以下、この出願の発明の実施の形態に係る回転加熱型調理器の構成および作用について、詳細に説明する。
まず図1〜図19は、この出願の発明の実施の形態に係る回転加熱型調理器の全体及び要部のハード上の構成を、また図20は、同回転加熱型調理器の制御システムの構成を、さらに図21〜図31は、同回転加熱型調理器におけるパン焼き上げ調理および回転加熱調理の内容を示している。
この実施の形態では、すでに述べた、調理容器、調理容器内の調理物を回転させる調理物回転手段、調理容器を加熱する加熱手段等を備えた、たとえばホームベーカリー、フードプロセッサーなどの回転加熱型調理器の中から、一例として、家庭用のパン焼き器であるホームベーカリーを採用して、本願発明を実施しようとしている。
<ホームベーカリーの基本構成部分>
まず、この実施の形態のホームベーカリーでは、図1〜図4に示されるように、
その基本的な構成部分として、ベーカリー本体の外壁部および筐体部を構成する有底筒状の外ケース1と、該外ケース1内にあって該外ケース1との間に所定の空間を保って支持固定され、ベーカリー本体の内壁部および焼成室を構成する有底筒状の保護枠(内ケース)2とからなるベーカリー本体Aと、該ベーカリー本体Aの上端側開口部後端側にヒンジ機構16を介して後端側を回動可能に枢着され、水平な閉状態においては当該ベーカリー本体Aの上端側開口部を覆う一方、ほぼ垂直な開状態においては当該ベーカリー本体Aの開口部を上方側に開放する上下方向に開閉可能な蓋体Bとの2つの部分から構成されている。
<外ケース部分の構成>
そして、外ケース1は、例えば上下方向に延びる断面略方形の筒状の側壁部1aと、該側壁部1aの平面略方形の底部開口面にあって外ケース1の底面部を構成する平面略方形の底壁部1bと、上記側壁部1aの上端側開口縁部内側にあって、同開口縁部と上記保護枠2の上端側開口縁部とを連結一体化し、上記ベーカリー本体Aの上端側開口部(開口縁部)を形成する肩部材1cとから構成されている。この実施形態の場合、これら側壁部1a、底壁部1b、肩部材1cは、それぞれ一例として合成樹脂材により成型して構成されている。
この実施の形態の場合、例えば側壁部1aおよび底壁部1bは一体成型により形成されている。また、外ケース1a中央部上端の左右両側には、携帯用の取っ手13の左右一対の基端部が枢着されている。
<保護枠部分の構成>
一方、上記ベーカリー本体Aの内壁部および焼成室を形成する保護枠(内ケース)2は、合成樹脂材により成型された有底筒状の第1の保護枠(下部部材)21と、該第1の保護枠21の上端側開口部21cの水平方向への拡大縁部21d上に同軸状態で連結一体化された金属製の発熱板220を有する同じく筒状の第2の保護枠(上部部材)22とからなり、それぞれその断面形状は共に略方形を成し、上記前後方向に少し長い外ケース1の側壁部1a内にあって、その中心部より所定寸法後方側に偏倚して設けられており、前方側外ケース1の側壁部1aとの間に所定のスペースの空間部を形成する状態で、上記外ケース1の底壁部1b上に後述する回転駆動機構10を介して水平に支持固定されている。
回転駆動機構10は、所定の筐体Z内に確実に固定して設けられており、上記第1の保護枠21は、その底部側複数本の脚部21g、21g・・を同筐体Z上部の対応する連結部に連結することにより、正確に位置決めした上で固定されている。
この第1の保護枠21と上記第2の保護枠22とを合わせた保護枠2全体の高さは、例えば図2、図3に示すように、上記外ケース1の底壁部1b上に支持固定された状態において、ほぼ上記外ケース1の側壁部1aの高さになるように形成されており、同状態において、第2の保護枠22の小径部(上部側側壁部)22aの上端と外ケース1の側壁部1aの上端との間に上述した肩部材1cが介装され、該肩部材1cを介して第2の保護枠22の小径部22a上端と外ケース1の側壁部1a上端とが周方向の全体に亘って連結一体化されて、ベーカリー本体Aの上端側開口部(開口縁部)が形成されている。
<肩部材部分の構成>
肩部材1cは、たとえば図2〜図4、図8、図9に示されるように、上記ベーカリー本体Aの開口部(開口縁部)を形成する断面逆U字状の肩枠部(本体部)51aと、後端側ヒンジブラケット部51eと、前端側操作パネル設置部51cとから構成されている。肩枠部51aの上部側は、周方向の全体に亘って所定の幅の平坦部(水平部)51bに形成されており、該平坦部51bの内周端には所定の高さ上方に突出する環状の凸部(リブ)51fが設けられている。この環状の凸部51fは、後述するように、蓋体B下面側の凸部18cと内外方向に位置をずらせて対向するようになっており、蓋体Bが閉じられた状態では、相互に内と外に近接する状態で隣接され、焼成室であるパン膨出空間Y側からの蒸気が漏れ出すのをシールするようになっている。
また、肩枠部51a後端側のヒンジブラケット部51eは、その上端部にヒンジ軸枢支部16を有する一方、下端部に上述した取っ手13の支持片を有して構成されている。さらに、肩枠部51aの前端には、たとえば図1〜図4のように組みつけられた時に、後述する操作パネル11側とベーカリー本体Aの開口部側とを仕切る仕切り壁51dが設けられている。
<操作パネルおよび操作パネル設置部の構成>
上記ベーカリー本体A前部の上記外ケース1の側壁部1a上端と上記第2の保護枠22の小径部(上部側側壁部)22a上端との間は、前後方向および上下方向に所定スペース以上広く開放されており、この開放スペース部分を利用して、例えば図1〜図4に示すように、上記肩部材1c前端側の平面視半月状の操作パネル設置部51cが介装され、同操作パネル設置部51cの上部に操作パネル11および操作基板12が上下に位置して設けられている。
操作パネル11には、図1に示すように、中央部の液晶ディスプレイ11aを囲む形で、右側にスタートスイッチ11b、取消スイッチ11c、左側にメニュー選択スイッチ11d、焼色スイッチ11e、ミックススイッチ11f、中央部側に予約スイッチ11g、タイマー設定用の時・分スイッチ11hがそれぞれ設けられている。
これら各スイッチの操作設定状態は、その下部側にある操作基板12上の図示しないマイコン制御ユニットに入力され、やがて上記スタートスイッチ11bがON操作されると、それに対応して、上記メニュー選択スイッチ11d等により選択設定された所望のメニューのパンの焼き上げ制御、所望のメニューの加熱回転調理制御が開始される。
<第1の加熱手段であるワークコイルおよびワークコイル設置部の構成>
さらに、上記保護枠2の下部側、断面略方形の第1の保護枠21の側壁部21aの外周(具体的には、上下方向略中間位置よりも若干下方の位置)には、同側壁部21aの周方向の全体に亘って延びる同じく断面略方形で上下方向に所定の幅の帯状のコイルボビン(ワークコイル券成用合成樹脂成形部材)5が設けられており、該コイルボビン5を介して上記第1の保護枠21の側壁部21aの外周に第1の加熱手段であるワークコイル6が設置されている。
このワークコイル6が券成されたコイルボビン5は、たとえば図10に示されるように、上記第1の保護枠21とは別体に構成されており、たとえば図11に示すワークコイル6側の、内部にフェライトコア7を嵌装したコイル台8により、上記第1の保護枠21の側壁部21aの外周面(前後左右4つの側面の中央)に対して固定されるようになっている。
すなわち、この実施形態におけるコイル台8は、同図11に示されるように、上記コイルボビン5の上下方向の幅よりも所定寸法上下に長く、かつ左右方向の幅が小さいボックス構造に形成され、その内側に上記フェライトコア7を嵌め込んで収納している一方、上記第1の保護枠21の例えば前後左右各側壁面部(平面部)の幅方向中央部に位置して設けられており、その上端側にあって外方側に向けて部分的に所定幅突出した取付部8aを上記第1の保護枠21の上端側開口部21cの水平方向外方に向けて所定幅以上に大きく拡大された平面視方形の拡大縁部21dの下面側に設けられたコイル台取付用ボス部21eの上下方向に延びる螺合溝部に下方側からネジ14、14・・介して螺合締結して固定されている。
また、コイルボビン5には、上下方向に所定の幅を有するワークコイル券成面部5aの上下両端側に位置して所定の高さコイル台8側に突出するリブ(凸部)5b、5bが設けられており、他方コイル台8内側の対向する上下両端部分には同リブ5b、5bの下方側に係合して、コイルボビン5を係止する係合部(凸部)8b、8bが設けられている。したがって、コイル台8を上記第1の保護枠21の拡大縁部21d下面のコイル台取付用ボス部21eに螺合締結した時には、上記コイル台8の係合部8b、8bがコイルボビン5のリブ5b、5b部分に係合して、確実にコイルボビン5を係合固定すると共に、同係合部8b、8bの内の上部側のもの8bの下端側部分的な凸部が、さらにワークコイル6の上端部分を押えて固定するようになる。
これにより、上記コイルボビン5のワークコイル券成面部5aの上下幅一杯に均一に巻かれたワークコイル(リッツ線)6が、適正なギャップと位置関係をもって確実に第1の保護枠21の側壁部21a外周面に対して固定され、同第1の保護枠21内側のパンケース収納室(下部側焼成室)Xに収納セットされたパンケース3に対しても適正なギャップと位置関係をもって対応することになる。その結果、パンケース3全体の均一な電磁誘導加熱が可能となる。
また、同構成では、第1の保護枠21(保護枠2)の側壁部21aに対して、ワークコイル6を設置するに際して、予め、上記第1の保護枠21とは別体の構造である(第1の保護枠21に嵌装される前の)コイルボビン5にワークコイル6を巻きつけて、コイルボビン5およびワークコイル6が一体の独立したワークコイルユニットを形成しておき、組付け時に、それを上記第1の保護枠21の側壁部21aの略中間部より下方の所定の位置に下方側から嵌装し、拡大縁部21dの下面側から下方に延びる周方向に複数本配設されたリブ21f、21f・・の下端で位置決めし、その後、コイル台8により上記第1の保護枠21の側壁部21a外周面に固定するだけで、上述のように正確に位置決めした状態で固定することができる。したがって、その取り付けは極めて容易である。
また、符号9は、たとえばアルミ金属材料よりなる断面略方形の形状の帯状の磁気遮蔽板であり、上記ワークコイル6及びコイルボビン5の外周を覆うに十分な上下幅を有して断面略方形の環状帯に構成されている。そして、その前後左右各平面部の幅方向中間部の上縁部9aには、同上縁部9aの一部を内側に折り曲げることにより上記第1の保護枠21のコイル台取付用ボス部21eにコイル台8の取り付け部8aとともに重合して締結固定されるネジ穴つきの取り付け用フランジ9bを有し、コイル台8(4本)と共に第1の保護枠21の拡大縁部21dの下面部に取り付けられている。
そして、それによって、励磁状態における上記ワークコイル6からの磁束が周囲に漏れるのを防止している。
したがって、この実施の形態の場合、電磁誘導加熱手段であるワークコイル6、その磁束収束手段であるフェライトコア7(4本)、ワークコイル6からの磁気の遮蔽手段である磁気遮蔽板9等の設置が、実質的に第1の保護枠21に対するコイル台8(4本)の取り付けのみによって容易に実現できることになり、電磁誘導加熱手段部分の構成、組みつけが非常に簡単になる。
また、図11に示すように、コイル台8そのものも、ストレートな左右一対の側壁部間の細長いフェライトコア挿入空間8c部分に上方側からストレートな角棒構造のフェライト7を挿入固定するだけで、フェライトコア7を収納一体化することができるようになるので、その本体構造が著しく小型化され、また金型代も大幅に低下する。
さらに、コイル台8の上部側係合部8bの下端側凸部でワークコイル6を押えることもできるので、ワークコイル6自体の固定状態も安定する。
また、上記の構成では、パンケース3の発熱によって一定程度の高温になる第1の保護枠21側からの熱が所定の厚さを有するコイルボビン5によって断熱され、直接ワークコイル6に伝わるのを防止できるとともに、さらにコイルボビン5と第1の保護枠21の側壁面との間に所定の隙間を形成している。したがって、同隙間により保護枠2側からの熱がコイルボビン5およびワークコイル6に直接伝わることがないだけでなく、同隙間を後述する冷却ファン20からの風が通るようになるので、よりワークコイル6の冷却性能が向上する。
このコイルボビン5と第1の保護枠21の側壁面21aとの間の隙間は、例えば第1の保護枠21の側壁部21aの上部にあって、上記水平方向に張出された拡大縁部21dの下面部から下方に延びる上記コイルボビン5の位置決め機能を有した複数本のリブ21f,21f・・の一部(4面のもの)を下方に延ばし、それらの上にコイルボビン5を嵌装することなどによって容易に実現される。
また、上記のように第1の保護枠21(保護枠2)と別体のコイルボビン5に予めワークコイル6を巻いて第1の保護枠21(保護枠2)から独立したワークコイルユニットとし、該第1の保護枠21(保護枠2)から独立したワークコイルユニットとを最終的に第1の保護枠21(保護枠2)に組み付けるようにすると、通常想定される第1の保護枠21自体に直接巻装する構成の場合に比べて、保護枠がないためにワークコイルユニットが遥かに小さなものとなる。
<第2の保護枠部分の構成>
以上のように、本実施の形態の構成では、焼成室を形成する保護枠(内ケース)2を、合成樹脂製の第1、第2の保護枠21、22を上下に組み合わせて構成されているが、第2の保護枠22は、上記第1の保護枠21の上端側拡大縁部21dの上端部側に、同第1の保護枠21と同軸の状態で略筒状に連結される形で、同じく断面略方形のステンレス等の金属板よりなる発熱板220を介して設けられている。
この第2の保護枠22は、その側壁部分が、上部側小径部22aと下部側大径部22bとの2段構造となっており、下部側大径部22bは、4隅コーナー部を含めて前部側と後部側の側壁22c、22c(図2参照)部分のみが下方に長く延び(左右の側壁部は短く形成されている)、その4隅コーナー部に形成した連結部22d、22d・・が上記下部側第1の保護枠21の拡大縁部21dの4隅コーナー部に形成した連結部21h、21h・・に連結されている一方、上部側小径部22aの上端が、上述した断面逆U字状の肩部材1cの内周壁部分(環状の凸部51fを形成した部分)の下端側に連結されている。
一方、発熱板220は、たとえば帯状の金属板の両端部を周知のハゼ加工(図示省略)により連結一体化して断面略方形の筒状に構成されていて(もちろん、可能ならハゼ加工のない筒体構造の採用が好ましい)、上記第1の保護枠21の上端側拡大縁部21dの上面と上記第2の保護枠22の小径部22aの下面との間に支持され、少なくとも上記パンケース3の上端部部分から、上記第2の保護枠22の小径部22aの下面側に至る上下幅を有し、この発熱板220の内側に位置して、上記第1の保護枠21内のパンケース収納室(下部側焼成室)X内に収納セットされた上記パンケース3の開口部3cの上方に、その高さおよび直径を含めて十分に広いパン膨出空間(上部側焼成室)Yが形成されている。
<第2の加熱手段である電気ヒータと電気ヒータ設置部の構成>
そして、上記発熱板220の中間部より上部の外周面には、パン焼き上げ工程その他の加熱調理工程の進行に応じてパンケース3の開口部3cから上方に膨出したパンの天面部を含む上方部分等を効率よく加熱するための第2の加熱手段である電気ヒータHが設けられている。この電気ヒータHは、たとえば図5〜図7に示すような扁平な帯状の構造のマイカヒータが採用されており、同構造のマイカヒータよりなる電気ヒータHを上記発熱板220の外周面上に巻き付け、その左右両端80a、80b側を連結部材81で連結することにより、所定の締め付け力を維持した状態で方形の環状に装着されるようになっている。
このマイカヒータよりなる電気ヒータHは、たとえば図7に示すように、ヒータ線(発熱リボン)91を巻きつけた芯マイカ90の両側を所定の幅、所定の長さの扁平な絶縁マイカ92、92で挟み、その両面にヒータプレート93、93を設けた後に、それらの上下両側を断面U状のシーム部材94、94でシームして一体化した帯状に長い構造のものとなっており、その左右両端80a、80bにかぎ状の連結片81a、81b、該連結片81a、81b同士を相互に連結するネジ部材(トラスネジ)81c、81cよりなる連結部材81を設けて構成されている。
この電気ヒータHの連結部は、たとえば上述した発熱板220にハゼ加工部があるような場合には、同ハゼ加工部対応させて、左右両端部80a、80b相互の間の空間部分が同ハゼ加工部に位置するように設け、複数枚の板厚寸法の厚みのあるハゼ加工部220aの存在により、電気ヒータHの帯状の発熱部が発熱板220に面接触できなくなることを回避するようにする。この場合、ハゼ加工部は、ベーカリー本体Aの前部側に位置させるようにし、上記電気ヒータHの連結部も、同ベーカリー本体Aの前部側に位置させるようにする。
また、内側ヒータ線(発熱リボン)91の両端側には、絶縁チューブ83、83を巻いた給電用のリード線82、82が設けられている。絶縁チューブ83、83の基端は、碍管84、84を介して、シリコン樹脂でヒータプレート93、93面に固定されている。
そして、上記発熱板220外周面の上記電気ヒータHの左右両端80a、80b間、より広く言うと、その内側の直接発熱するヒータ線91の左右両端間に隣接する下方位置には、上述したパン膨出空間Yの温度(パン膨出空間Yの温度およびパン膨出空間Yに於けるパンの温度)を検出し、上記電気ヒータHの発熱量(出力)を制御する、たとえばサーミスタよりなる庫内温度センサー85が設けられている。
この庫内温度センサー85が取り付けられている上記ヒータ線91の左右両端間の下方位置は、上記のように発熱体であるヒータ線91が無く、ヒータ線91からの熱による直接の影響が少なく、しかもパンケース3の上端から膨出したパン膨出部の側方への膨らみが最も大きくて、パン表面の温度を正確に検出できる位置となっている。
このサーミスタよりなる庫内温度センサー85は、そのセンサー部85aをフッ素チューブ85bで被覆して構成されており、リード線85cを介して、検出された温度を、図20に示すワークコイル出力、ヒータ出力、モータ回転速度等制御用のマイコン制御ユニット100に入力するようになっている。そして、センサー部85a本体は、発熱板220上への取り付けプレート86を介して取り付けられるようになっている。取り付けプレート86には、センサー部係止片86aが設けられている。また、ネジ87の挿通孔を有し、ネジ87を用いて発熱板220面に取り付けられる。
この結果、以上の構成によれば、上記第1の保護枠21内のパンケース収納室X内に収納セットされたパンケース3は、上記電磁誘導加熱手段であるワークコイル6の電磁誘導加熱により、その底部および側部の全体が均一に効率良く加熱されるとともに、同パンケース3上方のパン膨出空間Yも、上記発熱板220を介して第2の加熱手段である電気ヒータHからの放射熱が有効、かつ均一に作用し、効率よく加熱される。
したがって、パンケース3上方のパン膨出空間Y部にふっくらと膨出したパン(図4中に仮想線Pで示す)の天面部を含む外周面全体に、発熱板220を介して電気ヒータHからの放射熱が直接作用し、同放射熱により均一かつ有効に焼き上げられるようになり、効果的な焼き色をつけることができる。
しかも、以上の構成では、同発熱板220には、上記パンケース3の上方に位置して、上記パン膨出空間Yの温度、さらには上記パンケース3から上方に膨出したパン表面の温度を検出する温度検出手段である庫内温度センサー85を設けており、該庫内温度センサー85によって検出された庫内温度およびパン膨出部の温度に応じて上気第2の加熱手段である電気ヒータHの出力やワークコイル6の出力を適切に調節制御するようにしている。
このように、パンケース3の上方に位置して、パン膨出空間Yおよびパンの温度を検出する庫内温度センサー85を設けると、この庫内温度センサー85により膨出したパンの実際の表面温度をも正確に検出できるようになる。ここで検出されるパン表面の温度は、当該パン表面の加熱レベルを示すから、同庫内温度センサー85により検出された温度をパラメータとして上気第2の加熱手段である電気ヒータHの加熱出力を制御するようにすると、当該パン表面への加熱状態、焦げ色レベルを適切に調節できるようになる。
その結果、同構成によると、パン上部の焦げ過ぎや加熱不足を解消することができ、ふっくらと膨らみ、こんがりと良い焼き色が付いた美味しいパンを焼き上げることが可能となる。
しかも、この発明の実施の形態における構成では、上記2の加熱手段である電気ヒータHは、周方向の所定の位置に非発熱部である左右両端部間の連結部を有し、上記パン表面の温度検出手段である庫内温度センサー85は、同電気ヒータHの非発熱部である左右両端側連結部の近傍に位置して設けられている。
第2の発熱手段である電気ヒータHを、上述のような帯状の構造にして、パンケース3上方のバン膨出空間Yの外周に設置するようにした場合、その両端側を連結する連結部分では、発熱部のない非発熱部が形成される。そして、この非発熱部は、発熱部に比べて相当に温度が低くなる。
一方、温度検出手段である庫内温度センサー85は、そのリード線85c部分やフッ素チューブ85b部分の耐熱性には一定の限界があり、その耐熱基準温度は一般に発熱部の発熱温度よりも低い。
そこで、同温度検出手段ある庫内温度センサー85は、上記のように、第2の発熱手段である電気ヒータHの非発熱部である左右両端側連結部の近傍に位置して設けるようにし、耐熱基準温度以下での安定した作動状態を確保する。
これらの結果、以上の構成では、パンケース3内はもちろん、パンケース3の上方に膨らんだパンの上部部分をも適切に加熱することができ、パン全体の均一な焼き上げに加えて、パン上部の適切な焼き色調節を可能とすることができる。
<熱反射部材部分の構成>
以上のような構成のホームベーカリーでは、すでに述べたようにパンケース3内に水、強力粉、糖、塩、油脂、卵等を入れ、さらにイースト菌を投入した後、捏ね工程、発酵工程を経て、焼きあげ工程で焼き上げられる。
したがって、加熱を伴う焼き上げ工程では、当然ながらパン生地中から一定量の蒸気が発生し、焼成室内に充満する。焼成室上方は蓋体Bによって閉じられているが、ホームベーカリーの場合、沸騰状態を維持する電気ポットなどのように、相互に対向する蓋体B下面の外周とベーカリー本体Aの上端側開口部外周との間にシール用のパッキンなどは設けられておらず、相互の間には所定の隙間が形成されている。
そのため、上記焼成室上方の蒸気は、徐々に同隙間から外方に漏れ出すが、外部に出る前に外気により冷やされて、同隙間部分や開口部内周面、蓋体Bの下面などに結露水を生じさせる問題がある。
そこで、この実施の形態では、これらの問題を解決するために、後述するように、蓋体Bを閉じた状態では、ベーカリー本体Aの内周側上端部と同ベーカリー本体Aの内周側上端部に対応する蓋体Bの下面部とを可及的に近接するものとし、パッキン等を設けなくても焼成室内の蒸気が外周側に漏出しにくくすることに加えて(この点については、後の蓋体部分の構成のところで詳しく説明する)、次に述べるように、パンケース3上方のパン膨出空間Yを加熱する上記電気ヒータHからの放射熱を上記のような結露発生部に効果的に作用させるようにし、可及的に結露発生部の温度を上げることにより、蓋体Bおよびベーカリー本体A対向部の構造を複雑にすることなく、結露水の発生を防止するようにしている。
すなわち、この発明の実施の形態における上記第2の保護枠22部分には、すでに述べたように、その大径部22bの内周側に位置してパン膨出空間Yを加熱する発熱板220が設けられており、その外周面側の極めて加熱効率の高いマイカヒータよりなる電気ヒータHは、まず同発熱板220を加熱し、同発熱板220を介してパン膨出空間Yの全体を可能な限り均一に加熱するようになっている(図4参照)。
したがって、電気ヒータHをはじめ、発熱板220は、パン膨出空間Y方向だけでなく、その背面側にも熱を放射することになる。この放射熱は、本来的に無駄な熱損失であり、可能な限り、これを有効に活用することが望まれる。
そこで、この実施の形態では、図4に示すように、まず上記電気ヒータHの左右および後部の背面側外周に金属製の熱反射板よりなる第1の熱反射部材221、221、221さらに第2の保護枠大径部22bの左右および後部の背面側外周の外ケース1の側壁部1a内周面部分に熱反射シールよりなる第2の熱反射部材222の複数の熱反射部材が設けられている。
第1の熱反射部材221、221、221は、たとえば上記第2の保護枠22の上記大径部22b部分の、左右および後部3面部分に各々1枚ごとに分割した平板状態で設置されており、その上下方向の幅は、ほぼ発熱板220の上下方向の幅に対応したものとなっている。また、第2の熱反射部材222も、ほぼ発熱板220の上下方向の幅に対応した幅のものとなっている。
この結果、上記電気ヒータHの背面側および発熱板220の背面側からパン膨出空間Yと反対側の半径方向外方に放射される熱が、まず左右および後部3面の熱反射板よりなる第1の熱反射部材221、221、221によってパン膨出空間Y側(電気ヒータHの背面側および発熱板220の背面側)に反射され、パン膨出空間Yへの加熱効率が向上する一方、発熱部材である電気ヒータHが設けられている発熱板220と第1の熱反射部材221との間の空間部223の空気温度を大きく上昇させ、同空間部223に放射熱を蓄熱する。
このとき、上記第2の保護枠22の小径部(上部側側壁部)22aには、すでに上記発熱板220上端からの熱が直接伝達されていて、一定のレベルに加熱昇温されている。
したがって、同構成では、これまでの上記発熱板220上端からの熱に加えて、上記電気ヒータHおよび発熱板220からの放射熱を受けて加熱昇温された第1の熱反射部材221自体の熱が第2の保護枠22の小径部22aに伝達され、さらに、それに加えて発熱板220と第1の熱反射部材221との間の空間部223部分に蓄熱された空気の熱が第2の保護枠22の小径部22aに伝達されることになり、第2の保護枠22の小径部22a部分には、それら3つの部分からの熱が集中することになり、それらの熱の合計量が略全周方向において同第2の保護枠22の小径部22aを介して上端側肩部材1cの肩枠部51aの全体に伝達され、ベーカリー本体Aの上端部を形成している肩枠部51aの全体を有効に加熱昇温させる。そして、それにより、第2の保護枠22の小径部22aの内外周面、肩枠部51aの上下左右各外周面の温度を上げる。
一方、上記左右および後部の第1の熱反射部材221、221、221の外周側には、それぞれ所定の板厚を有する上記第2の保護枠22の大径部(下部側側壁部)22bがあり、上記第1の熱反射部材221、221、221から外方への放射熱は、同大径部22bに作用して吸収蓄熱されるとともに、同大径部22bに吸収された熱が、さらに上記小径部22aに伝達される。また、このとき、第1の熱反射部材221、221、221と大径部22bとの間の空間部224にも第1の熱反射部材221、221、221からの放射熱が蓄熱され、この熱も上記小径部22aに伝達される。
そして、同大径部22bの外周側である上記外ケース1側壁部1aの内周面には、さらにシール部材よりなる第2の熱反射部材222が貼設されている。したがって、上記第1の熱反射部材221、221、221および大径部22bから、さらに外方へ放射される放射熱は、この第2の熱反射部材222で最終的に内方に反射され、殆ど外部には放出されなくなる。また、それにより、第2の保護枠22の大径部22bおよび小径部22aと外ケース1の側壁部1aとの間の空間部225の空気温度も高くなり、同空気が対流により上方に上昇して、上記小径部22aおよび肩枠部51aを加熱する。
これらの結果、上記ベーカリー本体Aの上端側開口部を形成する肩枠部51a部分はもちろん、蓋体Bとベーカリー本体Aとの当接部において内周側近接部から外周側に漏出した蒸気が滞留しやすい隙間や空間部分の空気も有効に加熱昇温され、従来のような結露発生現象が確実に解消される。また、ベーカリー本体A上端側開口部の加熱昇温は、さらに蓋体Bの熱反射板19cの下面をも加熱昇温させるので、蓋体B下面側の結露も防止することができる。
この場合、たとえば上記第2の保護枠22側第2の加熱手段が第1の加熱手段と同様の電磁誘導式のものであるような場合には、上記第2の保護枠22下部側の大径部22b部分を全周に形成し、同大径部22b部分にワークコイルを設け、上記金属製の発熱板220を電磁誘導によって発熱させるようにすれば良い
そして、そのようにした場合にも、上記同様の熱反射部材221、222の設置による結露防止構造を採用することができる。
また、これらの場合において、さらに後述するように、電装品等冷却用のファン20からの風を上記第1の保護枠21内に導入するようにし、同冷却風によって、十分過ぎる発熱量があり、かつパンケース3の外周面から外方に無駄に放射されている渦電流による発熱量を有効に回収し、それを下方から上方に向けて高温の熱風の形で効率よく供給するようにすることもできる。
そのようにすると、同高温の熱風によって上記パンケース3上方のパン膨出空間Yの加熱効率をさらに大きく向上させることが可能となる。そして、それと同時に、同高温の熱風が蒸気を加熱乾燥させるので、外部に出てゆく蒸気自体が消失し、より結露が生じにくくなる。また、同高温の熱風が、蒸気排出通路18cだけでなく、ベーカリー本体Aの上端側開口部と蓋体Bの下面との間の隙間をも流れることから、それらの部分も有効に加熱される。したがって、さらに結露解消効果が向上する。
<第1の保護枠底部におけるパンケースの設置構造>
たとえば図3および図15に示すように、上記第1の保護枠21の底部中央には、下方側に開口突出した筒状の開口部(凹溝部)37が設けられており、該開口部37が上記外ケース1の底壁部1b上に設けられている回転機構駆動10最終段の回転軸10e部分に臨まされている。この回転軸10eには、その上端側に平面視S字形の回転係合部材38が取り付けられており、同回転係合部材38両端の係合片38a,38a部分に、パンケース3底部のパン羽根取付軸36下端側の直交方向の係合部材36aの両端側係合部が係合してパン羽根取付軸36に回転駆動機構10側からの回転力が伝達されるようになっている。
パンケース3のパン羽根取付軸36は、当該パンケース3の底部3bの中央にあって、軸受け部35aおよびシール部35bを介して上下方向に貫通しており、その上端側にパン羽根(図示省略)が着脱可能な形で取り付けられるようになっている一方、下端側に上記係合部材36aが直交状態で取り付けられている。また、パンケース3の底部裏面側には、上記第1の保護枠21底部の筒状の開口部(凹溝部)37の内側に嵌り合う筒状部(連結用スリーブ)3hが下方に突出して設けられており、パンケース3は同筒状部3hを上記第1の保護枠21の筒状の開口部(受け溝)37に嵌め合わせることによって収納セットされるようになっている。
この場合、パンケース3の筒状部3h外周面には、例えば図18、図19に示されるように、90°間隔で周方向に4つの縦長の凸条部39a、39a・・が、他方第1の保護枠21側筒状の開口部37の内周面には、例えば図15に示されるように、同じく周方向に90°間隔で上記パンケース3側筒状部3hの凸条部39a、39a・・が嵌め合わされる同じく縦長の4つの凹条部37a、37a・・が、それぞれ設けられており、それらの係合によって上記第1の保護枠21のパンケース収納室X内に収納セットされたパンケース3の下部側がパン羽根回転方向に確実に固定されるようになっている。
また、他方、上記第1の保護枠21の開口部21c部分には、そのアール面部よりも少し下方に位置して、例えば所定の高さ内方に突出するゴム製の保護枠固定部材80、80・・が設けられている。この保護枠固定部材80、80・・は、上記断面略方形の第1の保護枠21開口部の前後左右各側壁面の内側から見た面の中央部よりも左側に寄った部分(回転時の移動振幅が最も大きく、回転時に最も大きな当接方向の押圧力が作用する部分)に位置して設けられており、それによって、例えば図15の平面視状態で右方向に回転するパン羽根(パン羽根取付軸36)の回転力の影響によるパンケース3の右方向への回転力を効果的に受け止め、より確実な形で、しかも振動させることなくパンケース3本体を正確な収納位置に固定するようになっている。
したがって、これによりパンケース3は、上下両端側で確実に水平方向に固定されることになる。この結果、上述したワークコイル6とパンケース3との電磁的な誘導ギャップも常に適正な寸法に維持されるようになる。この結果、常にパンケース3の全体を均一に電磁誘導加熱することができ、より信頼性の高い電磁誘導加熱方式のホームベーカリーを提供することができることになる。
一方、このようにしてパンケース3は、水平方向に確実に固定されるが、他方収納セット時において、上方から下方に確実に収納セットされる必要があるとともに、上下方向にも、振動することなく、確実に固定されることが必要である。
そこで、この実施の形態では、例えば図15〜図17に示されるように、上記パンケース3の開口部3cにおける取手3dの取付縁部3g、3g(カバー部3f、3f)の下部側に、断面くの字形状の凸状の板バネ70aを備えた第1の係合部材70を設ける一方、上記第1の保護枠21の対応する開口部21cの上端に、上記凸状の板バネ70a(そのくの字状の突部)が弾性的に係合する断面くの字形状の凹状の板バネ40aを備えた第2の係合部材40を設けて構成されており、これら第1、第2の係合部材70、40相互の図16および図17に示すような係合により、パンケース3が第1の保護枠21内に確実に収納セットされるようにするとともに、同収納セットされた状態では、確実に上下方向の動きが規制されて確実に固定されるようにしている。
この場合、上記第1の係合部材70は、上記パンケース3の取手取付縁部3g,3gの下部側に固定され、その内側に凸状の板バネ70aを内装した板バネケース71と、該板バネケース71内に位置して、その上端側を固定部材(ビスネジ)72によって当該板バネケース71の上壁部とともに上記パンケース3の取手取付縁部3g、3gの下面側に締結固定され、当該板バネケース71の側面側の開口71aより、係合用の凸状部(くの字部)を外方に突出させた凸状の板バネ70aにより構成されている。また、第2の係合部材40は、上記第1の保護枠21の開口部21cの上端部に形成した板バネ支持部材21hと、該板バネ支持部材21h部分に支持固定された凹状の係合部(くの字部)を有する凹状の板バネ40aとからなっている。
このような構成によると、パンケース3を第1の保護枠21内のパンケース収納室Xに上方側からから挿入して収納するときに、上記パンケース3下端側の筒状部3hと第1の保護枠21底部の筒状の開口部37とが適正に嵌り合い、適切な周方向位置、適切な上下方向高さに収納セットされると、上記第1の係合部材70の凸状の板バネ70a部分が板バネケース71内への弾性変形を伴いながら、最終的に第2の係合部材40の凹状の板バネ40a部分に係合し、確実に係合した時点で「パチン」と音がして収納される。
したがって、同収納音の発生により、パンケース3の適正、かつ確実な収納セットが行なわれたことが判断される。また、同収納セット状態における上下方向の位置が固定される。
この結果、従来のホームベーカリーのように、パンケースを所定の角度、周方向反対側にひねった状態で挿入し、挿入後所定角戻してヘリコイド係合させるような複雑な収納方法をとる必要も無くなる。
さらに、この実施形態の場合、上記第1の保護枠21下部の4隅コーナー部の一角(第1の保護枠21自身から見て前部左側コーナー部/換言すると、向かって右側のコーナー部)には、その前面側から左側面側までの所定の幅に亘って、当該第1の保護枠21内に後述する冷却ファン20からの冷却空気を対角線方向(図10の矢印参照)に導入するためのグリル構造の空気導入口15が形成されている。
そして、このように構成された第1の保護枠21内に、上述のように、底部にパン羽根が取り付けられるパン羽根取付軸36を備えたパンケース3が取り出し可能な状態で収納セットされている。そして、この収納セット状態では、上述したパン羽根取付軸36の下方に設けた直交方向の係合部材36a、最終段の回転軸10eに固定されたS字形の回転係合部材38を介して後述する回転駆動機構10側からの回転駆動力が伝達され、それによってパン羽根が回転し、パンケース3内のパン生地を捏ねる作業が行なわれる。なお、パンケース3の内周面には、捏ね工程においてパン生地に係合力を作用させる凸状部3e、3eが設けられている。
上記パン羽根取付軸36に回転力を伝達する回転駆動機構10は、例えば次のように構成されている。すなわち、例えば図3および図8に示すように、駆動源であるパン羽根駆動モーターMの出力軸10aの回転を駆動側プーリー10b、ベルト10c、従動側プーリー10dを介して上述した最終段の回転軸10eに伝達し、該最終段の回転軸10eにより上記S字形の回転係合部材38を回転させる。
他方、図2、図8、図12〜図14において、符号25は、当該ホームベーカリーにおけるパン製造工程を制御する制御プログラムを実行する制御基板であり、上述した外ケース1の前面側側壁部1aと保護枠2の前面部との間の空間部に位置し、かつ保護枠2の前面側に平行に隣接して上下方向に立設された制御基板カバー27の前面側(外ケース側)に取り付けられている。この制御基板25の外ケース1側部品取り付け面上には、上記ワークコイル6の駆動を行なうIGBT(パワートランジスタ)28、同IGBT28の放熱を行うヒートシンク29等の発熱部品が設けられている。この制御基板25および制御基板カバー27は、断面略方形の形状を成す上記保護枠2の前面部側にあって、その一側端(図示左側端)が上記断面略方形の形状の保護枠2の左側面部位置となるような位置関係で設けられている。
そして、これら制御基板25および制御基板カバー27と保護枠2の下部(特に下部側第1の保護枠21の下部)の前面部および左側面部間のコーナー部に形成された上述の空気導入口15の各々に共通に対応して、たとえば図2、図3、図12〜図14に示すような位置関係で、それらの左側面側に所定の間隔を置いて、それらの略全体をカバーすることができるファン径の冷却ファン20が、その吹出し軸中心を制御基板カバー27と保護枠2前面部との間の空間部分に向けた状態で平行に設置されている。そして、例えば外ケース1の左側面側側壁部のファン吸込み軸に対応する部分に設けた外気吸入口から吸い込んだ外気をファン羽根車20bにより前方に吹き出し、上記対応する所要部分に吹き付けるようになっている。
一方、上記制御基板カバー27のファン端部側には、保護枠2側に位置して、上記冷却ファン20の空気吹き出し口20aから吹き出される冷却風を、その風向を変えて上述したワークコイル6側に供給する第1の冷却風ガイド31と、上述した第2の保護枠21の空気導入口15側に供給する第2の冷却風ガイド32とが、上下に分けて設けられている。
この結果、上記冷却ファン20の空気吹出口20aから吹出された冷却風は、その左側領域部分の風が上記制御基板25および制御基板25上のIGBT28、ヒートシンク29等を、また中央部左側領域の風が制御基板25の裏面側を、中央部領域および中央部領域から右側の広領域の風が上部側ではワークコイル6の前面側から右側面側、左側面側から背面側に、また下部側では上記第1の保護枠21の前面部側と左側面部側とのコーナー部にある第1の保護枠21内パンケース収納室Xへの空気導入口15部分に効率よく供給されるようになり、1台の冷却ファン20で上記各部に十分な風量の冷却風を供給できるようになる。
この実施形態のようなホームベーカリーの場合、電気炊飯器などと異なって、上記パンケース3内にパン生地を入れて捏ねる「捏ね工程」では、たんぱく質の良好なグルテン化を図るためにパンケース3を冷却する必要があり(グルテン化に有効な適温は10〜20℃のため)、また「焼き上げ工程」では、誘導加熱されたパンケース3の熱が外部に逃げないように、第1の保護枠内21内に導入した空気を断熱材としてパンケース3の全体を包むとともに、パンケース3外周の放射熱を吸収して昇温し高温になった空気(熱風)でパンケース3の全体およびパンケース3上方のパン膨出空間Y部分を均一に加熱することによって、「焼き工程途中」のパンケース3内はもちろん、「焼き工程最後」のパンケース3から上方に膨出したパン生地部分をも十分に加熱し、有効な焼き色をつける。その結果、熱効率が向上し、省エネ効果も得られる。
また、冷却風によって保護枠2との間の空間部分が断熱され、保護枠2自体の温度上昇も小さくて済むようになるので、ワークコイル6の耐久性も向上する。
なお、図15に示されるように、上記第1の保護枠21の底壁部21b部分には、収納されたパンケース3の温度を検出する例えばサーミスタなどからなる容器温度センサー(底センサー)49が設けられている。この容器温度センサー49により検出されたパンケース3の温度は、後述するパン焼き上げ制御の焼き上げ工程、蕨餅や葛餅等液状または半液状の粘性調理物の調理工程等におけるワークコイル6の通電率制御(温調制御)等に利用される。
<蓋体部分の構成>
次に、上述のように外ケース1の側壁部1aの上端および第2の保護枠22の小径部22aの上端を肩部材1cを介して連結一体化したベーカリー本体Aの上端側開口部には、上述のように蓋体Bが上下方向に開閉可能にヒンジ機構16を介して後端側で枢着されている。
この蓋体Bは、例えば図2、図3、図18、図19に示されるように、上部外装面を形成する合成樹脂製の外カバー18と、その内側天井面を形成する合成樹脂製の内カバー19との2つの成型部材からなり、それらの端部18a、19a,18b、19b同士を相互に接合一体化し、それらの間に所定断面積の断熱空間15を形成して構成されている。そして、その外カバー18後端部分には、例えば蒸気排出口Sが設けられており、その内側に設けられた蒸気排出通路18cを通して焼成室であるパンケース収納室Xおよびパン膨出空間Y内に生じた蒸気(およびその他のガス)が適宜排出されるようになっている。
また、上記合成樹脂製の内カバー19の下面には、例えば上述した電気ヒータHからの放射熱をパン側に反射させる金属製の熱反射板(インナーカバー)19cが略全面に亘って設けられている。そして、それにより、上記第2の保護枠22の発熱板220を介してパン膨出空間Y部分に放射される電気ヒータHからの上方への放射熱が同熱反射板19cで効果的に下方側に反射されて、上述のようにパンケース3の開口部3cから上方に膨出したパンの天面部に効果的に作用するようになっている。この結果、同パン膨出部の焼き上がりも良好になり、適度な焼き色が形成される。
ところで、すでに述べたように、蓋体Bの下面側を受ける上記肩枠部51aの上面部側は、周方向の全体に亘って所定の幅の平坦部(水平部)51bに形成されており(図3、図4、図9、図15等を参照)、該平坦部51bの内周端(内周側開口縁部)には、その全周に亘って所定の高さ上方に突出する所定の幅の環状の凸部(リブ)51fが設けられている。一方、蓋体Bの閉状態において、同環状の凸部51fの外周側に位置することになる当該蓋体Bの下面側には、同蓋体Bの閉状態において、上記環状の凸部51fの外周側に隣接する所定の高さ、所定の幅の環状の凸部(リブ)18dが全周に亘って設けられている。
そして、これら環状の凸部51fと18dは、蓋体Bが閉じられると、同一水平面状態で、相互に内周側と外周側に隣接され、相互の間の隙間を可及的に小さなものとして、パッキン等を使用することなく焼成室であるパン膨出空間Y側からの蒸気が本体外方に漏れ出すのをシールするようになっている。
他方、同状態において、それよりも半径方向外方の蓋体(外カバー)Bの外周縁部下面とベーカリー本体Aの開口部上端面との間G部分は、たとえば図4、図18、図19に示すように、比較的に大きな隙間に形成されており、上記環状の凸部51f、18d間の小さな隙間を通して漏出した僅かな蒸気が、結露を生じることなくスムーズに本体より外部に排出されるように構成されている。
この結果、パン膨出空間Y内の蒸気は、その殆どすべてが蒸気排出通路18cを介して蒸気排出口Sから外部に排出されるようになり、従来のような結露が生じにくくなる。
しかも、この発明の実施の形態の場合、先に述べたように、このような基本的な構成に加えて、さらに第1、第2の熱反射部材221、222による結露防止構造が採用されている。したがって、その結露防止性能は極めて高いものとなる。
<具材投入装置部分の構成>
さらに、この実施の形態では、上記蓋体Bにおけるパンケース3の開口部3cの上方に対応する上記熱反射板19cの内側(裏面側略中央部位置)には、たとえば図18、図19に示すように、下方側(パンケース3の開口部3c側)に2段階で開放可能となった具材収納ケース61を有する具材投入装置60が着脱可能な状態で設けられている。
上記具材収納ケース61は、そのケース本体の下面側に下方側に弧回動する底板(蓋板)62を備え、該底板62を必要に応じて水平な収納ケース閉状態から下方側に略垂直な第1のケース開状態(図18)に略90°弧回動させ、それによってケース本体の底部を開放することによって、ケース本体内に収納されている具材を下方側パンケース3内に投入し、その後所定の時間を置いて、さらに後方側パンケース3の開口部3c後方位置(図19)まで大きく回動して停止するようになっている。
この底板62の下方側への第1、第2の2段階の開放動作(弧回動動作)は、例えばケース本体一端側の底板支持軸付近に設けた係合状態コントロール用の底板開放ボタン63を、対抗する位置に設置した図示しない電磁プランジャのプランジャロッドのON、OFFによって制御するようになっている。
上記のような一旦下方側に開放されると元の閉状態に戻らない底板62を備えた具材投入装置60を用いてパンケース3内に具材を投入するようにした場合、具材投入後のパンの焼き上がりに応じたパンケース3上方へのパンの膨出量を考慮すると、上述のように底板62をパンケース3の開口部3c上方位置を避けた後方位置(図19に示す2段階目の回動位置)まで大きく弧回動させた状態で停止させなければならない。
ところが、上記ケース本体内に具材が入っている状態(底板62上に具材が乗っている状態)で、いきなり上記パンケース3の開口部3c後方の最大回動位置まで弧回動させてしまうと、ケース本体内の具材が全てパンケース3内に落とし込まれず、勢いでパンケース3外に毀れてしまう問題がある。
そこで、この実施の形態では、上述のように、一旦パンケース3の開口部3c上方位置まで弧回動させた上で止め(図18の状態)、その後、所定の時間を置きケース本体61内の具材がパンケース3内に投入されるのを待ってから、最終的に上記パンケース3の開口部3c後方の最大開放位置(図19)まで回動させて停止させるようにしている。
このような構成によると、焼き上がりに応じたパンケース3上方へのパン膨出時における底板62との干渉を回避しながら、パンケース3内への確実な具材の投入を可能とすることができ、保護枠2およびパンケース3の上部から蓋体Bにかけての高さ寸法を可能な限りコンパクトにしながら、自動的な具材投入装置60を設置することができ、また、それらの結果、膨出部に損傷がなく、見映えの良い外観のパンを焼き上げることができる。
<制御システム部分の構成>
次に、図20は、この発明の実施の形態におけるホームベーカリーのマイコン制御ユニット100を中心として構成された制御システム部分の構成を示している。この発明の実施の形態における回転加熱型調理器としてのホームベーカリーは、以上に述べたように、基本的にはパンの焼き上げ機能を中心として構成されているが、それ以外にも、例えば蕨餅、葛餅、カスタードクリーム、シュー生地、シチュー、カレーなどの粘性のある液状、半液状調理物の加熱・撹拌調理機能をも有して構成されている。そして、上記メニュー選択スイッチ11dによって選択される調理メニュー中にも、これらの調理メニューが含まれており、当該制御システムにも、各種パンの焼き上げ制御シーケンスに加えて、それらに対応した加熱・撹拌調理シーケンスが設定されている。
そして、この図20の制御システムでは、上記操作基板12に設けられたマイコン制御ユニット100を中心とし、上述したスタートスイッチ11b、取消スイッチ11c、メニュー選択スイッチ11d、焼き色スイッチ11e、ミックススイッチ11f、タイマー予約スイッチ11g、タイマー予約用の時・分スイッチ11h等の操作・設定信号、容器温度センサー49によるパンケース3の温度検出信号、庫内温度センサー85によるパン膨出空間Yの温度(およびパン膨出空間Yに膨出したパン表面温度)の検出信号、室温センサー86による室温検出信号等を入力して、選択・設定された調理メニュー(パンの種類に応じたパンの焼き上げメニュー、蕨餅、葛餅等の液状または半液状の粘性調理物の加熱・撹拌調理メニュー)、設定された焼き色(パン焼き上げメニューの場合)に応じて、何段階かに区分された複数の制御工程(焼き制御工程、加熱・撹拌制御工程)ごとに、上記第1の加熱手段であるワークコイル6および第2の加熱手段である電気ヒータHの加熱状態(ON/OFF)および加熱量(電力および通電率)、上記第1の加熱手段であるワークコイル6の加熱状態(ON/OFF)および加熱量(電力および通電率)、上記パン羽根駆動モーターMの回転速度を適切に制御するようになっている。
たとえばパン焼き上げメニューの場合には、パンの種類によって異なる複数の焼き制御工程ごとに、上記第1の加熱手段であるワークコイル6および第2の加熱手段である電気ヒータHの加熱状態(ON/OFF)および加熱量(電力および通電率)を、図22〜図25のフローチャートおよび図26〜図29のタイムチャートに示すように適切に調節する。
また、たとえば蕨餅、葛餅等の液状または半液状の粘性調理物の加熱・撹拌調理メニューの場合には、複数の加熱・撹拌制御工程ごとに、上記第1の加熱手段であるワークコイル6の加熱状態(ON/OFF)および加熱量(電力および通電率)に加えて、上記パン羽根駆動モータMの回転速度(撹拌力)を、図30のフローチャートおよび図31のタイムチャートに示すように適切に調節する。
また、マイコン制御ユニット100は、そのような制御の実行に際して、上記各種メニューの選択・設定に必要な情報、選択・設定された設定内容その他の必要な情報を、上記液晶ディスプレイ11aに表示する表示制御機能も備えている。
これらの制御内容の詳細に関し、まず基本となるパン焼き上げ制御の内容から説明する。
<パン焼き上げ制御の内容>
図21は、上記図20の制御システムを用いたパン焼き上げ制御の基本となる制御内容を示している。
すなわち、まず同制御システムの電源回路に電源が入っている電源ON状態において、メニュー選択スイッチ11dにより所望のメニュー(焼き上げるべきパンの種類)が選択設定される(ステップS1)。
この実施の形態の場合、選択できるメニューとして、たとえば次の4種類のパンが準備されている。
(1) 小麦粉製の通常食パン
(2) 米粉製の食パン
(3) ブリオッシュ
(4) フランスパン
次に、上記スタートスイッチ11aがオン操作されると(ステップS2)、まず上記ステップS1で設定されているメニューが何であるかが判定される(ステップS3)。そして、判定されたメニューに応じたパン生地作製調理が開始され、パン羽根を使用したパン生地の捏ね工程(ステップS4)が始まる。この捏ね工程では、冷却ファン20が駆動され、パンケース3が冷却される(ステップS5)。
そして、同捏ね工程における所定の作業時間(蛋白質のグルテン化に必要な時間)が経過すると、同捏ね工程が完了したか否かが判定される(ステップS6)。判定の結果、YESと判定され、パン生地の捏ね工程が完了すると、いったん冷却ファン20の駆動を停止し(ステップS7)、次に発酵工程に進んで所定時間イースト菌を発酵させる(ステップS8)。この発酵工程で、イースト菌が糖類を分解し、エタノールおよび二酸化炭素を発生し、二酸化炭素がパン生地を膨張させる。
そして、所定時間が経過すると、同発酵工程が完了したか否かを判定し(ステップS9)、YESと判定されて発酵工程が完了したことが確認されると、再び冷却ファン20を駆動し(ステップS10)、いよいよ焼き上げ工程の制御に入る(ステップS11)。
このステップS12の焼き上げ工程の制御では、まず上記ユーザーにより選択設定され、ステップS3で判定されたメニュー、すなわち焼き上げるべきパンの種類(1)〜(4)に応じて、経時的にタクト時間を異にして複数の工程に区分された各焼き工程ごとに上述した第1の加熱手段であるワークコイル6、および第2の加熱手段である電気ヒータHの各加熱量(電力および通電率)を個別に設定し、パンケース3およびパン膨出空間(パン上部)Yを所定の目標温度に温調制御するように構成されている。
このステップS12のメニューに応じた加熱量制御は、たとえば図22〜図25の制御フロー、図26〜図29のタイムチャートに示すようにしてなされる。
(1)通常の食パンの焼き上げ制御
すなわち、まず図22は、上記判定されたメニューが上記(1)の通常の食パンである場合の焼き上げ制御フローであり、同制御フローに対応するタイムチャートが図26である。
この通常のパンの焼き上げ制御は、たとえば図26のタイムチャートに示すように、当該焼き上げ工程の全体を、制御タクト時間の異なる第1〜第5の5つの焼き工程に区分し、それぞれの工程に応じて、ワークコイル6および電気ヒータH各々の定格電力の下における通電率を適切に制御するようにしている。
すなわち、まず焼き上げ工程最初の第1の焼き工程(焼き工程1)では、ワークコイル6の通電率を12/16の高レベルに設定し(ステップS1)、パンケース3の全体を短い時間(10分前後)、しっかりと十分な加熱量で加熱し(124℃程度まで)、パンケース3内のパン生地の奥まで確実に熱を通す。これにより、パンケース3内のパン生地中の二酸化炭素がガスとなって徐々に膨張し、パン全体の膨張が始まる。この状態では、まだパンケース3上方へのパンの膨出は生じていないが、続くパンの膨出に備えて電気ヒータHの通電率を8/16程度の低レベルに設定して、パンケース3上方のパン膨出空間Yの空気温度を所定温度レベル(100℃程度)まで昇温させておく(ステップS2)。
そして、予め設定された同第1の焼き工程(焼き工程1)の第1の制御タクト時間(10分)の経過を判定し(ステップS3)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第2の焼き工程(焼き工程2)に進む。
第2の焼き工程(焼き工程2)に入ると、次第にパン全体の膨出が大きくなり、やがてパンケース3の上方にも膨らんでくる。そこで、ワークコイル6の方の通電率は、それ自体比較的低い通電率でも十分な加熱量があることから、同じ12/16程度の通電率にとどめながらも(ステップS4)、電気ヒータHの方の通電率を大きく14/16にアップし(ステップS5)、膨出してくるパン上部に作用する加熱量を増大させる(サーミスタ85の検出温度が128℃程度になるように)。これにより、パン上部の有効な焼き上げを図る。これらの結果、この第2の焼き工程(焼き工程2)の最後では、たとえばパンケース3の温度が130℃程度、パンケース3上方のパン膨出空間Yの温度が128℃程度になり、上記の焼き上げ作用が有効に実現される。
そして、予め設定された同第2の焼き工程の第2の制御タクト時間(5分)の経過を判定し(ステップS6)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第3の焼き工程(焼き工程3)に進む。
第3の焼き工程(焼き工程3)に入る頃になると、パンの全体が大きく膨出し、パンケース3上方のパン膨出空間Y部分にも大きく膨らんでくる。そして、パンケース3部分は、上記のように130℃程度と十分に加熱された状態にあり、パンケース3内のパンは略焼き上がっている。
したがって、パンケース3自体の余熱もあり、ワークコイル6の方の通電率は、それよりも低い通電率でも十分な加熱量を得ることができる。他方、パンケース3上方のパン膨出空間Yの温度が128℃程度では、膨出したパン上部の焼き上げ、天面部に焼き色つけるには不十分である。
そこで、同工程では、ワークコイル6の通電率を10/16に少し低下させ、かつ温調目標温度を130℃から126℃に下げて、焦げの発生を回避する一方(ステップS7)、他方、電気ヒータHの方の通電率を16/16のフルパワー状態にアップし(ステップS8)、パン上部への加熱量を大きく増大させる。それにより、膨出したパンの上部を十分に焼き上げる。
これらの結果、図26に示すように、パンケース3の温度が126℃程度に低下し、焦げの発生が回避される一方、パン膨出空間Yの温度は、最終的に162℃程度まで上昇し、パンの上部を効果的に焼き上げる。この結果、さらにパン上部内の二酸化炭素ガスが膨張し、パン上部が一段と大きく膨張し、ふっくらとしたパンが形成される。
そして、予め設定された同第3の焼き工程(焼き工程3)の第3の制御タクト時間(10分)の経過を判定し(ステップS9)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第4の焼き工程(焼き工程4)に進む。
第4の焼き工程(焼き工程4)に入ると、十分にパン全体が膨出し、パンケース3上方へのパンの膨出もほぼ終了する。そこで、ワークコイル6の通電率は、そのまま10/16程度の中レベルの通電率に維持するが(ステップS10)、他方温調目標温度を126℃から123℃に下げることにより焦げの発生を防止し、電気ヒータHの方の通電率は16/16のフルパワー状態での加熱を継続することによって(ステップS11)、パン上部全体を有効な焼き上げを継続する。この結果、パンケース3の上方に膨出したパン上部の全体にこんがりと薄い焼き色を形成することができる。
その後、予め設定された同第4の焼き工程(焼き工程4)の第4の制御タクト時間(5分)の経過を判定し(ステップS12)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第5の焼き工程(焼き工程5)に進む。
第5の焼き工程では、パンケース3内のパンはもちろん、パンケース上方のパン膨出部も十分に焼き上げられた状態となっている。そこで、この状態では、パンケース3側ワークコイル6の通電率を2/16程度に大きく落す(ステップS13)。それによって、確実に焦げの発生を防止する。他方、電気ヒータHの通電率は16/16のフルパワー加熱を継続し(ステップS14)、特にパン上部天面部に濃い焼き色をつける。この第5の焼き工程(焼き工程5)の制御タクト時間(3分)は、最後の焼き工程の最も短い時間に設定されている。
これにより、パンケース3内のパンを焦がすことなく、パン全体の効果的な膨出を図ることができ、しかもパンケース3から膨出したパンの上部天面にこんがりと濃い焼き色がつき、その側面部に効果的な窯伸び後がついた食パン等小麦粉製の通常のパンが良好に焼き上げられる。
その後、予め設定された同第5の焼き工程(焼き工程5)の第5の制御タクト時間(3分)の経過を判定し(ステップS15)、同時間が過ぎてYESと判定されると、上述した図21の制御フローにおける最終ステップS13に進んで、上述したワークコイル6、電気ヒータH、冷却ファン20をそれぞれONにしたまま保温制御を実行する。
なお、上記第5の焼き工程におけるステップS13の処理、ワークコイル通電率の低減は、低減でなく停止とすることも可能である。
(2)米粉製食パンの焼き上げ制御
次に、図23は、上記図21のステップS11で判定されたメニューが上記(2)の米粉製食パンである場合の焼き上げ制御フローであり、同制御フローに対応するタイムチャートが図27である。
この米粉製食パンの焼き上げ制御は、たとえば図27のタイムチャートに示すように、当該焼き上げ工程の全体を、制御タクト時間の異なる第1〜第5の5つの焼き工程に区分し、それぞれの工程に応じて、ワークコイル6および電気ヒータH各々の定格電力の下における通電率を適切に制御するようにしている。
すなわち、まず焼き上げ工程最初の第1の焼き工程(焼き工程1)では、ワークコイル6の通電率を12/16の高レベルに設定し(ステップS1)、パンケース3の全体を短い時間(10分前後)、しっかりと十分な加熱量で加熱し(124℃程度まで)、パンケース3内のパン生地の奥まで確実に熱を通す。これにより、パンケース3内のパン生地中の二酸化炭素がガスとなって徐々に膨張し、パン全体の膨張が始まる。この状態では、まだパンケース3上方へのパンの膨出は生じていないが、続くパンの膨出に備えて電気ヒータHの通電率を12/16程度の中レベルに設定して、パンケース3上方のパン膨出空間Yの空気温度を所定温度レベル(110℃程度)まで昇温させておく(ステップS2)。
そして、予め設定された同第1の焼き工程(焼き工程1)の第1の制御タクト時間(10分)の経過を判定し(ステップS3)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第2の焼き工程(焼き工程2)に進む。
第2の焼き工程(焼き工程2)に入ると、次第にパン全体の膨出量が大きくなり、やがてパンケース3の上方にも膨らんでくる。そこで、ワークコイル6の方の通電率は、同じ12/16程度の高通電率に維持しながら(ステップS4)、電気ヒータHの方の通電率を大きく15/16にアップし(ステップS5)、膨出してくるパン上部に作用する加熱量を増大させる(サーミスタ85の検出温度が110℃前後になるように)。これにより、パン上部の有効な焼き上げを図る。
これらの結果、この第2の焼き工程(焼き工程2)では、たとえばパンケース3の温度が126℃程度、パンケース3上方のパン膨出空間Yの温度が110℃から132℃程度に上昇し、上記の焼き上げ作用が有効に実現される。
そして、予め設定された同第2の焼き工程の第2の制御タクト時間(5分)の経過を判定し(ステップS6)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第3の焼き工程(焼き工程3)に進む。
第3の焼き工程(焼き工程3)に入る頃になると、パンの全体が大きく膨出し、パンケース3上方のパン膨出空間Y部分にも大きく膨らんでくる。そして、パンケース3部分は、上記のように126℃前後と十分に加熱された状態にある。
したがって、パンケース3側ワークコイル6の通電率は、そのままでも十分な加熱量を得ることができる。他方、パンケース3上方のパン膨出空間Yの温度が132℃程度では、膨出したパンの上部を十分に焼き上げ、さらに天面部に焼き色つけるには不十分である。
そこで、同工程では、ワークコイル6の通電率を12/16の中レベルに維持する一方、温調目標温度を126℃のままとして焦げの発生を回避する一方(ステップS7)、他方、電気ヒータHの方の通電率を15/16の高加熱状態に維持することによって(ステップS8)、膨出したパンの上部を十分に焼き上げる。
これらの結果、図27に示すように、パンケース3の温度が焦げを生じない126℃程度に維持され、焦げの発生が回避される一方、パン膨出空間Yの温度は、最終的に158℃程度まで上昇し、パンの上部を効果的に焼き上げる。この結果、さらにパン上部内の二酸化炭素ガスが膨張し、パン上部が一段と大きく膨張し、ふっくらとしたパンが形成される。
そして、予め設定された同第3の焼き工程(焼き工程3)の第3の制御タクト時間(7分)の経過を判定し(ステップS9)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第4の焼き工程(焼き工程4)に進む。
第4の焼き工程(焼き工程4)に入ると、十分にパンの全体が膨出し、パンケース3上方へのパンの膨出もほぼ終了する。そこで、ワークコイル6の方の通電率を、より焦げの発生しにくい10/16程度の通電率に下げる一方(ステップS10)、温調目標温度を126℃から120℃に低下させる。他方、電気ヒータHの方の通電率は15/16の高加熱状態に維持して加熱を継続することによって(ステップS11)、パン上部全体の有効な焼き上げを継続する。この結果、パンケース3の上方に膨出したパン上部の全体にこんがりと薄い焼き色を形成することができる。
その後、予め設定された同第4の焼き工程(焼き工程4)の第4の制御タクト時間(6分)の経過を判定し(ステップS12)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第5の焼き工程(焼き工程5)に進む。
第5の焼き工程では、パンケース3内のパンはもちろん、パンケース上方のパン膨出部も十分に焼き上げられた状態となっている。そこで、この状態では、パンケース3側ワークコイル6の通電率を8/16程度の中レベルに落す(ステップS13)。米粉製のパンは、やわらかく腰折れし易い特徴がある。したがって、焦げの発生を防止しながらも、電力を落としすぎると、腰折れが発生してしまうので、少なくとも8/16程度の通電率には維持する。他方、電気ヒータHの通電率は15/16の高加熱状態を継続し(ステップS14)、特にパン上部の天面部に濃い焼き色をつける。この第5の焼き工程(焼き工程5)の制御タクト時間(3分)は、最後の焼き工程の最も短い時間に設定されている。
これにより、やわらかく腰折れし易い米粉製の食パンの場合にも、パンケース3内のパンを焦がすことなく、パン全体の効果的な膨出を図ることができ、しかもパンケース3から膨出したパンの上部天面にこんがりと濃い焼き色がつき、その側面部に効果的な釜伸び後がついた食パンが良好に焼き上げられる。
その後、予め設定された同第5の焼き工程(焼き工程5)の第5の制御タクト時間(3分)の経過を判定し(ステップS15)、同時間が過ぎてYESと判定されると、上述した図21の制御フローにおけるステップS13に進んで、保温制御を行なう。
(3)ブリオッシュの焼き上げ制御
次に、図24は、上記図21のステップS11で判定されたメニューが上記(3)のブリオッシュである場合の焼き上げ制御フローであり、同制御フローに対応するタイムチャートが図28である。
このブリオッシュの焼き上げ制御は、たとえば図28のタイムチャートに示すように、当該焼き上げ工程の全体を、制御タクト時間の異なる第1〜第5の5つの焼き工程に区分し、それぞれの工程に応じて、ワークコイル6および電気ヒータH各々の定格電力の下における通電率を適切に制御するようにしている。
すなわち、まず焼き上げ工程最初の第1の焼き工程(焼き工程1)では、ワークコイル6の通電率を9/16の中レベルに設定し(ステップS1)、パンケース3の全体を、じっくりと緩やかな加熱量で加熱し(115℃程度まで)、バターや卵、砂糖の量が多くて、最も焦げやすいブリオッシュ特有のパン生地の奥まで熱を通す。これにより、パンケース3内のパン生地中の二酸化炭素がガスとなって徐々に膨張し、パン全体の膨張が始まる。この状態では、まだパンケース3上方へのパンの膨出は生じていないが、続くパンの膨出に備えて電気ヒータHの通電率を8/16程度の低レベルに設定して、パンケース3上方のパン膨出空間Yの空気温度を所定温度レベル(100℃程度)まで昇温させておく(ステップS2)。
そして、予め設定された同第1の焼き工程(焼き工程1)の第1の制御タクト時間(10分)の経過を判定し(ステップS3)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第2の焼き工程(焼き工程2)に進む。
第2の焼き工程(焼き工程2)に入ると、次第にパン全体の膨出量が大きくなり、やがてパンケース3の上方にも膨らんでくる。そこで、ワークコイル6の方の通電率は、同じ10/16程度に少しアップする一方(ステップS4)、電気ヒータHの方の通電率を大きく14/16の中レベルに大きくアップし(ステップS5)、膨出してくるパン上部に作用する加熱量を増大させる(サーミスタ85の検出温度が126℃程度になるように)。これにより、パン上部の有効な焼き上げを図る。これらの結果、この第2の焼き工程(焼き工程2)の最後では、たとえばパンケース3の温度が122℃程度、パンケース3上方のパン膨出空間Yの温度が126℃程度になり、上記の焼き上げ作用が有効に実現される。
そして、予め設定された同第2の焼き工程の第2の制御タクト時間(5分)の経過を判定し(ステップS6)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第3の焼き工程(焼き工程3)に進む。
第3の焼き工程(焼き工程3)に入る頃になると、パンの全体が大きく膨出し、パンケース3上方のパン膨出空間Y部分にも大きく膨らんでくる。そして、パンケース3部分は、上記のように126℃前後と十分に加熱された状態にある。
したがって、パンケース3自体の余熱もあり、ワークコイル6の方の通電率は、そのままの通電率でも十分な加熱量を得ることができる。他方、パンケース3上方のパン膨出空間Yの温度が126℃程度では、膨出したパン上部の焼き上げ、天面部に焼き色つけるには不十分である。
そこで、同工程では、ワークコイル6の通電率を10/16に落として、焦げの発生を回避する一方(ステップS7)、他方、電気ヒータHの方の通電率を16/16の高加熱状態(フルパワー状態)にアップし(ステップS8)、膨出したパンの上部を十分に焼き上げる。
これらの結果、図28に示すように、パンケース3の温度は122℃程度に維持され、焦げの発生が回避される一方、パン膨出空間Yの温度は、最終的に160℃前後まで大きく上昇し、パンの上部を効果的に焼き上げる。この結果、さらにパン上部内の二酸化炭素ガスが膨張し、パン上部が一段と大きく膨張し、ふっくらとしたパンが形成される。
そして、予め設定された同第3の焼き工程(焼き工程3)の第3の制御タクト時間(10分)の経過を判定し(ステップS9)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第4の焼き工程(焼き工程4)に進む。
第4の焼き工程(焼き工程4)に入ると、十分にパン全体が膨出し、パンケース3上方へのパンの膨出もほぼ終了する。そこで、ワークコイル6の方の通電率は、そのまま焦げの発生しない10/16程度の通電率に維持しながら(ステップS10)、電気ヒータHの方の通電率は16/16の高加熱状態に維持して加熱を継続することによって(ステップS11)、パン上部全体の有効な焼き上げを継続する。この結果、パンケース3の上方に膨出したパン上部の全体にこんがりと薄い焼き色を形成することができる。
その後、予め設定された同第4の焼き工程(焼き工程4)の第4の制御タクト時間(10分)の経過を判定し(ステップS12)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第5の焼き工程(焼き工程5)に進む。
第5の焼き工程では、パンケース3内のパンはもちろん、パンケース上方のパン膨出部も十分に焼き上げられた状態となっている。そこで、この状態では、パンケース3側ワークコイル6の通電率を1.5/16程度に大きく落す(ステップS13)。それによって、砂糖分が多く、食パンなどに比べて焦げやすい、ブリオッシュの場合の焦げの発生を確実に防止する。他方、電気ヒータHの通電率は16/16の高加熱状態を継続し(ステップS14)、特にパン上部天面部に濃い焼き色をつける。この第5の焼き工程(焼き工程5)の制御タクト時間(3分)は、最後の焼き工程の最も短い時間に設定されている。
これにより、焦げが生じ易いブリオッシュの場合にも、パンケース3内のパンを焦がすことなく、パン全体の効果的な膨出を図ることができ、しかもパンケース3から膨出したパンの上部天面にこんがりと濃い焼き色がつき、その側面部に効果的な釜伸び後がついた食パンが良好に焼き上げられる。
その後、予め設定された同第5の焼き工程(焼き工程5)の第5の制御タクト時間(3分)の経過を判定し(ステップS15)、同時間が過ぎてYESと判定されると、上述した図21の制御フローにおける最終ステップS13に進んで、保温制御を行なう。
なお、上記第5の焼き工程におけるステップS13の処理、ワークコイル通電率の低減は、低減でなく停止とすることも可能である。
(4)フランスパンの焼き上げ制御
最後に、図25は、上記判定されたメニューが上記(4)のフランスパンである場合の焼き上げ制御フローであり、同制御フローに対応するタイムチャートが図29である。
このフランスパンの焼き上げ制御は、たとえば図29のタイムチャートに示すように、当該焼き上げ工程の全体を、制御タクト時間の異なる第1〜第4の4つの焼き工程に区分し、それぞれの工程に応じて、ワークコイル6および電気ヒータH各々の定格電力の下における通電率を適切に制御するようにしている。
すなわち、まず焼き上げ工程最初の第1の焼き工程(焼き工程1)では、ワークコイル6の通電率を12/16の高レベルに設定し(ステップS1)、パンケース3の全体を、やや長い時間(15分前後)をかけて、じっくりと十分な加熱量で加熱し(150℃程度まで)、パンケース3内のパン生地の奥まで確実に熱を通す。他方、電気ヒータHの通電率を10/16程度の中レベルに設定して、パンケース3上方のパン膨出空間Yの空気温度を所定温度レベル(129℃程度)まで昇温させる(ステップS2)。
そして、予め設定された同第1の焼き工程(焼き工程1)の第1の制御タクト時間(15分)の経過を判定し(ステップS3)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第2の焼き工程(焼き工程2)に進む。
第2の焼き工程(焼き工程2)に入ると、やがてパンケース3内のパンが或る程度膨らんでくる。そこで、ワークコイル6の方の通電率は、そのままの通電率でも十分な加熱量があることから、同じ12/16程度の通電率にとどめながらも(ステップS4)、少し低い目標温度(146℃)で温調をかけ、少しパンケース3の温度を下げる。他方、電気ヒータHの方の通電率を14/16に大きくアップし(ステップS5)、パンケース3内のパンの上部に作用する加熱量を増大させる(サーミスタ85の検出温度が150℃程度になるように)。
これにより、パン上部の有効な焼き上げを図る。これらの結果、この第2の焼き工程(焼き工程2)の最後では、たとえばパンケース3の温度が145℃程度、パンケース3上方のパン膨出空間Yの温度は150℃程度になり、上記の焼き上げ作用が有効に実現される。
そして、予め設定された同第2の焼き工程の第2の制御タクト時間(5分)の経過を判定し(ステップS6)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第3の焼き工程(焼き工程3)に進む。
第3の焼き工程(焼き工程3)に入る頃になると、パンケース3部分は、上記のように145℃程度と十分に加熱された状態にあり、パンケース3内のパンは略焼き上がっている。
したがって、パンケース3自体の余熱もあり、ワークコイル6の方の通電率は、そのままの通電率でも十分な加熱量を得ることができる。他方、パンケース3上方のパン膨出空間Yの温度が150℃程度では、フランスパンにふさわしい上部の有効な焼き上げ、外周面部にこんがりとした焼き色つけるには不十分である。
そこで、同工程では、ワークコイル6の通電率をそのままの10/16に維持して、ある程度の加熱量を得ながら、焦げの発生を回避する一方(ステップS7)、他方、電気ヒータHの方の通電率を16/16のフルパワー状態に維持し(ステップS8)、パンの上部を十分に焼き上げる。
これらの結果、図29に示すように、パンケース3の温度が135℃程度に低下し、焦げの発生が回避される一方、パン膨出空間Yの温度は、最終的に164℃程度まで上昇し、パンの上部をも十分に焼き上げる。
そして、予め設定された同第3の焼き工程(焼き工程3)の第3の制御タクト時間(5分)の経過を判定し(ステップS9)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第4の焼き工程(焼き工程4)に進む。
第4の焼き工程(焼き工程4)に入ると、ワークコイル6の方の通電率は、そのまま焦げの発生しない10/16程度の通電率に維持しながら(ステップS10)、電気ヒータHの方の通電率16/16のフルパワー状態での加熱を継続することによって(ステップS11)、パン全体の有効な焼き上げを継続する。この結果、パンケース3内のパンに加え、パンケース3内のパンの上部をもカリッとした固さに焼き上げ、かつフランスパン特有のこんがりとした焼き色を形成することができる。
その後、予め設定された同第4の焼き工程(焼き工程4)の第4の制御タクト時間(8分)の経過を判定し(ステップS12)、同時間が過ぎてYESと判定されると、上述した図21の制御フローにおける最終ステップS13に進んで、保温制御を行なう。
以上のように、この発明の実施の形態のパン焼き上げ制御では、各種のメニューに共通するパンの焼き上げとして、パンケース3側ワークコイル6による加熱は、焼き上げ工程の前半においては、大きな加熱量でしっかりと加熱し、後半では、緩やかにする。他方、パン膨出空間Y側電気ヒータHによる加熱は、焼き上げ工程の前半では緩やかに加熱することにより焦げを抑え、後半に行くにしたがって強く加熱するようにし、効果的に天面部に焦げ色を付けるようになっている。
このように焼き上げ工程の前半において、下部からしっかり加熱すると、良く釜伸びした見映えの良いパンになり、後半において上からしっかり加熱することで、天面部に程よい焦げ色をつけることができる。
また、この場合、焼き上げ工程では、上述のように、常時冷却ファン20が駆動されており、パンケース3からの放射熱が熱風の形で有効に回収され、上方側パン膨出空間Yに供給されているので、特に電気ヒータHの加熱量が増大される焼き上げ工程後半において、その回収熱がパン上部側に有効に作用して加熱効率が向上する。
これにより、より効果的にパンケース3内のパンの焦げ付きの発生を防止しながら、程よいパン上部天面の焼き色を形成することができる。
<蕨餅、葛餅等の液状または半液状粘性調理物の加熱・撹拌制御>
さらに、図30は、上記図20の制御システムを用いてなされる蕨餅、葛餅等の液状または半液状粘性調理物の加熱・撹拌調理制御の制御内容を示している。
すなわち、まず同制御では、当該ホームベーカリーの電源回路に電源が入っている電源ON状態において、メニュー選択スイッチ11dにより所望のメニューが選択設定される(ステップS1)と、続くステップS2で、同設定されたメニューが本制御の対象である蕨餅、葛餅等の液状または半液状の粘性調理物の調理であるか否かを判定する。
そして、その結果、判定されたメニューが、蕨餅、葛餅等の液状または半液状の粘性調理物の調理ではなく、パンの焼き上げ制御であったNOの場合には、ステップS20の上述したパンの焼き上げ制御フローに進む。他方、選択・設定されたメニューが、蕨餅、葛餅等の液状または半液状の粘性調理物であったYESの時は、ワークコイル6およびパン羽根駆動モーターMを駆動するステップS4〜S17の加熱・撹拌調理制御に進む。
この加熱・撹拌調理制御では、当該加熱・撹拌制御工程の全体を、たとえば図31のタイムチャートに示すように、制御タクト時間の異なる第1〜第5の5つの加熱・撹拌工程に区分し、それぞれの工程に応じて、ワークコイル6の定格電力の下における通電率、通電時間を適切に制御し(以下では、説明を簡略化するため、通電率で代表させて説明する)、当該調理物を所定の目標温度に加熱すると共に、パン羽根駆動モーターMの回転速度(撹拌力)を調理物の調理状態に応じた適切な攪拌状態で駆動するようにしている。
すなわち、まず制御開始後、第1の加熱・撹拌工程(工程1)では、ワークコイル6の通電率を12/16の高レベルに設定し、水に溶かした液状状態の蕨餅、葛餅等の原料調理物が収容されている調理容器であるパンケース3の全体を大きな加熱量で速やかに熱し(115℃程度まで)、パンケース3内の粘度の低い液状状態の原料調理物を、外側から、できるだけ素早く糊化させるようにする(ステップS4)。
このように、蕨餅、葛餅等の液状または半液状の粘性調理物を加熱調理する場合、最初は原料調理物の粘度が低く、さらっとしているので、大きな加熱量で速やかに100℃を超える状態まで加熱し、原料の褐変(変色)を防止すると共に、水とでんぷんの分離、沈殿を防止する。また、加熱時間を短くすることによって、調理時間の短縮を図る。
この実施の形態の場合、特にパンケース加熱手段として、ワークコイル6による電磁誘導加熱手段を使用しているので、加熱開始後、パンケース温度が一気に目標温度まで立ち上がり、非常に加熱効率が高く、またパンケース全体が均一に発熱するので、原料も全体が均一に加熱され、糊化も全体に亘って均一に促進される。
一方、この状態では、上述のように原料調理物の粘度が低いために、余り速くパン羽根を回転させて撹拌すると、原料調理物がパンケース外に飛び散ったり、液面位を超えてパンケース内周面に広く付着されてしまう。
そこで、パン羽根駆動モーターMの回転駆動速度は、原料でんぷん等が沈殿しない範囲の低速N1に設定して、原料調理物の液面が波立たない程度の駆動状態(低速での連続運転または低速での間欠運転のいずれでも良い)で、ゆっくりと静かに撹拌する(ステップS5)。
そして、その後、同第1の加熱・撹拌工程(工程1)の第1の制御タクト時間の経過を判定し(ステップS6)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第2の加熱・撹拌工程(工程2)に進む。
第2の加熱・撹拌工程(工程2)に入ると、次第に周囲から糊化が進行して、粘度やとろみが強くなってくる。そこで、ワークコイル6の通電率を僅かに小さい11/16程度の通電率に下げて、パンケース温度を115度℃程度の温度に維持して加熱を継続する(ステップS7)。
他方、原料調理物の粘性の高まりに応じて、パン羽根駆動モーターMの回転駆動速度を少しだけ速い(撹拌力の強い)低速N2で駆動する(ステップS8)。
その後、同第2の加熱・撹拌工程の第2の制御タクト時間の経過を判定し(ステップS9)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第3の加熱・撹拌工程(工程3)に進む。
第3の加熱・撹拌工程(工程3)に入る頃になると、さらに原料調理物の糊化が進行し、パンケース内周面部分では、こびり付きも生じてくる。そこで、ワークコイル6の通電率を、さらに10/16に少し下げ、パンケース温度も110℃程度に下げる。そして、これによってパンケース周辺のこびり付きに対応しながら、有効な加熱を継続し、周辺部側から中央部側への糊化を進行させる(ステップS10)。
他方、この状態では、外周側部分の粘度が相当に高くなってきて、内側と外側の粘度差が生じると共に、外周側でのこびり付きの恐れが大きくなる。そこで、上記のように、ワークコイル6の加熱量を小さくして焦げ付きを回避することに合わせて、パン羽根駆動モーターMの回転駆動速度を中速N3に高め、原料調理物の内側部分と外側部分を良く混ぜ合わせ、全体の粘度が均一になるようにする(ステップS11)。
その後、同第3の加熱・撹拌工程の第3の制御タクト時間の経過を判定し(ステップS12)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第4の加熱・撹拌工程(工程4)に進む。
この第4の加熱・撹拌工程(工程4)に入る頃になると、さらに原料調理物の糊化が進行し、パンケース内周面部分では、一層こびり付きが生じやすくなると共に、ワークコイル6の加熱効率の高さに起因する焦げ付きの恐れも生じるようになる。そこで、ワークコイル6の通電率を、さらに9/16に小さく下げ、パンケース温度を103℃程度に下げる。そして、これによって周辺のこびり付き、焦げ付きに対応しながら、有効な加熱を継続し、さらに中央部側の糊化を進行させる(ステップS13)。
他方、この状態では、外周側部分の粘度が相当に高くなってきて、内側と外側部分での粘度差が生じると共に、外周側での焦げ付きの恐れが大きくなる。そこで、上記のように、ワークコイル6の加熱量を9/16と小さくして焦げ付きを回避することに合わせて、パン羽根駆動モーターMの回転駆動速度を高速N4に高め、原料調理物の内側部分と外側部分を一塊にして効率良く混ぜ合わせて、全体の粘度が均一になるようにする(ステップS14)。
その後、同第4の加熱・撹拌工程の第4の制御タクト時間の経過を判定し(ステップS15)、同時間が過ぎてYESと判定されると、次に第5の加熱・撹拌工程(工程5)に進む。
この第5の加熱・撹拌工程(工程5)に入る頃になると、原料調理物全体の十分な糊化が進行し、そのままではパンケース内周面部分で焦げ付きが生じるようになる。そこで、ワークコイル6の通電率を、十分に小さい4/16に下げ、パンケース温度を90℃程度まで大きく下げる。そして、それによって、パンケース周辺の焦げ付きを確実に回避しながら、余熱を利用した仕上げ状態の加熱を継続し、調理物全体を均一に仕上げる(ステップS16)。
他方、この状態では、原料調理物全体の粘度が十分に高くなってくる一方、内側と外側部分での粘度差がさらに大きくなり、そのままでは上述のように外周側部分の焦げ付きの恐れも大きくなる。そこで、上記のように、ワークコイル6の加熱量を4/16と十分に小さくして焦げ付きを回避することに合わせて、さらにパン羽根駆動モーターMの回転駆動速度を、それまでの高速N4よりも速い高速N5にアップし、より強い攪拌力で、高粘度の原料調理物の内側部分と外側部分を一塊に一体化して効率よく混ぜ合わせて、全体の粘度が均一になるようにする(ステップS17)。
そして、その後、当該第5の加熱・撹拌工程(工程5)の第5の制御タクト時間の経過を判定し(ステップS18)、同時間が過ぎてYESと判定されると、以上の加熱・撹拌制御を終了し、保温工程に進む(ステップS19)。
以上のように、この実施の形態の蕨餅、葛餅等の液状または半液状粘性調理物の加熱・撹拌制御では、その調理工程が進行するにつれて、ワークコイル等加熱手段の加熱量を小さくすると共に、パン羽根等調理物回転手段の回転速度を高くするように構成されている。
調理工程の最初では、液体状の調理物の粘度が低いので、加熱手段の加熱量を大きくして、できるだけ速く粘度が高くなるように加熱する。
その結果、調理時間が短縮され、調理物の変色(褐変)を防ぐことができる。また、蕨餅や葛餅の場合の原料(でんぷん)の沈殿量を少なくすることができる。そして、それと同時に調理物を回転させる回転手段の回転数を低く保ち、調理物のパンケース等調理容器外への飛び散りを防止する。
他方、調理工程が進行すると、最初は粘度が低かった液体状の調理物の粘度も高まり、調理容器内周面側から固まり始め、そのまま同じ加熱量での加熱を続けると、こびりつきや焦げ付きを生じる。そこで、調理工程が進行すると、それに従って、加熱手段の加熱量を小さくする。
また、それと同時に、調理物回転手段の回転数を高くする。その結果、調理物回転手段の調理物撹拌機能も向上し、調理容器内周面側から固まり始めた調理物の、こびりつきや焦げ付きが、より効果的に回避され、良好な仕上がり状態を実現することができる。
なお、以上の調理シーケンスは、たとえば蕨餅、葛餅、その他カスタードクリーム、シュー生地、ビーフシチュー、カレー、みたらし団子のたれなど、液状または半液状の粘性のある調理物に共通する基本的な調理制御シーケンスを説明したものであり、実際の調理シーケンスは、それら個別のメニューに応じて適切にアレンジされることは言うまでもない。
また、調理の進行に応じた粘度やとろみの高まりは、たとえばパン羽根駆動モーターMの負荷量の増大によって検出可能であるから、それを検出し、同検出値をパラメータとして、加熱量やパン羽根駆動モーターMの回転数制御に反映させるようにしても良い。そのようにすると、より高精度な回転加熱調理制御が実現される。
さらに、以上の制御は、すでに述べた調理容器に加熱手段を付加したフードプロセッサにも全く同様に適用することができる。