JP2015070006A - 太陽電池用集電シートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】バックコンタクト型の太陽電池素子に接合される太陽電池用集電シートであって、従来の太陽電池用集電シートと、十分に好ましい集電性能と絶縁性を有する太陽電池用集電シートを、従来よりも高い生産性で提供する。
【解決手段】金属配線部3を、物理的切削手段によって、所望の平面形状パターンで切削することにより、樹脂基材2上に金属配線部3を形成する切削工程を備え、切削工程の開始時における金属箔の表面には保護膜7が積層されており、切削工程における深さ方向の切削範囲の制御は、物理的接触によって被接触物の位置変動を感知可能な接触式位置センサー82から得る位置情報に基づいて行われ、位置情報は、保護膜7と接触式位置センサー82との物理的接触によって取得される情報である太陽電池用集電シートの製造方法。
【選択図】図4

Description

この発明は、バックコンタクト型の太陽電池素子から電気を取り出すために用いる太陽電池用集電シートの製造方法に関する。
近年、環境問題に対する意識の高まりから、太陽電池がクリーンなエネルギー源として注目を集めている。太陽電池素子から電気を取り出す方法については様々な形式のものがあるが、太陽光線の受光効率を高めるために、太陽光の受光面側には電極を配置せず、非受光面側に異なる極性を有する複数の電極を配置したバックコンタクト型の太陽電池素子の開発が進んでいる。
バックコンタクト型の太陽電池素子には種々の方式がある。受光面と非受光面とを貫通するスルーホールを有するMWT方式、EWT方式の太陽電池素子、太陽電池素子の裏面に、くし型形状のp型、n型の拡散層を形成して、そのp、n領域から、電気を取り出す構造を備えるIBC方式の太陽電池素子等がある。又、非受光面側に集電配線部を備える自己集電方式のバックコンタクト型の太陽電池素子も開発されている。
これらのバックコンタクト型の太陽電池素子は、一般に、太陽電池モジュールの内部に複数個設置される。そして、太陽電池モジュールは、これらの太陽電池素子が直列或いは並列に接合されることにより、必要な電圧及び電流を得られるように構成されている。複数のバックコンタクト型の太陽電池素子の非受光面側に設けられた電極から、安全に効率よく電気を取り出すために、図1に示すような太陽電池用集電シートが提案されている(特許文献1参照)。
図1に示す太陽電池用集電シート1は、複数のバックコンタクト型の太陽電池素子4を太陽電池モジュールの内部で配線するために、回路になる櫛形形状等の複雑な形状を備える金属配線部3を、化学的な処理を伴うエッチング処理によって樹脂基材2の表面に形成したものである。
このような化学処理を含む製造方法による太陽電池用集電シートの製造においては、エッチングに使用する腐食液に含まれる塩素等の残留物が太陽電池素子にダメージを与え、又、長期の暴露により絶縁不良を引き起こす場合があることが問題となっていた。又、上記のエッチング処理に係る材料費や製造工程の複雑さに起因する製造コストが嵩み、太陽電池モジュールの価格を引き上げてしまうことも問題となっていた。これを回避して製造コストを削減することのできる手段が強く求められていた。
エッチング処理によらない金属配線部の加工処理方法として、樹脂製の剥離基材に金属箔を積層した状態で、当該金属箔を微細な切削パターンで打ち抜き、その後、そのような打ち抜きによって形成された配線パターンと、絶縁性基材とを、接着剤を介して積層した後に、上記剥離基材を剥離することにより、絶縁性基材上に配線パターンが形成されている太陽電池用配線シートを得る製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
特開2012−94846号公報 特開2012−164912号公報
太陽電池用集電シートの製造においては、金属配線部の短絡を避けるために、金属箔の非配線部については金属箔を完全に貫通する深さまで完全な切削を行うことが必須である。そして、その一方で、樹脂基材には極めて高い絶縁性が求められるため、絶縁性の低下につながる不要な切削が樹脂基材内に及ばないようにすることも必須である。つまり、深さ方向の切削範囲の制御については、数μm単位の極めて精度の高い調整が必要となるのである。
深さ方向の切削範囲の制御を高めるための手段としては、例えば、接触式の位置センサーによる制御が考えられる。しかし、金属配線部を形成する銅箔やアルミ箔は、耐擦傷性が低いため、位置センサーとの接触による擦傷が機能低下に繋がるリスクがある。そのため、太陽電池用集電シートの製造においては、従来、そのような接触式の位置センサーの採用は難しく、位置センサーについては、接触式よりも垂直方向の制御精度や制御の感度に劣るが、接触による殺傷のリスクのない非接触式の位置センサーが専ら用いられていた。
ここで、特許文献2に記載の方法を採用するとすれば、水平方向における微細且つ複雑な金属配線部の形成は可能であり、更に、剥離部の厚みの中で垂直方向における切削の深さの誤差も吸収解消されるため、深さ方向の切削範囲を上記のように厳密に制御する必要はない。しかし、この製造方法による場合には、樹脂基材上の金属箔を切削加工する工程の後に、絶縁性基材への接着工程や、剥離基材の剥離工程等、追加的な複数の処理が必要であり、生産性の面においては、必ずしも優れた製造方法ではなかった。
コストの嵩むエッチング処理ではなく、物理的切削によって微細な切削パターンを形成する方法であって、絶縁性に優れる太陽電池用集電シートを、高い生産性で製造することができる太陽電池用集電シートの製造方法の開発が望まれていた。
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、バックコンタクト型の太陽電池素子に接合される太陽電池用集電シートであって、十分な絶縁性を有する太陽電池用集電シートを、化学処理を伴うエッチング工程によらずに、高い生産性で製造することができる太陽電池用集電シートの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、太陽電池用集電シートの製造において、切削による金属配線部の形成を、予め保護膜を積層した金属箔を物理的に切削する方法によるものとし、尚且つ、切削時の深さ方向の切削範囲の制御を、上記保護膜と接触式位置センサーとの物理的接触から得る位置情報に基づいて行うことによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に本発明は以下のものを提供する。
(1) 樹脂基材の表面に金属配線部が積層されてなる太陽電池用集電シートの製造方法であって、前記樹脂基材上に積層された金属箔を、物理的切削手段によって、所望の平面形状パターンで切削することにより、前記樹脂基材上に前記金属配線部を形成する切削工程を備え、前記切削工程の開始時における前記金属箔の表面には保護膜が積層されており、前記切削工程における深さ方向の切削範囲の制御は、物理的接触によって被接触物の位置変動を感知可能な接触式位置センサーから得る位置情報に基づいて行われ、前記位置情報は、前記保護膜と前記接触式位置センサーとの物理的接触によって取得される情報であることを特徴とする太陽電池用集電シートの製造方法。
(2) 前記金属箔が銅箔であり、前記保護膜が樹脂フィルムである(1)に記載の太陽電池用集電シートの製造方法。
(3) 前記金属箔は、前記樹脂基材に接着剤層を介して積層されており、前記深さ方向の切削範囲は、前記保護膜と前記金属箔を貫通して、前記接着剤層内にまでは達しているが、前記樹脂基材にまでは達しておらず、前記接着剤層の厚さが3μm以上15μm以下である(1)又は(2)に記載の太陽電池用集電シートの製造方法。
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の製造方法によって製造された太陽電池用集電シートであって、前記金属配線部の表面に前記保護膜が積層されている太陽電池用集電シート。
(5) (1)から(3)のいずれかに記載の製造方法によって製造された太陽電池用集電シート又は(4)に記載の太陽電池用集電シートであって、前記樹脂基材の裏面に、裏面保護シートが更に積層されている裏面保護シート一体型の太陽電池用集電シート。
(6) (1)から(3)のいずれかに記載の製造方法によって製造された太陽電池用集電シートに、バックコンタクト型の太陽電池素子が積層されている太陽電池モジュール。
本発明によれば、バックコンタクト型の太陽電池素子に接合される太陽電池用集電シートであって、従来の太陽電池用集電シートと、同等の集電性能と絶縁性を有する太陽電池用集電シートを、従来よりも低コストで提供することができる。
本発明の太陽電池用集電シートの金属配線部上に太陽電池素子を配置した使用状態の一例を模式的に示す斜視図である。 本発明の太陽電池用集電シートの構成を模式的に示す部分拡大平面図である。 本発明の太陽電池用集電シートの製造方法の説明に供する模式図である。 本発明の太陽電池用集電シートの製造方法の説明に供する模式図である。 本発明の太陽電池用集電シートの製造方法における切削工程の実施態様の説明に供する模式図である。 本発明の太陽電池用集電シートの製造方法に好ましく用いることができる切削装置及びその切削刃の形状の説明に供する図面である。 本発明の太陽電池用集電シートの製造方法、及びその製造方法によって製造された太陽電池用集電シートの説明に供する模式図である。 本発明の太陽電池用集電シートの製造方法によって製造した太陽電池用集電シートの断面写真である。 バックコンタクト型の太陽電池素子と本発明に係る太陽電池用集電シートを用いてなる太陽電池モジュールの説明に供する模式図である。
以下、本発明の太陽電池用集電シート及び本発明の太陽電池用集電シートの製造方法の実施形態及び実施態様の詳細について説明する。本発明は、以下の実施形態等に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本発明の太陽電池用集電シートは、バックコンタクト型の太陽電池素子から電気を取り出す機能を有するシート状の積層体である。そして、本発明の太陽電池用集電シートは、太陽電池モジュールの一構成部材として用いることができるものである。尚、本明細書におけるバックコンタクト型の太陽電池素子とは、使用時に裏面側となる面に電極が配置されている全ての太陽電池素子のことを言う。本発明の太陽電池用集電シートは、あらゆる種類のバックコンタクト型の太陽電池素子に好ましく用いることができる。
<太陽電池用集電シート>
本発明に係る太陽電池用集電シートの一実施形態である太陽電池用集電シート1について、適宜各図面を参照しながら説明する。太陽電池用集電シート1は、図1、図2及び図7に示す通り、樹脂基材2の表面に、金属箔からなる導電性の金属配線部3が形成されている積層体である。
又、本発明の太陽電池用集電シートは、図3〜図5中に図示する保護膜7が、金属配線部3の表面に積層されている状態で、太陽電池モジュールを構成する一部材として単独で流通することも想定されている。この場合は、保護膜7が、流通過程における金属配線部の錆を防止する作用を発揮する。上記積層体の金属配線部3の表面に、更に保護膜7が積層されている状態にある太陽電池用集電シートも本発明の範囲内である。
樹脂基材2は、太陽電池素子を配置する側の面となる第1樹脂基材21と、その反対側の面となる第2樹脂基材22とを含んでなる多層シートであることが好ましいが、これに限らず単層の樹脂基材であってもよい。樹脂基材2が上記のような多層シートである場合には第1樹脂基材21の表面に、金属配線部3が形成されている。太陽電池素子4は金属配線部3の上に配置される。
[樹脂基材]
樹脂基材2としては、シート状に成形された絶縁性の樹脂シートを適宜用いることができる。ここで、シート状とはフィルム状を含む概念であり本発明において両者に差はない。
樹脂基材2として用いることができる絶縁性の樹脂の具体例を以下にあげる。代表的な樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素系樹脂等をあげることができる。
樹脂基材2としては、上記例示した樹脂群より選択された樹脂からなり、且つ、個々の太陽電池モジュールにおいて求められる所定の電気的特性を有する絶縁性の樹脂シートを用いることができる。具体的には、樹脂基材2は、1000V以上の部分放電電圧を有するものであることが好ましい。例えば、樹脂基材2として、体積固有抵抗率が1018Ω・cm程度であるポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、樹脂基材2の厚さを、衝撃緩和性の観点からも必要十分な厚さである250μm以上とすることによって、太陽電池用集電シートの部分放電電圧を1000V以上とすることができる。又、樹脂基材2が400μmを超える場合、基材コストが増加する一方で、必要とされる絶縁性能や衝撃緩和性能については、必要十分な範囲を超えた部分での向上しか望めずコストパフォーマンスの低下につながる場合が多い。以上より、樹脂基材の厚さは250μm以上400μm以下であることが好ましい。
樹脂基材2を、金属配線部3の側に配置される第1樹脂基材21と、その反対側に配置される第2樹脂基材22とを積層した構成とする場合には、第1樹脂基材21と第2樹脂基材22とは、接着剤によるドライラミネートにより接着して一体化することにより樹脂基材2とすることができる。
樹脂基材2を第1樹脂基材21と第2樹脂基材22とが積層されてなる多層シートとする場合に、その生産効率を高めるためには、第1樹脂基材21と第2樹脂基材22として、上記の樹脂群から選択された同一種類の樹脂を用いることが好ましい。そして第1樹脂基材21と第2樹脂基材22とが積層されてなる多層シートの状態において、絶縁性や衝撃緩和性等において、上述した範囲の好ましい物性を有するものとなっていればよい。
但し、第1樹脂基材21と第2樹脂基材22とは、必ずしも同一種類の樹脂であることが必須ではない。例えば、第2樹脂基材22に太陽電池モジュール100(図11参照)の所謂裏面保護シートとしての機能を発揮させることを目的として、特に耐候性に優れた耐加水分解ポリエチレンテレフタレート(HR−PET)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、又はフッ素系樹脂を、第2樹脂基材22として用いることもできる。或いは、上記の樹脂シートを積層してなる多層シートを第2樹脂基材として用いることもできる。
樹脂基材2を第1樹脂基材21と第2樹脂基材22とが積層されてなる多層シートとする場合の最も好ましい一具体例として、第1樹脂基材21が厚さ250μmのPETであり、第2樹脂基材22が厚さ50μmのHR−PETであり、それらを積層してなる多層シートとしたものを挙げることができる。このような構成によれば、太陽電池用集電シートに、太陽電池モジュールとしての一体化時における、絶縁性、耐衝撃性、耐加水分解性、ガスバリア性等、及び生産性を、極めてバランスよく兼ね備えさせることができる。
[金属配線部]
図1及び図2に示す通り、金属配線部3は、太陽電池用集電シート1の表面上に導電性基材を積層してなる配線パターンである。金属配線部3は、複数の太陽電池素子4から電気を取り出すために、図2に示す通り、複数の微細な櫛形形状の金属配線が、交差或いは接触せずに、近接して配置される複雑なパターンとして樹脂基材2の表面に形成される。そのような金属配線部3は、複数の太陽電池素子4から、電気を取り出し、取り出した電気を集電して太陽電池モジュール100の外に送り出す機能を有する。
金属配線部3を形成するための導電性基材としては、銅箔、アルミニウム箔等の金属箔を用いることができる。それらのうちでも、本発明の製造方法においては、導電性、加工性に優れ、且つ入手容易である銅箔を好ましく用いることができる。
金属配線部3の厚さは、太陽電池用集電シート1に要求される耐電流の大きさ等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、10μm〜50μmの厚さであることが好ましい。
[接着剤層]
金属配線部3は、接着剤層6を介して樹脂基材2の表面に接着されている。接着方法は、ウレタン系、ポリカーボネート系、エポキシ系等の接着剤を使用したドライラミネート法によることが好ましい。接着剤層6の厚さは3μm以上15μm以下とする。本発明の製造方法によれば、接着剤層6の厚さを3μm以上とすることにより、切削工程における、深さ方向の切削範囲の微細な制御誤差を安全に吸収して、絶縁性の低下につながる不要な切削が樹脂基材2内に及ぶリスクを回避することができる。
より具体的には、図5、図7、及び図8に示す通り、本発明の製造方法において、深さ方向の切削範囲を、保護膜7と金属箔30を貫通して接着剤層6内にまでは達しているが、接着剤層6は貫通せず樹脂基材2にまでは達していない深さ範囲とする。金属箔30を過不足無くちょうど貫通する深さ範囲を誤差0とした場合、誤差0を超える深さを、深さ方向の切削範囲の最小範囲として保持しつつ、それを超える正の制御誤差が上記接着剤層6の厚さ(3μm以上)の範囲内に止まるようにすることで、実際に、上記リスクを回避することができる。このように樹脂基材2の表面に上記厚さ未満の極薄い接着剤層6を残存させることにより、残存した極薄い接着剤層6が樹脂基材2の表面で所謂プライマー効果を発揮して、例えば、樹脂基材2の表面に積層される絶縁性樹脂等との密着性を高める効果があることも確認されている。
図8は、本発明の太陽電池用集電シートの製造方法によって製造した太陽電池用集電シート1の断面写真である。この写真から、実際に、太陽電池用集電シート1において、深さ方向の切削範囲が、保護膜7と金属箔30を貫通して接着剤層6内にまでは達しているが、接着剤層6は貫通せず樹脂基材2にまでは達していない深さ範囲となっていることが分かる。
[保護膜]
図3及び図4に示す通り、太陽電池集電シートは、以下に詳細を説明する切削工程の開始時において、金属箔30の表面に保護膜7が積層されている。樹脂基材2、金属箔30、保護膜7が積層された状態の積層体に対して切削工程を行うことにより、本発明の太陽電池用集電シート1を得ることができる。
保護膜7は、金属箔30の擦傷を防止する観点において、適度な可撓性、柔軟性、流動性、耐擦傷性及び金属箔30への密着性を有するフィルムであればよく、又、金属箔30の防錆の観点から、気密性を有するフィルムであることが好ましい。具体的には、保護膜7は各種の樹脂フィルムであることが好ましい。保護膜7が樹脂フィルムである場合、厚さは25μm以上300μm以下、好ましくは、50μm以上100μm以下である樹脂フィルムを用いることができる。又、上記樹脂フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)を特に好ましく用いることができる。
尚、保護膜7は裏面にアクリル系粘着材により粘着層が形成されているマスキングテープタイプのフィルムを好ましく用いることができる。アクリル系の粘着材は、耐熱性に優れ、又、剥離する際に糊残りが出にくいという利点がある。
保護膜7は、切削工程の完了後、太陽電池素子4の金属配線部3上への設置前の任意の段階で金属配線部3から剥離する。保護膜7は金属箔30に積層されている状態において、金属配線部3の擦傷を防止することに加えて、金属箔30の錆を防止する機能を発揮することができる。上述の通り、保護膜7の剥離前後のいずれの段階におけるものもそれぞれ本発明の範囲内の太陽電池用集電シートである。
[裏面保護シート]
尚、図9に示す通り、太陽電池用集電シート1は、太陽電池素子4の他、他の部材と一体化されて太陽電池モジュール100となる。尚、図9に示す通り、樹脂基材2の裏面側に予め別のETFE、耐加水PET等からなる裏面保護シート9を一体化することにより、裏面保護シート一体型の太陽電池用集電シート1としてもよい。このような裏面保護シート一体型の太陽電池用集電シートは、樹脂基材2の裏面側に裏面保護シート9をドライラミネーション法等によって積層することにより製造することができる。
以上説明した本発明の太陽電池用集電シート1は、バックコンタクト型の太陽電池素子4と接合した際に、電極間を絶縁しつつ、端子から安全に且つ効率よく電気を取り出すことができる。
<太陽電池用集電シートの製造方法>
次に、図3〜図8を参照しながら、本発明の太陽電池用集電シートの製造方法について説明する。尚、ここでは、樹脂基材2が第1樹脂基材21と第2樹脂基材22とからなる多層シートである場合について説明する。
まず、図3に示す通り、金属配線部3の材料とする銅箔等の金属箔30を、第1樹脂基材21の表面に積層する。積層方法としては、金属箔30を接着剤によって第1樹脂基材21の表面に接着する方法、第1樹脂基材21の表面に金属箔30を蒸着させる方法等が例示されるが、コストの面からは、金属箔30を接着剤によって第1樹脂基材21の表面に接着する方法が有利である。中でも、ウレタン系、ポリカーボネート系、エポキシ系等の接着剤を使用したドライラミネート法によって金属箔30を第1樹脂基材21の表面に接着する方法が好ましい。
図3に示す通り、本発明の製造方法においては、切削工程の開始時において、金属箔30の表面に保護膜7を配置することを特徴とする。
保護膜7は、切削工程の開始前に、ラミネートすることによって、金属箔30の表面に配置することができる。この場合、特に、上述したアクリル系の粘着層を有する保護膜を用いることがより好ましい。これにより、保護膜7を積層した状態での切削完了後、又は、太陽電池素子4の配置前に、保護膜7を金属箔30から、より円滑に剥離することが可能となる。
次に、図3、図4に示す通り、所望の回路配線パターンをプログラミングしたCAD切削機器等の切削装置8により、金属箔30のうち金属配線部3を形成しない部分である非配線部5を機械的に切削して削除する。切削は、保護膜7を上記態様で金属箔30上に積層した状態で行う。
図3及び図4に示すように、金属配線部3を形成するための金属箔30の切削については、その深さ方向の切削範囲が、金属箔30の厚さDと保護膜7の厚さDの和である厚さDを超えて、更に接着剤層6の内部で接着剤層6の表面からの距離がDなる深さにまで達するように、深さ方向の切削範囲を制御する。このとき接着剤層6の層内における切削の深さDは、接着剤層6の厚さDよりも小さいこと、即ち、切削装置8により切削されて形成された切削溝51が接着剤層6を貫通しないように深さ方向の切削範囲を制御する。
ここで、切削の深さ方向の切削範囲が、金属箔30を貫通していない場合には、金属配線部3において短絡が起きてしまうため、切削の深さ方向の切削範囲は、必ず金属箔30を貫通していなければならない。又、切削の深さ方向の切削範囲が金属箔30を貫通していて、且つ、接着剤層6の内部にまでは達していない場合には、切削装置8による機械的切削においては不可避である金属箔30の切削端部周辺に発生するバリが、非配線部5内に残存して、金属配線部3の短絡を引き起こす危険がある。しかし、切削装置8による切削の深さ方向の切削範囲を、金属箔30の厚さ分Dと保護膜7の厚さDの和である厚さDを超えて、深さD分だけ接着剤層6の内部にまで達するものとすることによって、一般には機械的切削においては回避困難な上記のバリの残存を回避することができる。これにより、切削装置8による機械的切削によって金属配線部3を形成する場合においても、配線部間の短絡を防止することができる。
図5に示す通り、本発明の製造方法においては、切削の深さ方向の切削範囲の制御の精度を十分に高めるために、切削時に、保護膜7の表面の垂直方向における位置変動を、保護膜7との物理的接触により高精度で感知可能な接触式位置センサー82を備える切削装置8を用いる。切削装置8は、接触式位置センサー82が、保護膜7と、例えば図5のP点において物理的に接触することによって得る位置情報に基づいて、切削刃81の位置を制御しつつ切削を行う。これにより、深さ方向の切削範囲を十分に高い精度で制御することができる。この深さ方向の切削範囲の制御の僅かな誤差については、この誤差の大きさを、接着剤層6の厚さ(D)未満とすることにより、本発明の太陽電池用集電シートの製造方法の品質信頼性を極めて好ましいものとすることができる。尚、ここで、本明細書における「位置情報に基づく制御」とは、電子情報等に置き換えられた具体的な位置情報の交換を伴う制御に限られない。接触式位置センサー821と金属箔30との接触に起因して切削刃81の挙動が結果的に制限される態様全般を広く含む概念である。
切削装置8は、被接触物との物理的接触によって精度の高い位置情報を検出可能な接触式位置センサー82を備える。一般に接触式の位置センサーは、光学式等の非接触式の位置センサーよりも、より高い精度、より高い感度で、対象物の位置情報を連続的に検出することができる。しかし、耐擦傷性の低い金属からなる太陽電池用集電シート1の金属配線部3は、数μm単位の僅かな擦傷であっても、バリの発生に伴う短絡や太陽電池素子の電極との接触不良等、重大な欠陥につながる場合がある。そのため、従来、太陽電池用集電シートの製造工程内で、位置検索の精度をある程度犠牲にして、接触による擦傷のリスクを回避することを優先し、専ら非接触式の位置センサーを用いてきた。しかし、本発明の製造方法においては、金属箔30上に保護膜7を配置して、接触式位置センサー82との接触による金属配線部3の擦傷を防止可能な構成としたことにより、より優れた垂直位置検出性能を有する接触式位置センサーの採用が可能となった。
切削装置8の備える刃部である切削刃81の形状は特に限定されないが、図7に示す通り、先端が台形形状である刃を備え、テーパー形状のドリルである切削刃81を備える切削装置8を好ましく用いることができる。このような切削装置8は、本発明の製造方法を実施する際に、金属箔30から切削された金属の残滓を速やかに切削溝51の外に弾き出すことができる。又、この切削装置8は、図7に示す通りのテーパー形状の外形を有していることにより、従来、金属箔切削に専ら用いられてきた円柱形状のドリルを備えるフライスと比較して、耐久性に優れる点においても好ましい。
以上説明した本発明の製造方法によれば、このような太陽電池用集電シート1を、化学処理を伴うエッチング処理によって金属配線部を形成する従来の太陽電池用集電シートの製造方法と比較して、工程数と材料の削減により、製造コストを大幅に低減することができる。
<太陽電池モジュール>
次に、本発明の太陽電池用集電シート1を好ましく用いることのできる太陽電池モジュール100について説明する。図9は、太陽電池モジュール100について、その層構成の一例を例示する断面の模式図である。太陽電池モジュール100は、受光面側から、ガラス等からなる透明前面基板10、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、ポリエチレン等からなる前面封止材層2A、太陽電池素子4、裏面保護シート9と一体化された太陽電池用集電シート1が順に積層された構成である。太陽電池素子4から取り出された電気は、太陽電池用集電シート1の金属配線部3を介して太陽電池モジュール100から取り出される。
<太陽電池モジュールの製造方法>
次に本発明の一実施形態である太陽電池用集電シート1を備える太陽電池モジュール100の製造方法について説明する。
太陽電池用集電シート1を備える太陽電池モジュール100は、太陽電池用集電シート1、太陽電池素子4及び他の部材を積層して一体化することによって製造することができる。この一体化の方法としては真空熱ラミネート加工により一体化する方法が挙げられる。上記方法を用いた際のラミネート温度は、130℃〜190℃の範囲内とすることが好ましい。又、ラミネート時間は、5〜60分の範囲内が好ましく、特に8〜40分の範囲内が好ましい。
以上の太陽電池用集電シート及びその製造方法によれば、以下のような効果を奏する。
(1) 従来の一般的な太陽電池用集電シートの製造においては、例えば、フォトレジスト法によるマスキングや化学処理によるマスクの剥離処理等も含めた複雑なエッチング処理工程が必須であった。或いは、物理的切削処理による場合であっても、切削工程の前後に深さ方向の切削範囲の制御の誤差を解消するための別途の追加工程を必要とした。本発明の太陽電池用集電シートの製造方法においては、切削工程の開始時における金属箔の表面に保護膜を積層し、切削工程における深さ方向の切削範囲の制御を、物理的接触によって被接触物の位置変動を感知可能な接触式位置センサーから得る位置情報に基づいて行う製造方法とした。これにより、本発明の太陽電池用集電シートの製造方法は、機械的切削方法の採用による金属配線部の形成に係るコストの低減と、同方法の採用に伴う絶縁性不備の危険性回避を同時に実現し、優れた絶縁性能を有する太陽電池用集電シートを高い生産性で製造することができる。尚、大面積の同時処理が可能なエッチング工程に比較して物理的な切削処理は処理速度は必ずしも速くはないが、エッチング処理を行う装置の購入及び維持コストに比べ、切削処理を行う装置の同コストが数分の一のコストですむため、製造にかかるトータルコストは、大きく低減することができる。
(2) 又、金属箔を銅箔とし、保護膜を樹脂フィルムとしおた。これにより、太陽電池集電シートの製造条件を具体的且つ明確にし、高い信頼性で上記効果を奏する太陽電池用集電シートを、効率よく製造することができる。
(3) 又、金属箔を、樹脂基材に接着剤層を介して積層することとし、深さ方向の切削範囲は、保護膜と金属箔を貫通して、接着剤層内にまでは達しているが、樹脂基材にまでは達しておらず、接着剤層の厚さを3μm以上15μm以下とした。これにより、(1)又は(2)に記載の太陽電池用集電シートの製造方法の信頼性を更に高めることができる。
(4) 又、金属配線部の表面に前記保護膜が積層されている太陽電池用集電シートとした。これにより、例えば、単独の部材として流通する段階等における太陽電池用集電シートが、モジュール化前に、金属配線部の錆によって品質が低下することを防止できる。
(5) 又、樹脂基材の裏面に、裏面保護シートが更に積層されている裏面保護シート一体型の太陽電池用集電シートとした。これにより、耐候性に優れる太陽電池モジュールの生産性を更に高めることができる。
(6) 又、本発明の太陽電池用集電シートに、バックコンタクト型の太陽電池素子が積層されている太陽電池モジュールとした。これにより、耐候性、安全性に優れた太陽電池モジュールを、従来よりも低コストで得ることができる。
1 太陽電池用集電シート
2 樹脂基材
21 第1樹脂基材
22 第2樹脂基材
2A 前面封止材層
3 金属配線部
30 金属箔
4 太陽電池素子
5 非配線部
51 切削溝
6 接着剤層
7 保護膜
8 切削装置
81 切削刃
82 接触式位置センサー
9 裏面保護シート
10 透明前面基板
100 太陽電池モジュール

Claims (6)

  1. 樹脂基材の表面に金属配線部が積層されてなる太陽電池用集電シートの製造方法であって、
    前記樹脂基材上に積層された金属箔を、物理的切削手段によって、所望の平面形状パターンで切削することにより、前記樹脂基材上に前記金属配線部を形成する切削工程を備え、
    前記切削工程の開始時における前記金属箔の表面には保護膜が積層されており、
    前記切削工程における深さ方向の切削範囲の制御は、物理的接触によって被接触物の位置変動を感知可能な接触式位置センサーから得る位置情報に基づいて行われ、
    前記位置情報は、前記保護膜と前記接触式位置センサーとの物理的接触によって取得される情報であることを特徴とする太陽電池用集電シートの製造方法。
  2. 前記金属箔が銅箔であり、前記保護膜が樹脂フィルムである請求項1に記載の太陽電池用の集電シートの製造方法。
  3. 前記金属箔は、前記樹脂基材に接着剤層を介して積層されており、
    前記深さ方向の切削範囲は、前記保護膜と前記金属箔を貫通して、前記接着剤層内にまでは達しているが、前記樹脂基材にまでは達しておらず、
    前記接着剤層の厚さが3μm以上15μm以下である請求項1又は2に記載の太陽電池用集電シートの製造方法。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の製造方法によって製造された太陽電池用集電シートであって、
    前記金属配線部の表面に前記保護膜が積層されている太陽電池用集電シート。
  5. 請求項1から3のいずれかに記載の製造方法によって製造された太陽電池用集電シート又は請求項4に記載の太陽電池用集電シートであって、
    前記樹脂基材の裏面に、裏面保護シートが更に積層されている裏面保護シート一体型の太陽電池用集電シート。
  6. 請求項1から3のいずれかに記載の製造方法によって製造された太陽電池用集電シートに、バックコンタクト型の太陽電池素子が積層されている太陽電池モジュール。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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