以下、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。本発明は、第一の半導体層及び第二の半導体層を有し、第一の半導体層及び第二の半導体層の少なくとも一方がシリコンからなる層であり、シリコンからなる層の、第一の半導体層と第二の半導体層とが対向する面側のシリコン酸化膜の厚みが2.0nm未満である、太陽電池である。より好ましくは、本発明は、シリコンからなる層ともう一方の半導体層が接しているヘテロ接合太陽電池、あるいはシリコンからなる層ともう一方の半導体層との間にさらに接合界面層を備えるヘテロ接合太陽電池についてである。
シリコンからなる層について説明する。シリコンは、シリコンインゴットをスライスカットすることで得られるシリコンウエハ、そのシリコンウエハを研磨して得られるシリコンウエハが利用できる。また多結晶ウエハとして、溶融したシリコンを流延させ冷却し、その後スライスして作成したウエハを使用できる。さらに基板の上に作製された非晶質シリコンを結晶化させて使用することができる。さらに、CVD法、スパッタ法等を用いてシリコンを成膜時に結晶化させたシリコン層も利用できる。また、シリコンポリマーを成膜し、熱などで結晶化させたシリコンも使用できる。またシリコン粒子をコートし固めたシリコン層も使用できる。
シリコン粒子について説明する。シリコン粒子の製造方法としては、特に限定はなく、例えば、パルス圧力付加オリフィス噴射法を利用した高結晶性半導体マイクロ粒子製造装置を用いた方法、多結晶又は単結晶のシリコンインゴット若しくはウエハを粉砕する方法等によって製造できる。また、ウエハ作製時の切屑なども、シリコン粒子として使用できる。インゴット又はウエハを粉砕する方法としては、乾式粉砕でも湿式粉砕でもよく、双方の方法を用いてもよい。乾式粉砕には、ハンマークラッシャ等が利用できる。湿式粉砕には、ボールミル、遊星ボールミル、ビーズミル、ホモジナイザー等が利用できる。
シリコンがp型半導体の場合、例えば、ホウ素、ガリウム等を添加物としてドープしたシリコンが使用される。シリコンに含まれるこれらの添加物濃度は、1012atom/cm3以上が好ましく、1013atom/cm3以上がより好ましい。また、同添加物濃度は、1021atom/cm3以下が好ましく、1020atom/cm3以下がより好ましい。シリコンの抵抗率は、半導体中における電荷の移動及び空乏層の広がりの観点から、0.0001Ωcm以上が好ましく、0.001Ωcm以上がより好ましい。また、同抵抗率は、1000Ωcm以下が好ましく、100Ωcm以下がより好ましい。
シリコンがn型半導体の場合、例えば、リン、窒素、砒素等を添加物としてドープしたシリコンが使用される。
半導体層として、キャリア移動とコストの観点から単結晶又は多結晶のp型シリコンウエハが好ましい。
シリコンからなる層は、その厚みが50μm以上が好ましい。また、同厚みは、1000μm以下が好ましく、700μm以下がより好ましい。層厚はvertscan2.0(株式会社菱化システム製)や断面SEM観察で測定される。
シリコンからなる層は、空気中で酸化され、表面に自然酸化膜が形成される。本発明の太陽電池において、シリコン酸化膜の厚みが薄い(すなわち厚みが理想的には0nmである)方が発電効率が高いことが分かった。発電効率の観点から、シリコン酸化膜の厚みは2.0nm未満であるが、1.5nm以下が好ましく、1.0nm以下がより好ましい。また、シリコン酸化膜の厚みの下限としては、0nmが好ましい。なお、シリコン酸化膜は、シリコンからなる層の全面を覆う形であっても、島状であってもよい。シリコン酸化膜の除去方法として、酸やアルカリを用いた洗浄が挙げられる。具体的には、フッ酸、フッ酸と硝酸の混合物、フッ酸とフッ化アンモニウムの混合物、フッ化アンモニウム、水酸化カリウム等の水溶液があげられる。また、前記酸やアルカリに添加剤を加えても良い。
シリコン酸化膜の厚みを測定する方法として、X線光電子分光法が挙げられる。
もう一方の半導体層として、半導体単独層または半導体粒子と比誘電率が2以上の化合物を含む混合層が使用できる。前記半導体として、シリコンがp型の場合はn型半導体、シリコンがn型の場合はp型半導体が使用できる。
p型半導体としては、単結晶又は多結晶のシリコンウエハ、アモルファスシリコン膜、CIS系、CIGS系、CZTS系等の化合物半導体層、酸化銅(I)、酸化ニッケル、CuAlO2、CuGaO2、SrCu2O2、LaCuOS、LaCuOSe、CuInO2、ZnRh2O4等の金属酸化物層、シリコン粒子からなる層、酸化銅(I)、酸化銀、一酸化スズ、酸化ニッケル、CuAlO2、CuGaO2、SrCu2O2、LaCuOS、LaCuOSe、CuInO2、ZnRh2O4等の金属酸化物粒子からなる層、CIS系、CIGS系、CZTS系等の化合物半導体粒子からなる層、p型有機半導体からなる層が挙げられる。
化合物半導体に用いられる化合物としては、シリコンゲルマニウム化合物、CIS系化合物、CIGS系化合物、CZTS系化合物、CGS系化合物、CdTe化合物、InP化合物、GaAs化合物、GaSb化合物、GaP化合物、InSb化合物、InAs化合物、ZnTe化合物、ZnSe化合物、FeS化合物、CuS化合物、硫化スズ、硫化アンチモン等が挙げられる。CIS系化合物とは、Cu、In及びS、Cu、In、S及びSe、又はCu、In及びSeからなる化合物のことであり、これらの化合物が併用される態様も含まれる。CIGS系化合物とは、Cu、In、Ga及びS、Cu、In、Ga、S及びSe、又はCu、In、Ga及びSeからなる化合物のことであり、これらの化合物が併用される態様も含まれる。CZTS系化合物とはCu、Zn、Sn及びS、Cu、Zn、Sn、S及びSe、又はCu、Zn、Sn及びSeからなる化合物のことであり、これらの化合物が併用される態様も含まれる。CGS系化合物とは、Cu、Ga及びS、又はCu、Ga、S及びSeからなる化合物のことであり、両化合物が併用される態様も含まれる。なお、化合物半導体粒子に用いられるこれらの化合物は、二種以上を併用してもよい。
p型有機半導体としては、ペンタセン、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン等のペンタセン誘導体、テトラセン、2−ヘキシルテトラセン等のテトラセン誘導体、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)、N,N’−ジフェニル−N、N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)、1,3,5−トリス(3−メチルジフェニルアミノ)ベンゼン(m−MTDATA)等の芳香族アミン系材料が挙げられる。また、その他にも、p型有機半導体としては、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)等のフタロシアニン系錯体、ポリフィリン系化合物、ペリレン系誘導体、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、酸化グラフェン等が挙げられる。さらに、p型有機半導体としては、チオフェンの誘導体、ポリフェニレンビニレン(PPV)の誘導体等が挙げられる。チオフェンの誘導体として、具体的には、P3HT(Poly(3−hexylthiophene−2,5−diyl))、P3OT(Poly(3−octylthiophene−2,5−diyl))、P3DDT(Poly(3−dodecylthiophene−2,5−diyl))、さらにPEDOT系の高分子があげられる。PEDOT系高分子のドーパントは特に限定しないが、例えばPSS(Poly(styrenesulfonate))やPVS(ポリビニルスルホン酸)やドデシルベンゼンスルホン酸またはそれらの塩が挙げられる。それらは、PEDOT:PSSやPEDOT:PVSとして使用される。PEDOT:PSSの商品としてclevios(ヘレウス社製)が挙げられる。前記p型半導体は2種類以上混合して用いても良い。
n型半導体としては、例えば、例えば、単結晶又は多結晶のシリコンウエハ、アモルファスシリコン膜、酸化亜鉛、酸化チタン(ルチル、アナターゼ)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ、フッ素ドープの酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物、CuInO2、12CaO・7Al2O3(C12A7)、Ga2O3等の金属酸化物からなる層、シリコン粒子からなる層、酸化亜鉛、酸化チタン(ルチル、アナターゼ)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ、フッ素ドープの酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物、CuInO2、12CaO・7Al2O3(C12A7)、Ga2O3等の金属酸化物粒子からなる層、n型有機半導体からなる層が挙げられる。
n型有機半導体としては、フッ素化アセン系化合物、フラーレン、60PCBM([6,6]−PhenylC61butyric acid methyl ester)、70PCBM([6,6]−PhenylC71butyric acid methyl ester)等のフラーレン系化合物、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体等が挙げられる。
n型半導体層として、透明性、移動度の観点から金属酸化物が好ましい。金属酸化物は、二種以上を併用してもよい。さらにコスト、印刷性が良好なため、酸化チタンが好ましい。また、金属酸化物がn型半導体であることが好ましい。半導体層は、蒸着法、CVD法、スパッタ法、塗布法で作製することができる。生産性向上や材料の利用効率が高いという観点から塗布法で作製することが好ましい。
金属酸化物粒子を用いる場合、生産性向上や材料の利用効率が高いという観点から塗布法で作製することが好ましい。塗布法で作製する場合、金属酸化物の粒子径は成膜性と基板との密着性との観点から1nm以上が好ましく、5nm以上がさらに好ましい。また高結晶性の観点から200nm以下が好ましく、100nm以下がさらに好ましい。特に、金属酸化物粒子として酸化チタン粒子を用いた場合は、平均粒子径が1nm以上100nm以下であることが好ましい。粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡により測定される。
金属酸化物粒子を用いて得られる層の場合、リーク防止とキャリア輸送の関係から、その厚みは0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。また、同様の観点から、同厚みは、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
比誘電率が2以上の化合物としては、有機系化合物と無機系化合物に大別される。比誘電率が2以上の化合物としては、柔軟性、成膜性等の観点から有機系化合物が好ましい。
有機系化合物としては、一般的な樹脂として、ポリ塩化ビニリデン、アクリル樹脂、アセチルセルロース、アニリン樹脂、ABS樹脂、エボナイト、塩化ビニル樹脂、アクリルニトリル樹脂、アニリンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキル樹脂、ウレタン、AS樹脂、エポキシ樹脂、ビニルブチラール樹脂、3フッ化エチレン樹脂、シリコン樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレンブタジェンゴム、シリコーンゴム、酢酸セルロース、スチレン樹脂、デキストリン、ナイロン、軟質ビニルブチラール樹脂、フッ素系樹脂、フルフラル樹脂、ポリアミド、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリアセタール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリサルファイドポリマー、ポリエチレン等が挙げられる。また、アセトン、メチルアルコール、イソブチルアルコール、エチルアルコール、アニリン、イソブチルメチルケトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、クレゾールグリコール、ジアレルフタレート、デキストリン、ピラノール、フェノール、ベークライトワニス、ホルマリン、チオグリセロール、クロロピレン、コハク酸、コハク酸ニトリル、ニトロセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、プルラン、グルシドールプルラン、ポリビニルアルコール、スクロース、ソルビトール、シアノ基含有有機化合物等が挙げられる。
なお、シアノ基含有有機化合物とは、シアノ基が1つ以上含まれる化合物のことである。シアノ基含有有機化合物は、より好ましくはシアノエチル基含有有機化合物である。シアノ基含有有機化合物の具体例としては、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルサッカロース(シアノエチルスクロース)、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルデンプン、シアノエチルヒドロキシプロピルデンプン、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルソルビトール等が挙げられる。
なおフッ素系樹脂の具体例として、C2F4−nHn(nは0から3)を骨格とするポリマーで、具体的にはポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどがあげられる。またこれらを共重合させてもよく、前記フッ素系樹脂を基本とし、別な樹脂と共重合させても良い。また、前記化学式の水素の一部を塩素に置換しても良い。たとえばポリクロロトリフルオロエチレンなどが挙げられる。
さらにフッ素系樹脂の具体例として、フッ素系イオン交換樹脂があげられる。具体的には、一般式CF2=CF−O(CF2CFX)nO−(CF2)m−Wで表わされるフッ化ビニル化合物と、一般式CF2=CFZで表わされるフッ化オレフィンとの、少なくとも2元共重合体からなるものが挙げられる。ここでXはFまたは炭素数1から3のパーフルオロアルキル基、nは0から3の整数、mは1から5の整数、ZはH、Cl、Fまたは炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基である。また、WはCOOH、SO3H、SO2F、SO2Cl、SO2Br、COF、COCl、COBr、CO2CH3、CO2C2H5で表される基のいずれかである。
特に有機系化合物の場合、極性の高い原子又は官能基を含む有機系化合物が誘電率が大きく好ましい。極性の指標となる双極子モーメントは結合モーメントの和で推測できる。比誘電率が2以上の有機系化合物としては、結合モーメントが1.4D(D=3.33564×10−30Cm)以上の置換基を有している化合物が好ましい。結合モーメントが1.4D以上である置換基としては、OH、CF、CCl、C=O、N=O、CN等がある。これらの置換基を有する比誘電率が2以上の有機系化合物としては、フッ素系樹脂、グリセリン、チオグリセロール、シアノ基含有有機化合物等が挙げられる。
無機系化合物としては、ケイ酸カルシウム、ガラス、酸化アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、セレン、チタン酸バリウム、ビスマスシリケート、ニオブ酸鉛、二酸化チタン、尿素、ベークライト、パイレックス(登録商標)、ワセリン、雲母、塩化銅、酸化銅、硫酸銅、酸化鉄、塩素酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化銀、臭化カリウム、フッ化リチウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、フッ化カルシウム、硫化亜鉛、NaI、NaF、NaClO3、NaSO4等が挙げられる。
無機系化合物としては、上記のほかに、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウムストロンチウム等の複合酸化物、又は、これらの複合酸化物を主成分とし、さらにBaサイトにマグネシウムを、Tiサイトにスズ及び/又はジルコニウムを置換したペロブスカイト型複合酸化物等も使用できる。さらにペロブスカイト型複合酸化物に、微量添加物を1種又は2種以上加えたものも使用できる。
微量添加物としては、タングステン、タンタル、ニオブ、鉄、銅、マグネシウム、ビスマス、イットリウム、モリブデン、バナジウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マンガン、ニッケル、亜鉛、カルシウム、ストロンチウム、ケイ素、錫、セレン、ネオジウム、エルベニウム、ツリウム、ホフニウム、プラセオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユウロビウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、リチウム、スカンジウム、バリウム、ランタン、アクチニウム、セリウム、ルテニウム、オスシウム、コバルト、パラジウム、銀、カドニウム、ホウ素、ガリウム、ゲルマニウム、リン、ヒ素、アンチモン、フッ素、テルル、ルテチウム、イッテルビウム等が挙げられる。
微量添加物としては、上記のほかに、イミダゾリウム、ピリジウム、ピロロリジニウム、ホスホニウム、アンモニウム、スルフォニウム等をカチオンとするイオン性液体等がある。
なお、比誘電率が2以上の化合物は、半導体粒子や半導体層に光を吸収させる観点から、ある程度透明であることが好ましい。比誘電率が2以上の化合物の透過率は、550nmの波長の光に対して35%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。透過率の上限は特に限定されないが、100%以下である。透過率は、分光光度計を用いて測定することができる。測定基材は石英ガラスや樹脂基板を用いることができる。なお、本実施形態において透過率は、測定厚みを100nm〜1μmとした場合の透過率である。
半導体粒子及び比誘電率が2以上の化合物を含む層において、当該化合物の比誘電率の好ましい範囲としては、光電変換効率の観点から2以上であり、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、15以上がさらに好ましい。また、前記比誘電率は、同様の観点から5000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、200以下がさらに好ましい。
半導体粒子及び比誘電率が2以上の化合物を含む層において、半導体粒子としては前述したものが挙げられる。具体的にはシリコン粒子、化合物半導体粒子、金属酸化物粒子等が挙げられる。使用する半導体層により、p型又はn型の粒子を選択できる。半導体粒子及び比誘電率が2以上の化合物を含む層の厚みは、リーク防止とキャリア輸送の関係から、その厚みは0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。また、同様の観点から、同厚みは、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
半導体粒子及び比誘電率が2以上の化合物を含む層内の比誘電率が2以上の化合物の含有量は、光電変換効率の観点から、体積で10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。また、同様の観点から、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましい。一方、同層内の半導体粒子の含有量は、光電変換効率の観点から、体積で10%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。また、同様の観点から、同含有量は90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。半導体粒子及び比誘電率が2以上の化合物を含む層内の比誘電率が2以上の化合物の含有量は、光電変換効率の観点から、重量割合で10%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。また、同様の観点から、同含有量は90%以下が好ましく、80%以下より好ましく、70%以下がさらに好ましい。
半導体粒子と比誘電率が2以上の化合物を混合することで、半導体粒子を使用する上で従来存在していた課題を解決できる。その課題とは、半導体粒子表面に存在する欠陥がトラップ準位となり、半導体粒子の半導体特性を劣化するというものである。なお、高温焼結によりその課題の一部は一応解決することができるものの、高温焼結によって半導体粒子特有の物性(即ち、量子サイズ効果、大きな表面積)の発現が困難になる点や、高温プロセスのためコスト高になるという点が問題として残ってしまう。また、低温プロセスで作製した粒子からなる膜は粒子間の接触が不均一であり、焼結されていないので、キャリアの移動が遅くなる。よって、低温プロセスで、かつ半導体粒子表面の欠陥制御、伝導パスの制御、電子状態等を制御する技術が必要となっている。
発明者らは、半導体粒子と比誘電率が2以上の化合物を混合することにより、従来の課題を解決できることを見出した。半導体粒子と比誘電率が2以上の化合物を混合することで、半導体粒子表面の欠陥準位や、粒子間のエアギャップによるキャリア移動の阻害や再結合を防止できると推測している。その結果、半導体粒子を単独で用いる場合に比べて、半導体粒子と比誘電率が2以上の化合物とを併用する場合には、電気抵抗が低減したり、あるいはキャリアの移動度が向上するものと考えられる。なお、抵抗が低減することで太陽電池の曲線因子が向上し、変換効率が高くなる。さらにキャリアの再結合を防止することで太陽電池の開放電圧が向上する。
また、半導体粒子と比誘電率が2以上の化合物とを混合することで、キャリアの伝導パスが増加する効果がある。半導体粒子だけで半導体層を形成すると、半導体粒子同士が繋がっていない箇所が多数発生する。比誘電率が2以上の化合物を混合することで、疑似的に半導体粒子間のコンタクトが増える。また、実際に半導体粒子同士が密接につながっていなくても、比誘電率が2以上の化合物が数nmの間隔で半導体層中に入ることにより、キャリアが半導体層内を通りぬけることが可能になると推測される。よって、半導体層内に流れるキャリア量が増え、さらにキャリアが半導体層内を流れる時間も短くなる。
また、半導体粒子と比誘電率が2以上の化合物とを混合することで、周辺酸素(即ち、粒子界面の空壁に存在する空気)を遮断することができる。その結果、酸素で失活するキャリアを減らすことができるため、キャリア密度の向上や移動度の向上に寄与する。
半導体粒子及び比誘電率が2以上の化合物を含む層は、蒸着法、CVD法、スパッタ法、塗布法で作製することができる。生産性向上や材料の利用効率が高いという観点から塗布法で作製することが好ましい。
なお、半導体粒子及び比誘電率が2以上の化合物を含む層は、もう一方の半導体層に光を吸収させる観点から、ある程度透明であることが好ましい。この際の半導体は金属酸化物であることが好ましい。半導体粒子及び比誘電率が2以上の化合物から構成される半導体層の透過率は、550nmの波長の光に対して35%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。透過率の上限は特に限定されないが、100%以下である。
例1として、図1に示す太陽電池100は、基板110の上に、陽極層120、p型半導体の層130、n型半導体の層140、及び陰極層150を備える。各層をさらに細分化し複数層を設けることも可能である。例えば、層130と層120との間にホール取り出し層(図示せず)を設けることもできる。また、層140と層150の間に電子取出し層(図示せず)を設けることもできる。また、層130と層140との間に、光吸収層(図示せず)を設けることもできる。また、層130と層140は互いに混ざったバルクへテロ構造となってもよい。層120又は層150のどちらか一方が透明であることが好ましい。また、基板110は層150側にあってもよく、層120側及び層150側の両方にあってもよい。
例2として、図2に示す太陽電池200は、基板210の上に、陽極層220、p型半導体の層230、比誘電率が2以上の化合物を含む接合界面層260、n型半導体の層240、及び陰極層250を備える。各層をさらに細分化し複数層を設けることも可能である。例えば、層230と層220との間にホール取り出し層(図示せず)を設けることもできる。また、層240と層250の間に電子取出し層(図示せず)を設けることもできる。層220又は層250のどちらか一方が透明であることが好ましい。また、基板210は層250側にあってもよく、層220側及び層250側の両方にあってもよい。例2の態様は、すなわちp型半導体の層と、n型半導体の層との間に比誘電率が2以上の化合物を含む接合界面層と、を備えるヘテロ接合太陽電池である。
本実施形態の太陽電池の構成は、上記の図1、2に示した構造を2つ以上直列に積み上げたタンデム構造であってもよい。
上記の基板としては、ガラス基板、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、シクロオレフィンポリマー、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等のプラスチック基板、アルミニウム基板、ステンレス(SUS)基板、粘土からなる基板、紙基板などの通常用いられるあらゆる基板が使用できる。
陰極(層)としては、アルミニウム、SUS、金、銀、インジウムとガリウムの合金、ITO(酸化インジウムスズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛等の通常使用される金属又は金属酸化物が使用できる。また、導電性高分子、グラフェン等も使用できる。
陽極(層)としては、アルミニウム、SUS、金、銀、インジウムとガリウムの合金、ITO(酸化インジウムスズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛等の通常使用される金属又は金属酸化物が使用できる。また、導電性高分子、グラフェン等も使用できる。
なお、基板、陰極層及び陽極層の厚さは特に制限されないが、それぞれ0.1mm〜100mm、0.01μm〜1000μm及び0.01μm〜1000μm程度とすることができる。
比誘電率が2以上の化合物(接合界面材料)からなる接合界面層について説明する。比誘電率とは、測定周波数を1kHz、測定温度を23℃とし、インピーダンス法で測定した値をいう。比誘電率の好ましい範囲としては、光電変換効率の観点から2以上であり、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。また、比誘電率は、同様の観点から5000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、200以下がさらに好ましい。
なお、光電変換効率ηは下記式より求めることができる。
η=(太陽電池の出力)/100×100
太陽電池の出力=短絡電流密度×開放電圧×FF=Vmax・Imax
(Imaxとは、太陽電池の出力が最大となるときの電流であり、Vmaxとは、太陽電池の出力が最大となるときの電圧である。)
比誘電率が2以上の材料からなる接合界面層を半導体層間に挿入することで、本発明の素子構造において、短絡電流密度をより高く(例えば30mA/cm2以上)し易くなる。
また、比誘電率が2以上の材料からなる接合界面層を半導体層間に挿入することで、P/N接合界面で分極がおこり、電界が強まることにより、開放電圧をより高く(例えば0.5V以上)し易くなる。
比誘電率が2以上の化合物としては、有機系化合物と無機系化合物に大別される。接合界面層は柔軟性、成膜性等の観点から有機系化合物から形成されることが好ましい。
有機系化合物としては、一般的な樹脂として、ポリ塩化ビニリデン、アクリル樹脂、アセチルセルロース、アニリン樹脂、ABS樹脂、エボナイト、塩化ビニル樹脂、アクリルニトリル樹脂、アニリンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキル樹脂、ウレタン、AS樹脂、エポキシ樹脂、ビニルブチラール樹脂、3フッ化エチレン樹脂、シリコン樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレンブタジェンゴム、シリコーンゴム、酢酸セルロース、スチレン樹脂、デキストリン、ナイロン、軟質ビニルブチラール樹脂、フッ素系樹脂、フルフラル樹脂、ポリアミド、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリアセタール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリサルファイドポリマー、ポリエチレン等が挙げられる。また、アセトン、メチルアルコール、イソブチルアルコール、エチルアルコール、アニリン、イソブチルメチルケトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、クレゾールグリコール、ジアレルフタレート、デキストリン、ピラノール、フェノール、ベークライトワニス、ホルマリン、チオグリセロール、クロロピレン、コハク酸、コハク酸ニトリル、ニトロセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、プルラン、グルシドールプルラン、ポリビニルアルコール、スクロース、ソルビトール、シアノ基含有有機化合物等が挙げられる。
なお、シアノ基含有有機化合物とは、シアノ基が1つ以上含まれる化合物のことである。シアノ基含有有機化合物は、より好ましくはシアノエチル基含有有機化合物である。シアノ基含有有機化合物の具体例としては、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルサッカロース(シアノエチルスクロース)、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルデンプン、シアノエチルヒドロキシプロピルデンプン、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルソルビトール等が挙げられる。
なおフッ素系樹脂の具体例として、C2F4−nHn(nは0から3)を骨格とするポリマーで、具体的にはポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどがあげられる。またこれらを共重合させてもよく、前記フッ素系樹脂を基本とし、別な樹脂と共重合させても良い。また、前記化学式の水素の一部を塩素に置換しても良い。たとえばポリクロロトリフルオロエチレンなどが挙げられる。
さらにフッ素系樹脂の具体例として、フッ素系イオン交換樹脂があげられる。具体的には、一般式CF2=CF−O(CF2CFX)nO−(CF2)m−Wで表わされるフッ化ビニル化合物と、一般式CF2=CFZで表わされるフッ化オレフィンとの、少なくとも2元共重合体からなるものが挙げられる。ここでXはFまたは炭素数1から3のパーフルオロアルキル基、nは0から3の整数、mは1から5の整数、ZはH、Cl、Fまたは炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基である。また、WはCOOH、SO3H、SO2F、SO2Cl、SO2Br、COF、COCl、COBr、CO2CH3、CO2C2H5で表される基のいずれかである。
特に有機系化合物の場合、極性の高い原子又は官能基を含む有機系化合物が、誘電率が大きく好ましい。極性の指標となる双極子モーメントは結合モーメントの和で推測できる。比誘電率が2以上の有機系化合物としては、結合モーメントが1.4D(D=3.33564×10−30Cm)以上の置換基を有している化合物が好ましい。結合モーメントが1.4D以上である置換基としては、OH、CF、CCl、C=O、N=O、CN等がある。これらの置換基を有する比誘電率が2以上の有機系化合物としては、フッ素系樹脂、グリセリン、チオグリセロール、シアノ基含有有機化合物等が挙げられる。
無機系化合物としては、ケイ酸カルシウム、ガラス、酸化アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、セレン、チタン酸バリウム、ビスマスシリケート、ニオブ酸鉛、二酸化チタン、尿素、ベークライト、パイレックス(登録商標)、ワセリン、雲母、塩化銅、酸化銅、硫酸銅、酸化鉄、塩素酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化銀、臭化カリウム、フッ化リチウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、フッ化カルシウム、硫化亜鉛、NaI、NaF、NaClO3、NaSO4等が挙げられる。
無機系化合物としては、上記のほかに、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウムストロンチウム等の複合酸化物、又は、これらの複合酸化物を主成分とし、さらにBaサイトにマグネシウムを、Tiサイトにスズ及び/又はジルコニウムを置換したペロブスカイト型複合酸化物等も使用できる。さらにペロブスカイト型複合酸化物に、微量添加物を1種又は2種以上加えたものも使用できる。
微量添加物としては、タングステン、タンタル、ニオブ、鉄、銅、マグネシウム、ビスマス、イットリウム、モリブデン、バナジウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マンガン、ニッケル、亜鉛、カルシウム、ストロンチウム、ケイ素、錫、セレン、ネオジウム、エルベニウム、ツリウム、ホフニウム、プラセオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユウロビウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、リチウム、スカンジウム、バリウム、ランタン、アクチニウム、セリウム、ルテニウム、オスシウム、コバルト、パラジウム、銀、カドニウム、ホウ素、ガリウム、ゲルマニウム、リン、ヒ素、アンチモン、フッ素、テルル、ルテチウム、イッテルビウム等が挙げられる。
微量添加物としては、上記のほかに、イミダゾリウム、ピリジウム、ピロロリジニウム、ホスホニウム、アンモニウム、スルフォニウム等をカチオンとするイオン性液体等がある。
接合界面層の比誘電率の好ましい範囲としては、光電変換効率の観点から2以上であり、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、15以上がさらに好ましい。また、前記比誘電率は、同様の観点から5000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、200以下がさらに好ましい。
接合界面層における比誘電率が2以上の化合物の含有量は、光電変換効率の観点から、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が極めて好ましい。一方、同含有量の上限は、太陽電池特性を向上させるという観点から、100質量%、すなわち接合界面層が比誘電率2以上の化合物から構成されるものであることが好ましい。前記接合界面層は太陽電池の性能の観点から、空気を含まず充填されていることが好ましい。前記接合界面層は、特性を損なわない範囲で、バインダー成分として一般汎用性樹脂、さらに界面活性剤、分散剤等を含んでも構わない。
分散剤の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;セロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、テトラリン等の炭化水素類;水などが挙げられる。
接合界面層を形成するための塗布液に含まれる分散剤の含有量としては、粘度を調整して塗布液を扱い易くする観点から、1質量%以上が好ましく、また、98.5質量%以下であることが好ましい。
接合界面層を形成するための塗布液の分散安定性の向上の目的で加えられる界面活性剤の添加量は、分散安定性の観点から0.0001質量%以上が好ましく、また、10質量%以下が好ましい。界面活性剤としては、特に限定はなく、例えばアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等を使用することができる。
上述の界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、スルホン酸基又は硫酸エステル基と重合性の不飽和二重結合とを分子中に有するいわゆる反応性界面活性剤等の、アニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、これら「ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレン脂肪酸エステル」の分子中に重合性の不飽和二重結合を有する反応性ノニオン性界面活性剤等の、ノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;(変性)ポリビニルアルコール;直鎖アルキルチオール類;などが挙げられる。
接合界面層は、p型半導体の層とn型半導体の層との接合界面の全面に導入されなくても構わない。発電効率の観点から、前記の全接合界面の30%以上を被覆していることが好ましく、50%以上を被覆していることがより好ましく、100%被覆していることがさらに好ましい。また、接合界面層が島状に点在していても良い。
なお、接合界面層の平均厚みは、発電効率とキャリアの移動の観点から、1nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましく、20nm以上がさらに好ましく、30nm以上がさらに好ましく、50nm以上が極めて好ましい。また、同様の観点から、同厚みは、500μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、10μm以下が極めて好ましく、5μm以下が最も好ましい。本接合界面層はトンネリングによる電流が流れにくい30nm以上の厚みでも高い光電変換特性を有することが特徴である。接合界面層の層厚は、vertscan2.0(株式会社菱化システム製)や断面SEM観察により測定される。
なお、接合界面層は、半導体層に光を吸収させる観点から、ある程度透明であることが好ましい。接合界面層の透過率は、550nmの波長の光に対して35%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。透過率は分光光度計で測定することができる。透過率の上限は特に限定されないが、100%以下である。透過率は、分光光度計を用いて測定することができる。測定基材は石英ガラスや樹脂基板を用いることができる。
接合界面層の抵抗率は高い方が好ましい。これにより、リーク電流の防止に寄与することができると推測される。なお、このような観点から、抵抗率は、10Ωcm以上が好ましく、100Ωcm以上がより好ましく、1000Ωcm以上がさらに好ましく、10000Ωcm以上が極めて好ましく、1000000Ωcm以上が最も好ましい。抵抗率の上限は特に限定されないが、1×1019Ωcm以下であることが好ましい。
本実施形態における抵抗率は、電気の通し易さの尺度であり、単位体積当たりの抵抗率のことである。この値は物質固有の値であり、物質の断面積Wに一定電流Iを流し、距離Lだけ離れた電極間の電位差Vを測ることにより求められる。
抵抗率=(V/I)×(W/L)
接合界面層は、低コスト化が可能なことから印刷法を用いて作製することが効果的である。この際、柔軟性を有するフレキシブル性電極基板を用いることが好ましい。これにより、接合界面層を備えた電極基板をロール状に巻き取ることができるため、製造スピードを向上することができる。
本実施形態の太陽電池の製造方法は、例えば、電極を備える基板上に、p型半導体層を形成し、p型半導体層付き基板を得る工程と、電極を備える基板にn型半導体層を形成し、n型半導体層付き基板を得る工程と、これらの基板を、半導体層と半導体層とが対向するようにして貼り合わせる工程と、を備える。なお、本実施形態の製造方法においては、半導体層上に、さらに比誘電率が2以上の化合物を含む層を設ける工程を備えていてもよい。
また、電極を備える基板上に、p型半導体層を形成し、p型半導体層付き基板を得る工程と、そのp型半導体の上にn型半導体層を作製する工程と、さらにその上に電極を形成する工程と、を備える。
接合界面層を有する太陽電池の製造方法の例を示す。本実施形態の太陽電池の製造方法は、例えば、電極を備える基板上に、p型半導体層又はn型半導体層、及び比誘電率が2以上の化合物を含む層をこの順に有する積層体を得る工程と、当該積層体の接合界面層に他のp型半導体層又は他のn型半導体層を貼り合わせる工程と、を備える。具体的には、例えば、電極を備える基板上にp型半導体層を形成した後、接合界面材料を含む塗布液を塗布する(接合界面層を形成する)工程1、電極を備える他の基板上にn型半導体層を形成する工程2、工程1と工程2で得られた積層物同士を貼り合わせる工程3を経ることで太陽電池を得ることができる。この製造方法では、p型半導体層とn型半導体層を入れ替えても構わない。また、電極の一方が透明であることが好ましい。この例においては、接合界面層形成用塗布液は工程1でのみ塗工されているが、工程2でn型半導体層に塗工してもよく、工程1及び工程2の両方で塗工しても構わない。すなわち、塗布液は、p型半導体層、n型半導体層のどちらに塗工してもよく、双方に塗工しても構わない。また、工程1及び工程2の後に、塗布液を乾燥する工程を追加してもよい。というのも、接合界面層が、接合界面材料を含有する塗布液から揮発成分を除去して得られるものであってもよいためである。
なお、本実施形態においては、p型半導体層の上に接合界面層形成用塗布液を塗布した後、その上にn型半導体層を形成し、さらにその上に電極を形成して、太陽電池を作製してもよい。この場合においても、p型半導体層とn型半導体層を入れ替えてもよい。また、塗布液を塗布した後、あるいはn型半導体層を形成した後に乾燥する工程を追加してもよい。
本実施形態の太陽電池は、また、p型半導体層又はn型半導体層の上に接合界面層を形成して積層体を得る工程と、さらに透明電極の上に他のp型半導体層又は他のn型半導体層を設けて他の積層体を得る工程と、積層体と他の積層体とを、接合界面層と他のp型半導体層又は他のn型半導体層とが対向するようにして貼り合わせる工程と、を備える方法によっても製造することができる。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
以下、具体的な実施例により、本発明をより詳細に説明する。
[評価方法]
以下、特に断りのない場合は、25℃、湿度45%の条件で評価を行った。
(1)平均粒子径
平均粒子径は、卓上走査顕微鏡CarryScopeJCM5100(JEOL社製)を用いて測定した。合計10点の粒子径を測定し、その平均値を、平均粒子径とした。
(2)I−V特性(太陽電池特性)の評価
コンピューター(システムハウス・サンライズ社製 太陽電池IV測定ソフト)で制御した直流電圧・電流源(6241A、ADCMT社製)、並びに簡易型ソーラーシミュレーター(三永電機製作所製 XES−40S1)を用いて光起電力特性の測定をし、I−V特性の評価を行った。光量(AM1.5G、100mW/cm2)の検定には、BS−500Si系フォトダイオード検出器(結晶Si太陽電池用、分光計器(株)社製、二次基準太陽電池)を用いた。
測定は、太陽電池を固定した状態で行った。測定試料の具体的な準備方法を、図3を用いて説明する。先ず、絶縁処理材をコートした金属製治具5の上に太陽電池4を置く。その上に、厚さ2mmのシリコーンゴムシート3、厚さ3mmの石英板2、絶縁処理材をコートした金属製治具1(中心に光10を透過させるための光透過孔が設けられている)の順で重ね、金属製治具1及び5同士の4隅をネジ9で固定した。
本評価では、I−V特性並びにImax及びVmaxを求めた。なお、Imaxとは、太陽電池の出力が最大となるときの電流であり、Vmaxとは、太陽電池の出力が最大となるときの電圧である。
そして、I−V特性のグラフから短絡電流密度、開放電圧、FF及び光電変換効率を算出した。なお、短絡電流密度(Isc)は電圧が0の時の電流密度であり、開放電圧(Voc)は電流が0の時の電圧である。
FFは下記式より求めることができる。
FF=(Vmax・Imax)/(Voc・Isc)
光電変換効率ηは下記式より求めることができる。
η=(太陽電池の出力)/100×100
太陽電池の出力=短絡電流密度×開放電圧×FF=Vmax・Imax
(3)比誘電率
比誘電率は、測定周波数を1kHz、測定温度を23℃とし、インピーダンス法で測定した値をいう。具体的には、LCRメーター(Agilent製4284AのPRESISIONLCRメーター)を用いて、下記式より求めた。
サンプルの誘電率=(電極間距離×静電容量)/(電極の面積×真空の誘電率)
(ただし、真空の誘電率は8.854×10−12(F/m)である。)
サンプルが液体の場合、誘電率は、液体測定用の治具(Agilent製16452ALIQUID TEST FIXTURE)を用いて、液体に電極を挿入し測定する。
サンプルが固体の場合、誘電率は、膜測定用の治具(Agilent製16451B DIELECTRIC TEST FIXTURE)を用いて、電極板上に膜を作製し、片方の電極で挟んで測定する。
(4)層厚
半導体層と接合界面層の層厚は、vertscan2.0(株式会社菱化システム製)で測定した。測定用の半導体層又は接合界面層は、素子作製時と同じ条件で基板に塗工し作製した。これらの層について任意に5か所の層厚を測定し、その平均を計算し、平均層厚とした。
太陽電池を作製後の半導体層、接合界面層の層厚は、断面SEM(走査型電子顕微鏡)観察で測定した。測定は、太陽電池の断面を切断した後に行った。
断面SEM観察は2か所行い、1か所につき等間隔で5点層厚を測定した。合計10点の層厚の平均値を計算し、平均層厚とした。前記断面SEM観察により得られた平均層厚は、上記の層厚測定の結果とほぼ同等の値になることを確認した。
(5)シリコン酸化膜の膜厚測定方法
X線光電子分光法により測定した。具体的には、PHI社製のPHI5700ESCA Systemを用いて測定した。X線は1253.6eV、出力は14kV、分析領域は800μm、対象元素をケイ素、酸素、炭素として測定した。解析ソフトとして、MultiPak(アルバックファイ社製)のUltrathin film Analysis−Structureモードを用いて角度分解法により算出した。光電子の取出し角度は15度、80度でデータ取得を行い、膜厚を算出した。カーボンを含んだ膜厚となるため、それを補正するため、ピーク分離法により膜厚の補正を行い、酸化膜の厚みとした。ピーク分離法の測定はケイ素の2pのピークをケイ素と酸化ケイ素のピークに分離し、そこから算出した面積強度によりケイ素と酸化ケイ素の比を算出した。
[実施例1]:シリコンウエハを用いた太陽電池の作製
ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)に平均粒子径6nmの酸化チタン粒子(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を含む塗膜をスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の酸化チタン粒子からなる層の厚みは1500nmであった。さらにその酸化チタン粒子からなる層の上にシアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールで希釈してシアノエチルサッカロース(比誘電率25)の含有量を20質量%に調整した液をブレードコートで塗工し、これを120℃で1分間乾燥した。シアノエチルサッカロースの層の厚みは600nmであった。一方、厚みが500μm、抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハに対し、後述のフッ酸処理を行った。フッ酸処理をしてから10分後のシリコン酸化膜の厚みは0.8nmであった。そのシリコン結晶ウエハとシアノエチルサッカロースをコートした酸化チタン粒子からなる層を貼りあわせて、太陽電池を作製した。なお、貼り合わせ時に4mmφの穴をあけた9μm厚のポリエステルフィルム(寺岡製作所社製)を挟み、穴をあけた部分だけシアノエチルサッカロースの層とシリコン結晶ウエハが接するようにした。さらにPET側に2mmφの穴をあけたアルミ蒸着フィルムを貼ることで、マスクとした。作製した太陽電池を図3に示すような治具を用いて固定した。
「フッ酸処理」:前記p型シリコン結晶ウエハを、アセトン洗浄してウエハ表面の汚れを除いた後、5%フッ酸溶液に5分間浸漬し超純水で洗浄した。その後、メタノールで洗浄した。
[実施例2]:シリコンウエハを用いた太陽電池の作製
ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)に平均粒子径6nmの酸化チタン粒子(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を含む塗膜をスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の酸化チタン粒子からなる層の厚みは1500nmであった。さらにその酸化チタン粒子からなる層の上にシアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールで希釈してシアノエチルサッカロースの含有量を20質量%に調整した液をブレードコートで塗工し、これを120℃で1分間乾燥した。シアノエチルサッカロースの層の厚みは600nmであった。一方、厚みが500μm、抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハに対し、前記のフッ酸処理を行った。フッ酸処理をしてから30分後のシリコン酸化膜の厚みは1.5nmであった。そのシリコン結晶ウエハとシアノエチルサッカロースをコートした酸化チタン粒子からなる層を貼りあわせて、太陽電池を作製した。なお、貼り合わせ時に4mmφの穴をあけた9μm厚のポリエステルフィルム(寺岡製作所社製)を挟み、穴をあけた部分だけシアノエチルサッカロースの層とシリコン結晶ウエハが接するようにした。さらにPET側に2mmφの穴をあけたアルミ蒸着フィルムを貼ることで、マスクとした。作製した太陽電池を図3に示すような治具を用いて固定した。
[実施例3]:シリコンウエハを用いた太陽電池の作製
平均粒子径6nmの酸化チタン粒子(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)とシアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールに溶かした液を混合し、酸化チタン粒子とシアノエチルサッカロースの比が体積比で1:2になるように混合した。その液を用いて、スピンコート法により、ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)上に塗膜を作製した。スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の酸化チタン粒子及びシアノエチルサッカロースを含有する層の厚みは1300nmであった。一方、厚みが500μm、抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハに対し、前記のフッ酸処理を行った。フッ酸処理をしてから30分後のシリコン酸化膜の厚みは1.5nmであった。そのシリコン結晶ウエハと、酸化チタン粒子及びシアノエチルサッカロースを含有する層を貼りあわせて、太陽電池を作製した。なお、貼り合わせ時に4mmφの穴をあけた9μm厚のポリエステルフィルム(寺岡製作所社製)を挟み、穴をあけた部分だけ酸化チタン粒子及びシアノエチルサッカロースを含有する層とシリコン結晶ウエハが接するようにした。さらにPET側に2mmφの穴をあけたアルミ蒸着フィルムを貼ることで、マスクとした。作製した太陽電池を図3に示すような治具を用いて固定した。
[実施例4]:シリコンウエハを用いた太陽電池の作製
ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)に平均粒子径6nmの酸化チタン粒子(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を含む塗膜をスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の酸化チタン粒子からなる層の厚みは1500nmであった。一方、厚みが500μm、抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハに対し、前記のフッ酸処理を行った。フッ酸処理をしてから20分後のシリコン酸化膜の厚みは1.0nmであった。そのシリコン結晶ウエハと酸化チタン粒子からなる層を貼りあわせて、太陽電池を作製した。なお、貼り合わせ時に4mmφの穴をあけた9μm厚のポリエステルフィルム(寺岡製作所社製)を挟み、穴をあけた部分だけ酸化チタン粒子からなる層とシリコン結晶ウエハが接するようにした。さらにPET側に2mmφの穴をあけたアルミ蒸着フィルムを貼ることで、マスクとした。作製した太陽電池を図3に示すような治具を用いて固定した。
[実施例5]:シリコンウエハを用いた太陽電池の作製
ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)に平均粒子径6nmの酸化チタン粒子(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を含む塗膜をスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の酸化チタン粒子からなる層の厚みは1500nmであった。さらにその酸化チタン粒子からなる層の上にシアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールで希釈してシアノエチルサッカロースの含有量を0.5質量%に調整した液をブレードコートで塗工し、これを120℃で1分間乾燥した。シアノエチルサッカロースの層の厚みは5nmであった。一方、厚みが500μm、抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハに対し、前記のフッ酸処理を行った。フッ酸処理38分後のシリコン酸化膜の厚みは1.7nmであった。そのシリコン結晶ウエハとシアノエチルサッカロースをコートした酸化チタン粒子からなる層を貼りあわせて、太陽電池を作製した。なお、貼り合わせ時に4mmφの穴をあけた9μm厚のポリエステルフィルム(寺岡製作所社製)を挟み、穴をあけた部分だけシアノエチルサッカロースの層とシリコン結晶ウエハが接するようにした。さらにPET側に2mmφの穴をあけたアルミ蒸着フィルムを貼ることで、マスクとした。作製した太陽電池を図3に示すような治具を用いて固定した。
(比較例1):シリコンウエハを用いたヘテロ接合太陽電池の作製
ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)に平均粒子径6nmの酸化チタン粒子(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を含む塗膜をスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の酸化チタン粒子からなる層の厚みは1500nmであった。さらにその酸化チタン粒子からなる層の上にシアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールで希釈してシアノエチルサッカロースの含有量を20質量%に調整した液をブレードコートで塗工し、これを120℃で1分間乾燥した。シアノエチルサッカロースの層の厚みは600nmであった。一方、厚みが500μm、抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハに対し、前記のフッ酸処理を行った。フッ酸処理後空気中で5日間経過後のシリコン酸化膜の厚みは2.0nmであった。そのシリコン結晶ウエハとシアノエチルサッカロースをコートした酸化チタン粒子からなる層を貼りあわせて、太陽電池を作製した。貼り合わせ時に4mmφの穴をあけた9μm厚のポリエステルフィルム(寺岡製作所社製)を挟み、穴をあけた部分だけシアノエチルサッカロースの層とシリコン結晶ウエハが接するようにした。さらにPET側に2mmφの穴をあけたアルミ蒸着フィルムを貼ることで、マスクとした。作製した太陽電池を図3に示すような治具を用いて固定した。
[比較例2]:シリコンウエハを用いた太陽電池の作製
ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)に平均粒子径6nmの酸化チタン粒子(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を含む塗膜をスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の酸化チタン粒子からなる層の厚みは1500nmであった。一方、厚みが500μm、抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハに対し、前記のフッ酸処理を行った。フッ酸処理空気中で5日間経過後のシリコン酸化膜の厚みは2.0nmであった。そのシリコン結晶ウエハと酸化チタン粒子からなる層を貼りあわせて、太陽電池を作製した。貼り合わせ時に4mmφの穴をあけた9μm厚のポリエステルフィルム(寺岡製作所社製)を挟み、穴をあけた部分だけ酸化チタン粒子からなる層とシリコン結晶ウエハが接するようにした。さらにPET側に2mmφの穴をあけたアルミ蒸着フィルムを貼ることで、マスクとした。作製した太陽電池を図3に示すような治具を用いて固定した。
[太陽電池特性評価]
実施例1〜5と比較例1、2の太陽電池の評価結果を表1に示す。上記太陽電池のI−V特性の評価は、太陽電池に対し1sunの光量があたるように調整し測定した。また、実施例、比較例ともにシリコン結晶ウエハ側にはインジウムとガリウム合金ペーストを用いて、導電テープとシリコン結晶ウエハを接合させた。また、酸化チタン粒子からなる層側にはITO電極及び銀ペーストを用いて、導電テープと酸化チタン粒子からなる層を接合させた(酸化チタン粒子及びシアノエチルサッカロースを含有する層も同様)。I−V測定時の端子は導電テープからとった。
表1に示すように、シリコン酸化膜が薄い場合において、短絡電流密度、FF(曲線因子)が向上し、光電変換効率が高くなることがわかった。