JP2015059631A - 自動変速機制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】変速機油が自動変速機に悪影響を及ぼす程度の高温になることを防止できる自動変速機制御装置を提供すること。
【解決手段】制御装置10は、車両に設けられた自動変速機200の制御を行うものである。この制御装置10は、自動変速機における動力伝達と潤滑のために設けられた変速機油における、所定時間後の油温を予測する(ステップS30)。そして、制御装置10は、予測油温Tcが高油温閾値Tdに達した場合、自動変速機200に対してシフトアップ指示を行う(ステップS70)。
【選択図】図3

Description

本発明は、自動変速機の制御を行う自動変速機制御装置に関する。
従来、特許文献1に開示された自動変速機がある。この自動変速機は、変速機部の潤滑油(以下、変速機油)の油温を検出する油温センサと、シフトアップ変速マップとして通常油温モード変速マップと高油温モード変速マップとを有する変速制御装置とを備えている。自動変速機は、油温が所定値以上となったときには、変速制御装置が高油温モード変速マップにしたがって変速制御を行うようにする。高油温モード変速マップは、油温が所定値より小さいときに用いられる通常油温モード変速マップに対して変速機部のシフトアップタイミングが早めに設定されている。
特開2003−207038号公報
しかしながら、上記自動変速機は、油温が所定値以上となったときに、通常油温モード変速マップに対して変速機部のシフトアップタイミングが早めに設定されている高油温モード変速マップに切り替える。このため、自動変速機では、変速機油が自動変速機に悪影響を及ぼす程度の高温になることを未然に防止できない可能性がある。
また、上記自動変速機は、油温が所定値以上となったときには、変速制御装置が高油温モード変速マップにしたがって変速制御を行う。このため、自動変速機では、変速機油が所定値に達したとしても、高油温モード変速マップの値によって車速条件が成立するまではシフトアップできず、油温が上昇し続けてしまうという問題が生じる。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、変速機油が自動変速機に悪影響を及ぼす程度の高温になることを未然に予防することができる自動変速機制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、
車両に設けられた自動変速機(200)の制御を行う自動変速機制御装置であって、
自動変速機における動力伝達と潤滑のために設けられた変速機油における、所定時間後の油温を予測する予測手段(S30)と、
予測手段にて予測された油温が予め設定された値に達した場合、変速機油の油温を下げる冷却手段(S40,S70)と、を備えていることを特徴とする。
このように、本発明は、所定時間後の変速機油の油温を予測する。そして、本発明は、予測した変速機油の油温が予め設定された値に達した場合に変速機油の油温を下げるように制御する。よって、本発明は、変速機油が自動変速機に悪影響を及ぼす程度の高温になることを未然に予防することができる。
なお、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、発明の技術的範囲を限定するものではない。
実施形態における自動変速機の概略構成を示すイメージ図である。 実施形態における自動変速機制御装置の概略構成を示すブロック図である。 実施形態における自動変速機制御装置の処理動作を示すフローチャートである。 変速機油の油温上昇率を示す油温上昇率マップである。 エンジン軸トルクとエンジン回転数との関連を示すエンジン性能曲線である。 実施形態における自動変速機制御装置の処理動作を示すタイムチャートである。 変形例における自動変速機制御装置の概略構成を示すブロック図である。 (a),(b)は、比較例における自動変速機制御装置の処理動作を示すタイムチャートである。
以下において、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。本発明の自動変速機制御装置10は、自動変速機200の制御を行うものである。なお、以下においては、自動変速機制御装置を制御装置と省略して記載する。
図1に示すように、自動変速機200は、車両に搭載されたエンジン300と車輪350との間に設けられている。この自動変速機200は、エンジン300に連結されて、エンジン300の出力を変速して車輪350に伝達するものである。自動変速機200は、トルクコンバータ210と変速部220と油圧回路230などを備えて構成されている。また、自動変速機200は、動力伝達と潤滑のための変速機油が、油圧回路230によって循環供給されている。つまり、トルクコンバータ210と変速部220には、変速機油が供給されている。
変速部220は、歯車列とクラッチ列などにより構成されている。歯車列とクラッチ列は、自動変速機200に搭載されている変速アクチュエータ100の動作によりギヤ段を変えることで、変速比を変えることができる。なお、変速アクチュエータ100は、例えば変速用ソレノイドなどによって構成することができる。
自動変速機200は、トルクコンバータ210が入力軸310を介してエンジン300に連結されている。また、自動変速機200は、変速部220が出力軸320、デファンレンシャルギア330、及びドライブシャフト340などを介して車輪350に連結されているなお、これらの構成要素の周囲には、各種センサが設けられている。例えば、図1に示すように、車両の速度を検出する車速センサ20、トルクコンバータ210の回転数を検出するトルクコンバータ出力回転センサ70、エンジン300の回転数を検出するエンジン回転センサ80が設けられている。以下においては、トルクコンバータ出力回転センサ70をトルコンセンサ、エンジン回転センサ80をエンジンセンサと省略して記載することもある。
なお、車速センサ20は、検出した車両の速度を示す車速信号を検出結果として出力する。トルコンセンサ70は、検出したトルクコンバータ210の回転数を示すトルクコンバータ出力回転数信号NTを検出結果として出力する。エンジンセンサ80は、検出したエンジン300の回転数を示すエンジン回転数信号NEを検出結果として出力する。
このように構成された自動変速機200は、図2に示す制御装置10によって制御される。制御装置10は、CPU、ROM、RAM及びI/Oなどからなる所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。この制御装置10は、CPUがRAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。これによって、制御装置10は後ほど説明する高油温予測制御などの処理を実行する。この高油温予測制御は、所定時間後の変速機油の油温を予測し、予測した油温が所定値に達していた場合にシフトアップ指示する制御である。また、制御装置10は、自身が実行する処理(機能)のブロックである機能ブロックとして、変速判断部11及び変速駆動部12などを備えて構成されている。
更に、制御装置10は、予測開始閾値Tb、高油温閾値Td、油温上昇率マップなどを例えばROMに記憶している。予測開始閾値Tbは、高油温予測制御を開始するか否かを判定するための閾値である。高油温閾値Tdは、本発明の特許請求の範囲における予め設定された値に相当し、変速機油を冷却するか否かを判定する閾値であり、シフトアップ指示を行うか否かを判定するための閾値である。なお、予測開始閾値Tbと高油温閾値Tdとの関係は、予測開始閾値Tb<高油温閾値Tdである。油温上昇率マップは、変速機油の油温上昇率を示すものであり、所定時間後の変速機油の油温を予測する際に用いるマップである。
なお、CPUは、Central Processing Unitの略である。ROMは、Read Only Memoryの略である。RAMは、Random Access Memoryの略である。I/Oは、Input/Outputの略である。
また、図2に示すように、制御装置10は、各種センサ20〜90が接続されており、その各種センサ20〜90による検出結果が入力される構成となっている。言い換えると、制御装置10は、各種センサ20〜90による検出結果を入力する信号入力処理を実行する。また、制御装置10は、各種センサ20〜90による検出結果を取得する信号取得処理を実行する、と言い換えることもできる。なお、制御装置10は、上述の車速センサ20、トルコンセンサ70、エンジンセンサ80に加えて、油温センサ30、吸気量センサ40、外気温センサ50、スロットル開度センサ60、シフト位置センサ90が接続されている。
油温センサ30は、変速機油の油温を検出して、検出した変速機油の油温を示す油温信号Taを検出結果として出力する。なお、油温センサ30で検出された変速機油の油温を実油温、制御装置10が予測した所定時間後の変速機油の油温を予測油温と記載することもある。
吸気量センサ40は、吸気量を検出して、検出した吸気量を示す吸気量信号を検出結果として出力する。外気温センサ50は、車両の外気温を検出して、検出した外気温を示す外気温信号を検出結果として出力する。スロットル開度センサ60は、スロットル開度を検出して、検出したスロットル開度を示すスロットル開度信号を検出結果として出力する。シフト位置センサ90は、シフト位置を検出して、検出したシフト位置を示すシフト位置信号を検出結果として出力する。
制御装置10の変速判断部11は、これらの各種センサ20〜90による検出結果を取り込んで、この検出結果に基づいて変速判断を行うと共に、変速駆動部12に変速指示を行う。また、制御装置10の変速駆動部12は、変速指示に従い、ギヤ段に応じた駆動信号を出力して変速アクチュエータ100を駆動することで変速を実現する。つまり、制御装置10の変速駆動部12は、変速アクチュエータ100を駆動することで、例えばシフトアップを実現する。
なお、本実施形態では、制御装置10と各種センサ20〜90とが直接接続されている例を採用している。しかしながら、本発明はこれに限定されない。制御装置10は、各種センサ20〜90による検出結果を取得できればよい。よって、制御装置10は、各種センサ20〜90による検出結果を取得できれば、各種センサ20〜90と直接接続されていなくてもよい。例えば、制御装置10は、他の制御装置が接続されており、他の制御装置を介して、各種センサ20〜90による検出結果を取得してもよい。
ここで、制御装置10の処理動作に関して説明する。制御装置10は、定期的(例えば64ms毎)に図3のフローチャートを実行する。詳述すると、図3のフローチャートは、制御装置10の変速判断部11及び変速駆動部12が実行する処理である。
ステップS10では、信号入力処理を実行する。変速判断部11は、各種センサ20〜90の夫々から、車速信号、油温信号Ta、吸気量信号、外気温信号、スロットル開度信号、トルクコンバータ出力回転数信号NT、エンジン回転数信号NE、シフト位置信号が入力される。
ステップS20では、変速機油の油温(Ta)≧予測開始閾値Tbであるか否かを判定する。変速判断部11は、ステップS10で取得した油温信号Taと、ROMなどに記憶されている予測開始閾値Tbとを比較する。この判定は、高油温予測制御を開始するか否かを判定するために行う。
そして、変速判断部11は、油温信号Ta≧予測開始閾値Tbと判定した場合は、所定時間後の実油温が高油温閾値Tdに達する可能性が高いとみなしてステップS30に進む。一方、変速判断部11は、油温信号Ta≧予測開始閾値Tbでないと判定した場合は、所定時間後の実油温が高油温閾値Tdに達する可能性は低いとみなして図3に示す処理を終了する。このように、予測開始閾値Tbを設けて、ステップS20を行うことで、予測油温の算出回数を抑制できるので好ましい。
ステップS30では、所定時間後の予測油温Tcを算出する。つまり、変速判断部11は、所定時間後の変速機の油温を予測する(予測手段)。なお、ここでは、所定時間として、T秒を採用している。変速判断部11は、マップ、テーブル、関係式を用いた演算などによって予測油温Tcを算出する。なお、符号Tcは、予測油温信号に付与する符号であるが、便宜上、予測油温に付与している。
ここで一例として、図4に示す油温上昇率マップを用いた予測油温Tcの算出方法に関して説明する。図4に示す油温上昇率マップは、トルクコンバータ出力回転数とエンジン回転数との回転差と、変速機油の油温上昇率との関係を示している。まず、変速判断部11は、ステップS10で取得したトルクコンバータ出力回転数信号NT、エンジン回転数信号NE、ROMなどに記憶された油温上昇率マップなどを用いて油温上昇率(℃/秒)を算出する(予測手段)。なお、図4におけるデルタ(三角の記号)は、トルクコンバータ出力回転数とエンジン回転数の回転差であり|NE−NT|である。そして、変速判断部11は、予測油温Tc=油温信号Ta+油温上昇率×T(秒)から予測油温Tcを算出する(予測手段)。図4からもわかるように、油温上昇率は、油温上昇率>0(℃/秒)の場合は油温上昇であり、油温上昇率<0(℃/秒)の場合は油温下降である。
なお、本実施形態では、便宜上、油温上昇率をデルタ=|NE−NT|により決める例を採用している。しかしながら、本発明はこれに限定されない。変速機油の油温上昇率は、車速、現在の実油温、外気温、トルクコンバータ210の搭載位置におけるクーラー性能などにも関係する。そのため、油温上昇率マップは、これらの情報を考慮して車両ごとに決めると好ましい。
また、上述のように本実施形態においては、油温上昇率マップを用いて予測油温を算出する例を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。変速判断部11は、油温信号Ta、トルクコンバータ出力回転数信号NT、エンジン回転数信号NEに基づいて、所定時間後の油温を予測するものであってもよい。
ステップS40では、予測油温Tc≧高油温閾値Tdであるか否かを判定する。変速判断部11は、ステップS30で算出した予測油温Tcと、ROMなどに記憶されている高油温閾値Tdとを比較する。この判定は、変速機油の油温を冷却する必要があるか否かを判定するために行う。そして、変速判断部11は、予測油温Tc≧高油温閾値Tdと判定した場合は、所定時間(T秒)後の実油温が高油温閾値Tdに達する可能性が高いので、変速機油を冷却する必要があるとみなしてステップS50に進む(冷却手段)。一方、変速判断部11は、予測油温Tc≧高油温閾値Tdでないと判定した場合は、所定時間(T秒)後の実油温が高油温閾値Tdに達しない可能性が高いので、変速機油を冷却する必要がないとみなして図3に示す処理を終了する。
ステップS50では、誤予測判定を行う(誤予測判定手段)。変速判断部11は、ステップS30で予測した変速機油の予測油温が誤予測であるか否かを判定する。言い換えると、変速判断部11は、ステップS30で予測した予測油温が正しいか否かを判定する。この判定は、不必要なシフトアップ指示を抑制するために行う。そして、変速判断部11は、誤予測でないと判定した場合は、ステップS30での予想通り変速機油の油温が上昇するとみなして、ステップS60へ進む。
一方、変速判断部11は、誤予測であると判定した場合は、変速機油の油温はステップS30での予想通りに上昇しないとみなして、図3に示す処理を終了する。後ほど説明するように、変速判断部11は、予測油温Tcが高油温閾値Tdに達した場合にシフトアップ指示を行い変速機油の油温を下げる処理を行う(冷却手段)。しかしながら、変速判断部11は、ステップS40において誤予測と判定した場合は、予測油温Tcが高油温閾値Tdに達した場合であっても、シフトアップ指示を行わず変速機油の油温を下げない(冷却手段)。これによって、誤予測による不必要なシフトアップ指示を抑制できる。
ここで、誤予測判定の一例に関して説明する。変速判断部11は、ステップS10で取得したトルクコンバータ出力回転数信号NT、エンジン回転数信号NE、吸気量信号、スロットル開度信号、車速信号に基づいて、誤予測判定を行う。詳述すると、変速判断部11は、これらの信号に基づいて、下記の条件1〜5が成立するか否かを判定し、条件1〜5のいずれかが不成立の場合に誤予測と判定する。条件1はデルタ≧所定値である。条件2はエンジン回転数信号NE≧所定値である。条件3は吸気量信号≧所定値である。条件4はスロットル開度信号≧所定値である。条件5は加速度≦所定値である。なお、加速度は、車速から求めることができる。つまり、変速判断部11は、加速度=(今回と前回の車速変化量)/(今回と前回の時間差)によって加速度を算出する。
また、各条件における所定値は、夫々の条件における信号に対応した値である。例えば、条件2の所定値はエンジン回転数信号NEに対応した値であり、条件3の所定値は吸気量信号に対応した値である。また、各条件における所定値は、夫々の条件における信号に基づいて、変速機油の油温が予測油温となりうるか否かを判定できる値である。
なお、本発明は、ステップS50を行わなくても、本発明の目的を達成できる。つまり、変速判断部11は、ステップS40でYES判定した後にステップS60へ進んでも良い。よって、変速判断部11は、高油温予測制御に用いない信号を取得しなくても目的を達成できる。高油温予測制御に用いない信号は、例えば、吸気量信号やスロットル開度信号などである。
ステップS60では、シフトアップ禁止条件判定を行う。変速判断部11は、シフトアップ指示を行ってもいいのか否かを判定する。つまり、変速判断部11は、自動変速機200のシフトアップが禁止状態であるか否かを判定する(禁止判定手段)。この判定は、シフトアップ指示によって不具合が生じないようにするために行う。
そして、変速判断部11は、シフトアップ禁止でないと判定、つまり許可と判定した場合はステップS70へ進む。一方、シフトアップ禁止と判定した場合はステップS80へ進む。後ほど説明するように、変速判断部11は、予測油温Tcが高油温閾値Tdに達した場合にシフトアップ指示を行い、変速機油の油温を下げる処理を行う(冷却手段)。しかしながら、変速判断部11は、ステップS60においてシフトアップが禁止状態と判定した場合は、予測油温Tcが高油温閾値Tdに達した場合であっても、シフトアップ指示を行わず変速機油の油温を下げない(冷却手段)。これによって、シフトアップ指示によって不具合が生じることを抑制できる。
ここで、シフトアップ禁止条件の一例に関して説明する。シフトアップ禁止条件は、シフトアップにより車両に不具合を与える可能性がある場合に、シフトアップ指示を禁止するために設けた条件である。
例えば、シフトアップ後のトルクが足りなく、走行できないと判断した場合、シフトアップ禁止条件が成立したとみなすことができる。即ち、変速判断部11は、(シフトアップ後のエンジン軸トルク×シフトアップ後のギヤ比)<(現在のエンジン軸トルク×現在のギヤ比−所定値)と判定した場合、シフトアップ禁止条件が成立したとみなす。なお、変速判断部11は、図5に示すエンジン性能曲線からエンジン軸トルクを求めることができる。また、このエンジン性能曲線は、変速判断部11のROMなどに記憶しておくことができる。
また、シフトアップ禁止条件としては、外部条件によりシフトアップが制限された場合に、シフトアップ指示を禁止するために設けた条件であっても採用できる。
例えば、ドライバーのシフトレンジ操作でシフトアップできない場合は、外部条件によりシフトアップが制限された状態であり、シフトアップ禁止条件が成立したとみなすことができる。一例としては、ドライバーがシフト位置を3速に設定した場合、変速部220は自動変速機制御装置10の制御により1速〜3速の間に変速されるが、4速までシフトアップできなくなる。もし現在状態が3速(ドライバーが設定したシフト位置)未満であれば、シフトアップすることが可能なので、シフトアップ禁止条件が不成立とみなす。もし現在状態は3速(ドライバーが設定したシフト位置)以上であれば、シフトアップすることが不可なので、シフトアップ禁止条件が成立とみなす。
また、現在のシフト位置が最高シフト位置である場合は、外部条件によりシフトアップが制限された状態であり、シフトアップ禁止条件が成立したとみなすことができる。この場合、変速判断部11は、ステップS10で取得したシフト位置信号に基づいて、現在のシフト位置が最高シフト位置であるか否かを判定する。そして、変速判断部11は、現在のシフト位置が最高シフト位置であると判定した場合、シフトアップ禁止条件が成立したとみなす。
なお、本発明は、ステップS60を行わなくても、変速機油が自動変速機に悪影響を及ぼす程度の高温になることを未然に予防することができる。つまり、変速判断部11は、ステップS50で誤予測でないと判定した後にステップS70へ進んでも良い。また、上述のように、本発明は、ステップS50を行わなくてもよい。よって、変速判断部11は、ステップS40でYES判定した後にステップS70へ進んでも良い。よって、変速判断部11は、高油温予測制御に用いない信号を取得しなくても目的を達成できる。高油温予測制御に用いない信号は、例えば、エンジン軸トルクやシフト位置信号などである。
ステップS70では、シフトアップ指示を行う。変速判断部11は、変速駆動部12に対してシフトアップ指示を行う(冷却手段)。そして、変速駆動部12は、変速判断部11からのシフトアップ指示に応じて、シフトアップを示す駆動信号を変速アクチュエータ100に対して出力して変速アクチュエータ100を駆動する(冷却手段)。言い換えると、制御装置10は、自動変速機200に対して、ギヤ段をアップするように指示する。
このように、制御装置10は、自動変速機200に対してシフトアップするように指示することで変速機油の油温をさげる。言い換えると、制御装置10は、自動変速機200をシフトアップさせることで、変速機油を冷却する。
なお、制御装置10は、ステップS40においてYES判定した場合、車速にかかわらず、自動変速機200に対してシフトアップするように指示すると好ましい(冷却手段)。つまり、制御装置10は、変速機油の油温を低下させることを目的として、自動変速機200をシフトアップさせる際には、車速条件を設けない。このようにすることで、制御装置10は、変速機油の油温を低下させることを目的として、自動変速機200をシフトアップさせる際に変速の範囲を拡大することができる。また、制御装置10は、車速に関係なく変速機油の油温を低下させることができる。
ステップS80では、シフトアップNG処理を行う。変速判断部11は、ステップS60においてシフトアップ禁止と判定した場合、車両の乗員に対して変速機油の油温を下げるように報知する(報知手段)。なお、変速判断部11は、報知する際には、車室内に設けられたスピーカ、インジケータ、表示装置(いずれも図示省略)などを用いる。つまり、制御装置10は、ステップS40でYES判定しており、且つ、ステップS60で禁止判定した場合、車両の乗員に対して変速機油の油温を下げるように報知する(報知手段)。
制御装置10は、予測油温が高油温閾値Tdに達しているにもかかわらずシフトアップ禁止の場合、変速機油の油温を下げることができない。このような場合、制御装置10は、ステップS80での処理を実行することによって、車両の乗員に注意を促すことができる。つまり、制御装置10は、自身では変速機油の油温を下げる制御ができない場合は、車両の乗員に対して、変速機油の油温を下げるように運転を行うように注意する、と言い換えることもできる。このようにすることで、制御装置10は、シフトアップ禁止の場合であっても、変速機油の油温が上昇し続けることを抑制できる。
ここで、図6,図8を用いて、比較例の制御装置と対比して制御装置10の処理動作を説明する。比較例の制御装置は、油温が所定値以上となったときに、通常油温モード変速マップに対して変速機部のシフトアップタイミングが早めに設定されている高油温モード変速マップに切り替えるものである。
まず、図8(a)を用いて、比較例の制御装置の処理動作を説明する。比較例の制御装置では、タイミングt3に示すように、変速機油の油温が高油温閾値Tdに達するとシフトアップ変更点を下げることになる(言い換えると、低速側に遷移する)。これによって、比較例の制御装置では、タイミングt3で車速がシフトアップ変更点に達することになる。従って、比較例の制御装置は、タイミングt3で自動変速機をシフトアップさせる。
しかしながら、変速機油の油温は、自動変速機をシフトアップさせたとしても直ちに低下しない。図8(a)では、タイミングt3で自動変速機をシフトアップさせたとしても、タイミングt3からタイミングt4の間が高油温領域となってしまう。
次に、図8(b)を用いて、比較例の制御装置における処理動作を説明する。比較例の制御装置では、変速機油の油温が高油温閾値Tdに達したとしても、車速がシフトアップ変更点に達しないと自動変速機をシフトアップしない。また、車両は、トーイングなど通常運転より高い負荷がかかることによって、所定の車速に達するまでの時間がかかる。
よって、比較例の制御装置では、タイミングt5で変速機油の油温が高油温閾値Tdに達したことでシフトアップ変更点を下げるものの、車速がシフトアップ変更点に達するタイミングt6まで自動変速機をシフトアップしないことが起こりうる。また、変速機油の油温は、自動変速機をシフトアップさせたとしても直ちに低下しないため、図8(b)では、タイミングt6で自動変速機をシフトアップさせたとしても、高油温状態がタイミングt7まで続く。従って、比較例の制御装置では、変速機油の油温が高油温閾値Tdに達したとしても、変速機油の油温上昇を抑制できず、タイミングt5からタイミングt7の間が高油温領域となってしまう。
次に、図6を用いて、制御装置10の処理動作を説明する。図6では、タイミングt1で実油温が予測開始閾値Tbに達し、タイミングt2で予測油温Tcが高油温閾値Tdに達する。つまり、タイミングt2で、t2+T(秒)(=t3)時の油温が高油温閾値Tdに達することを予知する。なお、タイミングt1では、予測油温Tc<高油温閾値Tdである。つまり、タイミングt1で、t1+T(秒)時の油温が高油温閾値Tdに達しないことを予知する。
よって、制御装置10は、タイミングt1で、実油温が予測開始閾値Tbに達したと判定して、高油温予測制御を開始する。そして、制御装置10は、タイミングt2で、予測油温Tcが高油温閾値Tdに達すると判定して、自動変速機200に対してシフトアップするように指示する。よって、制御装置10は、実油温が高油温閾値Tdに達すると予測されるタイミングt3(=t2+T(秒))よりも先に、自動変速機200に対してシフトアップするように指示することができる。
このように、制御装置10は、所定時間T(秒)後の変速機油の油温Tcを予測する。そして、制御装置10は、予測油温Tcが高油温閾値Tdに達した場合に変速機油の油温を下げるように制御する。つまり、制御装置10は、現在の実油温ではなく、所定時間T(秒)後の予測油温Tcが高油温閾値Tdに達するか否かを判定し、予測油温Tcが高油温閾値Tdに達した場合に変速機油の油温を下げるように制御する。よって、制御装置10は、変速機油が自動変速機200に悪影響を及ぼす程度の高温になることを未然に予防することができる。また、制御装置10は、予測油温Tcが高油温閾値Tdに達した場合、車速にかかわらず、自動変速機200に対してシフトアップするように指示することで、トーイングなど通常運転より高い負荷がかかっていたとしても変速機油の油温上昇を抑制できる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に何ら制限されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。
(変形例)
なお、変速機油は、ファン400から送風された風が当たるように設けられている。つまり、自動変速機200を循環する変速機油は、配管を通じてラジエータへ導かれる。このラジエータは、車両の走行により風が当たるように設けられている。よって、ラジエータを通過する変速機油は、ラジエータに風が当たることで、過剰な熱を発散させることができる。また、ラジエータは、放熱能力が不足する場合(例えば、自動変速機200の発熱量が通常運転より多い場合や、渋滞など車速が低く当たる風が不十分な場合)がある。このような場合に備えて、ラジエータは、ファン400から送風することで、放熱能力を高められるように設けられている。従って、変速機油は、ファン400から送風された風が自動変速機200に当たることで冷却することができる。なお、ファン400は、例えばエンジンの冷却水を冷却するための電動ファンなどを採用することができる。
そこで、制御装置10aは、図7に示すように、ファン400と電気的に接続されていてもよい。そして、制御装置10aは、予測油温Tcが高油温閾値Tdに達した場合に、ファン400に対して回転動作するように指示することで、変速機油の油温を下げるように制御してもよい(冷却手段)。このようにしても、本発明は目的を達成できる。なお、制御装置10aは、エンジン制御装置(図示せず)を介して、ファン400に対して回転動作するように指示してもよい。
更に、本発明は、自動変速機200をシフトアップしたり、ファンを回転動作させたりする他にも、予測油温Tcが高油温閾値Tdに達した場合に変速機油の油温を下げるように制御するものであれば目的を達成できる。
10,10a 自動変速機制御装置、11 変速判断部、12 変速駆動部、20 車速センサ、30 油温センサ、40 吸気量センサ、50 外気温センサ、60 スロットル開度センサ、70 トルクコンバータ出力回転センサ、80 エンジン回転センサ、90 シフト位置センサ、100 変速アクチュエータ、200 自動変速機、210 トルクコンバータ、220 変速部、230 油圧回路、300 エンジン、310 入力軸、320 出力軸、330 デファンレンシャルギア、340 ドライブシャフト、350 車輪

Claims (9)

  1. 車両に設けられた自動変速機(200)の制御を行う自動変速機制御装置であって、
    前記自動変速機における動力伝達と潤滑のために設けられた変速機油における、所定時間後の油温を予測する予測手段(S30)と、
    前記予測手段にて予測された前記油温が予め設定された値に達した場合、前記変速機油の前記油温を下げる冷却手段(S40,S70)と、
    を備えていることを特徴とする自動変速機制御装置。
  2. 前記冷却手段は、前記自動変速機に対してシフトアップするように指示することで、前記変速機油の前記油温をさげることを特徴とする請求項1に記載の自動変速機制御装置。
  3. 前記冷却手段は、前記予測手段にて予測された前記油温が予め設定された値に達した場合、前記車両の速度にかかわらず、前記自動変速機に対してシフトアップするように指示することを特徴とする請求項2に記載の自動変速機制御装置。
  4. 前記自動変速機のシフトアップが禁止状態であるか否かを判定する禁止判定手段(S60)を備えており、
    前記冷却手段は、前記禁止判定手段にて前記自動変速機のシフトアップが禁止状態であると判定された場合は、前記予測手段にて予測された前記油温が予め設定された値に達した場合であっても、前記変速機油の前記油温を下げないことを特徴とする請求項2又は3に記載の自動変速機制御装置。
  5. 前記予測手段にて予測された前記油温が予め設定された値に達しており、且つ、前記禁止判定手段にて前記自動変速機のシフトアップが禁止状態であると判定された場合に、前記車両の乗員に対して前記変速機油の前記油温を下げるように報知する報知手段(S80)を備えることを特徴とする請求項4に記載の自動変速機制御装置。
  6. 前記変速機油は、ファン(400)から送風された風が当たるように設けられており、
    前記冷却手段は、前記ファンに対して回転動作するように指示することで、前記変速機油の前記油温をさげることを特徴とする請求項1に記載の自動変速機制御装置。
  7. 前記予測手段は、前記変速機油の前記油温、前記車両に設けられたエンジンの回転数、及び前記自動変速機に設けられたトルクコンバータの回転数に基づいて、所定時間後の前記油温を予測することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の自動変速機制御装置。
  8. 前記エンジンの回転数と前記トルクコンバータの回転数との回転差と、前記変速機油の油温上昇率との関係を示す油温上昇率マップを有しており、
    前記予測手段は、前記変速機油の前記油温、前記車両に設けられた前記エンジンの回転数、前記自動変速機に設けられた前記トルクコンバータの回転数に加えて、前記油温上昇率マップにおける前記油温上昇率に基づいて、所定時間後の前記油温を予測することを特徴とする請求項7に記載の自動変速機制御装置。
  9. 前記予測手段によって予測された前記変速機油の前記油温が誤予測であるか否かを判定する誤予測判定手段(S50)を備え、
    前記冷却手段は、前記誤予測判定手段にて誤予測と判定された場合は、前記予測手段にて予測された前記油温が予め設定された値に達した場合であっても、前記変速機油の前記油温を下げないことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の自動変速機制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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