JP2015048278A - 板ガラス成形体、板ガラス成形体の製造方法、板ガラスの製造装置および板ガラスの製造方法 - Google Patents

板ガラス成形体、板ガラス成形体の製造方法、板ガラスの製造装置および板ガラスの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】成形される板ガラスに気泡などの欠陥が形成されるのを防止し得る板ガラス成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】耐火物本体2を製造する工程と、耐火物本体2の下端を含む領域に被覆される貴金属板からなる保護カバー3を製造する工程とを含む。保護カバー3を製造する工程で、耐火物本体2の下端25を含む領域において、耐火物本体2の一対の傾斜面24に沿うように、二枚の貴金属板32をそれぞれ配設し、これら貴金属板32の端縁32a同士を耐火物本体2の下端25に対応する位置で突き合わせる。そして、それぞれの貴金属板32の端縁32a間に、耐火物本体2の下端25を経由して跨るように、溶融貴金属を肉盛りした後、その肉盛部35を研磨により尖った形状に加工する。
【選択図】図4

Description

本発明は、ダウンドロー法によって溶融ガラスから板ガラスを成形するための板ガラス成形体、及びその関連技術に関する。
周知のように、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板や、電子部品パッケージ用のカバーガラスなどに代表されるように、各種分野に板ガラスは利用されている。
このような板ガラスの製造方法としては、いわゆるオーバーフローダウンドロー法が利用される場合が多い。この製造方法は、図10に示すように、板ガラス成形体(以下、単に成形体ともいう。)100の頂部のオーバーフロー溝101に溶融ガラスgmを供給し、このオーバーフロー溝101の上方から両側に溢れ出た溶融ガラスgmを、略楔状の成形体100の両側面102に沿って流下させながら成形体100の下端103で融合一体化し、一枚の板ガラス(ガラスリボンと称される場合もある。)gを連続的に成形するというものである。
成形体100の幅方向両端部には、オーバーフロー溝101から溢れ出た溶融ガラスgmの幅方向両端部を下方に誘導するためのガイド部材104が設けられる。このガイド部材104は、図11に示すように、成形体100の幅方向両端部に外嵌することで、成形体100に取り付けられるのが通例である。
成形体100は、耐火レンガなどの耐火物で形成されるのが一般的であるが、溶融ガラスgmが成形体100を構成する耐火物を浸食し、この際に、耐火物の成分が溶融ガラスgm中に混ざり込み、成形される板ガラスgの品質が低下する場合がある。
そこで、耐火物の浸食による品質低下を解決するために、例えば、特許文献1には、耐火レンガなどの耐火物からなる成形体(フュージョンセル)の全面にフレーム溶射法により白金又は白金合金の被膜を形成することが提案されている。
特開2008−69024号公報
ところで、図12に拡大して示すように、耐火レンガなどからなる成形体100の下端103は、ある程度の丸みがある。これは、成形体100の下端103が尖っていると、成形体100を製造する際や板ガラスgの成形途中に欠けやすく、その欠けを起点として成形体100に亀裂が生じるなどの重大なトラブルを招くおそれがあるためである。
しかしながら、その反面、このように成形体100の下端103が丸みを有する場合には、溶融ガラスgmが成形体100の下端103で融合一体化する前に成形体100の両側面102から離れるという事態が生じ得る。そして、このような事態が生じると、成形体100の下端103と、溶融状態の板ガラスgとの間に、図示するような隙間Xが形成されてしまう。
このような隙間Xが形成されると、溶融ガラスgmが融合一体化する際に、隙間X内の空気が融合部分に入り込んで板ガラスg中に気泡などの欠陥が発生し、板ガラスgの製品品位を悪化させる原因となる。
なお、このような事情は、特許文献1のように、耐火物からなる成形体100の表面に溶射により、白金などの被膜を形成する場合も変わらない。すなわち、成形体100の表面に被膜を形成したとしても、被膜も成形体100の下端103の形状に倣って必然的に丸みを帯びてしまうためである。したがって、溶射によって白金又は白金合金の被膜を形成した成形体100を用いても、図12に示した隙間Xが形成されるおそれがあり、気泡などの欠陥の問題は依然として生じ得る。
以上の実情に鑑み、本発明は、成形される板ガラスに気泡などの欠陥が形成されるのを防止することを課題とする。
<板ガラス成形体の製造方法>
上記課題を解決するために創案された本発明に係る板ガラス成形体の製造方法は、下端で交わる一対の側面を有する耐火物本体と、前記耐火物本体の外表面形状に近似した形状をなし、前記耐火物本体の下端を含む領域に被覆される貴金属板からなる保護カバーとを備え、前記一対の側面に沿って溶融ガラスを流下させ、これら溶融ガラスを前記耐火物本体の下端近傍で融合一体化して板ガラスを成形するための板ガラス成形体の製造方法であって、前記耐火物本体を製造する工程と、前記保護カバーを製造する工程とを含み、前記保護カバーを製造する工程において、前記耐火物本体を貴金属板で被覆するとともに、前記耐火物本体の下端に対応する位置で、前記貴金属板と接触するように溶融した貴金属を肉盛りした後、その貴金属の肉盛部を研磨により尖った形状に加工することを特徴とする。
このような構成によれば、保護カバーで耐火物本体の少なくとも下端を含む領域を保護しつつ、耐火物本体の下端に対応する位置において、亀裂を生じさせることなく、保護カバーを尖った形状に容易に加工することができる。そのため、このように製造された板ガラス成形体を用いて板ガラスを成形すれば、尖った形状をなす保護カバーの下端が成形体の下端として機能することから、成形体の両側面を流下する溶融ガラスが成形体の下端まで正しく誘導され、成形体の下端と溶融状態の板ガラスとの間に隙間(図12の符号Xを参照)が形成され難くなる。したがって、成形される板ガラスに気泡などの欠陥が形成されるのを防止することができる。
上記の構成において、前記保護カバーを製造する工程において、前記一対の側面のそれぞれに沿うように別々の貴金属板を配設し、これら貴金属板の端縁同士を前記耐火物本体の下端に対応する位置で突き合わせ、その突き合わせ部に溶融した貴金属を肉盛りすることにより、前記肉盛部を形成してもよい。ここで、貴金属板の突き合わせ部は、貴金属板同士の端縁同士が互いに接近して向かい合っていれば、端縁同士が接触してもよいし、接触していなくてもよい。
上記の構成において、前記保護カバーを製造する工程において、前記一対の側面の間に前記耐火物本体の下端を経由して跨るように、前記耐火物本体の外表面形状に近似した形状に曲げ加工した一枚の貴金属板を配設し、その貴金属板の外表面における前記耐火物本体の下端に対応する位置に溶融した貴金属を肉盛りすることにより、前記肉盛部を形成してもよい。
上記の構成において、前記貴金属板および前記溶融した貴金属が、白金又は白金合金であることが好ましい。
これは、白金又は白金合金であれば、耐熱性が高く、且つ、溶融ガラスとの反応性も低いためである。
<板ガラス成形体>
上記課題を解決するために創案された本発明に係る板ガラス成形体は、下端で交わる一対の側面を有する耐火物本体を備え、前記一対の側面に沿って溶融ガラスを流下させ、これら溶融ガラスを前記耐火物本体の下端近傍で融合一体化させて板ガラスを成形するための板ガラス成形体において、前記耐火物本体は、下端における前記一対の側面の延長線のなす角度が35度以下であって、下端の曲率半径が3mm以下であり、前記耐火物本体の下端を含む領域を、前記板ガラス成形体の外表面形状に近似した形状を有する貴金属板からなる保護カバーで被覆するとともに、前記保護カバーの外表面における下端の曲率半径を、前記耐火物本体の下端の曲率半径よりも小さくしたことを特徴とする。
このような構成によれば、耐火物本体の下端よりも、この耐火物本体の下端を被覆する保護カバーの外表面における下端の方が、尖った形状になる。そのため、このような成形体を用いて板ガラスを成形すれば、成形体の両側面を流下する溶融ガラスが成形体の下端まで正しく誘導され、成形体の下端と溶融状態の板ガラスとの間に、隙間(図12の符号Xを参照)が形成され難くなる。したがって、成形される板ガラスに、気泡などの欠陥が形成されるのを防止することができる。
上記の構成において、前記保護カバーが、前記耐火物本体の外表面全体を被覆していることが好ましい。なお、耐火物本体の頂部に溶融ガラスを溢れ出させるためのオーバーフロー溝が形成されている場合には、オーバーフロー溝内も保護カバーで被覆される。
このようにすれば、板ガラスを成形する際に、溶融ガラスと耐火物本体が反応して、耐火物本体が浸食するという事態を確実に防止することができる。また、保護カバーは、貴金属板で構成されるため、厚みを持たせることは容易であり、耐火物本体の保護を確実なものとすることができる。
上記の構成において、前記保護カバーが、白金板又は白金合金板からなることが好ましい。
上記の構成において、前記保護カバーが、前記耐火物本体の外表面に負圧吸着されていることが好ましい。
すなわち、保護カバーが耐火物本体から部分的に浮き上がって保護カバーの外表面が波打つと、溶融ガラスの流れが乱れて、成形される板ガラスに偏肉などの品質不良が生じるおそれがある。そこで、上記の構成により、保護カバーと耐火物本体を確実に密着させ、保護カバーの変形を防止することが好ましい。
<板ガラスの製造装置>
上記課題を解決するために創案された本発明に係る板ガラスの製造装置は、既に述べた板ガラス成形体を備え、溶融ガラスから板ガラスを成形するように構成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、既に述べた板ガラス成形体の作用効果を同様に奏することができる。
<板ガラスの製造方法>
上記課題を解決するために創案された本発明に係る板ガラスの製造方法は、既に述べた板ガラス成形体を用いて、溶融ガラスから板ガラスを成形することを特徴とする。
このような構成によれば、既に述べた板ガラス成形体の作用効果を同様に奏することができる。
上記の構成において、900〜1100℃における溶融ガラスの粘度が、10〜10dPa・sであることが好ましい。
このようにすれば、溶融ガラスの濡れ性が向上し、成形体の下端までより確実に溶融ガラスを誘導することが可能となる。また、成形体の下端においても、溶融ガラスが相対的に柔らかく密着しやすい状態にあるため、溶融ガラスを融合一体化した板ガラス中に気泡が残り難くなる。
上記の構成において、溶融ガラスが、質量%換算で、10〜20%のアルカリ金属酸化物を含有するアルカリガラスであってもよい。
すなわち、溶融ガラスがアルカリガラスであれば、耐火レンガなどで形成される耐火物本体との反応性が高く、耐火物本体を浸食しやすいが、耐火物本体の少なくとも下端を含む領域は貴金属板からなる保護カバーで保護されている。そのため、成形体の下端が尖って欠けやすい形状をしていても、アルカリ成分による浸食の影響を受けないため、板ガラスを安定して成形できる。
上記の構成において、溶融ガラスのガラス組成が、質量%換算で、SiO 55〜70%,B 2〜11%,RO 10〜20%を含有することが好ましい。なお、ROは、アルカリ金属酸化物LiO、NaO及びKOの合量を指す。
以上のように本発明によれば、成形される板ガラスに、気泡などの欠陥が形成されるのを防止することができる。
本発明の第1実施形態に係る板ガラス製造装置の成形体周辺を示す縦断面図である。 図1の成形体の下端周辺を拡大して示す縦断面図である。 図1の板ガラス製造装置の成形体周辺を示す正面図である。 図1の成形体の製造方法を説明するための図である。 図1の成形体の変形例を説明するための図である。 本発明の第2実施形態に係る板ガラス製造装置における成形体の下端周辺を拡大して示す縦断面図である。 図6の成形体の製造方法を説明するための図である。 本発明の第3実施形態に係る板ガラス製造装置の成形体周辺を示す縦断面図である。 図8の成形体の変形例を説明するための図である。 従来の板ガラス製造装置の成形体周辺を示す斜視図である。 従来の成形体の部品分解配列斜視図である。 従来の成形体の問題点を説明するための図である。
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る板ガラス製造装置は、オーバーフローダウンドロー法を実行するための成形体1を備えている。
成形体1は、耐火物本体2と、耐火物本体2の外表面を被覆する保護カバー3とを備えている。
耐火物本体2は、頂部に形成されたオーバーフロー溝21と、断面略楔状の一対の側面22とを備える。
側面22は、垂直面23と、傾斜面24とを上下に連接して構成されており、傾斜面24の交差部が耐火物本体2の下端25を構成する。なお、側面22の形状は、その断面において、下端25で収束するような形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、垂直面を有さずに傾斜面のみで構成されたものや、その一部又は全部が曲面で構成されたものであってもよい。
耐火物本体2は、電鋳レンガ、デンスジルコンなどで形成される。
一方、保護カバー3は、耐火物本体2の外表面の形状に近似する形状を有し、耐火物本体2の外表面全体を被覆している。そのため、溶融ガラスGmは、保護カバー3の外表面に沿って流下しながら、耐火物本体2の下端25に対応する保護カバー3の下端31で融合一体化し、一枚の板ガラスGになる。なお、図示しないが成形体1の直下方には、溶融状態にある板ガラスGの幅方向両端部を挟持して冷却するエッジローラ(冷却ローラ)が配置される。
保護カバー3は、複数枚の白金又は白金合金からなる貴金属板を、溶接により繋ぎ合わせて形成される。なお、白金合金としては、例えば、白金−ロジウム合金、白金−イリジウム合金、白金−金合金などが使用できる。
そして、この成形体1は、下端周辺において特徴的な構成を備えている。すなわち、図2に示すように、耐火物本体2は、その下端25における両側面22、つまり両傾斜面24の延長線のなす角度θが35度以下である。なお、角度θは、15〜32度であることが好ましく、20〜30度であることがより好ましい。
また、耐火物本体2の下端25は丸みを帯びているが、その曲率半径Rは3mm以下に抑えられている。従来の一般的な成形体では、当該部位の曲率半径は例えば4〜5mm程度であり、本実施形態に係る耐火物本体2の下端25の曲率半径Rが小さいことが認識できる。なお、曲率半径Rは、0.5〜2.0mmであることが好ましく、0.8〜1.2mmであることがより好ましい。このようにすることで、耐火物本体2の下端25と保護カバー3との隙間を小さくできる。
一方、保護カバー3の下端31は、耐火物本体2の下端25の曲率半径Rよりも曲率半径が小さく、尖った形状を呈している。この実施形態では、保護カバー3の下端31とその近傍は、耐火物本体2の両傾斜面24を被覆する貴金属板32に、断面が略逆三角形をなす先鋭な貴金属加工物33を接合することで形成されている。貴金属加工物33は、貴金属板32と同種の貴金属(白金又は白金合金)で形成されている。なお、保護カバー3の下端31の曲率半径は、3.0mm未満であることが好ましく、0.01〜1.0mmであることがより好ましく、0.01〜0.5mmであることが最も好ましい。
図3に示すように、保護カバー3は、耐火物本体2の幅方向端面26に対応する位置に吸引口34を備えている。この吸引口34にパイプ4の一端が接続されており、このパイプ4の他端に吸引手段としての真空ポンプ5が接続されている。そして、この真空ポンプ5によって、耐火物本体2と保護カバー3との間を負圧により吸引している。この実施形態では、保護カバー3の幅方向両側に吸引口34がそれぞれ設けられおり、これら吸引口34を介して、保護カバー3と耐火物本体2との間が幅方向両側から負圧により吸引されるようになっている。これにより、保護カバー3が耐火物本体2の外表面に負圧吸着され、両者が密着した状態を維持するようになっている。この真空ポンプ5による吸引は、板ガラスGの成形中も行うものとする。
なお、図3中において、符号6は、溶融ガラスGmをオーバーフロー溝21に供給するためのパイプであり、符号7は、保護カバー3で外表面全体が被覆された耐火物本体2の幅方向両側に外嵌され、耐火物本体2の両側面22に対応する保護カバー3の外表面を流下する溶融ガラスGmの幅方向両端部を案内するためのガイド部材である。
次に、以上のように構成された成形体1の製造方法を説明する。
成形体1の製造工程は、耐火物本体2を製造する工程と、保護カバー3を製造する工程とに大別される。
耐火物本体2を製造する工程では、耐火物本体の溶融原料を鋳型に流し込み、図1に示した形状の耐火物本体2を鋳造により成形する。
保護カバー3を製造する工程では、製造された耐火物本体2の外表面に、白金又は白金合金からなる貴金属板を配設して、耐火物本体2の外表面を被覆する。貴金属板は、耐火物本体2の外表面形状に適合するように曲げ加工されたり、隣接する別の貴金属板と溶接されたりすることで、耐火物本体2の外表面を被覆する。
貴金属板の板厚は、例えば、0.5〜1.5mmである。
この際、耐火物本体2の下端25を含む領域では、図4に示すように、耐火物本体2の一対の傾斜面24に沿うように、二枚の貴金属板32をそれぞれ配設し、これら貴金属板32の端縁32a同士を耐火物本体2の下端25に対応する位置で突き合わせる。
そして、突き合わせ部となる、それぞれの貴金属板32の端縁32a間に、耐火物本体2の下端25を経由して跨るように、貴金属板32と同種の溶融貴金属を肉盛り(肉盛溶接)することで、貴金属板32よりも外方に玉状に膨出した肉盛部(ビード)35を形成する。なお、この肉盛部35は、耐火物本体2の下端25の幅方向(図3における左右方向)に沿って連続的に形成される。
そして、肉盛部35が冷却固化した後、肉盛部35を機械研磨して、図中の一点鎖線で示すような尖った形状に加工し、貴金属加工物33を形成する。このようにして、図2に示した先端形状を有する成形体1が製造される。
ここで、肉盛部35を研磨する前又は後に、耐火物本体2の外表面と、保護カバー3の間の空間を負圧吸引(熱上げ真空)することで、保護カバー3を耐火物本体2の外表面に負圧吸着する。これにより、保護カバー3が耐火物本体2に密着するとともに、耐火物本体2の外表面から浮いて波打つような部位がある場合には、これが矯正される。
このようにすれば、耐火物本体2の下端25の形状に依存することなく、保護カバー3の下端31を尖った形状に簡単に加工することができ、オーバーフローダウンドロー法で板ガラスGを成形する際の気泡の混入防止に寄与し得る。
なお、図4では、二枚の貴金属板32の端縁32a同士を接触させることなく、両者の間に隙間を設けているが、図5に示すように、貴金属板32の端縁32a同士を接触させてもよい。この場合、貴金属板32の内表面と、耐火物本体2の下端25周辺との間に空間Y(クロスハッチングを付した部分)が形成されるが、溶融貴金属を肉盛りする際に、当該空間Yも溶融貴金属で埋めるのが好ましい。耐火物本体2の下端25と保護カバー3の間に、溶融貴金属が充填されることなく空間Yが残されていると、板ガラスGの成形時の熱によって空間Y内の空気が膨張するなどの不具合が生じるため、これを防止する趣旨である。
次に、以上のように構成された板ガラス成形装置によって板ガラスを製造する方法を説明する。
まず、図1に示すように、溶融ガラスGmを図外のガラス溶融炉から保護カバー3で被覆された成形体1のオーバーフロー溝21に供給する。この際、成形体1に供給する溶融ガラスGmの温度を900〜1100℃に調整し、その粘度を10〜10dPa・sに調整する。
上記の粘度は、ガラス組成に依存するところが大きい。この実施形態では、溶融ガラスGmはアルカリ金属成分を含有するガラスである。溶融ガラスGmは、アルカリ金属成分(Li,Na,Kなど)の酸化物含有量が、質量%換算で、10%以上である。詳細には、溶融ガラスGmは、ガラス組成として、質量%換算で、SiO 55〜70%、B 2〜11%、RO 10〜20%を含有する。ROは、アルカリ金属酸化物LiO、NaO及びKOの合量を指す。なお、溶融ガラスGmは、アルカリ金属含有ガラスに限定されず、無アルカリガラスであってもよい。ここで、無アルカリガラスとは、実質的にLi,Na,Kなどのアルカリ金属成分を含まないガラスをいい、具体的には、アルカリ金属成分の含有量が、酸化物換算で、1000ppm以下であるガラスをいう。
オーバーフロー溝21から溢れ出た溶融ガラスGmは、耐火物本体2の両側面22に対応した保護カバー3の外表面を流下し、耐火物本体2の下端25に対応した保護カバー3の下端31で融合一体化される。この際、図2に示すように、保護カバー3の下端31は耐火物本体2の下端25よりも尖った形状を呈するため、溶融ガラスGmは保護カバー3の外表面から途中で離れることなく、保護カバー3の下端31に至る。したがって、図12に示したような隙間Xが形成され難くなり、成形される板ガラスGに気泡などの欠陥が形成されるのを防止できる。
ここで、上記のように、溶融ガラスGmの粘度と、耐火物本体2の下端における両傾斜面24の延長線のなす角度θを調整しているので、溶融ガラスGmを保護カバー3の下端31までより確実に誘導可能となっている。すなわち、溶融ガラスGmの粘度に関しては、上記のように粘度を低く調整すれば、保護カバー3への濡れ性などが向上し、保護カバー3の外表面から溶融ガラスGmが途中で離れ難くなる。また、溶融ガラスGmが柔らかく密着しやすいため、保護カバー3の下端31で、溶融ガラスGmが融合一体化した際に、内部に気泡が残り難くなる。一方、耐火物本体2の両傾斜面24の延長線のなす角度θに関しては、上記のように角度θを小さく調整すれば、溶融ガラスGmを保護カバー3の外表面から引き離す方向に重力が作用し難くなる。したがって、溶融ガラスGmが保護カバー3の下端31までより確実に誘導されるようになる。
以上のようにして製造された板ガラスは、その板厚が50μm〜5mmであり、所定サイズに切断された後に、例えば、電子部品のカバーガラス、電子部品の筐体などに使用される。
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態に係る板ガラス製造装置に用いられる成形体の下端周辺を拡大して示す縦断面である。この第2実施形態に係る板ガラス製造装置に用いられる成形体1は、その下端周辺の保護カバー3の構造以外は、第1実施形態に係る板ガラス製造装置に用いられる成形体1の構造と共通する。以下では、第1実施形態との相違点のみを説明する。なお、この第2実施形態に係る成形体1や、後述する第3実施形態に係る成形体1を用いても、第1実施形態において説明した板ガラスの製造方法を同様に実行することができる。
第2実施形態の成形体1の下端周辺では、耐火物本体2の一対の傾斜面24の間に、耐火物本体2の下端25を経由して跨るように、耐火物本体2の外表面形状に近似した形状に曲げ加工した一枚の貴金属板36が配設されている。すなわち、耐火物本体2の下端25とその周辺が、連続する略V字状の一枚の貴金属板36で被覆されている。
そして、耐火物本体2の下端25に対応する位置で、断面が略逆三角形をなす先鋭な貴金属加工物37を貴金属板36の外表面に接合することで、成形体1の下端周辺における保護カバー3が構成されている。
このような成形体1の下端周辺における保護カバー3は、次のようにして製造される。
図7に示すように、耐火物本体2の両傾斜面24の間に耐火物本体2の下端25を経由して跨るように、耐火物本体2の外表面形状に近似した形状に曲げ加工された一枚の貴金属板36を配設する。
その後、耐火物本体2の下端25に対応する位置で、貴金属板36の外表面に溶融貴金属を肉盛りすることで、貴金属板36よりも外方に玉状に膨出した肉盛部38を形成する。そして、肉盛部38が冷却固化してから、肉盛部38を機械研磨して、図中の一点鎖線で示すような尖った形状に加工し、貴金属加工物37を形成する。このようにして、図6に示した先端形状を有する成形体1が製造される。
このようにすれば、耐火物本体2の下端25の形状に依存することなく、保護カバー3の下端31を尖った形状に簡単に加工することができ、オーバーフローダウンドロー法で板ガラスGを成形する際の気泡の混入防止に寄与し得る。
また、肉盛部38は、耐火物本体2と直接接合されることなく、貴金属板36の外表面のみに接合される。そのため、同種の貴金属の溶接のみで、肉盛部38が貴金属板36の外表面に接合される。したがって、この肉盛部38を機械研磨して形成される貴金属加工物37の接合強度が上がり、保護カバー3の耐久性が向上する。
また、耐火物本体2の下端25が、連続した一枚の貴金属板36によって被覆されるので、耐火物本体2と保護カバー3の間を負圧吸引する際に、耐火物本体2の下端25に対応する位置からリークするという事態も生じ難い。
<第3実施形態>
図8は、第3実施形態に係る板ガラス製造装置の板ガラス成形体周辺を示す縦断面図である。この第3実施形態に係る板ガラス製造装置に用いられる成形体1は、耐火物本体2の外表面全体ではなく、耐火物本体2の下端25を含む一部領域のみを保護カバー3で被覆した点が、第1実施形態及び第2実施形態に係る板ガラス製造装置に用いられる成形体1と相違する。
この場合、保護カバー3は、耐火物本体2の外表面及び/又はガイド部材7(図3を参照)に、溶接等によって固定される。
なお、図9に示すように、耐火物本体2の外表面に凹部27を設け、この凹部27に保護カバー3を埋設してもよい。このようにすれば、保護カバー3の外表面と、耐火物本体2の外部に露出した外表面(保護カバー3で被覆されていない部分)とを略同一平面上に配置することができるので、溶融ガラスGmの流れが安定する。
もちろん、本発明は、上記の第1〜第3実施形態に限定されるものではなく、種々の形態で実施することができる。
1 成形体
2 耐火物本体
21 オーバーフロー溝
22 側面
23 垂直面
24 傾斜面
25 下端
3 保護カバー
31 下端
32 貴金属板
33 貴金属加工物
34 吸引口
35 肉盛部
36 貴金属板
37 貴金属加工物
38 肉盛部
G 板ガラス
Gm 溶融ガラス

Claims (13)

  1. 下端で交わる一対の側面を有する耐火物本体と、前記耐火物本体の外表面形状に近似した形状をなし、前記耐火物本体の下端を含む領域に被覆される貴金属板からなる保護カバーとを備え、前記一対の側面に沿って溶融ガラスを流下させ、これら溶融ガラスを前記耐火物本体の下端近傍で融合一体化して板ガラスを成形するための板ガラス成形体の製造方法であって、
    前記耐火物本体を製造する工程と、前記保護カバーを製造する工程とを含み、
    前記保護カバーを製造する工程において、前記耐火物本体を貴金属板で被覆するとともに、前記耐火物本体の下端に対応する位置で、前記貴金属板と接触するように溶融した貴金属を肉盛りした後、その貴金属の肉盛部を研磨により尖った形状に加工することを特徴とする板ガラス成形体の製造方法。
  2. 前記保護カバーを製造する工程において、前記一対の側面のそれぞれに沿うように別々の貴金属板を配設し、これら貴金属板の端縁同士を前記耐火物本体の下端に対応する位置で突き合わせ、その突き合わせ部に溶融した貴金属を肉盛りすることにより、前記肉盛部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の板ガラス成形体の製造方法。
  3. 前記保護カバーを製造する工程において、前記一対の側面の間に前記耐火物本体の下端を経由して跨るように、前記耐火物本体の外表面形状に近似した形状に曲げ加工した一枚の貴金属板を配設し、その貴金属板の外表面における前記耐火物本体の下端に対応する位置に溶融した貴金属を肉盛りすることにより、前記肉盛部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の板ガラス成形体の製造方法。
  4. 前記貴金属板および前記溶融した貴金属が、白金又は白金合金であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の板ガラス成形体の製造方法。
  5. 下端で交わる一対の側面を有する耐火物本体を備え、前記一対の側面に沿って溶融ガラスを流下させ、これら溶融ガラスを前記耐火物本体の下端近傍で融合一体化させて板ガラスを成形するための板ガラス成形体において、
    前記耐火物本体は、下端における前記一対の側面の延長線のなす角度が35度以下であって、下端の曲率半径が3mm以下であり、
    前記耐火物本体の下端を含む領域を、前記板ガラス成形体の外表面形状に近似した形状を有する貴金属板からなる保護カバーで被覆するとともに、
    前記保護カバーの外表面における下端の曲率半径を、前記耐火物本体の下端の曲率半径よりも小さくしたことを特徴とする板ガラス成形体。
  6. 前記保護カバーが、前記耐火物本体の外表面全体を被覆していることを特徴とする請求項5に記載の板ガラス成形体。
  7. 前記保護カバーが、白金板又は白金合金板からなることを特徴とする請求項5又は6に記載の板ガラス成形体。
  8. 前記保護カバーが、前記耐火物本体の外表面に負圧吸着されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の板ガラス成形体。
  9. 請求項5〜8のいずれか1項に記載の板ガラス成形体を備え、溶融ガラスから板ガラスを成形するように構成されていることを特徴とする板ガラスの製造装置。
  10. 請求項5〜8のいずれか1項に記載の板ガラス成形体を用いて、溶融ガラスから板ガラスを成形することを特徴とする板ガラスの製造方法。
  11. 900〜1100℃における溶融ガラスの粘度が、10〜10dPa・sであることを特徴とする請求項10に記載の板ガラスの製造方法。
  12. 溶融ガラスが、質量%換算で、10〜20%のアルカリ金属酸化物を含有するアルカリガラスであることを特徴とする請求項10又は11に記載の板ガラスの製造方法。
  13. 溶融ガラスのガラス組成が、質量%換算で、SiO 55〜70%、B 2〜11%、RO(ROは、アルカリ金属酸化物LiO,NaO及びKOの合量を指す) 10〜20%を含有することを特徴とする請求項12に記載の板ガラスの製造方法。
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