JP2015048401A - 振動減衰材用樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】振動減衰性能に優れるとともに、塗膜強度にも優れた塗膜を形成することができる振動減衰材用樹脂組成物を提供する。【解決手段】殻体内部に流体を含む構造の殻体とバインダーとを含み、該殻体は、圧縮強度が0.6MPa以上であることを特徴とする振動減衰材用樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、振動減衰材用樹脂組成物に関する。より詳しくは、各種構造体における振動を減衰させて振動に起因する機械的な揺れ及び騒音を防止して安定性及び静寂性を保つために使用される振動減衰材の材料等として有用な振動減衰材用樹脂組成物に関する。
各種構造体における振動を減衰させて振動に起因する機械的な揺れ及び騒音を防止して安定性及び静寂性を保つために、振動減衰材が用いられている。振動減衰材は、例えば、自動車の室内床下等に用いられている他、鉄道車両、船舶、航空機や電気機器、建築構造物、建設機器等にも広く利用されている。このような振動減衰材に用いられる材料としては、従来、振動吸収性能及び吸音性能を有する材料を素材とする板状成形体やシート状成形体等の成形加工品が使用されている。一方で、振動や音響の発生箇所の形状が複雑な場合には、これらの成形加工品を振動発生箇所に適用することが困難であることから、作業性を改善して振動減衰効果を充分に発揮させるための手法が種々検討されている。例えば、自動車の室内床下等には無機粉体を含んだアスファルトシートが用いられてきたが、熱融着させる必要性があることから、作業性等の改善が望まれており、振動減衰材を形成する種々の振動減衰材用組成物や重合体の検討がなされている。
このように、成形加工品の代替材料として、塗布型振動減衰材(塗料)が開発されており、例えば、該当箇所にスプレーにより吹き付けるか又は任意の方法により塗布することにより形成される塗膜により、振動減衰効果及び吸音効果を得ることが可能な振動減衰塗料が種々提案されるに至っている。具体的には、例えば、アスファルト、ゴム、合成樹脂等の展色剤に合成樹脂粉末を配合して得られる塗膜硬度を改良した水系振動減衰塗料の他、自動車の室内用に適するものとして、樹脂エマルションに充填剤として活性炭を分散させた振動減衰塗料等が開発されている。しかしながら、これらの従来品をもってしても未だ、振動減衰性能が充分に満足できるレベルにあるとはいえず、更に充分に振動減衰性能を発揮できるようにする技術が求められている。
振動減衰性能を向上させる手段の1つとして、樹脂からなるシェル部分に高粘性流体が内包されていることを特徴とするマイクロカプセルを用いる方法が知られており、ゼラチンとアラビアゴム等を原料として形成されるマイクロカプセルや、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを原料として形成されるマイクロカプセル等が開示されている(例えば、特許文献1〜4参照)。更に、粘弾性樹脂(A)中に、−50〜100℃の範囲のいずれかの温度においてヤング率が1×10dyne/cm以下を呈する物質(B)が分散されてなることを特徴とする複合型制振金属板用芯材樹脂が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
特開2006−336786号公報 特開2006−335279号公報 特開2005−338771号公報 特開2005−265068公報 特開平04−117463号公報
塗布によって塗膜を形成し、その塗膜によって振動を減衰させる塗布型振動減衰材では、振動減衰効果を充分に発揮させるためには、振動減衰性能に優れることの他、その効果を安定的に発揮するためには、塗膜強度が充分であることも重要な要素である。
上記のとおり、塗布型振動減衰材としてマイクロカプセルを用いた種々の組成物が開示されているが、上記従来のマイクロカプセル等を含有する樹脂組成物は、塗料として用いたときの塗膜強度が充分ではなかった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、振動減衰性能に優れるとともに、塗膜強度にも優れた塗膜を形成することができる振動減衰材用樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、振動減衰材用樹脂組成物について種々検討したところ、殻体内部に流体を含む構造の殻体とバインダーとを含む組成物において、殻体内部に流体を含む構造の殻体として圧縮強度が0.6MPa以上であるものを用いると、該組成物から形成される塗膜が、優れた振動減衰性能及び優れた塗膜強度を示すことを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、殻体内部に流体を含む構造の殻体とバインダーとを含み、上記殻体は、圧縮強度が0.6MPa以上であることを特徴とする振動減衰材用樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物は、殻体内部に流体を含む構造の殻体、バインダーをそれぞれ1種含むものであってもよく、2種以上含むものであってもよい。また、本発明の振動減衰材用樹脂組成物は、殻体内部に流体を含む構造の殻体とバインダーとを含むものである限り、その他の成分を含むものであってもよい。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物において、殻体内部に流体を含む構造の殻体の含有量は、振動減衰材用樹脂組成物が含むバインダー100質量%に対して、1〜300質量%であることが好ましい。より好ましくは、バインダー100質量%に対して、5〜250質量%であり、更に好ましくは、バインダー100質量%に対して、10〜200質量%であり、特に好ましくは、バインダー100質量%に対して、20〜150質量%である。振動減衰材用樹脂組成物が殻体内部に流体を含む構造の殻体とバインダーとをこのような割合で含むことで、振動減衰材用樹脂組成物がより優れた振動減衰性を発揮することになる。
≪殻体内部に流体を含む構造の殻体≫
殻体内部に流体を含む構造の殻体(以下、「殻体」とも称する。)は殻体内部の流体によって振動エネルギーを吸収することができ、これにより本発明の振動減衰材用樹脂組成物は、優れた振動減衰性能を発揮することができる。このような流体による振動エネルギーの吸収は、殻体内部の流体が流体の状態を維持する限り可能であるため、本発明の振動減衰材用樹脂組成物から得られる塗膜は、振動減衰効果の温度依存性が低く、幅広い温度領域で振動減衰性能を発揮することができる。また、このような殻体内部に流体を含む構造の殻体として圧縮強度が0.6MPa以上のものを用いることで、振動減衰材用樹脂組成物は、いわゆる顔料補強効果と同様の効果に優れたものとなる。その結果、上記振動減衰材用樹脂組成物から得られる塗膜が、塗膜強度にも優れたものとなるとともに、防振性も向上する。
また、殻体の圧縮強度が低いと、塗工時に殻体が破壊されて振動を減衰させる成分の数が低下し、振動減衰効果が低下するおそれがあるが、殻体の圧縮強度が0.6MPa以上であればこのような不具合を抑制することができる。
本発明における殻体は、殻体内部に流体を含む構造のものであればよく、殻体の殻を形成する壁層は単一の層からなるものであってもよく、異なる材料から形成される多層構造のものであってもよい。殻体内部に含む流体は、1種であっても、2種以上であってもよく、また殻体内部に流体を含む限り、流体以外の成分を含んでいてもよい。
上記流体は、一般に流体に分類されるものであれば特に制限されず、気体、液体のいずれのものであってもよいが、気体及び/又は20℃での粘度が1mPa・s以上の液体であることが好ましい。液体としては、20℃での粘度が5mPa・s以上の液体がより好ましく、20℃での粘度が10mPa・s以上の液体が更に好ましい。
気体としては、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム等の1種又は2種以上を好適に用いることができる。
20℃での粘度が1mPa・s以上の液体としては、イオン液体、プロピレングリコール、エチレングリコール、アルコール、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、エチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタンなどのベンゼン系炭化水素などの芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−デカンなどのパラフィン系炭化水素、アイソパー(登録商標)・シリーズ(エクソン化学(株)製)などのイソパラフィン系炭化水素、1−オクテン、1−デセンなどのオレフィン系炭化水素、シクロヘキサン、デカリンなどのナフテン系炭化水素などの脂肪族炭化水素類;ケロシン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、工業ガソリン、コールタールナフサ、石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油や石炭由来の炭化水素混合物;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロフルオロエタン、テトラブロモエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、テトラフルオロジヨードエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、クロロブタン、クロロシクロヘキサン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードホルムなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類;ハイドロフルオロエーテルなどのフッ素系溶剤等の1種又は2種以上を好適に用いることができる。
殻体の形態は、大きく分けて2種類であり、1つは、殻体内部に流体を内包し、粒子を内包しない形態であり、もう一つは、殻体内部に流体及び粒子を内包する形態である。殻体内部に流体を内包し、粒子を内包しない形態は、具体的には、殻体内部に流体として気体又は/及び液体を内包するが、粒子を内包しない形態である。また、殻体内部に流体及び粒子を内包する形態は、具体的には、殻体内部に流体として気体又は/及び液体を内包し、かつ、粒子を1個又は複数個内包する形態である。殻体の形態としては、振動減衰材用樹脂組成物の振動減衰効果を優れたものとなるため、殻体内部に流体及び粒子を内包する形態が好ましい。
上記殻体は、圧縮強度が0.6MPa以上であるが、圧縮強度は好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、更に好ましくは5MPa以上である。圧縮強度がこのような範囲にある殻体を含む振動減衰材用樹脂組成物を塗料として用いると、更に優れた塗膜強度を発揮することができる。
殻体の圧縮強度は、殻体を水で希釈し、分散させた試料液をプレパラートに1滴垂らして、50℃で5分間乾燥させ、この測定用試料から殻体1個を選び出して微小圧縮試験機(製品名:MCT−W500、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
<測定条件>
試験力:9.8mN
負荷速度:0.446mN/秒
保持時間:0秒
圧子の直径:100μm
上記殻体の壁層を構成する材料としては、殻体内部に含む流体等の内容物を密封できる材質であれば特に限定されず、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂等のアミノ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂などのビニル重合系ポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル系樹脂(脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリエステル系エラストマーなどの縮合系ポリマーなど、セルロース誘導体(エチルセルロースなど)等が挙げられる。これらの中でも、アミノ樹脂が好ましい。より好ましくは、メルカプト基を有するアミノ樹脂である。
上記殻体は、1種の樹脂によって構成される1層の壁層を有するものであってもよく、異なる樹脂によって構成される多層構造の壁層を有するものであってもよい。異なる特性を有する樹脂によって構成される多層構造の壁層を有するものとすると、殻体を様々な特性に優れた粒子にすることが可能となる。
殻体が多層構造の壁層を有するものである場合、層の数は特に制限されないが、2〜4層であることが好ましく、より好ましくは、2又は3層のものである。
上記殻体が多層構造の壁層を有するものである場合、流体に接する最も内側の層を構成する材料として、上記壁層を構成する材料のいずれかを用いることが好ましい。
それ以外の外側の層を構成する材料は、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂などのビニル重合系ポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル系樹脂(脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリエステル系エラストマーなどの縮合系ポリマーなど、セルロース誘導体(エチルセルロースなど)のいずれかであることが好ましい。より好ましくは、エポキシ樹脂である。
殻体が多層構造の壁層を有するものである場合の多層構造の壁層の好適な一例は、アミノ樹脂で構成される壁層を内壁層として、その外側に、エポキシ樹脂で構成される外壁層を有する多層構造のものである。壁層がこのような多層構造をとることにより、内壁層を構成するアミノ樹脂は不浸透性が高く、外壁層を構成するエポキシ樹脂は耐薬品性や機械的性質に優れ、振動減衰材用樹脂組成物は保存安定性に優れるものとなる。
また、別の好適な形態として、アミノ樹脂で形成された内壁層の内側に更に大豆多糖類、アラビアガム等の天然多糖類等で形成された層を設けた多層(2層)構造の壁層や、更に、アミノ樹脂で形成された内壁層の外側に、エポキシ樹脂で構成される外壁層を有する多層(3層)構造の壁層が挙げられる。アミノ樹脂で形成された内壁層の内側に更に大豆多糖類、アラビアガム等の天然多糖類等で形成された層を設けることで、より高強度の殻体が形成されるため好ましい。
上記殻体のアスペクト比は、特に限定されないが、1〜5が好ましく、より好ましくは1.1〜3である。殻体のアスペクト比は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、微小圧縮試験機等により、粒子径の大きさに適した測定を行うことができるが、本発明においては、微小圧縮試験機により測定できる殻体の直径から長径を短径で除した値を求め、この値を用いる。
上記壁層の厚さ(壁層が多層である場合は、全ての層の合計の厚さ、例えば、壁層が2層である場合は、内壁層と外壁層との合計の厚さ)は、乾燥殻体を液体窒素に浸漬破断させたサンプルの破断面をFE−SEM観察で計測することが可能である。壁層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは30nm〜500nm、より好ましくは50nm〜300nm、更に好ましくは70nm〜250nmである。壁層の厚さが上記の範囲である場合、殻体が充分な圧縮強度を有するため好ましい。
本発明における殻体は、ある程度の柔軟性を有しており、その形状は、外部圧力により変化するので、特に限定されるものではないが、外部圧力がない場合には、真球状などの粒子状であることが好ましい。
上記殻体の平均粒子径は、特に限定されないが、5〜500μmが好ましく、より好ましくは10〜400μm、更に好ましくは15〜300μmである。
なお、殻体の平均粒子径とは、製品名:精密粒度分布測定装置コールター Multisizer4(ベックマンコールター社製)で測定した体積平均粒子径を意味する。
上記殻体の平均粒子径の粒度分布の狭さを表す変動係数は、特に限定されるものではないが、30%以下であることが好ましい。殻体の平均粒子径の変動係数がこのような範囲であれば、生産効率良く有効な粒子径を有する殻体を得ることができる。より好ましくは25%以下、更に好ましくは23%以下である。
殻体の平均粒子径の変動係数は、以下の式により求めることができる。
平均粒子径の変動係数=平均粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
なお、上記殻体の粒子径やその変動係数は、殻体を製造する際に水系媒体に分散させた殻体内部に含まれる流体等及び/又は壁層を構成する材料(以下、分散物質とも称する。)の粒子径や粒度分布に大きく依存する。それゆえ、分散物質の分散条件を適宜調整することにより、所望の粒子径やその変動係数を有する多層構造の殻体を得ることができる。
例えば、上記多層構造の壁層を有する殻体を製造する場合、大豆多糖類やアラビアガム等の天然多糖類の水溶液中で、殻体内部に内包する流体を乳化させる際の、大豆多糖類やアラビアガム等の天然多糖類の水溶液及び内包する流体の粘度、表面張力の差によって影響を受けて上記殻体の平均粒子径やCv値(変動係数)が変化する。また、乳化温度や乳化させる際の撹拌速度でも粒子径やCv値(変動係数)は、大きく変化する。そのため、大豆多糖類やアラビアガム等の天然多糖類の水溶液及び内包する流体の粘度、表面張力の差、乳化させる際の撹拌速度を適宜、変化させて、目的の平均粒子径の殻体の粒径とすることが好ましい。さらに、Cv値(変動係数)を制御する目的のため、分級操作を行うことが好ましい。
上記のような特定の粒子径や変動係数を有する殻体を含む振動減衰材用樹脂組成物は、特定の周波数の振動に対して、優れた振動減衰性能を発揮することができる。また、2種以上の特定の粒子径を有する殻体を特定の割合で混合することにより、振動減衰性能を示す振動の周波数についてコントロールすることが可能となる。
上記殻体は、内部に流体と粒子とを含むことが好ましい。より好ましくは、殻体が、壁層とは独立に運動しうる粒子を内部に含む鈴構造であることである。殻体がこのような鈴構造であれば、振動減衰効果の温度依存性が小さい。このような鈴構造の振動減衰材に振動が加わると、振動エネルギーが、粒子の運動エネルギー、粒子と殻体との衝突エネルギー、粒子と粘性流体との摩擦エネルギー及び/又は粒子同士の衝突エネルギーに変換されることにより、振動が減衰する。このような殻体内部の流体や粒子の運動は、殻体内部の流体が流体の状態を維持し、流体及び粒子が運動できる状態にある限り行われるため、このような鈴構造粒子を含む振動減衰材用樹脂組成物は、振動減衰効果の温度依存性が小さくなる。
殻体の内部の形態としては特に限定されないが、流体として気体及び/又は液体を内包し、かつ、粒子を1個以上内包する形態などを、殻体の内部の形態として好ましく用いることができる。
上記粒子は、特に限定されず、例えば、無機粒子、有機粒子、有機無機複合粒子等を用いることができる。無機粒子としては、例えばカーボンブラック、チタンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化鉄、酸化クロム、コバルト、フェライト、金、白金、またはアルミナ、ジルコニア、ハイドロキシアパタイト、炭化ケイ素、窒化ケイ素などのセラミックス類が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
有機粒子としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、エポキシ、などからなるポリマー粒子が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
有機無機複合粒子としては、例えば上記無機粒子、有機粒子の組成からそれぞれ1種又は2種以上を用いて構成された粒子が挙げられる。
粒子としては、チタンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄が好ましい。
上記粒子を2種以上用いる場合には、2種類の粒子の質量比が、1/99〜99/1である粒子の分散液に壁層の材料の分散液を添加し、殻体を製造することが好ましい。分散液中の2種類の粒子の質量比は、より好ましくは、2/98〜98/2である。
上記粒子の平均粒子径は、測定する粒子径の大小により適した測定方法を用いるため、特に限定されるものではないが、0.1μm〜100μmが好ましく、より好ましくは0.2〜50μm、更に好ましくは1〜10μmである。粒子の平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、製品名:LA−910、(株)堀場製作所製)により、測定することができる。また、複数種類の異なる粒子が含まれる場合は、粒子の種類ごとに個別の平均粒子径を算出する。
上記粒子のアスペクト比は、特に限定されないが、1〜5が好ましく、より好ましくは1.5〜4、更に好ましくは2〜3である。粒子のアスペクト比はSEMを用い、50個の粒子の測定画像を解析することにより求めた。
上記粒子の比重は、特に限定されないが、0.9〜21.5g/cmが好ましく、より好ましくは1.5〜15g/cm、更に好ましくは2〜10g/cmである。
粒子の比重は例えば、ピクノメーター法により求めることができる。
上記粒子の充填率は、特に限定されないが、殻体内部の体積を100体積%として、5〜80体積%が好ましく、より好ましくは8〜70体積%である。粒子の充填率が、上記好ましい範囲であれば、殻体が効果的に振動エネルギーを吸収することができるので、このような殻体を含む振動減衰材用樹脂組成物は、優れた振動減衰性能を発揮することができる。
粒子の充填率は、殻体の粒子径から計算される空間容積と内包する粒子の質量及び比重から計算する事ができる。
本発明における本発明における殻体は、殻内に分散助剤を含んでもよい。殻体が内部に粒子を含む場合、分散助剤を含むことで、粒子の分散性が高まり、振動減衰効果がより効果的に発揮されることになる。
分散助剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の1種又は2種以上を用いることできる。
上記分散助剤の含有量は、殻内に含まれる流体100質量%に対して、0.2〜10質量%であることが好ましい。このような割合で含むことで、粒子を分散させる効果が充分に発揮される。より好ましくは、流体100質量%に対して、0.5〜5質量%である。
本発明における殻体の製造方法は、特に限定されないが、殻体内部に含まれる流体等(以下、「芯物質」とも称する。)が分散した溶媒中に壁層を構成する樹脂の材料を添加して該材料を重合させ、壁層を形成することにより製造する方法を用いることができる。
壁層が2層からなる2層構造の壁層を有する殻体を製造する場合には、上記方法により殻体内部に流体等を含む殻体を製造した後、更に、溶媒中に2層目の壁層の材料を添加して該材料を重合させる方法を用いることができる。3層以降の多層構造の壁層を有する殻体は、同様の方法を繰り返すことにより製造することができる。
この製造方法を用いる場合、上記溶媒は、特に限定されないが、芯物質が疎水性である場合には水系溶媒を用いることが好ましく、芯物質が親水性である場合には、非水系溶媒を用いることが好ましい。
上記水系溶媒としては、特に限定されないが、水、又は、水と親水性有機溶媒との混合溶媒等を用いることができる。
親水性有機溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。これらの親水性有機溶媒は、1種又は2種以上を用いることができる。
上記非水系溶媒は、特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、エチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタンなどのベンゼン系炭化水素などの芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−デカンなどのパラフィン系炭化水素、アイソパー(登録商標)・シリーズ(エクソン化学(株)製)などのイソパラフィン系炭化水素、1−オクテン、1−デセンなどのオレフィン系炭化水素、シクロヘキサン、デカリンなどのナフテン系炭化水素などの脂肪族炭化水素類;ケロシン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、工業ガソリン、コールタールナフサ、石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油や石炭由来の炭化水素混合物;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロフルオロエタン、テトラブロモエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、テトラフルオロジヨードエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、クロロブタン、クロロシクロヘキサン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードホルムなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類;ハイドロフルオロエーテルなどのフッ素系溶剤などが挙げられる。これらの非水系溶媒は、1種又は2種以上を用いることができる。
上記芯物質は、疎水性であることが好ましく、この場合、芯物質を水系溶媒中に分散させることができる。この場合の芯物質は、水系溶媒中に溶解せずに分散される程度の疎水性を有していればよい。
上記芯物質として、上記粒子を用いる場合、粒子の表面をポリマーグラフト処理したり、その表面をポリマーで被覆したり、表面処理を行ってから分散させてもよい。
ポリマーグラフト処理は、粒子表面に存在する官能基と、処理に用いるポリマーの有する官能基とを反応させて行うことができる。
粒子表面をポリマーグラフト処理しても良いし、必ずしもしなくても良い。粒子表面をポリマーグラフト処理することで、粒子間の凝集が抑制される効果がある。
上記壁層を構成する樹脂として、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂等のアミノ樹脂を用いる場合、尿素、チオ尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、シクロヘキシルグアナミン、カプリグアナミン、アメリン、アメリド、エチレン尿素、プロピレン尿素、アセチレン尿素よりなる群から選択される少なくとも1種(以下「アミノ化合物」とも称する。)とホルムアルデヒドとを樹脂の材料として用いることができる。また、メルカプト基を有するアミノ樹脂を用いる場合、アミノ化合物とホルムアルデヒドからアミノ樹脂前駆体を製造し、メルカプト基とカルボキシ基又はスルホ基とを有する化合物の存在下で、このアミノ樹脂前駆体からアミノ樹脂を製造することが好ましい。
アミノ樹脂がメルカプト基を有することは、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)により分析することができる。
上記メルカプト基とカルボキシ基又はスルホ基とを有する化合物としては、特に限定されないが、システイン(2−アミノ−3−メルカプトプロピオン酸)、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト安息香酸、メルカプトコハク酸、メルカプトエタンスルホン酸、メルカプトプロパンスルホン酸、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記殻体が多層構造の壁層を有するものであり、多層構造の壁層のいずれかの層がエポキシ樹脂により形成される場合、エポキシ樹脂を形成する材料は、エポキシ樹脂が形成される限り特に制限されないが、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する水溶性のエポキシ化合物が好ましく、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエーテル等の1種又は2種以上を好適に用いることができる。
上記エポキシ樹脂で構成される壁層を形成する際には、エポキシ化合物に架橋剤を反応させることができる。架橋剤を反応させることにより、壁層の強度、ひいては殻体の強度が向上するので、その後に多層構造の殻体を分離したり洗浄したりする際に殻体が破壊または損傷することを効果的に抑制することができる。
架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(水和物を含む)、ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム(水和物を含む)、ジチオシュウ酸およびジチオ炭酸などが挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記記載の他、本発明における殻体の製造、分級や洗浄は、特開2008−161859号公報を参照して行うことができる。
≪バインダー≫
本発明の振動減衰材用樹脂組成物が含むバインダーは、振動減衰材用樹脂組成物を塗工して固着する機能がある限り限定されないが、重合体であることが好ましい。より好ましくは下記の重合体である。重合体として、下記の好ましい重合体を用いることで、重合体も振動減衰効果を発揮することになり、上記殻体を用いることとの相乗効果により、本発明の振動減衰材用樹脂組成物が振動減衰効果等に更に優れたものとなる。
上記バインダーとして好ましい重合体の原料となる単量体成分は、不飽和カルボン酸単量体、窒素原子を有する不飽和単量体、芳香環を有する不飽和単量体、及び、不飽和カルボン酸単量体と共重合可能なその他の単量体からなる群から選択された少なくとも1種の単量体を含むことが好ましい。
特に、不飽和カルボン酸単量体を含む単量体成分から得られたものであることが好ましい。より好ましくは、不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体とを含む単量体成分から得られたものであることである。不飽和カルボン酸単量体としては、分子中に不飽和結合を含み、さらにカルボキシ基、カルボキシ基の塩、又は、カルボキシ基から誘導されるエステルを有する化合物であれば特に限定されるものではないが、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を含むことが好ましい。
また、不飽和カルボン酸単量体の他に、塩化ビニル、エチレン、ブタジエン、スチレン等も単量体として使用可能である。重合体として、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体等も使用可能である。
上記エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノメチルマレエート、モノエチルマレエート等の不飽和カルボン酸類又はその誘導体等の1種又は2種以上が挙げられる。
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸から誘導されるエステル又は塩、及び、メタクリル酸から誘導されるエステル又は塩が単量体として好ましい。
なお、本明細書中、(メタ)アクリル酸系単量体とは、アクリロイル基若しくはメタクリロイル基、又は、これらの基における水素原子が他の原子若しくは原子団に置き換わった基を有し、かつ、−COOH基を有する単量体である。(メタ)アクリル酸系単量体にはアクリル酸及びメタクリル酸が含まれる。
また、本明細書中、(メタ)アクリル系単量体とは、アクリロイル基若しくはメタクリロイル基、又は、これらの基における水素原子が他の原子若しくは原子団に置き換わった基を有し、かつ、−COOH基がエステルとなった形態若しくは塩となった形態の単量体又はそのような単量体の誘導体である。(メタ)アクリル系単量体にはアクリレート及びメタクリレートが含まれる。
上記重合体の原料となる単量体成分としては、(メタ)アクリル系単量体を、全単量体成分100質量%に対して、20質量%以上含有するものであることが好ましい。より好ましくは、30質量%以上である。また、(メタ)アクリル系単量体を、全単量体成分100質量%に対して、100質量%以下含有するものであることが好ましい。
上記(メタ)アクリル系単量体のうち、−COOH基がエステルとなった形態の単量体としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、イソアミルアクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ノニルアクリレート、ノニルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソノニルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート等;が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することが好適である。
上記(メタ)アクリル系単量体のうち、−COOH基が塩となった形態の単量体の場合、塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等であることが好ましい。金属塩を形成する金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子が好適である。また、有機アミン塩としては、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩が好適である。
また、上記重合体の原料となる単量体成分は、重合安定性の観点から全単量体成分100質量%に対して(メタ)アクリル酸系単量体の含有量が0〜20質量%であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸系単量体を含むことにより、本発明の振動減衰材用樹脂組成物が、後述する無機質充填剤等の充填剤を含む場合、充填剤の分散性が向上し、振動減衰性がより向上することになる。
また、全単量体成分100質量%に対して(メタ)アクリル酸系単量体の含有量が0〜10質量%であることがより好ましい。
また、上記重合体は、その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体を単量体成分として含んでいてもよく、窒素原子を有する不飽和単量体、芳香環を有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸単量体と共重合可能なその他の単量体が含まれる。
その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体を含むことにより、重合体の酸価、Tgや物性等を調整しやすくなる。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物がこれらの単量体から形成されるものであると、振動減衰性に加え、加熱乾燥性にも優れたものとすることが可能となる。
上記芳香環を有する不飽和単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン等が挙げられる。好ましくはスチレンである。
すなわち、上記重合体が、スチレンを含む単量体成分から得られたスチレン(メタ)アクリル系重合体であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記重合体がスチレン(メタ)アクリル系重合体である場合、原料となる単量体成分は、単量体成分100質量%に対して、スチレン系単量体を1〜90質量%含むことが好ましい。より好ましくは、1〜80質量%であり、更に好ましくは、1〜70質量%である。また特に好ましくは、1〜50質量%であり、中でも特に好ましくは5〜45質量%であり、最も好ましくは10〜40質量%である。
上記窒素原子を有する不飽和単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−i−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。好ましくはアクリロニトリルである。
また、不飽和カルボン酸単量体と共重合可能なその他の単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
上記重合体の原料となる単量体成分は、極性基含有単量体を含んでいてもよい。極性基含有単量体が有する極性基としては、有機化合物において一般に極性基とされるものであればよいが、カルボン酸エステル、水酸基、ニトリル基、カルボキシ基、アミド基及びピロリドン基からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
上記重合体を形成する単量体成分は、更に、官能基を有する不飽和単量体を含んでいてもよい。該官能基を有する不飽和単量体における官能基としては、例えば、エポキシ基、グリシジル基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジニル基、イソシアネート基、メチロール基、ビニルエーテル基、シクロカーボネート基、アルコキシシラン基等が挙げられる。これらの官能基は、不飽和単量体の1分子中に1種あってもよく、2種以上あってもよい。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有不飽和単量体類等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、官能基を1分子中に1つ有する単官能性不飽和単量体であってもよく、2つ以上有する多官能性不飽和単量体であってもよい。
上記多官能性不飽和単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−i−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物が上記重合体を2種以上含む場合、2種の重合体は、例えば、重量平均分子量やガラス転移温度、SP値、使用される単量体の種類、単量体の使用割合等の各種物性のうちいずれかにおいて異なるものであればよい。中でも、重量平均分子量、ガラス転移温度の少なくとも1つで差を有するものであることが好適である。
上記重合体は、ガラス転移温度が−25〜180℃であることが好ましい。重合体として、このようなガラス転移温度を有するものを用いると、振動減衰材の実用温度域での振動減衰性能を効果的に発現することができることとなる。重合体のガラス転移温度は、より好ましくは−20〜150℃であり、更に好ましくは、−20〜120℃である。特に好ましくは、−15〜100℃であり、最も好ましくは−10〜80℃である。
なお、重合体のガラス転移温度(Tg)は、既に得られている知見に基づいて決定されてもよいし、後述する単量体成分の種類や使用割合によって制御されてもよいが、理論上は、以下の計算式(1)より算出することができる。
Figure 2015048401
式中、Tg’は、重合体のTg(絶対温度)である。W’、W’、・・・W’は、全単量体成分に対する各単量体の質量分率である。Tg、Tg、・・・Tgは、各単量体成分からなる単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。
上記重合体は、重量平均分子量が1万〜150万であることが好ましい。振動減衰性を発揮するためには、重合体に加えられた振動のエネルギーを摩擦による熱エネルギーに変えることが好適であり、重合体に振動が加えられたときに運動することのできる重合体であることが必要となる。重合体がこのような重量平均分子量を有するものであると、振動が加えられたときに重合体が充分に運動することができ、高い振動減衰性を発揮することができる。重合体の重量平均分子量は、より好ましくは1万〜100万であり、更に好ましくは、2万〜80万であり、特に好ましくは、3万〜60万であり、最も好ましくは、4万〜40万である。
なお、重合体の重量平均分子量は、例えば、以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GEL G5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
上記重合体は、溶解度パラメータ(SP値)が7〜13であることが好ましい。重合体のSP値がこのような範囲にあると、殻体の分散性に優れるため、振動減衰効果がより向上する。SP値はより好ましくは、7.3〜12.5であり、更に好ましくは、7.6〜12である。
重合体のSP値は、以下のSmallの式により求めることができる。
Figure 2015048401
上記重合体の製造方法は特に制限されず、溶液重合で得られたものであってもよく、乳化重合で得られたエマルションの形態の重合体であってもよい。本発明の振動減衰材用樹脂組成物は溶剤系の組成物とする場合、溶液重合で得られた重合体を用いることができ、本発明の振動減衰材用樹脂組成物は水系の組成物とする場合、乳化重合で得られたエマルションの形態の重合体を用いることができる。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物が溶剤系の振動減衰材用樹脂組成物である場合、組成物が含む溶剤としては、重合体を溶解することができるものであれば特に制限されず、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ヘキサン、トルエン、キシレン等の1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物が、上記重合体が水系溶媒中にエマルションの形態で存在した水系のものである場合、水系溶媒としては、後述する重合体エマルションの製造の際に用いる水系溶媒と同様のものを用いることができる。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物は、振動減衰材用樹脂組成物の総量100質量%に対して、バインダーを5〜95質量%含んでなるものが好ましい。より好ましくは、10〜90質量%含んでなるものである。更に好ましくは、15〜80質量%含んでなるものであり、特に好ましくは、20〜70質量%含んでなるものである。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物の損失正接(tanδ)のピーク温度(TPTとする)は、0℃以上100℃以下であることが好ましい。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物のTPTは、振動減衰材用樹脂組成物が含む重合体と殻体とを混合した状態で測定した動的粘弾性測定での損失正接(tanδ)のピーク温度として定められる。
振動減衰材用樹脂組成物のTPTは0℃以上であることが好ましく、より好ましくは10℃以上であり、さらに好ましくは20℃以上である。
また、振動減衰材用樹脂組成物のTPTは100℃以下であることが好ましく、より好ましくは80℃以下であり、更に好ましくは60℃以下である。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物のTPTがこのような範囲にあると、振動減衰材の実用温度域での振動減衰性能を効果的に発現することができることとなる。
上記損失正接の測定方法としては、動的粘弾性測定により、損失正接tanδを求める方法を用いることができる。動的粘弾性測定は、例えば、レオメーター(RSAIII、TAinstruments社製、又は、ARES、TAinstruments社製)を用いて行うことができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明において、振動減衰材用樹脂組成物の粘度は、特に限定されないが、B型回転粘度計を用いて、25℃、20rpmの条件下で測定した粘度が1〜200Pa・sであることが好ましく、より好ましくは10〜150Pa・sであり、更に好ましくは20〜100Pa・sである。
また、振動減衰材用樹脂組成物に含まれるバインダーが重合体である場合の重合体の粘度は、特に限定されないが、B型回転粘度計を用いて、25℃、20rpmの条件下で測定した粘度が10〜10000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは15〜8000mPa・sであり、更に好ましくは20〜6000mPa・sである。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物は、振動減衰材用樹脂組成物全体100質量%に対する、組成物中の不揮発分が20〜90質量%であることが好ましい。不揮発分量がこのような範囲にあることで、振動減衰材用樹脂組成物が塗布により塗膜を形成しやすく、また、塗膜が優れた振動減衰性を発揮することとなる。組成物中の不揮発分は、より好ましくは、30〜80質量%であり、更に好ましくは、40〜70質量%であり、特に好ましくは、50〜70質量%である。
組成物中の不揮発分は、130℃で30分間乾燥させた組成物の重量によって求めることができる。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物に含まれるバインダーが重合体であって、重合体が水系溶媒中にエマルションの形態で存在した水系のものである場合、各エマルション粒子の平均粒子径は50〜450nmであるものであることが好ましい。
平均粒子径がこの範囲にあるエマルション粒子を用いることにより、振動減衰材に要求される加熱乾燥性、塗工性等の基本性能を充分なものとした上で、振動減衰性をより優れたものとすることができる。上記上限は、より好ましくは400nm以下であり、更に好ましくは350nm以下である。また、上記下限は、特に好ましくは、60nm以上である。エマルション粒子の平均粒子径がこのような範囲であると、本発明の振動減衰材用樹脂組成物の作用効果がより効果的に発揮されることになる。また、平均粒子径の下限は、好ましくは70nm以上であり、より好ましくは80nm以上である。
平均粒子径(体積平均粒子径)は、例えば、エマルションを蒸留水で希釈し、充分に攪拌混合した後、ガラスセルに約10ml採取し、これを動的光散法による粒度分布測定器(Particle Sizing Systems社製「NICOMP Model 380」)で測定することにより求めることができる。
上記平均粒子径を有するエマルション粒子は、標準偏差をその体積平均粒子径で割った値(標準偏差/体積平均粒子径×100)で定義される粒度分布が、40%以下であることが好ましい。より好ましくは30%以下である。粒度分布がこれらの範囲にあれば、エマルション粒子の粒子径分布の幅が適正なものとなり、振動減衰材用樹脂組成物が充分な加熱乾燥性を発揮することができる。
また、本発明の振動減衰材用樹脂組成物が水系の組成物である場合、組成物のpHとしては、4〜12であることが好ましく、より好ましくは5〜11であり、更に好ましくは6〜10である。振動減衰材用樹脂組成物のpHは、当該樹脂に、アンモニア水、水溶性アミン類、水酸化アルカリ水溶液等を添加することによって調整することができる。
本明細書中、pHは、pHメーターにより測定することができる。例えば、pHメーター(堀場製作所社製「F−23」)を用いて25℃での値を測定することが好ましい。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物は、バインダー及び殻体以外にも、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分を含む場合、振動減衰材用樹脂組成物全体に対して、その他の成分の割合は、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下であり、最も好ましくは10質量%以下である。なお、ここでいうその他の成分とは、振動減衰材用樹脂組成物を塗布し、加熱乾燥した後も塗膜中に残る不揮発分(固形分)のことを意味し、水性媒体や有機溶媒は含まれない。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物が含むバインダーが重合体であって、重合体がエマルションの形態である場合、すなわち、本発明の振動減衰材用樹脂組成物が水系の振動減衰材用樹脂組成物である場合、本発明の振動減衰材用樹脂に含有される重合体は、乳化剤の存在下で乳化重合法により単量体成分を重合することになるが、乳化重合を行う形態としては特に限定されず、例えば、水性媒体中に単量体成分、重合開始剤及び乳化剤を適宜加えて重合することにより行うことができる。また、分子量調節のために重合連鎖移動剤等を用いることが好ましい。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物が含むバインダーが重合体であって、重合体がコア部とシェル部とを有するエマルションである場合、通常の乳化重合法を用いて得ることが好ましい。具体的には、乳化剤及び/又は保護コロイドの存在下、水系溶媒中で単量体成分を乳化重合させてコア部を形成した後、該コア部を含むエマルションに更に単量体成分を乳化重合させてシェル部を形成する多段重合により得ることが好ましい。このように、重合体がコア部とシェル部とを有するエマルションであって、該エマルションがコア部を形成した後、シェル部を形成する多段重合により得られるものである形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記水系溶媒としては特に限定されず、例えば、水、水と混じり合うことができる溶媒の1種又は2種以上の混合溶媒、このような溶媒に水が主成分となるように混合した混合溶媒等が挙げられる。これらの中でも、本発明の振動減衰材用樹脂組成物を含む塗料を塗布する際の安全性や環境への影響を考慮すると、水が好適である。
上記乳化剤の使用量としては、重合性不飽和結合基を有する化合物の総量100質量%に対して、好ましくは0.1〜10質量%である。より好ましくは0.5〜7質量%であり、更に好ましくは1〜6質量%である。これらの範囲に使用量があれば、機械安定性を充分に向上でき、重合安定性も充分に維持できる。
上記乳化剤としては、アニオン性(系)、カチオン性(系)、ノニオン性(系)、両性の各種界面活性剤、及び、高分子界面活性剤の1種又は2種以上を用いることができる。
上記アニオン系界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン(モノ、ジ、トリ)スチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(モノ、ジ、トリ)ベンジルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルコハク酸ジ塩;ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィン塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記アニオン系界面活性剤として好適な市販品としては、例えば、ラテムルWX、ラテムル118B、ペレックスSS−H、エマルゲンA−60、B−66、レベノールWZ(花王社製)、ニューコール707SF、ニューコール707SN、ニューコール714SF、ニューコール714SN、AB−26S、ABEX−2010、2020、2030、DSB(ローディア日華社製)等を挙げることができる。
また、これらのノニオンタイプに相当する界面活性剤も使用することができる。
上記アニオン系界面活性剤としては、また反応性界面活性剤として、反応性アニオン系界面活性剤、スルホコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤、アルケニルコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤等の1種又は2種以上を用いることができる。
スルホコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤の市販品としては、ラテムルS−120、S−120A、S−180及びS−180A(いずれも商品名、花王社製)、エレミノールJS−2(商品名、三洋化成工業社製)、アデカリアソープSR−10、SR−20、SR−30(ADEKA社製)等が挙げられる。
アルケニルコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤の市販品としては、ラテムルASK(商品名、花王社製)等が挙げられる。
更に、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルフォネート塩(例えば、三洋化成工業社製「エレミノールRS−30」、日本乳化剤社製「アントックスMS−60」等)、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルフォネー卜塩(例えば、第一工業製薬社製「アクアロンKH−10」等)等のアリル基を有する硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(例えば、花王社製「ラテムルPD−104」等)等も用いることができる。
また、上記アニオン系界面活性剤としては、更に反応性界面活性剤として、下記の界面活性剤等も用いることができる。
炭素数3〜5の脂肪族不飽和カルボン酸のスルホアルキル(炭素数1〜4)エステル塩型界面活性剤、例えば、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートアンモニウム塩等の(メタ)アクリル酸スルホアルキルエステル塩型界面活性剤;スルホプロピルマレイン酸アルキルエステルナトリウム塩、スルホプロピルマレイン酸ポリオキシエチレンアルキルエステルアンモニウム塩、スルホエチルフマル酸ポリオキシエチレンアルキルエステルアンモニウム塩等の脂肪族不飽和ジカルボン酸アルキルスルホアルキルジエステル塩型界面活性剤。
上記ノニオン系界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪族エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪族モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミド又は酸との縮合生成物等が挙げられる。また、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、ADEKA社製「アデカリアソープER−20」等)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル(例えば、花王社製「ラテムルPD−420」、「ラテムルPD−430」等)等の反応性を有するノニオン系界面活性剤も用いることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記カチオン系界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、エステル型ジアルキルアンモニウム塩、アミド型ジアルキルアンモニウム塩、ジアルキルイミダゾリニウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記両性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記高分子界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール及びその変性物;(メタ)アクリル系水溶性高分子;ヒドロキシエチル(メタ)アクリル系水溶性高分子;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル系水溶性高分子;ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記界面活性剤の中でも、環境面からは、非ノニルフェニル型の界面活性剤を用いることが好適である。
上記保護コロイドとしては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩等のセルロース誘導体;グアーガム等の天然多糖類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なお、保護コロイドは単独で使用されてもよいし、界面活性剤と併用されてもよい。
上記保護コロイドの使用量としては、使用条件等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、重合体を形成するのに用いられる単量体成分の総量100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以下であり、特に好ましくは3重量部以下である。
上記重合開始剤としては、熱によって分解し、ラジカル分子を発生させる物質であれば特に限定されないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素とアスコルビン酸、t−ブチルヒドロパーオキサイドとロンガリット、過硫酸カリウムと金属塩、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系重合開始剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記重合開始剤の使用量としては特に限定されず、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、重合体を形成するのに用いられる単量体成分の総量100質量部に対して、0.1〜2質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1質量部である。
上記重合開始剤には、重合を促進させるため、必要に応じて還元剤を併用することができる。還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖等の還元性有機化合物;例えば、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記還元剤の使用量としては特に限定されず、例えば、重合体を形成するのに用いられる単量体成分の総量100質量部に対して、0.05〜1質量部であることが好ましい。
上記重合連鎖移動剤としては特に限定されず、例えば、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素;メルカプト酢酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトピロピオン酸トリデシルエステル等のメルカプトカルボン酸アルキルエステル;メルカプト酢酸メトキシブチルエステル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチルエステル等のメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステル;オクタン酸2−メルカプトエチルエステル等のカルボン酸メルカプトアルキルエステルや、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、アニソール、アリルアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を用いることが好ましい。重合連鎖移動剤の使用量としては、例えば、全単量体成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。更に好ましくは、5.0質量部以下、特に好ましくは2.0質量部以下、最も好ましくは1.0質量部以下である。
上記重合は、必要に応じて、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等のキレート剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の分散剤や、無機塩等の存在下で行ってもよい。また、単量体成分や重合開始剤等の添加方法としては、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
上記製造方法における重合条件に関し、重合温度としては特に限定されず、例えば、0〜100℃であることが好ましく、より好ましくは40〜95℃である。また、重合時間も特に限定されず、例えば、1〜15時間とすることが好適で、より好ましくは5〜10時間である。
単量体成分や重合開始剤等の添加方法としては特に限定されず、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
本発明の水系の振動減衰材用樹脂組成物に含有されるバインダーが重合体である場合の重合体の製造方法においては、乳化重合によりエマルションを製造した後、中和剤によりエマルションを中和することが好ましい。これにより、エマルションが安定化されることになる。
中和剤としては特に限定されず、例えば、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等の三級アミン;ジグリコールアミン、アンモニア水;水酸化ナトリウム等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、振動減衰材用樹脂組成物から形成される塗膜の耐水性等が向上することから、塗膜の加熱時に揮散する揮発性塩基を用いることが好ましい。より好ましくは、加熱乾燥性が良好となり、振動減衰性が向上することから、沸点が80〜360℃のアミンを用いることが好ましい。このような中和剤としては、例えば、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等の三級アミン、ジグリコールアミンが好適である。より好ましくは、沸点が130〜280℃のアミンを用いることである。
なお、上記沸点は、常圧での沸点である。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物は、必要に応じて他成分を含むことができる。特に、さらに顔料を含むことを特徴とする振動減衰材用樹脂組成物も本発明の好適な実施形態の1つである。
このような本発明の振動減衰材用樹脂組成物は、優れた加熱乾燥性を有し、種々の機能を発揮することができ、特に優れた振動減衰性を発揮し得る振動減衰材を形成することができるものである。
上記振動減衰材用樹脂組成物が顔料を含む場合、振動減衰材用樹脂組成物の総量100質量%に対し、固形分を20〜90質量%含有してなることが好ましく、より好ましくは30〜90質量%であり、更に好ましくは40〜90質量%である。
上記顔料を含む振動減衰材用樹脂組成物におけるバインダーの配合量としては、例えば、振動減衰材用樹脂組成物の固形分100質量%に対し、重合体の固形分が10〜60質量%となるように設定することが好ましく、より好ましくは15〜60質量%である。
上記振動減衰材用樹脂組成物が顔料を含む場合、振動減衰材用樹脂組成物のpHは、7〜11であることが好ましく、より好ましくは7〜9である。当該pHは、上述したものと同様の方法により測定することができる。
上記顔料としては、例えば、後述する着色剤や防錆顔料等の1種又は2種以上を使用することができる。上記顔料の配合量としては、振動減衰材用樹脂組成物中のバインダーの固形分100質量部に対し、50〜700質量部とすることが好ましく、より好ましくは100〜550質量部である。
その他、本発明の振動減衰材用樹脂組成物に配合することのできる他の成分としては、例えば、分散剤;発泡剤;溶媒;水系架橋剤;充填剤;消泡剤;着色剤;防錆顔料;安定剤;湿潤剤;防腐剤;発泡防止剤;老化防止剤;防黴剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;粘度調整剤;流動改質剤;制振性向上剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を振動減衰材用樹脂組成物の形態に合わせて適宜選択して使用することができる。
なお、上記他の成分は、例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等を用いて、上記振動減衰材用樹脂組成物等と混合され得る。
上記分散剤を配合することで、殻体の分散安定性を高め、振動減衰材用樹脂組成物の保存安定性を高めることができる。
分散剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等の無機質分散剤、及び、ポリカルボン酸系分散剤等の有機質分散剤が挙げられる。
それ以外の他の成分としては、特開2012−126775号公報や特願2013−026959号記載の他の成分と同様のものを用いることができる。
上記他の成分は、いずれも上記殻体を加える前のバインダーに添加してもよいし、振動減衰材用樹脂組成物として他の成分を配合するときに同時に添加してもよい。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物は、制振材として用いられることが望ましい。
例えば振動減衰材用樹脂組成物を基材に塗布して乾燥することにより塗膜を形成し、制振材として利用することができる。
また、本発明の振動減衰材用樹脂組成物は、塗料として用いられることが望ましく、塗料としての振動減衰材用樹脂組成物を基材に塗布して塗膜を形成することにより用いることができる。
振動減衰材用樹脂組成物を基材に塗布する方法としては、例えば、刷毛、へら、エアスプレー、エアレススプレー、モルタルガン、リシンガン等を用いて塗布することができる。
上記振動減衰材用樹脂組成物を塗布した後、乾燥して塗膜を形成させる条件としては、加熱乾燥してもよく、常温乾燥してもよいが、効率性の点で加熱乾燥することが好ましい。加熱乾燥の温度の下限としては、110℃以上とすることが好ましく、より好ましくは120℃以上である。また、加熱乾燥の温度の上限としては、210℃以下とすることが好ましく、より好ましくは170℃以下である。
また、振動減衰材用樹脂組成物を乾燥、成形して塗膜を作製し、上記塗膜を基材の必要部位に貼り付けることによっても、制振材として利用することができる。
このような、本発明の振動減衰材用樹脂組成物を用いて形成される制振材や塗料もまた、本発明の1つである。
本発明の振動減衰材用樹脂組成物は、上述の構成よりなり、殻体とバインダーとが優れた振動減衰性を発揮し、さらに、本発明の振動減衰材用樹脂組成物を用いることにより、殻体の圧縮強度が大きいために、塗膜強度にも優れた塗膜を形成することができる。そのため、鉄道車両、船舶、航空機等の輸送機器や電気機器、建築構造物、建設機器等の塗布型の振動減衰材が用いられる各種用途に好適に用いることができる組成物である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<エマルション樹脂組成物の不揮発分の測定>
エマルション樹脂組成物の不揮発分は、エマルション樹脂組成物を130℃で30分間乾燥させ、そのときの重量変化により求めた。
<エマルション樹脂組成物のpHの測定>
エマルション樹脂組成物のpHは、堀場製作所製pHメーター「F−23」を用いて、25℃において測定した。
<エマルション樹脂組成物の粘度の測定>
エマルション樹脂組成物の粘度は、B型回転粘度計を用いて、25℃、20rpmの条件下で測定した。
<エマルション樹脂の重量平均分子量の測定>
エマルション樹脂の重量平均分子量は、以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めた。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GEL G5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定した。
<エマルション樹脂の平均粒子径の測定>
エマルション樹脂の平均粒子径(体積平均粒子径)は、動的光散法による粒度分布測定器(Particle Sizing Systems社製「NICOMP Model 380」)により測定した。
<エマルション樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定>
エマルション樹脂のTgは、以下の計算式(1)より算出することができる。
Figure 2015048401
式中、Tg’は、エマルション樹脂(重合体)のTg(絶対温度)である。W’、W’、・・・W’は、全単量体成分に対する各単量体の質量分率である。Tg、Tg、・・・Tgは、各単量体成分からなる単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。
<殻体内部に含まれる粒子の平均粒子径の測定>
殻体内部に含まれる粒子の平均粒子径(体積平均粒子径)は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製 「LA−910」)により測定した。
<殻体内部に含まれる粒子の比重の測定>
殻体内部に含まれる粒子の比重は、ピクノメーター法により測定した。
<殻体の平均粒子径の測定>
殻体の平均粒子径(体積平均粒子径)は、精密粒度分布測定装置コールター(ベックマンコールター社製 「Multisizer4」)により測定した。
<殻体の平均粒子径の変動係数>
殻体の平均粒子径の変動係数は、以下の式により求めた。
平均粒子径の変動係数=平均粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
<殻体の壁層の厚さの測定>
殻体の壁層の厚さは、乾燥殻体を液体窒素に浸漬破断させたサンプルの破断面をFE−SEM((株)日立ハイテク製 「FE−SEM S−4800 (コールド型電界放射銃を装備)、EDAX Genesis2000 EDS検出器を装備、加速電圧1kv、エミッション電流10μA、W.D.=4mm、LA=10」)観察することにより計測した。
<殻体のアスペクト比の測定>
殻体のアスペクト比は、微小圧縮試験機により測定できる殻体の直径により長径を短径で除した値を求め、これをアスペクト比とした。
<殻体内部に含まれる粒子の充填率の測定>
粒子の充填率は、殻体の粒子径から計算される空間容積と内包する粒子の質量及び比重から計算した。
製造例1:エマルション樹脂の合成
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水150部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートに、メチルメタクリレート262.5部、2−エチルヘキシルアクリレート80部、n−ブチルアクリレート150部、アクリル酸7.5部、t−ドデシルメルカプタン1.2部、ラテムルPD−104(商品名、花王社製、20%水溶液)90部及び脱イオン水97部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの4部、5%過硫酸カリウム水溶液2.5部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液5部を添加し、初期重合を開始した。20分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を240分間にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸カリウム水溶液50部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液50部を240分間かけて均一に滴下し、滴下終了後90分同温度を維持し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、25%アンモニア水1.5部を添加し、不揮発分55.1%、pH7.3、粘度300mPa・s、平均粒子径180nm、重量平均分子量8万、Tg5℃のエマルション組成物を得た。
製造例2:殻体の合成
≪殻体内部に含まれる粒子1≫
攪拌羽根、温度計、冷却管を備えた容量300mLのセパラブルフラスコに、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル(組成比80:15:5)からなるアクリル系ポリマー(質量平均分子量3,300)2g、カーボンブラック(商品名:MA−100R、三菱化学(株)製)20g、アイソパーM(登録商標)(エクソン化学(株)製)78gを仕込み、さらに直径1mmのジルコニアビーズ800gを仕込んだ。
回転数300rpmで攪拌しながら、160℃で2時間反応させてポリマーグラフト処理を行った。処理後、さらにアイソパーM(登録商標)100gを添加し、充分に混合した。その後、ジルコニアビーズを分離して、ポリマーグラフト処理されたカーボンブラック(ここでは、カーボンブラックの表面に存在するカルボキシ基にアクリル系ポリマーのエポキシ基を反応させた。)を含有する固形分11%の分散液150gを得た。
この分散液に含まれる分散粒子の粒子径を測定したところ、体積平均粒子径が0.2μmであった。また、上記分散粒子の比重は、1.9g/cmであった。
≪殻体内部に含まれる粒子2≫
一方、攪拌羽根を備えた容量300mLのセパラブルフラスコに、酸化チタン(商品名:タイペークCR90、石原産業(株)製)50g、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(組成モル比80:15:5)からなるアクリル系ポリマー(質量平均分子量6,800)5g、ヘキサン100gを仕込み、55℃の超音波浴槽(製品名:BRANSON5210、ヤマト科学(株)製)に入れ、攪拌しながら、超音波分散処理を2時間行った。
このセパラブルフラスコを90℃の温水槽に移し、溶剤を留去し、粉体状となった酸化チタンをフラスコから取り出し、バットに移した後、乾燥機中、150℃で熱処理を5時間行った。
熱処理された酸化チタンをヘキサン100gに分散させ、遠心沈降器で遠心分離し、酸化チタンを洗浄する操作を3回行った後、100℃で乾燥させた。
容量300mLのセパラブルフラスコに、洗浄処理された酸化チタン50g、アイソパーM(登録商標)50gを仕込み、55℃の超音波浴槽(製品名:BRABNSON5210、ヤマト科学(株)製)に入れ、攪拌しながら、超音波分散処理を2時間行って、ポリマーグラフト処理された酸化チタン(ここでは、酸化チタンの表面に存在するシラノール基にアクリル系ポリマーのアルコキシシリル基を反応させた。)を含有する固形分50%の分散液100gを得た。
この分散液に含まれる分散粒子の粒子径を測定したところ、体積平均粒子径が0.5μmであった。また、上記分散粒子の比重は、4.81g/cmであった。
≪粒子の分散液≫
容量200mLのマヨネーズビンに、ポリマーグラフト処理されたカーボンブラックの分散液6g、ポリマーグラフト処理された酸化チタンの分散液75g、アイソパーM(登録商標)19gを仕込み、充分に混合して、分散粒子の濃度がカーボンブラック0.66%及び酸化チタン37.5%である分散液(A)を得た。
≪アミノ樹脂前駆体≫
容量100mLの丸底セパラブルフラスコに、メラミン7.5g、尿素7.5g、37%ホルムアルデヒド水溶液30g、25%アンモニア水3gを仕込み、攪拌しながら、70℃まで昇温した。同温度で1.5時間保持した後、30℃まで冷却し、メラミン・尿素・ホルムアルデヒドのアミノ樹脂前駆体を含有する固形分54.4%の水溶液(B)を得た。
≪内壁層の形成≫
容量500mLの平底セパラブルフラスコに、大豆多糖類(商品名:ソヤファイブ−S−LN、不二製油(株)製)12gを溶解した水溶液120gを仕込み、ディスパー(製品名:ROBOMICS、特殊機化工業(株)製)を用いて、600rpmで攪拌しながら、分散液(A)100gを添加し、その後、攪拌速度を1,600rpmに変更して2分間攪拌した後、攪拌速度を1,000rpmに変更し、水100gを添加して、懸濁液を得た。
この懸濁液を、温度計、冷却管を備えた容量300mLの4つ口セパラブルフラスコに入れ、40℃に保持しながら、パドル翼で攪拌しながら、水溶液(B)48gを添加した。15分後に、L−システイン2gを溶解した水溶液100gを滴下ロートで5分間かけて滴下した。40℃を保持したまま、反応を4時間行った後、50℃に昇温して2時間熟成を行って、メルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内壁層に分散液(A)が内包された殻体の分散液を得た。
得られた分散液を25℃まで冷却し、目開き75μmの標準ふるいで粗大カプセルを除去した。次いで、殻体分散液を容量2Lのビーカーに入れ、水を添加して、全体量を1,000mLとした。そのまま静置して、殻体を沈降させ、上澄み液を廃棄した。この操作を3回繰り返して、殻体を洗浄した。
≪外壁層の形成≫
次いで、この殻体に水を添加して200gの分散液とし、これを前記の平底セパラブルフラスコに移し、攪拌しながら、40℃に加温した。
この殻体分散液に、エポキシ化合物であるポリグリセロールポリグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX−521(質量平均分子量732、水に対する溶解率100%)、ナガセケムテックス(株)製)15gを溶解した水溶液100gを添加した。30分後に、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム2gを溶解した水溶液50gを滴下ロートで5分間かけて滴下した。40℃を保持したまま3時間反応を行い、次いで、50℃に昇温して1時間熟成を行って、メルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内壁層の外表面にエポキシ樹脂で構成される外壁層が形成された殻体に分散液(A)が内包された殻体の水分散液を得た。
得られた殻体の水分散液を25℃まで冷却し、目開き53μmの標準ふるいで粗大カプセルを除去した。次いで、殻体の水分散液を容量2Lのビーカーに入れ、水を添加して、全体量を1,000mLとした。そのまま静置して、殻体を沈降させ、上澄み液を廃棄した。この操作を3回繰り返して、殻体を洗浄した。
このようにして得られた殻体の粒子径を測定したところ、体積平均粒子径が39.8μmであり、Cv値(変動係数)は、22.4%であった。また、アスペクト比は、1.0であり、壁層の厚さは、127nmであり、殻体中の粒子の充填率は、9.4体積%であった。
<殻体の圧縮強度評価>
製造例2において、製造された殻体の圧縮強度を、微小圧縮試験機で測定したところ、3.5MPaであった。
圧縮強度は、微小圧縮試験機((株)島津製作所製「MCT−W500」)を用いて、以下の条件により測定した。
試験力:9.8mN
負荷速度:0.446mN/秒
保持時間:0秒
圧子の直径:100μm
実施例1:振動減衰材用樹脂組成物の製造
製造例1で得られたエマルション50g、製造例2で得られた殻体64g、水50g、粘度調整剤としてアクリセットWR−503A(株式会社日本触媒製)2gを混合し、振動減衰材用樹脂組成物を得た。
比較例1:製造例1で得られたエマルションのみを用いた。
<振動減衰性の温度依存性評価>
得られた振動減衰材用樹脂組成物を、表面が平滑なテフロン(登録商標)板上に0.2mmの厚みで塗布して90℃で30分間乾燥後、100℃で30分間減圧乾燥し、長さ25mm×幅5mmのサイズに切り出したものを測定用サンプルとした。レオメーター(RSAIII、TAinstruments社製)を用いた動的粘弾性測定により損失正接の測定を行った。また、振動減衰性の温度依存性の評価方法として、振動減衰材用樹脂組成物の損失正接(tanδ)のピーク温度でのtanδと、ピーク温度から15℃高い温度でのtanδを比較し、tanδ(ピーク)÷tanδ(ピーク+15℃)を計算したときの値が、1.6以下のときが○、1.8以上のときが×とした。また、ピーク温度でのtanδが0.5以上のとき充分な振動減衰性を発揮するため○、ピーク温度でのtanδが0.5未満のときを×とした。
評価結果を表1に示した。
<振動減衰材用樹脂組成物の保存安定性評価>
得られた振動減衰材用樹脂組成物を40℃において1ヶ月間静置することで保存安定性を評価した。振動減衰材用樹脂組成物に殻体が均一に分散しているものを○、殻体が均一に分散せず上部に浮いていたり下部に沈殿していたりするものを×とした。
評価結果を表1に示した。
<塗膜強度評価>
得られた振動減衰材用樹脂組成物を、表面が平滑なテフロン(登録商標)板上に0.2mmの厚みで塗布して90℃で30分間乾燥後、100℃で30分間減圧乾燥し、長さ50mm×幅5mmのサイズに切り出したものを測定用サンプルとした。引張り試験機のチャック間距離が30mmとなるように取り付け、20mm/minの引張り速度で試験片が破断するまで引張り荷重を加える操作を行ない、破断時の引張り強度を求めた。殻体を含まない樹脂組成物の破断時の引張り強度を100%として比較したとき、破断時の引張り強度が10%以上向上するときを○、10%未満の向上あるいは低下したときを×とした。
評価結果を表1に示した。
Figure 2015048401

Claims (5)

  1. 殻体内部に流体を含む構造の殻体とバインダーとを含み、
    該殻体は、圧縮強度が0.6MPa以上であることを特徴とする振動減衰材用樹脂組成物。
  2. 前記流体は、気体及び/又は20℃での粘度が1mPa・s以上の液体であることを特徴とする請求項1に記載の振動減衰材用樹脂組成物。
  3. 前記殻体は、内部に流体と粒子とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の振動減衰材用樹脂組成物。
  4. 前記粒子は、粒子径が0.1μm以上であることを特徴とする請求項3に記載の振動減衰材用樹脂組成物。
  5. 前記殻体は、アミノ樹脂で構成される壁層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の振動減衰材用樹脂組成物。
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