の目印を設置することを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
(2.防水シート)
また、本発明は、上記第1乃至第8のいずれかの解決手段において使用することができる下記の防水シートをも提供するものである。即ち、本発明は、上記の課題を解決するための第9の手段として、構造物の躯体上に設置されたシート接合部材に固定して構造物に敷設される防水シートであって、60℃にて168時間加熱した場合において0.1%以上の加熱収縮率を有することを特徴とする防水シートを提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第10の手段として、上記第9の解決手段において、60℃で168時間加熱した場合において0.35%以下の加熱収縮率を有することを特徴とする防水シートを提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第11の手段として、上記第9又は第10のいずれかの解決手段において、押出成形によりシート状に加工されていることを特徴とする防水シートを提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第12の手段として、上記第9乃至第11のいずれかの解決手段において、長辺の端面が直線性を有することを特徴とする防水シートを提供するものである。
本発明によれば、上記のように、防水シートとして、60℃において168時間加熱した場合における加熱収縮率が0.1%以上の防水シート、即ち、加熱により収縮する(縮む)防水シートであって、かつ、その収縮の割合、即ち60℃において168時間加熱した場合における加熱収縮率が0.1%以上のものを使用しているため、後述する実施例からも解るように、防水シートは、断熱材を介することなく、コンクリート等の構造物の躯体上に直接固定されたシート接合部材に接合して敷設する場合、即ち、構造物が非断熱仕様である場合には、屋上等において、特に直射日光を浴びて夏場は60℃程度まで温度が上昇することから、多少の皺が生じた状態で防水シートを敷設しても、敷設後の時間の経過による温度の上昇、即ち、加熱により、防水シートが縮んで自然に皺が解消されるため、作業者の熟練した技量のみに頼ることなく、非常に簡易に皺を解消させることができ、防水シートを適切に敷設することを簡易に実現することができると共に、作業効率を大幅に向上させることができる実益がある。加えて、60℃程度の温度で自然に皺を解消することができるため、夏場において防水シートの温度が約80℃程度にまで上昇する断熱仕様の構造物においても、夏場を待つまでもなく、より早期に皺を解消することができる実益がある。
一方で、本発明によれば、上記のように、上限値として、60℃において168時間加熱した場合における加熱収縮率が最大でも0.35%以下の防水シートを使用しているため、あまりに大きな皺が発生した状態で敷設されることなく、施工時における外観も、ある程度良好に維持して、引き渡しや検査時における視認にも充分に耐えることができると共に、防水シートが必要以上に収縮して、シートの収縮によって発生した引っ張り応力が躯体の端末の入隅部に集中して、端末に設置された帯状等のシート接合部材が構造物の躯体から浮いたり、外れたりすることがなく、適切に防水シートを敷設することができる実益がある。
また、本発明によれば、上記のように、例えば、墨出し等により、防水シートを敷設すべき箇所に対応したガイドラインを設置し、防水シートを、このガイドラインに合わせて転がして展開しているため、防水シートを所定の位置に適切に敷設することができる実益がある。
更に、本発明は、上記のように、防水シートとして、長辺の端面が直線性を有するものを使用しているため、適正な位置において防水シートを所定の直線状に設置することができるため、防水シートが所定の位置からずれたり、蛇行や湾曲したりして配置されることを防止することができる実益がある。
同様に、本発明によれば、上記のように、シート接合部材に接合して固定する場合において、溶剤を、シート接合部材の表面のみならず、防水シートのうちシート接合部材に重なる部分にも塗布して溶着しているため、シート接合部材のみに溶着を塗布した場合に比べ、溶剤の接着性が高まり、防水シートをシート接合部材に強固に固定することができる実益がある。
加えて、本発明によれば、上記のように、防水シートを敷設すべき箇所の終端から手前の所定の位置に、例えば、ポール等の落下防止用の目印を設置しているため、特に、巻物状の防水シートの転がし展開やシート接合部材への溶着等の作業に際しては、敷設終端に対して後ろ向きで作業することが多いので、この目印により、構造物の躯体の端末までの距離を把握することができ、高所であっても落下を防止して作業者の安全を確保することができる実益がある。
本発明の防水シートの敷設方法において溶剤を使用する実施の形態を実施する状態の平面図である。 本発明の防水シートの敷設方法において高周波を使用する実施の形態を実施する状態の平面図である。 本発明の防水シートの敷設方法の他の実施の形態の平面図である。 防水シートの1年間における月別最高温度を示す図である。 本発明の防水シートの実施例及び比較例の60℃における加熱収縮率を示す図である。 本発明の防水シートの実施例の60℃及び65℃における加熱収縮率を示す図である。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の防水シート10の敷設方法を実施する状態を示し、この防水シート10の敷設方法は、防水シート10を構造物の躯体1に設置されたシート接合部材12に固定して敷設するものである。即ち、防水シート10を、躯体1に直に固定することなく、シート接合部材12を介して固定することにより、躯体1の亀裂や振動、目地の挙動等の影響を受けることが少ない敷設方法である。
この防水シート10が敷設される構造物としては、例えば、オフィスビルや学校の校舎等の事業用の建造物やマンション等の居住用の建造物の屋根やベランダ、バルコニー等を挙げることができる。本発明は、これらの防水性が要求される構造物に適用することができる。
但し、本発明の防水シート10及びその敷設方法は、断熱材を介することなく、コンクリート等の構造物の躯体1上に直接固定されたシート接合部材12に接合して敷設する場合、即ち、非断熱仕様である構造物に、特に適している。後述するように、このような非断熱仕様の構造物の躯体1上に敷設される防水シート10の直射日光等による温度上昇を考慮して、その温度に適した構造としているためである。もっとも、必ずしも、非断熱仕様である構造物のみに限定されるものではなく、後述するように、夏場において防水シートの温度が約80℃程度にまで上昇する断熱仕様の構造物においても、それよりも低い温度にて自然に皺を解消することができるため、夏場を待つまでもなく、より早期に皺を解消することができる点において、適用する実益はある。
この場合、構造物の躯体1としては、オートクレーブ養生した軽量気泡コンクリート(autoclaved lightweight aerated concrete、以下、「ALC」と略称する。)、即ち、高温高圧多湿養生を意味するオートクレーブ状態で製造管理された軽量気泡コンクリートを使用することができる。このものは、「JIS A 5416」において「軽量気泡コンクリートパネル」として製造及び管理方法が規定されている工業化製品であって、建築現場で作られる軽量気泡コンクリートとは違い、主に設備の整った工場で製造され、建築物の外壁の部品であるALCパネルとして、出荷される。
(1.シート接合部材)
この場合、まず、図1に示すように、構造物の屋上等の躯体1に、端末(縁部)においては、帯状のシート接合部材12Aを設置し、端末以外の箇所には、ディスク状のシート接合部材12Bを、所定のピッチで設置する。この場合、これらのシート接合部材12は、図示しない釘やボルト等の固定具により、躯体1に固定して取り付けられる。
なお、躯体1の端末以外の箇所に設置されるディスク状のシート接合部材12Bは、図1及び図2に示すように、防水シート10の横手方向において各々2つのシート接合部材12Bを平行に配置し、これを防水シート10の展開方向(長手方向)に複数列設置して配置することができる。但し、この形態に限定されるものではなく、図3に示すように、ディスク状のシート接合部材12Bを、防水シート10の横手方向において平行にではなく、互い違いに配列して千鳥状に配置することもできる。もっとも、ディスク状のシート接合部材12Bは、図1乃至図3に示すように、防水シート10の重畳部分10A以外の箇所に配置するように設定することが必要である。
これらのシート接合部材12は、その形状や大きさに特に限定はなく、その設置箇所に適合させて任意の形状や大きさとすることができる。例えば、図1に示すように、躯体1の端末に設置する場合には略L字形状や帯型等の板状の形状に形成し、また、躯体1の端末を除いた箇所に設置する場合には円形等を有するディスク状の形状に形成して躯体1上に点在させて設置することができる。
また、これらのシート接合部材12は、その表面において、防水シート10と接合されるため、後述する溶剤や高周波によって防水シート10と溶着することができるように形成する。即ち、シート接合部材12は、防水シート10と溶着することができる態様、具体的には、合成樹脂板や、鋼板を芯材としてその表面に合成樹脂を被覆した合成樹脂被覆鋼板等から形成することができる。この鋼板としては、例えば、その耐食性等を考慮して、ステンレス等を挙げることができる。
一方、このシート接合部材12やその表面の被覆材に使用する合成樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等の軟質の合成樹脂や、合成ゴム系の材質を選択することができるが、その中でも、特に、ポリ塩化ビニル樹脂は、溶剤溶着性や熱融着性に優れるため好適である。なお、このシート接合部材12は、合成樹脂被覆鋼板から形成する場合には、プレス成型加工機等によりプレス加工して形成することができ、合成樹脂板として形成する場合には射出成形等の適宜の樹脂加工方法により形成することができる。
(2.防水シートの敷設)
上記のようにして、シート接合部材12を躯体1上に設置した後、巻物状に巻き取られた防水シート10を、図1に示すように、設置箇所に転がして展開していく。このため、未だ、敷設されていない残余の防水シート10が風に煽られることがなく、強風下でも敷き詰め作業を行うことができる。この場合、防水シート10は、一般に、図1に示すように、長尺の帯状に形成されているが、設置箇所に合わせて複数用意し、これらの複数の防水シート10を、長手方向の端部の部分的に重畳させながら敷き詰めて、防水性を確保する。なお、これらの複数の防水シート10の重畳部分10Aは、図示しない熱溶着機等により、敷設後に、あるいは、敷設と同時並行で、相互に溶着することができる。
この防止シート10の転がしによる展開に際しては、最も端末に近い1列目の防水シート10(図1及び図2の最上部の防水シート10)から敷設することもできるが、防水シート10への周囲からのアクセス及び作業箇所を確保するため、また、端末への防水施工を仕上げとして行うため、躯体1の端末側から2列目の防水シート10から敷設していくことが好ましい。その際、最も端末に近い防水シート10と異なり、敷設の目安が解りにくくなるため、本発明においては、図3に示すように、予め防水シート10を敷設すべき箇所に対応したガイドライン14を設置する。これにより、同時に、最も端末(壁面)に近い1列目の防水シート10から、当該防水シート10を端末(壁面)に沿って敷設した場合に、防水シート10を沿わせるべき端末自体が直線性を有していなかった場合には、防水シート10の直進性も確保することができなくなるため、このような端末の直線性の精度に影響を受けることなく、防水シート10の直進性を確実に確保することができるメリットも生じる。
このガイドライン14としては、敷設の際に案内となれば、特に限定はないが、墨出しや糸や紐等の線状部材の設置をもってガイドライン14とすることができる。この場合、端末の壁面から床面にかけての防水仕上げ箇所を確保するため、また、防水シート10の重畳部分10Aの幅(50mm)も考慮して、躯体1の端末に設置された略L字形状や帯型等の板状のシート接合部材12Aの入隅角から防水シート10のシート幅−30mm内側の位置にガイドライン14を設置する。例えば、幅1260mmmの防水シートを敷設する場合には、入隅角から1230mmの位置にガイドライン14を設置する。
その上で、まず、巻物状の防水シート10を1〜2m程巻き出して、防水シート10の長手方向(長辺)の端面がガイドラインに沿うように合わせ、また、防水シート10の直進性を確認した上で、このガイドライン14に沿って転がして展開していく。これにより、防水シート10を所定の位置に適切に敷設することができる。なお、防水シート10の長手方向の端面がガイドライン14からずれた場合には、巻物状の防水シート10の両端を持ち上げて方向を修正する。防水シート10の片側のみを持ち上げて補正すると、皺が発生する原因となるからである。
なお、2つ目以降の防水シート10の敷設に際しては、既に敷設された隣接する防水シート10上に、50mm以上のラップライン(重畳部分10とすべき部分)を設けて、これをガイドライン14として、敷設作業を行っていく。
また、この場合、特に、各1枚の防水シート10の全てを巻き出して、敷設箇所に全面的に敷き詰めた後に、防水シート10をシート接合部材12に接合するのではなく、シート接合部材12の設置箇所毎に防水シート10をシート接合部材12に接合しながら、防水シート10を転がして展開し、敷設していくことが望ましい。即ち、防水シート10の敷設作業と、シート接合部材12Bへの溶着作業を同時並行で行う。
このため、まず、作業の工程数は勿論のこと、防水シート10の敷き詰めを待つことなく溶着作業を行うことができるため、作業時間を短縮することができると共に、防水シート10を転がして展開する作業及び溶着作業の作業員だけで作業することができるため、2〜3人で作業することもでき、作業人員をも低減して、効率良く防水シート10を敷設することができる。
同時に、防水シート10のうちシート接合部材12B上に敷設された箇所においては、図1に示すように、既に防水シート10がシート接合部材12に固定されており、防水シート10が自由状態で敷設されている箇所がないので、防水シート10が捲れたり舞い上がったりすることがなく、強風下でも適切に効率良く敷設作業を行うことができる。
(3.防水シートの構成)
この敷設すべき防水シート10の材質については、防水性を有する樹脂製のシートであれば特に限定なく使用することができ、上述したシート接合部材12の表面と同じく、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等の軟質の合成樹脂や、合成ゴム系の材料などから形成されたものを使用することができるが、その中でも、特に、ポリ塩化ビニル樹脂が、溶剤溶着性や熱融着性に優れるため好適であり、シート接合部材12の表面と同じ材質のものを使用することが望ましい。
本発明においては、この防水シート10として、60℃にて168時間加熱した場合における加熱収縮率が0.1%以上の防水シート10を使用する。即ち、本発明においては、加熱されることにより、収縮、即ち、縮む防水シートを使用し、かつ、その縮む割合、即ち、加熱収縮率の下限が、60℃にて168時間加熱した場合において0.1%以上の防水シート10を使用するものである。
これは、後述する実施例からも解るように、防水シート10は、屋上等の特に直射日光を浴びて温度が上昇する箇所に敷設されることから、多少の皺が生じた状態で防水シート10が敷設されても、60℃にて168時間加熱した場合における加熱収縮率が0.1%以上の、即ち、1/1000単位の割合で収縮する防水シート10であれば、敷設後の時間の経過による温度の上昇、即ち、加熱により、防水シート10が縮んで、特に何らの修正作業をするまでもなく自然に皺が解消されるからである。このため、本発明の防水シート10を使用すれば、作業者の熟練した技量のみに頼ることなく、非常に簡易に皺を解消させることができ、防水シート10を適切に敷設することを簡易に実現することができると共に、作業効率を大幅に向上させることができ、特に、いわゆる熟練した職人ではなくても、適切な敷設作業を行うことを可能とせしめる点で有益である。
この場合、60℃における加熱収縮率を問題とするのは、図4に示すように、構造物の躯体1上に敷設した防水シート10の表面の温度を1年間にわたって毎月測定し、月別の最高温度を確認した結果に基づくものである。即ち、図4に示すように、構造物の躯体1(具体的には、ALCの下地)上に敷設された図示しない断熱材を介して構造物に固定されたシート接合部材12に接合して敷設された防水シート10の場合(断熱仕様の構造物の場合)には、7月において83℃程度まで上昇したが、対して、断熱材を介することなく、構造物の躯体1(同じく、ALCの下地)上に直接固定されたシート接合部材12に接合して敷設された防水シート10の場合(非断熱仕様である構造物の場合)には、60℃程度までしか、防水シート10の温度が上昇しなかった。このため、非断熱仕様の構造物に防水シート10を敷設する場合には、この60℃における加熱収縮率を適切な値とすれば、真夏を経過する頃には皺が解消されると考えられる。
一方で、夏場において防水シートの温度が約80℃程度にまで上昇する断熱仕様の構造物においても、60℃にて自然に皺を解消することができれば、夏場を待つまでもなく、より早期に皺を解消することができる。具体的には、図4に示すように、断熱仕様の構造物において、例えば、防水シート10を2月に敷設した場合であっても、80℃を超える7月まで待つことなく、約2ヶ月以後の4月には60℃に達するため、より早期に皺を解消することができ、監査等を受ける準備も早期に整えることができる。
このような、防水シート10は、押出成形によりシート状に加工することにより形成することができる。具体的には、防水シート10を、ポリ塩化ビニル樹脂等の原料を溶融してゴム状に加工した上で、これを引っ張りながら、一定間隔で配置された図示しない複数のロール間に通して、所定の設定された厚みにコントロールしながらシート状とした後、冷却させて成形する。この際に、防水シート10は、引っ張られながら冷却して成形されるため、引っ張り時に防水シート10に加わった応力が、成型品としての防水シート10に歪みとして残存しており、この防水シート10を再加熱した場合(直射日光等に曝した場合)に、その引っ張られていた歪みが縮む方向に解放されるため、防水シート10が自然に収縮する。
そして、本発明においては、その収縮する割合、即ち、加熱収縮率が0.1%となるように、即ち、成形時の引っ張り応力が歪みとして防水シート10に残留するように引っ張り強度や速度、また、冷却温度に設定する。このように、0.1%以上の加熱収縮率とするのは、一つには、防水シート10に皺が生じた場合に、その状態を検証したところ、局部的に0.1%程度の長さの差が発生すると皺になることが判明したことから、逆に、0.1%以上の加熱収縮率として収縮させれば、当該長さの差が解消されて皺が消滅すると考えられたからである。また、この考察を元に加熱収縮率と皺の解消とを実証したところ、後述する実施例に示すように、実際に、0.1%未満(1/10000オーダー)の加熱収縮率の防水シートでは皺を解消することができなかった一方、0.1%以上(1/1000オーダー〜1/100オーダー)の加熱収縮率の防水シート10であれば、日数の経過と共に、皺が解消することが確認できたからである。
一方、この防水シート10の60℃にて168時間加熱した場合における加熱収縮率の上限値については、好ましくは、0.35%、より望ましくは、0.2%以下とすることが望ましい。これは、上述したように、局部的に0.1%以上の長さの差が発生すると皺になることが判明しているが、この場合、防水施工完了時において、0.35%以下の長さの差による皺が残存している状態だと、加熱収縮率の調整により皺を自然に解消はすることができ、外観的にも良好であり、検査時や引き渡し時における視認上でも良好である。従って、現実的には、施工時においても、最大でも、0.35%、より好ましくは、見た目に大きな影響を与えない0.2%以下の長さの差による皺の発生にとどめるべきであり、それ以上の長さの差により生ずる皺は、もはや防水シート10の加熱収縮による補正を待つまでもなく、施工現場において直ちに修正すべきであって、そのような大きな皺の解消については必ずしも加熱収縮率による皺の解消を考慮する必要がないからである。また、加熱収縮率が0.35%以下であると、防水シート10が必要以上に収縮しないため、防水シート10の収縮によって発生した引っ張り応力が、躯体1の端末の入隅部に集中して、端末に設置された帯状等のシート接合部材12Aが構造物の躯体1から浮いたり、外れたりするおそれがないからである。
また、本発明においては、防水シート10として、長辺(長手方向)の端面が直線性を有するものを使用する。これは、防水シート10が直線性を有すると、適正な位置において防水シート10を所定の直線状に設置することができるため、防水シート10が所定の位置からずれたり、蛇行や湾曲したりして配置されることを防止するためである。
ここに、「直線性」とは、長さ10mの防水シート10の長手方向の両端(始端及び終端)を直線状に結んだ紐を基準として、防水シート10の長手方向(長辺)の側面が、この基準である紐から最大に離れた位置での距離が15mm以内であること、好ましくは、10mm以内であることをいう。これは、成形時においては設定された所定の形状に加工された防水シート10であっても、その後の巻き取りや、保存、運搬時等において、外部的な機械的又は熱的な力が加わった結果、歪みが生じて変形することがあることから、そのような防水シート10を排除するためである。一方で、この範囲内の変形であれば、敷設に際して大きな影響はないからである。なお、運搬や保存時において、巻物状の防水シート10を重ねて積載すると変形し、転がして展開した場合に巻き皺が残る場合があるため、例えば、巻き芯を使用する等して充分に配慮することが必要である。以上の防水シート10のシート接合部材12への固定方法に、特に限定はないが、次のように、一般に用いられる溶剤による溶着や、高周波による熱溶着を挙げることができる。
(4.溶剤による溶着)
上記の本発明の方法において、まず、溶剤により防水シート10をシート接合部材12に接合する実施の形態について図1を参照しながら説明すると、図1及び図3に示すように、まず、巻物状の防水シート10の一端を一部巻き出して、防水シート10の長辺端部(長手方向の端面)をガイドライン14に沿うように合わせる。また、防水シート10の直進性・通りを確認する。
次いで、防水シート10に皺が生じないように、ある程度のテンションを掛けながら、引っ張るようにして防水シート10を転がして展開していく。この場合、図1に示すように、防水シート10を、躯体1の端末を除いた箇所に設置されたディスク状のシート接合部材12Bの手前まで転がして展開した段階で、一時転がしを停止する。その上で、巻物状の防水シート10と躯体1との間に、図示しない刷毛ブラシを挿入するようにして差し込んで、シート接合部材12Bの表面のみならず、本発明においては防水シート10のうちシート接合部材12Bに重なる部分にも溶剤を塗布した後、直ちに再び防水シート10を溶剤が塗布されたシート接合部材12B上を素早く転がして通過させる。即ち、本発明においては、溶剤をシート接合部材12Bと防水シート10の2面に塗布する。
これは、シート接合部材12Bに溶剤を塗布した後、できる限り速やかに防水シート10を、当該シート接合部材12B上を転がして通過させることが望ましいが、溶剤による溶着強度が低下しないよう、どんなに遅くとも溶剤の成分が揮発しないうちに防水シート10をシート接合部材12B上を通過させることが必要となるところ、特に、夏場においては熱くなったシート接合部材12Bに溶剤を塗布するため、溶剤の乾燥が早く、接着強度が不足するおそれがあるためである。
また、図1及び図2に示す実施の形態のように、防水シート10の横手方向において各々2つのシート接合部材12Bを平行に配置した場合には、2つのシート接合部材12B上を同時に防水シート10を転がして展開する必要が生じるが、一方のシート接合部材12Bに溶剤を塗布してから、他方のシート接合部材12Bへの溶剤の塗布が完了するまでの間にタイムラグがあるため、同様に、接着強度が不足するそれがあるからである。
この場合、このタイムラグを解消するためには、図3に示すように、ディスク状のシート接合部材12を防水シート10の進行方向においてずらして千鳥状に配置することが望ましい。このように千鳥状に配置すると、個別のディスク状のシート接合部材12B毎に溶剤による溶着作業を行うことができるため、他のシート接合部材12Bへの溶剤の塗布作業の終了を待つ必要がなく、溶剤塗布後溶着までのタイムラグが解消され、かつ、作業工数にも変わりがなく効率も維持することができるからである。その上で、上述した溶剤の2面塗布を行うことにより接着強度を高めることができる。
更に、このようにして、シート接合部材12B上を通過させて防水シート10をシート接合部材12B上に敷設した直後に、防水シート10の上からディスク状のシート接合部材12Bを、作業員の手等によって押圧して、防水シート10をシート接合部材12Bに強固に固定する。
この手押し作業も、防水シート10をシート接合部材12B上を通過させた後、できる限り速やかに、かつ、少なくとも5秒以上は行うことが望ましいが、同様に、溶剤による溶着強度が低下しないよう、どんなに遅くとも溶剤の成分が揮発しないうちに押圧することが必要となる。
この場合、防水シート10の横手方向において近接して平行に配置された2つのシート接合部材12B間の防水シート10については、防水シート10が固定された箇所の距離が近く収縮しにくいため溶着後に皺を解消する必要が生じないよう、手で皺を押し出すように伸ばしながら防水シート10を敷設する。一方、防水シート10の長手方向におけるシート接合部材12B間については、上記のように、皺が生じないようにテンションを掛けながら引っ張るようにして転がすだけで、特に、手で防水シート10を押し伸ばす作業までする必要はない。これらの作業により、通常は、防水シート10に皺が発生することを防止できるが、皺が生じた場合であっても、上述したように、設置後の日数経過によって、防水シート10が収縮して皺が自然に解消される。
なお、転がしによる展開時に防水シート10が大きく蛇行し、防水シート10の重畳分10Aにおいて、大きな波打ち(浮き上がり)が生じ、重畳部分10Aを溶着することが困難となるような皺が生じた場合には、防水シート10を皺の発生箇所にまで巻き戻した上で、改めて当該箇所から作業を再開する。
以降、この作業を繰り返し行い、躯体1の始端の端末とは反対側の端末に設置された帯状のシート接合部材12Aに辿り着くまで、防水シート10を転がして展開し、最後に、防水シート10の両端(始端及び終端)を当該端末のシート接合部材12Aに溶着する。その際、防水シート10を敷設すべき箇所の終端から手前の所定の位置に、例えば、終端から1m〜2m程度手前の位置に、例えばポール等の図示しない落下防止用の目印を設置することが望ましい。
防水シート10の敷設作業は、防水シート10の進行方向側にいて防水シート10を転がすと共に溶剤を塗布する作業を行う作業者と、防水シート10の進行方向とは反対側にいてシート接合部材12Bを押さえて溶着作業を行う作業者の2人一組で行うことが効率の面からしても望ましいが、特に、前者の作業者は、敷設終端に対して後ろ向きで作業することが多いので、この目印により、構造物の躯体1の端末までの距離を把握することができ、高所であっても落下を防止して作業者の安全を確保することができる。
防水シート10の転がしによる展開作業は、この目印に達した時点で停止し、以降終端の入隅部にまで届く程度の長さを確保して防水シート10をカットして、防水シート10の終端を端末のシート接合部材12Aに溶着する。これらの作業を、図1に示すように、列毎に繰り返し行い、躯体1上の設置箇所全てに防水シート10を敷設していき、作業が完了する。
(5.高周波による熱溶着)
次に、高周波により防水シート10をシート接合部材12に熱溶着させる実施の形態について図2を参照しながら説明すると、図2に示すように、図1に示す溶剤の場合の実施の形態と同様、図2及び図3に示すように、まず、巻物状の防水シート10の一端を一部巻き出して、防水シート10の長辺端部(長手方向の端面)をガイドライン14に沿うように合わせる。また、防水シート10の直進性・通りを確認する。
次いで、防水シート10に皺が生じないように、ある程度のテンションを掛けながら、引っ張るようにして防水シート10を転がして展開していく。この場合、図2に示すように、高周波溶着の場合には、図1と異なり、防水シート10を、躯体1の端末を除いた箇所に設置されたディスク状のシート接合部材12B上を転がして通過させることによりシート接合部材12B上に防水シート10を敷設する。
但し、一方で、図2に示すように、防水シート10をシート接合部材12上を転がして通過させた後、防水シート10の転がしを一時停止する。また、この場合には、できるだけ風の影響を回避するため、図2に示すように、少なくとも、次のシート接合部材12Bの設置箇所まで防水シート10を展開させることなく、防水シート10の転がしを一時停止することが望ましい。
その後、この図2に示す状態で、防水シート10の上からシート接合部材12Bに高周波を当てて、防水シート10をシート接合部材12Bに熱溶着して固定する。この高周波による熱溶着の方法には、特に限定はないが、例えば、図示しない高周波融着機の高周波ヘッドを防水シート10の上からシート接合部材12Bに押し当てて、防水シート10をシート接合部材12Bに熱溶着することができる。
以降は、溶剤による溶着の場合と同様に、この作業を繰り返し行い、躯体1の始端の端末とは反対側の端末に設置された帯状のシート接合部材12Aに辿り着くまで、防水シート10を転がして展開し、最後に、防水シート10の両端(始端及び終端)を当該端末のシート接合部材12Aに溶着する。この作業を、図1に示すように、列毎に繰り返し行い、躯体1上の設置箇所全てに敷設していき、作業が完了する。
なお、巻物状の防水シート10は、必ずしも、図1及び図2に示す列毎に用意する必要はなく、1つの巻物状の防水シート10を転がして展開して、列毎に敷設し終わる毎に切断して使用することができる。
また、この防水シート10とシート接合部材12との接合は、必ずしも、上記の溶剤又は高周波によるものに限定されるものではなく、必要に応じて、他の加熱手段により合成樹脂を溶融させて融着する熱融着の方法や接着剤を用いて接着する方法も採用することもできる。
次に、上述した加熱収縮率を満たす防水シート10であれば、日数の経過により自然に皺を解消することができるかを確認した本発明の実施例について、比較例と参照しながら説明する。
まずは、本発明の実施例として、60℃にて168時間加熱した場合における加熱収縮率が0.1%以上となるように調整された防水シート10を設定した。この実施例の防水シート10は、押出成形により厚み2.0mmのシート状に加工されたものである。
一方、比較例として、60℃にて168時間加熱した場合における加熱収縮率が0.1%に満たない防水シートを用意した。なお、これらの比較例1、2は、いずれも、厚みは本発明の実施例と同じく2.0mmであるが、構造的には、ポリエステルやガラス繊維の基布に樹脂を張り合わせて形成されたラミネートタイプ(複合タイプ)の防水シートであった。
これらの本発明の実施例及び比較例1、2について、加熱下における時間の経過による長さの変化を確認するため、初期の(敷設時の)防水シートの長さに対する所定時間加熱後の防水シートの長さの変化割合、即ち、加熱後の変化の割合を「所定時間加熱後の防水シートの長さ/初期の(敷設時の)防水シートの長さ」として算出した。この場合、この加熱による変化の割合の評価については、防水シートに関する「JIS A 6008」の加熱伸縮性状に関する項目に準拠して行った。
具体的には、本発明の実施例及び比較例の試験片の長さを中央部で0.1mm単位で測定した後、加熱下で168時間(7日間)水平に設置し、一日毎に長さを同一箇所で測定し、最初の長さに対する伸縮量(mm)を算出した。
これらの実施例及び比較例について、60℃にて加熱した場合おける伸縮割合(所定時間加熱後の防水シートの長さ/初期の(敷設時の)防水シートの長さ)を調べた結果を図5に示す。その結果、168時間(7日後)における伸縮率が−0.11%(収縮率としては0.11)以上を示した本発明の実施例については皺が解消したが、168時間(7日後)における伸縮率が−0.03%〜−0.04%だった比較例、即ち、1/10000単位の伸縮率しか示さなかった比較例では、実験終了の最後まで皺が解消することなく残存した。これは、収縮の割合が、1/10000単位の防水シートでは、殆ど収縮することができず、収縮量が小さすぎて皺を解消することができなかったためであると考えられる。このことから、加熱収縮率の下限としては、1/1000単位の収縮率、即ち、0.1%以上の加熱収縮率とすることが必要であることが確認された。
ここに、「加熱収縮率」とは、次のように把握する。即ち、物体(防水シート)の加熱による伸縮率、即ち、加熱後の膨張又は収縮の割合は、「所定時間加熱後の防水シートの長さ/初期の(敷設時の)防水シートの長さ」で特定することができるが、加熱により負膨張、即ち、収縮する場合には、上記算出方法によって、加熱により縮んだ割合、即ち、収縮率が特定されることになる。具体的には、加熱により収縮する物体においては、初期値に比し、どの程度の割合で収縮したかを意味する加熱収縮率が問題となり、上記算出方法で特定される負の伸縮率(図5に示される負の値)の絶対値が、縮んだ割合、即ち、加熱「収縮」率となる。
そこで次に、上記の条件を満たす本発明の実施例について、各種の温度下での伸縮率を確認した。その結果を、図6に示すと、60℃以上の温度での加熱収縮率は、ほぼ0.1%〜0.35%の範囲内に含まれており、いかなる季節に敷設されようとも、防水シート10の温度が60℃程度にまで達する一夏を過ぎれば、皺を自然に解消することができる。
本発明は、特に強風に曝されるオフィスビルや学校の校舎等の事業用の建造物やマンション等の居住用の建造物の屋根やベランダ、バルコニー等の高所で高温に曝される箇所における防水性の確保に広く適用することができる。
1 躯体
10 防水シート
10A 防水シートの重畳部分
12 シート接合部材
14 ガイドライン

Claims (12)

  1. 防水シートを構造物の躯体上に設置されたシート接合部材に固定して敷設する防水シートの敷設方法において、前記防水シートとして60℃にて168時間加熱した場合における加熱収縮率が0.1%以上の防水シートを使用し、巻物状の前記防水シートを設置箇所に転がして展開し、前記シート接合部材の設置箇所毎に前記防水シートを前記シート接合部材に接合しながら敷設していくことを特徴とする防水シートの敷設方法。
  2. 請求項1に記載された防水シートの敷設方法であって、前記防水シートとして60℃で168時間加熱した場合における加熱収縮率が0.35%以下の防水シートを使用することを特徴とする防水シートの敷設方法。
  3. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載された防水シートの敷設方法であって、前記防水シートを、押出成形によりシート状に加工することを特徴とする防水シートの敷設方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された防水シートの敷設方法であって、前記防水シートを、断熱材を介することなく、前記構造物の躯体上に直接固定された前記シート接合部材に接合して敷設することを特徴とする防水シートの敷設方法。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された防水シートの敷設方法であって、前記防水シートを敷設すべき箇所に対応したガイドラインを設置し、前記防水シートを前記ガイドラインに合わせて転がして展開することを特徴とする防水シートの敷設方法。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された防水シートの敷設方法であって、前記防水シートとして、長辺の端面が直線性を有するものを使用することを特徴とする防水シートの敷設方法。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載された防水シートの敷設方法であって、前記防水シートを、表面に防水シートと同質の合成樹脂が被覆された前記シート接合部材に溶剤により溶着して、前記シート接合部材に接合して固定する場合において、前記溶剤を、前記シート接合部材の表面のみならず、前記防水シートのうち前記シート接合部材に重なる部分にも塗布して溶着することを特徴とする防水シートの敷設方法。
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれかに記載された防水シートの敷設方法であって、前記防水シートを敷設すべき箇所の終端から手前の所定の位置に、落下防止用の目印を設置することを特徴とする防水シートの敷設方法。
  9. 構造物の躯体上に設置されたシート接合部材に固定して前記構造物に敷設される防水シートであって、60℃にて168時間加熱した場合において0.1%以上の加熱収縮率を有することを特徴とする防水シート。
  10. 請求項9に記載された防水シートであって、60℃で168時間加熱した場合において0.35%以下の加熱収縮率を有することを特徴とする防水シート。
  11. 請求項9又は請求項10のいずれかに記載された防水シートであって、押出成形によりシート状に加工されていることを特徴とする防水シート。
  12. 請求項9乃至請求項11のいずれかに記載された防水シートであって、長辺の端面が直線性を有することを特徴とする防水シート。
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