JP2015101211A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】氷上での制動性能を維持しつつ耐久性能を改善した空気入りタイヤを提供する。【解決手段】複数本の周方向溝12と周方主溝12に対して傾斜する複数本の傾斜溝14とにより、複数のブロック16が形成され、ブロック16のそれぞれに、タイヤ幅方向及びタイヤ径方向の双方において屈曲して延在する少なくとも1つのサイプ18が配設された空気入りタイヤである。少なくとも1つのサイプ18について、ブロック表面Sでの仮想延在方向(実線18aの方向)とサイプ底Bでの仮想延在方向(点線18b)とが異なり、サイプ底Bでの仮想延在方向がタイヤ幅方向に対して傾斜している。【選択図】図2
Description
本発明は、氷上での制動性能を発揮しつつ、耐久性能を改善した空気入りタイヤに関する。
トレッドに特定のゴム組成物を用いることで氷上での優れた制動性能を発揮することのできる空気入りタイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された空気入りタイヤのトレッドには、ジエン系ゴム100質量部に対し、平均粒径が10から50μmであって、最大発泡温度が200℃以上、発泡開始温度が170℃以下であるバルーン状の発泡性微粒子を0.3〜20質量部配合してなるゴム組成物が用いられている。
近年では、氷上での制動性能に優れ、かつ、耐久性能にも優れた空気入りタイヤの開発が要請されている。しかしながら、特許文献1に開示された空気入りタイヤのように、制動性能を改善すべくゴム組成物を改良した場合には、タイヤと路面との摩擦力が大きくなることから、トレッドが摩耗し易く、ひいては耐久性能が十分に発揮されないおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、特に、氷上での制動性能を発揮しつつ、耐久性能を改善した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明に係る空気入りタイヤは、複数本の周方向溝と上記周方主溝に対して傾斜する複数本の傾斜溝とにより、複数のブロックが形成され、上記ブロックのそれぞれに、タイヤ幅方向及びタイヤ径方向の双方において屈曲して延在する少なくとも1つのサイプが配設された空気入りタイヤである。この空気入りタイヤにおいては、少なくとも1つのサイプについて、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底の仮想延在方向とが異なり、サイプ底での仮想延在方向がタイヤ幅方向に対して傾斜している。
本発明に係る空気入りタイヤでは、サイプのブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とについて改良を加えることで、氷上での制動性能を発揮しつつ、耐久性能を改善することができる。
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態(以下に示す、基本形態及び付加的形態1から9)を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施の形態は、本発明を限定するものではない。また、上記実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記実施の形態に含まれる各種形態は、当業者が自明の範囲内で任意に組み合わせることができる。
[基本形態]
以下に、本発明に係る空気入りタイヤについて、その基本形態を説明する。以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤの回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。さらに、タイヤ幅方向とは、上記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CL(タイヤ赤道線)に向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。なお、タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤの回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤのタイヤ幅の中心を通る平面である。
以下に、本発明に係る空気入りタイヤについて、その基本形態を説明する。以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤの回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。さらに、タイヤ幅方向とは、上記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CL(タイヤ赤道線)に向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。なお、タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤの回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤのタイヤ幅の中心を通る平面である。
図1は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図(接地したタイヤを真上から見た図)である。空気入りタイヤ1のトレッド部10は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。このトレッド部10の表面は、空気入りタイヤ1を装着する車両(図示せず)が走行した際に路面と接触する面であるトレッド表面11として形成されている。
本実施の形態の空気入りタイヤ1には、複数本の周方向溝12(図1に示す例では完全にタイヤ周方向に延在)と、周方向溝12に対して傾斜する複数本の傾斜溝14(図1に示す例では完全にタイヤ幅方向に延在)とが配設され、これにより複数のブロック16が区画形成されている。そして、ブロック16のそれぞれには、タイヤ幅方向及びタイヤ径方向の双方において屈曲して延在する少なくとも1つの、図1に示すところにおいては1つのサイプ18が配設されている。
ここで、周方向溝12とは、厳密にタイヤ周方向に延在している溝に限らず、タイヤ周方向に対して±10°の角度で延在する溝も含まれる。また、本実施の形態において、傾斜溝14とは、周方向溝12と異なる角度で延在する溝であればいかなる溝も含み、図1に示す例のようにタイヤ幅方向に延在する溝も含まれる。
また、サイプ18がタイヤ幅方向及びタイヤ径方向の双方において屈曲して延在するとは、サイプ18が屈曲しながらタイヤ幅方向に延在するのみならず、屈曲しながらタイヤ径方向にも延在することを意味する。即ち、サイプ18はいわゆる三次元サイプである。図1(平面図)によれば、サイプ18の屈曲態様は、タイヤ幅方向における屈曲態様のみが示されている。
さらに、本実施の形態におけるサイプ18は、ブロック表面での溝幅(ブロック表面におけるサイプの延在方向に垂直な方向に測定した寸法)が3.0mm以下であり、サイプ底での溝幅(サイプ底におけるサイプの延在方向に垂直な方向に測定した寸法)が3.0mm以下であり、溝深さ(ブロック表面からサイプ底までタイヤ径方向に測った最大深さ)が9.0mm以下の溝をいう。
図2は、図1に示すタイプのサイプ18についての、ブロック表面Sでの仮想延在方向(実線18aで表示)とサイプ底Bでの仮想延在方向(点線で表示18b)との関係の一例を示す斜視透視図である。上記のような前提の下、本実施の形態においては、各ブロック16に配設された少なくとも1つのサイプ、図1においては1つのサイプ18について、図2に示すように、ブロック表面Sでの仮想延在方向18aとサイプ底Bでの仮想延在方向18bとが異なり、サイプ底Bでの仮想延在方向がタイヤ幅方向に対して傾斜している。
ここで、上述のとおり、サイプ18はいわゆる三次元サイプであるため、サイプ18のブロック表面S及びサイプ底Bでの延在方向は、実際には、いずれも、ジグザグ状等の非直線形状で表される。しかしながら、図2において、サイプの延在方向は、いずれも、便宜的に直線(ブロック表面Sにおいては実線、サイプ底Bにおいては点線)で示している。ここで、サイプ18のブロック表面S又はサイプ底Bにおける仮想延在方向とは、それぞれ、ブロック表面S又はサイプ底Bにおけるブロック16のタイヤ幅方向の一端におけるサイプの存在位置(サイプ幅の中心位置)と他端におけるサイプの存在位置(サイプ幅の中心位置)とを結んだ線分の延在方向を意味する。なお、以上に示すサイプのブロック表面及びサイプ底における仮想延在方向の標記方法は、後述する図3から図6並びに図8及び図9に示すサイプについても同様である。
また、本実施の形態におけるブロック16は、図2に示すように、サイプ18が1つのみ配設されているタイプに限られない。即ち、本実施の形態におけるブロック16には、図3(図2に示すサイプの配設態様とは異なる配設態様でサイプを配設したブロックを示す平面透視図)に示すように、サイプ18が複数配設されているタイプも含まれる。図3において、サイプ18を示す線のうち、実線18Xはブロック表面での仮想延在方向を示し、点線18Yはサイプ底での仮想延在方向を示す。
図3に示す例は、タイヤの回転方向が指定されたタイヤに用いるブロック16を示す例である。このブロック16では、その蹴り出し側の領域(タイヤ周方向の一方の半領域)においてのみ、サイプ18のブロック表面での仮想延在方向18Xとサイプ底での仮想延在方向18Yとを異ならせている。
(作用等)
図4は、従来のサイプ18´のブロック表面Sでの仮想延在方向(実線18a´で表示)とサイプ底Bでの仮想延在方向(点線18b´で表示)との関係を示す斜視透視図ある。従来の空気入りタイヤにおいては、同図に示すように、サイプ18´のブロック表面Sでの仮想延在方向とサイプ底Bでの仮想延在方向とが同一である(仮想延在方向同一タイプ)。これに対し、本実施の形態に係る空気入りタイヤにおいては、図2に示すように、少なくとも1つのサイプ18のブロック表面Sでの仮想延在方向とサイプ底Bでの仮想延在方向とを異ならせているとともに、サイプ底での仮想延在方向がタイヤ幅方向に対して傾斜している(仮想延在方向相違タイプ)。
図4は、従来のサイプ18´のブロック表面Sでの仮想延在方向(実線18a´で表示)とサイプ底Bでの仮想延在方向(点線18b´で表示)との関係を示す斜視透視図ある。従来の空気入りタイヤにおいては、同図に示すように、サイプ18´のブロック表面Sでの仮想延在方向とサイプ底Bでの仮想延在方向とが同一である(仮想延在方向同一タイプ)。これに対し、本実施の形態に係る空気入りタイヤにおいては、図2に示すように、少なくとも1つのサイプ18のブロック表面Sでの仮想延在方向とサイプ底Bでの仮想延在方向とを異ならせているとともに、サイプ底での仮想延在方向がタイヤ幅方向に対して傾斜している(仮想延在方向相違タイプ)。
ここで、仮想延在方向相違タイプのサイプ(図2)は、ブロック表面Sでの仮想延在方向とサイプ底Bでの仮想延在方向とが異なるので、従来の仮想延在方向同一タイプのサイプ(図4)に比べて、サイプの壁面の面積が大きい。このため、仮想延在方向相違タイプでは仮想延在方向同一タイプに比べて、タイヤ転動時にブロック表面に加わった応力が、サイプ底に、より減衰して伝播されることとなる。その結果、タイヤが転動することによるブロックの繰り返し変形時に、クラック発生に最も影響を及ぼし易いサイプ底に発生する応力を緩和することができる。
また、仮想延在方向相違タイプのサイプ(図2)は、従来の仮想延在方向同一タイプのサイプ(図4)と異なり、サイプ底での仮想延在方向がタイヤ幅方向に対して傾斜している。このため、クラック発生に最も影響を及ぼし易いサイプ底で、ブロックのタイヤ転動方向(タイヤ周方向)への変形による応力を緩和することができる。
従って、仮想延在方向相違タイプにおいては、サイプ底でのクラックの発生等を抑制することができるため、耐久性能を改善することができる。
次に、従来の仮想延在方向同一タイプ(図4)と、本実施の形態の仮想延在方向相違タイプ(図2)とを比較すると、サイプ底Bの仮想延在方向(それぞれ点線18b、18b´で表示)は異なるものの、ブロック表面Sでの仮想延在方向(それぞれ実線18a、18a´で表示)は同じである。このため、図2に示す例においては、図4に示す例と比較した場合に、サイプによって区画形成された陸部のエッジ効果が略等しく発揮され、ひいては、氷上における制動性能を同程度に発揮することができる。
以上に示すように、本実施の形態に係る空気入りタイヤは、サイプに関し、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向との関係について改良を加えている。その結果、本実施の形態に係る空気入りタイヤによれば、氷上での制動性能を維持しつつ、耐久性能を改善することができる。
なお、以上に示す、本実施の形態に係る空気入りタイヤは、図示しないが、従来の空気入りタイヤと同様の子午断面形状を有する。ここで、空気入りタイヤの子午断面形状とは、タイヤ赤道面CLと垂直な平面上に現れる空気入りタイヤの断面形状をいう。本実施の形態の空気入りタイヤは、タイヤ子午断面視で、タイヤ径方向内側から外側に向かって、ビード部、サイドウォール部、ショルダー部及びトレッド部を有する。そして、上記空気入りタイヤは、例えば、タイヤ子午断面視で、トレッド部から両側のビード部まで延在して一対のビードコアの周りで巻回されたカーカス層と、上記カーカス層のタイヤ径方向外側に順次形成された、ベルト層及びベルト補強層とを備える。
また、本実施の形態の空気入りタイヤは、通常の各製造工程、即ち、タイヤ材料の混合工程、タイヤ材料の加工工程、グリーンタイヤの成型工程、加硫工程及び加硫後の検査工程等を経て得られるものである。本実施の形態の空気入りタイヤを製造する場合には、特に、加硫用金型の内壁に、例えば図2に示すサイプに対応する凸部を形成し、この金型を用いて加硫を行う。
さらに、上述したとおり、図3に示す例では、その蹴り出し側の領域においてのみ、複数のサイプ18のブロック表面での仮想延在方向(実線18Xで表示)とサイプ底での仮想延在方向(実線18Yで表示)とを異ならせている。これは、タイヤ転動時に、蹴り出し側領域(タイヤ周方向の一方の半領域)が踏み込み側領域(タイヤ周方向の他方の半領域)に比べて変形量が多く、摩耗し易いことに起因してクラック等が生じ易いため、サイプ底での応力緩和効果を相対的に大きく確保する趣旨である。
[付加的形態]
次に、本発明に係る空気入りタイヤの上記基本形態に対して、任意選択的に実施可能な、付加的形態1から9を説明する。
次に、本発明に係る空気入りタイヤの上記基本形態に対して、任意選択的に実施可能な、付加的形態1から9を説明する。
(付加的形態1)
基本形態においては、上記ブロックの少なくともタイヤ周方向のいずれか半分の領域において、タイヤ周方向のいずれかの向きに移行するにつれて、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角が順次変化していること(付加的形態1)が好ましい。
基本形態においては、上記ブロックの少なくともタイヤ周方向のいずれか半分の領域において、タイヤ周方向のいずれかの向きに移行するにつれて、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角が順次変化していること(付加的形態1)が好ましい。
図5は、本発明の実施の形態に係る、回転方向が指定されていないタイヤに形成されるブロックを示す平面透視図である。なお、図5(a)から図5(d)の例においては、いずれも、ブロック16に配設されたサイプ18について、実線18Xがブロック表面での仮想延在方向を示し、点線18Yがサイプ底での仮想延在方向を示す。
また、図5中、(a)はブロック16のタイヤ幅方向全領域にわたりサイプ18が連続的に配設された例である。これに対し、(b)から(d)はブロック16のタイヤ幅方向の一部の領域にサイプ18が配設されていない領域を含み、同一のタイヤ周方向領域において、タイヤ幅方向にサイプ18が2つ配設された例である。
図5(a)から図5(d)のいずれの例についても、タイヤ周方向の半分の領域(紙面におけるブロックの左側半分の領域及び右側半分の領域)において、ブロック16のタイヤ周方向外側に移行するにつれて、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角が順次大きくなっている。
このような構成によれば、図5(a)から図5(d)に示す例に関し、タイヤ周方向のいずれの側が、タイヤ転動時の最も変形量の多い蹴り出し側となったとしても、最も蹴り出し側のサイプについて、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角を最大として、サイプ底での応力緩和効果を十分に奏することができる(作用1)。
また、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角を、ブロック16のタイヤ周方向外側に向けて徐々に大きくすることで、隣接するサイプ間における応力緩和作用をタイヤ周方向において徐々に変化させることができる。これにより、特に蹴り出し側の領域(紙面におけるブロックの左側半分の領域又は右側半分の領域)において、タイヤ転動時の変形量に応じた応力緩和作用をもたらすことができる(作用2)。
従って、回転方向が指定されていないタイヤに適用する、所定のサイプ18が配設されたブロック16に関し、上記作用1及び上記作用2が相まって、トレッドのサイプ底における摩耗を抑制してクラック等の発生を防止し、ひいては耐久性能を改善することができる。
次に、図6は、本発明の実施の形態に係る、回転方向が指定されたタイヤに形成されるブロックを示す平面透視図である。なお、図6(a)から図6(d)の例においては、いずれも、ブロック16に配設されたサイプ18について、実線18Xがブロック表面での仮想延在方向を示し、点線18Yがサイプ底での仮想延在方向を示す。
また、図6中、(a)はブロック16のタイヤ幅方向全領域にわたりサイプ18が連続的に配設された例である。これに対し、(b)から(d)はブロック16のタイヤ幅方向の一部の領域にサイプ18が配設されていない領域を含み、同一のタイヤ周方向領域において、タイヤ幅方向にサイプ18が2つ配設された例である。
図6(a)から図6(d)のいずれの例についても、タイヤ周方向の全領域において、ブロック16の踏み込み側から蹴り出し側に移行するにつれて、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角が順次大きくなっている。
このような構成によれば、図6(a)から図6(d)に示す例に関し、タイヤ転動時に最も変形量の多い最も蹴り出し側のサイプについて、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角を最大として、サイプ底での応力緩和効果を十分に奏することができる(作用1´)。
また、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角を、ブロック16の踏み込み側から蹴り出し側に向けて徐々に大きくすることで、隣接するサイプ間における応力緩和作用をタイヤ周方向において徐々に変化させることができる。これにより、タイヤ周方向の全領域において、タイヤ転動時の変形量に応じた応力緩和作用をもたらすことができる(作用2´)。
従って、回転方向が指定されたタイヤに適用する、所定のサイプ18が配設されたブロック16に関しても、上記作用1´及び上記作用2´が相まって、トレッドのサイプ底における摩耗を抑制してクラック等の発生を防止し、ひいては耐久性能を改善することができる。
(付加的形態2)
基本形態及び基本形態に付加的形態1を加えた形態においては、上記サイプは、タイヤ赤道線のタイヤ幅方向各側において、接地幅のタイヤ幅方向最外部30%の領域に配設されていること(付加的形態2)が好ましい。
基本形態及び基本形態に付加的形態1を加えた形態においては、上記サイプは、タイヤ赤道線のタイヤ幅方向各側において、接地幅のタイヤ幅方向最外部30%の領域に配設されていること(付加的形態2)が好ましい。
図7は、本実施の形態に係る空気入りタイヤの接地面CAであり、同図中の斜線部は接地面CAにおける本発明に係るサイプの配設位置を示す。ここで、接地面CAとは、図1に示す空気入りタイヤ1を正規リムに装着し、200kPaの内圧を付与し、正規荷重を加えた条件下での、タイヤと路面との接触面を意味する。また、図7における符号W1は上記条件における接地幅を示す。
ここで、正規リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、又はETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、又はETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」をいう。
一般に、低圧時(内圧が140kPaから160kPa)には、図7における接地面のうち、タイヤ赤道線CLのタイヤ幅方向両側において、タイヤ幅方向最外部周辺領域が、その他の領域に比べて、タイヤ径方向外側に迫り出す。このため、当該低圧時には、上記のタイヤ幅方向最外部周辺領域のブロックにクラックが発生する可能性が高い。
このような知見に鑑み、本実施の形態においては、上述したような仮想延在方向相違タイプのサイプを、接地幅W1のタイヤ幅方向最外部30%の領域(図7の斜線部)に配設することで、当該領域においてサイプ底に発生する応力を緩和することができる。その結果、特に、接地幅W1のタイヤ幅方向最外部30%の領域におけるサイプ底でのクラックの発生等を抑制して、耐久性能を改善することができる。
なお、本実施の形態において、接地幅W1のタイヤ幅方向中心部40%の領域(図7の斜線部が付されていない領域)に、仮想延在方向相違タイプのサイプや仮想延在方向同一タイプのサイプを配設するか否かについては、任意選択的に行うことができる。
(付加的形態3)
基本形態及び基本形態に付加的形態1、2の少なくともいずれかを加えた形態においては、上記サイプの、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角が15°以上であること(付加的形態3)が好ましい。
基本形態及び基本形態に付加的形態1、2の少なくともいずれかを加えた形態においては、上記サイプの、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角が15°以上であること(付加的形態3)が好ましい。
図8は、図3に示す例において、サイプ18のブロック表面での仮想延在方向(実線18Xで表示)とサイプ底での仮想延在方向(点線18Yで表示)とのなす角θを示す平面透視図である。同図に示すように、サイプ18の、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角θを15°以上とすることで、仮想延在方向同一タイプのサイプ(なす角θが0°)に比べて、サイプの壁面の面積を十分に確保することができる。これにより、仮想延在方向同一タイプに比べて、クラック発生に最も影響を及ぼし易いサイプ底で、ブロックのタイヤ転動方向(タイヤ周方向)への変形による応力をさらに緩和することができる。従って、本実施の形態の空気入りタイヤによれば、サイプ底でのクラックの発生等をさらに抑制することができるため、耐久性能をさらに改善することができる。
なお、上記なす角を30°以上とすることで、上記効果をさらに高いレベルで奏することができる。
(付加的形態4)
基本形態及び基本形態に付加的形態1から3の少なくともいずれかを加えた形態においては、上記サイプに底上げ部を形成したこと(付加的形態4)が好ましい。
基本形態及び基本形態に付加的形態1から3の少なくともいずれかを加えた形態においては、上記サイプに底上げ部を形成したこと(付加的形態4)が好ましい。
例えば、図5(a)及び図6(a)に示すように、ブロック16のタイヤ幅方向全領域にわたり1つのサイプ18を連続的に配設し、かつ、サイプ18の、ブロック表面での仮想延在方向をタイヤ幅方向に設定した場合を考える。この場合においても、サイプ18の、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角を可能な限り大きくすることが、上述の応力緩和作用の増大につながるため好ましい。
しかしながら、上記なす角を過度に大きくした場合には、1つのサイプについてサイプ底のタイヤ周方向領域が過度に大きくなるため、1つのサイプ(特に、サイプ底)によってブロック16の多大なるタイヤ周方向領域が占有されることとなる。従って、ブロック16へのサイプ18のタイヤ周方向における配設密度が低下し、ブロック全体として、上述の応力緩和作用が十分に発揮されないおそれがある。
このような知見に鑑み、本実施の形態では、図9に示すように、上記なす角を相当大きくすることを前提に、サイプ18に底上げ部Rを形成し、1つのサイプのサイプ底18Yを底上げ部Rによって分断している。なお、図9においては、図8と同様に、サイプ18の、ブロック表面での仮想延在方向(実線18Xで表示)とサイプ底での仮想延在方向(点線18Yで表示)とが示されている。
このような1つのサイプ18におけるサイプ底18Yの分断により、たとえサイプ18の、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角を過度に大きくした場合であっても、1つのサイプ18(特に、サイプ底18Y)によってブロック16の多大なるタイヤ周方向領域が占有されることはない。従って、本実施の形態によれば、ブロック16へのサイプ18のタイヤ周方向における配設密度を低下させることなく、ブロック全体として、上述の応力緩和作用を十分に発揮することができ、ひいては耐久性能を改善することができる。
なお、底上げ部Rは、図9に示すブロック16のタイヤ幅方向領域(寸法W2)の中央部60%の範囲内に形成することが好ましい。これは、底上げ部Rのタイヤ幅方向の両外側における、サイプ底18Yの長さの差に起因する陸部の剛性差を過度に大きくすることなく、ひいてはブロック16のタイヤ幅方向剛性をより均一にすることができるとの知見に基づく。
さらに、底上げ部Rを、図9に示すブロック16のタイヤ幅方向領域(寸法W2)の中央部50%の範囲内に形成することが、上記効果をさらに高いレベルで奏することができる点で、より好ましい。
(付加的形態5)
基本形態及び基本形態に付加的形態1から4の少なくともいずれかを加えた形態においては、回転方向が指定され、蹴り出し側領域に配設されたサイプの平均深さが、踏み込み側領域に配設されたサイプの平均深さよりも小さいこと(付加的形態5)が好ましい。ここで、蹴り出し側領域とは、例えば、図6(a)から図6(d)に示す各例において、ブロック16の蹴り出し側の半分のタイヤ周方向領域(ブロック16の左半分の領域)をいう。同様に、踏み込み側領域とは、例えば、図6(a)から図6(d)に示す各例において、ブロック16の踏み込み側の半分のタイヤ周方向領域(ブロック16の右半分の領域)をいう。また、サイプの平均深さとは、踏み込み側領域及び蹴り出し側領域のいずれについても、各領域において、各サイプの最大深さの総和をサイプの本数で除した値をいう。
基本形態及び基本形態に付加的形態1から4の少なくともいずれかを加えた形態においては、回転方向が指定され、蹴り出し側領域に配設されたサイプの平均深さが、踏み込み側領域に配設されたサイプの平均深さよりも小さいこと(付加的形態5)が好ましい。ここで、蹴り出し側領域とは、例えば、図6(a)から図6(d)に示す各例において、ブロック16の蹴り出し側の半分のタイヤ周方向領域(ブロック16の左半分の領域)をいう。同様に、踏み込み側領域とは、例えば、図6(a)から図6(d)に示す各例において、ブロック16の踏み込み側の半分のタイヤ周方向領域(ブロック16の右半分の領域)をいう。また、サイプの平均深さとは、踏み込み側領域及び蹴り出し側領域のいずれについても、各領域において、各サイプの最大深さの総和をサイプの本数で除した値をいう。
上述のとおり、タイヤ転動時に、蹴り出し側領域では、踏み込み側領域に比べて変形量が多く、摩耗し易いことに起因してクラック等が生じ易い。このような知見に鑑み、本実施の形態においては、回転方向が指定されたタイヤに形成されたブロックについて、蹴り出し側領域に配設されたサイプの平均深さを、踏み込み側領域に配設されたサイプの平均深さよりも小さくしている。これにより、蹴り出し側領域の剛性を踏み込み側領域の剛性に比べて高くし、タイヤ転動時のブロックの変形量をタイヤ周方向においてより均一とすることができる。その結果、蹴り出し側領域と踏み込み側領域とにおける摩耗の発生頻度をより同等として、ひいては耐久性能を改善することができる。
(付加的形態6)
基本形態に少なくとも付加的形態5を加えた形態においては、蹴り出し側領域に配設されたサイプの平均深さが、踏み込み側領域に配設されたサイプの平均深さの50%以上80%以下であること(付加的形態6)が好ましい。
基本形態に少なくとも付加的形態5を加えた形態においては、蹴り出し側領域に配設されたサイプの平均深さが、踏み込み側領域に配設されたサイプの平均深さの50%以上80%以下であること(付加的形態6)が好ましい。
蹴り出し側領域に配設されたサイプの平均深さを、踏み込み側領域に配設されたサイプの平均深さの50%以上とすることで、蹴り出し側領域においてもサイプの深さを十分に確保することができる。これにより、サイプ内に雪が入り込んだ場合であっても、サイプによるエッジ効果を発揮させることができ、ひいては雪上での制動性能を改善することができる。
また、蹴り出し側領域に配設されたサイプの平均深さを、踏み込み側領域に配設されたサイプの平均深さの80%以下とすることで、サイプが形成されたブロックの剛性を過度に低下させることなく、ひいては耐久性能を改善することができる。
なお、蹴り出し側領域に配設されたサイプの平均深さを、踏み込み側領域に配設されたサイプの平均深さの60%以上70%以下とすることで、上記効果をそれぞれさらに高いレベルで奏することができる。
(付加的形態7)
基本形態に付加的形態4を加えた形態等においては、上記底上げ部の底上げ高さが、タイヤ周方向のいずれかの向きに移行するにつれて順次変化していること(付加的形態7)が好ましい。なお、本実施の形態(付加的形態7)は、空気入りタイヤの回転方向の指定の有無を問わず適用される。
基本形態に付加的形態4を加えた形態等においては、上記底上げ部の底上げ高さが、タイヤ周方向のいずれかの向きに移行するにつれて順次変化していること(付加的形態7)が好ましい。なお、本実施の形態(付加的形態7)は、空気入りタイヤの回転方向の指定の有無を問わず適用される。
まず、回転方向が指定されていない例としては、例えば、図5(a)に示すサイプ18のタイヤ幅方向中央部に底上げ部を形成し、サイプ底18Yを分断した例が考えられる。即ち、この例においては、ブロックのタイヤ周方向の半分の領域のいずれにおいても、サイプに形成された底上げ部の底上げ高さを、ブロックのタイヤ周方向の内側から外側に移行するにつれて順次大きくすることができる。
このような構成によれば、タイヤ周方向のいずれの側がタイヤ転動時の最も変形量の多い蹴り出し側となったとしても、最も蹴り出し側のサイプについて、サイプの容積を最小として、ブロック剛性を十分に確保することができる。(作用3)。
また、サイプに形成された底上げ部の底上げ高さを、タイヤ周方向の内側から外側に移行するにつれて順次大きくすることで、隣接するサイプ間における応力緩和作用をタイヤ周方向において徐々に変化させることができる。これにより、特に蹴り出し側の領域(紙面におけるブロックの左側半分の領域又は右側半分の領域)において、タイヤ転動時の変形量に応じた応力緩和作用をもたらすことができる(作用4)。
従って、回転方向が指定されていないタイヤにおいて、サイプに形成した底上げ部の底上げ高さを、ブロックのタイヤ周方向内側から外側に移行するにつれて順次大きくした場合には、上記作用3及び上記作用4が相まって、トレッドにおける摩耗を抑制してクラック等の発生を防止し、ひいては耐久性能を改善することができる。
次に、回転方向が指定された例としては、例えば、図6(a)に示すサイプ18のタイヤ幅方向中央部に底上げ部を形成し、サイプ底18Yを分断した例が考えられる。即ち、この例においては、ブロックのタイヤ周方向の全領域において、サイプに形成された底上げ部の底上げ高さを、ブロックの踏み込み側から蹴り出し側に移行するにつれて、順次大きくすることができる。
このような構成によれば、タイヤ転動時の最も変形量の多い最も蹴り出し側のサイプについて、サイプの容積を最小として、ブロック剛性を十分に確保することができる。(作用3´)。
また、サイプに形成された底上げ部の底上げ高さを、ブロックの踏み込み側から蹴り出し側に移行するにつれて、順次大きくすることで、隣接するサイプ間における応力緩和作用をタイヤ周方向において徐々に変化させることができる。これにより、タイヤ周方向の全領域において、タイヤ転動時の変形量に応じた応力緩和作用をもたらすことができる(作用4´)。
従って、回転方向が指定されたタイヤにおいて、サイプに形成した底上げ部の底上げ高さを、ブロックの踏み込み側から蹴り出し側に移行するにつれて順次大きくした場合にも、上記作用3´及び上記作用4´が相まって、トレッドにおける摩耗を抑制してクラック等の発生を防止し、ひいては耐久性能を改善することができる。
(付加的形態8)
基本形態及び基本形態に付加的形態1を加えた形態等においては、スノートラクションインデックスSTIが160以上240以下であること(付加的形態8)が好ましい。
基本形態及び基本形態に付加的形態1を加えた形態等においては、スノートラクションインデックスSTIが160以上240以下であること(付加的形態8)が好ましい。
ここで、スノートラクションインデックスSTIとは、トレッド面におけるラグ溝及びサイプの存在量を示し、雪上での制動性能のレベル及び氷上での制動性能のレベルを示す指標であり、下記の式で定義される。
STI=−6.8+2202ρg+672ρs+7.6Dg
ρgは、(トレッド表面に設けられた全ての溝をタイヤ幅方向に投影した長さの合計)/(接地幅×タイヤ周長)(1/mm)であり、ρsは、(トレッド表面に設けられた全てのサイプをタイヤ幅方向に投影した長さの合計)/(接地幅×タイヤ周長)(1/mm)であり、Dgは溝の平均溝深さである。
STI=−6.8+2202ρg+672ρs+7.6Dg
ρgは、(トレッド表面に設けられた全ての溝をタイヤ幅方向に投影した長さの合計)/(接地幅×タイヤ周長)(1/mm)であり、ρsは、(トレッド表面に設けられた全てのサイプをタイヤ幅方向に投影した長さの合計)/(接地幅×タイヤ周長)(1/mm)であり、Dgは溝の平均溝深さである。
また、ここでいう接地幅とは、空気入りタイヤを正規リムに装着し、正規内圧を付与し、正規荷重の85%の荷重を付与したときの接地面のタイヤ幅方向最大幅を意味する。なお、正規荷重とは、JATMAに規定されている「最大負荷能力」、TRAに規定されている「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値又はETRTOに規定されている「LOAD CAPACITY」を意味する。
STIを160以上とすることで、ラグ溝及びサイプを十分に確保して、トレッド表面にサイプ等によるエッジを十分に持たせることができる。その結果、雪上及び氷上での制動性能をさらに改善することができる。また、STIを240以下とすることで、ラグ溝及びサイプを過度に配設することなく、ブロック剛性の低下を抑制するとともに、接地面積を十分に確保することができる。その結果、特に氷上での制動性能をより一層改善することができ、また操縦安定性能を高めることもできる。
なお、上記STIを180以上220以下とすることで、上記効果をそれぞれさらに高いレベルで奏することができる。
(付加的形態9)
基本形態及び基本形態に付加的形態1を加えた形態等においては、トレッド部のキャップトレッドゴム層のJIS A硬度(0℃)が40以上60以下であること(付加的形態9)が好ましい。ここで、キャップトレッドゴム層とは、トレッド部のタイヤ径方向最外側に形成されているゴム層を意味する。
基本形態及び基本形態に付加的形態1を加えた形態等においては、トレッド部のキャップトレッドゴム層のJIS A硬度(0℃)が40以上60以下であること(付加的形態9)が好ましい。ここで、キャップトレッドゴム層とは、トレッド部のタイヤ径方向最外側に形成されているゴム層を意味する。
トレッド部のキャップゴム層のJIS A硬度(0℃)を40以上とすることで、ブロックの剛性を十分に確保することができる。その結果、ブロックの特定方向への倒れ込みを抑制することができるため、接地面積を十分に確保することができ、ひいては氷上での制動性能をより一層改善することができる。
また、トレッド部のキャップゴム層のJIS A硬度(0℃)を60以下とすることで、ブロックを過度に硬くすることなく、優れた路面追従性を実現することができる。その結果、接地時に雪を効果的に踏み固めて、雪柱剪断力を高めることができ、ひいては雪上での優れた制動性能を発揮することができる。
なお、トレッド部のキャップゴム層のJIS A硬度(0℃)を45以上55以下とすることで、上記効果をそれぞれさらに高いレベルで奏することができる。
タイヤサイズを195/65R15とし、図1に示す溝12、14、ブロック16が形成されているトレッドパターンを有するとともに、1つのブロック16に6本の3次元サイプが形成された空気入りタイヤであって、表1に示す諸条件(1)から(10)、即ち
(1)各サイプのブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とが異なる(図2に示す)タイプの3次元サイプを採用したか否か(3次元サイプのタイプ)、
(2)ブロックの少なくともタイヤ周方向のいずれか半分の領域において、タイヤ周方向のいずれかの向きに移行するにつれて、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角を順次変化させたか否か(即ち、回転方向が指定されているタイヤについては図3、図6(c)のいずれのタイプの3次元サイプを採用したか:3次元サイプの配設のタイプ)なお、回転方向が指定されていないタイヤについては、図5(b)のタイプの3次元サイプを採用したものとした。
(3)上記(1)の条件を満たす特定サイプが、タイヤ赤道線の各側において、接地幅のタイヤ幅方向最外部のいずれの領域に配設されているか否か(特定サイプのタイヤ幅方向両最外部配設領域)、
(4)サイプの、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角θ(サイプの延在方向のなす角θ)、
(5)サイプに底上げ部が形成されているか否か(底上げ部の存在)、
(6)回転方向が指定され、蹴り出し側領域に配設されたサイプの平均深さ(深さ1)が、踏み込み側領域に配設されたサイプの平均深さ(深さ2)よりも小さいか否か(深さ1と深さ2との関係)、
(7)蹴り出し側領域に配設されたサイプの平均深さの、踏み込み側領域に配設されたサイプの平均深さに対する割合((深さ1/深さ2)×100)、
(8)底上げ部の底上げ高さが、タイヤ周方向のいずれかの向きに移行するにつれて同一か、或いは、順次変化しているか(底上げ部高さの変化態様)、
(9)スノートラクションインデックスSTIの、及び
(10)トレッド部のキャップトレッドゴム層のJIS A硬度(0℃)
に従い、実施例1から実施例17の空気入りタイヤを作製した。なお、実施例1から実施例10の空気入りタイヤは、回転方向が指定されている空気入りタイヤであり、実施例11から実施例17の空気入りタイヤは回転方向が指定されていない空気入りタイヤである。
(1)各サイプのブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とが異なる(図2に示す)タイプの3次元サイプを採用したか否か(3次元サイプのタイプ)、
(2)ブロックの少なくともタイヤ周方向のいずれか半分の領域において、タイヤ周方向のいずれかの向きに移行するにつれて、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角を順次変化させたか否か(即ち、回転方向が指定されているタイヤについては図3、図6(c)のいずれのタイプの3次元サイプを採用したか:3次元サイプの配設のタイプ)なお、回転方向が指定されていないタイヤについては、図5(b)のタイプの3次元サイプを採用したものとした。
(3)上記(1)の条件を満たす特定サイプが、タイヤ赤道線の各側において、接地幅のタイヤ幅方向最外部のいずれの領域に配設されているか否か(特定サイプのタイヤ幅方向両最外部配設領域)、
(4)サイプの、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角θ(サイプの延在方向のなす角θ)、
(5)サイプに底上げ部が形成されているか否か(底上げ部の存在)、
(6)回転方向が指定され、蹴り出し側領域に配設されたサイプの平均深さ(深さ1)が、踏み込み側領域に配設されたサイプの平均深さ(深さ2)よりも小さいか否か(深さ1と深さ2との関係)、
(7)蹴り出し側領域に配設されたサイプの平均深さの、踏み込み側領域に配設されたサイプの平均深さに対する割合((深さ1/深さ2)×100)、
(8)底上げ部の底上げ高さが、タイヤ周方向のいずれかの向きに移行するにつれて同一か、或いは、順次変化しているか(底上げ部高さの変化態様)、
(9)スノートラクションインデックスSTIの、及び
(10)トレッド部のキャップトレッドゴム層のJIS A硬度(0℃)
に従い、実施例1から実施例17の空気入りタイヤを作製した。なお、実施例1から実施例10の空気入りタイヤは、回転方向が指定されている空気入りタイヤであり、実施例11から実施例17の空気入りタイヤは回転方向が指定されていない空気入りタイヤである。
これに対し、タイヤサイズを195/65R15とし、図1に示す溝12、14、ブロック16が形成されたトレッドパターンを有するとともに、1つのブロック16に6本の3次元サイプが形成された空気入りタイヤであって、各サイプのブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とが同一である(図4に示す)タイプの3次元サイプを採用した、従来例の空気入りタイヤを作製した。
このように作製した、実施例1から実施例18及び従来例の各試験タイヤを、15x6Jのリムに装着して空気圧200kPaを付与し、耐久性能と氷上での制動性能とについて評価を行った。これらの結果を表1に併記する。
(耐久性能)
ドラム径1707mmのドラムを用いて、JIS D−4230、JATMA Y/B 2012年版の規定荷重耐久性を行った。次いで、ドラム径1707mm、速度81km/hとし、荷重を20%ずつ5時間ごとに増加させて空気入りタイヤが破壊するまで試験を行ない、破損したときの走行距離を測定した。この結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、数値が大きいほど、耐久性能が優れていることを示す。
ドラム径1707mmのドラムを用いて、JIS D−4230、JATMA Y/B 2012年版の規定荷重耐久性を行った。次いで、ドラム径1707mm、速度81km/hとし、荷重を20%ずつ5時間ごとに増加させて空気入りタイヤが破壊するまで試験を行ない、破損したときの走行距離を測定した。この結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、数値が大きいほど、耐久性能が優れていることを示す。
(氷上での制動性能)
上記のようにリムに装着した各試験タイヤを、排気量1200CCのセダン型車両(前輪駆動車)に装着し、氷盤路面において、時速40kmで走行した状態からの制動距離を測定して従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、数値が大きいほど、氷上での制動性能が優れていることを示す。
上記のようにリムに装着した各試験タイヤを、排気量1200CCのセダン型車両(前輪駆動車)に装着し、氷盤路面において、時速40kmで走行した状態からの制動距離を測定して従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、数値が大きいほど、氷上での制動性能が優れていることを示す。
なお、表1中、実施例11から17については、回転方向が指定されていない空気入りタイヤについての例であるため、条件6、7については設定されていない。
表1によれば、本発明の技術的範囲に属する(サイプのブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向との関係について所定の改良を加えた)実施例1から実施例17の空気入りタイヤについては、いずれも、本発明の技術的範囲に属しない、従来例の空気入りタイヤに比べて、氷上での制動性能を発揮しつつ、耐久性能が改善されていることが判る。
本発明は以下の態様を包含する。
(1)複数本の周方向溝と上記周方向溝に対して傾斜する複数本の傾斜溝とにより、複数のブロックが形成され、上記ブロックのそれぞれに、タイヤ幅方向及びタイヤ径方向の双方において屈曲して延在する少なくとも1つのサイプが配設された空気入りタイヤにおいて、少なくとも1つのサイプについて、サイプのブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とが異なり、サイプ底での仮想延在方向がタイヤ幅方向に対して傾斜している、空気入りタイヤ。
(2)上記ブロックの少なくともタイヤ周方向のいずれか半分の領域において、タイヤ周方向のいずれかの向きに移行するにつれて、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角が順次変化している、上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
(3)上記サイプは、タイヤ赤道線のタイヤ幅方向各側において、接地幅のタイヤ幅方向最外部30%の領域に配設されている、上記(1)又は(2)に記載の空気入りタイヤ。
(4)上記サイプの、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角が15°以上である、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
(5)上記サイプに底上げ部を形成した、上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
(6)回転方向が指定され、蹴り出し側領域に配設されたサイプの平均深さが、踏み込み側領域に配設されたサイプの平均深さよりも小さい、上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
(7)蹴り出し側領域に配設されたサイプの平均深さが、踏み込み側領域に配設されたサイプの平均深さの50%以上80%以下である、上記(6)に記載の空気入りタイヤ。
(8)上記底上げ部の底上げ高さが、タイヤ周方向のいずれかの向きに移行するにつれて順次変化している、上記(5)から(7)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
(9)スノートラクションインデックスSTIが160以上240以下である、上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
(10)トレッド部のキャップトレッドゴム層のJIS A硬度(0℃)が40以上60以下である、上記(1)から(9)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
1 空気入りタイヤ
10 トレッド部
11 トレッド表面
12 周方向溝
14 傾斜溝
16 ブロック
18、18´ サイプ
18a、18a´ サイプ18のブロック表面Sでの仮想延在方向を示す実線
18b、18b´ サイプ18のサイプ底Bでの仮想延在方向を示す点線
18X サイプ18のブロック表面での仮想延在方向を示す実線
18Y サイプ18のサイプ底での仮想延在方向を示す点線
B サイプ底
CA タイヤの接地面
CL タイヤ赤道面(タイヤ赤道線)
R 底上げ部
S ブロック表面
W1 接地幅
W2 ブロック16のタイヤ幅方向領域の寸法
θ サイプの、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角
10 トレッド部
11 トレッド表面
12 周方向溝
14 傾斜溝
16 ブロック
18、18´ サイプ
18a、18a´ サイプ18のブロック表面Sでの仮想延在方向を示す実線
18b、18b´ サイプ18のサイプ底Bでの仮想延在方向を示す点線
18X サイプ18のブロック表面での仮想延在方向を示す実線
18Y サイプ18のサイプ底での仮想延在方向を示す点線
B サイプ底
CA タイヤの接地面
CL タイヤ赤道面(タイヤ赤道線)
R 底上げ部
S ブロック表面
W1 接地幅
W2 ブロック16のタイヤ幅方向領域の寸法
θ サイプの、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角
Claims (10)
- 複数本の周方向溝と前記周方向溝に対して傾斜する複数本の傾斜溝とにより、複数のブロックが形成され、前記ブロックのそれぞれに、タイヤ幅方向及びタイヤ径方向の双方において屈曲して延在する少なくとも1つのサイプが配設された空気入りタイヤにおいて、
少なくとも1つのサイプについて、サイプのブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とが異なり、サイプ底での仮想延在方向がタイヤ幅方向に対して傾斜していることを特徴とする、空気入りタイヤ。 - 前記ブロックの少なくともタイヤ周方向のいずれか半分の領域において、タイヤ周方向のいずれかの向きに移行するにつれて、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角が順次変化している、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記サイプは、タイヤ赤道線のタイヤ幅方向各側において、接地幅のタイヤ幅方向最外部30%の領域に配設されている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記サイプの、ブロック表面での仮想延在方向とサイプ底での仮想延在方向とのなす角が15°以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記サイプに底上げ部を形成した、請求項1から4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 回転方向が指定され、蹴り出し側領域に配設されたサイプの平均深さが、踏み込み側領域に配設されたサイプの平均深さよりも小さい、請求項1から5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 蹴り出し側領域に配設されたサイプの平均深さが、踏み込み側領域に配設されたサイプの平均深さの50%以上80%以下である、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
- 前記底上げ部の底上げ高さが、タイヤ周方向のいずれかの向きに移行するにつれて順次変化している、請求項5から7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
- スノートラクションインデックスSTIが160以上240以下である、請求項1から8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
- トレッド部のキャップトレッドゴム層のJIS A硬度(0℃)が40以上60以下である、請求項1から9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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-
2013
- 2013-11-25 JP JP2013243144A patent/JP2015101211A/ja active Pending
Cited By (4)
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CN108349328A (zh) * | 2015-11-27 | 2018-07-31 | 横滨橡胶株式会社 | 充气轮胎 |
EP3381719A4 (en) * | 2015-11-27 | 2019-05-01 | The Yokohama Rubber Co., Ltd. | PNEUMATIC |
CN108349328B (zh) * | 2015-11-27 | 2020-06-16 | 横滨橡胶株式会社 | 充气轮胎 |
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