JP2015081912A - 不純物元素イオンの定量分析方法 - Google Patents

不純物元素イオンの定量分析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高濃度差溶液に含まれる不純物元素イオンを、誘導結合プラズマ質量分析装置を汚染することなく高精度に定量分析する方法を提供する。
【解決手段】分析対象外の主成分金属元素イオンと分析対象となる不純物元素イオンとを含み、前記主成分金属元素イオンの濃度が前記不純物元素イオンの濃度に対して質量比で10000倍以上である高濃度差溶液を準備する準備工程と、前記主成分金属元素イオンを前記高濃度差溶液から実質的に除去する主成分除去工程と、前記主成分除去工程を経た測定溶液を誘導結合プラズマ質量分析装置により分析することで前記不純物元素イオンの濃度を定量する分析工程とを備える不純物元素イオンの定量分析方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属元素イオンを主成分とする高濃度差溶液に含まれる不純物元素イオンの定量分析方法に関する。
高精度な多元素分析の技術として、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)および誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)などの方法が知られている。例えば、特許文献1では、レドックスフロー電池の電解液に活物質として含まれるバナジウム(V)イオンの濃度を定量するために、ICP−AESを用いることが示されている。
特開2003−157883号公報
電解液、めっき液、および洗浄液などのように、主成分として金属元素イオンを含む溶液に不純物として含まれる微量の元素イオン(以下、不純物元素イオンという)を制御することが望まれる。このような溶液に含まれる不純物元素イオンは、たとえ微量であっても、製造工程における歩留まり、製品の信頼性や運転などに悪影響を及ぼす場合があるからである。
上記の溶液に含まれる不純物元素イオンは、例えば、ICP−MSやICP−AESで定量することができる。この際、一般的には原液を希釈した希釈液を用いる。原液に含まれるすべてのイオンの合計濃度(以下、総イオン濃度という)が高すぎると、装置の汚染が生じる場合があるからである。特に、主成分として高濃度の金属元素イオンを含む溶液では、この金属元素イオン(以下、主成分金属元素イオンという)の濃度が不純物元素イオンの濃度よりも相対的に高いので、主成分金属元素イオンが装置に付着したり、残留したりして装置を汚染するおそれがある。しかし、希釈の度合が大きすぎると、希釈液に含まれる不純物元素イオンの濃度が装置の定量下限以下となってしまったり、希釈による誤差が生じやすくなったりすることで、高精度な定量分析が行えない場合がある。特に、主成分金属元素イオンと不純物元素イオンとの間に質量比で10000倍以上の濃度差がある溶液(以下、高濃度差溶液という)では、上記の希釈による問題が生じやすい。
さらに、アンチモン(Sb)イオン、ビスマス(Bi)イオン、およびヒ素(As)イオン等は、ICP−AESでは高精度な定量分析が困難であり、ICP−MSによらなければ高精度に定量分析することが難しい。しかし、上記の希釈による問題により、不純物元素イオンとして上記の各元素のイオン等が微量に含まれる高濃度差溶液を定量分析する場合には、ICP−MSであっても上記の各元素のイオン等を高精度に定量分析することが難しい場合がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、ICP−MS装置の汚染を防ぎつつ、微量の不純物元素イオンを高精度に定量分析することができる定量分析方法を提供することにある。
本発明の不純物元素イオンの定量分析方法は、分析対象外の主成分金属元素イオンと分析対象となる不純物元素イオンとを含み、前記主成分金属元素イオンの濃度が前記不純物元素イオンの濃度に対して質量比で10000倍以上である高濃度差溶液を準備する準備工程と、前記主成分金属元素イオンを前記高濃度差溶液から実質的に除去する主成分除去工程と、前記主成分除去工程を経た測定溶液を誘導結合プラズマ質量分析装置により分析することで前記不純物元素イオンの濃度を定量する分析工程とを備える。
本発明によれば、主成分金属元素イオンによるICP−MS装置の汚染を防ぎつつ、微量の不純物元素イオンを高精度に定量分析することができる。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)実施形態の不純物元素イオンの定量分析方法は、準備工程と、主成分除去工程と、分析工程とを備える。準備工程では、分析対象外の主成分金属元素イオンと分析対象となる不純物元素イオンとを含み、前記主成分金属元素イオンの濃度が前記不純物元素イオンの濃度に対して質量比で10000倍以上である高濃度差溶液を準備する。主成分除去工程では、前記主成分金属元素イオンを前記高濃度差溶液から実質的に除去する。分析工程では、前記主成分除去工程を経た測定溶液をICP−MS装置により分析することで不純物元素イオンの濃度を定量分析する。
主成分除去工程を経ることで、主成分金属元素イオンが実質的に除去された液を得ることができる。そして、分析対象をこの主成分金属元素イオンが実質的に除去された液を用いた測定溶液とすることで、主成分金属元素イオンによるICP−MS装置の汚染を防ぐことができる。また、測定溶液を用いれば、ICP−MS装置の汚染を防ぐための大幅な希釈を行う必要がない。これにより、微量の不純物元素イオンを高精度に定量分析することができる。
(2)実施形態の不純物元素イオンの定量分析方法として、前記不純物元素イオンがSbイオンを含み、前記主成分除去工程までの間の液に添加剤を添加する添加工程を備え、前記添加剤により、前記Sbイオンを錯体化する形態が挙げられる。
添加工程を行うことで、前記主成分除去工程までの間の液に含まれるSbイオンを添加剤によりいわば錯体化することができる。これにより、Sbイオンが主成分除去工程や後述する他の工程により除去されることを防止でき、ひいては、高濃度差溶液に含まれる微量のSbイオンを高精度に定量分析することができる。
(3)上記(2)の実施形態において、前記添加剤が酒石酸である形態が挙げられる。
添加剤に酒石酸を用いることで実質的に全てのSbイオンを錯体化でき、Sbイオンをより高精度に定量分析することができる。
(4)実施形態の不純物元素イオンの定量分析方法として、前記不純物元素イオンがAsイオンを含む形態が挙げられる。
本実施形態によれば、ICP−MS装置の汚染を防ぎつつ、Asイオンを高精度かつ容易に定量分析することができる。
(5)実施形態の不純物元素イオンの定量分析方法として、前記主成分除去工程において、前記主成分金属元素イオンを、前記高濃度差溶液を陽イオン交換樹脂に接触させて除去する形態が挙げられる。
主成分金属元素イオンは一般に陽イオンである。よって、陽イオン交換樹脂を用いることで主成分金属元素イオンを容易に実質的に除去することができる。これにより、主成分金属元素イオンによるICP−MS装置の汚染を防ぎつつ、不純物元素イオンを高精度かつ容易に定量分析することができる。
(6)実施形態の不純物元素イオンの定量分析方法として、準備工程から前記分析工程の間の液が硫酸イオンを含み、前記硫酸イオンを含む液をバリウムイオン型陽イオン交換樹脂に接触させて前記硫酸イオンを実質的に除去する硫酸イオン除去工程を備える形態が挙げられる。
本実施形態によれば、準備工程から前記分析工程の間の液が硫酸イオンを高濃度に(例えば、質量比で不純物元素イオンの10000倍以上)含む場合であっても、硫酸イオンを実質的に除去することができる。これにより、準備工程から前記分析工程の間の液に含まれる硫酸イオンを十分に低減でき、測定溶液の総イオン濃度を十分に低減できる。即ち、測定溶液が実質的に硫酸イオンを含まないようにでき、高濃度差溶液に高濃度の硫酸イオンが含まれる場合であっても、ICP−MS装置の汚染を防ぎつつ、不純物元素イオンを高精度に定量分析することができる。また、硫酸イオンを含む溶液は、粘性が高くなる傾向がある。主成分除去工程や後述するハロゲンイオン除去工程等の分析対象外のイオンを除去する工程(以下、他のイオン除去工程という)を行う場合に、溶液に硫酸イオンが含まれていると他のイオン除去工程の作業効率が悪い。よって、他のイオン除去工程に先立って硫酸イオン除去工程を行えば、硫酸イオンを除去できるので、これら他のイオン除去工程を効率的に行えて好ましい。また、主成分除去工程後の液が硫酸イオンを含むと、測定溶液の粘性も高くなり、ICP−MS装置への測定溶液の導入効率が下がるおそれがある。よって、硫酸イオン除去工程を行うことにより、不純物元素イオンを高精度かつ効率的に定量分析することができる。
(7)実施形態の不純物元素イオンの定量分析方法として、前記準備工程から前記分析工程の間の液がハロゲンイオンを含み、前記ハロゲンイオンを含む液を銀型陽イオン交換樹脂に接触させて前記ハロゲンイオンを実質的に除去するハロゲンイオン除去工程を備える形態が挙げられる。
本実施形態によれば、準備工程から前記分析工程の間の液がハロゲンイオンを高濃度(例えば、質量比で不純物元素イオンの10000倍以上)に含む場合であっても、ハロゲンイオンを実質的に除去することができる。以上より、ICP−MS装置の汚染を防ぎつつ、不純物元素イオンを高精度に定量分析することができる。
(8)実施形態の不純物元素イオンの定量分析方法として、前記高濃度差溶液が硫酸イオンとハロゲンイオンとを含み、前記高濃度差溶液をバリウムイオン型陽イオン交換樹脂に接触させて前記硫酸イオンを実質的に除去する硫酸イオン除去工程と、前記硫酸イオン除去工程を経た液を銀型陽イオン交換樹脂に接触させて前記ハロゲンイオンを実質的に除去するハロゲンイオン除去工程とを備え、前記硫酸イオン除去工程、前記ハロゲンイオン除去工程、および前記主成分除去工程を順に行う形態が挙げられる。
高濃度差溶液が硫酸イオンおよびハロゲンイオンを含む場合、各工程を上記の順に行うことで、主成分金属元素イオンだけでなく、硫酸イオンおよびハロゲンイオンを効率的かつ実質的に除去することができる。また、高濃度差溶液に水素イオンが含まれる場合に、主成分除去工程における主成分金属元素イオンの実質的な除去に影響を与えない程度に水素イオンの濃度を低減できる。高濃度差溶液に多量の水素イオンが含まれると、主成分除去工程における主成分金属元素イオンの除去効率が下がることがある。ここで、高濃度差溶液に含まれるハロゲンイオンは、高濃度差溶液にフッ化水素酸(HF)や塩酸(HCl)などの酸を溶解させることで含まれている場合が多い。このような場合、上述のように主成分除去工程の前にハロゲンイオン除去工程を行うことで、高濃度差溶液をはじめとする主成分除去工程に供する液に含まれるハロゲンイオンを実質的に除去できると共に、主成分除去工程における主成分金属元素イオンの実質的な除去に影響を与えない程度に水素イオンの濃度を低減できる。同様のことが、硫酸イオン除去工程を行った場合にもいえる。よって、主成分除去工程の前にハロゲンイオン除去工程および硫酸イオン除去工程を行うことで、主成分除去工程における主成分金属元素イオンの除去効率を向上させることができる。また、バリウムイオン型陽イオン交換樹脂を用いて硫酸イオンの除去を行うと、ハロゲンイオンの一種である塩化物イオンが遊離し、硫酸イオン除去工程を経た液に高濃度の塩化物イオンが含まれる場合がある。よって、硫酸イオン除去工程の後にハロゲンイオン除去工程を行うことが好ましい。以上より、硫酸イオン除去工程、ハロゲンイオン除去工程、および主成分除去工程を順に行うことで、分析対象である不純物元素イオン以外のイオンの低減された液とすることができ、ICP−MS装置の汚染を防ぎつつ、不純物元素イオンを効率的かつ高精度に定量分析することができる。
(9)実施形態の不純物元素イオンの定量分析方法として、前記測定溶液の総イオン濃度が0.1g/L未満である形態が挙げられる。
測定溶液の総イオン濃度を0.1g/L未満とすることで、ICP−MS装置の汚染を防ぎつつ、不純物元素イオンを高精度に定量分析することができる。
(10)実施形態の不純物元素イオンの定量分析方法として、高濃度差溶液が電池用電解液、めっき液、および金属の溶解液のいずれかである形態が挙げられる。
上記の各液は、高濃度差溶液に該当する場合があり、微量に含まれる不純物元素イオンの高精度な定量分析が求められているものである。本実施形態によれば、これらの液が高濃度差溶液に該当する場合に、液に含まれる不純物元素イオンを、ICP−MS装置の汚染を防止しつつ、高精度に定量分析することができる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態の詳細を説明する。本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
実施形態に係る不純物元素イオンの定量分析方法は、準備工程と、主成分除去工程と、分析工程とを備える。本実施形態の不純物元素イオンの定量分析方法の最も特徴とするところは、主成分除去工程において、主成分金属元素イオンが高濃度差溶液から実質的に除去される一方で、分析対象である不純物元素イオンは実質的に除去されないことにある。以下、各工程につき詳細に説明する。
(準備工程)
準備工程では、分析対象外の主成分金属元素イオンと分析対象となる不純物元素イオンとを含み、主成分金属元素イオンの濃度が不純物元素イオンの濃度に対して質量比で10000倍以上である高濃度差溶液を準備する。本工程で準備される高濃度差溶液は、後述する主成分除去工程に示すように、所望する分析精度を達成できるように高濃度差溶液を希釈した希釈液も含む。以下、高濃度差溶液について説明する。
(高濃度差溶液)
高濃度差溶液は、分析対象外の主成分金属元素イオンの濃度が分析対象となる不純物元素イオンの濃度に対して質量比で10000倍以上である溶液である。高濃度差溶液の一例としては、電池用電解液、めっき液、および金属の溶解液等が挙げられる。電池用電解液としては、例えば、リチウムイオン電池やレドックスフロー電池等の電解液が挙げられる。また、めっき液としては、金メッキ液、クロムメッキ液等が挙げられる。金属の溶解液における金属としては、鉄、鋼、アルミニウム、銅および各種の合金等の溶解液が挙げられる。これら金属を溶解するための溶液には、各種酸などが利用できる。高濃度差溶液を構成する溶媒としては、水が好ましい。ICP−MS装置での分析に適しているからである。また、ICP−MS装置の構成や測定条件によっては、有機溶媒(特に水溶性有機溶媒)や、水と有機溶媒との混合液を溶媒とすることが期待できる。以下、主成分金属元素イオン、不純物元素イオン、および分析対象外の主成分金属元素イオンの濃度と分析対象となる不純物元素イオンの濃度との差(以下、濃度差という)について説明する。
(主成分金属元素イオン)
主成分金属元素イオンとは、高濃度差溶液に含まれる金属元素イオンであって、その高濃度差溶液の主要な作用効果を達成するために存在する金属元素イオンをいう。例えば、電池用電解液において活物質として働く金属元素イオン、めっき液においてめっき成分となる金属元素イオン、および、金属を溶解した溶解液において金属を構成する金属元素イオン等が挙げられる。主成分金属元素イオンは一つ以上の金属元素イオンのみならず、2つ以上の金属元素イオンであってもよい。
(不純物元素イオン)
不純物元素イオンとは、高濃度差溶液中に微量に含まれる元素イオンであって、高濃度差溶液の目的とする作用効果に積極的に寄与しないイオンをいう。本実施形態の不純物元素イオンの分析方法では、この不純物元素イオンのうち少なくとも一つを分析対象とする。したがって、高濃度差溶液は分析対象外の不純物元素イオンを含んでいてもよい。また、後述するように、電荷の状態が不明な不純物元素についても、不純物元素イオンに含む。
(濃度差)
本実施形態における高濃度差溶液は、分析対象外の主成分金属元素イオンの濃度が、分析対象となる不純物元素イオンの濃度に対して質量比で10000倍以上である。特に、濃度差が20000倍以上、さらには50000倍以上の場合には、主成分除去工程を経た測定溶液を分析対象とすることで希釈倍率を低くでき、分析対象となる不純物元素イオンを高精度に定量できる。また、濃度差が10000倍未満の場合、例えば9000倍未満、7000倍未満、5000倍未満といった場合であっても、本実施形態を採用することで従来よりも低い希釈倍率で定量分析を行うことができるので、高い分析精度での定量分析を行うことができると期待される。濃度差を比較するにあたっては、分析対象外の主成分金属元素イオンが2つ以上含まれる場合は、これらの合計の濃度を分析対象外の主成分金属元素イオンの濃度とする。また、分析対象となる不純物元素イオンが2つ以上含まれる場合は、これらの不純物元素イオンのうち、含有量が最も少ないものの濃度を基準とする。
(主成分除去工程)
主成分除去工程では、分析対象外の主成分金属元素イオンを高濃度差溶液から実質的に除去した液が得られる。本工程を行うことにより、分析対象外の主成分金属元素イオンが実質的に除去され、かつ、分析対象である不純物元素イオンが実質的に除去されていない液を得ることができる。また、本工程では、分析対象外の不純物元素イオンがあわせて除去されてもよい。
主成分金属元素イオンを実質的に除去する理由は次のとおりである。すなわち、後述するように、分析工程において定量分析する測定溶液の総イオン濃度をおおむね0.1g/L未満とすれば、ICP−MS装置の汚染を防ぐことができる。ここで、高濃度差溶液においては、分析対象外の主成分金属元素イオンの濃度と分析対象となる不純物元素イオンの濃度との相対的な差が大きい。また、電解液やめっき液においては、主成分金属元素イオンが高濃度(具体的には、1.0mol/L以上)に含まれる場合も多い。よって、高濃度差溶液中の溶質が実質的に主成分金属元素イオンと微量の不純物元素イオンとで構成される場合には、分析対象外の主成分金属元素イオンを実質的に除去して0.1g/L未満の濃度とすることで、主成分除去工程を経た液に含まれる総イオン濃度を0.1g/L未満にできるといえる。
本工程は、高濃度差溶液から主成分金属元素イオンを実質的に除去できる方法であれば特に限定されない。一例としては、主成分金属元素イオンを吸着するイオン交換樹脂から構成されるフィルター(カートリッジ状のものや、イオン交換樹脂を充填したカラム等)に高濃度差溶液を通液することで行うことができる。特に、主成分金属元素イオンは一般に陽イオンであるので、陽イオン交換樹脂を用いることで主成分金属元素イオンを容易かつ効率的に除去することができる。陽イオン交換樹脂を用いる場合には、除去する主成分金属元素イオンの種類に合わせて、水素型陽イオン交換樹脂、ナトリウムイオン型陽イオン交換樹脂、およびアンモニウム型陽イオン交換樹脂といった陽イオン交換樹脂等から構成されるフィルターやカラムを用いることができる。これらの陽イオン交換樹脂は主成分金属元素イオンの種類に合わせて、単独で用いてもよいし、組合せて用いてもよい。フィルターには、市販のものを利用することができる。
他にも、本工程は除去対象とする主成分金属元素イオンを化合物として沈殿させる試薬を加えることで行うことができる。この場合、沈殿が生成した溶液の上澄みを採取した上澄み液、または、沈殿が生成した溶液をろ紙等に通液して濾過した濾過液等を利用できる。
主成分除去工程には、高濃度差溶液を希釈した希釈液を用いてもよい。すなわち、準備工程で準備される高濃度差溶液は、高濃度差溶液の希釈液であってもよい。高濃度差溶液をそのまま用いると、主成分金属元素イオンの濃度によっては、フィルターやカラムの吸着能力を超えてしまい、主成分金属元素イオンの除去が不十分となるおそれがあるからである。希釈液を用いる場合であっても、希釈倍率を、フィルターやカラムの吸着能力を発揮できる範囲内、かつ、必要とする分析精度を達成できる範囲内とすることで、後述するようにその後の分析工程において不純物元素イオンを高精度に定量分析することができる。上記の沈殿の場合も同様である。
(分析工程)
分析工程では、主成分除去工程を経た測定溶液をICP−MS装置により分析することで不純物元素イオンの濃度を定量する。測定溶液が主成分金属元素イオンを実質的に含まないことでICP−MS装置の汚染を防止できると共に、ICP−MS装置の汚染を防ぐための大幅な希釈を行う必要がないので、不純物元素イオンを高精度に分析することができる。
本工程は、市販のICP−MS装置に測定溶液を導入することで行うことができる。測定溶液には、少なくとも主成分除去工程を経た液を用いる。より具体的には、主成分除去工程を経た液、主成分除去工程と後述する他の工程を経た液、およびこれらの液の希釈液を用いることができる。希釈液を用いる場合の希釈倍率は、必要とする分析精度を達成でき、かつ、ICP−MS装置の汚染を防止できる範囲とすればよい。具体的には、測定溶液に含まれる総イオン濃度が0.1g/L未満であると、ICP−MS装置の汚染を防止できると期待される。
分析工程では、不純物元素イオン以外の元素イオンを同時に定量分析してもよい。例えば、測定溶液に残留した分析対象外の主成分金属元素イオンの濃度を定量分析すれば、主成分除去工程における主成分金属元素イオンの除去効率やICP−MS装置の汚染が発生したか否か等を確認することができる。
<その他の工程>
本実施形態の高濃度差溶液に含まれる不純物元素イオンの定量分析方法は、さらに以下の各工程を備えてもよい。
(添加工程)
添加工程では、少なくとも一つの不純物元素イオンを主成分除去工程や後述する各工程等により除去されないような状態にできる添加剤を高濃度差溶液に添加する。添加剤の添加によって、主成分除去工程や後述する各工程等により除去されない状態となる不純物元素イオンを維持型不純物元素イオンと呼ぶ。これにより、微量の維持型不純物元素イオンを分析対象とした場合であっても、維持型不純物元素イオンを高精度かつ容易に定量分析することができる。すなわち、添加工程は、不純物元素イオンが維持型不純物元素イオンを含み、主成分除去工程までの間の液に添加剤を添加する添加工程を備え、この添加剤により、維持型不純物元素イオンを主成分除去工程や後述する各工程等により除去されない状態とする。
本工程は、主成分除去工程までの間の液に対して添加剤を添加することで行う。より具体的には、高濃度差溶液、高濃度差溶液の希釈液、および後述する他の工程を行った液に対して行うことができる。本工程を備える場合、不純物元素イオンの定量方法は、例えば、準備工程⇒添加工程⇒主成分除去工程⇒分析工程の順に行われる。以下、維持型不純物元素イオン、および、添加剤について説明する。
(維持型不純物元素イオン)
維持型不純物元素イオンとしては、高濃度差溶液中で陽イオンとして存在するものの一部や、高濃度差溶液中での詳細な電荷の状態が不明なものの一部が挙げられる。例えば、詳細な電荷の状態が不明な不純物元素イオンとして、Sbイオンが挙げられる。以下、Sbイオンを例として維持型不純物元素イオンについてさらに説明する。
上述のように、Sbイオンは高濃度差溶液中での詳細な電荷の状態が不明である。よって、主成分除去工程や後述する各工程等で除去されるおそれがある。本発明者らは、Sbイオンは、特定の添加剤によりいわば錯体化が可能であり、錯体化されたSbイオンは、主成分除去工程や後述する他の工程により実質的に除去されないとの知見を得た。すなわち、分析対象の不純物元素イオンがSbイオンを含む場合には、主成分除去工程までの間の液にSbイオンを錯体化する添加剤を添加する添加工程を行うことで、Sbイオンの濃度を定量分析することができる。
Sbイオン以外の詳細な電荷の状態が不明な不純物元素イオンとしては、例えば、Biイオンが挙げられる。Biイオンも、添加剤によりいわば錯体化が可能な錯体化不純物元素イオンであると考えられる。よって、Biイオンを分析対象とする場合には、添加工程を行うことにより、Biイオンの濃度を高精度に定量分析することができると期待される。以下、添加剤によりいわば錯体化が可能な維持型不純物元素イオンを錯体化不純物元素イオンという。
(添加剤)
添加剤は、分析対象とする維持型不純物元素イオンを主成分除去工程や後述する各工程等により除去されないような状態(代表的には錯体)とできるものであれば特に限定されない。例えば、錯体化不純物元素イオンを定量分析の対象とした場合には、添加剤として、酒石酸、2,3−ジメルカプトプロパン−1−スルホン酸ナトリウム、2,3−ジメルカプトこはく酸等を用いることができる。これらの中でも、特に酒石酸を用いることが好ましい。分析対象となる錯体化不純物元素イオンを効率的に錯体化できるからである。
添加剤は、主成分除去工程までの間の液に含まれる維持型不純物元素イオンの全量が除去されることを防止できる量を添加する。維持型不純物元素イオンを高精度に定量分析することができるからである。具体的には、0.1質量ppm程度の維持型不純物元素イオンが含まれると予想される高濃度差溶液または高濃度差溶液の希釈液に対して0.1mol/L以上の添加剤を添加すればよい。一方、添加剤の添加量が0.1mol/L未満であると、維持型不純物元素イオンの全量を添加工程以降に除去されないような状態にする(代表的には錯体化する)ことが難しく、維持型不純物元素イオンの一部が主成分除去工程や後述する他の工程により除去されてしまうおそれがある。また、添加剤を過剰に添加すると、余剰の添加剤により総イオン濃度が上昇し、ひいてはICP−MS装置が汚染されるおそれがあるので好ましくない。
以上、添加工程を行えば、維持型不純物元素イオンを、高精度に定量分析することができる。特に、添加工程を行えば、Sbイオンのように、錯体化不純物元素イオンを定量分析の対象とする場合であっても、高精度な定量分析を行うことができる。さらに、添加剤を添加するだけで維持型不純物元素イオンが添加工程以降分析工程前までに除去されることを防ぐことができるので、簡易な前処理によって高精度な定量分析ができる。
(硫酸イオン除去工程)
硫酸イオン除去工程では、準備工程から分析工程の間の液が硫酸イオンを含み、硫酸イオンを含む液をバリウムイオン型陽イオン交換樹脂に接触させて前記硫酸イオンを実質的に除去する。通常、硫酸イオンは分析対象外のイオンである。
準備工程から分析工程の間の液が高濃度の硫酸イオン(具体的には、不純物元素イオンに対する質量比で10000倍以上)を含む場合がある。このような場合には、主成分除去工程により主成分金属元素イオンが実質的に除去されたとしても、準備工程から分析工程の間の液に含まれる総イオン濃度が硫酸イオンにより0.1g/L以上となりうる。このような液をそのまま測定溶液として用いると、ICP−MS装置の汚染が生じうる場合がある。また、このような液を総イオン濃度が0.1g/L未満となるように希釈して測定溶液とした場合、所望の分析精度が保てない場合がある。さらに、高濃度の硫酸イオンが液に含まれると、粘性が高くなる傾向がある。粘性が高い場合、測定溶液においてはICP−MS装置への導入効率が下がり、高濃度差溶液においては、主成分除去工程を陽イオン交換樹脂への接触により行う場合において時間を要するので作業効率が悪くなるといった問題が起こりうる。したがって、準備工程から分析工程の間の液が硫酸イオンを含む場合には、本工程を行うことが望ましい。これらの問題の発生を防止できるからである。
硫酸イオン除去工程は、分析工程までの間の液に対して行うことができる。より具体的には、高濃度差溶液、高濃度差溶液の希釈液、および硫酸イオン除去工程以外の工程を行った液に対して行うことができる。また、硫酸イオン除去工程は、例えば、バリウムイオン型陽イオン交換樹脂を主体とするフィルター(カートリッジ状のものや、イオン交換樹脂を充填したカラム等)に分析工程までの間の液を通液することで行うことができる。フィルターには市販のものが利用できる。
(ハロゲンイオン除去工程)
準備工程から分析工程の間の液がハロゲンイオンを含む場合、ハロゲンイオン除去工程を行ってもよい。ハロゲンイオン除去工程では、ハロゲンイオンを含む液を銀型陽イオン交換樹脂に接触させる。これにより、準備工程から分析工程の間の液に含まれるハロゲンイオンを除去することができる。通常、ハロゲンイオンは分析対象外のイオンである。
準備工程から分析工程の間の液が高濃度のハロゲンイオン(具体的には、不純物元素イオンに対する質量比で10000倍以上)を含む場合がある。このような場合には、主成分除去工程により主成分金属元素イオンが実質的に除去されたとしても、準備工程から分析工程の間の液に含まれる総イオン濃度がハロゲンイオンにより0.1g/L以上となりうる。このような液をそのまま測定溶液として用いると、ICP−MS装置の汚染が生じる場合がある。よって、準備工程から分析工程の間の液がハロゲンイオンを不純物元素イオンとして含む場合には、ハロゲンイオン除去工程を備えることが望ましい。特に、高濃度差溶液に含まれるハロゲンイオンは、高濃度差溶液が、フッ酸(HF)や塩酸(HCl)などの酸を含み、これらの酸の解離に伴い生じる場合が多い。このような場合、高濃度差溶液には多量の水素イオンが含まれた状態となりうる。このような状態において、例えば、主成分除去工程を水素イオン型陽イオン交換樹脂に接触させることで行うと、主成分金属元素イオンの除去が不十分となる場合がある。よって、高濃度差溶液が分析対象外のハロゲンイオンを含む場合には、高濃度差溶液に対して主成分除去工程の前にハロゲンイオン除去工程を行うことが特に望ましい場合がある。
ハロゲンイオン除去工程は、分析工程までの間の液に対して行うことができる。より具体的には、高濃度差溶液、高濃度差溶液の希釈液、ハロゲンイオン除去工程以外の工程を行った液に対して行うことができる。また、ハロゲンイオン除去工程は、例えば、銀型陽イオン交換樹脂から構成されるフィルター(カートリッジ状のものや、イオン交換樹脂を充填したカラム等)に分析工程までの間の液を通液することで行うことができる。フィルターには市販のものが利用できる。
ハロゲンイオン除去工程で除去されるハロゲンイオンは、当初から高濃度差溶液に含まれるものはもちろん、他の工程で発生したものも含まれる。例えば、市販のバリウムイオン型陽イオン交換樹脂には、イオンの交換効率を高めるために塩化物塩が含まれるものがある。そのため、硫酸イオン除去工程に用いるバリウムイオン型陽イオン交換樹脂によっては、硫酸イオン除去工程で塩化物イオンが発生し、高濃度差溶液の総イオン濃度が上昇する場合がある。よって、特に高濃度差溶液が硫酸イオンとハロゲンイオンとを含む場合には、準備工程⇒硫酸イオン除去工程⇒ハロゲン除去工程⇒主成分除去工程⇒分析工程の順に行うことが好ましい。
その他、準備工程から分析工程の間の液にリン酸等の他の酸が含まれる場合にも、これらの酸由来の化合物イオン(リン酸イオン等)を、主成分除去工程の前に除去しておくことが好ましいと考えられる。特に、リン酸イオンが多量に含まれると、硫酸イオンと同様に上記の液の粘性が高くなる傾向があるため、除去しておくことが好ましい。リン酸イオン等の除去は、ハロゲンイオン除去工程や硫酸イオン除去工程と同様に、リン酸イオン等を含む液をイオン交換樹脂に接触させたり、化合物イオンを沈殿させる試薬を加えたりすることで、除去することができる。
<その他>
Asイオンが分析工程までの間の液に含まれる場合、Asイオンは様々な電荷を備える状態で存在すると考えられる。よって、不純物元素イオンとして含まれるAsイオンを分析対象とする場合には、上記の各工程によりAsイオンの少なくとも一部が除去されるおそれがある。しかし、本発明者らは、上記の各工程で例示した各種の陽イオン交換樹脂を主体とするフィルターやカラムにより各種のイオンの除去工程を行えば、Asイオンが除去されないことを見出した。よって、上記の各工程で例示した各種の陽イオン交換樹脂から構成されるフィルターやカラムを用いれば、ICP−AESでは高精度な定量分析が困難なAsイオンを、ICP−MS装置の汚染を防ぎつつ、高精度に定量分析することができる。
以上により説明した本実施形態の不純物元素イオンの定量分析方法によれば、ICP−MS装置が汚染されるおそれがない。また、微量の不純物元素イオンを高精度に定量分析することができる。
[試験例1]
試験例1では、高濃度差溶液としてV系レドックスフロー電池の電解液を用い、この電解液に不純物元素イオンとして含まれるSbイオンおよびAsイオンの定量分析、並びにICP−MS装置の汚染状況を調べた。この電解液は、活物質(主成分金属元素イオン)として1.7mol/L(約86.5g/L)のVイオンを含み、硫酸イオンの濃度が4.3mol/L(約412.8g/L)の電解液である。ここでは、この電解液を超純水で100倍に希釈した希釈液(100倍希釈液)を用意した(準備工程)。この100倍希釈液を3つに分け、試料1−1から試料1−3とした。試料1−3に対しては、試料中で0.1mol/L(約15g/L)となるように酒石酸を加えた(添加工程)。
バリウムイオン型陽イオン交換樹脂、銀型陽イオン交換樹脂、および水素イオン型陽イオン交換樹脂がこの順に積層されたカートリッジ(ダイオネクス社製、オンガードIIカートリッジ)を用意した。このカートリッジに、試料1−2および試料1−3をバリウムイオン型陽イオン交換樹脂側からそれぞれ通液することで、硫酸除去工程、ハロゲンイオン除去工程、および主成分除去工程を順に行い、両試料の主成分除去工程を経た液を得た。一方、試料1−1はカートリッジへの通液を行わなかった。
試料1−1、並びに上記の試料1−2および試料1−3の主成分除去工程後の液を、それぞれ超純水を用いて10倍希釈し、各試料の測定溶液とした。そして、各試料の測定溶液をICP−MS装置(Agilent社製、7700x ICP−MS)に導入し、各試料の測定溶液に含まれるSbイオン、Asイオンおよび、Vイオンの濃度を定量分析した(分析工程)。そして、各測定溶液を測定した直後に超純水によるブランク測定を行い、すべての元素イオンの濃度がそれぞれノイズレベル以下であれば、ICP−MS装置の汚染が無いものとした。この結果を表1に示す。表1に示したSbイオンおよびAsイオンの濃度は、電解液の濃度に換算したものを示す。また、表1に示す濃度は、測定に用いた溶液1リットルに対する質量割合である。
Figure 2015081912
(定量分析の精度)
カートリッジへの通液を行っていない試料1−1とカートリッジへの通液を行った試料1−3とを比較すると、定量分析したSbの濃度に実質的な差異は見られない。一方、試料1−3と酒石酸を添加することなくカートリッジへの通液を行った試料1−2とを比較すると、試料1−2ではSbイオンの濃度が大きく減少している。これより、添加工程を行うことで、Sbイオンが各工程において実質的に除去されず、Sbイオンを高精度に定量分析できることが判る。また、各試料を比較すると、Asイオンの濃度に実質的な差異はない。これより、Asイオンはカートリッジを実質的に透過したといえ、各工程を行ってもAsイオンを高精度に定量分析できたことが判る。さらに、電解液に含まれるVイオンの濃度は、上述の通り約86.5g/Lであるので、試験例1−1から、VイオンとSbイオンとの濃度差は質量比で約9400倍、VイオンとAsイオンとの濃度差は質量比で約62000倍である。測定溶液は高濃度差溶液に対する最終的な希釈倍率が1000倍であるので、従来のように10万倍や100万倍といった希釈を行った場合と比べて、10000倍以上の濃度差がある高濃度差溶液に含まれる不純物元素イオンの濃度を高精度に定量分析できたといえる。
(ICP−MS装置の汚染)
試料1−1では、検出された総イオン濃度が0.1g/Lを大幅に超え、その後のブランク測定においてノイズレベルを超える元素イオンが測定された。上述の試料1−1の測定溶液は、Vイオン濃度が約86.5mg/L、硫酸イオン濃度が約412.8mg/Lであるので、不純物元素イオンを含む総イオン濃度は約509.9mg/L(約0.5g/L)以上となる。したがって、総イオン濃度が0.1g/L以上の溶液をICP−MS装置に導入した場合に、装置が汚染されることが判る。一方、フィルターにより主成分金属元素イオンおよび硫酸イオンを除去した試料1−2および試料1−3の各測定溶液では、ブランク測定においてノイズレベルを超える元素イオンは測定されなかった。これより、総イオン濃度を0.1g/L未満とすれば、装置の汚染を防ぐことができることが判る。
[試験例2]
試験例2では、添加剤の添加量の差異によるSbイオンの定量分析への影響を調べた。ここでは、酒石酸の添加量を異ならせたこと以外は、試験例1で用いた電解液の希釈液と同様の希釈液(100倍希釈液)、および同様の測定方法により、添加量の差異による定量分析への影響を調べた。以下、100倍希釈液に対する酒石酸の添加量、および、SbイオンおよびAsイオンの定量分析結果を表2に示す。Sbイオン濃度およびASイオン濃度は、電解液における濃度に換算してある。
Figure 2015081912
試料2−1から試料2−4を比較することで、0.1質量ppm程度のSbイオンを含む100倍希釈液に対して添加剤を0.1mol/L程度添加すれば、含まれるSbイオンのほぼ全量を錯体化でき、高精度な定量分析を行うことができることが判る。また、試料2−4と試料2−5とを比較することで、添加剤の添加量は、0.1質量ppm程度のSbイオンを含む100倍希釈液に対して、0.1mol/Lを超える必要がないことが判る。さらに、各試料を比較することで、添加剤として酒石酸を用いた場合は、実質的にSbイオンのみが錯体化され、Asイオンにはこの添加剤の影響がないことが判る。
本発明は、電池用電解液、めっき液、および金属の溶解液といった溶液中に含まれる不純物元素イオンを、装置の汚染を防ぎつつ高精度に定量分析することができる。

Claims (10)

  1. 分析対象外の主成分金属元素イオンと分析対象となる不純物元素イオンとを含み、前記主成分金属元素イオンの濃度が前記不純物元素イオンの濃度に対して質量比で10000倍以上である高濃度差溶液を準備する準備工程と、
    前記主成分金属元素イオンを前記高濃度差溶液から実質的に除去する主成分除去工程と、
    前記主成分除去工程を経た測定溶液を誘導結合プラズマ質量分析装置により分析することで前記不純物元素イオンの濃度を定量する分析工程とを備える不純物元素イオンの定量分析方法。
  2. 前記不純物元素イオンがアンチモンイオンを含み、
    前記主成分除去工程までの間の液に添加剤を添加する添加工程を備え、
    前記添加剤により、前記アンチモンイオンを錯体化する請求項1に記載の不純物元素イオンの定量分析方法。
  3. 前記添加剤が酒石酸である請求項2に記載の不純物元素イオンの定量分析方法。
  4. 前記不純物元素イオンがヒ素イオンを含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の不純物元素イオンの定量分析方法。
  5. 前記主成分除去工程において、前記主成分金属元素イオンを、前記高濃度差溶液を陽イオン交換樹脂に接触させて実質的に除去する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の不純物元素イオンの定量分析方法。
  6. 前記準備工程から前記分析工程の間の液が硫酸イオンを含み、
    前記硫酸イオンを含む液をバリウムイオン型陽イオン交換樹脂に接触させて前記硫酸イオンを実質的に除去する硫酸イオン除去工程を備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の不純物元素イオンの定量分析方法。
  7. 前記準備工程から前記分析工程の間の液がハロゲンイオンを含み、
    前記ハロゲンイオンを含む液を銀型陽イオン交換樹脂に接触させて前記ハロゲンイオンを実質的に除去するハロゲンイオン除去工程を備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の不純物元素イオンの定量分析方法。
  8. 前記高濃度差溶液が硫酸イオンとハロゲンイオンとを含み、
    前記高濃度差溶液をバリウムイオン型陽イオン交換樹脂に接触させて前記硫酸イオンを実質的に除去する硫酸イオン除去工程と、
    前記硫酸イオン除去工程を経た液を銀型陽イオン交換樹脂に接触させて前記ハロゲンイオンを実質的に除去するハロゲンイオン除去工程とを備え、
    前記硫酸イオン除去工程、前記ハロゲンイオン除去工程、および前記主成分除去工程を順に行う請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の不純物元素イオンの定量分析方法。
  9. 前記測定溶液の総イオン濃度が0.1g/L未満である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の不純物元素イオンの定量分析方法。
  10. 前記高濃度差溶液が電池用電解液、めっき液、および金属の溶解液のいずれかである請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の不純物元素イオンの定量分析方法。
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