JP2015083002A - 糖液の精製方法、精製糖液、有機化合物の製造方法および微生物の培養方法 - Google Patents
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Abstract
Description
これら発酵生産プロセスおよび化学変換プロセスの原料として使用される糖類として、現在はサトウキビ、デンプン、テンサイ、とうもろこし、いも、キャッサバ、サトウカエデなどの可食原料に由来するものが挙げられる。
しかしこれらの可食原料由来の糖類は、今後の世界人口増加による可食原料価格の高騰、および天候不順や気候変動による可食原料の供給不足といった懸念がある。また食料不足の際に、可食原料を食用用途と競合して工業原料に利用することに対する倫理上の批判等の懸念もある。そこで、非可食原料や、不純物を含有する、より低純度の糖類などから、効率的に糖液を製造するプロセス、あるいは得られた糖液を発酵生産原料や化学変換原料として、効率的に工業原料に変換するプロセスの構築が今後の課題となっている。
しかし、これらの手法を用いた場合、非可食原料中のセルロース、ヘミセルロースが加水分解され、グルコースやキシロースといった糖が得られると共に、これらの糖の分解反応も進行するため、各種の副生成物も生成する。具体的には例えば、フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、シリンガアルデヒド等のアルデヒド化合物や、蟻酸、レブリン酸、バニリン酸、フェルラ酸、酢酸等のカルボン酸誘導体や、ベンゾキノン等の共役カルボニル化合物や、バニリン、グアヤコール等のフェノール性化合物等が生成する。このように生成した副生成物を除去、精製する方法として、有機溶媒を用いた溶媒抽出による除去方法(非特許文献1、2)が開示されている。
なお、前記のような作用を及ぼす物質を総称し、以下「発酵阻害物質」という。そのためこれらの発酵阻害物質の存在は、非可食原料の糖液を発酵原料として利用する際の大きな課題であった。
[1]溶媒抽出法による糖類を含む液(糖液)の精製方法であって、前記溶媒抽出を水/オクタノール分配係数が1.0以上の溶媒を用いて行なうことを特徴とする、糖液の精製方法、
[2]前記溶媒が、炭素数6以上12以下の芳香族炭化水素化合物、炭素数4以上12以下の脂肪族エーテル、および炭素数5以上12以下の脂肪族ケトンから選ばれる少なくとも1つである、上記[1]に記載の糖液の精製方法、
[3]前記溶媒の水/オクタノール分配係数が4.0以下である、[1]または上記[2]に記載の糖液の精製方法、
[4]前記糖類が、炭素数3以上7以下の単糖を構成成分として含む糖を1つ以上含む、上記[1]〜[3]のいずれか1に記載の糖液の精製方法、
[5]前記糖液が、非可食原料由来の糖を構成成分として含む糖液である、上記[1]〜[4]のいずれか1に記載の糖液の精製方法、
[6]前記糖液中の糖濃度が、5質量%以上である、上記[1]〜[5]のいずれか1に記載の糖液の精製方法、
[8]水性媒体中で、上記[7]に記載の精製糖液を含有する有機原料に有用物質生産能力を有する微生物を作用させて有機化合物を得る工程(以下「有機物生産工程」という。)を有することを特徴とする有機化合物の製造方法、
[9]前記有機化合物がアルコール類、アミン類、カルボン酸類、およびフェノール類から選ばれる少なくとも1つである、上記[8]に記載の有機化合物の製造方法、
[10]前記アルコール類が、炭素数2〜10の脂肪族アルコールである、上記[9]に記載の有機化合物の製造方法、
[11]前記カルボン酸類が、炭素数2〜10の脂肪族カルボン酸である、上記[9]または[10]に記載の有機化合物の製造方法、
[12]有用物質生産能力を有する微生物の培養方法であって、上記[11]に記載の精製糖液を炭素源として用いることを特徴とする微生物の培養方法、に存する。
また本発明の精製糖液は、発酵生産による有機化合物の製造における微生物の生産効率を向上させ、また化学変換プロセスに利用した際に生成物である有機化合物の着色を抑制することができる。
また、本発明の有機化合物の製造方法であれば、比較的簡単な処理により、高い生産効率で所望の有機化合物を製造することができる。
また、本発明の培養方法であれば、糖液中の発酵阻害物質を低減することができるため、発酵生産プロセスにおいて、微生物の増殖量と増殖速度を向上させ、もって発酵生産性を向上させることができる。
本発明の第1の発明は、糖液の精製において、水/オクタノール分配係数が1.0以上である溶媒(以下、「抽出溶媒」ということがある)を用いて糖液の溶媒抽出を行なうことを特徴とする。
第1の発明における糖液、並びに後述する第2の発明、第3の発明、および第4の発明(第1ないし第4の発明をまとめて「本発明」ということがある。)で用いられる「糖液」とは、上述の通り糖類を含有する液をいい、好ましくは糖類を含有する水溶液である。以下、糖液中に含まれる糖類から順に説明する。
本発明で用いる糖液に含まれる糖類は、特に限定はされず、いわゆる糖類一般を用いることができるが、微生物が炭素源として活用することができる糖が好ましい。具体的にはグリセルアルデヒド等の炭素数3の単糖(トリオース);エリトロース、トレオース、エリトルロース等の炭素数4の単糖(テトロース);、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、デオキシリボース、キシルロース、リブロース等の炭素数5の単糖(ペントース);アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース、フコース、フクロース、ラムノース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース等の炭素数6の単糖(ヘキソース);、セドヘプツロース等の炭素数7の単糖(ヘプトース);スクロース、ラクトース、マルトース、トレハノース、ツラノース、セロビオース等の二糖類;ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース等の三糖類;フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナオリゴ糖などのオリゴ糖類;デンプン、デキストリン、セルロース、ヘミセルロース、グルカン、ペントサン等の多糖類;等が挙げられる。
本発明で用いる糖液は、上記の糖類1種類を単独で含有していてもよいし、2種類以上を含有していてもよい。
なお、「炭素数3以上、7以下の単糖を構成成分として含む糖」とは、炭素数3以上、7以下の単糖、炭素数3以上、7以下の単糖を構成成分として含む多糖類、またはこれらの混合物をいう。これらの糖類の中でも、ヘキソース、ペントース、およびこれらを構成成分とする二糖類がより好ましい。これらは自然界、植物の構成成分となっていることから豊富に存在し、原料の入手が容易であるためである。
本発明で用いる糖液の製法は、特に限定はされないが、例えば上記の糖類の1種類以上を水に溶解して製造する方法や、上記の糖類を構成成分として含む原料(以下、「糖原料」ということがある。)を、その構成単位である糖類まで分解して製造する方法が挙げられる。また、前記発酵性糖質を含有する澱粉糖化液または糖蜜なども糖液として使用することができ、具体的にはサトウキビ、甜菜またはサトウカエデ等の植物から搾取した糖液であるものが好ましい。
前記糖原料は、食用にできるか否かの観点で、「可食原料」と「非可食原料」に分類することができる。
可食原料としては、サトウキビ、デンプン、テンサイ、とうもろこし、いも、キャッサバ、サトウカエデ等が挙げられる。
非可食原料としては、具体的には、バガス、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、コーンストーバー、稲わら、麦わら、米ぬか、樹木、木材、植物油カス、ササ、タケ、パルプ類、古紙、食品廃棄物、水産物残渣、家畜廃棄物等が挙げられる。また、砂糖の製造工程で発生する糖蜜から砂糖を回収した後に残る廃糖蜜も糖原料として使用可能である。
このうち、非可食原料は、可食原料と異なり、食用用途と競合せず、また通常であれば廃棄、焼却処理をされるものが多いため、安定的な供給、資源の有効利用が図れる点で好ましい。
本発明で用いる糖液には、糖液を製造する工程および保管した際に生成する、糖類以外の有機化合物が通常含まれている。このような有機化合物として、例えばカルボニル化合物やフェノール化合物、不飽和炭化水素化合物が挙げられる。カルボニル化合物としては、構造内にカルボニル基を有するものであれば特に限定はされず、脂肪族カルボニル化合物でも、芳香族基を有するものであってもよい。好ましくは炭素数1以上、20以下、より好ましくは炭素数16以下、さらに好ましくは炭素数12以下のカルボニル化合物である。上記範囲のカルボニル化合物は水溶性が比較的高く、糖液、特に糖を含む水溶液中に含まれることが多いためである。このようなカルボニル化合物の具体例としては、例えばフルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、グリコールアルデヒド、蟻酸、ヒドロキシベンズアルデヒド、シリンガアルデヒド、バニリン、イソバニリン、オルトバニリン、コニフェニルアルデヒド等のアルデヒド化合物;1,4−ベンゾキノン等のケトン化合物、アクリル酸メチル、γ―ブチルラクトン等のエステル化合物;酢酸、レブリン酸等のカルボン酸;等が挙げられる。フェノール化合物の具体例としては、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、クマル酸、フェルラ酸、イソオイゲノール、オイゲノール、グアイアコール、バニリン酸、ホモバニリン酸、アセトバニロン、没食子酸、シリング酸等が挙げられる。また、不飽和炭化水素化合物としてはリモネン等が挙げられる。
第1の発明では、原料となる糖液から水/オクタノール分配係数が1.0以上である溶媒を用いて発酵阻害物質を抽出することで上記の糖液中に含まれる発酵阻害物質の含有量を低減させることができる。
本発明における溶媒抽出処理は、いわゆる分液処理であり、通常、水/オクタノール分配係数が1.0以上である溶媒と糖液とを混合し、糖液中に含まれる発酵阻害物質を前記抽出溶媒中に抽出する工程(以下、抽出工程ということがある)と、抽出工程後の糖液と抽出溶媒との混合溶液を静置し、二相分離した後、前記糖液と抽出溶媒とを分離する工程(以下、分離工程ということがある)を含む。これにより発酵阻害物質が糖液から分離され、糖液が精製される。なお、以下で前記溶媒抽出処理を単に「精製」ということがある。
なお、抽出溶媒は1種類の溶媒を単独で使用しても、2種類以上の溶媒を任意の割合で混合して使用してもよい。2種類以上の溶媒を混合して用いる場合の水/オクタノール分配係数は、その混合溶媒の水/オクタノール分配係数をさす。
前記分離工程において、静置の時間は特に限定されず、通常抽出溶媒が形成する有機相と、通常糖液が形成する水相が二相に分離するまで静置することが好ましく、その後糖液から抽出溶媒を分離することが好ましい。分離操作は1回でもよく、また連続的に複数回行ってもよい。
また、この溶媒抽出処理した糖液をさらに水素化処理や活性炭処理、イオン交換樹脂処理等を実施して、さらに不純物を除去してもよい。
前記第1の発明における溶媒抽出処理(精製)により、糖液中に含まれる発酵阻害物質の含有量を低減させることができるため、得られる糖液中の発酵阻害物質の濃度は、最初の糖液中の濃度より低い。なお、上記の精製に供した後の糖液を、以下「精製糖液」ということがある。
また前記第1の発明により得られた糖液は、通常、精製前の糖液に比べ、糖濃度に変化はない。
前記第2の発明の精製糖液は、有機物質生産能力を有する微生物を作用させることにより、各種の有機化合物を製造することができる。
第3の発明で用いる微生物は、有用物質生産能力を有する微生物であれば、特に限定はされない。
なお第3の発明における「有用物質生産能力を有する微生物」とは、該微生物を培地中で培養したときに、該培地中に有用物質を生成蓄積することができる微生物をいう。
微生物が生産する有用物質としては、微生物が培地中に生成蓄積することができる有機化合物であれば限定されないが、具体的には、エタノール、プロパノール、ブタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール等のアルコール類;1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン等のアミン類;酢酸、酪酸、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、ピルビン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸、シス−アコニット酸、クエン酸、イソクエン酸、2−オキソグルタル酸、2−オキソイソ吉草酸、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、レブリン酸、キナ酸、シキミ酸、アクリル酸、メタクリル等のカルボン酸類;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、アルギニン、メチオニン、ヒスチジン、システイン、セリン、トレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、トリプトファン等のアミノ酸類;フェノール、カテコール、ハイドロキノン等のフェノール類;安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、プロトカテク酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸類;イノシン、グアノシン等のヌクレオシド類、イノシン酸、グアニル酸等のヌクレオチド;イソブチレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素化合物等が挙げられる。
第3の発明で用いる微生物は、有用物質生産能力を有する微生物であれば特に限定されないが、コリネ型細菌、大腸菌、アナエロビオスピリラム(Anaerobiospirillum)属細菌、アクチノバチルス(Actinobacillus)属細菌、マンヘミア(Mannheimia)属細菌、バスフィア(Basfia)属細菌、ザイモモナス(Zymomonas)属細菌、ザイモバクター(Zymobacter)属細菌、糸状菌、および酵母菌からなる群より選択される微生物であることが好ましい。
その中でも、コリネ型細菌、大腸菌、アナエロビオスピリラム(Anaerobiospirillum)属細菌、アクチノバチルス(Actinobacillus)属細菌、マンヘミア(Mannheimia)属細菌、バスフィア(Basfia)属細菌、ザイモバクター(Zymobacter)属細菌、糸状菌、および酵母菌からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましく、より好ましくはコリネ型細菌、大腸菌、酵母菌であり、特に好ましくはコリネ型細菌である。
育種により有用物質生産能力を付与する手段としては、変異処理や遺伝子組換え処理などが挙げられ、有用物質生合成経路における酵素遺伝子の発現強化や副生物生合成経路における酵素遺伝子の発現低減など、公知の方法を採用することができる。例えば、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸等のカルボン酸生産能を付与する場合は、後述するようなラクテートデヒドロゲナーゼ活性を低減するような改変やピルビン酸カルボキシラーゼ活性を増強するような手段などが挙げられる。エタノール、ブタノール、ブタンジオール等のアルコール生産能を付与する場合は、後述するようなラクテートデヒドロゲナーゼ活性を低減するような改変やアルコールデヒドロゲナーゼ活性を増強するような手段などが挙げられる。
LDH活性が低減した株の具体的な作製方法としては、染色体への相同組換えによる方法(特開平11−206385号公報等参照)や、sacB遺伝子を用いる方法(Schafer A, Tauch A, Jager W, Kalinowski J, Thierbach G, Puhler A, Gene 1994 Vol.145(1), p69-73)等が挙げられる。
ADH活性の増強に用いるadh遺伝子としては、ADH活性を有するタンパク質をコードする限り特に限定されないが、例えば、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)由来のadhB遺伝子、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のadhE2遺伝子を挙げることができる。さらに、上記以外の細菌、または他の微生物、動植物由来のadh遺伝子を使用することもできる。微生物または動植物由来のadh遺伝子は、既にその塩基配列が決定されている遺伝子、ホモロジー等に基づいてADH活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を微生物、動植物等の染色体より単離し、塩基配列を決定したものなどを使用することができる。また、塩基配列が決定された後には、その配列に従って合成した遺伝子を使用することもできる。これらはハイブリダイゼーション法やPCR法により、そのプロモーターおよびORF部分を含む領域を増幅することによって取得することができる。
本発明において、「ペントース利用能」とは、該微生物がペントースを炭素源として利用し、増殖または有用物質生産することができることをいう。
育種によりペントース利用能を付与する手段としては、遺伝子組換え処理などが挙げられ、ペントース代謝経路の酵素遺伝子を導入など公知の方法を採用することができる。例えば、キシロース利用能を付与する場合は、後述するようなキシロースイソメラーゼ遺伝子を導入する方法、またはキシロースリダクターゼ遺伝子およびキシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子を導入する方法などが挙げられる。アラビノース利用能を付与する場合は、後述するようなアラビノースイソメラーゼ遺伝子およびリブロキナーゼ遺伝子およびリブロース5リン酸エピメラーゼ遺伝子を導入する方法などが挙げられる。
ここで、「XylA活性」とは、キシロースを異性化してキシルロースを生成する反応を触媒する活性(EC:5.3.1.5)をいう。XylA活性が付与または増強されたことは、公知の方法、例えばGaoらの方法(Gao Q, Zhang M, McMillan JD, Kompala DS, Appl. Biochem. Biotechnol., 2002, Vol.98(100), p341-55)により、XylA活性を測定することによって確認することができる。
ここで、「XylB活性」とは、キシルロースをリン酸化してキシルロース5リン酸を生成する反応を触媒する活性(EC:2.7.1.17)をいう。XylB活性が付与または増強されたことは、公知の方法、例えばEliassonらの方法(Eliasson A, Boles E, Johansson B, Otensterberg M, Thevelein JM, Spencer-Martins I, Juhnke H, Hahn-Hatengerdal B, Appl. Microbiol. Biotechnol., 2000, Vol.53, p376-82)により、XylB活性を測定することによって確認することができる。
XylB活性の付与または増強に用いるxylB遺伝子としては、XylB活性を有するタンパク質をコードする限り特に限定されないが、例えばエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来の遺伝子を挙げることができる。
第3の発明で使用する水性媒体とは、水、水を主成分とする水溶液、およびゲル(寒天)等と、糖液を含有する有機原料と、有用物質生産能を有する微生物、ならびに有機原料中に含まれる糖類以外のカルボニル化合物のほか、微生物の培養に必要な成分を含む液体を意味し、溶解していない液体・固体が分散したものも含まれる。
第3の発明は、上記の有機物生産工程により有機化合物が生成し、水性媒体中に蓄積させることができる。前記有機物生産工程で蓄積させた有機化合物は、常法に従って、水性媒体より回収する工程をさらに含んでいてもよい。具体的には、例えば、蓄積させた有機化合物がコハク酸、フマル酸、リンゴ酸等のカルボン酸である場合には、遠心分離、ろ過等により菌体等の固形物を除去した後、イオン交換樹脂等で脱塩し、回収することができる。
第4の発明の培養方法は、本発明の精製糖液を含有する有機原料を炭素源として用いて、有用物質生産能力を有する微生物を培養させる。本発明の培養方法によって得られた微生物は、その後、有機原料に作用させることによって有機化合物を生成させ、これを回収することができる。このときの有機原料としては、前記精製糖液を用いてもよいし、精製糖液中にその他の有機原料を含んでいてもよい。製造し得る有機化合物の種類および好ましい有機化合物の例は上述した通りである。
これらの有機原料は、単独で添加してもよいし、2種類以上を任意の組み合わせで添加してもよい。
また、本培養は、一般的な生育至適温度で行なうことが好ましい。具体的な培養温度としては、通常25℃〜40℃であり、30℃〜37℃が好ましい。コリネ型細菌の場合は、通常25℃〜35℃であり、28℃〜33℃がより好ましく、約30℃が特に好ましい。
また、本培養の培養時間は、一定量の菌体が得られる時間であれば特段の制限はないが、通常6時間以上96時間以下である。また、好気性微生物の本培養においては、通気したり攪拌したりして、酸素を供給することが好ましい。
本培養後の菌体は、後述する有機化合物生産反応に用いることができるが、培養液を直接用いてもよいし、遠心分離、膜分離等によって菌体を回収した後に用いてもよい。
糖液中の各含有成分の存在量は、液相クロマトグラフ(LC)分析により求めた。分析条件は以下の通りである。
<測定条件(1): 糖、ギ酸の分析条件>
ポンプ:島津製作所社製 LC−20AD
カラムオーブン:島津製作所社製 CTO−10A
UV検出器:島津製作所社製 SPD−10A
RI検出器:島津製作所社製 RID−10A
カラム:信和化工社製 ULTRON PS−80H 8.0ID×300mm装置:
溶離液:0.11質量%過塩素酸溶液 1.0mL/分
検出方法:UV(210nm),RI
注入量:10μL
カラム :Develosil C30 長さ100mm×φ4.6mm、
粒子径3μm(野村化学社製)
溶離液 :A液 0.052質量%過塩素酸水溶液
B液 アセトニトリル
A液/B液=95/5(vol/vol)からB液100vol%
20分間でグラジエント分析
カラム温度 :40℃
流速 :1.0mL/分
サンプル注入量:10μL
検出波長 :UV (210nm)
溶媒抽出による除去率は、以下のように算出した。
糖液ならびに溶媒抽出処理した精製糖液を上記LC条件にて測定し、絶対検量線法を用いて各成分の濃度を算出し、溶媒抽出処理前後の濃度変化を下記式により算出した。
例えば1,4−ベンゾキノン(以下、単に「ベンゾキノン」といい、「BQ」と略すことがある)の除去率は、以下のように算出した。
(ベンゾキノン(BQ)除去率)(%)=[1−(溶媒抽出処理後に含有するベンゾキノン濃度)/(溶媒抽出処理前の糖化液に含有するベンゾキノン濃度)]×100
(合成例1)
超純水106.2mLにグルコース12.0g、キシロース1.5g、ヒドロキシメチルフルフラール0.15g、ベンゾキノン0.15gを溶解させ、糖液を作製した。以下、糖液−1とする。
この糖液のLC分析を行ったところ、グルコース10.00質量%、キシロース1.25質量%、ヒドロキシメチルフルフラール0.13質量%、ベンゾキノン0.13質量%
だった。また、糖液−1は黄色だった。
超純水90.7mLにグルコース8.00g、キシロース1.00g、フルフラール0.10g、ギ酸0.04gを溶解させ糖液を作製した。以下、糖液−2とする。この糖液のLC分析を行ったところ、グルコース7.98質量%、キシロース1.00質量%、ギ酸0.04質量%、フルフラール0.11質量%であった。また、糖液−2は黄色だった。
(糖液の溶媒抽出処理(精製))
200mL分液漏斗に、合成例1で調製した糖液−1を10g、トルエン10gを加えた後、25℃で3分混合した後静置した。水層を取り出し、精製糖液−1を得た。
精製糖液−1を上記同様、LC分析を行ない、各成分の存在量を確認したところ、糖濃度の変化はなく、ヒドロキシメチルフルフラールの除去率が2.1%、ベンゾキノンの除去率が97.0%であった。
溶媒抽出処理によって、発酵阻害成分であるベンゾキノンが大幅に除去された他、ヒドロキシメチルフルフラールも除去された。また、精製糖液−1は、薄黄色であった。結果を表1に示した。
使用したトルエンの量を20gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で溶媒抽出処理を行ない、精製糖液−2を得た。この精製糖液−2をLC分析したところ、濃度の変化はなく、ヒドロキシメチルフルフラールの除去率が4.2%、ベンゾキノンの除去率が98.5%だった。
溶媒抽出処理によって、発酵阻害成分であるベンゾキノンが大幅に除去された他、ヒドロキシメチルフルフラールも除去された。また、精製糖液−2は、薄黄色であった。結果を表1に示した。
抽出溶媒をジイソプロピルエーテル10gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で溶媒抽出処理を行ない、精製糖液−3を得た。この精製糖液−3をLC分析したところ、濃度の変化はなく、ヒドロキシメチルフルフラールの除去率が5.8%、ベンゾキノンの除去率が76.3%であった。
溶媒抽出処理によって、発酵阻害成分であるベンゾキノンが大幅に除去された他、ヒドロキシメチルフルフラールも除去された。また、精製糖液−3は、薄黄色であった。結果を表1に示した。
使用したジイソプロピルエーテルの量を20gに変更した以外は、実施例3と同様の方法で溶媒抽出処理を行ない、精製糖液−4を得た。この精製糖液−4をLC分析したところ、濃度の変化はなく、ヒドロキシメチルフルフラールの除去率が9.9%、ベンゾキノンの除去率が86.6%除去であった。
溶媒抽出処理によって、発酵阻害成分であるベンゾキノンが大幅に除去された他、ヒドロキシメチルフルフラールも除去された。また、精製糖液−4は、薄黄色であった。結果を表1に示した。
抽出溶媒をメチルイソブチルケトン10gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で溶媒抽出処理を行ない、精製糖液−5を得た。この精製糖液−5をLC分析したところ、濃度の変化はなく、ヒドロキシメチルフルフラールの除去率が61.1%、ベンゾキノンの除去率が90.5%であった。
溶媒抽出処理によって、発酵阻害成分であるベンゾキノンが大幅に除去された他、ヒドロキシメチルフルフラールも除去された。また、精製糖液−5は、薄黄色であった。結果を表1に示した。
使用したジイソプロピルエーテルの量を20gに変更した以外は、実施例5と同様の方法で溶媒抽出処理を行ない、精製糖液−6を得た。この精製糖液−6をLC分析したところ、濃度の変化はなく、ヒドロキシメチルフルフラールの除去率が75.5%、ベンゾキノンの除去率が95.1%であった。
溶媒抽出処理によって、発酵阻害成分であるベンゾキノンが大幅に除去された他、ヒドロキシメチルフルフラールも除去された。また、精製糖液−6は、薄黄色であった。結果を表1に示した。
抽出溶媒をオクタノール10gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で溶媒抽出処理を行ない、精製糖液−7を得た。この精製糖液−7をLC分析したところ、濃度の変化はなく、ヒドロキシメチルフルフラールの除去率が39.4%、ベンゾキノンの除去率が77.0%であった。
溶媒抽出処理によって、発酵阻害成分であるベンゾキノン、ヒドロキシメチルフルフラールが除去された。また、精製糖液−7は、薄黄色であった。結果を表1に示した。
200mL分液漏斗に、合成例2で調製した糖液−2を10g、トルエン10gを加えた後、25℃で5分混合した後静置した。水層を取り出し、精製糖液−8を得た。
精製糖液−8を上記同様、LC分析を行ったところ、糖濃度の変化はなく、フルフラールの除去率が83.6%であった。ギ酸は除去されなかった。
溶媒抽出処理によって、発酵阻害成分であるフルフラールが大幅に除去された。また、精製糖液−8は、薄黄色であった。結果を表2に示した。
使用したトルエンの量を20gに変更した以外は、実施例8と同様の方法で溶媒抽出処理を行ない、精製糖液−9を得た。この精製糖液−9をLC分析したところ、濃度の変化はなく、フルフラールの除去率が90.9%であった。ギ酸は除去されなかった。
溶媒抽出処理によって、発酵阻害成分であるフルフラールが大幅に除去された。また、精製糖液−9は、薄黄色であった。結果を表2に示した。
抽出溶媒をジイソプロピルエーテル10gに変更した以外は、実施例8と同様の方法で溶媒抽出処理を行ない、精製糖液−10を得た。この精製糖液−10をLC分析したところ、濃度の変化はなく、フルフラールの除去率が74.5%、ギ酸の除去率が15.9%であった。
溶媒抽出処理によって、発酵阻害成分であるフルフラールが大幅に除去された他、ギ酸も除去された。また、精製糖液−10は、薄黄色であった。結果を表2に示した。
使用したジイソプロピルエーテルの量を20gに変更した以外は、実施例10と同様の方法で溶媒抽出処理を行ない、精製糖液−11を得た。この精製糖液−11をLC分析したところ、濃度の変化はなく、フルフラールの除去率が85.3%、ギ酸の除去率が26.7%であった。
溶媒抽出処理によって、発酵阻害成分であるフルフラールが大幅に除去された他、ギ酸も除去された。また、精製糖液−11は、薄黄色であった。結果を表2に示した。
抽出溶媒をメチルイソブチルケトン10gに変更した以外は、実施例8と同様の方法で溶媒抽出処理を行ない、精製糖液−12を得た。この精製糖液−12をLC分析したところ、濃度の変化はなく、フルフラールの除去率が92.3%、ギ酸の除去率が31.1%であった。
溶媒抽出処理によって、発酵阻害成分であるフルフラールが大幅に除去された他、ギ酸も除去された。また、精製糖液−12は、薄黄色であった。結果を表2に示した。
使用したジイソプロピルエーテルの量を20gに変更した以外は、実施例12と同様の方法で溶媒抽出処理を行ない、精製糖液−13を得た。この精製糖液−13をLC分析したところ、濃度の変化はなく、フルフラールの除去率が95.7%、ギ酸の除去率が47.7%であった。
溶媒抽出処理によって、発酵阻害成分であるフルフラールが大幅に除去された他、ギ酸も除去された。また、精製糖液−13は、薄黄色であった。結果を表2に示した。
抽出溶媒をオクタノール10gに変更した以外は、実施例8と同様の方法で溶媒抽出処理を行ない、精製糖液−14を得た。この精製糖液−14をLC分析したところ、濃度の変化はなく、フルフラールの除去率が74.0%、ギ酸の除去率が24.1%であった。溶媒抽出処理によって、発酵阻害成分であるフルフラールが大幅に除去された他、ギ酸も除去された。また、精製糖液−14は、薄黄色であった。結果を表2に示した。
特願2013−161477明細書、実施例に記載の方法により、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株より、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/XylAB/PC−4/ΔLDH株を作製した。なお、以下にその概要を説明するが、上記出願明細書の内容は、参照により本願に組み込まれるものとする。
<ラクテートデヒドロゲナーゼ破壊株の作製>
(A)ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株ゲノムDNAの抽出
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株を、2質量%グルコースを含む以下の組成の培地[尿素:4g、硫酸アンモニウム:14g、リン酸1カリウム:0.5g、リン酸2カリウム0.5g、硫酸マグネシウム・7水和物:0.5g、硫酸第一鉄・7水和物:20mg、硫酸マンガン・5水和物:20mg、D−ビオチン:200μg、塩酸チアミン:200μg、酵母エキス:1g、カザミノ酸:1g、蒸留水1,000mlに溶解](以下、培地(A)という)10mlで対数増殖期後期まで培養し、集菌した。得られた菌体を10mg/mlの濃度のリゾチームを含む緩衝液[20mM Tris−HCl pH8.0、10mM NaCl、1mM EDTA・2Na]0.15mlに懸濁した。次に、上記懸濁液にプロテナーゼKを、最終濃度が100μg/mlになるように添加し、37℃で1時間保温した。さらにドデシル硫酸ナトリウムを最終濃度が0.5質量%になるように添加し、50℃で6時間保温して溶菌した。この溶菌液に、等量のフェノール/クロロホルム溶液を添加し、室温で10分間ゆるやかに振盪した後、全量を遠心分離(5,000×g、20分間、10〜12℃)し、上清画分を分取した。酢酸ナトリウムを0.3Mとなるように添加した後、2倍量のエタノールを加え混合し、遠心分離(15,000×g、2分間)により回収した沈殿物を70%エタノールで洗浄した後、風乾した。得られたDNAにTE緩衝液[10mM Tris−HCl pH7.5、1mM EDTA・2Na]5mlを加え、4℃で一晩静置し、以後のPCRの鋳型DNAに使用した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株のldh遺伝子の取得は、上記(A)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されているコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株の該遺伝子周辺の配列(GenBank Accession No.BA000036)を基に設計した合成DNA(配列番号1及び配列番号2)を用いたPCRによって行った。
反応液組成は、鋳型DNA 1μl、Taq DNAポリメラーゼ(タカラバイオ) 0.2μl、1倍濃度添付バッファー、0.2μM 各々プライマー、0.25μM dNTPsを混合し、全量を20μlとした。反応温度条件は、DNAサーマルサイクラーPTC−200(MJ Research)を用い、94℃で20秒、55℃で20秒、72℃で1分からなるサイクルを30回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.75%アガロースゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約0.95kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて行った。回収したDNA断片をPCR産物クローニングベクターpGEM−TEasy(Promega)と混合し、DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ)を用いて連結し、得られたプラスミドDNAで大腸菌DH5α株を形質転換した。このようにして得られた組換え大腸菌を50μg/mlアンピシリン及び50μg/ml X−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上で白色のコロニーを形成したクローンをTB培地[Terrific Broth 47g/L、Glycerol 5g/L](50μg/mlアンピシリンを含む)により液体培養した後、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。こうして得られたプラスミドDNAを制限酵素SacI及びSphIにより切断した結果、約1.0kbの挿入断片が確認され、これをpGEMT/CgLDHと命名した。
上記(B)で作製したpGEMT/CgLDHを制限酵素EcoRVおよびXbaIで切断することにより約0.25kbからなるLDHのコーディング領域の内部配列を切り出した。残った約3.7kbのDNA断片の末端をKlenow Fragment(タカラバイオ)にて平滑化し、DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ)を用いて環状化させ、大腸菌DH5α株を形質転換した。このようにして得られた組換え大腸菌を50μg/mlアンピシリンを含むLB寒天培地に塗抹した。得られたクローンをTB培地[Terrific Broth 47g/L、Glycerol 5g/L](50μg/mlアンピシリンを含む)により液体培養した後、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。こうして得られたプラスミドDNAを制限酵素SacI及びSphIにより切断した結果、約0.75kbの挿入断片が確認され、これをpGEMT/ΔLDHと命名した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株の形質転換に用いるプラスミドDNAは、pKMB1/ΔLDHを用いて塩化カルシウム法(Journal of Molecular Biology, 1970, 53, 159) により形質転換した大腸菌JM110株から調製した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株は、常法(Wolf Hetal, J.Bacteriol., 1983, 156(3), p1165-70, Kurusu Yetal., Agric Biol Chem., 1990, 54(2), p443-7)に従って内在性プラスミドを除去(キュアリング)し、以後の形質転換に用いた。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株の形質転換は、電気パルス法(Res. Microbiol.,1993,144,p181-5)によって行い、得られた形質転換体を50μg/mlカナマイシンを含むLBG寒天培地[トリプトン 10g、イーストエキストラクト 5g 、NaCl 5g、グルコース 20g、及び寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗抹した。
この培地上に生育した株は、pKMB1/ΔLDHがブレビバクテリウム・フラバムMJ233株菌体内で複製不可能なプラスミドであるため、該プラスミドのldh遺伝子とブレビバクテリウム・フラバムMJ233株ゲノム上の同遺伝子との間で相同組み換えを起こした結果、同ゲノム上に該プラスミドに由来するカナマイシン耐性遺伝子およびSacB遺伝子が挿入されているはずである。
この様にして得られた株の中には、そのldh遺伝子がpKMB1/ΔLDHに由来する変異型に置き換わったものと野生型に戻ったものが含まれる。ldh遺伝子が変異型であるか野生型であるかの確認は、LBG培地にて培養して得られた菌体を直接PCR反応に供し、ldh遺伝子の検出を行うことによって容易に確認できる。ldh遺伝子をPCR増幅するためのプライマー(配列番号3及び配列番号4)を用いて分析すると、野生型では720bp、欠失領域を持つ変異型では471bpのDNA断片を認めるはずである。上記方法にてショ糖非感受性となった菌株を分析した結果、変異型遺伝子のみを有する株を選抜し、該株をブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDHと命名した。
上記(D)で作製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株を、2質量%グルコースを含むA培地に植菌し、30℃で15時間好気的に振とう培養した。得られた培養液を遠心分離(3,000×g、4℃、20分間)して菌体を回収後、50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3)で洗浄した。
次いで、洗浄菌体0.5g(湿重量)を上記リン酸ナトリウム緩衝液2mlに懸濁し、氷冷下で超音波破砕器(ブランソン) にかけ菌体破砕物を得た。該破砕物を遠心分離(10,000×g,4℃,30分間)し、上清を粗酵素液として得た。対照として、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株の粗酵素液を同様に調製し、以下の活性測定に供した。
(F)コリネ型細菌用プロモーター断片の調製
コリネ型細菌で強力なプロモーター活性を有するDNA断片であるTZ4プロモーター(特開平7−95891の配列番号4に記載のDNA断片)の取得は、上記(A)で調製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233株のゲノムDNAを鋳型とし、特開平7−95891の配列番号4に記載の配列を基に設計した合成DNA(配列番号5及び配列番号6)を用いたPCRによって行った。
反応液組成は、鋳型DNA 1μl、Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen) 0.2μl、1倍濃度添付バッファー、0.3μM 各々プライマー、1mM MgSO4、0.25μM dNTPsを混合し、全量を20μlとした。反応温度条件は、DNAサーマルサイクラーPTC−200(MJ Research)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、72℃で30秒からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は2分とした。
増幅産物の確認は、2.0質量%アガロースゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約250bpの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて行った。回収したDNA断片は、T4 Polynucleotide Kinase(タカラバイオ)により5’末端をリン酸化した後、DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ)を用いて大腸菌ベクターpUC19(タカラバイオ)のSmaI部位に結合し、得られたプラスミドDNAで大腸菌DH5α株を形質転換した。このようにして得られた組換え大腸菌を50μg/mlアンピシリン及び50μg/ml X−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成した6クローンについて、TB培地[Terrific Broth 47g/L、Glycerol 5g/L](50μg/mlアンピシリンを含む)により液体培養した後、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを精製し、塩基配列を決定した。この中でTZ4プロモーターがpUC19のlacプロモーターと逆方向に転写活性を有するように挿入されたクローンを選抜し、これをpUC/TZ4と命名した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、TB培地[Terrific Broth 47g/L、Glycerol 5g/L](50μg/mlアンピシリンを含む)により液体培養した後、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAの中から制限酵素NotIによって切断されるものを選抜し、これをpUC/TZ4−SDと命名した。
この様にして構築したpUC/TZ4−SDを制限酵素PstIで切断後、Klenow Fragment(タカラバイオ)にて末端を平滑化し、次いで制限酵素KpnIで切断することにより生じた約300bpのプロモーター断片を、2.0質量%アガロースゲル電気泳動により分離し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて回収した。
コリネ型細菌にて安定的に自立複製可能なプラスミドとして、pHSG298par−rep(特開平12−93183)を利用した。本プラスミドは、ブレビバクテリウム・スタチオニスIFO12144株が保有する天然型プラスミドpBY503の複製領域及び安定化機能を有する領域と大腸菌ベクターpHSG298(タカラバイオ)に由来するカナマイシン耐性遺伝子および大腸菌の複製領域を備える。pHSG298par−repを制限酵素SseIで切断後、Klenow Fragment(タカラバイオ)にて末端を平滑化し、次いで制限酵素KpnIで切断することによって調製したDNAを、上記(F)で調製したTZ4プロモーター断片と混合し、DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌DH5α株を形質転換した。このようにして得られた組換え大腸菌を50μg/mlカナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で生育した株をTB培地[Terrific Broth 47g/L、Glycerol 5g/L](50μg/mlカナマイシンを含む)により液体培養した後、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAの中から制限酵素NotIによって切断されるものを選抜し、該プラスミドをpTZ4と命名した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株のpc遺伝子の取得は、上記実施例4の(A)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されているコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株の該遺伝子周辺の配列(GenBank Accession No.BA000036)を基に設計した合成DNA(配列番号9及び配列番号10)を用いたPCRによって行った。
反応液組成は、鋳型DNA 1μl、Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen) 0.2μl、1倍濃度添付バッファー、0.3μM 各々プライマー、1mM MgSO4、0.25μM dNTPsを混合し、全量を20μlとした。反応温度条件は、DNAサーマルサイクラーPTC−200(MJ Research)を用い、94℃で20秒、68℃で4分からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの68℃での保温は10分とした。
PCR反応終了後、Ex Taq DNAポリメラーゼ(タカラバイオ)を0.1μl加え、72℃で30分保温した。増幅産物の確認は、0.75%アガロースゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約3.7kbの断片を検出した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンをTB培地[Terrific Broth 47g/L、Glycerol 5g/L](50μg/mlアンピシリンを含む)により液体培養した後、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。こうして得られたプラスミドDNAを制限酵素PacI及びApaIにより切断した結果、約3.7kbの挿入断片が確認され、これをpGEM/MJPCと命名した。
pGEM/MJPCの挿入断片の塩基配列はBigDye Terminator v3 Cycle Sequencing Kit及び塩基配列解読装置377XL(Applied Biosystems)を用いて決定した。その結果得られた塩基配列から推測されるアミノ酸配列はコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株由来のPCと極めて高い相同性(99.4%)を示したことから、pGEM/MJPCの挿入断片がブレビバクテリウム・フラバムMJ233株由来のpc遺伝子であると断定した。
上記で作製したpGEM/MJPCを制限酵素PacI及びApaIで切断することにより生じる約3.7kbからなるpc遺伝子断片を、0.75%アガロースゲル電気泳動により分離、回収した。このDNA断片を、同制限酵素にて切断したpTZ4と混合し、DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ)を用いて連結し、得られたプラスミドDNAで大腸菌DH5α株を形質転換した。このようにして得られた組換え大腸菌を50μg/mlカナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。
得られたクローンをTB培地[Terrific Broth 47g/L、Glycerol 5g/L](50μg/mlカナマイシンを含む)により液体培養した後、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。こうして得られたプラスミドDNAを制限酵素PacI及びApaIにより切断した結果、約3.7kbの挿入断片が確認され、これをpMJPC1と命名した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株由来pc遺伝子のN末端領域のDNA断片の取得は、上記(A)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されているコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株の該遺伝子周辺の配列(GenBank Accession No.BA000036)を基に設計した合成DNA(配列番号11及び配列番号12)を用いたPCRによって行った。なお配列番号12のDNAは5’末端がリン酸化されたものを用いた。
反応液組成は、鋳型DNA 1μl、Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen) 0.2μl、1倍濃度添付バッファー、0.3μM 各々プライマー、1mM MgSO4、0.25μM dNTPsを混合し、全量を20μlとした。反応温度条件は、DNAサーマルサイクラーPTC−200(MJ Research)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、72℃で1分からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は4分とした。
増幅産物の確認は、0.75質量%アガロースゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約0.9kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて行い、これをpc遺伝子N末端断片とした。
反応液組成は、鋳型DNA 1μl、Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen) 0.2μl、1倍濃度添付バッファー、0.3μM 各々プライマー、1mM MgSO4、0.25μM dNTPsを混合し、全量を20μlとした。反応温度条件は、DNAサーマルサイクラーPTC−200(MJ Research)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、72℃で30秒からなるサイクルを25回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は3分とした。
増幅産物の確認は、1.0質量%アガロースゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約0.5kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて行い、これをTZ4プロモーター断片とした。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンをTB培地[Terrific Broth 47g/L、Glycerol 5g/L](50μg/mlカナマイシンを含む)により液体培養した後、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。こうして得られたプラスミドDNAを制限酵素PstIにより切断した結果、約1.0kbの挿入断片が確認され、これをpMJPC17.1と命名した。
反応液組成は、鋳型DNA 1μl、Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen) 0.2μl、1倍濃度添付バッファー、0.3μM 各々プライマー、1mM MgSO4、0.25μM dNTPsを混合し、全量を20μlとした。反応温度条件は、DNAサーマルサイクラーPTC−200(MJ Research)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、72℃で30秒からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、1.0質量%アガロースゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約0.7kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて行った。回収したDNA断片は、T4 Polynucleotide Kinase(タカラバイオ)により5’末端をリン酸化した後、DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ)を用いて大腸菌ベクターpUC119(タカラバイオ)のSmaI部位に結合し、得られたプラスミドDNAで大腸菌DH5α株を形質転換した。このようにして得られた組換え大腸菌を50μg/mlアンピシリン及び50μg/ml X−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンをTB培地[Terrific Broth 47g/L、Glycerol 5g/L](50μg/mlアンピシリンを含む)により液体培養した後、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。得られたプラスミドDNAを配列番号16及び配列番号17のプライマーを用いたPCR反応に供した。このようにして挿入DNA断片の有無を確認した結果、約0.7kbの増幅産物を認めるプラスミドを選抜し、これをpMJPC5.1と命名した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンをTB培地(50μg/mlカナマイシンを含む)により液体培養した後、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。こうして得られたプラスミドDNAを制限酵素SacI及びSphIにより切断した結果、約1.7kbの挿入断片が確認され、これをpMJPC17.3と命名した。
上記の(D)で作製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株の形質転換に用いるプラスミドDNAは、pMJPC17.3を用いて塩化カルシウム法(Journal of Molecular Biology,1970,53,159)により形質転換した大腸菌JM110株から再調製した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株の形質転換は電気パルス法(Res. Microbiol.,1993,144,p181−5)によって行い、得られた形質転換体を25μg/mlカナマイシンを含むLBG寒天培地[トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5g、グルコース 20g、及び寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗抹した。
この培地上に生育した株は、pMJPC17.3がブレビバクテリウム・フラバムMJ233株菌体内で複製不可能なプラスミドであるため、該プラスミドのpc遺伝子とブレビバクテリウム・フラバムMJ233株ゲノム上の同遺伝子との間で相同組換えを起こした結果、ゲノム上に該プラスミドに由来するカナマイシン耐性遺伝子およびsacB遺伝子が挿入されているはずである。
この様にして得られた株の中には、そのpc遺伝子の上流にpMJPC17.3に由来するTZ4プロモーターが挿入されたものと野生型に戻ったものが含まれる。pc遺伝子がプロモーター置換型であるか野生型であるかの確認は、LBG培地にて培養して得られた菌体を直接PCR反応に供し、pc遺伝子の検出を行うことによって容易に確認できる。TZ4プロモーター及びpc遺伝子をPCR増幅するためのプライマー(配列番号18および配列番号19)を用いて分析すると、プロモーター置換型では678bpのDNA断片を認めるはずである。上記方法にてショ糖非感受性となった菌株を分析した結果、TZ4プロモーターが挿入された株を選抜し、該株をブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDHと命名した。
上記(K)で作製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDH株を、2質量%グルコースを含むA培地に植菌し、30℃で15時間好気的に振とう培養した。得られた培養液を遠心分離(3,000×g、4℃、20分間)して菌体を回収後、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)で洗浄した。
次いで、洗浄菌体0.5g(湿重量)を上記リン酸カリウム緩衝液2mlに懸濁し、氷冷下で超音波破砕器(ブランソン) にかけ菌体破砕物を得た。該破砕物を超遠心(100,000×g,4℃,90分間)し、上清を粗酵素液として得た。対照として、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株の粗酵素液を同様に調製し、以下の活性測定に供した。
(M)大腸菌ゲノムDNAの抽出
大腸菌(Escherichia coli)JM109株をTB培地[Terrific Broth 47g/L、Glycerol 5g/L]10mLで対数増殖期後期まで培養し、集菌した。得られた菌体を10mg/mLの濃度のリゾチームを含む緩衝液[20mM Tris−HCl pH8.0、10mM NaCl、1mM EDTA・2Na]0.15mLに懸濁した。次に、上記懸濁液にプロテナーゼKを、最終濃度が100μg/mLになるように添加し、37℃で1時間保温した。さらにドデシル硫酸ナトリウムを最終濃度が0.5%になるように添加し、50℃で6時間保温して溶菌した。
この溶菌液に、等量のフェノール/クロロホルム溶液を添加し、室温で10分間ゆるやかに振盪した後、全量を遠心分離(5,000×g、20分間、10〜12℃)し、上清画分を分取した。酢酸ナトリウムを0.3Mとなるように添加した後、2倍量のエタノールを加え混合し、遠心分離(15,000×g、2分間)により回収した沈殿物を70%エタノールで洗浄した後、風乾した。得られたDNAにTE緩衝液[10mM Tris−HCl pH7.5、1mM EDTA・2Na]5mLを加え、4℃で一晩静置し、以後のPCRの鋳型DNAに使用した。
大腸菌JM109株のxylABオペロンの取得は、上記(M)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されている大腸菌K12−MG1655株の該オペロン周辺の配列(GenBank Accession No.U00096)を基に設計した合成DNA(配列番号20および配列番号21)を用いたPCRによって行った。水性媒体組成は、鋳型DNA 1μL、Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)0.5μL、1倍濃度添付バッファー、0.4μM 各々プライマー、1mM MgSO4、0.25μM dNTPsを混合し、全量を50μLとした。反応温度条件は、DNAサーマルサイクラーPTC−200(MJ Research)を用い、94℃で15秒、55℃で30秒、68℃で3分からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は2分、最終サイクルの68℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.9%アガロースゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約3.0kbの断片を検出した。得られたxylABオペロンのDNA断片はChargeSwitch PCR Clean−Up Kit(Invitrogen)を用いて精製後、制限酵素BamHIおよびApaIで切断した。これによって生じた約2.9kbのDNA断片は0.9%アガロースゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することで検出し、Zymoclean Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research)を用いてゲルから回収した。このDNA断片を、pTZ4を制限酵素BamHIおよびApaIで切断して調製したDNAと混合し、DNA Ligation Kit ver.2(カラバイオ)を用いて連結した。得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換し、50μg/mLカナマシンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上で生育したクローンをTB培地[Terrific Broth 47g/L、Glycerol 5g/L](50μg/mLカナマイシンを含む)により液体培養した後、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。こうして得られたプラスミドDNAを制限酵素BamHIおよびApaIにより切断した結果、約2.9kbの挿入断片が確認され、これをpXylAB1と命名した。
大腸菌由来XylABオペロンをブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDH株の染色体上ldh遺伝子欠損部位に導入するため、ldh遺伝子のクローニングを行った。ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株のldh遺伝子の取得は、上記(A)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されているコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株の該遺伝子周辺の配列(GenBank Accession No.BA000036)を基に設計した合成DNA(配列番号22および配列番号23)を用いたPCRによって行った。
水性媒体組成は、鋳型DNA 1μL、PrimeSTAR Max DNAポリメラーゼ(Invitrogen)0.5μL、1倍濃度添付バッファー、0.4μM 各々プライマーを混合し、全量を50μLとした。反応温度条件は、DNAサーマルサイクラーPTC−200(MJ Research)を用い、94℃で15秒、55℃で20秒、72℃で45秒からなるサイクルを30回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は2分とした。
Kitおよび塩基配列解読装置377XL(Applied Biosystems)を用いて決定した。その結果得られた塩基配列(XylABオペロン)は、大腸菌K12−MG1655株のゲノム配列と完全に一致し、XylABオペロンに変異が入っていないことを確認し、これをpXylAB3と命名した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDH株の形質転換に用いるプラスミドDNAは、pXylAB3を用いて塩化カルシウム法(Journal of Molecular Biology,1970,53,159)により形質転換した大腸菌JM110株から再調製した。
この様にして得られた株の中には、そのldh遺伝子欠損部位にpXylAB3に由来するTZ4プロモーターと連結されたXylABオペロンが挿入されたものと親株と同じ配列に戻ったものが含まれる。TZ4プロモーターと連結されたXylABオペロンが挿入されたか否かの確認は、LBG培地にて培養して得られた菌体を直接PCR反応に供し、TZ4プロモーターと連結されたXylABオペロンの検出を行うことによって容易に確認できる。TZ4プロモーターおよびXylABオペロンをPCR増幅するためのプライマー(配列番号26および配列番号27)を用いて分析すると、TZ4プロモーターと連結されたXylABオペロンが挿入されたクローンでは4,196bpのDNA断片を認めるはずである。上記方法にてショ糖非感受性となった菌株を分析した結果、TZ4プロモーターと連結されたXylABオペロンが挿入された株を選抜し、該株をブレビバクテリウム・フラバムMJ233/XylAB/PC−4/ΔLDHと命名した。
上記(P)で作製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233/XylAB/PC−4/ΔLDH株を20g/Lキシロースを含むMM寒天培地[尿素2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO40.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、FeSO4・7H2O6mg、MnSO4・4−5H2O6mg、ビオチン 200μg、チアミン 200μg、寒天 15g、蒸留水1Lに溶解]に植菌し、30℃で3日間静置培養した。対照として、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDH株も同様に培養した。その結果、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/XylAB/PC−4/ΔLDH株はキシロースを単一炭素源とした培地において生育できることが確認された。一方、親株であるブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDH株は生育することはできなかった。
<精製糖液の発酵生産評価>
(A)種培養
A培地[尿素:4g、硫酸アンモニウム:14g、リン酸1カリウム:0.5g、リン酸2カリウム0.5g、硫酸マグネシウム・7水和物:0.5g、硫酸第一鉄・7水和物:20mg、硫酸マンガン・5水和物:20mg、D−ビオチン:200μg、塩酸チアミン:200μg、酵母エキス:1g、カザミノ酸:1g、蒸留水1,000mLに溶解]1,000mLを、121℃、20分間で加熱滅菌し、室温まで冷やした後、200mLの三角フラスコに15mL入れ、あらかじめ滅菌した50%グルコース水溶液を600μl添加した。合成例3の(D)で作製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233/XylAB/PC−4/ΔLDH株を接種して30℃で5.1時間振とう培養した。
500mLの三角フラスコに100mLのA培地を入れ、あらかじめ滅菌した50%グルコース水溶液を4mL添加した後、上記(A)の種培養で得られた培養液を、O.D.(660nm)が0.05となるように接種し、30℃で、19.4時間振とう培養した。
上記(B)の本培養で得られた培養液を5,000×g、7分の遠心分離により集菌し、菌体懸濁液[硫酸マグネシウム・7水和物:1g、硫酸第一鉄・7水和物:40mg、硫酸マンガン・5水和物:40mg、D−ビオチン:400μg、塩酸チアミン:400μg、リン酸一アンモニウム:0.8g、リン酸二アンモニウム:0.8g、塩化カリウム:1g、蒸留水1000mLに溶解]にO.D.(660nm)が20になるように懸濁した。続いて、実施例1で作製した精製糖液−1を1.4mL、炭酸水素アンモニウムを0.2g、および蒸留水1.6mLを混合して、基質溶液を調製した。5mL反応器に前記菌体懸濁液0.5mLと、基質溶液0.5mLを混合し、嫌気条件下において40℃で反応させた。その結果、6時間後のコハク酸蓄積濃度は11.8g/L、グルコース濃度は2.3g/L、キシロース濃度は2.2g/Lであった。
コハク酸生産反応において、実施例3で作製した精製糖液−3を1.5mL、炭酸水素アンモニウムを0.2g、および蒸留水1.5mLを混合して、基質溶液を調製したこと以外は、実施例15と同様に行った。その結果、6時間後のコハク酸蓄積濃度は8.6g/L、グルコース濃度は7.1g/L、キシロース濃度は2.0g/Lであった。
コハク酸生産反応において、実施例5で作製した精製糖液−5を1.5mL、炭酸水素アンモニウムを0.2g、および蒸留水1.5mLを混合して、基質溶液を調製したこと以外は、実施例15と同様に行った。その結果、6時間後のコハク酸蓄積濃度は11.4g/L、グルコース濃度は2.2g/L、キシロース濃度は2.0g/Lであった。
コハク酸生産反応において、合成例1で作製した糖液−1を1.5mL、炭酸水素アンモニウムを0.2g、および蒸留水1.5mLを混合して、基質溶液を調製したこと以外は、実施例15と同様に行った。その結果、6時間後のコハク酸蓄積濃度は7.3g/L、グルコース濃度は7.9g/L、キシロース濃度は2.1g/Lであった。
また実施例3の精製糖液−3を使用した実施例16では、比較例1に対してコハク酸濃度が17%向上した。
実施例5の精製糖液−5を使用した実施例17では、比較例1に対してコハク酸濃度が55%向上した。
本発明の溶媒抽出処理を実施してベンゾキノン等が大幅に除去された糖液を使用することで、コハク酸生産速度が向上することが明らかとなった。
フルフラール等のアルデヒド化合物や、ベンゾキノン等の共役ケトンのような強い発酵阻害を呈する物質の除去には、非常に有効である。
そして本発明の精製糖液、特に共役ケトンが除去された精製糖液を有機化合物の生産に用いることで、効率のよい有機化合物の生産が可能であることが示された。好ましくはカルボン酸やアルコール、より好ましくはコハク酸の生産において有効である。
また本発明の精製糖液は、発酵生産による有機化合物の製造における微生物の生産効率を向上させ、また化学変換プロセスに利用した際に生成物である有機化合物の着色を抑制することができる。
また、本発明の有機化合物の製造方法は、比較的簡単な処理により、高い生産効率で所望の有機化合物を製造することができる。
また、本発明の培養方法であれば、発酵生産プロセスにおける発酵阻害物質量を減少させることができるため、微生物の増殖量と増殖速度を向上させ、もって発酵生産性を向上させることができる。
Claims (12)
- 溶媒抽出法による糖類を含む液(糖液)の精製方法であって、前記溶媒抽出を水/オクタノール分配係数が1.0以上の溶媒を用いて行なうことを特徴とする、糖液の精製方法。
- 前記溶媒が、炭素数6以上12以下の芳香族炭化水素化合物、炭素数4以上12以下の脂肪族エーテル、および炭素数5以上12以下の脂肪族ケトンから選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の糖液の精製方法。
- 前記溶媒の水/オクタノール分配係数が4.0以下である、請求項1または2に記載の糖液の精製方法。
- 前記糖類が、炭素数3以上7以下の単糖を構成成分として含む糖を1つ以上含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の糖液の精製方法。
- 前記糖液が、非可食原料由来の糖類を構成成分として含む糖液である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の糖液の精製方法。
- 前記糖液中の糖濃度が、5質量%以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の糖液の精製方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の精製方法により得られることを特徴とする精製糖液。
- 水性媒体中で、請求項7に記載の精製糖液を含有する有機原料に有用物質生産能力を有する微生物を作用させて有機化合物を得る工程(以下「有機物生産工程」という。)を有することを特徴とする有機化合物の製造方法。
- 前記有機化合物がアルコール類、アミン類、カルボン酸類、およびフェノール類から選ばれる少なくとも1つである、請求項8に記載の有機化合物の製造方法。
- 前記アルコール類が、炭素数2〜10の脂肪族アルコールである、請求項9に記載の有機化合物の製造方法。
- 前記カルボン酸類が、炭素数2〜10の脂肪族カルボン酸である、請求項9または10に記載の有機化合物の製造方法。
- 有用物質生産能力を有する微生物の培養方法であって、請求項11に記載の精製糖液を炭素源として用いることを特徴とする微生物の培養方法。
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