以下、本発明に係るバルブタイミング制御装置の制御方法及びこのバルブタイミング制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態では、内燃機関の吸気側の動弁装置に適用したものであるが、排気側の動弁装置に同様に適用することも可能である。
このバルブタイミング制御装置は、図1〜図3に示すように、内燃機関のクランクシャフトによって回転駆動する駆動回転体であるタイミングスプロケット1と、シリンダヘッド上に図外の軸受を介して回転自在に支持され、前記タイミングスプロケット1から伝達された回転力によって回転するカムシャフト2と、前記タイミングスプロケット1の前方位置に配置された図外のチェーンカバーに固定されたカバー部材3と、前記タイミングスプロケット1とカムシャフト2の間に配置されて、機関運転状態に応じて両者1,2の相対回転位相を変更する位相変更機構4と、を備えている。
前記タイミングスプロケット1は、全体が鉄系金属によって一体に形成され、内周面が段差径状の円環状のスプロケット本体1aと、該スプロケット本体1aの外周に一体に設けられて、巻回された図外のタイミングチェーンを介してクランクシャフトからの回転力を受けるギア部1bと、から構成されている。また、タイミングスプロケット1は、前記スプロケット本体1aの内周側に形成された円形溝1cと前記カムシャフト2の前端部に一体に有する肉厚なフランジ部2aの外周との間に介装された中径ボールベアリング43によってカムシャフト2に回転自在に支持されている。
前記スプロケット本体1aの前端部外周縁には、環状突起1dが一体に形成されている。このスプロケット本体1aの前端部には、図1及び図2に示すように、前記環状突起1dの前端側に同軸に位置決めされ、内周に波形状の内歯19aが形成された環状部材19が配置されていると共に、該環状部材19の前端側には、後述する電動モータ12のハウジング5と一体の円環状の雌ねじ形成部6が配置されている。
前記スプロケット本体1aと環状部材19の外周部には、ボルト挿通孔1e、19bが周方向のほぼ等間隔位置に6つ貫通形成されていると共に、前記雌ねじ形成部6には、各ボルト挿通孔1e、19bと対応した位置に6つの雌ねじ孔6aが形成されており、これらに挿通したボルト7によって前記三者1、19、6(ハウジング5)が共締め固定されている。
なお、前記スプロケット本体1a及び環状部材19が、後述する減速機構8のケーシングとして構成されている。
また、前記スプロケット本体1aの環状突起1dと環状部材19及び雌ねじ形成部6は、それぞれの外径がほぼ同一に設定されている。
さらに、前記スプロケット本体1aの内周面の一部には、図4に示すように、扇状の係合部であるストッパ凸部1fが周方向に沿って所定長さ範囲まで形成されている。
前記カバー部材3は、アルミニウム合金材によってカップ状に一体に形成されて、前端部に形成された膨出部3aが前記ハウジング5の前端部を覆うように設けられていると共に、前記膨出部3aの外周部側には円筒壁3bが軸方向に沿って一体に形成されている。この円筒壁3bは、図1及び図8にも示すように、内部に保持用孔3cが形成されて、この保持用孔3cの内周面が後述するブラシ保持体28のガイド面として構成されている。
また、カバー部材3は、図2に示すように、外周に形成されたフランジ部3dに6つのボルト挿通孔3eが貫通形成され、この各ボルト挿通孔3eに挿通された図外のボルトによって前記チェーンカバーに固定されている。
前記膨出部3aの外周側の段差部内周面と前記ハウジング5の外周面との間には、図1にも示すように、シール部材である大径なオイルシール50が介装されている。この大径オイルシール50は、横断面ほぼコ字形状に形成されて、合成ゴムの基材の内部に芯金が埋設されていると共に、外周側の円環状基部が前記カバー部材3の内周面に設けられた段差円環部3hに嵌着固定されている。
前記ハウジング5は、鉄系金属材をプレス成形によって有底筒状に形成された筒状部であるハウジング本体5aと、該ハウジング本体5aの前端開口を封止する封止プレート11と、を備えている。
前記ハウジング本体5aは、後端側に円板状の底部5bを有し、該底部5bのほぼ中央に後述の偏心軸部39を挿通する大径な軸部挿通孔5cが形成されていると共に、該軸部挿通孔5cの孔縁には、カムシャフト2軸方向へ突出した円筒状の延出部5dが一体に設けられている。また、前記底部5bの前端面外周側には、前記雌ねじ形成部6が一体に設けられている。
前記カムシャフト2は、外周に図外の吸気弁を開作動させる一気筒当たり2つの駆動カムを有していると共に、前端部に従動部材9がカムボルト10によって軸方向から結合されている。また、カムシャフト2の前記フランジ部2aには、図4に示すように、前記スプロケット本体1aのストッパ凸部1fが係入する係止部であるストッパ凹溝2bが円周方向に沿って形成されている。このストッパ凹溝2bは、円周方向へ所定長さの円弧状に形成されて、この長さ範囲で回動したストッパ凸部1fの両端縁が周方向の対向縁2c、2dにそれぞれ当接することによって、タイミングスプロケット1に対するカムシャフト2の最大進角側あるいは最大遅角側の相対回転位置を規制するようになっている。このストッパ凸部1fとストッパ凹溝2bによってストッパ機構が構成されている。
前記カムボルト10は、図1に示すように、頭部10aの軸部10b側の端面に円環状のワッシャ部10cが配置されていると共に、軸部10bの外周に前記カムシャフト2の端部から内部軸方向に形成された雌ねじ部に螺着する雄ねじ部10dが形成されている。
前記従動部材9は、鉄系金属材によって一体に形成され、図1に示すように、前端側に形成された円板部9aと、後端側に一体に形成された円筒部9bとから構成されている。
前記円板部9aは、後端面の径方向ほぼ中央位置に環状段差突起9cが一体に設けられ、この段差突起9cの外周面と前記フランジ部2aの外周面が対峙しながら前記中径ボールベアリング43の内輪43aの内周に挿通配置されている。これによって、組付時におけるカムシャフト2と従動部材9との芯だし作業が容易になる。なお、前記中径ボールベアリング43の外輪43bは、前記スプロケット本体1aの円形溝1cの内周面に圧入固定されている。
また、前記円板部9aの外周部には、図1〜図3に示すように、複数のローラ48を保持する保持器41が一体に設けられている。この保持器41は、前記円板部9aの外周部から前記円筒部9bと同方向へ突出した円筒状に形成され、この周方向へほぼ等間隔の位置に前記複数のローラ48を転動自在に保持するほぼ長方形状のローラ保持孔41aが形成されている。
また、この保持器41は、先端部が前記雌ねじ形成部6と前記延出部5dとの間に形成された円環状の凹部である空間部44を介してハウジング5の底部5b方向へ延出している。
前記円筒部9bは、図1に示すように、中央に前記カムボルト10の軸部10bが挿通される挿通孔9dが貫通形成されていると共に、外周側にニードルベアリング38が設けられている。
前記位相変更機構4は、前記カムシャフト2のほぼ同軸上前端側に配置されたアクチュエータである前記電動モータ12と、該電動モータ12の回転速度を減速してカムシャフト2に伝達する前記減速機構8と、から構成されている。
前記電動モータ12は、図1及び図2に示すように、ブラシ付きのDCモータであって、前記タイミングスプロケット1と一体に回転するヨークである前記ハウジング5と、該ハウジング5の内部に回転自在に設けられた出力軸であるモータ軸13と、ハウジング5の内周面に固定された半円弧状の一対の永久磁石14,15と、前記封止プレート11に固定された固定子16と、を備えている。
前記モータ軸13は、筒状に形成されてアーマチュアとして機能し、軸方向のほぼ中央位置の外周に、複数の極を持つ鉄心ロータ17が固定されていると共に、該鉄心ロータ17の外周には電磁コイル18が巻回されている。また、モータ軸13の前端小径部の外周には、コミュテータ20が圧入固定されており、このコミュテータ20には、前記鉄心ロータ17aの極数と同数に分割された各セグメントに前記電磁コイル18が電気的に接続されている。
前記固定子16は、図5に示すように、前記封止プレート11の内周側に一体的に設けられた円板状の樹脂プレート22と、該樹脂プレート22の内側に設けられた一対の樹脂ホルダー23a、23bと、該各樹脂ホルダー23a、23bの内部に径方向に沿って摺動自在に収容配置されて、コイルスプリング24a、24bのばね力で各先端面が前記コミュテータ20の外周面に径方向から弾接する第1ブラシ25a、25bと、前記樹脂ホルダー23a、23bの前端面に、各外端面を露出した状態で埋設固定された内外二重の円環状のスリップリング26a、26bと、前記各第1ブラシ25a、25bと各スリップリング26a、26bを電気的に接続するピグテールハーネス27a、27bと、から主として構成されている。
前記封止プレート11は、前記ハウジング5の前端部内周に形成された凹状段差部にスナップリング55を介して位置決め固定されていると共に、中央位置には、モータ軸13の一端部などが挿通される軸挿通孔11aが貫通形成されている。
そして、前記膨出部3aには、合成樹脂材によって一体的にモールドされたブラシ保持体28が固定されている。
このブラシ保持体28は、図1〜図2、図7にも示すように、側面視ほぼL字形状に形成され、前記保持用孔3cに挿入されるほぼ円筒状のブラシ保持部28aと、該ブラシ保持部28aの上端部に有するコネクタ部28bと、前記ブラシ保持部28aの両側に一体に突設されて、前記膨出部3aに固定される一対のブラケット部28c、28cと、前記ブラシ保持体28の内部に大部分が埋設された一対の端子片31、31と、から主として構成されている。
前記一対の端子片31,31は、上下方向に沿って平行かつクランク状に形成されて、一方側(下端側)の各端子31a、31aが前記ブラシ保持部28aの底部側に露出状態で配置されている一方、他方側(上端側)の各端子31b、31bが前記コネクタ部28bの雌型嵌合溝28d内に突設されている。また、前記他方側端子31a、31bは、図外の雄端子を介してバッテリー電源に電気的に接続されている。
前記ブラシ保持部28aは、ほぼ水平状(軸方向)に延設されて、内部の上下位置に形成された円柱状の貫通孔内にスリーブ状の摺動部29a、29bが固定されていると共に、該各摺動部29a、29bの内部に、各先端面が前記各スリップリング26a、26bに軸方向からそれぞれ当接する第2ブラシ30a、30bが軸方向へ摺動自在に保持されている。
この各第2ブラシ30a、30bは、ほぼ長方体状に形成されて、各貫通孔の底部側に臨む前記一方側端子31a、31aとの間に弾装された付勢部材である第2コイルスプリング32a、32bのばね力によってそれぞれ前記各スリップリング26a、26b方向に付勢されている。また、前記第2ブラシ30a、30bの後端部と前記一方側端子31a、31aとの間には、可撓性を有する一対のピグテールハーネス33a、33bが溶接固定されて、前記両者を電気的に接続している。このピグテールハーネス33a、33bは、その長さが前記第2ブラシ30a、30bが前記各コイルスプリング32a、32bによって最大に進出した際に、前記各摺動部29a、29bから脱落しないように、その最大摺動位置を規制する長さに設定されている。
また、前記ブラシ保持部28aの基部側外周に形成された円環状の嵌着溝内に、環状シール部材34が嵌着保持されており、前記ブラシ保持部28aが前記保持用孔3cに挿通された際に、前記シール部材34が前記円筒壁3bの先端面に弾接してブラシ保持部28a内をシールするようになっている。
また、前記第2ブラシ30a、30bがフリーな状態で、各コイルスプリング32a、32bのばね力で最大に突出したブラシ保持部28aの開口端から第2ブラシ30a、30bの先端面30c、30dまでの長さLは、ブラシ保持部28aを保持用孔3c内に挿通して前記第2ブラシ30a、30bの各先端面30c、30dが各スリップリング26a、26bに当接した状態での該各先端面30c、30dから円筒壁3bの先端面までの長さL1よりも短く設定されている。
前記コネクタ部28bは、上端部に図外の雄型端子が挿入される前述した嵌合溝28dに臨む前記他方側端子31b、31bが前記雄型端子を介して電子コントローラ(ECU)であるコントロールユニット40に電気的に接続されている。
前記ブラケット部28c、28cは、ほぼ三角形状に形成されて、両側部にボルト挿通孔28e、28eが貫通形成されており、この各ボルト挿通孔28e、28eに、前記膨出部3aに形成された一対の雌ねじ孔3f、3fに螺着する各ボルト36、36を挿通して各ブラケット部28c、28cを介して前記ブラシ保持体28が膨出部3aに固定されるようになっている。
前記モータ軸13は、前記カムボルト10の頭部10a側の軸部10bの外周面に、小径ボールベアリング37と該小径ボールベアリング37の軸方向の側部に配置された前記ニードルベアリング38とによって回転自在に支持されている。また、前記モータ軸13のカムシャフト2側の後端部には、減速機構8の一部を構成する円筒状の偏心軸部39が一体に設けられている。
前記ニードルベアリング38は、偏心軸部39の内周面に圧入された円筒状のリテーナ38aと、該リテーナ38aの内部に回転自在に保持された複数の転動体であるニードルローラ38bとから構成されている。このニードルローラ38bは、前記従動部材9の円筒部9bの外周面を転動している。
前記小径ボールベアリング37は、内輪が前記従動部材9の円筒部9bの前端縁とカムボルト10のワッシャ10cとの間に挟持状態に固定されている一方、外輪がモータ軸13の内周に形成された段差部と抜け止めリングであるスナップリング45との間で軸方向の位置決め支持されている。
また、前記モータ軸13(偏心軸部39)の外周面と前記ハウジング5の延出部5dの内周面との間には、減速機構8の内部から電動モータ12内への潤滑油のリークを阻止する小径なオイルシール46が設けられている。このオイルシール46は、内周部が前記モータ軸13の外周面に弾接していることによって、該モータ軸13の回転に対して摩擦抵抗を付与するようになっている。
前記コントロールユニット40は、図外のクランク角センサやエアーフローメータ、水温センサ、アクセル開度センサなど各種のセンサ類から情報信号に基づいて現在の機関運転状態を検出して機関制御を行う。
また、前記機関運転状態と前記カムシャフト2の現在の回転位置を検出する検出手段からのフィードバック信号に応じてクランクシャフトとカムシャフトとの相対回転位相の要求位相角を設定し、前記電動モータ12の電磁コイル18に通電してモータ軸13の回転制御を行い、前記減速機構8を介してカムシャフト2を正逆回転させて、該カムシャフト2の前記タイミングスプロケット1に対する相対回転位相を制御するようになっている。
前記検出手段は、カムシャフト2の回転位置をパルス信号によって検出する図外の検出センサと、コントロールユニット40内に有し、前記検出センサから出力された信号を演算して回転位置を算出する演算回路とから構成されている。
また、前記コントロールユニット40は、後述するように、機関の停止時と機関始動時における機関温度(例えば機関水温)に応じて前記電動モータ12を回転制御することにより、機関停止時に、前記カムシャフト2の相対回転位相角を要求位相角と異なる位相角に変換するが、位相角の検出が困難な機関始動時には、一定の操作力を与え、または、操作力をオフするようにし、前記コントロールユニット40が位相角を検出した段階でフィードバック制御に移行するようになっている。
前記減速機構8は、図1、図2に示すように、偏心回転運動を行う前記偏心軸部39と、該偏心軸部39の外周に設けられた大径ボールベアリング47と、該大径ボールベアリング47の外周に設けられた前記ローラ48と、該ローラ48を転動方向に保持しつつ径方向の移動を許容する前記保持器41と、該保持器41と一体の前記従動部材9と、から主として構成されている。
前記偏心軸部39は、外周面に形成されたカム面の軸心Yがモータ軸13の軸心Xから径方向へ僅かに偏心している。なお、前記大径ボールベアリング47とローラ48などが遊星噛み合い部として構成されている。
前記大径ボールベアリング47は、前記ニードルベアリング38の径方向位置で全体がほぼオーバラップする状態に配置され、内輪47aが前記偏心軸部39の外周面に圧入固定されていると共に、外輪47bの外周面には前記ローラ48が常時当接している。また、外輪47bの外周側には円環状の隙間Cが形成されて、この隙間Cによって大径ボールベアリング47全体が前記偏心軸部39の偏心回転に伴って径方向へ移動可能、つまり偏心動可能になっている。
前記各ローラ48は、前記大径ボールベアリング47の偏心動に伴って径方向へ移動しつつ前記環状部材19の内歯19aに嵌入すると共に、保持器41のローラ保持孔41aの両側縁によって周方向にガイドされつつ径方向に揺動運動させるようになっている。
前記減速機構8の内部には、潤滑油供給手段によって潤滑油が供給されるようになっている。この潤滑油供給手段は、前記シリンダヘッドの軸受の内部に形成されて、図外のメインオイルギャラリーから潤滑油が供給される油供給通路と、図1に示すように、前記カムシャフト2の内部軸方向に形成されて、前記油供給通路にグルーブ溝を介して連通した油供給孔51と、前記従動部材9の内部軸方向に貫通形成されて、一端が該油供給孔51に開口し、他端が前記ニードルベアリング38と大径ボールベアリング47の付近に開口した前記小径なオイル孔52と、同じく従動部材9に貫通形成された前記大径な3つの図外のオイル排出孔と、から構成されている。
この潤滑油供給手段によって、前記空間部44に潤滑油が供給されて滞留し、ここから大径ボールベアリング47や各ローラ48などの可動部へ十分に潤滑油が供給されるようになっている。なお、この空間部44内に滞留した潤滑油は、前記小径オイルシール46によってハウジング5内へのリークが阻止されている。
なお、前記モータ軸13の前端内部には、図1に示すように、カムボルト10側の空間部を閉止する断面ほぼコ字形状の第1キャップ53が圧入固定されている。また、前記膨出部3aのほぼ中央に形成された作業用の貫通孔3gの孔縁には、該貫通孔3eを閉止する断面ほぼコ字形状の第2キャップ54が圧入固定されている。
以下、本実施形態の可変動弁装置の基本的な作動について説明すると、まず、機関のクランクシャフトが回転駆動するとタイミングチェーン42を介してタイミングスプロケット1が回転して、その回転力が環状部材19と雌ねじ形成部6を介してハウジング5、つまり電動モータ12が同期回転する。一方、前記環状部材19の回転力が、各ローラ48から保持器41及び従動部材9を経由してカムシャフト2に伝達される。これによって、カムシャフト2のカムが吸気弁を開閉作動させる。
そして、機関始動後の所定の機関運転時には、前記コントロールユニット40から各端子片31,31から各ピグテールハーネス32a、32b、第2ブラシ30a、30b、各スリップリング26a、26bなどを介して電動モータ12の電磁コイル17に通電される。これによって、モータ軸13が回転駆動され、この回転力が減速機構8を介してカムシャフト2に減速された回転力が伝達される。
すなわち、前記モータ軸13の回転に伴い偏心軸部39が偏心回転すると、各ローラ48がモータ軸13の1回転毎に保持器41の各ローラ保持孔41aで径方向へガイドされながら前記環状部材19の一の内歯19aを乗り越えて隣接する他の内歯19aに転動しながら移動し、これを順次繰り返しながら円周方向へ転接する。この各ローラ48の転接によって前記モータ軸13の回転が減速されつつ前記従動部材9に回転力が伝達される。このときの減速比は、前記ローラ48の個数などによって任意に設定することが可能である。
これにより、カムシャフト2がタイミングスプロケット1に対して正逆相対回転して相対回転位相が変換されて、吸気弁の開閉タイミングを進角側あるいは遅角側に変換制御するのである。
前記タイミングスプロケット1に対するカムシャフト2の正逆相対回転の最大位置規制(角度位置規制)は、前記ストッパ凸部1fの各側面が前記ストッパ凹溝2bの各対向面2c、2dのいずれか一方に当接することによって行われる。
すなわち、前記従動部材9が、前記偏心軸部39の偏心回動に伴ってタイミングスプロケット1の回転方向と同方向に回転することによって、ストッパ凸部1fの一側面がストッパ凹溝2bの一方側の対向面1cに当接してそれ以上の同方向の回転が規制される。これにより、カムシャフト2は、タイミングスプロケット1に対する相対回転位相が進角側へ最大に変更される。
一方、従動部材9が、タイミングスプロケット1の回転方向と逆方向に回転することによって、ストッパ凸部1fの他側面がストッパ凹溝2bの他方側の対向面2dに当接してそれ以上の同方向の回転が規制される。これにより、カムシャフト2は、タイミングスプロケット1に対する相対回転位相が遅角側へ最大に変更される。
この結果、吸気弁の開閉タイミングが進角側あるいは遅角側へ最大に変換されて、機関の燃費や出力の向上が図れる。
そして、本実施形態では、機関停止時に、次回の再始動の際の要求位相角に対して前記コントロールユニット40によって敢えて進角側または遅角側の異なる位相角へ変換制御した状態で機関を停止させるようになっている。
〔冷機(低温)始動時の制御〕
以下、まず、イグニッションスイッチ(IGS)をオン操作して機関を再始動させる際に、機関温度が所定以下の低温状態(冷機始動状態)である場合における制御を、図8のタイムチャートと図9の制御フローチャートによって説明する。
図8に示すように、機関停止時に、IGSをオフ操作すると、機関のクランクシャフトの回転(図中、N線)が漸次低下すると同時に、前記コントロールユニット40が、この時点での目標位相角(Q1線)を敢えて進角側に設定する。
そして、コントロールユニット40は、前記位相変更機構4の電動モータ12に出力して前記カムシャフト2に前記目標位相角(Q1線)に近づくように回転操作力を付与して該カムシャフト2のクランクシャフトに対する相対回転位相角(コントロールユニット40の検出位相角、図中R線)を、目標位相角の進角側(Q1線)へずらす制御を行う(図中、A領域)。その後、クランクシャフトの回転が完全に停止されて機関停止状態になる。
次に、機関を長時間停止させた後に、IGSをオン操作して冷機再始動すると、コントロールユニット40は、冷機始動に適した遅角側の相対回転位相角(要求位相角Q)に設定されるが、クランキングが開始されるまでの間、カムシャフト2とクランクシャフトとの実位相角(図中P線)を確認すると、この時点では未だ進角側になっている。
その後、クランキングが開始されると、前記カムシャフト2にバルブスプリングのばね力などに起因して発生する交番トルクにより該カムシャフト2の回転位相角が進角側から自動的に遅角側に変換される(図中PのB領域)。
この段階で前記検出手段からの検出信号に基づいて前記コントロールユニット40による位相角検出が開始され、この検出された位相角に基づいて電動モータ12によるフィードバック制御が開始される。
このように、カムシャフト2の位相角を、フィードバック制御が開始される前に進角側から遅角側へ変換することによって、静摩擦状態から動摩擦状態へ移行しておくため、位相変更機構4による位相角変換の作動応答性が大幅に向上する。
次に、前記コントロールユニット40による具体的な制御を図9のフローチャートに基づいて説明する。
ステップ1では、運転者がIGSをオフ操作したか否かを判断し、オフ操作している場合はステップ2に進み、オフ操作していない場合は、既にオン操作されて機関が駆動中であるから、後述する図11に示す制御フローチャートのステップ21に移行する。
ステップ2では、次回再始動時の冷機始動における要求位相角Qに対して任意の角度分だけ進角側に目標位相角Q1を設定する。
ステップ3では、前記目標位相角Q1に対して機関回転数の低下中から機関が停止する直前までフィードバック制御によって前記電動モータ12に制御電流を出力してカムシャフト2のクランクシャフトに対する相対位相角を進角側に制御する。
ステップ4では、クランクシャフトの回転が停止して機関が完全に停止する状態となる。
次に、ステップ5では、運転者が機関再始動のためにIGSをオン操作したか否かを判断する。ここで、オン操作していないと判断した場合は、ステップ4にリターンし、オン操作したと判断した場合は、次のステップ6において機関始動時の水温が所定以下の低温か否かを判断する。
ここで、所定以下の低温になっていると判断した場合は、ステップ7で、前述の機関が停止するまでの間の前記電動モータ12制御によって現在のカムシャフト2が目標位相角Q1へ到達している否かを判断する。
ステップ8では、次回の始動時に、前記検出手段を介してクランクシャフトとカムシャフト2の相対的なコントロールユニット40によって位相角が検出されるまで、前記カムシャフト2に入力される交番トルクによって遅角側に自動的に変換される。したがって、前記電動モータ12に対して制御信号を出力せずに操作力を入力しない。そして、この時点でクランキングが開始される。
ステップ9では、前記実位相角の検出後に、通常のフィードバック制御へ移行して、低温始動時の要求位相角Qへ収束される。
その後、ステップ10において機関を始動し、ステップ11では、前記位相変更機構4が、フィードバック制御によって通常の要求位相角に制御する。
また、前記ステップ6で、機関水温が低温ではないと判断した場合は、ステップ12に移行し、ここでは、次回の機関始動時に検出手段による実際の位相角が検出されるまで、該カムシャフト2に発生する交番トルクによって遅角側へ変換される。したがって、電動モータ12に対して制御信号を出力せず操作力を入力しない。
その後、ステップ13に移行して、カムシャフト2とクランクシャフトの実際の位相角検出後に、通常のフィードバック制御に移行して、検出された機関水温での最適な始動位相角へ収束させ、その後、ステップ10に移行して機関を始動する。
そして、前記ステップ7において機関が停止するまでに目標位相角Q1に到達していないと判断した場合は、ステップ14に移行する。
このステップ14では、機関停止直前の位相角が低温始動位相角Qに対して進角側か否かを判断する。進角側にあったとすると、ステップ8に進むが、進角側にないと判断した場合は、ステップ15に移行する。
このステップ15では、次回の始動時にカムシャフト2とクランクシャフトの相対的な位相角が検出されるまで、電動モータ12に制御信号を出力し、この操作力によって前記カムシャフト2を進角側へ変換させる。その後、ステップ9に移行する。
このように、機関停止時に、電動モータ12を介してカムシャフト2を、機関の低温始動の要求位相角Q(遅角側)とは反対の進角側の目標位相角Q1へ予め変換しておき、次回の機関始動時のクランキング開始からカムシャフト2とクランクシャフトとの相対的なコントロールユニット40によって位相角が検出されてフィードバック制御が開始されるまでの間に、カムシャフト2が進角側の位相角Q1から遅角側への位相角Q方向へ変換させるようにしたため、静摩擦状態から動摩擦状態に予め移行させることができる。
これによって、前記フィードバック制御開始直後から前記位相変更機構4によるクランクシャフトに対するカムシャフト2の相対的な位相角変換の作動応答性を向上させることができると共に、制御の安定化を図ることができる。
しかも、前記遅角側への変換作動を、前記電動モータ12の操作力を利用せずに、クランキング時のカムシャフト2に発生する交番トルクを利用したため、電力消費量を低減できる。
また、前記始動時の位相角を、進角側から要求位相角Qの遅角方向へ向かいながら始動が開始することによって、該始動性が良好になる。
〔暖機完了後(高温)始動時の制御〕
次に、機関温度が所定以上の高温状態で機関を再始動するなどの、例えば、アイドルストップなどによって機関停止後に短時間で機関を自動的に再始動させる場合における制御を、図10のタイムチャートと図11の制御フローチャートによって説明する。
すなわち、図10に示すように、例えば、アイドルストップにより機関が自動停止されると、機関のクランクシャフトの回転(図中、N線)が漸次低下すると同時に、前記コントロールユニット40がこの時点での目標位相角(Q2線)を敢えて遅角側に設定する。
そして、前記コントロールユニット40は、位相変更機構4の電動モータ12に制御電流を出力して前記カムシャフト2に前記目標位相角(Q2線)に近づくように回転操作力を付与し、該カムシャフト2のクランクシャフトに対するコントロールユニット40によって検出された位相角(図中R線)を進角側(Q2線)へずらす制御を行う(図中、C領域)。その後、クランクシャフトの回転が完全に停止され、機関停止状態になる。
次に、機関を短時間停止させた後の高温状態での再始動する際には、コントロールユニット40は、クランキングが開始される前に高温始動に適した進角側の相対回転位相角(要求位相角Q)に設定する。
その後、クランキングが開始された時点から前記カムシャフト2とクランクシャフトとのコントロールユニット40よって検出された位相角が検出されるまでの間、前記電動モータ12に一定の制御信号を出力して操作力を付与して前記カムシャフト2の位相角を遅角側から進角側に変換する(図中PのD領域)。
この段階で前記検出手段からの検出信号に基づいて前記コントロールユニット40によって位相角の検出が開始され、この位相角に基づいて電動モータ12によるフィードバック制御が開始される。
このように、フィードバック制御が開始される前から遅角側から進角側へ変換することによって、静摩擦状態から動摩擦状態へ移行しておくため、前記位相角変換の作動応答性が大幅に向上する。
次に、前記コントロールユニット40による具体的な制御を図11のフローチャートに基づいて説明する。
ステップ21では、前記コントロールユニット40から機関停止の信号が出力された否かを判断し、出力されていない場合は、機関が駆動中であるからステップ31に移行して通常の要求位相角に基づいて制御される。コントロールユニット40から出力されて機関が停止していると判断した場合はステップ22に移行する。
ステップ22では、次回始動時の暖機後(高温状態)の始動における要求位相角Qに対して任意の角度分だけ遅角側に目標位相角Q2を設定する。
ステップ23では、前記目標位相角Q2に対して機関回転数の低下中から機関が停止する直前までフィードバック制御によって前記電動モータ12に制御電流を出力して前記クランクシャフトに対するカムシャフト2の位相角を遅角側の目標位相角Q2となるように制御する。その後、ステップ24で機関を完全に停止する状態とする。
次に、ステップ25では、ブレーキペダルの踏み込み解除に伴って電源がオンされて機関再始動されたか否かを判断する。ここで再始動が開始されていないと判断した場合はステップ24にリターンするが、再始動が開始されたと判断した場合はステップ26に移行する。
このステップ26では、再始動時の機関水温が所定温度以上か否かを判断し、所定温度以上であると判断した場合は、ステップ27に移行する。
このステップ27では、先の制御によって位相変更機構4によりカムシャフト2が、現在、目標位相角Q2に到達しているか否かを判断し、遅角側の目標位相角Q2に到達していると判断した場合は、ステップ28に移行する。
ここでは、次回の始動時にカムシャフト2の位相角が検出されるまでの間に、電動モータ12に一定の制御信号を出力して操作力を付与しカムシャフト2を高温時の要求位相角Qとなるように進角側へ変換制御する。
続く、ステップ29では、前記検出手段によってカムシャフト2の実位相角を検出した後に、通常のフィードバック制御に移行して暖機始動時の要求位相角Qへ収束され、ステップ30で機関が始動される。
ステップ31では、フィードバック制御によって位相変更機構4が通常の機関運転状態に応じた要求位相角に制御する。
そして、前記ステップ26において、機関水温が所定以下の低温であった場合は、ステップ32に移行し、ここで、次回の始動時にカムシャフト2の位相角が検出されるまで、クランキング開始によりカムシャフト2に発生する交番トルクによって位相角を遅角側に自動的に変換させる。このとき、電動モータ12には制御信号を出力せず、操作力を付与しない。
ステップ33では、現在のカムシャフト2の位相角を検出した後に、通常のフィードバック制御に移行して、検出水温での最適な始動位相角へ収束させる。
前記ステップ27において現在のカムシャフト2の位相角が遅角側の目標位相角Q2に到達していないと判断した場合は、ステップ34に移行し、ここでは、機関停止直前のカムシャフト2の位相角が暖機始動時の要求位相角Qに対して遅角側にあるか否かを判断し、遅角側にあると判断した場合は、前記ステップ28に移行するが、遅角側にないと判断した場合は、ステップ35に移行する。
このステップ35では、次回始動時においてカムシャフト2のコントロールユニット40によって位相角が検出されるまでの間に、クランキング開始によりカムシャフト2に発生する交番トルクによって位相角が遅角側に変換され、その後、ステップ29に移行する。このとき、電動モータ12には制御信号を出力せず、操作力を付与しない。
以上のように、アイドリングストップ車などのように、機関再始動時に機関温度が高い場合には、機関停止時に、電動モータ12を介してカムシャフト2を、機関の低温始動の要求位相角Q(進角側)とは反対の遅角側の目標位相角Q2へ予め変換しておき、次回の機関始動時のクランキング開始からカムシャフト2のコントロールユニット40によって位相角が検出されてフィードバック制御が開始されるまでの間に、カムシャフト2が遅角側の目標位相角Q2から進角側の要求位相角Q方向へ変換させるようにしたため、静摩擦状態から動摩擦状態に予め移行させることができる。
これによって、前記フィードバック制御開始直後から前記位相変更機構4によるクランクシャフトに対するカムシャフト2の位相角変換の作動応答性を向上させることができると共に、制御の安定化を図ることができる。
また、この場合も、前記始動時の位相角を、進角側から始動要求位相角の遅角方向へ向かいながら始動が開始することによって、該始動性が良好になる。
前記機関の再始動時に機関水温が高い場合には、アイドリングストップ車に限らず、先のIGSをオフ操作から再始動時のオン操作までの時間が短い場合も含まれ、この場合にも前述の高温始動の特異な制御を行うものである。
また、前記コントロールユニット40は、電動モータ12を介して機関始動前の制御において進角側あるいは遅角側から各要求位相角Qへの制御中には、オーバーシュートしないように制御している。つまり、要求位相角Qへの制御中に該要求位相角Qをオーバーシュートしてしまうと、さらに要求位相角Qに戻さなければならないので、位相変更の作動応答性が低下してしまう。そこで、前記オーバーシュートしないように制御しているのである。
さらに、本実施形態では、前記機関停止時の前記回転位相角Q1,Q2と要求位相角Qとの位相差を、機関の温度が低くなるにつれて小さくするようになっている。このように、前記位相差を温度の低下にしたがって小さくすることにより、始動時における要求位相角Qまでの時間を短縮化することができる。
また、前記検出手段の検出結果に基づいて前記要求位相角Qに合わせる制御を開始する前と後では、前記電動モータ12が同じ回転方向に駆動されるように設定されている。したがって、前記電動モータ12を逆回転させる際のタイムロスと、過回転による制御のオーバーシュートの発生を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、前記各スリップリング26a、26bが、樹脂プレート22の前端面に設けられ、該各スリップリング26a、26bに対して第2ブラシ30a、30bを、ブラシ保持部28aを介して軸方向から当接させることができることから、その当接作業が容易になる。
すなわち、前記第2ブラシ30a、30bやコイルスプリング32a、32b等の各構成部材を、図1に示すようにブラシ保持体28のブラシ保持部28a内に予めセットしておく。その後、このブラシ保持部28aを、前記膨出部3aの保持用孔3c内にガイド面を介して軸方向から挿入し、前記第2ブラシ30a、30bの先端面30c、30dが各スリップリング26a、26bに当接した後は、各コイルスプリング32a、32bが圧縮変形すると共に、このばね力に抗してさらに押し込み挿入する。その後、図1及び図7に示すように、前記各ブラケット部28c、28cの各ボルト挿通孔28e、28eを雌ねじ孔3f、3fを合わせて位置決めを行い、各ボルト36,36をさらに挿入、螺着して締め付ければ、ブラシ保持部28aが膨出部3aに確実に固定される。
同時に、前記シール部材34が、円筒壁3bの前端面で圧縮変形してブラシ保持部28aの外周面と円筒壁3bとの間が十分にシールされる。
このように、第2ブラシ30a、30bを、各スリップリング26a、26bに軸方向から自動的に弾接させることができるので、従来のようにストッパの取り付け、取り外す作業が不要になることから、各ブラシ30a、30bの組み付け作業が容易になる。
なお、前記ブラシ保持部28aを保持用孔3c内に挿入した初期の段階では、第2ブラシ30a、30bは各スリップリング26a、26bに非接触状態になっている。
しかも、前記長さLとL1との関係がL<L1の関係になっていることから、組み付け後に、第2ブラシ30a、30bを各スリップリング26a、26bに確実に弾接させることができる。この結果、常時良好な通電性が得られる。
前記実施形態から把握される前記請求項以外の発明の技術的思想について以下に説明する。
〔請求項a〕請求項1に記載のバルブタイミング制御装置のコントローラにおいて、
前記位相変更機構は、前記電動モータと、該電動モータの出力軸の回転を減速して前記カムシャフトに伝達する減速機とから構成されていることを特徴とするバルブタイミング制御装置のコントローラ。
〔請求項b〕請求項aに記載のバルブタイミング制御装置のコントローラにおいて、
前記検出手段は、前記電動モータの出力軸の回転位置を検出するセンサと、該センサによって検出された検出値に基づいて算出する演算回路とを備えたことを特徴とするバルブタイミング制御装置のコントローラ。
この発明によれば、検出手段によるカムシャフトの回転位置検出精度の向上が図れる。
〔請求項c〕請求項1に記載のバルブタイミング制御装置のコントローラにおいて、
前記要求位相角は、最進角位置と最遅角位置の間であることを特徴とするバルブタイミング制御装置のコントローラ。
〔請求項d〕請求項cに記載のバルブタイミング制御装置のコントローラにおいて、
前記フィードバック制御による位相変更機構の作動が前記要求位相角をオーバーシュートしないように制御したことを特徴とするバルブタイミング制御装置のコントローラ。
前記要求位相角をオーバーシュートしてしまうと、さらに要求位相角に戻さなければならないので、位相変更の作動応答性が低下してしまう。
〔請求項e〕請求項cに記載のバルブタイミング制御装置のコントローラにおいて、
機関の停止時の前記回転位相角は、前記要求位相角に対して進角側に寄りに制御され、
前記位相変更機構は、カムシャフトからの入力トルクによって前記駆動回転体に対して前記カムシャフトを相対回転させるものであることを特徴とするバルブタイミング制御装置のコントローラ。
機関始動前には、前記位相角が進角側寄りになっていることから、例えばイグニッションスイッチをオンさせてクランキングが開始されるとカムシャフトに発生する交番トルク(負荷トルク)によって遅角側へ自己復帰力が働き、この自己復帰力が要求位相角までの作動の助走力となることから、その後のフィードバック制御時の作動応答性が向上する。
また、前記自己復帰力を利用することから、制御が容易になる。
〔請求項f〕請求項eに記載のバルブタイミング制御装置のコントローラにおいて、
クランキング開始から前記検出手段によるカムシャフトの回転位置を検出可能になるまでの間に、前記電動モータには通電せずにカムシャフトの負荷トルクによって前記要求位相角に近づく方向へ移動することを特徴とするバルブタイミング制御装置のコントローラ。
請求項eの発明と同じく、機関始動時の制御が容易になる。
〔請求項g〕請求項eに記載のバルブタイミング制御装置のコントローラにおいて、
クランキング開始から前記検出手段がカムシャフトの回転位置を検出可能になるまでの間に、前記電動モータに通電することを特徴とするバルブタイミング制御装置のコントローラ。
〔請求項h〕請求項cに記載のバルブタイミング制御装置のコントローラにおいて、
機関の停止時の前記回転位相角は、前記要求位相角に対して遅角側寄りに制御され、
機関の温度が所定以上になっている状態での機関の始動可能な位相角度範囲は、前記要求位相角に対して遅角側の方が進角側よりも大きいことを特徴とするバルブタイミング制御装置のコントローラ。
〔請求項i〕請求項cに記載のバルブタイミング制御装置のコントローラにおいて、
機関停止時の前記回転位相角は、前記要求位相角に対して遅角側であり、前記位相変更機構は、前記カムシャフトからの入力トルクによって前記駆動回転体に対してカムシャフトを相対回転させることを特徴とするバルブタイミング制御装置のコントローラ。
〔請求項j〕請求項1に記載のバルブタイミング制御装置のコントローラにおいて、
クランキングの開始から前記検出手段がカムシャフトの回転位置を検出可能となるまでの間に、前記要求位相角に近づく方向へ前記電動モータを駆動させることを特徴とするバルブタイミング制御装置のコントローラ。
〔請求項k〕請求項jに記載のバルブタイミング制御装置のコントローラにおいて、
クランキングの開始から前記検出手段によってカムシャフトの回転位置が検出可能となるまでの間に、前記要求位相角に近づく方向へ前記電動モータの通電量を、機関の温度が低くなるにしたがって多くなるように制御したことを特徴とするバルブタイミング制御装置のコントローラ。
〔請求項l〕請求項1に記載のバルブタイミング制御装置のコントローラにおいて、
前記機関の停止時に保持する前記回転位相角を、前記機関の温度に応じて変更することを特徴とするバルブタイミング制御装置のコントローラ。
〔請求項m〕請求項lに記載のバルブタイミング制御装置のコントローラにおいて、
機関停止時の前記回転位相角と要求位相角との位相差を、機関の温度が低くなるにつれて小さくすることを特徴とするバルブタイミング制御装置のコントローラ。
この発明によれば、前記位相差を温度の低下にしたがって小さくすることにより、始動時における要求位相角までの時間を短縮化することができる。
〔請求項n〕請求項2に記載のバルブタイミング制御装置のコントローラにおいて、
前記検出手段の検出結果に基づいて前記要求位相角に合わせる制御を開始する前と後では、前記電動モータが同じ回転方向に駆動されていることを特徴とするバルブタイミング制御装置のコントローラ。
この発明では、電動モータの過回転による制御のオーバーシュートの発生を抑制することができる。