JP2015103355A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池であって、優れた入出力特性と高い耐久性とを兼ね備えるリチウムイオン二次電池を提供すること
【解決手段】本発明により、正極と負極と非水電解液とを備えるリチウムイオン二次電池が提供される。正極10は、正極集電体12上に、正極活物質とリン酸リチウム2とを含む正極活物質層14を備えている。そして、正極活物質層14を厚み方向に2分したときに、相対的に表面に近い上層部14sに含まれる単位体積当たりの上記リン酸リチウム量の平均値Psが、相対的に正極集電体12に近い下層部14cに含まれる単位体積当たりの上記リン酸リチウム量の平均値Pcよりも少ない。好適な一態様では、上記Pcに対する上記Psの比(Ps/Pc)が、1/2〜1/5である。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。より詳しくは、正極活物質層にリン酸リチウムを備える該電池に関する。
リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池等の非水電解液二次電池は、パソコン、携帯端末等のいわゆるポータブル電源や、車両駆動用電源として用いられている。特に、小型、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、ハイブリッド自動車、電気自動車等の駆動用電源として好ましく用いられている。
ところで、リチウムイオン二次電池では、性能向上の一環として更なる高エネルギー密度化が検討されている。かかる高エネルギー密度化は、例えば正極の作動電位を従来に比べて高く設定することで実現し得る。しかしながら、正極の作動上限電位を一般的なリチウムイオン二次電池よりも高く例えば金属リチウム基準で凡そ4.3V以上に設定した場合、正極が高電位となる影響で非水電解液が酸化分解され、電池特性(典型的には耐久性、例えばサイクル特性)が大きく低下する問題があった。
これに関連する技術として、特許文献1には、正極活物質層中にリン酸リチウムを含ませることによって高電位状態における非水電解液の分解を抑制することができ、サイクル特性を向上し得る旨が記載されている。
特開2003−308842号公報
しかしながら、特許文献1の技術を高エネルギー密度と高出力密度との両立が要求され得る電池(例えば車載用電池)に適用する場合、更なる改善の余地が認められた。すなわち、本発明者の検討によれば、正極活物質層内にリン酸リチウムを含ませることにより拡散抵抗が高くなって入出力特性が悪化したり、あるいは正極活物質層の厚み方向で不均質な充放電反応が生じてサイクル特性が低下したりすることがあった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池であって、優れた入出力特性と高い耐久性とを兼ね備えるリチウムイオン二次電池を提供することである。
本発明者は、正極活物質層内のリン酸リチウムの配置を最適化することで拡散抵抗を低減することを考えた。具体的には、リチウムイオン(電荷担体)が正極活物質層内を拡散し易くなるよう、該正極活物質層内にリチウムイオンの拡散経路を確保することを考えた。そして、上記課題を解決し得る手段を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明によって、正極と負極と非水電解液とを備えるリチウムイオン二次電池が提供される。上記正極は、正極集電体上に、正極活物質とリン酸リチウムとを含む正極活物質層を備えている。そして、上記正極活物質層を厚み方向に2分したときに、相対的に表面に近い上層部に含まれる単位体積当たりの上記リン酸リチウム量の平均値Psが、相対的に上記正極集電体に近い下層部に含まれる単位体積当たりの上記リン酸リチウム量の平均値Pcよりも少ないことを特徴とする。
正極活物質層内にリン酸リチウムを備えることで、正極が高電位になった際にも非水電解液が酸化分解され難くなる。また、正極活物質層の上層部に含まれるリン酸リチウムの量を相対的に小さく抑えることで、リチウムイオンの拡散経路を確保することができ、リチウムイオンを正極活物質層の下層部(より深部)まで十分に拡散させることができる。このため、正極活物質層の拡散抵抗を低減することができ、さらには正極活物質層内(典型的には該正極活物質層の厚み方向)で均質な充放電反応を生じさせることができる。したがって、上記構成のリチウムイオン二次電池では、入出力特性と耐久性とを高いレベルで両立することができる。
上層部および下層部の各領域に含まれるリン酸リチウム量の大小は、例えば一般的な走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)−エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDX)によって確認することができる。
より具体的には、まず測定対象としての正極活物質層を備えた正極を電池ケースから取り出して、他の部材から分離する。次に、かかる正極を適当な溶媒(例えば非水電解液の溶媒として使用し得るもの)で洗浄して、支持塩等を除去する。そして、この正極にクロスセクションポリッシャ加工等を施して断面出しを行い、正極活物質層の上層部(例えば表面近傍領域)と下層部(例えば正極集電体近傍領域)をそれぞれSEMで観察する。得られたSEM観察画像をEDXで解析(例えば、リン酸リチウムに特有のリン(P)元素でマッピング)し、これらの観察画像を比較(例えば、同一視野内でCPS(Count Per Second)の値を比較)することで、上層部および下層部に存在するリン酸リチウム量の大小関係を把握することができる。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池の好適な一態様では、上記Pcに対する上記Psの比(Ps/Pc)が、1/2〜1/5である。これにより、本発明の効果がより一層発揮され、例えば入出力特性と耐久性(例えば高温サイクル特性)とをより高いレベルで両立することができる。
上記上層部の固形分量全体に占める上記リン酸リチウム量の割合は、0.5〜2質量%であり得る。また、上記下層部の固形分量全体に占める上記リン酸リチウム量の割合は、2.5〜10質量%であり得る。
また、ここに開示されるリチウムイオン二次電池の好適な一態様では、上記正極活物質層の固形分量全体に占める上記リン酸リチウム量の割合が0.5〜3質量%である。一般に、リン酸リチウムの電子伝導性は極めて低い。このため、かかるリン酸リチウムの割合を必要最小限に抑えることで、正極活物質層内の拡散抵抗をより一層低減することができる。これによって、さらに優れた入出力特性を実現することができる。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池の好適な一態様では、上記正極活物質がスピネル構造のリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含む。これにより、エネルギー密度と耐久性とをより高いレベルで両立することができる。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池の好適な一態様では、上記正極活物質層の片面あたりの厚みが50〜100μmである。これにより、さらに高いエネルギー密度を実現することができる。
なお、正極活物質層の厚みは、例えばマイクロメータや厚み計(例えばロータリーキャリパー計)等により計測することができる。
上述の通り、ここに開示されるリチウムイオン二次電池は、高い初期特性と耐久性とを実現し得るものである。例えば、高エネルギー密度であり、ハイレート充放電を長期に渡って繰り返しても容量の低下が生じ難いものであり得る。したがって、かかる特徴を活かして、例えば、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車等の車両に搭載されるモーター駆動のための動力源(駆動用高出力電源)として好適に利用することができる。
一実施形態に係る正極の構成を示す模式図である。 一実施形態に係るリチウムイオン二次電池を模式的に示す縦断面図である。 正極の断面のSEM−EDXに基づくリン元素のマッピング画像であり、(A)は例1に係るマッピング画像を、(B)は例2に係るマッピング画像を、(C)は例3に係るマッピング画像をそれぞれ表している。 各例に係る電池特性(容量維持率および抵抗)を示すグラフである。
以下、適宜図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。また、本明細書において特に言及している事項(例えば正極の構成)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池は、正極と負極と非水電解液とを備えている。以下、各構成要素について順に説明する。
≪正極≫
ここに開示されるリチウムイオン二次電池の正極は、正極集電体上に正極活物質層が固着された形態である。正極集電体としては、導電性の良好な金属(例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性部材を好適に用いることができる。また、正極活物質層は、少なくとも正極活物質とリン酸リチウムとを含んでいる。
正極活物質としては、従来からリチウムイオン二次電池の正極活物質として用いられる物質の1種または2種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、層状系、スピネル系等のリチウム複合金属酸化物が挙げられる。なかでも、高エネルギー密度化や熱安定性の観点から、スピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物を好ましく用いることができる。一好適例として、以下の一般式(I)で表されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物が例示される。
Li(NiMn2−y―z)O4+α (I)
ここで、一般式(I)におけるMは、Ni,Mn以外の任意の遷移金属元素または典型金属元素(例えば、Ti,V,Cr,Fe,Co,Cu,Zn,Al,Wのうち1種または2種以上)であり得る。あるいは、半金属元素(例えば、B,Si,Geのうち1種または2種以上)や非金属元素であってもよい。かかる異種元素をドープすることにより、例えば高温環境下においてより高い構造安定性を実現することができる。
また、一般式(I)におけるxは、0.8≦x≦1.2であり;yは、0<yであり;zは、0≦zであり;y+z<2(典型的にはy+z≦1)であり;αは、−0.2≦α≦0.2で電荷中性条件を満たすように定まる値であり;qは、0≦q≦1である。また、qが0より大きい場合、AはFまたはClであり得る。
好適な一態様では、0.2≦y≦1.0(例えば0.4≦y≦0.6)である。これにより、本発明の効果を一層高いレベルで実現することができる。
また他の好適な一態様では、0≦z<1.0(例えば0≦z≦0.3)である。これにより、本発明の効果を一層高いレベルで実現することができる。
上記一般式(I)で表されるリチウムニッケルマンガン酸化物の具体例としては、LiNi0.5Mn1.5、LiNi0.5Mn1.45Ti0.05、LiNi0.45Fe0.05Mn1.5、LiNi0.475Fe0.025Mn1.475Ti0.025等が挙げられる。
スピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物(例えばリチウムニッケルマンガン複合酸化物)は、使用する全正極活物質のうち、50質量%以上(例えば80〜100質量%)の割合で含有されることが好ましく、実質的にスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物からなる正極活物質がより好ましい。
正極活物質の性状は特に限定されないが、典型的には粒子状や粉末状である。かかる粒子状の正極活物質の平均粒径は、20μm以下(典型的には1〜20μm、例えば5〜15μm)であり得る。
なお、本明細書において「平均粒径」とは、一般的なレーザー回折・光散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径が小さい微粒子側からの累積頻度50体積%に相当する粒径(D50、メジアン径ともいう。)をいう。
リン酸リチウム(LiPO)としては、市販品の購入等により入手したもの、あるいは公知の方法により合成したものを特に限定せず用いることができる。
リン酸リチウムの性状は特に限定されないが、典型的には粒子状や粉末状である。かかるリン酸リチウム粒子の平均粒径は、典型的には正極活物質よりも小さく、通常20μm未満(例えば1〜10μm)であり得る。これにより、リン酸リチウムが正極活物質の隙間に好適に充填され、非水電解液の酸化分解を好適に抑制することができる。さらに、正極活物質層内に好適な導電経路(導電パス)を形成することができ、内部抵抗を低減することができる。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池は、正極活物質層を厚み方向に2分したときに、相対的に表面に近い上層部に含まれる単位体積当たりのリン酸リチウム量の平均値Psが、相対的に正極集電体に近い下層部に含まれる単位体積当たりのリン酸リチウム量の平均値Pcよりも少ない。
正極活物質層に含まれるリン酸リチウムは、直接的には充放電反応に関与しないため、一般に抵抗成分となる。特に、正極活物質層の上層部にリン酸リチウムが多く含まれると、リチウムイオンの拡散経路が塞がれ、拡散抵抗が大きくなることがあり得る。しかしながら、ここに開示される構成によれば、リン酸リチウムを好適な配置とすることができ、拡散抵抗を低く抑えることができる。さらに、上層部で充放電反応が集中することを抑制し得、正極活物質層の厚み方向(深さ方向)の充放電反応分布をより均質にすることができる。したがって、優れた入出力特性と耐久性(例えば高温サイクル特性)とを実現することができる。
好適な一態様では、Pcに対するPsの比(Ps/Pc)が、1/2〜1/10である。換言すれば、上層部に含まれるリン酸リチウム量の平均値Psに対して、下層部に含まれるリン酸リチウム量の平均値Pcを2〜10倍(典型的には2〜5倍、例えば4〜5倍)とする。リン酸リチウムを下層部(正極集電体の近傍領域)に顕著に偏在化させることによって、本願発明効果をより高いレベルで発揮し得る。また、電子伝導性の低いリン酸リチウムを含ませることに起因する抵抗の増大を抑制することができる。
上層部の固形分量全体に占める上記リン酸リチウムの割合は特に限定されないが、例えば0.1〜3質量%とすることができ、通常は凡そ0.5〜2質量%(例えば0.5〜1質量%)とするとよい。リン酸リチウムの割合を0.1質量%以上(例えば0.5質量%以上)とすることで、非水電解液の酸化分解を好適に抑制することができる。また、リン酸リチウムの割合を2質量%以下(例えば1質量%以下)とすることで、正極活物質層内にリチウムイオンの拡散経路を確保することができ、拡散抵抗をより効果的に低減することができる。
また、下層部の固形分量全体に占める上記リン酸リチウムの割合は特に限定されないが、例えば2〜10質量%とすることができ、通常は凡そ2.5〜10質量%(典型的には3〜8質量%、例えば4〜6質量%)とするとよい。リン酸リチウムの割合を2.5質量%以上(例えば3質量%以上)とすることで、非水電解液の酸化分解を好適に抑制することができる。また、リン酸リチウムの割合を10質量%以下(典型的には8質量%以下、例えば6質量%以下)とすることで、正極活物質層内にリチウムイオンの拡散経路を確保することができ、拡散抵抗をより効果的に低減することができる。また、電子伝導性の低いリン酸リチウムの割合を必要最小限に抑えることで、正極活物質層に好適な電子伝導性を付与することができ、該正極活物質層内の抵抗を一層低減することができる。
図1は、一実施形態に係る正極の構成を示す模式図である。本実施形態の正極10は、正極集電体12の片側の表面に正極活物質層14を備えている。また、正極活物質層14は、相対的に表面に近い上層14sと、相対的に正極集電体12に近い下層14cとからなる2層構造を有している。そして、上層14sに含まれる単位体積当たりのリン酸リチウム2の含有量の平均値Psが、下層14cに含まれる単位体積当たりのリン酸リチウム2の含有量の平均値Pcよりも少なくなるよう調整されている。
このような正極は、例えば以下のようにして作製することができる。まず、正極活物質とリン酸リチウムとを適当な溶媒中で混合してスラリー状(ペースト状、インク状のものを包含する。)の組成物(正極活物質層形成用スラリー)を調製する。ここでは、リン酸リチウムの含有割合が異なる(例えば、正極活物質とリン酸リチウムとの比率が異なる)正極活物質層形成用スラリーを2種類以上調製し、準備する。スラリーの調製には、ホモジナイザー、ミキサー、ディスパー、ニーダ等の従来公知の種々の攪拌混合装置を用いることができる。また、正極活物質層形成用スラリーの固形分濃度(NV)は、50〜75質量%(典型的には55〜65質量%、例えば55〜60質量%)とするとよい。
次に、上記調製した正極活物質層形成用スラリーのうち、相対的にリン酸リチウムの含有割合が最も多いものを正極集電体上に付与し、乾燥させる。その上に、上記調製した正極活物質層形成用スラリーのうち、相対的にリン酸リチウムの含有割合が2番目に多いものを付与し、乾燥させる。このようにして、リン酸リチウムの含有割合が多いスラリーから順に重ねることで、リン酸リチウムが下層部に偏在化した正極活物質層を形成することができる。なお、スラリーの付与には、コンマコーター、スリットコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の従来公知の種々の塗布装置を用いることができる。また、乾燥には、加熱乾燥、真空乾燥、ドライエアー等の従来公知の種々の乾燥手法を用いることができる。一般に、リン酸リチウムを多く含むスラリーを高速で乾燥させると、リン酸リチウムのマイグレーションが生じ、該リン酸リチウムが表面近傍領域に偏在化することがあり得る。しかしながら、ここに開示される技術によれば、リン酸リチウムの含有量が多いスラリーから順に積層するため、マイグレーションによるリン酸リチウムの表面近傍領域における偏在化を抑制できるという効果もある。
最終的に正極集電体の単位面積当たりに設けられる正極活物質層の質量(目付量)は、電池容量を確保する観点から、正極集電体の片面当たり3mg/cm以上(例えば5mg/cm以上、典型的には7mg/cm以上)とするとよい。また、入出力特性を確保する観点から、正極集電体の片面当たり100mg/cm以下(例えば70mg/cm以下、典型的には50mg/cm以下)とするとよい。
このようにして作製された正極活物質層には典型的にはプレス処理が施され、所望の厚みや密度を有する正極活物質層を備えた正極を得ることができる。なお、プレス処理には、ロールプレス、平板プレス等の従来公知の種々のプレス方法を採用することができる。
プレス処理後の正極活物質層の片面当たりの平均厚みは、通常20μm以上(典型的には40μm以上、好ましくは50μm以上)であって、100μm以下(典型的には80μm以下)に調整するとよい。一般に、正極活物質層の厚みが厚くなると、それに伴ってリチウムイオンの拡散距離が長くなるため、正極活物質層内の拡散抵抗が増大する。そこへさらにリン酸リチウムを含ませると、拡散抵抗が一層高くなり、正極活物質層の上層部で集中的に充放電反応が生じることがあり得る。換言すれば、正極活物質層の下層部では充放電反応が生じ難くなり、厚み方向に充放電反応の反応ムラが生じてしまう。かかる場合、電池特性(例えば入出力特性や耐久性)の低下につながることがあり得る。しかしながら、ここに開示される技術によれば、リチウムイオンの拡散経路を好適に確保することができるため、厚み方向に均質な充放電反応を生じさせることができる。したがって、正極活物質層の厚みが厚い(例えば50μm以上の)リチウムイオン二次電池においては、本発明の適用が特に効果的である。
なお、正極活物質層には、上述の正極活物質およびリン酸リチウムに加えて、一般的なリチウムイオン二次電池において正極活物質層の構成成分として使用され得る1種または2種以上の材料を必要に応じて含有し得る。そのような材料の典型例として、導電材やバインダが挙げられる。導電材としては、例えば、種々のカーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等)、活性炭、黒鉛、炭素繊維等の炭素材料を好適に用いることができる。また、バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のハロゲン化ビニル樹脂、ポリエチレンオキサイド(PEO)等のポリアルキレンオキサイドを好適に用いることができる。さらに、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、各種添加剤(例えば、過充電時にガスを発生させる無機化合物、分散剤、増粘剤等)を含ませることもできる。
正極活物質層の固形分量全体に占める正極活物質の割合は、凡そ50質量%以上(典型的には50〜95質量%)とすることが適当であり、通常は凡そ80〜95質量%であることが好ましい。これにより、高エネルギー密度を実現することができる。
正極活物質層の固形分量全体に占めるリン酸リチウムの割合は、例えば0.1〜5質量%とすることができ、通常は凡そ0.5〜3質量%(例えば2〜3質量%)とするとよい。リン酸リチウムの割合を0.1質量%以上(典型的には0.5質量%以上、例えば2質量%以上)とすることで、リン酸リチウム添加の効果(すなわち、電池の入出力特性および耐久性の向上効果)を十分に発揮させることができる。さらに5質量%以下(典型的には3質量%以下、例えば2.8質量%以下)とすることで、正極活物質層内の抵抗を一層低減することができる。
導電材を使用する場合、正極活物質層の固形分量全体に占める導電材の割合は、例えば1〜20質量%とすることができ、通常は凡そ1〜10質量%(例えば5〜10質量%)とすることが好ましい。導電材の割合を1質量%以上とすることで、電子伝導性に優れた正極活物質層を実現することができる。これにより、内部抵抗を低減することができ、高い入出力特性を実現することができる。さらに、導電材の割合を20質量%以下(好ましくは10質量%以下)とすることで、入出力特性とエネルギー密度とをさらに高いレベルで両立することができる。
バインダを使用する場合、正極活物質層の固形分量全体に占めるバインダの割合は、例えば0.5〜10質量%とすることができ、通常は凡そ1〜5質量%とすることが好ましい。これにより、正極活物質層の機械的強度(形状保持性)を確保することができ、良好な耐久性を実現することができる。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池の正極は、SOC0〜100%の範囲における作動上限電位が金属リチウム基準で4.3V以上(好ましくは4.5V以上、より好ましくは4.6V、さらには4.7V以上)であり得る。正極の作動上限電位を4.3V以上(好ましくは4.5V以上)とすることで、正負極間の電位差(電圧)を大きくすることができ、高エネルギー密度の電池を実現することができる。一般に、SOC0〜100%の間で作動電位が最も高くなるのはSOC100%のときであるため、通常はSOC100%(すなわち満充電状態)における正極の作動電位を通じて正極の作動上限電位(例えば、4.3V以上か否か)を把握することができる。また、ここに開示される技術は、典型的にはSOC0〜100%の範囲における正極の作動上限電位が金属リチウム基準で7.0V以下(例えば6.0V以下、5.5V以下)のリチウムイオン二次電池に好ましく適用され得る。
なお、SOC0〜100%の範囲における正極の作動電位は、例えば以下のように測定することができる。先ず、測定対象たる正極を用意し、かかる正極を作用極(WE)として、対極(CE)としての金属リチウムと、参照極(RE)としての金属リチウムと、非水電解液とを用いて三極式セルを構築する。次に、この三極式セルの理論容量に基づいて、該三極式セルのSOCを0〜100%まで5%刻みで調整する。かかるSOCの調整は、例えば一般的な充放電装置やポテンショスタット等を用いて、WE−CE間を充電処理することで行い得る。そして、各SOC状態に調整した三極式セルのWE−RE間の電位を測定し、該電位をそのSOC状態における正極の作動電位(vs. Li/Li)と判断することができる。
≪負極≫
ここに開示されるリチウムイオン二次電池の負極は、典型的には、負極活物質を含む負極活物質層が負極集電体上に固着された形態である。負極集電体としては、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性材料を好適に用いることができる。
負極活物質としては、従来からリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられる物質の1種または2種以上を特に限定することなく使用することができる。具体例として、グラファイト(黒鉛)、ハードカーボン(難黒鉛化炭素)、ソフトカーボン(易黒鉛化炭素)等の炭素材料;酸化ケイ素、酸化チタン、酸化バナジウム、リチウムチタン複合酸化物(Lithium Titanium Composite Oxide:LTO)等の金属酸化物材料;窒化リチウム、リチウムコバルト複合窒化物、リチウムニッケル複合窒化物等の金属窒化物材料;等が挙げられる。なかでも、黒鉛系の炭素材料(例えば、負極活物質の全量のうち50質量%以上を黒鉛が占める炭素材料)を好適に採用し得る。
負極活物質層には、上記負極活物質に加えて、一般的なリチウムイオン二次電池において負極活物質層の構成成分として使用され得る1種または2種以上の材料を必要に応じて含有し得る。そのような材料の典型例として、バインダが挙げられる。バインダとしてはスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)等を好適に用いることができる。また、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、さらに各種添加剤(例えば分散剤や増粘剤、導電材等)を含ませることもできる。
負極活物質層の固形分量全体に占める負極活物質の割合は、凡そ50質量%以上とすることが適当であり、好ましくは90〜99質量%(例えば95〜99質量%)である。
バインダを使用する場合、負極活物質層の固形分量全体に占めるバインダの割合は、例えば凡そ1〜10質量%とすることができ、通常は凡そ1〜5質量%とすることが適当である。
≪非水電解液≫
ここに開示されるリチウムイオン二次電池の非水電解液は、常温(例えば25℃)において液状を呈し、好ましくは使用温度域内(例えば−20〜60℃)において常に液状を呈する。非水電解液としては、典型的には非水溶媒中に支持塩(リチウム塩)を溶解または分散させたものを用いることができる。あるいは、液状の非水電解液にポリマーが添加され固体状(典型的には、いわゆるゲル状)となったものでもよい。
支持塩としては、一般的なリチウムイオン二次電池と同様のものを適宜選択して用いることができる。例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、Li(CFSON、LiCFSO等を用いることができ、なかでもLiPFを好適に採用し得る。上記支持塩の濃度は、0.7〜1.3mol/Lの範囲内となるよう調製することが好ましい。
非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられる各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を特に限定なく用いることができる。具体例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等が挙げられる。
ここに開示される好適な一態様では、上記非水電解液がフッ素含有非水溶媒を含んでいる。フッ素含有非水溶媒としては、例えば、リチウムイオン二次電池の非水溶媒として利用し得ることが知られている有機溶媒(有機化合物)のフッ素化物を用いることができる。換言すれば、構成元素としてフッ素を含まない有機溶媒(例えば上記カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等)の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子によって置換された化学構造の有機溶媒を用いることができる。
なかでも、1種または2種以上のフッ素化カーボネートを含有することが好ましい。これによって非水電解液の酸化電位を高めることができ、高電位状態においても非水電解液が酸化分解され難くなる。すなわち、優れた耐酸化性を実現することができる。フッ素化カーボネートとしては、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)等のフッ素化環状カーボネート;フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、フルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(TFDMC)等のフッ素化鎖状カーボネート;が例示される。
ここに開示される好適な一態様では、フッ素含有非水溶媒として、少なくとも1種のフッ素化鎖状カーボネートと、少なくとも1種のフッ素化環状カーボネートとを含有する。かかる組成の非水電解液において、フッ素化鎖状カーボネート(好ましくは、フッ素化直鎖状カーボネート)は、非水電解液を常温(例えば25℃)で液状とし、あるいは非水電解液の粘度を低下させるために役立ち得る。
このようなフッ素含有非水溶媒は、非水電解液から支持塩を除いた全成分を100質量%としたときに、1質量%以上(典型的には5〜100質量%、例えば30〜100質量%、好ましくは50〜100質量%)の割合で含有されることが好ましく、実質的に上記支持塩以外成分の100質量%(典型的には99質量%以上)であってもよい。
また、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、非水電解液中にはさらに各種添加剤(例えばリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等の被膜形成剤;ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等の過充電時にガスを発生させ得る化合物;等)を適宜含有させることもできる。
特に限定することを意図したものではないが、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の概略構成として、図2に模式的に示すリチウムイオン二次電池(単電池)を例として、本発明を詳細に説明する。図2に示すリチウムイオン二次電池100は、正極シート10と負極シート20とがセパレータシート40を介して扁平に捲回された形態の電極体(捲回電極体)80が、図示しない非水電解液とともに扁平な箱型形状の電池ケース50内に収容された構成を有する。
電池ケース50は、上端が開放された扁平な直方体形状(箱型)の電池ケース本体52と、その開口部を塞ぐ蓋体54とを備えている。電池ケース50の材質としては、比較的軽量な金属(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金)を好ましく採用することができる。電池ケース50の上面(すなわち蓋体54)には、捲回電極体80の正極と電気的に接続する外部接続用の正極端子70、および捲回電極体80の負極と電気的に接続する負極端子72が設けられている。蓋体54にはまた、従来のリチウムイオン二次電池の電池ケースと同様に、電池ケース50の内部で発生したガスをケース50の外部に排出するための安全弁55が備えられている。
電池ケース50の内部には、扁平形状の捲回電極体80が図示しない非水電解液とともに収容されている。捲回電極体80は、長尺シート状の正極(正極シート)10と、長尺シート状の負極(負極シート)20とを備えている。正極シート10は、長尺状の正極集電体と、その少なくとも一方の表面(典型的には両面)に長手方向に沿って形成された正極活物質層とを備えている。負極シート20は、長尺状の負極集電体と、その少なくとも一方の表面(典型的には両面)に長手方向に沿って形成された負極活物質層とを備えている。また、正極活物質層と負極活物質層との間には、両者の直接接触を防ぐ絶縁層が配置されている。ここでは、上記絶縁層として2枚の長尺シート状のセパレータ40を使用している。セパレータシート40としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂からなる多孔質シート、不織布等を用いることができる。
捲回電極体80の捲回軸方向の一の端部から他の一の端部に向かう方向として規定される幅方向において、その中央部分には、正極集電体の表面に形成された正極活物質層と負極集電体の表面に形成された負極活物質層とが重なり合って密に積層された捲回コア部分が形成されている。また、捲回電極体80の捲回軸方向の両端部では、正極シート10の正極活物質層非形成部および負極シート20の負極活物質層非形成部が、それぞれ捲回コア部分から外方にはみ出ている。そして、正極側はみ出し部分には正極集電板が、負極側はみ出し部分には負極集電板が、それぞれ付設され、正極端子70および負極端子72とそれぞれ電気的に接続されている。
かかる構成のリチウムイオン二次電池100は、例えば、電池ケース本体52の開口部から捲回電極体80をその内部に収容し、該ケース本体52の開口部に蓋体54を取り付けた後、蓋体54に設けられた図示しない注入孔から非水電解液を注入し、次いでかかる注入孔を溶接等により封止することによって構築することができる。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池は各種用途に利用可能であるが、電池容量が大きく、且つ、優れた入出力特性と高い耐久性とを兼ね備えることを特徴とする。したがって、このような特徴を活かして、高エネルギー密度や高入出力密度、高耐久性が要求される用途で好ましく用いることができる。かかる用途としては、例えば、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車等の車両に搭載されるモーター用の動力源(駆動用電源)が挙げられる。なお、かかるリチウムイオン二次電池は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態で使用され得る。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に限定することを意図したものではない。
〈正極活物質層形成用スラリーA〜Cの調製〉
正極活物質としてのNiMnスピネル(LiNi0.5Mn1.5)と、リン酸リチウム(LiPO)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、表1の質量比となるよう秤量し、混練機(ホモジナイザー)を使用してN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と混合して、正極活物質層形成用スラリーA〜Cを調製した。
〈正極(例1)の作製〉
塗工機(コンマコーター)を用いて、厚み15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の表面に正極活物質層形成用スラリーCを片面あたりの目付量が8.1mg/cmとなるよう付与し、乾燥させた。この上から、さらに正極活物質層形成用スラリーAを片面あたりの目付量が8.1mg/cmとなるよう付与し、乾燥させることで、2層構造の正極活物質層を形成した。これを、ロールプレス機でプレスして該正極活物質層を片面あたり60μmに調整することで、正極(例1)を得た。
〈正極(例2)の作製〉
上記例1の場合と同様に、塗工機を用いて正極集電体の表面に正極活物質層形成用スラリーBを片面あたりの目付量が16.2mg/cmとなるよう付与し、乾燥させ、単層構造の正極活物質層を形成した。これを、ロールプレス機でプレスして該正極活物質層を片面あたり60μmに調整することで、正極(例2)を得た。
〈正極(例3)の作製〉
上記例1の場合と同様に、塗工機を用いて正極集電体の表面に正極活物質層形成用スラリーAを片面あたりの目付量が8.1mg/cmとなるよう付与し、乾燥させた。この上から、さらに正極活物質層形成用スラリーCを片面あたりの目付量が8.1mg/cmとなるよう付与し、乾燥させることで、2層構造の正極活物質層を形成した。これを、ロールプレス機でプレスして該正極活物質層を片面あたり60μmに調整することで、正極(例3)を得た。
〈正極断面のSEM−EDX観察〉
上記作製した正極(例1〜例3)を切り出して、クロスセクションポリッシャ加工で断面出しを行い、正極活物質層の断面をSEM観察した。そして、得られたSEM観察画像をEDXで解析(マッピング)することにより、リン元素の分布状態を確認した。結果を図3に示す。なお、図3において(A)は例1に係る正極の断面(正極集電体12および正極活物質層14の断面)構造のマッピング画像を、(B)は例2に係る正極の断面(正極集電体12および正極活物質層14の断面)構造のマッピング画像を、(C)は例3に係る正極の断面(正極集電体12および正極活物質層14の断面)構造のマッピング画像をそれぞれ表している。
図3(A)に示すように、例1では、上層部14sよりも下層部14cでリン原子が多く確認され、狙い通りリン酸リチウム量が上層部14sよりも下層部14cで多い(すなわち、Ps<Pcを満たす)正極が作製されていた。また、図3(B)に示すように、例2では、正極活物質層14全体にほぼ均質にリン元素が存在し、上層部14sと下層部14cとでリン酸リチウム量が概ね同等だった。また、図3(C)に示すように、例3では下層部14cよりも上層部14sでリン原子が多く確認され、例1とは逆にリン酸リチウム量が下層部14cよりも上層部14sで多い(すなわち、Ps>Pcの)正極が作製されていた。
〈負極の作製〉
負極活物質としてのグラファイト(C)と、バインダとしてのカルボキシメチルセルロース(CMC)およびスチレンブタジエンゴム(SBR)とを、C:CMC:SBR=98:1:1の質量比となるよう秤量し、混練機(ホモジナイザー)を使用してイオン交換水と混合して、負極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを厚み10μmの銅箔(負極集電体)に塗付し、乾燥させて負極活物質層を形成した。これにより、負極集電体の表面に負極活物質層を備えた負極を得た。
〈リチウムイオン二次電池の構築(例1〜例3)〉
上記作製した正極(例1〜例3)と負極とをセパレータを介して積層し、電極体を作製した。なお、セパレータとしては、ポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)からなる厚み20μmの三層構造の多孔質フィルムを用いた。また、非水電解液として、環状カーボネートとしてのモノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)と、鎖状カーボネートとしてのフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(TFDMC)とを1:1の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用意した。そして、上記作製した電極体と非水電解液とをラミネート製の電池ケースに収容した後、封止して、リチウムイオン二次電池(例1〜例3)を構築した。
〈コンディショニング処理〉
上記構築した電池(例1〜例3)に対して、25℃の温度環境下で、以下の充放電操作(1),(2)を3サイクル繰り返して、コンディショニング処理を施した。
(1)正極電位が4.9Vとなるまで1/3Cのレートで定電流(CC)充電した後、10分休止する。
(2)正極電位が3.5Vとなるまで1/3CのレートでCC放電した後、10分休止する。
〈初期抵抗〉
25℃の温度環境下において、上記コンディショニング処理後の電池(例1〜例3)に対して1/3CのレートでCC充電を行い、SOCが60%の状態に調整した。この電池に対し、1/3C,1C,3C,5Cの各放電レートでCC放電を行い、それぞれ放電開始から10秒間の電圧変化(電圧降下量)を測定した。測定された電圧降下の値(V)を対応する電流値で除してIV抵抗(Ω)を算出し、その平均値を初期IV抵抗とした。結果を表2に示す。
〈高温耐久試験〉
次に、初期性能測定後の電池(例1〜例3)を、温度60℃に設定された恒温槽内に2時間以上静置した後、以下の充放電操作(1),(2)を200サイクル繰り返し、高温耐久性を評価した。
(1)2Cのレートで4.9VまでCC充電した後、10分休止する。
(2)2Cのレートで3.5VまでCC放電した後、10分休止する。
高温耐久試験終了後、1サイクル目のCC放電容量と200サイクル目のCC放電容量から、下式:(200サイクル目のCC放電容量/1サイクル目のCC放電容量)×100;によって容量維持率(%)を算出した。結果を表2に示す。また、図4には初期抵抗と高温耐久試験後の容量維持率との関係を示す。
表2および図4より明らかなように、正極活物質層に当量のリン酸リチウムを含有させる場合に、上層部より下層部に多くのリン酸リチウムを含ませる(具体的には、Ps/Pc=1/5に調整する)ことで電池特性を向上させることができるとわかった。すなわち、ここに開示される構成とすることで、耐久性に優れ、且つ低抵抗なリチウムイオン二次電池を実現できることがわかった。例えば、本実施形態では、初期IV抵抗を凡そ8%低減することができ、且つ高温サイクル後の容量維持率を4%向上させことができた。かかる結果は、本発明の技術的意義を示すものである。
以上、本発明を詳細に説明したが、上記実施形態および実施例は例示にすぎず、ここに開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
2 リン酸リチウム
10 正極シート(正極)
12 正極集電体
14 正極活物質層
14s 上層部(上層)
14c 下層部(下層)
20 負極シート(負極)
40 セパレータシート(セパレータ)
50 電池ケース
52 電池ケース本体
54 蓋体
55 安全弁
70 正極端子
72 負極端子
80 捲回電極体
100 リチウムイオン二次電池

Claims (7)

  1. 正極と負極と非水電解液とを備えるリチウムイオン二次電池であって、
    前記正極は、正極集電体上に、正極活物質とリン酸リチウムとを含む正極活物質層を備え、
    ここで、前記正極活物質層を厚み方向に2分したときに、相対的に表面に近い上層部に含まれる単位体積当たりの前記リン酸リチウム量の平均値Psが、相対的に前記正極集電体に近い下層部に含まれる単位体積当たりの前記リン酸リチウム量の平均値Pcよりも少ない、リチウムイオン二次電池。
  2. 前記Pcに対する前記Psの比(Ps/Pc)が、1/2〜1/5である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記上層部の固形分量全体に占める前記リン酸リチウム量の割合が0.5〜2質量%である、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 前記下層部の固形分量全体に占める前記リン酸リチウム量の割合が2.5〜10質量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 前記正極活物質層の固形分量全体に占める前記リン酸リチウム量の割合が0.5〜3質量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
  6. 前記正極活物質がスピネル構造のリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
  7. 前記正極活物質層の片面あたりの厚みが50〜100μmである、請求項1から6のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
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