JP2015074700A - カチオン化セルロース繊維の製造方法 - Google Patents

カチオン化セルロース繊維の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】微細セルロース繊維を高い収率で製造できる、カチオン化セルロース繊維の製造方法を提供すること。
【解決手段】セルロース繊維とカチオン化剤を反応させることによりカチオン化セルロース繊維を製造する方法において、30℃未満の条件下、セルロース繊維にカチオン化剤を浸透させる第一の工程を経た後、30℃以上の条件下、セルロース繊維とカチオン化剤を反応させる第二の工程を有する、カチオン化セルロース繊維の製造方法、及び該カチオン化セルロース繊維の製造方法により得られたカチオン化セルロース繊維に、解繊処理を施す、微細セルロース繊維の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明はカチオン基が導入されたカチオン化セルロース繊維の製造方法に関するものである。
近年、工業製品、構造材料、化粧品、食品、ガスバリア材料等において、生分解性があり、微細なセルロース繊維の分散液を製造することが検討されている。セルロースはその伸びきり鎖結晶が故に、低線膨張係数と高弾性率と高強度とを発現することが知られている。また、微細化することにより、樹脂と複合化して複合材料とした際、高透明性を示す材料としても注目されている。このような高透明性、低線膨張係数を有するセルロース繊維の複合材料(繊維樹脂複合材料)の用途の例としては、フラットパネルディスプレイや有機LED照明、太陽光発電パネルなどに代表される電気・電子デバイス向けの基板材料が挙げられている。
このようなセルロースの微細繊維を効率良く生産するために、セルロース繊維にカチオン性の官能基を修飾することで繊維間に静電反発力を作用させる方法が行われている。例えば、特許文献1、2では、セルロース繊維に、カチオン化剤として四級アンモニウム基を含有する化合物を反応させ、カチオン変性されたセルロース繊維を製造し、これを解繊して微細セルロース繊維を得ている。しかしながら、これら従来の方法では原料のセルロース繊維にカチオン化剤の反応率が低いうえ、繊維の回収率も低いことから経済性や生産性の課題が残っていた。
国際公開WO2012/124652号パンフレット 特開2011−162608号公報
本発明では、高い収率で微細セルロース繊維を製造可能な原料となるカチオン化セルロース繊維を提供することを課題とする。
本発明者が鋭意検討した結果、特定の条件を用いて製造されたカチオン化セルロース繊維によって、上記課題を解決できることが分かり、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、セルロース繊維とカチオン化剤を反応させることによりカチオン化セルロース繊維を製造する方法において、30℃未満の条件下、セルロース繊維にカチオン化剤を浸透させる第一の工程を経た後、30℃以上の条件下、セルロース繊維とカチオン化剤を反応させる第二の工程を有する、カチオン化セルロース繊維の製造方法に存する。
本発明の製造方法によれば、セルロース繊維に対するカチオン基の導入量を向上させることができ、また、高い収率で微細セルロース繊維を製造可能な原料となるカチオン化セルロース繊維を提供することができる。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。
本発明のカチオン化セルロース繊維の製造方法は、セルロース繊維とカチオン化剤を反応させることによりカチオン化セルロース繊維を製造する方法において、30℃未満の条件下、セルロース繊維にカチオン化剤を浸透させる第一の工程を経た後、30℃以上の条件下、セルロース繊維とカチオン化剤を反応させる第二の工程を有することを特徴とする。
まず、本発明に用いるセルロース繊維について説明する。
本発明における第一の工程及び第二の工程に用いるセルロース繊維は、以下に記載するセルロース含有物であっても、セルロース繊維原料であってもよいが、通常はセルロース繊維原料に対してカチオン化剤を反応させることが好ましい。
<セルロース繊維原料>
本発明において、セルロース繊維原料とは、下記に示すようなセルロース含有物から一般的な精製工程を経て不純物を除去したものである。
(セルロース含有物)
セルロース含有物としては、針葉樹や広葉樹等の木質、コットンリンターやコットンリント等のコットン、さとうきびや砂糖大根等の絞りかす、亜麻、ラミー、ジュート、ケナフ等の靭皮繊維、サイザル、パイナップル等の葉脈繊維、アバカ、バナナ等の葉柄繊維、ココナツヤシ等の果実繊維、竹等の茎幹繊維、バクテリアが産生するバクテリアセルロース、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等が挙げられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高いので低線膨張率、高弾性率になり好ましい。バクテリアセルロースは微細な繊維径のものが得やすい点で好ましい。また、コットンも微細な繊維径のものが得やすい点で好ましく、さらに原料を入手しやすい点で好ましい。さらには針葉樹や広葉樹等の木質も微細な繊維径のものが得られ、かつ地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続型資源あることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、経済的な点から優位である。このようなセルロース含有物を一般的な精製工程を経て本発明のセルロース繊維原料とする。
(セルロース含有物の精製方法)
本発明に用いられるセルロース繊維原料は上記のセルロース含有物を通常の方法で精製して得られる。
この精製方法としては、例えば、セルロース含有物をベンゼン−エタノール混合溶媒や炭酸ナトリウム水溶液で脱脂した後、亜塩素酸塩で脱リグニン処理を行い(ワイズ法)、アルカリで脱ヘミセルロース処理をする方法が挙げられる。また、ワイズ法の他に、過酢酸を用いる方法(pa法)、過酢酸と過硫酸を併用する過酢酸過硫酸混合物を用いる方法(pxa法)、塩素・モノエタノールアミン法なども精製方法として利用される。また、適宜、更に漂白処理等を行ってもよい。
或いは、一般的な化学パルプの製造方法、例えばクラフトパルプ、サルファイドパルプ、アルカリパルプ、硝酸パルプの製造方法に従って精製処理することもでき、セルロース含有物を蒸解釜で加熱処理して脱リグニン等の処理を行い、更に漂白処理等を行う方法であってもよい。
また、セルロース含有物を木材チップや木粉などの状態に破砕してもよく、この破砕は、精製処理前、処理の途中、処理後、いずれのタイミングで行ってもかまわない。
尚、セルロース繊維原料としては、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ、広葉樹漂白クラフトパルプ、針葉樹漂白クラフトパルプ、リンターパルプなどを用いてもよい。
セルロース含有物を精製して得られるセルロース繊維原料の精製度合いに特に定めはないが、油脂、リグニンが少なく、セルロース成分の含有率が高い方がセルロース繊維原料の着色が少なく好ましい。セルロース含有物を精製して得られるセルロース繊維原料のセルロース成分の含有率は好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
また、セルロース成分は結晶性のα−セルロース成分と非結晶性のヘミセルロース成分に分類できる。結晶性のα−セルロースの比率が高い方が、繊維樹脂複合材料とした際に低線膨張係数、高弾性率、高強度の効果が得られやすいため好ましい。セルロース含有物を精製して得られるセルロース繊維原料のα−セルロースと非結晶性ヘミセルロースの比率(質量比率)は好ましくは70対30以上、さらに好ましくは75対25以上、さらに好ましくは80対20以上で、α−セルロースの比率が高いことが好ましい。
(セルロース繊維原料の繊維径)
本発明に用いられるセルロース繊維原料の繊維径は特に制限されるものではなく、数平均繊維径としては1μmから1mmである。一般的な精製を経たものは50μm程度である。例えばチップ等の数cm大のものを精製したものである場合、リファイナーや
次に、本発明に用いるカチオン化剤について説明する。
<カチオン化剤>
本発明において、カチオン化剤とは、アンモニウム、ホスホニウムまたはスルホニウムなどのカチオン基と、セルロースの水酸基と反応する基とを有する化合物である。
カチオン基とは、その基内に、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウムなどのオニウムを有する基であって、通常は、分子量が1000以下程度の基である。
カチオン基として具体的には、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、これらアンモニウム、ホスホニウムまたはスルホニウムを有する基が挙げられる。本発明において、カチオン基としては、アンモニウムを含む基が好ましく、特に、四級アンモニウムを含む基が好ましい。
セルロースの水酸基と反応する基としては、その水酸基と反応して共有結合を形成する反応基であれば特に限定はなく、例えば、エポキシ基又はそれを形成し得るハロヒドリン基、活性ハロゲン基、活性ビニル基、メチロール基等が挙げられる。これらの内、反応性の点からエポキシ基又はそれを形成し得るハロヒドリン基が好ましい。
カチオン化剤としては、例えば、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等のグリシジルトリアルキルアンモニウムハライド或いはそのハロヒドリン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、反応性の観点から、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
本発明における第一の工程、第二の工程について説明する。
<第一の工程>
第一の工程は、30℃未満の条件下、セルロース繊維にカチオン化剤を浸透させる工程である。
ここで、カチオン化剤を浸透させるとは、拡散現象を駆動力としてカチオン化剤をセルロース繊維間に浸透させるが、具体的には、カチオン化剤とセルロース繊維とを混合させた後、この混合物を30℃未満の条件下で維持することを意味する。この際に、拡散を促進させるため、撹拌・混合等の操作を施してもよい。
浸透時間は任意に決められるが、通常10分以上、24時間以下であり、15分以上が好ましく、20分以上がより好ましく、12時間以下が好ましく、6時間以下がより好ましい。この範囲より短いとカチオン化剤のセルロース繊維間への浸透が十分に起きにくい場合がある。
浸透させる方法としては、溶媒を使用しても、使用しなくてもよく、溶媒を使用する場合は、例えば、撹拌槽中でセルロース繊維を含む分散液を調製し、これにカチオン化剤を添加し、撹拌翼で撹拌・混合する。
溶媒(分散媒)としては、水、或いは一般的な有機溶剤が用いられるが、特に水、或いは低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等の炭素数1〜4程度の低級アルコールの1種又は2種以上、或いはこれらの低級アルコールと水との混合溶媒を使用することができ、その使用量は、セルロース繊維原料に対し1〜100質量倍程度とすることが好ましい。反応性の観点から、イソプロピルアルコールが特に好ましい。
また、溶媒を使用しない場合は、セルロース繊維とカチオン化剤の混合物は通常流動性が無いため、例えば、ニーダーのような撹拌混合機を用いることができる。
尚、浸透を促進させる目的で、減圧・加圧処理をしてもよい。
セルロース繊維に対するカチオン化剤の使用量は、セルロース繊維に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましい。この範囲であることにより、より経済性および生産性を両立した微細なカチオン化セルロース繊維を得ることができる。
本発明で使用するカチオン化剤はセルロース繊維の水酸基と化学結合をすることから、30℃以上の条件ではセルロース繊維の持ち込む水分子と副反応を起こしてしまう。
そこで本発明では、カチオン化剤と水の副反応の反応速度が極めて遅い30℃未満で、カチオン化剤をセルロース繊維表面の水酸基近傍に浸透させてから、30℃以上で反応させることで高い反応率を実現できる。
第一の工程は30℃未満で実施されるが、28℃未満であることがより好ましい。30℃以上の温度ではカチオン化剤がセルロース繊維間に浸透する前に水と副反応を起こしてしまい、水酸基との反応性を喪失してしまう。
尚、ここで第一の工程における温度は、浸透に際し溶媒を使用する場合は、セルロール繊維とカチオン化剤と溶媒の混合物の温度であり、溶媒を使用しない場合はセルロース繊維とカチオン化剤の混合物の温度である。
カチオン化反応には、触媒として水酸化アルカリ金属またはアルコキシドを用いることが好ましく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどの1種又は2種以上が使用できる。
尚、カチオン化剤と触媒の使用量は、用いるセルロース繊維原料、反応系の溶媒組成、反応器の機械的条件、その他の要因によって適宜調整することができる。
<第二の工程>
第二の工程は、30℃以上の条件下、セルロース繊維とカチオン化剤を反応させる工程である。第一の工程を経たセルロース繊維とカチオン化剤の混合物を、30℃以上に昇温することでセルロース繊維にカチオン化剤を反応させることができる。
この反応温度は30℃以上であり、33℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましく、90℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。この範囲より低い温度では十分な反応速度が得られず、また、この範囲より高い温度では反
応速度が速すぎる場合がある。
ここで、温度は、第一の工程と同様に、浸透に際し溶媒を使用する場合は、セルロール繊維とカチオン化剤と溶媒の混合物の温度であり、溶媒を使用しない場合はセルロース繊維とカチオン化剤の混合物の温度である。
反応時間は、通常5分以上であり、10分以上が好ましく、15分以上がより好ましく、3時間以下が好ましく、2時間30分以下がより好ましく、2時間以下がさらに好ましい。5分以上であることにより反応が十分に進行しやすく、3時間を超えるとそれ以上反応が進行しない場合がある。
反応終了後、残存する水酸化アルカリ金属を鉱酸或いは有機酸等により中和した後、常法により洗浄、精製して、カチオン基を有するセルロース繊維原料を得ることができる。
<カチオン基量>
ここで、セルロースに導入されるカチオン基量は0.05mmol/g以上であることが好ましく、0.14mmol/g以上がより好ましく、0.21mmol/g以上がさらに好ましく、3.0mmol/g以下が好ましく、2.14mmol/g以下がより好ましく、2.07mmol以下がさらに好ましい。この範囲であることによって、繊維間に静電反発力が作用し、生産性高く微細セルロース繊維を製造することができる。
カチオン基量は、元素分析によりカチオン基に含まれる窒素等の元素を定量したり、また固体NMRによってカチオン基に特有な分子構造のピークを定量することによって得ることができる。
次に、カチオン基を導入したセルロース繊維(セルロース繊維原料)を解繊処理する方法について説明する。
<解繊処理>
カチオン基が導入されたセルロース繊維に対し、解繊処理を施すことにより、微細化されたカチオン化セルロース繊維(以下、「本発明の微細セルロース繊維」と言う場合がある)を製造することができる。以下、本発明の微細セルロース繊維の製造方法について説明する。
解繊処理の具体的な方法としては、特に制限はないが、例えば、直径1mm程度のセラミック製ビーズをセルロース繊維原料濃度が好ましくは0.1〜10質量%、例えば1質量%程度のセルロース繊維原料の分散液(以下、「セルロース繊維原料分散液」と言う場合がある。)に入れ、ペイントシェーカーやビーズミル等を用いて振動を与え、セルロースを解繊する方法、ブレンダータイプの分散機や高速回転するスリットの間に、セルロース繊維原料分散液を通して剪断力を働かせて解繊する方法(高速回転式ホモジナイザーを用いる方法)や、高圧から急に減圧することによって、セルロース繊維間に剪断力を発生させて解繊する方法(高圧ホモジナイザー法を用いる方法)、「マスコマイザーX(増幸産業)」のような対向衝突型の分散機等を用いる方法などが挙げられる。特に、高速回転式ホモジナイザーや高圧ホモジナイザーによる処理を採用することにより、解繊の効率が向上する。
なお、セルロース繊維原料分散液の分散媒としては、有機溶媒、水、有機溶媒と水との混合液を使用することができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコール−モノ−t−ブチルエーテル等のアルコール類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、その他水溶性の有機溶媒の1種又は2種以上を用いることができる。分散媒は、有機溶媒と水との混合液又は水であることが好ましく、特に水であることが好ましい。
これらの処理で解繊する場合、セルロース繊維原料分散液は、セルロース繊維原料としての固形分濃度が0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましく、また10質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましい。この解繊処理に供するセルロース繊維原料分散液中の固形分濃度が低過ぎると処理するセルロース繊維原料量に対して液量が多くなり過ぎ効率が悪くなったり、固形分濃度が高過ぎると流動性が悪くなったりする場合があるため、解繊処理に供するセルロース繊維原料分散液は適宜水を添加するなどして濃度調整することが好ましい。
なお、このような高圧ホモジナイザーによる処理、高速回転式ホモジナイザーによる処理の後に、超音波処理を組み合わせた微細化処理を行ってもよい。
上記のような解繊工程を経て、本発明の微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液(以下、「本発明のセルロース繊維分散液」という場合がある)を得ることができる。この本発明のセルロース繊維分散液の分散媒は上記セルロース繊維原料分散液の分散媒と同様である。
[数平均繊維径]
解繊処理により得られる本発明の微細セルロース繊維の数平均繊維径は、400nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましく、50nm以下であることが特に好ましく、10nm以下であることが最も好ましい。また、本発明の微細セルロース繊維の数平均繊維径は小さい程好ましいが、通常は2nm以上、さらには4nm以上である。
係る繊維径は、分散液中の分散媒を乾燥除去した後(シート化後)、SEMやTEMやAFM等の各種顕微鏡等で観察することにより計測して求めることができる。
<セルロース繊維集合体>
次に、本発明の微細セルロース繊維を用いたセルロース繊維集合体(以下、「本発明のセルロース繊維集合体」という場合がある)について説明する。
[セルロース繊維集合体の製造]
本発明のセルロース繊維集合体は、本発明の微細セルロース繊維を含むものである。通常、本発明のセルロース繊維集合体は、後述の乾燥後は、本発明の微細セルロース繊維のみからなるが、他の繊維や粒子を含有するものであってもよい。
本発明のセルロース繊維集合体は、解繊処理により微細化された微細セルロース繊維を用いて製造される。ここで、本発明において、セルロース繊維集合体とは、通常、微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液を濾過することにより、あるいは、適当な基材に該分散液を塗布したものから分散媒を揮発させるなどの方法で除去させて得られる、セルロース繊維の集合物を言い、例えばシート、粒子、ゲルなどを言う。
なお、このセルロース繊維の集合体の製造に際して、解繊により得られた微細セルロース繊維分散液を遠心分離処理して、極微細なセルロース繊維のみを含む上澄み液を得、この上澄み液をセルロース繊維集合体の製造に用いると、得られたセルロース繊維集合体から高透明な繊維樹脂複合材料を得ることができる。
<シート>
上記得られた微細セルロース繊維を用いて、セルロース繊維シートとすることができる。セルロース繊維シートとすることで、樹脂を含浸させて繊維樹脂複合材料としたり、樹脂シートではさんで繊維樹脂複合材料とすることができる。セルロース繊維シートは、具体的には、前述の解繊処理を施した、本発明の微細セルロース繊維を含むセルロース繊維
分散液を濾過することにより、或いは適当な基材に塗布することにより製造される。
セルロース繊維シートを、セルロース繊維分散液を濾過することによって製造する場合、濾過に供されるセルロース繊維分散液のセルロース繊維濃度は、通常は0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であるセルロース繊維分散液のセルロース繊維濃度が低すぎると濾過に膨大な時間を要する場合がある。また、セルロース繊維分散液のセルロース繊維濃度は1.5質量%以下が好ましく、1.2質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましい。セルロース繊維濃度が高すぎると均一なシートが得られない場合がある。
セルロース繊維分散液を濾過する場合、濾過時の濾布としては、微細化したセルロース繊維は通過せずかつ濾過速度が遅くなりすぎないことが重要である。このような濾布としては、有機ポリマーからなるシート、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしてはポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。
具体的には、通常、孔径0.1〜20μm、例えば0.5〜1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1〜20μm、例えば0.5〜1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられる。
セルロース繊維シートはその製造方法により、様々な空隙率を有することができる。
セルロース繊維シートに樹脂を含浸させて繊維樹脂複合材料を得る場合には、セルロース繊維シートの空隙率が小さいと樹脂が含浸されにくくなるため、ある程度の空隙率があることが好ましい。この場合の空隙率は、通常10体積%以上、好ましくは20体積%以上である。ただし、セルロース繊維シートの空隙率が過度に高いと、繊維樹脂複合材料とした際に、セルロース繊維による十分な補強効果が得られず、線膨張率や弾性率が不足する場合があるので、80体積%以下であることが好ましい。
ここでいうセルロース繊維シートの空隙率は簡易的に下記式により求めるものである。空隙率(体積%)={(1−B/(M×A×t)}×100
ここで、Aはセルロース繊維シートの面積(cm)、tは膜厚(cm)、Bはシートの質量(g)、Mはセルロースの密度であり、本発明ではM=1.5g/cmと仮定する。
セルロース繊維シートの膜厚は、膜厚計(PEACOK製、PDN−20)を用いて、シートの種々な位置について10点の測定を行い、その平均値を採用する。
空隙率の大きなセルロース繊維シートを得る方法としては、濾過による製膜工程において、セルロース繊維シート中の水を最後にアルコール等の有機溶媒に置換する方法を挙げることができる。
これは、濾過により水を除去し、セルロース含量が5〜99質量%になったところでアルコール等の有機溶媒を加えるものである。または、微細セルロース繊維の分散液を濾過装置に投入した後、アルコール等の有機溶媒を分散液の上部に静かに投入することによっても濾過の最後にセルロース繊維シート中の水をアルコール等の有機溶媒と置換することができる。
ここで用いるアルコール等の有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコール−モノ−t−ブチルエーテル等のアルコール類の他、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、トルエン、四塩化炭素等の1種または2種以上の有機溶媒が挙げられる。非水溶性有機溶媒を用いる
場合は、水溶性有機溶媒との混合溶媒にするか水溶性有機溶媒で置換した後、非水溶性有機溶媒で置換することが好ましい。
このようにして空隙率を制御することによりセルロース繊維シートの膜厚も制御することができる。
また、空隙率を制御する方法として、上記のアルコール等より沸点の高い溶媒を微細セルロース繊維の分散液に混合し、その溶媒の沸点より低い温度で乾燥させる方法が挙げられる。この場合は、必要に応じて、乾燥後に残っている高い沸点の溶媒を、他の溶媒に置換した後に、樹脂に含浸させて繊維樹脂複合材料とすることができる。濾過によって溶媒を除去したセルロース繊維シートは、その後、乾燥を行うが、場合によっては乾燥を行わずに次の工程に進んでも構わない。
すなわち、加熱処理したセルロース繊維分散液を濾過して、次に樹脂に含浸する場合、乾燥工程を経ずそのまま樹脂に含浸することもできる。
また、セルロース繊維分散液を濾過して、そのシートを加熱処理する場合にも、乾燥工程を経ずに行うこともできる。
ただし、空隙率、膜厚の制御、シートの構造をより強固にする意味でも乾燥を行った方が好ましい。
この乾燥は、送風乾燥であってもよく、減圧乾燥であってもよく、また、加圧乾燥であってもよい。また、加熱乾燥しても構わない。加熱する場合、温度は50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、また、250℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。加熱温度が低すぎると乾燥に時間がかかったり、乾燥が不十分になる可能性があり、加熱温度が高すぎるとセルロース繊維シートが着色したり、セルロースが分解したりする可能性がある。また、加圧する場合は0.01MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましく、また、5MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましい。圧力が低すぎると乾燥が不十分になる可能性がり、圧力が高すぎるとセルロース繊維シートがつぶれたりセルロースが分解する可能性がある。
セルロース繊維シートの厚みには特に限定はないが、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。又、通常1000μm以下、好ましくは250μm以下である。
<粒子>
微細セルロース繊維を用いて、セルロース繊維粒子とすることができる。
セルロース繊維粒子は特に熱可塑性樹脂との混練によって複合化する際に好適に用いられ、その高弾性率、低線膨張率、表面平滑性といった特性を生かして、各種の構造材、特に表面の意匠性に優れた自動車用パネルや建築物の外壁パネル等に有用である。
微細セルロース繊維を粒子化する方法としては、本発明のセルロース繊維分散液を、例えば公知のスプレードライ装置を用いて、スプレーノズル等から噴射することにより、分散媒を除去して造粒する方法が挙げられる。この噴射方法としては、具体的には回転円盤による方法、加圧ノズルによる方法、2流体ノズルによる方法などがある。スプレードライして得られた粒子を更に他の乾燥装置を用いて乾燥させてもよい。この場合の熱エネルギー源としては、赤外線やマイクロ波を用いることもできる。
また、本発明のセルロース繊維分散液を凍結乾燥し、粉砕することによってもセルロース繊維粒子を得ることができる。この場合、具体的には、本発明のセルロース繊維分散液を液体窒素などで冷却した後、グラインダーや回転刃などで粉砕する方法が挙げられる。
セルロース繊維粒子の粒径には特に制限はないが、通常1μm以上で1mm以下が好ましい。この粒径は更に好ましくは5μm以上、100μm以下であり、特に好ましくは5
μm以上、50μm以下である。セルロース繊維粒子の粒径が大き過ぎると樹脂と複合化した際、分散不良を起こし、小さ過ぎるとふわふわと舞って取り扱いが困難である場合がある。
<ゲル>
本発明の微細セルロース繊維は、セルロース以外の樹脂と複合化させることにより、繊維樹脂複合材料を得る事ができる。このセルロース以外の樹脂との複合化は、本発明のセルロース繊維分散液から分散媒を除去することなく分散媒中で行ってもよく、複合化させた後に分散媒を除去することで複合体を得る事もできる。本発明のセルロース繊維分散液の分散媒は、水から他の有機溶媒に、あるいは有機溶媒から水へと、セルロース以外の樹脂と複合化するのに適した分散媒種へ置換を行ってから複合化を行うとより好ましい。
この複合化における分散媒の除去ないし置換の過程において、本発明のセルロース繊維分散液はセルロース繊維ゲルの状態をとる場合がある。
セルロース繊維ゲルは、セルロース繊維が3次元網目状構造を作り、それが分散媒によって湿潤または膨潤したものであり、網目構造は化学架橋や物理架橋により形成される。ゲルが所定量の分散媒を含有することによって、ゲル中のセルロース繊維の3次元網目状構造が保持される。
ゲル中における分散媒の含有量は、10質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。また、上限としては、99質量%以下であることが好ましく、97質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましい。
また、ゲル中における微細セルロース繊維の含有量は、通常90質量%以下であり、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。また、下限としては、1質量%以上であり、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。
ゲル中における分散媒と微細セルロース繊維との質量比(微細セルロース繊維/分散媒)は、9/1〜1/99が好ましく、より好ましくは1/1〜3/97であり、さらに好ましくは3/7〜5/95である。
セルロース繊維ゲルに含まれる分散媒は、通常、本発明のセルロース繊維分散液の分散媒であり、一般的には水であるが、有機溶媒の1種または2種以上の混合分散媒であってもよい。また、水と有機溶媒との混合分散媒であってもよい。
セルロース繊維ゲルに含まれる分散媒は、上記分散媒含有量が上記範囲内である限り、必要に応じて他の種類の分散媒に置換することができる。つまり、ゲル製造工程後、必要に応じて、セルロース繊維ゲル中の分散媒(第一の分散媒)を、他の分散媒(第二の分散媒)に置換する分散媒置換工程を実施してもよい。
置換する方法としては、例えば、上記の濾過法により分散液中に含まれる所定量の分散媒を除去した後、アルコールなどの有機溶媒を加えることにより、アルコール等の有機溶媒が含まれるゲルを製造することができる。より具体的には、第一の分散媒が水で、第二の分散媒が有機溶媒である場合が挙げられる。
なお、上記第二の分散媒の種類は特に限定されず、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類の他、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、トルエン、四塩化炭素などの1種または2種以上の有機溶媒が挙げられる。
セルロース繊維ゲルの形状は、特に限定されず、シートまたはフィルム状(例えば、厚み10μm以上10cm以下)、粒子状など適宜制御することができる。
<繊維樹脂複合材料>
本発明の微細セルロース繊維、セルロース繊維シート、セルロース繊維粒子またはセルロース繊維ゲル等のセルロース繊維集合体をマトリックス材料と複合化することで本発明の繊維樹脂複合材料が得られる。本発明の繊維樹脂複合材料は、本発明の微細セルロース繊維とマトリックス材料を含むものであればよい。
本発明の繊維樹脂複合材料は、その高透明性、低線膨張率、非着色性といった特性を生かして、各種ディスプレイ基板材料、太陽電池用基板、窓材等に有用であり、また、その高弾性率、低線膨張率、表面平滑性といった特性を生かして、各種の構造材、特に表面の意匠性に優れた自動車用パネルや建築物の外壁パネル等に有用である。
[複合化方法]
以下、繊維樹脂複合材料を製造する方法について説明する。
繊維樹脂複合材料は、微細セルロース繊維と、セルロース以外の樹脂(マトリックス材料)とを複合化させたものである。
ここでマトリックス材料とは、樹脂またはその前駆体(例えばモノマー)のことをいう。
このマトリックス材料として好適なものは、加熱することにより流動性のある液体になる熱可塑性樹脂、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することにより重合硬化する、活性エネルギー線硬化性樹脂(以下、「光硬化性樹脂」という場合がある)等から得られる少なくとも1種の樹脂(高分子材料)またはその前駆体である。
なお、本発明において樹脂の前駆体とは、いわゆるモノマー、オリゴマーであり、例えば、熱可塑性樹脂の項に重合または共重合成分として後述する各単量体など(以後、熱可塑性樹脂前駆体と称することがある)、光硬化性樹脂の項に後述する各前駆体などが挙げられる。
複合化の方法としては、例えば、次の(a)〜(j)の方法が挙げられる。
(a) セルロース繊維シート、セルロース繊維粒子またはセルロース繊維ゲルに液状の熱可塑性樹脂前駆体を含浸させて重合させる方法
(b) セルロース繊維シート、セルロース繊維粒子またはセルロース繊維ゲルに光硬化性樹脂前駆体を含浸させて重合硬化させる方法
(c) セルロース繊維シート、セルロース繊維粒子またはセルロース繊維ゲルに樹脂溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体および光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上の溶質を含む溶液)を含浸させて乾燥した後、加熱プレス等で密着させ、必要に応じて重合硬化させる方法
(d) セルロース繊維シート、セルロース繊維粒子またはセルロース繊維ゲルに熱可塑性樹脂の溶融体を含浸させ、加熱プレス等で密着させる方法
(e) 熱可塑性樹脂シートとセルロース繊維シートまたはセルロース繊維ゲルとを交互に配置し、加熱プレス等で密着させる方法
(f) セルロース繊維シートまたはセルロース繊維ゲルの片面もしくは両面に液状の熱可塑性樹脂前駆体もしくは光硬化性樹脂前駆体を塗布して重合硬化させる方法
(g) セルロース繊維シートまたはセルロース繊維ゲルの片面もしくは両面に樹脂溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、および光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上の溶質を含む溶液)を塗布して、溶媒を除去後、必要に応じて重合硬化させる方法
(h) セルロース繊維粒子と熱可塑性樹脂を溶融混練した後、シート状や目的の形状に成形する方法
(i) セルロース繊維分散液とモノマー溶液または分散液(熱可塑性樹脂前駆体、および光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上の溶質または分散質を含む溶液または分散液)とを混合した後、溶媒除去、硬化させる方法。
(j) セルロース繊維分散液と樹脂溶液または分散液(熱可塑性樹脂溶液または分散液)を混合した後、溶媒を除去する方法。
[樹脂]
本発明において、マトリックス材料としては、樹脂などが挙げられ、具体的には熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂等の活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂または光硬化性樹脂等の活性エネルギー線硬化性樹脂を用いることで、透明性の高い繊維樹脂複合材料を得ることができる。
[積層構造体]
本発明で得られる繊維樹脂複合材料は、本発明で得られるセルロース繊維シートの層と、前述したセルロース以外の樹脂よりなる平面構造体層との積層構造体であってもよく、また、本発明で得られるセルロース繊維シートの層と、本発明で得られる繊維樹脂複合材料の層との積層構造であってもよく、その積層数や積層構成には特に制限はない。
また、本発明で得られるシートないし板状の繊維樹脂複合材料を複数枚重ねて積層体とすることもできる。その際に、セルロース繊維を含む複合体と含まない樹脂シートを積層してもよい。この場合、繊維樹脂複合材料同士や樹脂シートと繊維樹脂複合材料を接着させるために、接着剤を塗布したり接着シートを介在させてもよい。また、積層体に加熱プレス処理を加えて一体化することもできる。
[無機膜]
本発明で得られる繊維樹脂複合材料は、その用途に応じて、繊維樹脂複合材料層に更に無機膜が積層されたものであってもよく、上述の積層構造体に更に無機膜が積層されたものであってもよい。
ここで用いられる無機膜は、繊維樹脂複合材料の用途に応じて適宜決定され、例えば、白金、銀、アルミニウム、金、銅等の金属、シリコン、ITO、SiO、SiN、SiOxNy、ZnO等、TFT等が挙げられ、その組み合わせや膜厚は任意に設計することができる。
[繊維樹脂複合材料の特性ないし物性]
以下に本発明で得られる繊維樹脂複合材料の好適な特性ないし物性について説明する。
<セルロース含有量>
本発明の繊維樹脂複合材料中のセルロースの含有量(微細セルロース繊維の含有量)は通常1質量%以上、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、通常99質量%以下であり、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
マトリックス材料の含有量は通常1質量%以上、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、通常99質量%以下、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
繊維樹脂複合材料中のセルロースおよびセルロース以外のマトリックス材料の含有量は、例えば、複合化前のセルロース繊維の質量と複合化後の繊維樹脂複合材料の質量より求めることができる。また、マトリックス材料が可溶な溶媒に繊維樹脂複合材料を浸漬してマトリックス材料のみを取り除き、残ったセルロース繊維の質量から求めることもできる。その他、マトリックス材料である樹脂の比重から求める方法や、NMR、IRを用いて樹脂やセルロースの官能基を定量して求めることもできる。
<厚み>
本発明により得られる繊維樹脂複合材料の厚みは、好ましくは10μm以上10cm以下であり、このような厚みとすることにより、構造材としての強度を保つことができる。
繊維樹脂複合材料の厚さはより好ましくは50μm以上1cm以下であり、さらに好ましくは80μm以上250μm以下である。
なお、本発明により得られる繊維樹脂複合材料は、例えば、このような厚さの膜状(フィルム状)または板状であるが、平膜または平板に限らず、曲面を有する膜状または板状とすることもできる。また、その他の形状であってもよい。また、厚さは必ずしも均一である必要はなく、部分的に異なっていてもよい。
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(実施例1)
2−プロパノール250gにセルロース繊維原料として広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP、王子製紙社製、固形分30質量%)32.4gを添加し、次いで1mol/L水酸化ナトリウム水溶液5.83g、カチオン化剤としてグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドの80質量%水溶液(カチオマスターG(登録商標)、四日市合成社製)4.86gを添加し、室温で3時間撹拌した(第一の工程)。
その後、50℃に昇温し、セルロース繊維原料とカチオン化剤とを90分間反応させた(第二の工程)。反応後、濾別したケーキを脱塩水600mLに分散させ10質量%酢酸水溶液で中和した後、再度濾別した。
次いで、濾液の電気伝導度が50μS/cm未満になるまで脱塩水で洗浄しカチオン基を導入したセルロース繊維原料を得た。
このカチオン基を導入したセルロース繊維原料を0.5質量%含む水分散液を作製し、高速回転式ホモジナイザー(クレアミックス−0.8S、エム・テクニック社製)を用いて、20000rpmで60分間解繊処理を行った。
得られた微細セルロース繊維の収率を以下のようにして測定した。
解繊処理後の分散液を0.2質量%に希釈し均一に分散させ、この分散液をアルミ皿にとり、105℃で2時間以上乾燥させて固形分濃度を測った(C0)。遠沈管に30gを測り取り、遠心分離機(日立工機社製CR23)で12000Gx10分間遠心分離処理した。その後、遠沈管ごと秤量し(W1)、沈殿物が入らないように注意して上澄みを取り分け、上記同様に固形分濃度を測った(C1)。沈殿物が残った遠沈管を秤量した(W2)。尚、遠沈管の質量はW0とした。
以下の式により、微細セルロース繊維の収率を算出したところ、85%であった。
Figure 2015074700
また、この微細セルロース繊維のカチオン基量を、窒素測定装置(TN−10、三菱化学アナリテック社製)を用いてJIS−K2609に準じて測定したところ、0.50mmol/gであった。
(比較例1)
第一の工程における、室温で3時間の撹拌をせずに、水酸化ナトリウム水溶液とカチオン化剤を添加して、すぐに50℃に昇温し90分間反応させた以外は、実施例1と同様に
して、カチオン基を導入したセルロース繊維原料を得た。その後、実施例1と同様にして、解繊処理を行い、収率を算出した。
微細セルロース繊維の収率は51%、微細セルロース繊維のカチオン基量は0.36mmol/gであった。
以上のとおり、本発明の製造方法を用いることによって、微細セルロース繊維の収率が向上することが分かった。

Claims (3)

  1. セルロース繊維とカチオン化剤を反応させることによりカチオン化セルロース繊維を製造する方法において、
    30℃未満の条件下、セルロース繊維にカチオン化剤を浸透させる第一の工程を経た後、30℃以上の条件下、セルロース繊維とカチオン化剤を反応させる第二の工程を有することを特徴とする、
    カチオン化セルロース繊維の製造方法。
  2. 第一の工程において、水酸化アルカリ金属またはアルコキシドを含有する分散液中で、セルロース繊維にカチオン化剤を浸透させる、請求項1に記載のカチオン化セルロース繊維の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法により得られたカチオン化セルロース繊維に、解繊処理を施すことを特徴とする、微細セルロース繊維の製造方法。
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