JP2015070671A - 回転電機用ステータコアの製造装置及び回転電機用ステータコアの製造方法 - Google Patents

回転電機用ステータコアの製造装置及び回転電機用ステータコアの製造方法 Download PDF

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健太 梅津
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Abstract

【課題】打ち抜き加工における加工硬化を低減して、通電時にステータコアに発生する鉄損を低減させる回転電機用ステータコアの製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】回転電機用ステータコアの製造装置1は、鋼板2が配置される載置平面12を備えたダイ4と、ダイ4上に配置された鋼板2からステータコア形成部材20を所定形状に打ち抜くパンチ8と、ダイ4又はパンチ8に、載置平面12と平行な所定の延在方向に沿って、載置平面12と平行な平面に対して所定深さだけ凹む又は突出するように形成されたシャー14とを備える。シャー14は、ステータコア形成部材20の外周を構成する縁部の内、縁部から一定距離までの部分において磁気抵抗が増加した際に、ステータコア形成部材全体での磁気抵抗を増加させる割合である磁気抵抗増加率が相対的に高い縁部に対向する位置において、延在方向が相対的に高い縁部に対して交差する方向に形成される。
【選択図】図3

Description

本発明は、回転電機用ステータコアの製造装置及び回転電機用ステータコアの製造方法に関する。
従来より、回転電機用ステータコアは、電磁鋼板を多数積層して製造されているが、その際、プレスによる電磁鋼板の打ち抜きが行われている(例えば、特許文献1)。
特開2011‐217565号公報
しかしながら、従来は、図17(a)に示すように、電磁鋼板502をダイ504と付勢手段506aによって付勢された板押さえ506によって挟んだ状態で、上からパンチ508によって瞬間的に製品としてのステータコア形成部材を打ち抜いていた。そのため、図17(b)に示すようなダイ504に形成されたステータコア形成部材と同形状の開口部504aに沿って、ステータコア形成部材の形状輪郭部に加工硬化が発生してしまう。このように、打ち抜き加工の際に、ステータコアの形状輪郭部に加工硬化が発生すると、透磁率が低下(すなわち磁気抵抗が増加)するため、ヒステリシス損失が増加し、鉄損が増加するという問題があった。
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、打ち抜き加工における加工硬化を低減して、通電時にステータコアに発生する鉄損を低減させる回転電機用ステータコアの製造装置及び製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、
鋼板(例えば、後述の実施形態における電磁鋼板2)を所定形状に打ち抜いたステータコア形成部材(例えば、後述の実施形態におけるステータコア形成部材20)を積層することで構成される回転電機用ステータコアの製造装置(例えば、後述の実施形態における回転電機用ステータコアの製造装置1)であって、
前記鋼板が配置される載置平面(例えば、後述の実施形態における載置平面12)を備えたダイ(例えば、後述の実施形態におけるダイ4、予備打ち抜きダイ104、形状打ち抜きダイ204)と、
前記ダイ上に配置された前記鋼板から前記ステータコア形成部材を前記所定形状に打ち抜くパンチ(例えば、後述の実施形態におけるパンチ8、308、予備打ち抜きパンチ108、形状打ち抜きパンチ208)と、
前記ダイ又は前記パンチに、前記載置平面と平行な所定の延在方向に沿って、前記載置平面と平行な平面に対して所定深さだけ凹む又は突出するように形成されたシャー(例えば、後述の実施形態におけるシャー14、114、214、215、314)と、
を備え、
前記シャーは、前記ステータコア形成部材の外周を構成する縁部の内、縁部から一定距離までの部分において磁気抵抗が増加した際に、ステータコア形成部材全体での磁気抵抗を増加させる割合である磁気抵抗増加率が相対的に高い縁部に対向する位置において、前記延在方向が前記相対的に高い縁部に対して交差する方向に形成されることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1の構成に加えて、
前記ダイは、前記ステータコア形成部材の外周を構成する縁部の内、前記磁気抵抗増加率が相対的に低い縁部に対向する位置において、前記載置平面と平行な板押さえ部(例えば、後述の実施形態における板押さえ部13)が形成されていることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、
円弧状のバックヨーク(例えば、後述の実施形態におけるバックヨーク部22)の周方向中央側から径方向内側にティース(例えば、後述の実施形態におけるティース部24)が突出して形成された分割コア形成部材(例えば、後述の実施形態における分割コア形成部材20a)を鋼板を打ち抜くことで形成し、該分割コア形成部材を積層し、円環状に連結することで構成される回転電機用ステータコアの製造装置(例えば、後述の実施形態における回転電機用ステータコアの製造装置1)であって、
前記鋼板が配置される載置平面(例えば、後述の実施形態における載置平面12)を備えたダイ(例えば、後述の実施形態におけるダイ4、予備打ち抜きダイ104、形状打ち抜きダイ204)と、
前記ダイ上に配置された前記鋼板から前記分割コア形成部材を打ち抜くパンチ(例えば、後述の実施形態におけるパンチ8、予備打ち抜きパンチ108、形状打ち抜きパンチ208)と、
前記ダイに、前記載置平面と平行な所定の延在方向に沿って、前記載置平面と平行な平面に対して所定深さだけ凹む又は突出するように形成されたシャー(例えば、後述の実施形態におけるシャー14、114、214、215)と、
を備え、
前記シャーは、前記分割コア形成部材の外周を構成する縁部の内、前記ティースの径方向端部(例えば、後述の実施形態における径方向端部24a)に対向する位置において、前記延在方向が前記ティースの前記径方向端部に対して交差する方向に形成されることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項3の構成に加えて、
前記シャーは、前記分割コア形成部材の外周を構成する縁部の内、前記バックヨークの径方向端部(例えば、後述の実施形態における径方向端部22a)の少なくとも一部に対向する位置も含むように形成されることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項4の構成に加えて、
前記ティースの径方向端部には、円周方向に突出する鍔部(例えば、後述の実施形態における鍔部24b)が形成されており、
前記シャーは、前記鍔部の周方向一方側の先端部に対向する位置から周方向他方側の先端部に対向する位置まで形成されており、
前記ダイには、前記鍔部の周方向一方側の先端部と周方向他方側の先端部の外側に、前記載置平面と平行な板押さえ部が形成されていることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項3〜5のいずれかの構成に加えて、
前記シャーは、前記分割コア形成部材の外周を構成する縁部の内、前記バックヨークの周方向端部(例えば、後述の実施形態におけるバックヨーク部22の周方向端部22b)に対向する位置において、前記延在方向が前記バックヨークの前記周方向端部に対して交差する方向にさらに形成されていることを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれかの構成に加えて、
前記シャーの前記載置平面に対する深さ又は突出長は、前記鋼板の厚みよりも小さいことを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項1〜7のいずれかの構成に加えて、
前記パンチの打ち抜き方向の反対側から、前記鋼板を押さえる逆押さえ部(例えば、後述の実施形態における逆押さえ10)をさらに備えたことを特徴とする。
請求項9に係る発明は、
ダイ(例えば、後述の実施形態におけるダイ4)上に配置された鋼板(例えば、後述の実施形態における電磁鋼板2)からステータコア形成部材(例えば、後述の実施形態におけるステータコア形成部材20)を、所定形状にパンチ(例えば、後述の実施形態におけるパンチ8、308、予備打ち抜きパンチ108、形状打ち抜きパンチ208)により打ち抜く工程と、
前記ステータコア形成部材を積層する工程と、を備える回転電機用ステータコアの製造方法であって、
前記ダイ又は前記パンチには、前記鋼板が配置される載置平面(例えば、後述の実施形態における載置平面12)と平行な所定の延在方向に沿って、前記載置平面と平行な平面に対して所定深さだけ凹む又は突出するようにシャー(例えば、後述の実施形態におけるシャー14、114、214、314)が形成されており、
前記シャーは、前記ステータコア形成部材の外周を構成する縁部の内、縁部から一定距離までの部分において磁気抵抗が増加した際に、ステータコア形成部材全体での磁気抵抗を増加させる割合である磁気抵抗増加率が相対的に高い縁部に対向する位置において、前記延在方向が前記相対的に高い縁部に対して交差する方向に形成されることを特徴とする。
請求項10に係る発明は、
ダイ(例えば、後述の実施形態におけるダイ4)上に配置された鋼板から円弧状のバックヨーク(例えば、後述の実施形態におけるバックヨーク部22)の周方向中央側から径方向内側にティース(例えば、後述の実施形態におけるティース部24)が突出して形成された分割コア形成部材(例えば、後述の実施形態におけるステータコア形成部材20)を、パンチ(例えば、後述の実施形態におけるパンチ8、308、予備打ち抜きパンチ108、形状打ち抜きパンチ208)により打ち抜く工程と、
該分割コア形成部材を積層し円環状に連結する工程と、を備える回転電機用ステータコアの製造方法であって、
前記ダイには、前記鋼板が配置される載置平面(例えば、後述の実施形態における載置平面12)と平行な所定の延在方向に沿って、前記載置平面と平行な平面に対して所定深さだけ凹む又は突出するようにシャー(例えば、後述の実施形態におけるシャー14、114、214、215、314)が形成されており、
前記シャーは、前記分割コア形成部材の外周を構成する縁部の内、前記ティースの径方向端部(例えば、後述の実施形態における径方向端部24a)に対向する位置において、前記延在方向が前記ティースの前記径方向端部に対して交差する方向に形成されることを特徴とする。
請求項1及び請求項9の発明によれば、対向する位置にシャーが形成された縁部においては、徐々にせん断が行われる逐次的せん断により、所定形状のステータコア形成部材が打ち抜かれることとなるため、瞬間的に発生するせん断応力(打ち抜きの間に発生するせん断応力のピーク値)が低減される。そのため、せん断応力が大きい程発生し易くなるステータコア形成部材の縁部の歪み、すなわち残留応力を低減することができる。従って、シャーを設けない場合、すなわち瞬間的な一度のせん断によってステータコア形成部材を打ち抜く場合に比べて、打ち抜きの際の縁部の歪み(加工硬化)を抑制することができ、ステータコア形成部材の縁部の内、磁気抵抗増加率の高い縁部に対して磁気抵抗の増加を抑制でき、通電時にステータコアにおいて発生する鉄損を効果的に低減することが可能となる。
請求項2の発明によれば、縁部の内、磁気抵抗増加率が相対的に低い縁部に対向する位置においては、シャーが形成されずに載置平面と平行な板押さえ部が形成されているため、仮に縁部の全てに対向する位置にシャーを設けた場合には鋼板を押さえることが困難となりステータコア形成部材の打ち抜き精度が低下してしまう虞があるところ、板押さえ部によって鋼板を安定的に押さえることで打ち抜き精度の低下を抑制することができる。したがって、打ち抜き精度の低下を抑制しつつ、磁気抵抗増加率の相対的に高い縁部においては、シャーによって打ち抜きの際のステータコア形成部材の縁部の歪み、すなわち残留応力を抑制して鉄損を低減することができる。
請求項3及び請求項10の発明によれば、対向する位置にシャーが形成された縁部においては、徐々にせん断が行われる逐次的せん断により、所定形状の分割コア形成部材が打ち抜かれることとなるため、瞬間的に発生するせん断応力(打ち抜きの間に発生するせん断応力のピーク値)が低減される。そのため、ティースの径方向端部の歪み、すなわち残留応力を低減することができ、ティースの径方向端部の磁気抵抗の増加を抑制できるため、通電時にステータコアにおいて発生する鉄損を効果的に低減することが可能となる。
請求項4の発明によれば、分割コア形成部材の外周を構成する縁部の内、バックヨークの径方向端部の少なくとも一部に対向する位置も含むようにシャーを形成したため、バックヨークの径方向端部の磁気抵抗の増加を抑制できる。そのため、通電時に分割コアにおいて発生する鉄損をさらに低減することができる。また、ティースの径方向端部に対するシャーと、バックヨークの径方向端部に対するシャーとを共通のシャーによって形成することができるため、打ち抜き型(ダイ)の構成の複雑化を抑制しながら、ティースの径方向端部とバックヨークの径方向端部との打ち抜きの際の歪み(加工硬化)を抑制することができる。
請求項5の発明によれば、ティースの径方向端部に円周方向に突出するように設けられた鍔部の周方向一方側の先端部に対向する位置から周方向他方側の先端部に対向する位置までシャーを形成しているが、鍔部の先端部は分割コア形成部材において比較的微細な部分となるため、鍔部に隣接する位置において板押さえを行うことができ、細かい形状となる鍔部において打ち抜き精度を確保することができる。
請求項6の発明によれば、バックヨークの周方向端部に対向する位置において、延在方向がバックヨークの周方向端部に対して交差する方向にもシャーを形成したことにより、バックヨークの周方向端部の歪み、すなわち残留応力を低減することができ、バックヨークの周方向端部の磁気抵抗の増加を抑制できるため、通電時に分割コアにおいて発生する鉄損を低減することができる。
請求項7の発明によれば、シャーの深さ又は突出長を鋼板の厚みよりも小さくしているが、シャーの深さ又は突出長が大きくなるほど、鋼板がせん断される(打ち抜かれる)までに鋼板が打ち抜き方向に押される距離が大きくなってしまうこととなり、鋼板に反りや撓みが発生することによる歪みが発生してしまう虞があるところ、シャーの深さ又は突出長を鋼板の厚みよりも小さくしたことにより、鋼板の反り又は撓みを抑制しつつステータコア形成部材の縁部の歪み、すなわち残留応力を低減することができる。
請求項8の発明によれば、パンチの打ち抜き方向の反対側から鋼板を押さえる逆押さえ部を備えているため、ダイ又はパンチがシャーを有することにより鋼板が所定形状にせん断される(打ち抜かれる)までに鋼板が打ち抜き方向に押されていっても、鋼板の反り又は撓みを抑制しつつステータコア形成部材の縁部の歪みすなわち残留応力を低減することができる。
本発明の一実施形態の回転電機用ステータコアの製造装置の概略構成を示す縦断面図である。 図1に示す回転電機用ステータコアの製造装置のダイ上に設けられた電磁鋼板とパンチを示す斜視図である。 ダイにおけるシャー及び載置平面の配置を示す図であり、(a)はダイの上面図、(b)は(a)のダイを図中右側から見た側面図、(c)は(a)のダイを図中下側から見た正面図である。 ステータコア形成部材を模式的に示すプレスモデルを示す図である。 図4に示す各領域(磁気抵抗区間)のみにおいて磁気抵抗が増加した場合における磁気抵抗増加率を示したグラフである。 ダイに対するシャーの4通りの配置を示す平面図である。 図6(A)〜(D)の各シャー配置が歪みを改善する領域の磁気抵抗増加率と、結果として実際に得られたヒステリシス損失との関係を示すグラフである。 シャーの深さとヒステリシス損失係数との関係を示すグラフである。 せん断面からの距離と硬度との関係を、従来の打ち抜きと本発明の打ち抜きの場合を比較して示すグラフである。 (a)予備打ち抜き工程のダイとパンチを示す斜視図であり、(b)は(a)のパンチに形成されたシャーを示す斜視図である。 (a)形状打ち抜き工程のダイとパンチを示す斜視図であり、(b)は(a)のダイに形成されたシャーを示す斜視図である。 パンチに対して傾斜面形状のシャーを形成した例を示す斜視図である。 形状打ち抜きに複数谷形状のシャーを形成した例を示す斜視図である。 非分割ステータの例とその1つのティース部分を取り出して拡大して示す平面図である。 図14に示す各領域(磁気抵抗区間)のみにおいて磁気抵抗が増加した場合における磁気抵抗増加率を示すグラフである。 (a)は、ステータコアの一部拡大図であり、(b)は、(a)に示すステータコアのスロット部を打ち抜くパンチに設けられるシャーを示す平面図及び側面図である。 (a)は、従来の回転電機用ステータコアの製造装置の縦断面図であり、(b)は(a)のダイの上面図である。
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に基づいて説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1及び図2に示すように、本実施形態の回転電機用ステータコアの製造装置1は、主に、電磁鋼板2を載置するダイ4と、ダイ4上に載置された電磁鋼板2を上から押さえる上押さえ6と、ダイ4と上押さえ6とによって挟まれた電磁鋼板2からステータコア形成部材20を上から打ち抜くパンチ8及び、パンチ8の打ち抜き方向の反対側から電磁鋼板2を押さえる逆押さえ10とから構成されている。
ダイ4には、図3に示すように、打ち抜かれるステータコア形成部材20の外形に合わせた形状に開口部4aが形成されており、この開口部4aの縁に沿って、同じくこのステータコア形成部材20と同じ外形を有するパンチ8が開口部4aの内部にまで移動することにより電磁鋼板2を打ち抜くようになっている。またこのとき、逆押さえ10の上端部10aも、ダイ4の開口部4aの縁部に沿ってその内部に入り込んで、電磁鋼板2を下側からパンチ8に対して押し付けており、パンチ8の打ち抜き動作に伴ってパンチ8及び打ち抜かれた電磁鋼板2と一緒に下方に移動するようになっている。
また、図1に示すように、上押さえ6には、上押さえ6をダイ4側に向けて上から付勢するバネ等の付勢部材6aが設けられるとともに、逆押さえ10には、逆押さえ10を下(パンチ8の打ち抜き方向の反対側)から上に向けて付勢する付勢部材10bが設けられている。
図2に示すように、パンチ8は、ダイ4上に載置された電磁鋼板2の中央からステータコア形成部材20として分割コア形成部材20aを打ち抜く。分割コア形成部材20aは、バックヨーク部22とティース部24とから構成されている。電磁鋼板2から分割コア形成部材20aを打ち抜いた周囲の部分は鋼板スクラップ部28となる。
図3に示すように、ダイ4には、パンチ8の移動方向と垂直に平面状に形成された載置平面12と、載置平面12と平行な平面に対して所定深さだけ凹むような、又は所定高さだけ突出するような形状を有するシャー14が形成されている。また、載置平面12のうち、上押さえ6と接する部分が、載置平面12と平行な板押さえ部13となっている。板押さえ部13においては、載置平面12と平行な押さえ面を有する上押さえ6とともに電磁鋼板2が挟持されて固定される。板押さえ部13は、載置平面12の全部であっても一部であってもよいが、以下の説明では、載置平面12の全部が板押さえ部13となっている。すなわち、ダイ4の内シャー14が形成されていない部分は板押さえ部13として機能することとなる。
より具体的に説明すると、図3(a)に示すように、ダイ4の上面四隅等に電磁鋼板2を押さえるための板押さえ部13(載置平面12)が設けられている。また、図3(b)及び図3(c)に示すように、V字状に凹状に切りかかれた所定幅のシャー14(14a、14b)が、載置平面12と平行な所定の延在方向に沿って、分割コア形成部材20a(図2参照)が打ち抜かれるダイ4の開口部4aの所定位置に形成されている。
シャー14(14a、14b)は、分割コア形成部材20aを打ち抜くためのダイ4の開口部4aの縁部の内、縁部から一定距離までの部分において、磁気抵抗が増加した際に分割コア形成部材20a全体での磁気抵抗を増加させる割合である磁気抵抗増加率が相対的に高い縁部に対向する位置において、延在方向がこの相対的に高い縁部に対して交差する方向に形成されることが好ましい。
以下、シャー14(14a、14b)の形状や配置に関しては、その位置にシャー14を配置する理由を含めて、図4〜図6を用いて詳しく説明する。
まず、そもそもダイ4あるいはパンチ8にシャー14(14a、14b)を形成するのは、電磁鋼板2を打ち抜く際に一気に瞬間的に打ち抜くと、形状輪郭部に加工硬化(歪み)が生じ、通電時における鉄損が増加する。そのため、金型(ダイ、パンチ)に傾斜角を持ったシャーを形成することで、従来のように瞬間的に打ち抜くのではなく、徐々にせん断を行う、逐次的なせん断とすることにより、プレス荷重を低減させて、加工硬化を低減させるためである。
逐次的なせん断により加工硬化が低減されるのは、傾斜角を持ったシャー14を形成することにより、傾斜角の効果でせん断荷重が低減するからであり、せん断荷重の低減は電磁鋼板2への歪み(残留応力)の低減につながり、加工硬化部位の発生が減少するからである。
図4は、分割コア形成部材20aを模式的に示すプレスモデルを示す図である。
図4に示すように、分割コア形成部材20aに対して、回転電機のロータと対向するティース部24の先端部(径方向端部24a)からバックヨーク部22の周方向端部22bに向けて磁束が発生する場合を想定し、その際の磁気抵抗領域を、主磁束に対して歪みの発生部位が連続の形態となるように区分化すると、(L0−L1)、(L1−L2)、(L2−L3)、(L3−L4)、(L4−L5)の5つの領域となる。
ここで、分割コア形成部材20aには打ち抜きの際に、打ち抜かれる外形端縁から所定距離内側までの部分に歪み(加工硬化)が生じる。磁束Mに沿った微小な磁路長dlに対し、これに垂直な断面を考えると、この断面において、中央部は歪みが無いが、左右両端部にそれぞれ歪みが生じる。歪みが無い部分の断面積をS、透磁率をμ、また歪みが生じる部分の断面積をΔS(左右それぞれの断面積はΔS/2)、透磁率をμ’とすると、この微小部分における磁気抵抗drは、次式(1)のようになる。
dr=dl/(μS+μ’ΔS) ・・・(1)
式(1)が示すように、磁気抵抗drは、微視的には磁路長dlに比例し、磁束流入面の断面Sに反比例する。
また、各領域(Lm−Ln)(ここで、m=0、1、・・・、4、またn=m+1である。)における磁気抵抗をrmnとすると、rmnは、上記式(1)のdrをmからnまで積分したもの、rmn=∫dr(積分はmからnまで)であり、上記5つの領域を直列に接続したときの全体の磁気抵抗Rは次式(2)のようになる。
R=Σrmn ・・・(2)
ただし、式(2)の和Σは、5つの領域(Lm−Ln)=(L0−L1)、(L1−L2)、・・・、(L4−L5)についてとるものとする。
全体磁気抵抗Rに対する各領域(Lm−Ln)での磁気抵抗rmnの寄与率はコアの各部寸法に依存する。まず各領域(Lm−Ln)におけるプレス歪みがある場合の磁気抵抗rmnを領域(Lm−Ln)の磁路長lmnとして式(1)と同様に、rmn=lmn/(μS+μ’ΔS)として算出する。また、各領域(Lm−Ln)におけるプレス歪みが無い場合の磁気抵抗rmn を、rmn =lmn/μSとして算出する。また、プレス歪みが無い場合の磁気抵抗の全領域(Lm−Ln)=(L0−L1)、(L1−L2)、・・・、(L4−L5)についての和をR’=Σrmn とする。そして、プレス歪みの影響で所定の領域(Lm−Ln)のみにおいて磁気抵抗が増加したと仮定した場合の、全体磁気抵抗の増加率(所定の領域(Lm−Ln)の磁気抵抗増加率と呼ぶこととする)ρmnを、次式(3)で計算する。
ρmn=(rmn+Σrij )/R’ ・・・(3)
ただし、式(3)中のΣは領域(Lm−Ln)以外の領域(Li−Lj)についてとるものとする。
これらの式によって算出した鉄損低減検証結果(磁気抵抗増加率と鉄損との関係)を図5及び図7に示す。図5は、各領域(磁気抵抗区間)のみにおいて磁気抵抗が増加した場合における磁気抵抗増加率を示したグラフである。なお、領域(L2−L3)(図4参照)においては、歪み発生部位が少量なため、r23=r23’とし、領域(L2−L3)における磁気抵抗増加率ρ23を1としている。
以上のようなことを考慮して、図6に、ダイ4に対するシャー14の配置を4通り示す。
図2も参照しながら説明すると、図6(A)に示すものは、ティース部24の径方向端部24aのステータコア周方向に突出するように形成される鍔部24bに対向するダイ4の開口部4aの左右両端4bを含むような幅H1で、ティース部24の径方向に平行な方向に、バックヨーク部22の径方向端部22aに対向するダイ4の開口部4aの部分4cも含むようにして、中央部がV字状に凹むシャー14(図3に示すシャー14a参照)が形成されている。それ以外が板押さえ部13となっている。すなわち、図6(A)においては、ダイ4の、ティース部24に形成される鍔部24bの周方向一方側の先端部に対向する位置から、周方向他方側の鍔部24bの先端部に対向する位置までの幅で、シャー14の延在方向がティース部24の径方向端部24aに対して交差する方向に形成されている。したがって、図6(A)のシャーの配置では、ティース部24の径方向端部24aの歪みと、バックヨーク部22の径方向端部22aの一部の歪みとを低減することができる。すなわち、図6(A)のシャーの配置では、領域(L0−L1)と、領域(L3−L4)の一部との磁気抵抗の増加が抑制される。
図6(B)に示すものは、ティース部24の周方向端部24cに対向するダイ4の開口部4aの部分4dであるティース部24の鍔部24bのすぐ上からバックヨーク部22に至るまでの幅H2で、ティース部24の径方向に垂直な方向に、中央部がV字状に凹むようにしてシャー14が形成されている。それ以外が板押さえ部13となっている。すなわち、図6(B)においては、ティース部24の周方向端部24cの幅で、シャー14の延在方向がティース部24の周方向端部24cに対して交差する方向に形成されている。したがって、図6(B)のシャー配置では、ティース部24の周方向端部24cの歪みを低減することができる。すなわち、図6(B)のシャー配置では、領域(L1−L2)の磁気抵抗の増加が抑制される。
図6(C)に示すものは、図6(A)のものと同様に、ティース部24の径方向端部24aに対向するダイ4の開口部4aから、バックヨーク部22の径方向端部22aに対向するダイ4の開口部4aの部分4cを含み径方向に平行な方向にシャー14が形成されているが、ここでシャー14の幅はティース部24の部分4eの幅H3に形成されている(H3<H1)。それ以外が板押さえ部13となっている。すなわち、図6(C)においては、ティース部24に形成される鍔部24bを含まない径方向端部24aの幅で、シャー14の延在方向がティース部24の径方向端部24aに対して交差する方向に形成されている。図6(C)のシャー配置では、ティース部24の径方向端部24aの歪みを低減することができる。すなわち、図6(C)のシャーの配置では、領域(L0−L1)の磁気抵抗の増加が抑制される。
図6(D)に示すものは、バックヨーク部22の左右の周方向端部22bに対向するダイ4の開口部4aの部分4fを含むようにして、バックヨーク部22の周方向端部22bの幅H4で、ティース部24の径方向に垂直な方向に、シャー14が形成されている。それ以外が板押さえ部13となっている。すなわち、図6(D)においては、バックヨーク部22の周方向端部22bの幅で、シャー14の延在方向がバックヨーク部22の周方向端部22bに対して交差する方向に形成されている。したがって、図6(D)のシャー配置では、バックヨーク部22の周方向端部22bの歪みを低減することができる。すなわち、図6(D)のシャー配置では、領域(L4−L5)の磁気抵抗の増加が抑制される。
図7に、図6(A)〜(D)の各シャー配置が歪みを改善する領域の磁気抵抗増加率と、結果として実際に得られたヒステリシス損失との関係を示す。図7のグラフ中の符号(A)、(B)、(C)、(D)は、それぞれ図6に示した各シャー14の配置例(A)、(B)、(C)、(D)と対応している。図7から、概して、磁気抵抗増加率が高い程、ヒステリシス損失が少なくなるような線形の関係があることがわかる。
また、図7からは、図6(A)のシャーの配置例によって歪みが改善される領域の磁気抵抗増加率が最も高く、ヒステリシス損失を低減できることが分かる。これは、図6(A)のシャーの配置例では、図4、図5における領域(L0−L1)と、領域(L3−L4)の一部とに対して磁気抵抗の増加を抑制することができるためである。すなわち、図6(A)のシャーの配置例では、磁気抵抗増加率の高い領域(磁気抵抗増加率の高い縁部)に対して効果的にシャーを配置して、磁気抵抗の増加を抑制することができる。さらに、図6(A)と図6(D)のシャーを組み合わせることで磁気抵抗増加率がさらに高くなり、図6(A)と図6(D)のシャー配置を備えた金型仕様が最適であると言える。この場合であっても、シャーが形成されない領域を板押さえ部13として確保することができる。すなわち、鉄損に対して効果のある部分に対してシャーを配置し、それ以外の部分にはシャーを配置せず板押さえ部13を形成するようにした図3に記載のシャー配置とすることが好ましい。
このように図3に記載のシャー配置では、分割コア形成部材20aの縁部の内、ティース部24の径方向端部24aに対向する位置において、延在方向が径方向端部24aに対して交差する方向にシャー14aが形成されているので、ティース部24の径方向端部24aの歪み、すなわち残留応力を低減することができ、磁気抵抗の増加を抑制できるため、通電時に分割コア形成部材20aにおいて発生する鉄損を低減することができる。また、このシャー14aは、バックヨーク部22の径方向端部22a及び22cの一部に対向する位置に及ぶので、シャーの構成が複雑化してしまうことを抑制しながら、バックヨーク部22の径方向端部22a及び22cの一部の歪み(残留応力)もあわせて低減することができる。このことは、言い方をかえると、図3に記載のシャー配置では、分割コア形成部材20aの縁部の内、磁気抵抗増加率が相対的に高いティース部24の径方向端部24a及びバックヨーク部22の径方向端部22a及び22cに対向する位置において、これらの端部に対して交差する方向にシャー14aが形成されていることを意味している。
また、図3に記載のシャー配置では、図6(A)のシャー14に対応するシャー14aに加えて、バックヨーク部22の左右の周方向端部22bに対向する位置において、延在方向がバックヨーク部22の周方向端部22bに対して交差する方向に、図6(D)のシャー14に対応するシャー14bが形成されているので、バックヨーク部22の周方向端部22bの歪み、すなわち残留応力も低減することができ、磁気抵抗の増加を抑制できるため、通電時に分割コア形成部材20aにおいて発生する鉄損をさらに低減することができる。
また、ティース部24の径方向端部24aに円周方向に突出するように設けられた鍔部24bの周方向一方側の先端部に対向する位置から周方向他方側の先端部に対向する位置までシャー14aを形成し、両先端部の外側を板押さえ部13としたことにより、鍔部24bに隣接する位置において板押さえを行うことができ、細かい形状となる鍔部24bにおいて打ち抜き精度を確保することができる。但し、鍔部24bが比較的大きい場合や、装置側で打抜き精度が確保できる場合には、鍔部24bの両先端部の外側までシャーを形成しても良く、この場合、バックヨーク部22の径方向端部22a及び22cのより広範囲に亘って歪み低減の効果を得ることができる。
図8に、シャーの深さとヒステリシス損失係数との関係を示す。図8において、横軸のシャー深さは、打ち抜く電磁鋼板の厚みtを基準として表している。図8に示すように、シャー深さは、鋼板の厚みtの3/4(75%)程度の場合に最もヒステリシス損失係数が少なくなっており、シャー深さとしては、鋼板の厚みtの3/4(75%)程度が好ましい。
図9に、せん断面からの距離と硬度との関係を、従来の打ち抜きと本発明の打ち抜きの場合を比較して示す。
図9に示すように、せん断面から距離が遠いところでは従来の打ち抜きも本発明の打ち抜きでも硬度は素材硬度と同等であり殆ど硬化は発生していないが、せん断面に近いところでは、従来の打ち抜きに比べて本発明の打ち抜きでは硬化の発生が非常に小さく抑えられていることが分かる。
なお、電磁鋼板2を打ち抜いて分割コア形成部材20aを製造する打ち抜き工程は、図2に示すように、1組のダイ4とパンチ8によって電磁鋼板2から直接に分割コア形成部材20aを打ち抜くようにしてもよいが、打ち抜き工程はこれに限定せず、例えば次に説明するように2組のダイ及びパンチを用いて、まず大まかに分割コア形成部材20aの周囲を打ち抜く予備打ち抜き工程と、この大まかに打ち抜かれたものから実際に分割コア形成部材20aを打ち抜く形状打ち抜き工程とから構成される2段階打ち抜き工程としてもよい。
図10(a)に、予備打ち抜き工程の予備打ち抜きダイ104と予備打ち抜きパンチ108を斜視図で示す。予備打ち抜き工程は、予備打ち抜きダイ104上に載置した電磁鋼板2から、2つの予備打ち抜きパンチ108により、分割コア形成部材20aの両側から鋼板スクラップ部29を打ち抜くものである。2つの予備打ち抜きパンチ108は、一方側のティース部24の周方向端部24cからバックヨーク部22の径方向端部22c、周方向端部22bにかけての鋼板スクラップ部29を打ち抜くとともに、他方側のティース部24の周方向端部24cからバックヨーク部22の径方向端部22c、周方向端部22bにかけての鋼板スクラップ部29を打ち抜くものである。
図10(b)に、予備打ち抜きパンチ108を、ひっくり返して電磁鋼板2を打ち抜く側の面が上になるようにした斜視図を示す。ここに示す予備打ち抜きパンチ108の例においては、電磁鋼板2を打ち抜く側の面に、シャー114として、バックヨーク部22の径方向端部22cに対向する位置において、延在方向がバックヨーク部22の径方向端部22cに対して交差する方向にV字状の窪みを有するシャー114aと、バックヨーク部22の周方向端部22bに対向する位置において、延在方向がバックヨーク部22の周方向端部22bに対して交差する方向にV字状の窪みを有するシャー114bとが形成されている。したがって、分割コア形成部材20aのバックヨーク部22の径方向端部22cと周方向端部22bとが逐次せん断され、径方向端部22cの歪みと周方向端部22bの歪みとを低減することができる。
図11(a)に、形状打ち抜き工程の形状打ち抜きダイ204と形状打ち抜きパンチ208を斜視図で示す。形状打ち抜き工程は、予備打ち抜き工程で図10(a)に示す鋼板スクラップ部29が打ち抜かれた電磁鋼板2を形状打ち抜きダイ204に載置して、形状打ち抜きパンチ208により、分割コア形成部材20aを打ち抜くものである。
図11(b)に、形状打ち抜きダイ204の上面を示す。ここに示す形状打ち抜きダイ204の上面には、図6(A)と同様のシャー214が形成されている。これにより、ティース部24の径方向端部24aの歪みと、バックヨーク部22の径方向端部22aの一部の歪みとを低減することができる。
上記した実施形態に示したパンチ及びダイにおけるシャーの形状は、V字状窪みとしているが、シャーの形状はこれに限定されるものではなく、斜めであったり、複数のV字状窪み等に適宜形状を変更することも可能である。
図12には、図10(b)で予備打ち抜きパンチ108に形成されたシャー114a、114bに代えて、傾斜面のみによって構成されたシャー114c、114dを形成した例を示す。また、図13には、図11(b)で形状打ち抜きダイ204に形成されたシャー214に代えて、複数のV字状窪みを有するシャー215を形成した例を示す。もちろんこれらは一例であり、これら以外のシャー形状であってもよい。
なお、本発明は以上述べてきた実施例のように分割ステータコアに限定されるものではなく、ステータコア形成部材として一体ステータコアにおいても適用可能である。また、本実施形態はステータ(固定子)のみならず、ロータ(回転子)へも適用可能である。
図14は、一体ステータコアを構成する一体コア形成部材20bを示すものであり、一体コア形成部材20bは、円環状のバックヨーク部301から内径側に複数のティース部302が所定間隔で突出するように形成されており、隣り合うティース部302間にスロット304が形成されている。
また図14において、1つのティース部302部分を取り出して図の右側に拡大して示す。この拡大図において、一体コア形成部材20bに対して、回転電機のロータと対向するティース部302の先端部からバックヨーク部301の周方向端部に向けて磁束が発生する場合を想定し、その際の磁気抵抗領域を、主磁束に対して歪みの発生部位が連続の形態となるように区分化すると、(L0−L1)、(L1−L2)、(L2−L3)、(L3−L4)の4つの領域となる。
上記した(1)式から(3)式によって算出した各領域(磁気抵抗区間)のみにおいて磁気抵抗が増加した場合における磁気抵抗増加率を図15に示す。図15に示すように、ティース部302の領域(L1−L2)において磁気抵抗寄与率が大きくなっている。そこで、この領域に対向するスロット304の部分を打ち抜くパンチ308の部分にシャー314を配置する。
図16(a)に、一体コア形成部材20bの一部拡大図を示すとともに、図16(b)にスロット304部を打ち抜くパンチ308に設けられるシャー314の正面図と側面図を示す。
図16(b)のパンチ308の側面図が示すように、パンチ308にはティース部302(スロット304)の径方向に垂直に交差する方向にV字状の窪みとしてシャー314が形成される。これにより、磁気抵抗増加率が高いティース部302における歪みを低減することができる。
このように一体コア形成部材20bの場合にも、一体コア形成部材20bの打ち抜きの際に形状輪郭部に生じる加工硬化を低減させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はステータコアの製品形状に依存する相対的に磁気抵抗の高い部位のプレスせん断を、金型(ダイ、パンチ)に傾斜角を持った凹部(窪み)あるいは凸部(突出部)であるシャーを形成することで、逐次的なせん断を行うようにして、プレス荷重を低減させ、加工硬化を低減するようにするものである。また特に、打ち抜く製品を、パンチの反対側から逆に押す逆押さえを設けることにより、鋼板の反りを抑制して、加工硬化の進展範囲を小さくすることができる。これにより、せん断面の加工硬化を抑制することができ、ヒステリシス損失を低減させ、ステータコアの性能を向上させることができる。
また、シャーを形成する位置としては、本来であれば、打ち抜く製品に対応する全ての縁部に対してシャーを形成することが鉄損を抑えるためには有効であるが、シャーを形成すると鋼板を押さえ難くなり、打ち抜き精度が悪化するので、特に磁気抵抗増加率が相対的に高く鉄損に効く部分に対してシャーを形成し、それ以外の部分、磁束密度が相対的に低い縁部に対向する部分にはシャーを形成せずに載置平面を形成して鋼板を確実に押さえるようにすることが好ましい。
また、形成されるシャーの延在方向は、それぞれ縁部に対して直角に交差する方向であることが好ましい。また、シャーはダイ又はパンチのいずれに設けてもよく、パンチ及びダイにおけるシャーの形状は、V字状窪みとしてもよく、これ以外に斜めであったり、複数のV字状窪み等でもよく、適宜その形状を変更してもよい。
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、ステータコア形成部材全体での磁気抵抗を増加させる割合である磁気抵抗増加率として、上記(3)式で表される磁気抵抗増加率を用いたが、これに限らず、ステータコア形成部材の外周を構成する縁部の内、縁部から一定距離までの部分において磁気抵抗が増加した際に、ステータコア形成部材全体での磁気抵抗を増加させる割合を算出、推定できるものである限り、適宜採用することができる。
1 回転電機用ステータコアの製造装置
2 電磁鋼板
4 ダイ
8 パンチ
10 逆押さえ
12 載置平面
13 板押さえ部
14(14a、14b) シャー
20 ステータコア形成部材
20a 分割コア形成部材
20b 一体コア形成部材
22 バックヨーク部
22a 径方向端部
22b 周方向端部
24 ティース部
24a 径方向端部
24b 鍔部
24c 周方向端部
108 予備打ち抜きパンチ(パンチ)
114(114a、114b、114c、114d) シャー
204 形状打ち抜きダイ(ダイ)
208 形状打ち抜きパンチ(パンチ)
214 シャー
215 シャー
302 ティース
308 パンチ
314 シャー

Claims (10)

  1. 鋼板を所定形状に打ち抜いたステータコア形成部材を積層することで構成される回転電機用ステータコアの製造装置であって、
    前記鋼板が配置される載置平面を備えたダイと、
    前記ダイ上に配置された前記鋼板から前記ステータコア形成部材を前記所定形状に打ち抜くパンチと、
    前記ダイ又は前記パンチに、前記載置平面と平行な所定の延在方向に沿って、前記載置平面と平行な平面に対して所定深さだけ凹む又は突出するように形成されたシャーと、
    を備え、
    前記シャーは、前記ステータコア形成部材の外周を構成する縁部の内、縁部から一定距離までの部分において磁気抵抗が増加した際に、ステータコア形成部材全体での磁気抵抗を増加させる割合である磁気抵抗増加率が相対的に高い縁部に対向する位置において、前記延在方向が前記相対的に高い縁部に対して交差する方向に形成されることを特徴とする回転電機用ステータコアの製造装置。
  2. 前記ダイは、前記ステータコア形成部材の外周を構成する縁部の内、前記磁気抵抗増加率が相対的に低い縁部に対向する位置において、前記載置平面と平行な板押さえ部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機用ステータコアの製造装置。
  3. 円弧状のバックヨークの周方向中央側から径方向内側にティースが突出して形成された分割コア形成部材を鋼板を打ち抜くことで形成し、該分割コア形成部材を積層し、円環状に連結することで構成される回転電機用ステータコアの製造装置であって、
    前記鋼板が配置される載置平面を備えたダイと、
    前記ダイ上に配置された前記鋼板から前記分割コア形成部材を打ち抜くパンチと、
    前記ダイに、前記載置平面と平行な所定の延在方向に沿って、前記載置平面と平行な平面に対して所定深さだけ凹む又は突出するように形成されたシャーと、
    を備え、
    前記シャーは、前記分割コア形成部材の外周を構成する縁部の内、前記ティースの径方向端部に対向する位置において、前記延在方向が前記ティースの前記径方向端部に対して交差する方向に形成されることを特徴とする回転電機用ステータコアの製造装置。
  4. 前記シャーは、前記分割コア形成部材の外周を構成する縁部の内、前記バックヨークの径方向端部の少なくとも一部に対向する位置も含むように形成されることを特徴とする請求項3に記載の回転電機用ステータコアの製造装置。
  5. 前記ティースの径方向端部には、円周方向に突出する鍔部が形成されており、
    前記シャーは、前記鍔部の周方向一方側の先端部に対向する位置から周方向他方側の先端部に対向する位置まで形成されており、
    前記ダイには、前記鍔部の周方向一方側の先端部と周方向他方側の先端部の外側に、前記載置平面と平行な板押さえ部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の回転電機用ステータコアの製造装置。
  6. 前記シャーは、前記分割コア形成部材の外周を構成する縁部の内、前記バックヨークの周方向端部に対向する位置において、前記延在方向が前記バックヨークの前記周方向端部に対して交差する方向にさらに形成されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の回転電機用ステータコアの製造装置。
  7. 前記シャーの前記載置平面に対する深さ又は突出長は、前記鋼板の厚みよりも小さいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の回転電機用ステータコアの製造装置。
  8. 前記パンチの打ち抜き方向の反対側から、前記鋼板を押さえる逆押さえ部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の回転電機用ステータコアの製造装置。
  9. ダイ上に配置された鋼板からステータコア形成部材を、所定形状にパンチにより打ち抜く工程と、
    前記ステータコア形成部材を積層する工程と、を備える回転電機用ステータコアの製造方法であって、
    前記ダイ又は前記パンチには、前記鋼板が配置される載置平面と平行な所定の延在方向に沿って、前記載置平面と平行な平面に対して所定深さだけ凹む又は突出するようにシャーが形成されており、
    前記シャーは、前記ステータコア形成部材の外周を構成する縁部の内、縁部から一定距離までの部分において磁気抵抗が増加した際に、ステータコア形成部材全体での磁気抵抗を増加させる割合である磁気抵抗増加率が相対的に高い縁部に対向する位置において、前記延在方向が前記相対的に高い縁部に対して交差する方向に形成されることを特徴とする回転電機用ステータコアの製造方法。
  10. ダイ上に配置された鋼板から円弧状のバックヨークの周方向中央側から径方向内側にティースが突出して形成された分割コア形成部材を、パンチにより打ち抜く工程と、
    該分割コア形成部材を積層し円環状に連結する工程と、を備える回転電機用ステータコアの製造方法であって、
    前記ダイには、前記鋼板が配置される載置平面と平行な所定の延在方向に沿って、前記載置平面と平行な平面に対して所定深さだけ凹む又は突出するようにシャーが形成されており、
    前記シャーは、前記分割コア形成部材の外周を構成する縁部の内、前記ティースの径方向端部に対向する位置において、前記延在方向が前記ティースの前記径方向端部に対して交差する方向に形成されることを特徴とする回転電機用ステータコアの製造方法。
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