以下、図面を参照しつつ、本発明の典型的な実施形態を説明する。まず、図1〜図9を参照して、第一実施形態を説明する。
図1は、第一実施形態の眼科撮影装置1が有する光学系を示している。本実施形態において、眼科撮影装置1は、走査型レーザー検眼鏡(Scanning Laser Opthalmoscope:SLO)を基本構成とする。なお、眼科撮影装置1は、光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomography)、視野計などの他の眼科装置と一体化された装置であってもよい。
一例として、眼科撮影装置1は、撮影光学系2を主に備える。また、第1実施形態の眼科撮影装置1では、回転ユニット30が設けられている。まず、撮影光学系2について説明する。撮影光学系2は、被検眼Eの眼底Erに光を投光すると共に、投光された光に伴い眼底Erの各位置から発せられる光を受光素子25で受光する。詳細は後述するが、眼科撮影装置1は、受光素子25の受光結果に基づいて眼底画像を取得(撮影)する。撮影光学系2は、投光光学系3と、受光光学系4と、を有している。撮影光学系2は、後述する駆動機構50(図7参照)によって、被検眼Eの左右方向(矢印X方向)、上下方向(矢印Y方向)、前後方向(矢印Z方向)、の各方向へ移動される。
投光光学系3は、被検眼Eの眼底Erにおける撮影範囲の各位置へ光(照明光、又は、励起光)を投光する。本実施形態において、投光光学系3には、レーザー光出射部11、穴開きミラー12、レンズ13、レンズ14、走査部15、および、対物レンズ光学系16が含まれる。
レーザー光出射部11は、撮影光学系2の光源である。レーザー光出射部11は、例えば、少なくとも第1波長(波長790nm付近)のレーザー光と第2波長(波長490nm付近)のレーザー光とを出射してもよい。もちろんレーザー光出射部11は、単色光のみを出射してもよい。本実施形態において、レーザー光出射部11は、2種類のレーザー光を同時に出射することも、一方だけを出射することもできる。
レーザー光出射部11からのレーザー光は、中央に開口部を有する穴開きミラー12の開口部を通り、レンズ13およびレンズ14を介した後、走査部15に向かう。走査部15によって反射された光束は、対物レンズ光学系16を通過した後、被検眼Eの眼底Erで集光する。レーザー光照射部11から眼底Erに対してレーザー光が照射されることに伴って、眼底Erから光が発せられる。例えば、レーザー光は、眼底Erで散乱・反射される。その結果、眼底Erで散乱・反射された光(以下、眼底反射光という)が瞳孔から出射される。また、レーザー光は、眼底Erに存在する蛍光物質を励起させる場合がある。その結果、眼底Erに存在する蛍光物質から発せられた蛍光が、瞳孔から出射する場合がある。
なお、本実施形態において、レンズ13は、駆動機構13aによって、光軸方向L1方向へ移動可能に構成されている。レンズ13の位置に応じて、撮影光学系2の視度が変わる。このため、本実施形態では、正視眼に対する被検眼Eの視度の誤差が、レンズ13の位置が調節されることによって矯正(軽減)される。なお、レンズ14を変位させることによって被検眼Eの視度の誤差を矯正してもよい。
走査部15は、レーザー光を眼底上で走査するためにレーザー光出射部11から導かれたレーザー光の進行方向を変える(レーザー光を偏向する)ユニットである。本実施形態において、走査部15は、レゾナントスキャナ15aと、ガルバノミラー15bと、を有している。
なお、走査部15としては、例えば、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられてもよい。
本実施形態において、レゾナントスキャナ15aは、被検眼Eの眼底に投光されるレーザー光を所定の方向へ偏向する。図1に示すように、レゾナントスキャナ15aを経た光は、ガルバノミラー15bへ向かう。本実施形態では、モータ15c(図7参照)によってレゾナントスキャナ15aが回転させられることで、眼底Erにおけるレーザー光の照射位置(スキャン位置)が水平方向(即ち、X方向)に移動する。
また、本実施形態において、ガルバノミラー15bは、レゾナントスキャナ15aを経たレーザー光を、更に、レゾナントスキャナ15aとは異なる方向に偏向する。図1に示すように、ガルバノミラー15bを経た光は、対物レンズ光学系16へ向かう。本実施形態では、モータ15d(図7参照)によってガルバノミラー15bが回転させられることで、眼底Erにおけるレーザー光の照射位置が、垂直方向(即ち、Y方向)に移動する。このように、本実施形態の走査部15は、レゾナントスキャナ15aによる眼底ErのX方向の走査と、ガルバノミラー15bによるY方向の走査とによって、レーザー光を眼底Er上で2次元的に走査する。
対物レンズ光学系16は、走査部15を経たレーザー光に瞳位置を通過させる。本実施形態において、対物レンズ光学系16は、第1凸レンズ16a、および第2凸レンズ16bを有している。図1に示すように、対物レンズ光学系16は、これらのレンズが直列的に配置されている。なお、対物レンズ光学系16のレンズの数は、上記構成に限定されず、3枚以上のレンズからなる対物レンズ系であってもよい。また、対物レンズ光学系16の各レンズは、収差補正の必要に応じて、非球面レンズ、および、複数のレンズで構成される複合レンズ等であってもよい。
第1凸レンズ16aは、対物レンズ光学系16のレンズの中で、被検眼の最も近くに配置される。第2凸レンズ16bは、第1凸レンズ16aよりも走査部15側に配置される。図1に示すように、本実施形態では、第1凸レンズ16aには走査部15側に凸面を向ける平凸レンズが用いられ、第2凸レンズ16bには両凸レンズが用いられている。しかしながら、これらのレンズ形状は例示に過ぎず、それぞれが正のパワーを有していればよい。
本実施形態において、対物レンズ光学系16を通過したレーザー光は、対物レンズ光学系16の光軸L3上の一点(以下、「旋回点」と称す)を経て、眼底Erに照射される。本実施形態において、旋回点の位置は、対物レンズ光学系16を介して走査部15(例えば、レゾナントスキャナ15aとガルバノミラー15bとの中間点)と光学的に共役な位置となる。このため、対物レンズ光学系16を通過したレーザー光の主光線は、走査部15の動作に伴って旋回点を中心に旋回される。その結果、眼底Er上でレーザー光が二次元的に走査される。レーザー光の旋回点と被検眼Eの瞳位置とが予め一致させておくことによって、虹彩でのケラレが抑制され、レーザー光が眼底に良好に導光される。結果として、眼底画像が良好に撮影される。
また、本実施形態の眼科撮影装置1は、対物レンズ光学系16の各レンズを移動させるレンズ移動機構(画角切換機構)17を有している。レンズ移動機構17は、対物レンズ光学系16の各レンズをそれぞれ任意の移動量で移動させることができる。なお、説明の便宜上、本実施形態では、レンズ移動機構17は単体のデバイスとして説明されるが、必ずしもこれに限定されない。例えば、レンズ移動機構17には、それぞれが一枚のレンズを移動させる複数個のデバイスが用いられてもよい。
本実施形態では、対物レンズ光学系16における各レンズの配置がレンズ移動機構17によって変更されることで、投光光学系3から投光されるレーザー光の照射範囲、即ち、眼科撮影装置1(又は撮影光学系2)における撮影画角が変更される。本実施形態の眼科撮影装置1は、撮影画角を、第1画角と、第1画角よりも広い第2画角との少なくとも2種類に切り換えることができる。本実施形態において、撮影画角が第1画角であるときの各レンズ16a,16bの配置を図2(a)に示し、撮影画角が第2画角であるときの各レンズ16a,16bの配置を図2(b)に示す。以下、撮影画角が第1画角であるときの眼科撮影装置1の状態を、狭角撮影モードと称し、第2画角であるときの眼科撮影装置1の状態を、広角撮影モードと称する。
図2(a),(b)に示すように、本実施形態では、レーザー光の照射範囲が変更されても、眼科撮影装置1に対する旋回点の位置等が維持されるように、後述する制御部90によって、対物レンズ光学系16の各レンズが配置される。本実施形態では、一例として、第1凸レンズ16a及び第2凸レンズ16bが光軸L3に沿って互いに同じ方向に変位されることによって、第1画角および第2画角の相互に撮影画角が変更される場合を示す(図2(a),図2(b)参照)。
例えば、本実施形態において、撮影画角を第1画角から第2画角に広げる場合は、2つの凸レンズ16a,16bのそれぞれが光軸L3に沿って被検眼E側に近づけられる(図2(a)→図2(b))。また、本実施形態では、第2凸レンズ16bが、第1凸レンズ16aよりも大きく移動される。つまり、2つの凸レンズ16a,16bは、互いのレンズ間隔が第1画角の場合に対して狭くなるように移動される。これにより、各凸レンズ16a,16bへ入射するレーザー光の入射高さが、第1画角の場合よりも高くなる。その結果として、2つの凸レンズ16a,16bの収束作用は第1画角の場合に対して大きくなり、撮影画角が第1画角の場合に対して広げられる。また、本実施形態では、第1凸レンズ16aを、第2凸レンズ16bよりも小さな変位で移動させることによって、第1画角の場合に対し、第1凸レンズ16aに旋回点が近づけられる。その結果として、本装置では、撮影画角を第1画角から第2画角に切り換わる前後で、被検眼に対する旋回点の位置が維持される。
一方、本実施形態において、撮影画角を第2画角から第1画角に狭める場合は、対物レンズ光学系16の各レンズが、撮影画角を広げる場合とは反対の向きに移動される(図2(b)→図2(a))。その結果、2つの凸レンズ16a,16bへ入射するレーザー光の入射高さが、第2画角の場合よりも低くされる。これにより、各凸レンズ16a,16bの収束作用は第2画角の場合に対して小さくなり、撮影画角が第2画角の場合に対して狭められる。また、このとき、第1凸レンズ16aが第2凸レンズ16bよりも少ない変位量で走査部15側へ移動されることによって、第2画角の場合に対し、第1凸レンズ16aから旋回点が遠ざかる。その結果として、本装置では、撮影画角を第2画角から第1画角に切り換わる前後で、被検眼に対する旋回点の位置が維持される。
このように、本実施形態の眼科撮影装置1では、撮影画角が第1画角である場合と第2画角である場合とで、レーザー光の旋回点の位置が被検眼に対して維持される。このため、撮影画角を変えたときに、被検眼Eの瞳近傍に旋回点が位置するように、装置と被検眼Eとの位置関係の調節を必ずしもやり直さなくてもよい。つまり、本実施形態の眼科撮影装置1は、撮影画角の異なる眼底画像を、被検眼Eと装置との位置関係を一定にして撮影できる。従って、本実施形態の眼科撮影装置1は、撮影画角の異なる眼底画像を良好に撮影できる。
ところで、被検眼に対する旋回点の位置が一定に維持される条件下では、対物レンズ光学系16の撮影画角に伴って、撮影光学系2の視度が変化する。旋回点の位置が一定であるときの各撮影画角に対応する視度(D)は、図3のグラフにて模式的に示される。すなわち、縦軸を視度(D)、横軸を撮影画角としたグラフにおいて、各撮影画角に対応する視度(D)は、負の値(D)を最小値に持つ、下に凸の曲線で示される。図3に示すように、2つの凸レンズ16a,16bからなる対物レンズ光学系16は、互いに異なる2つの撮影画角において同一の視度(D)を持つ。例えば、撮影画角がθ1の場合と、θ2(θ1<θ2)の場合とのそれぞれで、対物レンズ光学系2による視度が0(D)となる。
そこで、例えば、眼科撮影装置1では、狭角撮影モードのとき(即ち、撮影画角が第1画角のとき、図2(a)参照)の視度と、広角撮影モードのとき(即ち、撮影画角が第2画角のとき、図2(b)参照)の視度とが、一定の値(例えば、0(D))となるように、第1画角と第2画角とが設定されていても良い。この場合、眼科装置1では、撮影画角が第1画角と第2画角との間で切り替わる場合に、被検眼に対する旋回点の位置の他に、撮影光学系2の視度が維持されるように、レンズ移動機構17によって2つの凸レンズ16a,16bが配置される。
図4に、撮影画角を約50°の第1画角と約110°の第2画角とに切り換えるときに視度と旋回点の位置とを維持できる各凸レンズ16a,16bの焦点距離と、各凸レンズ16a,16bの配置とを、一例として示す。図4に示す例では、第1凸レンズ16aの焦点距離は、42.6mmであり、第2凸レンズ16bの焦点距離は、70.5mmである。
撮影画角を第1画角(約50°)にするとき、第2凸レンズ16bは、走査部15(本実施形態では、レゾナントスキャナ15aとガルバノミラー15bとの中間点)から115.3mm被検眼E側に離れて配置される。また、第1凸レンズ16aは、第2凸レンズ16bから更に、66.5mm被検眼E側に離れて配置される。その結果として、旋回点の位置が、第1凸レンズ16aから被検眼E側に31.1mm離れた位置となる。つまり、撮影画角を50°とした場合の走査部15から旋回点までの距離は、212.9mmとなる。また、対物レンズ光学系16による視度は0(D)となる。
一方、撮影画角を第2画角(約110°)にするとき、第2凸レンズ16bは、走査部15から177.1mm被検眼E側に離れて配置される。また、第1凸レンズ16aは、第2凸レンズ16bから更に、4.8mm被検眼E側に離れて配置される。その結果として、旋回点の位置が、第1凸レンズ16aから被検眼E側に30.9mm離れた位置となる。つまり、撮影画角を110°とした場合の走査部15から旋回点までの距離は、212.8mmとなる。このように、図4の例では、撮影画角を第1画角(約50°)とした場合と、第2画角(約110°)とした場合とで、走査部15から旋回点までの距離が略同一になる。また、撮影画角が第2画角(約110°)となるように、各凸レンズ16a,16bを上記のように配置したとき、対物レンズ光学系16の視度は0(D)となる。よって、図4の例では、撮影画角を第1画角(約50°)とした場合と、第2画角(約110°)とした場合とで、撮影光学系2の視度が維持される。なお、撮影画角が変更されるときに維持される視度は、必ずしも0(D)で無くてもよい。例えば、第1画角および第2画角での視度が−2Dとなるように、図4の各パラメーターを設定することもできる。また、各レンズ16a,16bの焦点距離、および、具体的な位置は、図4に例示したものに限定されない。各レンズ16a,16bの焦点距離、および、具体的な位置は、必要とされる撮影画角等に応じて適宜求めることができる。
このように、撮影画角が第1画角と第2画角との間で切り替わる前後で、被検眼に対する旋回点の位置の他に、撮影光学系2の視度が維持されると、撮影画角の切り換え後に、視度を調節する必要がない。よって、撮影画角の異なる眼底画像を、一層良好に撮影できる。
なお、撮影画角が第1画角と第2画角との間で切り替わる場合に、撮影光学系2の視度が維持されない構成であってもよい。この場合、装置は、例えば、撮影光学系2に設けられた視度補正機構を利用してもよい。より具体的には、撮影画角が第1画角と第2画角とに切り換わることに伴う視度の変化は、投光光学系3と受光光学系4との共通の光路上にある少なくとも1つのレンズ(例えば、レンズ13)を変位させることによって補正されてもよい。レンズ13を変位させることで視度の変化を補正する場合は、レンズ13および駆動機構13aが、視度補正機構として機能する。
なお、本実施形態では、レンズ移動機構17によって対物レンズ光学系16の各レンズが移動されることによって、撮影光学系2における撮影画角が切り換わるが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、眼科撮影装置1に、互いに異なる撮影画角を撮影光学系2に設定する複数の対物レンズ光学系と、複数の光学系の一つをレーザー光の光路上に択一的に配置する画角切換機構と、を設けてもよい。但し、複数の対物レンズ系を被検眼Eの前方に切り換えて配置することで、撮影画角を切り換える装置よりも、本実施形態のように、1つの光学系に含まれるレンズ(本実施形態では、対物レンズ光学系16の各レンズ)の位置を移動させる装置のほうが、装置をコンパクトに構成しやすい。
次に、受光光学系4について説明する。受光光学系4は、投光光学系3からのレーザー光に伴う眼底Erからの光(即ち、通常撮影時には眼底反射光、蛍光撮影時においは眼底Erで発生した蛍光)を受光する。本実施形態の受光光学系4は、投光光学系3の光路L1上において、穴開きミラー12から対物レンズ光学系16までに配置された各部材を、投光光学系3と共用している。また、本実施形態の受光光学系4は、レンズ22、ピンホール板23、レンズ24、および、受光素子25、を含む。
被検眼Eの眼底にレーザー光が照射される場合、レーザー光に基づいて眼底Erで反射または出射された光は、前述した投光光学系3を逆に辿り、穴開きミラー12で反射され、レンズ22へ導かれる。なお、被検眼Eの瞳位置と穴開きミラー12の開口部とは、光学的に共役な関係である。レンズ22の下流側では、眼底Erからの光は、ピンホール板23のピンホールにおいて焦点を結び、レンズ24を介して受光素子25によって受光される。なお、本実施形態では、受光素子25として、可視域及び赤外域に感度を持つAPD(アバランシェフォトダイオード)が用いられている。
回転板ユニット30は、受光素子25に受光させる光の波長を選択する。回転板ユニット30は、回転板31、パルスモータ32、および、センサ33、を含む。
回転板31は、眼底Erで発生した蛍光を観察するためのバリアフィルタを複数種類有している。回転板31は、光軸L2に対して板面が直交するように置かれている。また、回転軸から離れた回転板の一部を、受光光学系4の光軸L2が通過する。回転板31は、パルスモータ32によって回転される。ここで、図5に示すように、回転板31には、フィルタ31b、フィルタ32c、及び開口31dが設けられている。フィルタ31b、フィルタ32c、及び開口31dは、いずれも、回転板31が回転された場合に受光光学系4の撮影領域Lzが通過する軌跡の上に配置される。このため、回転板31が回転することで、受光光学系4の撮影領域Lzの撮影領域Lzには、フィルタ31b、フィルタ32c、及び開口31dのいずれかがセットされる。なお、回転板31は、センサ33によって検出される回転角度に基づいて、セットされるフィルタの種類等が調節される。
フィルタ31bは、赤外蛍光撮影用のバリアフィルタである。フィルタ31bは、図6(a)に示す分光特性を持つ。フィルタ31bは、例えば、赤外蛍光撮影の一つであるICG(indocyanine−green−fundus−angiography)撮影に用いることができる。ICG撮影は、インドシアニングリーンを蛍光眼底造影剤として用いた蛍光撮影である。本実施形態の眼科撮影装置1では、第1光(波長790nm付近)をレーザー光出射部11から照射して撮影を行う。なお、ICG撮影は、主として脈絡膜血管の観察に用いられる。
フィルタ31cは、可視蛍光撮影用のバリアフィルタである。フィルタ31cは、図6(b)に示す分光特性を持つ。フィルタ31cは、例えば、第2波長のレーザー光(可視域のレーザー光)を眼底に照射して行う、FAF(fundus−auto−fluorescence:自発蛍光)撮影に用いることができる。なお、ここで例示する自発蛍光撮影は、網膜色素上皮のリポフスチンが第2光(波長490nm付近)の照射時に自発蛍光(波長500nm付近〜波長750nm付近)を示す原理を利用している。なお、発光させたい蛍光物質の蛍光特性に合わせて、光源とフィルタとを設けることで、上記例示したもの以外の蛍光物質を励起させて眼底を撮影できる。
開口部31dは、例えば、被検眼Eと装置との位置あわせ時、および、通常の眼底観察の際に撮影領域Lz上に置かれる。このとき、開口部31dは、眼底Erからの光を全て通し、受光素子25に導く。なお、本実施形態において、開口部31dの大きさは、受光光学系4の撮影領域Lzの大きさに略一致するように設計されている。
図7は、本実施形態における眼科撮影装置1の制御系を示したブロック図である。眼科撮影装置1の主な制御は、制御部90によって行われる。制御部90は、眼科撮影装置1の各部の制御処理と、測定結果の演算処理とを行う電子回路を有する処理装置である。
本実施形態において、制御部90は、HDD(ハードディスク)95、画像処理IC96、レーザー光出射部11、駆動機構13a,レゾナントスキャナ駆動用モータ15c、ガルバノミラー駆動用モータ15d、レンズ移動機構17、受光素子25、パルスモータ32、駆動機構50、操作部60、および、モニタ70等に接続される。
また、制御部90は、CPU91と、ROM92と、RAM93とを備えている。CPU91は、眼科撮影装置1に関する各種の処理を実行するための処理装置である。ROM92は、制御プログラムおよび固定データ等が格納された、不揮発性の記憶装置である。RAM93は、書き換え可能な揮発性の記憶装置である。RAM93には、例えば、眼科撮影装置1による被検眼Eの撮影および測定に用いる一時データが格納される。
HDD95は、書き換え可能な不揮発性の記憶装置である。HDD95には、後述する撮影表示処理を制御部90に実行させるためのプログラムが、少なくとも格納されている。また、HDD95には、眼科撮影装置1によって撮影される眼底画像(眼底撮影画像)が保存される。
画像処理IC96は、受光素子25からの受光信号に基づいて、撮影光学系2を用いて撮影される眼底画像の画像データを生成する処理装置である。ここで、走査部15の駆動に伴って眼底Erがレーザー光によって二次元的に走査される場合、受光素子25は、眼底Erにおけるレーザー光の走査位置に対応する眼底反射光を逐次受光する。その結果、受光素子25からの受光信号が、画像処理IC96に対して逐次出力される。本実施形態の画像処理IC96では、入力された受光信号が画像データに変換されて図示しないバッファに蓄積される。このため、画像処理IC96に1フレーム分(眼底画像1枚分)の受光信号が入力された場合に、1フレーム分の画像データが画像処理IC96のバッファに蓄積される。
操作部60には、検者に操作されるスイッチ等の入力装置が配設されている。本実施形態では、ジョイスティック60aと、撮影スイッチ60bと、撮影画角切換スイッチ60cと、撮影モード切換スイッチ60d等の各種スイッチと、が用意されている。
ジョイスティック60aは、検者が眼底Erの撮影範囲を指定するために操作される入力装置である。制御部90は、ジョイスティック60aの操作に応じて、駆動機構50を駆動させて、眼科撮影装置1を被検眼Eに対して移動させる。なお、撮影光学系2の位置調整は、制御部90が駆動機構50の駆動制御によって行われる場合に限られるものではない。例えば、検者が撮影光学系2の位置を手動で移動させて、撮影光学系2の位置調整を行うための駆動機構を備えた構成であってもよい。
撮影スイッチ60bは、眼底画像を撮影(キャプチャ)するために操作されるスイッチである。
撮影画角切換スイッチ60cは、撮影光学系2の撮影画角(撮影範囲)を切り換えるために操作されるスイッチである。本実施形態では、撮影画角切換スイッチ60cを通じて、少なくとも2種類の範囲(第1画角と第2画角)から撮影範囲の大きさが、検者によって選択される。制御部90は、対物レンズ光学系16に含まれる各レンズを、撮影画角切換スイッチ60cへの操作に応じて配置する。本実施形態では、第1画角が選択される場合、対物レンズ光学系16の各レンズが図2(a)に示した配置にセットされるように、制御部90がレンズ移動機構17を駆動する。一方、第2画角が選択される場合は、対物レンズ光学系16の各レンズが、図2(b)に示した配置にセットされるように、制御部90がレンズ移動機構17を駆動する。これによって、本実施形態では、撮影画角が第1画角である場合と第2画角である場合とで旋回点の位置が維持されるように、対物レンズ光学系16の各レンズ16a〜16cが配置される。
モード切換スイッチ60dは、制御部90で実行される眼科撮影装置1の撮影モードを、マニュアル撮影モード、FAF撮影モード、および、IGC撮影モードの中で切り換えるためのスイッチである。詳細は後述するが、マニュアルモードは、赤外光の眼底反射光で、眼底を観察するモードである。FAF撮影モードは、眼底Erで発せられる自発蛍光を観察するモードである。また、IGC撮影モードは、眼底Erに投与された蛍光造影剤からの蛍光を観察するモードである。モード切換スイッチ60dを操作した場合、新たに設定される撮影モードに応じて、レーザー光出射部11から出力される光の波長と、光軸の通過領域にセットされるバリアフィルタとが切り替わる。
モニタ70は、眼科撮影装置1によって撮影された被検眼Eの画像、および、各種の測定結果を表示するためのディスプレイを有する表示装置である。
次に、以上のような構成を有する眼科撮影装置1の動作を説明する。
まず、検者は、モード切換スイッチ60dを操作してマニュアル撮影モードを選択する。これにより、制御部90は、パルスモータ32を駆動させて、回転板31の開口部31dが光軸L2に位置するように回転板31の回転角度を調節する。また、マニュアル撮影モードが選択されることで、制御部90は、レーザー光出射部11から第1波長のレーザー光(赤外光)が照射される点灯状態に設定する。これにより、この後行われる撮影光学系1の位置あわせを、検者が、眼底反射光によって撮影された画像を見ながら行うことができる。眼底反射光によって撮影された画像は、蛍光撮影された画像に比べて撮影状態を把握しやすいので、検者によって位置あわせが良好に行われやすい。
次に、検者は、撮影光学系2のアライメントを行い、眼科撮影装置1を用いて撮影画像を撮影する。図示は省略するが、本実施形態では、少なくともアライメント処理が実行されて、撮影画像の撮影が完了するまでの間、制御部90によって、走査部15が継続的に駆動されているものとする。つまり、レーザー光によって眼底Erが所定の手順で継続的に走査されている。
次に、検者は、眼底反射光を用いて撮影されるライブ画像(眼底観察画像)の観察を行い、撮影画像を装置に取得させる。このときの眼科撮影装置1の動作を、図8のフローチャートを参照して説明する。なお、ここでいうライブ画像には、撮影のタイミングと同時に(つまり、リアルタイムで)表示される眼底画像だけでなく、撮影のタイミングから若干のラグ(例えば、数m秒、数秒)を経て表示される眼底画像が含まれる。
本実施形態の眼科撮影装置1では、眼底画像の撮影と表示とが撮影表示処理によって行われる。撮影表示処理では、初めに、S11およびS12の処理がCPU91によって実行される。これにより、眼科撮影装置1で撮影される眼底画像が、モニタ70の表示領域Dに表示される。
S11の処理において、CPU91は、画像処理IC96から1フレーム分の眼底画像の画像データを取得する(S11)。例えば、本実施形態では、画像処理IC96のバッファに蓄積された画像データをRAM93に転送することによって、画像データが取得される。なお、画像処理IC96のバッファに1フレーム分の画像データが蓄積されるまで、本処理は待機される。
次に、CPU91は、第1表示制御処理を実行する(S12)。第1表示制御処理(S12)において、CPU96は、眼科撮影装置1で新たに取得された1フレーム分の眼底画像を、第1表示領域D1に表示させる(図9参照)。後述するように、本処理は、眼底撮影画像の撮影が完了するまで繰り返し実行される。その結果、第1表示領域D1には、連続する眼底画像からなるライブ画像(観察画像)が、第1表示制御処理(S12)によって逐次表示される。このため、検者は、第1表示領域D1の表示内容を確認しながらジョイスティック60aを操作することによって、所望の撮影画像が得られるように、撮影光学系2を位置あわせすることができる。なお、本実施形態において、ジョイスティック60aの操作に応じて行われる撮影光学系2の移動処理(駆動機構50の駆動制御)は、制御部90において撮影表示処理と並列的に行われる処理であってもよく、また、画像処理IC96から画像データを取得する際の待機時間に制御部90において適宜実行される図示しない処理であっても良い。
なお、モニタ70における第1表示領域D1のピクセル数(いわゆるデバイスピクセルの数)に対して、S11の処理によって取得される眼底画像のピクセル数(いわゆる画像ピクセルの数)が多い場合も考えられる。この場合、第1表示処理(S12)では、例えば、眼底画像を第1表示領域D1のピクセル数に応じて圧縮(縮小)する処理がCPU91によって行われてもよい。
次に、CPU91は、第1表示領域D1に表示される眼底画像の一部(部分画像)を、第1表示領域D1とは異なる領域で表示するための処理を行う(S13〜S17)。
まず、CPU91は、注目範囲Cの設定操作を受け付けたか否かを判定する(S13)。注目範囲Cとは、第1表示領域D1に表示される眼底画像の中で(又は、眼底画像によって示される眼底Erの領域の中で)画像処理が行われる範囲である。注目範囲Cの設定操作は、例えば、マウス等のポインティングデバイス等を用いて、注目範囲Cを設定したい眼底画像上の位置を、検者が指定することによって行われてもよい。なお、本実施形態において、注目範囲Cの設定には、注目範囲Cを新たに設けることのほか、注目範囲Cの設定位置を移動させたり、縦横のサイズを変更させたりすることを含む。
本実施形態では、検者によって注目範囲Cの設定操作が初めて行われるまでは、S13の処理によって、注目範囲Cの設定操作を受け付けていないと判定される(S13:No)。この場合、CPU91は、注目範囲Cを設定することなく、S15の処理を実行する。
一方、S13の処理において、注目範囲Cの設定操作を受け付けたと判定された場合(S13:Yes)、CPU91は、設定操作によって検者から指定された範囲に、注目範囲Cを設定する(S14)。例えば、本実施形態では、CPU91は、眼底画像の撮影範囲に対して注目範囲Cの占める位置を示す位置情報を、RAM93に記憶する。次に、CPU91は、S15の処理を実行する。
このように、本実施形態では、注目範囲Cは、検者からの指示にがあった場合に設けられるものとして説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、検者からの指示に関わらず、CPU91によって、注目範囲Cが眼底画像の所定の範囲に設定されてもよい。また、本実施形態では、注目範囲Cを設けるか否かだけでなく、注目範囲Cの位置、大きさ等についても、検者からの指示に応じてCPU91が設定するものとして説明するが、必ずしもこの構成に限定されるものではない。例えば、眼底画像に対して常に一定の位置(例えば、眼底画像の中心領域)に注目範囲Cが設定されるように装置を構成してもよい。
S15の処理において、CPU91は、注目範囲Cが設けられているか否かを判定する(S15)。前述したように、注目範囲Cの設定操作が少なくとも一度行われている場合は、既に注目範囲Cが設けられている。この場合、CPU91は、S16の処理を実行する(S15:Yes)。
S16の処理において、CPU91は、部分画像の画像データを取得する(S16)。本実施形態において、部分画像の画像データは、眼底画像全体を示す画像データから注目範囲を示すデータをCPU91が抽出することによって生成および取得がされる。なお、本実施形態では、CPU91は、部分画像の画像データを、眼底画像全体を示す画像データから、予めS14の処理で取得された注目範囲Cの位置情報に基づいて抽出できる。
次に、CPU91は、第2表示制御処理を実行する(S17)。第2表示制御処理(S17)において、CPU91は、S16の処理によって画像データが取得された部分画像を、第2表示領域D2に表示させる(図9参照)。第1表示制御処理(S12)と同様に、本処理は、眼底撮影画像の撮影が完了するまで繰り返し実行される。よって、第2表示制御処理(S17)によって、第2表示領域D2には、連続する部分画像からなる第2ライブ画像が表示される。
なお、本実施形態において、第2ライブ画像は、第1ライブ画像と同期して表示されるものとして説明するが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1ライブ画像および第2ライブ画像の一方が表示され続け、他方が表示と非表示とを数秒間隔で切り換わるような表示態様であってもよい。また、第1ライブ画像と第2ライブ画像とが交互に表示されてもよい。
また、本実施形態の第2表示制御処理(S17)において、CPU91は、第1ライブ画像上の注目範囲Cよりも拡大された第2ライブ画像を表示させる。例えば、本実施形態では、眼底画像が表示される第1表示領域D1と同じサイズの第2表示領域D2において、第2ライブ画像の表示が行われる(図9参照)。これにより、検者は、注目範囲Cの観察を、第2ライブ画像を用いていっそう容易に行うことができる。
また、前述したように、装置で取得される眼底画像のピクセル数(画像ピクセルの数)が、第1表示領域D1のピクセル数(デバイスピクセルの数)と比べて多く、装置で取得される眼底画像の圧縮画像が、第1ライブ画像として表示されている場合が考えられる。このような場合に、第2表示制御処理(S17)では、第2ライブ画像を、第1ライブ画像よりも高い解像度で表示させてもよい。なお、本実施形態でいう解像度は、画像における眼底組織の分解能と相関がある。この場合、眼底画像における注目範囲Cが、第2表示領域D2では、第1表示領域D1よりも詳細に表示される。よって、検者は、注目範囲Cの詳細な観察を良好に行うことができる。
次に、CPU91は、判別表示処理を実行する(S18)。S18の処理が実行されることによって、第2ライブ画像が第2表示領域D2に表示される場合に、第1ライブ画像上で、注目範囲Cとその他の領域との判別表示が行われる。判別表示は、検者による注目範囲Cとその他の領域との判別を助ける表示であれば良い。本実施形態では、判別表示の一例として、第1表示領域D1上(第1ライブ画像上)で、注目範囲Cが線で囲まれる(図9参照)。判別表示としては、他にも、注目範囲Cを周囲の領域よりも濃く、又は、薄くしたり、注目範囲Cに網掛けを付したりする態様が例示される。
次に、CPU91は、撮影画像の撮影操作(本実施形態では、撮影スイッチ60bの操作)を受け付けたか否かを判定する(S19)。撮影操作を受け付けていなければ(S19:No)、CPU91は、S11からS19までの処理を繰り返し実行する。一方、S19の処理によって、検者からの撮影操作を受け付けている場合は(S19:Yes)、S20の撮影処理を実行する。撮影処理(S20)によって、CPU91は、眼底撮影画像を取得する。例えば、CPU91が、画像処理IC96から新たに眼底画像を取得して、取得した眼底画像を眼底撮影画像としてHDD95等に記憶する処理であってもよい。なお、画像処理ICから取得する眼底画像は複数枚であってもよく、連続して撮影された複数枚の眼底画像の加算平均画像等を、眼底撮影画像としてもよい。本実施形態では、撮影処理(S20)の後、撮影表示処理は終了する。
ここで、S15の処理に戻って説明を続ける。注目範囲Cの設定操作が一度も行われていなければ、S15の処理において、CPU91は、注目範囲Cは設定されていないと判定する。この場合、CPU91は、S16からS18の処理をスキップして、S19以降の処理を行う。よって、注目範囲Cの設定操作が検者によって行われるまでは、第2ライブ画像が表示領域Dに表示されない。
なお、以上の説明では、眼底反射光を用いて撮影された撮影画像が取得される場合について説明したが、眼底からの蛍光を用いて撮影された撮影画像を取得することもできる。例えば、検者は、眼底反射光を用いて撮影された観察画像(第1ライブ画像および第2ライブ画像)を見ながら撮影光学系2の位置あわせが行われた段階で、撮影モード切替スイッチ60dを操作して、撮影モードを、眼底からの蛍光を用いて撮影されるモード(FAF撮影モード、IGG撮影モード)に切り換えたうえで、撮影スイッチ60bを操作すればよい。
以上説明したように、本実施形態の眼科撮影装置1によれば、逐次実行される第1表示制御処理(S12)によって、連続する複数の眼底画像からなる第1ライブ画像がモニタ70に表示される。これにより、例えば、眼底画像の撮影範囲に存在する特徴部位(例えば、乳頭、黄斑、病変部、血管、等)に対する検者の確認漏れが抑制される。また、本実施形態の眼科撮影装置1によれば、眼底画像に対する注目範囲Cの設定操作が、検者によって事前に行われていると、第2表示制御処理(S17)によって、眼底画像から注目範囲として抽出された部分画像が生成され、連続する複数の部分画像からなる第2ライブ画像も、モニタ70に表示される。その結果、第2ライブ画像として表示される眼底画像の一部分(本実施形態では、注目範囲C)に存在する特徴部位の詳細な観察を、検者が容易に行うことができる。従って、眼科装置1では、検者が、眼底画像のライブ画像を用いて、眼底画像の撮影範囲を漏れなく詳細に観察しやすい。
また、例えば、レーザー光の旋回点の位置が被検眼Eの瞳位置からズレている場合、装置からの光の一部が虹彩で遮断され(ケラレ)てしまう場合がある。この場合、眼底画像の外縁部等がケラレた光の影響を受けてしまうことがある。このことは、眼底画像の一部からなる第2ライブ画像のみが表示される場合には、検者が確認できない可能性がある。よって、第2ライブ画像のみを確認して、眼底画像全体の撮影画像を取得すると、外縁部等を観察し難い眼底画像が得られてしまうおそれがある。これに対し、本実施形態の眼科装置1では、眼底画像からなる第1ライブ画像を、第2ライブ画像と共に表示するので、眼底画像の外縁部等がケラレた光の影響を受けているか否かを検者が容易に確認できる。このため、検者は、第1および第2ライブ画像を確認しながら、所望の撮影画像が得られるように撮影光学系2を位置あわせした状態で撮影画像の取得を装置に実行させることができる。よって、本実施形態の眼科装置1では、良好な眼底の画像の撮影を行うことができる。
また、本実施形態の眼科撮影装置1では、部分画像が抽出される眼底画像の注目範囲Cが、検者からの指示に基づいて設定される(S14)。眼底画像において検者が所望する範囲を第2ライブ画像として表示できる。その結果、検者による眼底の観察が一層良好に行われやすい。
また、本実施形態の眼科撮影装置1では、第2表示領域D2に第2ライブ画像が表示される場合は、第1表示領域D1の第1ライブ画像上で、注目範囲Cとその他の領域との判別表示が行われる(S18)。これにより、眼底画像と部分画像との対応関係を、検者が理解しやすい。
なお、第1実施形態では、注目範囲Cは、眼底画像の表示範囲(又は撮影範囲)に対して一定の位置に設定される場合について説明した。例えば、第1実施形態の眼科撮影装置1では、アライメント操作によって眼底Erにおける光学系の撮影範囲が変更される前と後とで、第1表示領域D1上での注目範囲Cの位置は変わらない。しかし、注目範囲Cは、眼底画像の表示範囲に対して一定の位置に設定されなくてもよい。例えば、眼底画像によって示される眼底Erの一定の位置に注目範囲Cが設定されてもよい。この場合、例えば、被検眼Eの固視微動等によって眼底Erにおける撮影範囲が移動されると、第1表示領域D1上の注目範囲Cは、眼底Er上の一定位置を追跡する。一例として、次のような上記第1実施形態の変形例を示す。この変形例では、眼底画像の一部からテンプレート画像を取得することによって、CPU91は、注目範囲Cの設定処理(S14)を行ってもよい。テンプレート画像は、予め装置に取得された眼底画像から抽出された画像が用いられる。
また、CPU91は、各タイミングで第1表示領域D1に表示される眼底画像から、テンプレート画像と相関の高い画像領域を特定する。これによって、第2表示領域D2として抽出される画像領域の移動が検出される。CPU91は、その検出結果に応じて、眼底画像から部分画像として抽出する領域を補正し、補正された領域を第2表示制御処理(S17)を行ってもよい。これにより、被検眼Eの固視微動等によって眼底Erにおける撮影範囲が移動されても、第2画像領域D2には、テンプレート画像に含まれる一定の部位が表示される。
次に、図10〜図13を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。上述したように、第1実施形態の眼科撮影装置1は、連続的する複数のライブ画像を、モニタ70の第1表示領域D1に表示する。また、眼科撮影装置1は、第1表示領域D1に表示される眼底画像の部分画像からなる第2ライブ画像を、モニタ70の第2表示領域D2に表示する。
これに対し、第2実施形態の眼科撮影装置100は、画像の解像度が互いに異なる第1眼底画像と第2眼底画像とを取得して、第1眼底画像および第2眼底画像の合成画像をモニタ70へ表示する。なお、本実施形態において、第1眼底画像は、撮影光学系2の撮影画角を第2画角にして(即ち、広角撮影モードで)撮影された眼底画像であり、第2眼底画像は、撮影光学系2の撮影画角を第1画角にして(狭角撮影モードで)第1眼底画像の一部に関して撮影された部分画像である。本実施形態において、第2眼底画像は、撮影画角が第1眼底画像よりも狭い分だけ、高い解像度を持つ。以下の説明では、第1眼底画像の観察画像と撮影画像とを、それぞれ、観察画像(広)、撮影画像(広)と記し、第2眼底画像の観察画像と撮影画像とを、それぞれ、観察画像(狭)、撮影画像(狭)と記すものとする。
第2実施形態の眼科撮影装置100は、第1実施形態の眼科撮影装置1と同一の光学系を有するものとする。また、眼科撮影装置100は、第1実施形態の眼科撮影装置1の制御系とおおよそ同じ制御系を有するものとする。但し、眼科撮影装置100は、眼底画像の撮影時に実行される処理を規定する制御プログラムが、第1実施形態の眼科撮影装置1とは少なくとも異なっている。
以下、図10〜図12のフローチャートを参照して、眼底画像の撮影時における眼科撮影装置100の動作を説明する。
はじめに、CPU91は、撮影光学系2の撮影画角(撮影倍率)が第1画角か、それとも第1画角よりも広角の第2画角かを判定する(S21)。例えば、本実施形態では、撮影画角切換スイッチ60cの操作に応じて予め設定されている撮影画角(撮影倍率)に基づいて、CPU91は判定を行う。
撮影画角が第2画角であると判定される場合(S21:第2画角)、S22以降の広角撮影モードでの処理を実行する。S22の処理によって、CPU91は、撮影操作を受け付けたか否かを判定する(S22)。撮影操作を受け付けたとCPU91によって判定される場合(S22:Yes)、CPU91は、画像処理IC96から1フレーム分の画像データを取得する(S23)。これによって、広画角(本実施形態では第2画角)の眼底画像の画像データが取得される。この画像データは、以降の処理によって、撮影画像(広)としてモニタ70に表示される。本実施形態では、S23の処理によって取得される撮影画像(広)の画像データは、新たに撮影画像(広)の撮影が行われるまでの間、一時的にRAM93に記憶される。なお、CPU91は、S23の処理によって取得される撮影画像の画像データを、不揮発性の記憶装置(例えば、HDD95)にも保存することができる。S23の処理の後、CPU91は、第1表示制御処理を実行する(S25)。
一方、撮影操作を受け付けていないとCPU91によって判定される場合(S21:No)、画像処理IC96から1フレーム分の画像データを取得する(S24)。この画像データは、以降の処理によって、観察画像(広)としてモニタ70に表示される(S24)。本実施形態では、S24の処理によって取得される観察画像(広)の画像データは、新たに観察画像(広)の撮影が行われるまでの間、一時的にRAM93に記憶される。S23の処理の後、CPU91は、第1表示制御処理を実行する(S25)。
広角撮影モードでは、第1表示制御処理(S25)によって、モニタ70の表示制御が行われる。第1表示制御処理(S25)において、CPU91は、S23の処理またはS24の処理で取得される画像データを用いてモニタ70の表示を制御する(S25)。ここで、図12を参照して、広角撮影モードにおける第1表示制御処理(S25)について説明する。第1表示制御処理(S25)では、まず、CPU91は、撮影画像(広)を表示するか否かの判定を行う(S31)。本実施形態では、撮影画像(広)がS23の処理によって予め取得されていれば、撮影画像(広)を表示する旨の判定が、CPU91によってされる(S31:Yes)。一方、撮影画像(広)が予め取得されていなければ、撮影画像(広)を表示しない旨の判定が、CPU91によってされる(S31:No)。S31の処理によって、撮影画像(広)を表示しないと判定された場合は(S31:No)、直前のS24の処理によって取得された観察画像(広)の画像データを用いてモニタ70の表示処理が行われる。つまり、この場合は、観察画像(広)からなるライブ画像の表示が行われる。ここで、本実施形態では、予め狭角撮影モードで撮影画像(狭)が撮影(取得)されているか否かを判定する(S32)。
撮影画像(狭)が予め取得されていなければ(S32:No)、CPU91は、観察画像(広)をモニタ70の表示領域Dへ表示させる(S33)。
一方、撮影画像(狭)が予め取得されていれば(S32:Yes)、CPU91は、観察画像(広)と、撮影画像(狭)との位置合わせを行う(S34)。本実施形態において、第1眼底画像(観察画像(広)または撮影画像(広))と、第2眼底画像(観察画像(狭)または撮影画像(狭))との位置あわせ(マッチング処理)は、例えば、両画像の相関関係を利用して行うことができる(例えば、パターンマッチング等)。これにより、固視微動等によって第1眼底画像と第2眼底画像との撮影範囲の位置関係が一定でない場合であっても、後述する両画像の画像処理を適正に行うことができる。また、第2眼底画像が第1眼底画像の一定の位置に含まれる場合は、第1眼底画像における第2眼底画像の撮影範囲(即ち、注目範囲C)を示す情報に基づいて、CPU91は、画像の位置あわせを行うこともできる。
本実施形態において、第1眼底画像と第2眼底画像とは、撮影画角が互いに異なるものの、同じピクセル数で撮影されている。そこで、本実施形態では、第1眼底画像と第2眼底画像との位置あわせを行う場合に、第1眼底画像および第2眼底画像のそれぞれの拡大縮小倍率が、CPU91によって調節される。例えば、本実施形態では、第1眼底画像における注目範囲Cが第2眼底画像の大きさと一致するような第1眼底画像の拡大画像に対して、第2眼底画像の位置あわせが行われる。なお、第1眼底画像および第2眼底画像のそれぞれの拡大縮小倍率は、例えば、第1眼底画像の撮影画角(又は、撮影倍率)と、第2眼底画像の撮影画角(又は、撮影倍率)とから求めることができる。
S34の位置あわせ処理の完了後、CPU91は、合成画像表示処理を実行する(S35)。合成画像表示処理(S35)において、CPU91は、事前に位置あわせた第1眼底画像と第2眼底画像とが画像処理によって合成された合成画像を、モニタ70へ表示させる。本実施形態では、CPU91は、位置あわせに用いた第1眼底画像の拡大画像と第2眼底画像との合成画像がモニタ70で表示される。第1眼底画像と第2眼底画像とを合成する画像処理としては、各種の画像処理の手法を用いることができる。例えば、第1眼底画像と第2眼底画像との加算によって合成する手法を用いることができる。また、第1眼底画像の注目範囲Cを、第2眼底画像によって置き換える手法を用いることができる。
S31の処理に戻って説明する。本実施形態では、撮影画像(広)を表示すると判定された場合も(S31:Yes)、撮影画像(狭)が予め取得されているか否かを判定する(S36)。撮影画像(狭)が予め取得されていなければ(S36:No)、RAM93に格納されている撮影画像(広)が、CPU91によってモニタ70の表示領域Dへ表示される(S38)。一方、撮影画像(狭)が予め取得されていれば(S31:Yes)、CPU91は、撮影画像(広)と、撮影画像(狭)との位置合わせを行い(S38)、撮影画像(広)と、撮影画像(狭)との合成画像を表示領域Dに表示させる(S35)。このように、本実施形態では、予めRAM93に撮影画像(広)が記憶されている場合は、合成画像の第1画像部分には、RAM93内の撮影画像(広)が用いられる。このように、本実施形態では、撮影光学系2を用いて第1眼底画像の撮影画像が予め取得されている場合は、合成画像における第1眼底画像部分において、撮影画像が継続的に表示される。
なお、撮影画像(広)と撮影画像(狭)との合成画像は、モニタ70に表示するだけでなく、プリンタ等を用いて印刷媒体に印刷することで、印刷媒体上に表示を行ってもよい。
S26の処理では、本処理を終了させるか否かが、CPU91によって判定される(S26)。例えば、処理を終了する旨の指示を検者から受け付けた場合に、本処理を終了する(S30:Yes)。一方、終了しないと判定された場合は(S30:No)、CPU91は、処理をS21から繰り返す。
S21に戻って説明を続ける。撮影画角が第1画角であると判定される場合(S21:第1画角)、CPU91は、狭角撮影モードでの処理(S27〜S29、S40)を実行する。
まず、CPU91は、S27〜S29の処理を実行し、第2眼底画像(観察画像(狭)または撮影画像(狭))を取得する。はじめに、CPU91は、撮影操作を受け付けたか否かを判定する(S27)。撮影操作を受け付けたとCPU91によって判定される場合(S27:Yes)、CPU91は、画像処理IC96から1フレーム分の画像データを、撮影画像(狭)の画像データとして取得する(S28)。撮影画像(狭)の画像データは、新たに撮影画像(狭)の撮影が行われるまでの間、一時的にRAM93に記憶される。S28の処理の後、CPU91は、第2表示制御処理を実行する(S40)。
一方、撮影操作を受け付けていないとCPU91によって判定される場合(S27:No)、画像処理IC96から1フレーム分の画像データを撮影画像(狭)の画像データとして取得する(S29)。これによって、狭画角(本実施形態では第1画角)の眼底画像の画像データが取得される。観察画像(狭)の画像データは、新たに観察画像(狭)の撮影が行われるまでの間、一時的にRAM93に記憶される。S23の処理の後、CPU91は、第2表示制御処理を実行する(S40)。
狭角撮影モードでは、第2表示制御処理(S40)によって、モニタ70の表示制御が行われる。第2表示制御処理(S40)では、S28の処理またはS29の処理で取得される第2眼底画像の画像データを用いて、モニタ70の表示が制御される。本実施形態の第2制御処理(S40)では、第1表示制御処理(S25)の各処理に準じた処理が行われる。具体的には、図12に示すフローチャートの各ステップにおいて、撮影画像(広)と撮影画像(狭)とを互いに読み替えると共に、観察画像(広)と観察画像(狭)とを互いに読み替えた処理が、第2制御処理(S40)では実行される。第2制御処理(S40)の実行後、図10に戻って、CPU91はS26の処理を実行する。
以上説明したように、第2実施形態の眼科撮影装置100によれば、第1眼底画像(眼底画像)および第2眼底画像(部分画像)のうち一方の画像が予め取得(撮影)されている場合に、他方の画像をCPU91が新たに取得(撮影)すると、CPU91は、第1眼底画像と第2眼底画像の合成画像をモニタ70の表示領域Dに表示する。ここで、合成画像は、第2眼底画像と対応する第1眼底画像の画像領域(本実施形態では、注目範囲C)に第2眼底画像が画像処理によって合成されたものである。合成画像は第1眼底画像と同じ撮影画角を持つので、検者は、合成画像を通じて眼底の広範囲を観察できる。しかも、第2眼底画像は、第1眼底画像よりも高い解像度で撮影されている。このため、検者は、合成画像において第2眼底画像が合成されている領域を通じて、眼底Erを詳細に観察できる。しかも、この合成画像は、第2眼底画像と対応する第1眼底画像の画像領域に第2眼底画像が合成されているので、検者が観察を行いやすい。従って、請求項1の画像処理装置によれば、モニタ70に表示される合成画像を通じて、眼底Erの状態を良好に検者に把握させることができる。
また、本実施形態の眼科撮影装置100によれば、第1表示制御処理(S25)又は第2表示制御処理(S40)において合成画像が生成される場合は、第1眼底画像と第2眼底画像との位置あわせ(マッチング)が行われる。その結果、眼科撮影装置100では、適正な合成画像が得られる。
また、本実施形態の眼科撮影装置100によれば、第1眼底画像における注目範囲Cが第2眼底画像の大きさと一致するような第1眼底画像の拡大画像に対して、第2眼底画像が画像処理によって合成されている。これにより、眼底画像の撮影範囲に含まれる眼底の各部位が、第2眼底画像によって隠されてしまうことなく合成画像上に表示できる。よって、検者は、眼底における特徴部位を、合成画像を通じて漏れなく観察できる。
また、眼科撮影装置100によれば、第1眼底画像および第2眼底画像のうち、撮影光学系2の撮影画角に応じた一方の画像の観察画像が撮影される場合に、他方の画像の撮影画像が予め取得されていると、その撮影画像と、一方の画像からなるライブ画像がCPU91によって合成されて、モニタ70に表示される。これにより、検者は、合成画像を通じて、第1眼底画像および第2眼底画像を、ほぼリアルタイムで観察することができる。
なお、第2実施形態の眼科撮影装置100では、合成画像を形成する第1眼底画像および第2眼底画像は、いずれも眼底からの蛍光を用いて撮影された画像である場合について説明したが、第1眼底画像および第2眼底画像の少なくとも一方には、眼底からの蛍光を用いて撮影された蛍光画像が用いられてもよい。
なお、上記第2実施形態においては、対物レンズ光学系16の配置を切り換えることによって、画角の異なる2種類の眼底画像(第1眼底画像および第2眼底画像)を撮影する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、撮影光学系2の走査部15(上記各実施形態では、レゾナントスキャナ15a及びガルバノミラー15b)の振れ角を調節することによって、画角の異なる2種類の眼底画像を撮影することができる。このとき、例えば、第2眼底画像を撮影するときにおける走査部材の走査速度を、第1眼底画像を撮影する場合よりも遅くしてもよい。これにより、第2眼底画像の撮影時には、眼底Erの単位長さの走査で取得されるピクセルの数が、第1眼底画像の撮影時よりも多くなるので、このような装置では、上記第2実施形態と同様の効果が得られる。また、上記第2実施形態においては、撮影画角の切り替えが、対物レンズ光学系16のレンズ配置の切り換えではなく、装置の撮影画角を広角化する広角レンズアタッチメントの着脱によって行われてもよい。
また、上記第2実施形態においては、眼科撮影装置1によって、第1眼底画像と第2眼底画像(部分画像)との合成画像を生成する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない、例えば、汎用のコンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ)においても合成画像を生成してもよい。例えば、コンピュータのハードディスク等に、上記実施形態の眼科撮影装置1によって実行される撮影表示処理のS34およびS35の処理を、コンピュータのプロセッサに実行させる解析プログラムを用意すればよい。この場合も、上記実施形態の眼科撮影装置1と同様に、第1眼底画像と第2眼底画像(部分画像)との合成画像を生成できる。
また、上記各実施形態においては、眼底Erからの反射光を用いて眼底画像を撮影する場合と、眼底Erで発生した蛍光を用いて眼底画像を撮影する場合とで、共通の受光素子25を用いる場合について説明したが、それぞれの場合で、異なる受光素子25を用いることもできる。例えば、ハーフミラー等を用いて受光光学系4の光路を分岐させて、それぞれの光路の先に受光素子を設け、各受光素子を用いて同時に撮影を行うことができる。それぞれの受光素子に受光特性が異なるものを配置することで、複数の波長による撮影を同時に行うことができる。
また、上記各実施形態では、制御部90は、対物レンズ光学系16が持つ各レンズの位置制御を行うものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、対物レンズ光学系16の各レンズの配置を互いに連動させるように構成されたレンズ移動機構17によって、撮影光学系2における撮影画角の変更時にレーザー光の旋回点が維持されるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、対物レンズ光学系16が2つのレンズ(第1凸レンズ16a、第2凸レンズ16b)で構成される場合について説明したが、対物レンズ光学系16は3つ以上のレンズで構成されてもよい。対物レンズ光学系16が3つのレンズによって構成される例として、前述の第1凸レンズ16a、及び第2凸レンズ16bに加えて、負のパワーを持つレンズが、第2凸レンズ16bよりも走査部15側に設けられていてもよい。例えば、図14に示すように、負のパワーを持つレンズとして凹レンズ16cが設けられてもよい。
図14の例において、凹レンズ16cは、走査部15側に凹面を向けて配置される。また、図14の例において、凹レンズ16cには平凹レンズが用いられているが、これに限られるものではなく、例えば、両凹レンズ、凹メニスカスレンズ、非球面レンズ、複合レンズ等が用いられてもよい。
走査部側に凹面を向ける凹レンズ16cによって、凹レンズ16cの中心以外を通過する走査部15側からのレーザー光は、凹レンズ16cが無い場合よりも光軸L3から離間する向きに屈折される。よって、凹レンズ16cが無い場合に対して走査部15に近い位置で、レーザー光を所要の高さにすることができる。つまり、一定の撮影画角が得られるときに、2つの凸レンズ16a,16bのそれぞれを凹レンズ16cが無い場合に対して走査部15側に近づけて配置できる。よって、図14の例では、凹レンズ16cが無い場合に対し、対物レンズ光学系16の全長が短縮され得る。従って、装置がコンパクトに構成され易い。
図14の例では、撮影光学系2の撮影画角が第1画角となる場合(図14(a)参照)と、第2画角となる場合(図14(b)参照)とで、2つの凸レンズ16a,16bは、レンズ移動機構17によって、図2に示した例と同様に変位される。このとき、凹レンズ16cは、2つの凸レンズ16a,16bと共に変位されてもよい。例えば、撮影画角が第1画角である場合と第2画角である場合とで、被検眼に対する旋回点の位置の他に、視度が維持されるように、2つの凸レンズ16a,16b、および凹レンズ16cがレンズ移動機構17によって配置されてもよい。前述したように、対物レンズ光学系2が、2つの凸レンズ16a,16bからなる場合は、2つの凸レンズ16a,16bの設計値に応じた特定の画角同士で撮影画角が切り換わるとき(例えば、図4参照)以外は、被検眼に対する旋回点の位置と視度とが、撮影画角の切り換えの前後で維持されない。これに対し、図14の例では、2つの凸レンズ16a,16bの変位によって生じる視度の変化を、凹レンズ16cの変位(移動)によって打ち消すことができる。よって、図2の例では、撮影画角が特定の画角同士で切り替わる場合以外でも、良好な眼底画像が撮影されやすい。なお、凹レンズ16cの位置は、各レンズ16a〜16cの焦点距離、所要の撮影画角等に基づいて、適宜定めることができる。また、凹レンズ16cは、光軸L3上で固定的に配置されていてもよい。
また、上記実施形態の構成において、撮影画角に伴う対物レンズ光学系16による視度の変化を補正するための、または、正視眼に対する被検眼Eの視度の誤差を矯正するための視度補正部が、投光光学系3および受光光学系4の共通の光路上(例えば、走査部15からレーザー光出射部11までの間)に設けられてもよい。具体例として、図15を参照して視度補正部18を説明する。視度補正部18は、走査部15とレーザー光出射部11との間で撮影光学系2の光路長を調節することによって視度補正を行う。視度補正部18は、例えば、2枚のミラー18a,18bと、図示しない駆動部とを有していてもよい。駆動部は、2枚のミラー18a,18bの位置関係を維持したまま、2枚のミラー18a,18bを矢印s方向に移動させる。その結果、投光光学系3および受光光学系4の共通部分の光路長が変更される。
また、上記実施形態では、被検眼に対する旋回点の位置が維持されるように撮影画角を変更するため、第1凸レンズ16a及び第2凸レンズ16bが光軸L3に沿って互いに同じ方向に変位される場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではない。被検眼に対する旋回点の位置を維持しつつ撮影画角を切り換える場合に、少なくとも第2凸レンズ16bは、光軸L3に沿って、撮影画角の拡大または縮小と対応する方向に変位されてもよい。より詳細には、撮影画角が広がる場合は、少なくとも第2凸レンズ16bは走査部15から被検眼Eへ向かう方向へ変位されてもよい。また、撮影画角が狭められる場合は、少なくとも第2凸レンズ16bは被検眼Eから走査部15へ向かう方向へ変位されてもよい。しかし、この場合、対物レンズ光学系16の設計値、および所要の撮影画角(第1撮影画角と第2撮影画角)の値によっては、第1凸レンズ16aは、第2凸レンズ16bと同方向に変位される場合だけでなく、第2凸レンズ16bとは反対方向へ変位される場合も考えられる。
上記実施形態では、撮影光学系2における撮影画角が第1画角とその第1画角よりも広い第2画角との2段階に切り換えられる場合について説明した。しかし、撮影光学系2における撮影画角は、2段階よりも多くの段階に切り換えられてもよく、また、段階的にではなく、連続的に切り換えられてもよい。これらの場合、撮影画角が任意の二値間で変更される場合に、上記実施形態の技術が適用されうる。
また、上記実施形態において、眼科撮影装置1は、レーザー光を眼底上で2次元的に走査するSLO装置として説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、眼底撮影装置1は、いわゆるラインスキャンSLOであってもよい。この場合、走査部15の動作に基づいて、ライン状のレーザー光束が眼底上で一次元的に走査される。また、眼科撮影装置1は、眼底カメラであってもよい。