JP2015040712A - 電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具 - Google Patents
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Abstract
【課題】電子顕微鏡試料用グリッドを水平方向の状態で安定して保持し運搬することが可能である採取運搬用治具を提供する。【解決手段】治具先端のグリッド採取部1に、粘着性が付与された粘着性付与部2を2点以上持ち、これら粘着性付与部が同一平面の直径2.0〜3.0mmの円周上に存在している。グリッド採取部は、突出部を2点以上持ち、粘着性付与部は、この突出部の一部又は全面に粘着性を付与したものでも良い。また、グリッド採取部は、リング状の板を半分に切った半円弧形状であり、粘着性付与部は、この板の一面に部分的に粘着性を付与したものでも良い。【選択図】図3
Description
本発明は、電子顕微鏡を用いた分析を行うための電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具に関する。
形態観察用分析装置の一種である透過電子顕微鏡(TEM)では、試料片に電子線を照射し、試料を貫通した電子を検出することにより、試料片の透過像を得ることが出来るが、観察を行うための絶対条件として、試料が電子線を透過できる厚み(一般的に100nm以下)であることが求められる。
そのため、たいていの場合TEM観察を行おうとする試料は、前処理として微粒子化(高分散状態)、または薄片化を行う必要がある。前述の前処理方法は試料に応じて多岐にわたり、試料を乳鉢で粉砕して微粒子化する方法(粉砕法)、試料を化学的或いは物理的に研磨する方法(電解研磨法,ケミカルエッチング法)、試料にイオンビームを照射してスパッタ効果により薄片化加工を行う方法(FIB法,イオンミリング法)、ダイヤモンドなどで出来た切削刃で試料から薄片を削り出す方法(ウルトラミクロトーム法)などが知られている。
この様な方法を用いて薄片化加工を行った後の試料は、極めて薄く小さいため、そのままピンセットなどで採取することが出来ない。そのためグリッドと呼ばれる小さな金属板に搭載し、グリッドごと取り扱う様にするのが通常である。
試料を搭載するためのグリッドは、試料の形態や前処理の方法に応じて適したものを選択するため、様々な材質或いは形状のもの(電子線透過のための開口部形状が異なるものや、開口部に薄片を支持するためのごく薄い有機皮膜が存在するものなどがある)が販売されているが、共通する事項として、厚み30〜50μm,外径3mmの円形または半円形の板であり、内径2mmの範囲内に試料搭載箇所(開口部など)が存在している。
そのためグリッドを採取運搬する場合には、薄片試料の搭載箇所を破損または汚染しないように、試料搭載箇所より外側の0.5mm幅の枠部分を、噛み合わせの良い精密なピンセットで挟んで持ち運び、加工装置や観察装置の試料ホルダーに取り付ける。
試料ホルダーへのグリッドの取り付けは、所定位置にグリッドを設置した後、その枠部分に重なるように押さえ板を置き、押さえ板をネジなどで固定してグリッドを保持する形式が多く、基本的にこれらの操作は、グリッドを水平方向に平置きした状態で行われる。
ところで、透過電子顕微鏡用試料を搭載するためのグリッドをピンセットで摘んで取り扱う作業は、0.5mm幅の枠を確実につかむ必要があるため、非常に繊細な作業となる。そのため、僅かにピンセットの先端が汚れていたり、曲がっていたりするだけでも、ハンドリング性は著しく低下する。また、噛み合わせの良い精密ピンセットを用いても、作業者がグリッドの取り扱いに熟練していない、あるいは集中力を欠いている、といった人的要因によっても操作を誤る可能性がある。
特に、グリッドを平置きの状態から回収、あるいは平置きの状態に設置する場合は、グリッドの下にピンセットの先端を差し込むための隙間が無いためピックアップが難しく、また、ピンセットを水平方向に寝かせた状態で作業を行わなければならないため、ピンセットを机や周辺障害物にぶつけるなどしてしまうことが多い。結果として、グリッドを曲げる、弾いて紛失する、落として試料片を破損・汚染する、といった事故が起こりやすい。
また、FIBなどのイオンビームでの薄片試料作製に用いられる半円形のグリッド(半円形のグリッドの直線部分に試料の微細片を接着した後に、試料接着部を上にして垂直に立てたグリッドの上方からイオンビームを照射して薄片化を行う。)は、短径が1.5mm程度しかないため、観察装置の試料ホルダーへの設置の際に、電子線の通過経路としてホルダーに設けられた直径2mmの穴からグリッドが落下してしまうことが多く、設置後に落下の恐れの無い円形のグリッドと比べてさらに取り扱いが難しい。
このグリッドの様に、精密ピンセットでも保持及び運搬が困難な微小物を取り扱うための道具として、治具先端に粘着性を付与し、その粘着力により微小物の保持を可能とする粘着ピンセットが市販されている(例えば特許文献1または2参照)。しかし、先端1箇所の粘着部のみで対象を接着する構造上、重心から外れた端部を接着すると保持の安定性に欠け、対象物が粘着部から剥がれ落ち易いという欠点があるため、グリッドの端部を保持することは難しい。なおかつ、0.5mm以下の大きさのものを保持できるタイプのものは、微量の粘着剤を射出する為の筒状の先端部が細く精密な構造のため、接着の際の力加減に注意が必要であり、顕微鏡を覗きながら作業を行わなければないことから、装置試料ホルダーなどの顕微鏡下に配置することが難しい場所への設置作業には不向きである。
本発明は、以上の様な問題を解決するため、電子顕微鏡試料用グリッドを水平方向の状態で安定して保持し運搬することが可能であるようにすることを課題とする。
本発明において上記課題を解決するために、まず請求項1の発明では、治具先端のグリッド採取部に、粘着性が付与された粘着性付与部を2点以上持ち、これら粘着性付与部が同一平面の直径2.0〜3.0mmの円周上に存在していることを特徴とした電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具としたものである。
また請求項2の発明では、前記グリッド採取部は、突出部を2点以上持ち、前記粘着性付与部は、この突出部の一部又は全面に粘着性を付与したものであることを特徴とする請求項1記載の電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具としたものである。
また請求項3の発明では、前記グリッド採取部は、リング状の板を半分に切った半円弧形状であり、前記粘着性付与部は、この板の裏面に部分的に粘着性を付与したものであることを特徴とする請求項1記載の電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具としたものである。
また請求項4の発明では、前記粘着性付与部の粘着面の幅が0.7mm以下であることを特徴とした請求項1〜3のいずれかに記載の電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具としたものである。
また請求項5の発明では、前記粘着性付与部の粘着性を前記グリッド採取部の樹脂被覆により得ることを特徴とした請求項1〜4のいずれかに記載の電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具としたものである。
また請求項6の発明では、前記粘着性付与部の粘着性を前記グリッド採取部に低粘着性の接着剤を塗布することにより得ることを特徴とした請求項1〜4のいずれかに記載の電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具としたものである。
本発明は、電子顕微鏡試料用グリッドを水平方向の状態で安定して保持し運搬することが可能であるという効果がある。
このため、本発明の治具を用いることで、平置き状態のグリッドの回収、および平置き状態でのグリッドの設置だけでなく、装置試料ホルダーへのグリッド設置の際の向きや位置の微調整も安全かつ容易になるという効果がある。
以下に、本発明の一実施形態を説明する。
本発明の電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具は、図1〜3に示す実施例1又は図9〜12に示す実施例2のように、治具先端に、粘着性が付与された粘着性付与部(2)が2点以上あるグリッド採取部(1,7)を設け、前述の粘着性付与部(2)を同一平面の直径2.0〜3.0mmの円周上に配置したものである。図1〜3に示す実施例1のように、このグリッド採取部(1)は、突出部を2点以上持ち、前述の粘着性付与部(2)は、この突出部の一部又は全面に粘着性を付与したものであっても良い。また、図9〜12に示す実施例2のように、このグリッド採取部(7)は、リング状の板を半分に切った半円弧形状であり、前述の粘着性付与部(2)は、この板の裏面に部分的に粘着性を付与したものであっても良い。このグリッド採取部(1,7)は、粘着性付与部(2)に均等に力をかけられる位置に支軸(3)を設け、これを柄(4)に取り付けた構造とする。
また、本発明の電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具は、図4〜図7に示す実施例1又は図13〜14に示す実施例2のように、平置きの状態のグリッド(5)の枠部に、治具のグリッド採取部(3)に設けられた粘着性付与部(2,8)を接着し、その粘着力によりグリッド(5)の採取を可能とする。このとき、複数の点または面で接着して支えることでグリッド(5)の保持安定性を確保する。ただし、枠の全面を接着することはせず、グリッド(5)の枠の少なくとも一箇所はグリッド採取部(1)が重ならない箇所を設けて、グリッド(5)とグリッド採取部(3)との位置あわせを容易にするとともに、図8に示す実施例1のように、この露出部をピンセット(6)で抑えたり挟んだりすることで、治具から取り外すことが出来る構造とする。
また、粘着性付与部の粘着面の幅は、グリッドの枠から大きくはみ出ないように、0.7mm以下にすることが好ましい。
本発明の電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具は、治具先端のグリッド採取部にある複数の粘着性付与部が同一平面の直径2.0〜3.0mmの円周上に配置されている事が必要であり、グリッド採取部を接着した際にグリッドの枠の少なくとも一箇所はグリッド採取部と重ならずに露出していることが求められる。それを満たすものであればグリッド採取部の形状は特に問わない。ただし、グリッド採取時にグリッド採取部がグリッドに接近することから、グリッドの中央より直径2mmの薄片搭載領域に重ならない形状であることが望ましい。また、グリッド採取時に、粘着性付与部とグリッド枠の位置を正確に合わせる必要があることから、グリッド上にグリッド採取部を重ねても、視界を完全にさえぎらず、下にあるグリッドの位置が正しく把握できる形状であることが望ましい。
グリッド採取部および支軸の材質は、グリッド採取時にかかる力で変形せず、不必要に曲がってグリッド取り外しの邪魔にならない程度の強度があれば特に問わない。ただし、水やエタノール,アセトンなどの洗浄用アルコールとの接触が想定されるため、これらに対して耐性のある材質であることが望ましい。また、使用するグリッドの材質によっては、グリッドとの接触により合金化が進む様な材質は避けることがより望ましい。
グリッド採取部に粘着性を付与するための材料は、グリッドの重量が極めて軽いため、グリッドとの接着面積に応じて、粘着力の弱いもので剥離及び再接着が容易なものを選択する必要がある。粘着性の付与方法は、使用の都度、グリッド採取部に接着剤を塗布して一時的に接着を可能とする方式と、グリッド採取部の一部に粘着性樹脂で被覆した箇所を作って半永久的に粘着力を付与し、洗浄により粘着力を回復させる方法とが考えられる。
前者の接着剤は、適度な粘着力があり、エタノールやアセトンなどで洗い落とし易いものが望ましく、後者の方法で使用する粘着性樹脂については、水やエタノールなどに溶けず、グリッド採取部の骨格となる材料と強く接着することが可能であることが求められる。
前者の接着剤は、適度な粘着力があり、エタノールやアセトンなどで洗い落とし易いものが望ましく、後者の方法で使用する粘着性樹脂については、水やエタノールなどに溶けず、グリッド採取部の骨格となる材料と強く接着することが可能であることが求められる。
図1〜3に、本発明の実施例1を示す。実施例1のグリッド採取部(1)はL字型の突出部2点を2.0〜2.5mmの間隔を空けて平行に設けた形状で、支軸(3)を介して柄(4)に取り付けられている。突出部の先端から1〜3mmの範囲は接着剤の塗布または粘着性樹脂の被服により粘着性が付与されて粘着性付与部(2)が形成されており、グリッドの採取作業をし易くするため、粘着性付与部(2)は柄(4)の延長線に対して30°〜60°の角度が付くように作られている。
図4〜8に、実施例1によるグリッドの採取方法および、採取後のグリッド取り外し方法を示す。
実施例1によるグリッドの採取は、図4及び図5に示すように、粘着性付与部(2)の先端2箇所でグリッド(5)枠部分を接着する方法と、図6及び図7に示すように、粘着性付与部(2)の側面2箇所で接着する方法を選択することが出来る。前者は接着面積が小さく保持力が弱いが、グリッド採取部(1)がグリッド(5)上からほとんどはみ出さないため、グリッド(5)を試料ホルダーに設置する場合にグリッド採取部(1)が周辺障害物と接触し難いという利点があり、後者は反対に、グリッド採取部(1)がはみ出しているので周辺障害物との接触の可能性があるが、接着面積を広く確保できるので保持安定性が高くなる。
なお、図8に示すように、採取したグリッド(5)は、グリッド(5)枠の露出部分をピンセット(6)などで抑えた状態で、治具を引き上げて粘着性付与部(2)を剥がすことで、容易に取り外すことが可能となる。
図9〜12に、本発明の実施例2を示す。実施例2のグリッド採取部(7)は内径2mm以上、外径3.5mm以下のリング状の板を半分に切った形状で、半円弧の板の中央に設けられた支軸(3)を介して柄(4)に取り付けられる。このグリッド採取部(7)の裏面側を、部分的に粘着性樹脂で被覆することで粘着性を付与した粘着性付与部(2)を形成するが、被覆面積を樹脂の粘着性の強さに応じて変更する事で、グリッド保持の力を調整することが出来る。図9〜12に示す例ではグリッド採取部(7)の両端と中央の3点に粘着性付与部(2)が形成されている。また、実施例2の場合もグリッド(5)の採取作業をし易くするため、グリッド採取部(7)の粘着性付与面(裏面)が柄(4)の延長線に対して30°〜60°の角度になるように作られている。
図13及び14に、実施例2によるグリッドの採取方法を示す。実施例2によるグリッドの採取では、グリッド採取部(7)の半円がグリッド(5)の枠と重なるように位置を調整し、そのままグリッド採取部(7)裏面の粘着性付与部(2,8)を枠に接着することで、確実な採取を可能とする。実施例1と比較して、実施例2はグリッド採取部をグリッド枠と同じ形状にすることで周囲との接触の回避しつつ、接着面積を広くとることで保持安定性を高くした構造である。しかし、半円形のグリッドに対しては、枠の露出部分が極端に少なくなるため、グリッドの取り外しが難しくなるという面があり、いささか汎用性が低くなる。
1…グリッド採取部(実施例1)
2…粘着性付与部
3…支軸
4…柄
5…グリッド
6…ピンセット
7…グリッド採取部(実施例2)
8…粘着性付与部(裏面)
2…粘着性付与部
3…支軸
4…柄
5…グリッド
6…ピンセット
7…グリッド採取部(実施例2)
8…粘着性付与部(裏面)
Claims (6)
- 治具先端のグリッド採取部に、粘着性が付与された粘着性付与部を2点以上持ち、これら粘着性付与部が同一平面の直径2.0〜3.0mmの円周上に存在していることを特徴とした電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具。
- 前記グリッド採取部は、突出部を2点以上持ち、前記粘着性付与部は、この突出部の一部又は全面に粘着性を付与したものであることを特徴とする請求項1記載の電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具。
- 前記グリッド採取部は、リング状の板を半分に切った半円弧形状であり、前記粘着性付与部は、この板の裏面に部分的に粘着性を付与したものであることを特徴とする請求項1記載の電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具。
- 前記粘着性付与部の粘着面の幅が0.7mm以下であることを特徴とした請求項1〜3のいずれかに記載の電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具。
- 前記粘着性付与部の粘着性を前記グリッド採取部の樹脂被覆により得ることを特徴とした請求項1〜4のいずれかに記載の電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具。
- 前記粘着性付与部の粘着性を前記グリッド採取部に低粘着性の接着剤を塗布することにより得ることを特徴とした請求項1〜4のいずれかに記載の電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具。
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JP2013170428A JP2015040712A (ja) | 2013-08-20 | 2013-08-20 | 電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具 |
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JP2013170428A JP2015040712A (ja) | 2013-08-20 | 2013-08-20 | 電子顕微鏡試料用グリッドの採取運搬用治具 |
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Cited By (2)
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KR20170143443A (ko) * | 2016-06-21 | 2017-12-29 | 에프이아이 컴퍼니 | 반도체 샘플 워크플로우를 위한 방법들 및 장치 |
WO2021090846A1 (ja) * | 2019-11-08 | 2021-05-14 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 | 透過型電子顕微鏡観察試料作成方法及びそのための工具 |
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2013
- 2013-08-20 JP JP2013170428A patent/JP2015040712A/ja active Pending
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