JP2015100906A - インパクト工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】
破断して挿入穴に残ってとれない先端工具を、本体を分解することなく容易に取り外せるようにしたインパクト工具を提供する。
【解決手段】
モータと、打撃機構を有し、打撃機構によって打撃される出力軸(アンビル36)を有し、アンビル36に先端工具を装着するための装着穴が形成されたインパクト工具において、装着穴は軸方向と垂直な断面形状が多角形状であり、出力軸の外周面に外部から出力軸の回転を抑止するための係合部(二面幅38)を設けた。二面幅38は、出力軸の外周部に形成された対向する平面(曲面の一部を面取りした部分)であり、二面幅38を設けることによって、出力軸の外周部にスパナや専用工具を装着することができ、出力軸(アンビル)の回転を阻止できる。回転を抑止した状態で出力軸を打撃することにより装着穴内に固着した先端工具を効率よく取り外すことができる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、モータ等の駆動源の回転を回転打撃力に変換して先端工具に伝達するインパクト工具に関する。
手持ち式のインパクト工具、特にバッテリに蓄電された電気エネルギーにて駆動するコードレスタイプのインパクト工具が広く用いられている。インパクトドライバ等のインパクト工具においては、例えば特許文献1に開示されるように、モータ等の駆動源によって回転するスピンドルと、スピンドルの前方でメタルを介して同軸で軸支され、ビットやソケット等の先端工具の装着穴が前端に形成されたアンビルと、スピンドルの回転を回転打撃力としてアンビルに伝達する打撃機構とを備え、スピンドルの回転に伴う打撃機構の動作で、アンビルに回転打撃力を付与可能としている。近年ではモータ技術の向上、バッテリ出力の増大等によりインパクト工具のモータパワーも徐々に向上しているが、その結果、先端工具の破断や折損の発生が懸念されるようになっている。
特開2008−278633号公報
インパクト工具で何らかの理由によって先端工具が折損又は破断した場合には、装着穴から装着された先端工具を引き出して、別の先端工具に付け替えることによって作業を継続することができる。この先端工具の破損の形態としては、先端工具の先端部(ネジ山)が破損したり、先端工具が折れてしまったり、先端工具が装着穴に固着する、別の表現をすればかじられる状態となってしまうことがある。この「かじる」という現象は、例えば、材質的に堅く装着穴を有する出力軸によって、先端工具の一部が変形する程度に嵌合してしまい、通常の力では装着穴から取り出せなくなる様な状態を指す。この状態の例を示すのが図11である。図11(1)は正常時のアンビル(出力軸)136と先端工具50の係合状態を示す断面図である。先端工具50の外面と装着穴136aの内壁の間にはわずかながらの隙間を有している。隙間は先端工具を抜き差し可能にするためであり、わかりやすくするために図面では隙間を大きめに図示したが、実用上問題ない程度に必要最小限程度とすることが好ましい。このような状態にて先端工具50とアンビル136が保持されることにより、インパクト工具を用いての締め付け作業が可能となる。
ここで、何らかの理由で(2)のように先端工具50がアンビル136に対して許容範囲を超えて相対回転してしまうことがあり得る。先端工具50も装着穴136aも(2)に示すような相対回転ができないように形成されるため、(2)の状態では柔らかい側の素材が主に変形(塑性変形)してしまう現象が生じている。一般的な電動工具では出力軸の材質と先端工具の材質を比較すると出力軸側の方が堅いため、先端工具50側の方が多く変形する。この状態を示すのが図11(3)であって、(3)は(2)のF部の部分拡大図である。回転打撃力はアンビル36、先端工具50および図示しないねじ等に伝達されていくが、アンビル36、先端工具50には捻りの力が加わっている。このとき、先端工具50を内側に挿入できるアンビル36よりも先端工具50に大きな応力が生じるため、先端工具50の方が先に破損することとなるが、回転打撃力によって破損した先端工具50がアンビル36の先端工具装着穴に食い込む状態となってしまうことがある。(2)の状態では先端工具50の角部と装着穴136aの角部がずれてしまい、先端工具50の角部が装着穴136aの内壁の平面部にまで至ってしまい、先端工具50の角部が変形してしまう。つまり、本来ならば仮想的に記載した外縁位置151bにあるべき先端工具50が、お互いの変形によって外縁部151aのように変形したものであって、この状態を本明細書では「食い込む状態」と表現している。理解を容易にするために図11(3)では先端工具50とアンビル136側の双方が変形したように図示しているが、どちらがどの程度変形するかは両者の材質に大きく左右される。
インパクト工具においてこのようなかじり現象が発生した際には、先端工具50を万力等で固定して回転不能な状態に保持し、インパクト工具の本体(ハウジング)が回転しないように保持しながらトリガを引いてモータを回転させる。この場合、先端工具50は工具本体に対して回転することができないため、モータの起動直後にすぐに打撃機構によって複数回の打撃が行わる。この打撃が行われるとその衝撃が出力軸を介して先端工具50に伝わるため、アンビル136の食い込む状態が解消され、先端工具50を装着穴136aから取り出すことができる。ところで、破断した先端工具がアンビルの先端工具装着穴に残り、取り出せなくなる事例も増えてきている。この状態を示すのが図10である。図10においては、先端工具50とアンビルの136の間に図11(3)で示すようなかじり状態が生ずると共に、矢印56で示すように先端工具50が破断面55a、55bにて破断してしまった場合を示している。このような事例の場合は、アンビル136内に残った先端工具50を万力で固定することができないため、本体を分解してアンビル136ごと交換する必要があり、メンテナンス性に難がある上に交換費用がかかるという問題があった。
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、アンビルの装着穴に残って取り出せない折損又は破断した先端工具を、簡単に取り出せるようにしたインパクト工具を提供することにある。
本発明の別の目的は、アンビルの装着穴に残って取り出せない破断した場合に、アンビルを交換しなくてもすむようにしたインパクト工具を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、工具本体の外部からアンビル又は出力軸の回転を阻止できるようにして、出力軸に衝撃を加えることができるようにしたインパクト工具を提供することにある。
本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次の通りである。
本発明の一つの特徴によれば、モータ等の駆動源と、減速機構を介して又は介さずに直接駆動源によって回転される打撃機構を有し、打撃機構によって打撃される出力軸に先端工具を装着するための装着穴と先端工具の装着を保持するための先端工具装着部が形成されたインパクト工具において、装着穴は軸方向と垂直な断面形状が多角形状であり、出力軸の外周面に外部から出力軸の回転を抑止するための係合部を設けた。係合部は、出力軸の外周部に形成された少なくとも2面以上の対向する平面(曲面の一部を面取りした部分)か、又は、出力軸の外周部に形成された複数の凹部又は凸部にて構成できる。このように係合部を設けることによって、出力軸の外周部にスパナや専用工具を装着することができ、出力軸(アンビル)の回転を阻止することができ、回転を抑止した状態で出力軸を打撃することにより装着穴内に固着した先端工具を効率よく取り外すことができる。
本発明の他の特徴によれば、打撃機構は、ハンマと、ハンマによって打撃されるアンビルによって形成され、出力軸はアンビルと一体に製造され、先端工具装着部は、アンビルの前端付近に形成されアンビルに対して軸方向に摺動可能なガイドスリーブを有する。係合部は、ガイドスリーブを通常位置から移動させた際に露出するアンビル部分に設けるか、ガイドスリーブの後端と打撃機構を収容するハンマケースの前端との間であって、外部に露出するアンビルの部分に形成されるようにすれば良い。
本発明のさらに他の特徴によれば、出力軸とガイドスリーブに、回転方向に対する相対回転を防止する回り止め部をそれぞれ設け、ガイドスリーブの回転を阻止する事により出力軸の回転を阻止できるように構成した。このようにガイドスリーブを出力軸に対して回転方向に相対回転(空回り)しないように構成したため、スパナや万力等でガイドスリーブの回転ができないように固定する事により、出力軸の回転を間接的に阻止することができる。この構成によれば、ガイドスリーブを有する先端工具装着部を分解しなくても良いので、食い込み時に先端工具をきわめて容易に取り外しすることができる。回り止め部は、出力軸とガイドスリーブに形成され互いに係合できる少なくとも1面以上の平らな面又は凹凸部であり、ガイドスリーブの外周部には少なくとも2面以上の対向する平面部を設けると良い。
本発明によれば、アンビルの装着穴に残って取り出せない折損又は破断した先端工具を、出力軸の回転を阻止した状態でハンマによるアンビルの打撃動作を行うことにより、容易に固着した先端工具を出力軸から取り外すと共に、破断した先端工具を簡単に取り出すことができる。また、先端工具が装着穴の中で破断してもアンビルを交換する必要が無いので、経済性に優れ、使い勝手の良いインパクト工具を実現できる。
本発明の実施例に係るインパクト工具の内部構造を示す縦断面図である。 図1の打撃機構30と先端工具装着部付近を示す部分拡大断面図である。 図1のアンビル36の単体形状を示す側面図である。 図3のA−A部の断面図である。 本発明の第二の実施例に係るインパクト工具の打撃機構と先端工具装着部付近を示す部分拡大断面図である。 図5のB−B部の断面図である。 本発明の第三の実施例に係るインパクト工具の打撃機構と先端工具装着部付近を示す部分拡大断面図である。 図7のC−C部及びD−D部の断面図である。 本発明のその他の実施例に係る出力軸の断面形状の説明する図である。 インパクト工具において先端工具50が破断した例を説明するための図である。 (1)(2)は図10のE−E部の断面図であって、(3)は(2)のF部の部分拡大図である。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の構成部品には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
図1は、本発明に係るインパクト工具1の内部構造を示す図である。インパクト工具1は、充電可能なバッテリ5を電源とし、モータ3を駆動源として打撃機構30を駆動し、出力軸であるアンビル36に回転力と打撃力を与え、アンビル36の装着穴36aに保持されるビットやソケット等の図示しない先端工具に回転打撃力を間欠的に伝達してボルトやナット、ねじを締結する。インパクト工具1は、外形を形成する外枠であるハウジング2を備える。ハウジング2は、前後方向に延びる略円筒形の胴体部2aと、胴体部2aの軸方向(前後方向)の中央付近から略直角に下側に延びるものであって側面視略T字状を成すように連接されたハンドル部2bと、ハンドル部2bの端部に形成されるバッテリ取付部2cで構成される。胴体部2aの前方側には打撃機構30を収容するためのハンマケース4が設けられる。ここで、インパクト工具1の筐体(広義のハウジング)は、プラスチック等の合成樹脂の成形品にて製造されるハウジング2(狭義のハウジング)と、アルミ合金等の金属製のハンマケース4によって構成される。
ハウジング2の胴体部2aの内部には、駆動源であるモータ3と、モータ3の回転を減速させるものであって遊星歯車にて構成される減速機構20が収容され、ハンマケース4には、減速機構20によって減速させたモータ3の回転を回転打撃力に変換して先端工具に伝達する打撃機構30が収容される。モータ3と、減速機構20と、打撃機構30とは、モータ3の回転軸3dの軸線と同軸上に並んで配置され、さらに、減速機構20と打撃機構30も同軸上に直列に並ぶように配置される。モータ3の回転軸3dは、ハウジング2の胴体部2aの中央部付近に設けられる軸受19aと後端側の軸受19bによって回転可能に保持され、モータ3の前方には、回転軸3dと同軸に取り付けられモータ3と同期して回転するロータファン14が設けられ、モータ3の後方には、モータ3を駆動するためのインバータ回路基板12が配設される。ロータ3aは、マグネット3cによって形成される磁路を形成するもので、例えば4つの平板状のスロットが形成された薄い金属板の積層により構成される。ロータファン14は、後方の内周側から空気を吸引し、前方側の半径方向外側に排出する、いわば遠心ファンであり、回転軸3dが貫通する貫通穴の周囲から放射状に延びる複数のブレードを有する。ロータファン14によって起こされる空気流は、空気取入孔17a、17b及びインバータ回路基板12の周囲のハウジング部分に形成されたスロット(図示せず)からハウジング2の内部に取り込まれ、主にロータ3aとステータ3bの間を通過するように流れ、ロータファン14の後方から吸引されてロータファン14の半径方向に流れ、ロータファン14の周囲のハウジング部分に形成された空気排出孔(図示せず)からハウジング2の外部に排出される。インバータ回路基板12はモータ3の外形とほぼ同形の円形の基板であり、この基板上にはFET等の複数のスイッチング素子13や、ホールIC等の回転位置検出素子15が搭載される。
ハンドル部2b内の上部にはトリガスイッチ7が配設され、トリガスイッチ7の前方にはトリガスイッチ7を操作するトリガ7aが設けられる。トリガ7aの上方には、モータ3の回転方向を正方向又は逆方向に切替えるための正逆切替レバー8が設けられる。ハンドル部2b内の下部には、トリガ7aの引き動作によって前記モータ3の速度を制御する機能を備えた制御回路基板9が収容され、この制御回路基板9は、バッテリ5とトリガスイッチ7に電気的に接続される。制御回路基板9は、信号線11を介してインバータ回路基板12と接続される。ハンドル部2bの下方には、ニカド電池、リチウムイオン電池等を含んで構成されるバッテリ5が着脱可能に装着される。バッテリ5は複数本の二次電池をパック化したもので、充電するときはリリースボタン5aを押しながらインパクト工具1からバッテリ5を取り外して、図示しない専用の充電器に装着することにより充電される。バッテリ取付部2cの前方上面には、制御パネル10が設けられる。制御パネル10には、モータの回転数の設定を含む各種の操作ボタンや、電池残量の表示ランプが搭載される。バッテリ取付部2cの右側方又は左側方には、ベルトフック6が取り付けられる。胴体部2aの前方下側には、先端工具50の先端付近を照射するためのLED等の発光手段48が設けられる。
減速機構20は、サンギヤと、リングギヤと、複数の遊星ギヤを含んで構成される公知の遊星歯車減速機構である。スピンドル31は、遊星ギヤを複数支承する遊星キャリアの機能を兼ねており、軸受18bを介して回転可能に支承される。スピンドル31にはハンマ33が前後方向へと移動可能に換装され、スピンドル31とハンマ33はカム機構により連結される。スピンドル31とハンマ33とを連結するカム機構は、スピンドル31の外周面に軸方向に対して斜めに形成された一対のスピンドルカム溝31aと、一対のスピンドルカム溝31a内にそれぞれ挿入されたボール32と、ハンマ33の内周面に形成されたハンマカム溝33aで構成される。アンビル36は、メタル18aの内周に嵌合され、回転可能に支承される。ハンマ33は、スプリング35によって常に先端方向(前方)に付勢されており、最も先端側に位置する静止時には、ボール32とスピンドルカム溝31aとの係合によって、アンビル36の後端面と所定の隙間を隔てた位置にある。そして、ハンマ33の相対向する回転平面上の2箇所には爪部34が形成され、アンビル36の後端部分から相反する径方向に突出する羽根部37が形成され、2つの爪部34が2つの羽根部37に同時に衝突できるように、それぞれが対称位置に形成される。
トリガスイッチ7が引かれてモータ3が起動されると、正逆切替レバー8で設定された方向にモータ3が回転を始め、その回転力は減速機構20によって減速されてスピンドル31に伝達される。スピンドル31が所定の速度で回転駆動されると、スピンドル31の回転は、カム機構を介してハンマ33に伝達され、ハンマ33が半回転しないうちに、ハンマ33の爪部34がアンビル36の羽根部37に係合してアンビル36が回転される。締め付け作業が進行してハンマ33がアンビル36から受ける反力が大きくなると、ハンマ33は、カム機構のスピンドルカム溝31aに沿ってスプリング35を圧縮しながらモータ3側へと後退動を始めることによりハンマ33とスプリング35との間に相対回転が生じる。ハンマ33がさらに後退動すると、ハンマ33の爪部34がアンビル36の羽根部37を乗り越えて両者の係合が解除される。すると、ハンマ33は、スピンドル31の回転力に加えて、スプリング35に蓄積された弾性エネルギーとカム機構の作用とによって回転方向及び前方に急速に加速されつつ、スプリング35の付勢力によって前方、すなわちアンビル36側へと移動され、ハンマ33の爪部34がアンビル36の羽根部37に再び係合(打撃)して一体的に回転し始める。このとき、強力な回転打撃力が羽根部37を介してアンビル36に加えられるため、アンビル36に装着された先端工具50を介して図示しないねじ等に回転打撃力が伝達される。以後、同様の動作が繰り返されて先端工具50からねじ等に回転打撃力が間欠的に繰返し伝達され、ねじやボルト等が図示しない被締付材にねじ込まれる。
図2は図1の先端工具50の取付部付近の拡大断面図である。スピンドル31の前端には、前方に向けて嵌合軸31bが突出して形成され、アンビル36の後端に形成される嵌合穴36bに接続され、アンビル36がスピンドル31によって同軸回転可能に支承される。本実施例ではアンビル36はインパクト工具1の出力軸と一体に形成されており、その前端には先端工具50が着脱可能に装着される軸方向(前後方向)と垂直な断面が六角形状の装着穴36aが形成されるが、アンビル36と出力軸は別体部品を接続するように構成しても良い。装着穴36aに装着される先端工具50は、装着穴36aの内側形状と同様に軸方向に垂直な断面形状が六角形状となっており、両端部から一定の距離を隔てた箇所に六角形状の幅寸法より小さい寸法のくびれ部50cが形成される。くびれ部50cが2カ所設けられるのは先端工具の端部には同一又は異なる形状のネジ山50a、50bが形成されるため、それらを択一的に使用するためである。
アンビル36の前端部には、ボール42が装着穴内部に落ちないように設計されたボール挿入穴36dが形成され、先端工具50をワンタッチで取り付けるための装着部40が設けられる。ボール挿入穴36dはボール42が径方向外側から内側に抜け落ちることがないようにその形状が形成される。装着部40においては、ガイドスリーブ41が図2の状態から前方に移動可能なように、ガイドスプリング43、ワッシャ44、止め輪45によって係止される。ガイドスプリング43は、その後端がガイドスリーブ41に形成されたフランジ部41bの前側側面にて保持され、前側端部がワッシャ44に当接する。ワッシャ44は、アンビル36の前端付近の円周方向に連続する溝部36fに装着される止め輪45によって軸方向の移動しないように保持される。ガイドスリーブ41は金属製であるのが好ましく、例えば鉄又は任意の合金である。ガイドスリーブ41の軸方向中央よりやや後方側に形成されるフランジ部41bは、内周面がボール42の外周側と当接することによって、図2に示す状態にあるときにボール42の外周側への移動を制限する。この際、ボール42はくびれ部50cに係合する位置にあるため、図2の状態ではガイドスリーブ41を軸方向前方に動かさない限り先端工具50は抜けない。ガイドスリーブ41が図2のような定常位置に係止されるとき、ボール42が先端工具のくびれ部50cに落ち込み、ボール42の移動をガイドスリーブ41に形成された径方向内側に突出するフランジ部(凸部)41bの内面にて制限することにより、装着された先端工具50が軸方向に動くことを抑制し、先端工具50が出力軸たるアンビル36から脱落しないように構成される。ガイドスリーブ41を図2に示す定常位置から軸方向前方に移動させると、ボール42の外周側に位置していたフランジ部41bが前方側に移動するため、ボール42が外周側への移動を制限しなくなるので、その状態で先端工具50を軸方向に前方に引き抜くとくびれ部50cの曲面に沿ってボール挿入穴36dの内部でボール42が径方向外側に移動し、先端工具50の径方向外側にまで到達するので、先端工具50は抵抗なく前方側に引き抜くことができる。
図3は、図1のアンビル36単体の形状を示す側面図である。図3に示すように、アンビル36の前方端部には装着部40を取り付けるためにメタル18a(図1参照)よりも径が細い細径部36eが形成され、細径部36eの後方側であって径がやや太くなった部分の前側付近に二面幅38が形成される。図3では、四角形に形成された二面幅38の対角線を線にて結んだように図示しているが、これは曲面では無くて平面であることを示すために図示したものである。細径部36eの前方側には、装着部40の止め輪45を固定するための周方向に連続した溝部36fが形成される。アンビル36の後端付近には、円柱状の中央部から径方向外側に延びる羽根部37が形成される。二面幅38は、ガイドスリーブ41に対向する位置に形成すると好ましく、ガイドスリーブ41が定常位置にあるときはガイドスリーブ41によって覆われて外部から二面幅38が見えないようにし、図10のように先端工具50の破断が起きた場合には、アンビル36の先端の装着部40、即ち、ガイドスリーブ41、ボール42、ガイドスプリング43、ワッシャ44、止め輪45を取り外すことで、アンビル36に形成している二面幅38を外部に露出させることができる。尚、ガイドスリーブ41が定常位置にあるときはガイドスリーブ41によってその一部又は全部が覆われるが、ガイドスリーブ41を前方に移動させたときに外部から二面幅38が完全に露出するような構成とすれば、二面幅38を用いて出力軸の回転を阻止するために装着部40を取り外す必要が無い。
図4は図3のA−A部の断面図である。アンビル36には軸方向に垂直な断面形状が正六角形の装着穴36aが形成され、装着穴36aの対向する2カ所にはボール42を収容するためのボール挿入穴36dが設けられる。ボール挿入穴36dは、アンビル36の中心軸に近い側の開口(内周側開口)が狭くなった形状とされる。つまり、ボール42はボール挿入穴36dの外周側の開口からは挿入可能であるが、内周側の開口から径方向内側には貫通できないような形状とされる。2つのボール挿入穴36dと角度にして90度ずつ離れた位置の外周部には二面幅38が形成される。二面幅38は中心軸から見て対向する二方向(ここでは上下方向)に位置する平行な平面あって、この二面幅38を平行な対向面を有する固定部材、例えばスパナや専用の固定具等によって固定することによってアンビル36の回転を阻止することができる。この二面幅38を利用してアンビル36を固定し、トリガ7aを引くことによってモータ3を起動させてハンマ33がアンビル36を打撃し、先端工具50がアンビルの先端工具装着穴にくい込んだ時と同様の打撃力をアンビル36および先端工具50に加えることができ、先端工具装着穴に残った先端工具50を取り外すことができるようになる。
図5は本発明の第二の実施例に係るインパクト工具の打撃機構と先端工具装着部付近を示す部分拡大断面図である。第二の実施例においてはアンビル66の形状が異なり、形成される二面幅68の位置を、ガイドスリーブ41とハウジングとの間に設けた点で第一の実施例と異なる。その他の構成部品は第一の実施例と同じものを用いることができる。アンビル66は第一の実施例のアンビル36に比べて軸方向に長く構成される。装着部40の後端、特にガイドスリーブ41の後端部と広義のハウジングの前端部(ここではハンマケース4の前端)の距離dは、二面幅68の前後方向長さとほぼ同じ又はわずかに長くなるように形成される。第二の実施例ではインパクト工具の前後長が長くなるが、二面幅68が外から見える箇所に形成されるため、装着部40、即ち、ガイドスリーブ41、ボール42、ガイドスプリング43、ワッシャ44、止め輪45を取り外すこと無くスパナ等を容易に差し込むことができ、第一の実施例と同様の効果を得ることができる。
図6は、図5のB−B部の断面図である。二面幅68はアンビル36の外周部の一部を削ることにより形成することができ、第一の実施例の二面幅38とほぼ同じ形状であるが、本図から理解できるようにボール42を配置する貫通穴66dの軸方向位置と、二面幅68の軸方向位置が異なるため、アンビル66の強度確保の点からは有利である。
図7は本発明の第三の実施例に係るインパクト工具の打撃機構と先端工具装着部付近を示す部分拡大断面図である。第三の実施例においてはアンビル86の形状と、ガイドスリーブ91の形状に特に特徴がある。ここでは、アンビル86とガイドスリーブ91が回転方向に対して相対回転不能なように固定され、ガイドスリーブ91を外部から固定するとアンビル86も回転不能となるように構成した。つまり、ガイドスリーブ91はアンビル86に対して軸方向には所定の範囲で移動可能なように保持されるが、回転方向には回転不能に保持される。保持部90を構成する部品のうち、ガイドスリーブ91を除くその他の部品、即ち、ボール、ガイドスプリング、ワッシャ、止め輪は第一、第二の実施例と同一の部品を用いることができる。
図8は、図7のC−C部及びD−D部の断面図である。(1)からわかるように、アンビル86の摺動部に一面幅88と、ガイドスリーブ91の内周面にほぼ同寸法の一面幅91dが互いに係合可能なように設けられる。一方、(2)に示すようにガイドスリーブ91の外周面のうち対向する2カ所には二面幅91eを設けるように構成した。(2)に示すD−D断面図においては図示を省略し、ガイドスリーブ91の内側とアンビル86の外側には空間になっているが、実際にはこの空間にガイドスプリングが配置される。ガイドスプリングが摺動する空間内には、アンビル86とガイドスリーブ91の回転方向に対する回し止め部を配置することができないので、(1)で示すようにガイドスプリングよりも後方側の部分にてガイドスリーブ91に回し止め部、即ち、一面幅88、91dを設けるようにした。尚、アンビル36もしくはガイドスリーブ91の摺動部に設ける一面幅88、91dは、周方向に一カ所だけでなく、複数箇所設けるように構成しても良い。また、アンビル36とガイドスリーブ91は相対回転ができないように形成すれば良いので、キー溝と軸方向に連続した凸部により回り止めの構造を実現しても良い。さらに、ガイドスリーブ91の外周部に設ける二面幅91eは対向する2面だけでなく、それ以上の複数面の平面部を設けるように構成しても良い。
以上の第三の実施例によれば、ガイドスリーブ91の外周部の二面幅91eを万力等で固定することにより、アンビル86の先端に設けられた装着部のガイドスリーブ91、ボール、ガイドスプリング、ワッシャ、止め輪を取り外すことなくアンビル86の回転を間接的に固定することができ、第一及び第二の実施例と同様の効果を得ることができる。
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、アンビル36、66、86に形成される回転を抑止するための係合部の形状は種々の形式とすることができる。図9はそのようなアンビルと係合部の形状の代替案を示す図である。これらは例えば図3のA−A部、図5のB−B部、又は、図7のC−C部に相当する位置の断面図である。(1)は第一及び第二の実施例と同じもので、円柱形のアンビル101の外周に二面幅101aを設けたものである。(2)は、円柱形のアンビル102の外周を立方体状にして、軸方向と垂直な断面形状を4つの平面部102aを持つ正方形としたものである。(3)は、円柱形のアンビル103の軸方向と垂直な断面形状を、6つの平面部103aを持つ正六角形としたものである。(4)は円柱形のアンビル104の外周部に2つの凸部104aを形成したものであって、凸部104aは対向する位置(回転対称となる位置)に形成される。(5)は円柱形のアンビル105の外周部に2つの凹部105aを形成したものであって、凹部105aは対向する位置(回転対称となる位置)に形成される。
上述の実施例ではハンマ33が軸方向に後退しながらアンビル86に対して連続回転可能なインパクト工具の例で説明したが、ハンマがアンビルに対して1回転未満の相対回転だけが可能であって、ハンマが軸方向に移動できないような、いわゆる電子パルスタイプのインパクト工具(出願人による特開2011−31313号公報、特開2011−62771号公報等参照)にも同様に適用できる。また、出力軸に装着部40のような先端工具装着部を有する回転工具においても同様に適用できる。
1 インパクト工具 2 ハウジング
2a 胴体部 2b ハンドル部
2c バッテリ取付部 3 モータ
3a ロータ 3b ステータ
3c マグネット 3d 回転軸
4 ハンマケース 5 バッテリ
5a リリースボタン 6 ベルトフック
7 トリガスイッチ 7a トリガ
8 正逆切替レバー 9 制御回路基板
10 制御パネル 11 信号線
12 インバータ回路基板 13 スイッチング素子
14 ロータファン 15 回転位置検出素子
17a、17b 空気取入孔 18a メタル
18b、19a、19b 軸受 20 減速機構
30 打撃機構 31 スピンドル
31a スピンドルカム溝 31b 嵌合軸
32 ボール 33 ハンマ
33a ハンマカム溝 34 爪部
35 スプリング 36 アンビル
36a 装着穴 36b 嵌合穴
36d ボール挿入穴 36e 細径部
36f 溝部 37 羽根部
38 二面幅 40 装着部(先端工具装着部)
41 ガイドスリーブ 41a 太径部
41b フランジ部 41c 細径部
42 ボール 43 ガイドスプリング
44 ワッシャ 45 止め輪
48 発光手段 50 先端工具
50a、50b ネジ山 50c くびれ部
55a、55b 破断面 56 矢印
66 アンビル 66d 貫通穴
68 二面幅 86 アンビル
88 一面幅 90 保持部
91 ガイドスリーブ 91d 一面幅
91e 二面幅
101、102、103、104、105 アンビル
101a 二面幅 102a、103a 平面部
104a 凸部 105a 凹部
136 アンビル 136a 装着穴
151a 外縁部 151b 外縁位置

Claims (8)

  1. 駆動源と、該駆動源によって回転される打撃機構を有し、
    前記打撃機構によって打撃される出力軸に先端工具を装着するための装着穴が形成され、
    前記先端工具の装着を保持するための先端工具装着部を有するインパクト工具において、
    前記装着穴は軸方向と垂直な断面形状が多角形状であり、
    外部から前記出力軸の回転を抑止するための係合部を、前記出力軸に設けたことを特徴とするインパクト工具。
  2. 前記係合部は、前記出力軸の外周部に形成された少なくとも2面以上の対向する平面であることを特徴とする請求項1に記載のインパクト工具。
  3. 前記係合部は、前記出力軸の外周部に形成された複数の凹部又は凸部であることを特徴とする請求項1に記載のインパクト工具。
  4. 前記打撃機構は、ハンマと、前記ハンマによって打撃されるアンビルによって形成され、
    前記出力軸は前記アンビルと一体に製造され、
    前記先端工具装着部は、前記アンビルの前端付近に形成され前記アンビルに対して軸方向に摺動可能なガイドスリーブを有することを特徴とする請求項2又は3に記載のインパクト工具。
  5. 前記係合部は、前記アンビルの前記ガイドスリーブを通常位置から移動させた際に露出する部分に設けたことを特徴とする請求項4に記載のインパクト工具。
  6. 前記係合部は、前記アンビルの前記ガイドスリーブの後端と、前記打撃機構を収容するハンマケースの前端との間に形成されることを特徴とする請求項4又5に記載のインパクト工具。
  7. 前記出力軸と前記ガイドスリーブに、回転方向に対する相対回転を防止する回り止め部をそれぞれ設け、
    前記ガイドスリーブの回転を阻止する事により前記出力軸の回転を阻止できるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のインパクト工具。
  8. 前記回り止め部は、前記出力軸と前記ガイドスリーブに形成され互いに係合できる少なくとも1面以上の平らな面であり、
    前記ガイドスリーブの外周部に少なくとも2面以上の対向する面を設けたことを特徴とする請求項7に記載のインパクト工具。
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