JP2015064330A - 光学異性体用分離剤 - Google Patents
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Abstract
Description
また、牛血清アルブミン(BSA)フラグメント又は分子構造の一部を修飾したBSAフラグメントを担体に担持して得られる固定相からなる光学異性体用分離剤が知られている(特許文献2参照)。
これらの技術に加え、酸性糖タンパク質を用いた光学異性体用分離剤も知られている。
α1−酸性糖タンパク質(AGP)については、多くの薬物との親和性を有することが
知られており、薬物とAGPとの相互作用に関する分子薬剤学的研究が行われてきた(非特許文献1参照)。また、AGPに加え、ヒト血清アルブミンについても同様に薬物との相互作用に関する分子薬剤学的研究が行われてきた(非特許文献1参照)。
具体的な酸性糖タンパク質としては、ヒトα1−酸性糖タンパク質(h−AGP)、ニ
ワトリAGP(c−AGP)などのタンパク質が知られている。
ヒトα1−酸性糖タンパク質(h−AGP)については、その構造の解明に関する研究
も行われている(非特許文献2参照)。また、ニワトリα1−酸性糖タンパク質(c−A
GP)についても、その不斉認識をもたらす部分を特定する研究がなされている(非特許文献3参照)。
c−AGP)などのα1−酸性糖タンパク質を担体に担持した光学異性体用分離剤につい
ては、分離性能の改善について更なる余地があった。
そこで本発明では、α1−酸性糖タンパク質が担体に担持されてなる光学異性体用分離
剤について、さらに分離性能が向上したものを提供することを課題とする。
う)を担持させる担体の粒径に着目した。
そして、これらのタンパク質を担持させる担体として、粒径が3μm以下のものを用いると、従来から通常用いられてきた担体に担持させた分離剤に比べ、特定の化合物に対して光学分割能に優れることを見出し、以下に示す本発明を完成させた。
<1> 担体と担体に化学的結合により担持されたタンパク質から形成された光学異性体用分離剤であって、前記タンパク質が、α1−酸性糖タンパク質またはヒト血清アルブミ
ンであり、前記担体の粒径が3μm以下である、光学異性体用分離剤。
<2> 前記担体の粒径が2.5μm以下である、<1>に記載の光学異性体用分離剤。<3> 前記α1−酸性糖タンパク質が、ヒトα1−酸性糖タンパク質またはニワトリα1
−酸性糖タンパク質であり、前記担体が、シリカゲルである、<1>または<2>に記載の光学異性体用分離剤。
<4> 前記担体が表面処理されたシリカゲルである、<3>に記載の光学異性体用分離剤。
<5> 前記表面処理が、アミノアルキルシリル基、グリセリルアルキルシリル基、またはグリシジルアルキルシリル基の導入によるものである、<4>に記載の光学異性体用分離剤。
本発明の光学異性体用分離剤は、担体にα1−酸性糖タンパク質またはヒト血清アルブ
ミンが化学的結合により担持されて形成されるものである。
面鳥等の鳥類を挙げることができる。それらのうち、好ましいα1−酸性糖タンパク質の
具体例としては、ヒトα1−酸性糖タンパク質(以下、単にh−AGPともいう)やニワ
トリAGP(以下、単にc−AGPともいう)を挙げることができる。
ヒトα1−酸性糖タンパク質(h−AGP)は、前述した非特許文献2にその具体的な
構造等が記載されている。
本発明で用いるヒトα1−酸性糖タンパク質(h−AGP)は市販品(例えばSigm
a−Aldrich社)を用いることができ、必要に応じて高速液体クロマトグラフィー
により精製してもよい。
コイドをカチオン交換担体(例えば、SP−Sepharose)を用いた液体クロマトグラフィーにより、酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.6)によるステップワイズ溶出法を用い、オボムコイドとニワトリα1−酸性糖タンパク質(c−AGP)とを分離するこ
とにより得られる。
さらに、c−AGPを含む画分を分取して、SP−Sepharoseのようなイオン交換クロマトグラフィー用担体により精製を行ってもよい。
分子量41000〜43000程度の糖タンパク質である。ニワトリα1−酸性糖タンパ
ク質は、アミノ酸残基および糖鎖はヒトα1−酸性糖タンパク質と同じであるが、分子量
は約30000である。
本発明の光学異性体用分離剤に用いる担体としては、カラム管に収容され、分離における化学的及び物理的な耐久性を有する担体を用いることができる。このような担体としては、公知の担体を用いることができ、例えば、シリカゲル、アルミナ、マグネシア、ガラス、カオリン、酸化チタン、ケイ酸塩、及びヒドロキシアパタイト等の無機担体、及び、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート等の有機担体、が挙げられる。
前記担体は、目的物に対する分離能を高める観点から、多孔質であることが好ましい。担体は粒子状であってもよいし、カラム管に一体的に収容される一体型担体であってもよいが、分離剤の製造及びそのときの取り扱いの容易さの観点から、粒子状であることが好ましい。このような担体の具体例としてはシリカゲルが挙げられる。
担体の粒径として、2.5μm以下のものを用いると、分離特性の向上がより顕著になる。特に、分離対象とする化合物によっては、担体の粒径を5μmのものから3μmに変えた際に得られる分離特性の向上に比べ、担体を3μmから2.5μm以下のものに変えたときに得られる分離特性の向上がより顕著になる場合がある。
なお、本発明で用いる担体の粒径の下限は、通常、1.0μm以上である。
50Å〜1,000Åである。
この平均孔径は、ガス吸着法により測定することができる。市販されている担体を用い
るときは、平均孔径はカタログ値である。
上記の粒径を有する担体は、市販品を購入することで得ることができ、市販品の担体の粒径はカタログ値である。
本発明の光学異性体用分離剤は、前記のタンパク質を担体に担持させて形成されるものであり、担体はタンパク質を担持させるために表面処理を予め行うことが好ましい。
担体としてシリカゲルを用いる場合には、その表面処理として、グリセリルアルキルシリル基、アミノアルキルシリル基、グリシジルアルキル基を導入する方法を挙げることができる。
上記のシリル基のいずれにおいてもアルキル基は炭素数1〜6程度のものを挙げることができ、プロピル基であるものを好ましく用いることができる。
グリセリルアルキルシリル基を担体に導入する場合には、例えば特開昭61−65159号に記載された方法により、担体にグリセリルプロピルシリル基のようなグリセリルアルキルシリル基を導入することができる。
アミノアルキルシリル基を担体に導入する場合には、例えばアミノアルキルアルコキシシランと担体とを公知の方法で反応させることで、アミノアルキルシリル基を導入することができる。アミノアルキルアルコキシシランとしては、例えばアミノプロピルトリエトキシシランのようなアミノ基を有するシランカップリング剤を用い、これをシリカゲルのような担体と公知の反応法により反応させることで導入することができる。
グリシジルアルキルシリル基を担体に導入する場合には、グリシジルアルキルアルコキシシランとしては3−グリシジルプロピルトリエトキシシランのようなグリシジル基を有するシランカップリング剤を挙げることができ、これと担体とを公知の反応法により反応させることで、グリシジルアルキルシリル基を担体に導入することができる。
タンパク質のアミノ基と担体とを反応させる場合は、担体としてグリセリルアルキルシリル基が導入された担体を用い、1,1'-カルボニルジイミダゾールとグリセリル基の水酸基
とを反応させ、その後、前記タンパク質のアミノ基と、1,1'-カルボニルジイミダゾール
に由来する基とを反応させて結合させる態様を挙げることができる。
また、担体としてアミノアルキルシリル基が導入されたものを用い、これと炭酸ジ(N-
スクシンイミジル)とを反応させ、炭酸ジ(N-スクシンイミジル)に由来する基と、タンパ
ク質のアミノ基とを反応させて結合させる態様を挙げることができる。
N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドと前記のタンパク質をまず反応させ、次に得られた反応物とN-ヒドロキシコハク酸イミドとを反応させ、これをアミノアルキルシリル基が導入された担体と反応させて結合させる態様を挙げることができる。
また、タンパク質のチオール基と、担体とを反応させる場合には、担体としてアミノアルキルシリル基が導入されたものを用い、この担体が有するアミノ基と、N-[(4-マレイミドメチル)シクロヘキシルカルボニルオキシ]スクシンイミドとを反応させ、N-[(4-マレイミドメチル)シクロヘキシルカルボニルオキシ]スクシンイミドに由来する基を導入し、これとタンパク質のチオール基を反応させて結合させる態様を挙げることができる。
0.01〜0.5程度、好ましくは重量比で0.03〜0.2程度である。
例えば、担体としてアミノアルキルシリル基が導入されたものを用いる場合には、担体に残存したアミノ基に対してグルコサミンを反応させることで、アミノ基をブロックすることができる。これにより、残存する官能基による分離性能の低下を抑制できる。アミノ基以外の官能基についても、公知の方法により不活性化を行うことができる。
、以下の表1に示される中性化合物(Benzoin、Ethotoin等)、酸性化合物(2-Phenyl-n-butyric acid、2-Phenoxypropionic acid、Warfarin等)、塩基性化合物(Alprenolol、Oxprenolol、Propranolol、Bupivacaine等)の光学異性体の分離特性に優れている。
上記のタンパク質としてc−AGPを担持させたものは、酸性化合物(Ibuprofen、Ketoprofen)や塩基性化合物(Chlorophenylamine、Tolperisone、Alprenolol、Propranolol、Oxprenolol)分離特性に特に優れる。
上記のタンパク質として、ヒト血清アルブミンを担持させたものは、Oxazepam、IbuprofenやFlurbiprofen、 Warfarinのような酸性化合物やBenzoinのような中性化合物の分離
特性に優れている。
特に、粒径をさらに小さくした場合には、担持させるタンパク質の分離対象化合物の種類によっては、分離特性が顕著に向上したことが見出された。
<実施例1>
粒径3μmのアミノプロピルシリル基が導入されたシリカゲルをN,N'-disuccinimidyl carbonate で活性化し、粗オボムコイドから単離したニワトリα1−酸性糖タンパク質(
c-AGP)との反応を20mMリン酸緩衝液(pH6.6)中、4℃で20時間行った。洗浄後、さらにグルコサミンと室温で1時間反応させ、水及びメタノールで洗浄して、本発明の充填剤1を得た。得られた充填剤1を内径2.0mm、長さ100mmのステンレスカラムに充填して、カラム1を得た。
粒径が2.1μmのシリカゲルを用いたこと以外は実施例1と同様の手順により、本発明の充填剤2を得た。実施例1と同様に、得られた充填剤2を内径2.0mm、長さ100mmのステンレスカラムに充填して、カラム2を得た。
粒径が5μmのシリカゲルを用いたこと以外は実施例1と同様の手順により、充填剤3を得た。実施例1と同様に、得られた充填剤3を内径2.0mm、長さ100mmのステンレスカラムに充填して、カラム3を得た。
<実施例3>
担体に担持させるタンパク質として、Sigma-Aldrich社から入手したヒトα1−酸性糖タンパク質(h−AGP)を用いたこと以外は実施例1と同様の材料、手順により、充填剤4を得た。実施例1と同様に、得られた充填剤4を内径2.0mm、長さ100mmのステンレスカラムに充填して、カラム4を得た。
<実施例4>
粒径が2.1μmのシリカゲルを用いたこと以外は実施例3と同様の手順により、本発明の充填剤5を得た。実施例1と同様に、得られた充填剤5を内径2.0mm、長さ100mmのステンレスカラムに充填して、カラム5を得た。
粒径が5μmのシリカゲルを用いたこと以外は実施例3と同様の手順により、充填剤6を得た。実施例3と同様に、得られた充填剤6を内径2.0mm、長さ100mmのステンレスカラムに充填して、カラム6を得た。
<実施例5>
タンパク質としてヒト血清アルブミンを用いたこと以外は実施例2と同様の材料、手順により、充填剤7を得た。実施例2と同様に、得られた充填剤7を内径2.0mm、長さ100mmのステンレスカラムに充填して、カラム7を得た。
タンパク質としてヒト血清アルブミンを用いたこと以外は実施例1と同様の材料、手順により、充填剤8を得た。実施例1と同様に、得られた充填剤8を内径2.0mm、長さ100mmのステンレスカラムに充填して、カラム8を得た。
担体として粒径が5μmのものを用いたこと以外は実施例5と同様の材料、手順により、充填剤9を得た。実施例5と同様に、得られた充填剤9を内径2.0mm、長さ100mmのステンレスカラムに充填して、カラム9を得た。
カラム1〜3を用いて、光学異性体の分離試験を行った。
分析は、移動相として20mMリン酸塩緩衝液(pH3.0〜6.8)とエタノールまたはアセトニトリルの混合液を用いた高速液体クロマトグラフィーにより行い、表1に示す種々の光学異性体の保持係数(k1)、分離係数(α)、分離度(Rs)を求めた。流速は0.2mL/min、検出は210nmで行った。結果を表1及び図1に示す。また、一部の化合
物の分離結果(クロマトグラム)を図4に示す。
は、担体の粒径が3μm以下で小さくなるほど、特に酸性化合物及び塩基性化合物について分離度(Rs)が向上する化合物が多かった。酸性化合物や塩基性化合物のうち、粒径が2.1μmのものでは、粒径が5μmと3μmのものに比べて、Rsの増加が顕著になった化合物もあった。
分析は、表2に示す移動相(溶出液A: 10 mM sodium dihydrogen phosphate - disodium hydrogen phosphate (pH 5.1)、溶出液B: 10 mM sodium dihydrogen phosphate - disodium hydrogen phosphate (pH 5.1)/2-propanol = 96 : 4 (v/v))を用いた高速液体クロマトグラフィー(溶出速度0.2 mL/min; カラム温度, 25 ℃; 検出波長, 210 nm)により行
い、表2に示す種々の光学異性体の保持係数(k1)、分離係数(α)、分離度(Rs)を求めた。結果を表2及び図2に示す。また、一部の化合物の分離結果(クロマトグラム)を図5に示す。
体の粒径が3μm以下である場合には、表2及び図2に示す中性化合物、酸性化合物及び塩基性化合物について分離度(Rs)が顕著に向上しているものが多かった。酸性化合物と中性化合物の分離度を見ると、粒径が2.1μmのものでは、粒径が5μmと3μmのものに比べて、Rsの増加が顕著になっていた。
分析は、対象物質ごとに移動相を変え、高速液体クロマトグラフィー(溶出速度0.2 mL/min; カラム温度, 25℃; 検出波長, 210nm)により行い、表3に示す光学異性体の保持係数(k1)、分離係数(α)、分離度(Rs)を求めた。結果を表3及び図3に示す。また、図6に分離結果の一例を示す図(クロマトグラム)を示す。
分析に用いた移動相は以下の通り。
Oxazepam: 50 mM sodium dihydrogen phosphate - disodium hydrogen phosphate (pH 7.5) / 1-propanol.(96:4, v/v)
Ibuprofen: 50 mM sodium dihydrogen phosphate - disodium hydrogen phosphate (pH 6.6) / 1-propanol.(85:15, v/v) containing 4 mM octanoic acid
Flurbiprofen: 50 mM sodium dihydrogen phosphate - disodium hydrogen phosphate (pH 5.1) / 1-propanol (85:15, v/v) containing 4 mM octanoic acid
Ketoprofen, Warfarin: 50 mM sodium dihydrogen phosphate - disodium hydrogen phosphate (pH 5.1) / 1-propanol.(94:6, v/v)
Benzoin: 50 mM sodium dihydrogen phosphate - disodium hydrogen phosphate (pH 7.5) / 1-propanol.(98:2, v/v)
Claims (5)
- 担体と、担体に化学的結合により担持されたタンパク質から形成された光学異性体用分離剤であって、前記タンパク質が、α1−酸性糖タンパク質またはヒト血清アルブミンで
あり、前記担体の粒径が3μm以下である、光学異性体用分離剤。 - 前記担体の粒径が2.5μm以下である、請求項1に記載の光学異性体用分離剤。
- 前記α1−酸性糖タンパク質が、ヒトα1−酸性糖タンパク質またはニワトリα1−酸性
糖タンパク質であり、前記担体が、シリカゲルである、請求項1または2に記載の光学異性体用分離剤。 - 前記担体が表面処理されたシリカゲルである、請求項3に記載の光学異性体用分離剤。
- 前記表面処理が、アミノアルキルシリル基、グリセリルアルキルシリル基、またはグリシジルアルキルシリル基の導入によるものである、請求項4に記載の光学異性体用分離剤。
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