JP2015040231A - ボラジアジン系色素 - Google Patents

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宇野 英満
Hidemitsu Uno
英満 宇野
真己 芳野
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真己 芳野
増田 豪
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豪 増田
正矩 青木
Masakado Aoki
正矩 青木
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Abstract

【課題】本発明は、従来とは異なる主骨格を備えた新規な構造を有する色素を提供する。【解決手段】本発明に係るボラジアジン系色素は、下記式(1)又は(2)で表されることを特徴とする。【化1】[式(1)及び式(2)中、環Aは、R3又はR4に結合する炭素原子と、この炭素原子に結合する窒素原子を含む置換基を有していてもよい含窒素五員もしくは六員単環式複素環又はこの単環式複素環を含む縮合環、R1及びR2はそれぞれ置換基を有しても良い有機基、R3及びR4はそれぞれN又はCR5を表す。ここで前記R5は、水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、チオシアネート基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基又は前記有機基である。]【選択図】なし

Description

本発明は、安定性に優れたボラジアジン系色素に関するものである。
従来、可視光や赤外光のカットフィルター、近赤外線吸収フィルム、セキュリティーインク等の用途において、可視・近赤外領域にシャープな吸収を有する色素への高い要求がある。
可視・近赤外領域に吸収を持つ色素として、アゾ系色素、シアニン系色素、スチリル系色素等が知られている。しかし、これらの色素は、いずれも分子骨格がフレキシブルであるため、異性化に伴う吸収波長の変化や、求核剤との反応、熱又は酸素による分解が起こりやすく、耐久性が劣る。他に、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素も知られている。しかし、これらの色素は、必要としない領域にも大きな吸収を有しており、不可視性が不十分である。
そこで、不可視性を有し、且つ、近赤外領域に吸収を有する色素として、ピロロピロールを主骨格とするピロロピロール系色素が提案されている(特許文献1、非特許文献1)。また、ベンゾジピロロリドン(すなわち、ジケトベンゾジピロール)を主骨格とするポリマーも提案されている(非特許文献2)。
特開2010−106248号公報
Georg M.Fischerら他4名、"Pyrrolopyrrole cyanine dyes: a new class of near-infrared dyes and fluorophores"、(Chem. Eur. J. 2009, 15, pp.4857-64) Weibin Cuiら他2名、"Benzodipyrrolidones and Their Polymers"、 (Macromolecules, 2011, 44, pp. 7869-7873)
昨今の可視・近赤外領域に吸収を有する色素に対する高まる要求を受け、本発明は、従来とは異なる主骨格を備えた新規な構造を有する色素の提供を課題として掲げた。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、1H,5H−pyrrolo[2,3−f]indoleを基本骨格とし、この化合物の2位と6位に窒素原子又は炭素原子を介して含窒素複素環を、3位と7位に有機基をそれぞれ備え、更に、前記1H,5H−pyrrolo[2,3−f]indoleの1位と5位の窒素原子と前記含窒素複素環の窒素原子を、二フッ化ホウ素原子と共有結合しているボラジアジン系色素は、可視・近赤外領域にシャープな吸収を有することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係るボラジアジン系色素は、下記式(1)又は(2)で表されることを特徴とするボラジアジン系色素である。
[式(1)及び式(2)中、環Aは、R3又はR4に結合する炭素原子と、この炭素原子に結合する窒素原子を含む置換基を有していてもよい含窒素五員もしくは六員単環式複素環又はこの単環式複素環を含む縮合環、R1及びR2はそれぞれ置換基を有しても良い有機基、R3及びR4はそれぞれN又はCR5を表す。ここで前記R5は、水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、チオシアネート基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基又は前記有機基である。]
本発明においては、前記R1及びR2のうち少なくとも一方が環式炭化水素基であることが好ましい。また、前記R3及びR4はそれぞれN又はCR5であり、前記R5が、シアノ基であることが更に好ましい態様である。加えて、前記環式炭化水素基がフェニル基であることがより望ましい態様である。
本発明によれば、色素が前記式(1)又は(2)に記載する構造を有しているため、可視・近赤外領域にシャープな吸収を有する。また、1H,5H−pyrrolo[2,3−f]indoleを基本骨格としているため、構造の中心にベンゼン環を有していないピロロピロールを主骨格とする色素に比べ、共役長を延ばしやすく、置換基によっては、色素がより長波長化することも期待できる。
1.ボラジアジン系色素
本発明に係るボラジアジン系色素は、1H,5H−pyrrolo[2,3−f]indoleを基本骨格とする。そして、この化合物の2位と6位に窒素原子又は炭素原子を介して含窒素複素環を有し、3位と7位に有機基を有している。更に、前記1H,5H−pyrrolo[2,3−f]indoleの1位と5位の窒素原子と前記含窒素複素環の窒素原子を、二フッ化ホウ素原子と共有結合している。具体的に本発明のボラジアジン系色素は、式(1)又は式(2)で表される。
式(1)及び式(2)中、環AはR3又はR4に結合する炭素原子と、この炭素原子に結合する窒素原子を含む置換基を有していてもよい含窒素五員もしくは六員単環式複素環又はこの単環式複素環を含む縮合環、R1及びR2はそれぞれ置換基を有しても良い有機基、R3及びR4はそれぞれN又はCR5を表す。ここで前記R5は、水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、チオシアネート基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基又は前記有機基である。
前記式(2)で表される化合物には、この化合物と共役関係にある化合物が存在している場合がある(例えば、下記式(2’)で表される化合物)。従って、本願明細書においては、このような共役関係にある化合物が存在しているボラジアジン系色素は、化合物(2)として個別に説明し、この「式(2)で表されるボラジアジン系色素」には、例えば、式(2’)で表されるボラジアジン系色素も含まれる意味で使用することとする。
式(1)及び式(2)中、環Aは、R3又はR4に結合する炭素原子と、この炭素原子に結合する窒素原子を含む置換基を有していてもよい含窒素五員もしくは六員単環式複素環又はこの単環式複素環を含む縮合環である。このような環Aとしては、不飽和のものが好ましい。
環AがR3又はR4に結合する炭素原子と、この炭素原子に結合する窒素原子を含む置換基を有していてもよい含窒素五員単環式複素環又はこの単環式複素環を含む縮合環である場合、環Aとしては、例えば、ピロール、チアゾール、オキサゾール、インドール、イソインドール、ベンゾチアゾール、等の窒素1原子の五員単環式複素環又はこの単環式複素環を含む縮合環;イミダゾール、ベンゾイミダゾール、等の窒素2原子の五員単環式複素環又はこの単環式複素環を含む縮合環;4H−イミダゾ[4,5−d]チアゾール、等の窒素3原子の五員単環式複素環又はこの単環式複素環を含む縮合環;1,6−ジヒドロイミダゾ[4,5−d]イミダゾール、等の窒素4原子以上の五員単環式複素環又はこの単環式複素環を含む縮合環が挙げられる。中でも、窒素1原子のものが好ましく、更に好ましくは単環であり、特にピロールが好ましい。
また環AがR3又はR4に結合する炭素原子と、この炭素原子に結合する窒素原子を含む置換基を有していてもよい含窒素六員単環式複素環又はこの単環式複素環を含む縮合環である場合、環Aとしては、例えば、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾ[h]イソキノリン、フェナントリジン、等の窒素1原子の六員単環式複素環又はこの単環式複素環を含む縮合環;ピラジン、ピリミジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、1,10−フェナントリン、等の窒素2原子の六員単環式複素環又はこの単環式複素環を含む縮合環;1,2,4−トリアジン、7H−ピラジノ[2,3−c]カルバゾール等の窒素3原子の六員単環式複素環又はこの単環式複素環を含む縮合環;ピラジノ[2,3−d]ピリダジン、プテリジン、等の窒素4原子以上の六員単環式複素環又はこの単環式複素環を含む縮合環が例示できる。中でも、窒素1原子のものが好ましく、更に好ましくは単環であり、特にピリジンが好ましい。
プリン、ピロロ[2,3−b]ピリジン、ピロロ[3,2−b]ピリジン、等の五員単環式複素環(又はこの単環式複素環を含む縮合環)と、六員単環式複素環(又はこの単環式複素環を含む縮合環)の両方を有する環については、化合物(1)及び(2)に示す色素の基本骨格に直接結合している環の構造に基づいて、複素環の分類を判断するものとする。
前記環Aはそれぞれ置換基を有していても良い。好ましい置換基としては、水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、チオシアネート基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基又は有機基が挙げられる。これらの置換基については、「アルキルスルフィニル基」、「アリールスルフィニル基」、「アルキルスルホニル基」、「アリールスルホニル基」、「スルファモイル基」、「有機基」としては、後述する「R1及びR2の欄」で詳述するものを適宜採用することができる。
次に、R1及びR2について説明する。R1及びR2はそれぞれ有機基を表す。本発明において「有機基」とは、主骨格と炭素原子を介して結合可能な置換基をいう。具体的には、炭化水素から水素原子1個を除いた炭化水素基;エステル結合(−COO−)、アシル基(−CO−)、カルバモイル基(−CONH−)を有する官能基;等が挙げられる。尚、R1及びR2は同一であってもよく、それぞれ異なっていてよい。
前記炭化水素基は、芳香族炭化水素基等の環式炭化水素基;飽和炭化水素基等の鎖式炭化水素基;等が例示できる。
前記環式炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、インデニル基、アズレニル基、フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、ペンタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜30のものが好ましく、炭素数1〜15のものがより好ましい。
前記鎖式炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の飽和炭化水素基が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜20のものが好ましく、炭素数1〜10のものがより好ましい。
前記エステル結合(−COO−)を有する官能基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメチルオキシカルボニル基等のアルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルオキシカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルオキシカルボニル基、2−クロロフェニルオキシカルボニル基、2−メチルフェニルオキシカルボニル基、2−メトキシフェニルオキシカルボニル基、2−ブトキシフェニルオキシカルボニル基、3−クロロフェニルオキシカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルオキシカルボニル基、3−シアノフェニルオキシカルボニル基、3−ニトロフェニルオキシカルボニル基、4−フルオロフェニルオキシカルボニル基、4−シアノフェニルオキシカルボニル基、4−メトキシフェニルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基が挙げられる。
アシル基(−CO−)を有する官能基としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜15のアシル基が好ましく、炭素数1〜10のものがより好ましい。
カルバモイル基(−CONH−)を有する官能基としては、例えば、カルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基、N−(2−ドデシルオキシエチル)カルバモイル基等が挙げられる。
なお、上述したR1及びR2は置換基を有していても良い。置換基としては、例えば、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、チオシアネート基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、前記有機基、これらの置換基を有する鎖式炭化水素基、及びこれらの置換基を有する環式炭化水素基等の電子求引性置換基が挙げられる。
前記アルキルスルフィニル基としては、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、ヘキシルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、オクチルスルフィニル基、シアノメチルスルフィニル基、メトキシメチルスルフィニル基等が挙げられる。
前記アリールスルフィニル基としては、例えば、フェニルスルフィニル基、1−ナフチルスルフィニル基、2−ナフチルスルフィニル基、2−クロロフェニルスルフィニル基、2−メチルフェニルスルフィニル基、2−メトキシフェニルスルフィニル基、2−ブトキシフェニルスルフィニル基、2−フルオロフェニルスルフィニル基、3−メチルフェニルスルフィニル基、3−クロロフェニルスルフィニル基、3−トリフルオロメチルフェニルスルフィニル基、3−シアノフェニルスルフィニル基、3−ニトロフェニルスルフィニル基、4−メチルフェニルスルフィニル基、4−フルオロフェニルスルフィニル基、4−シアノフェニルスルフィニル基、4−メトキシフェニルスルフィニル基、4−ジメチルアミノフェニルスルフィニル基等が挙げられる。
前記アルキルスルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、シアノメチルスルホニル基、メトキシメチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基等が挙げられる。
前記アリールスルホニル基としては、例えば、フェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基、2−ナフチルスルホニル基、2−クロロフェニルスルホニル基、2−メチルフェニルスルホニル基、2−メトキシフェニルスルホニル基、2−ブトキシフェニルスルホニル基、2−フルオロフェニルスルホニル基、3−メチルフェニルスルホニル基、3−クロロフェニルスルホニル基、3−トリフルオロメチルフェニルスルホニル基、3−シアノフェニルスルホニル基、3−ニトロフェニルスルホニル基、3−フルオロフェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基、4−フルオロフェニルスルホニル基、4−シアノフェニルスルホニル基、4−メトキシフェニルスルホニル基、4−ジメチルアミノフェニルスルホニル基等が挙げられる。
前記スルファモイル基としては、例えば、スルファモイル基、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N−プロピルスルファモイル基、N−ブチルスルファモイル基、N−ヘキシルスルファモイル基、N−シクロヘキシルスルファモイル基、N−オクチルスルファモイル基、N−2−エチルヘキシルスルファモイル基、N−デシルスルファモイル基、N−フェニルスルファモイル基、N−2−メチルフェニルスルファモイル基、N−2−クロロフェニルスルファモイル基、N−2−メトキシフェニルスルファモイル基、N−2−イソプロポキシフェニルスルファモイル基、N−3−クロロフェニルスルファモイル基、N−3−ニトロフェニルスルファモイル基、N−3−シアノフェニルスルファモイル基、N−4−メトキシフェニルスルファモイル基、N−4−シアノフェニルスルファモイル基、N−4−ジメチルアミノフェニルスルファモイル基、N−4−メチルスルファニルフェニルスルファモイル基、N−4−フェニルスルファニルフェニルスルファモイル基、N−メチル−N−フェニルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N,N−ジブチルスルファモイル基、N,N−ジフェニルスルファモイル基等が挙げられる。
前記アルキルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、トリフルオロメチルオキシ基等が挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、ビフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、ピレニルオキシ基、インデニルオキシ基、アズレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、ターフェニルオキシ基、クオーターフェニルオキシ基、ペンタレニルオキシ基、ヘプタレニルオキシ基、ビフェニレニルオキシ基、インダセニルオキシ基、アセナフチレニルオキシ基、フェナレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、フェナントリルオキシ基等が挙げられる。
上述したR1及びR2は、R1及びR2のうち少なくとも一方が環式炭化水素基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。また、R1とR2は同一であることがより好ましい態様である。
次いで、R3及びR4について説明する。R3及びR4はそれぞれ、N又はCR5を表す。ここで、R3又はR4がCR5であるとき、前記R5は、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、ニトロ基、チオシアネート基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基又は前記有機基である。R5の「アルキルスルフィニル基」、「アリールスルフィニル基」、「アルキルスルホニル基」、「アリールスルホニル基」、「スルファモイル基」、「有機基」としては、「R1及びR2の欄」で詳述したものを適宜採用することができる。尚、R3及びR4は同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
本発明において、R3とR4は同一であることがより好ましい態様である。また、R5としては、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、ニトロ基及び有機基(中でも、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい飽和炭化水素基、アルキルオキシカルボニル基やアリールオキシカルボニル基等のエステル結合を有する官能基、が好ましい)が好ましく、より好ましくは水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基であり、更に好ましくはシアノ基である。
<ボラジアジン系色素の製造方法>
本発明に係るボラジアジン系色素の製造方法について説明する。本発明に係るボラジアジン系色素を製造する合成スキームを以下に示す。下記スキームIでは、環AがR3又はR4に結合する炭素原子と、この炭素原子に結合する窒素原子を含む置換基を有していてもよい含窒素五員もしくは六員単環式複素環又はこの単環式複素環を含む縮合環である化合物(1)を例にとって一連の製造工程を示している。
このスキームIに記載するように、本発明に係るボラジアジン系色素の合成ルートは2通りある。一つは、ボラジアジン系色素の中間体である下記式(5)で表される化合物;
(式(5)中、環A、R1、R2、R3、R4は前記に同じ)を、工程1によって製造する方法(製造方法1)である。他方は、前記化合物(5)を、工程3〜6によって製造する方法(製造方法2)である。以下に、製造方法1〜2について詳しく説明する。
<ボラジアジン系色素の第1の製造方法>
本発明に係るボラジアジン系色素(1)の第1の製造方法について説明する。
(工程1)
工程1は、下記式(3)で表されるベンゾジピロリドン誘導体;
(式(3)中、R1及びR2は前記に同じ)に、下記式(4)で表される含窒素複素環誘導体;
(式(4)中、環Aは前記に同じ。R6はR3の末端に水素基を付加した基を表す。)を、ハロゲン化ホスホリルPOX1 3(式中、X1は、F、ClまたはBrを表す。)存在下で反応させて、下記式(5)で表される化合物;
(式(5)中、環A、R1、R2、R3、R4は前記に同じ)を製造する工程である。
前記式(5)で表される化合物は、ボラジアジン系色素(1)の中間体として非常に有用である。化合物(5)を用いれば、簡便にボラジアジン系色素(1)を製造することができるからである。尚、本願明細書において、下記式(5’)で表される化合物(式(5’)中、環A、R1、R2、R3、R4は前記に同じ))は、化合物の中心に存在するベンゼン環の縮合状態が異なる以外は、化合物(5)と同じ置換基を有している。そして、この化合物(5’)には、この化合物と共役関係にある化合物が存在している場合がある(例えば、下記式(5”)で表される化合物)。このような共役関係にある化合物が存在している化合物(5’)は、化合物(5’)として個別に説明することとし、本願明細書において、「式(5)で表される化合物」には、式(5’)及び式(5”)で表されるボラジアジン系色素も含まれる意味で使用することとする。
工程1におけるベンゾジピロリドン誘導体(3)と含窒素複素環誘導体(4)の反応は、Vilsmeier型の芳香族化合物(複素芳香族化合物も含む)を活性化できる試剤の存在下で実施するとよい。Vilsmeier試剤としては、例えば、ハロゲン化ホスホリル、四塩化チタンと3級アミンの組み合わせ、塩化チオニル等が挙げられる。これらの中でもハロゲン化ホスホリルの存在下で行うことが好ましい。ハロゲン化ホスホリルとして、例えばフッ化ホスホリル、塩化ホスホリルまたは臭化ホスホリルが挙げられるが、これらの中でも反応性の観点から、塩化ホスホリルが好ましい。ハロゲン化ホスホリルの量は、ベンゾジピロリドン誘導体(3)1molに対して、0.5〜10molが好ましく、より好ましくは1.5〜7molである。
工程1は、通常、溶液中で行われる。工程1に好適な溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系炭化水素類;クロロベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;THF、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;を用いることができる。ベンゾジピロリドン誘導体(3)の濃度は、好ましくは0.01〜2M程度、より好ましくは0.05〜1M程度である。
含窒素複素環誘導体(4)の使用量は、含窒素複素環誘導体(4)の量は、ベンゾジピロリドン誘導体(3)1molに対して、0.5〜10molが好ましく、より好ましくは1〜8molである。含窒素複素環誘導体(4)の量が少ないと収率よく化合物(5)を製造することが難しい。また、含窒素複素環誘導体(4)の量が多いと、原料及び化合物(5)の精製コストが増大する。
工程1での反応は、特に限定されるものではないが、好ましい方法として、(製法i)ベンゾジピロリドン誘導体(3)とハロゲン化ホスホリルを予め混合して第1の反応を行った後に、含窒素複素環誘導体(4)を加えて第2の反応を行う方法、(製法ii)ベンゾジピロリドン誘導体(3)と含窒素複素環誘導体(4)を予め混合して第1の反応を行った後に、ハロゲン化ホスホリルを加えて第2の反応を実施する方法、が挙げられる。
第1の反応工程では、反応温度は100〜170℃が好ましく、より好ましくは120〜140℃である。特に還流状態であることが好ましい。また、第1の反応工程における反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、より好ましくは0.5〜12時間である。
第2の反応工程では、反応温度は100〜170℃が好ましく、より好ましくは120〜140℃である。特に還流状態であることが好ましい。また、第2の反応工程における反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、より好ましくは0.5〜12時間である。
取得された化合物(5)は、精製してから、次の工程で使用することが推奨される。精製手段として、例えば、濾過、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィー、昇華精製、再結晶、晶析などが利用できる。また、化合物(5)を精製することなしに、工程1終了後の反応物を次の工程で使用することも可能である。
(工程2)
工程2は、前記式(5)で表される化合物に、三フッ化ホウ素錯体を作用させて、下記式(1)で表されるボラジアジン系色素;
(式(1)中、環A、R1、R2、R3、R4は前記に同じ)を製造する工程である。
工程2も、通常、溶液中で行われる。工程2に好適な溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系炭化水素類;クロロベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類;およびトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類を用いることができる。化合物(5)の溶液濃度は、好ましくは0.001〜1M程度、より好ましくは0.01〜0.5M程度である。
前記三フッ化ホウ素錯体とは、三フッ化ホウ素と配位子からなる。具体的に例示すると、三フッ化ホウ素水錯体((H2O)n錯体(n=1〜5));三フッ化ホウ素酢酸錯体等の三フッ化ホウ素酸錯体;三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素エチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素メチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素エチルメチルエーテル錯体等の三フッ化ホウ素エーテル錯体;三フッ化ホウ素メタノール錯体等の三フッ化ホウ素アルコール錯体;三フッ化ホウ素フェノール錯体;三フッ化ホウ素リン酸錯体;三フッ化ホウ素テトラハイドロフラン錯体;三フッ化ホウ素アセトニトリル錯体等が例示できる。中でも、安定性がよいことから三フッ化ホウ素エーテル錯体が好ましく、特に三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体が好ましい。
前記三フッ化ホウ素錯体の使用量は、例えば、化合物(5)1molに対して0.8〜200molが好ましく、より好ましくは1〜150molであり、更に好ましくは1.2〜100molである。三フッ化ホウ素錯体の量が少なすぎると、化合物(5)が未反応となり、化合物(1)の収率が低下する虞がある。一方、三フッ化ホウ素錯体の量が多すぎると、化合物(1)の収率低下や純度低下を引き起こす虞がある。
また工程2は、塩基性化合物の存在下で行うことが好ましい。塩基性化合物としては、例えば(モノ−、ジ−、トリ−、ポリ−)アミン化合物が挙げられるが、中でもトリアミン化合物が好ましく挙げられる。具体的には、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリイソブチルアミン、トリイソペンチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチル−2−エチルヘキシルアミン、ジイソプロピル−2−エチルヘキシルアミン、メチルジオクチルアミン等が好ましく挙げられる。中でも、ジイソプロピルエチルアミンが好ましい。なお、塩基性化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記塩基性化合物の使用量は、その種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、化合物(5)1molに対して0.8〜200molが好ましく、より好ましくは1〜150molであり、更に好ましくは1.2〜100molである。塩基性化合物の量が少なすぎると、化合物(5)が未反応となり、化合物(1)の収率が低下する虞がある。一方、塩基性化合物の量が多すぎると、化合物(1)の収率低下や純度低下を引き起こす虞がある。
工程2における反応温度は、反応性に応じて適宜設定でき、例えば、0〜250℃が好ましく、より好ましくは30〜200℃であり、特に好ましくは、還流状態である。また工程2の反応は、特に不活性ガス(窒素、アルゴン等)雰囲気下で行うことが推奨される。工程2における反応時間は、反応温度、使用原料等に応じて適宜設定でき、例えば、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、さらに好ましくは3時間以上、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。
原料となる化合物(5)は前述した工程1の方法で取得した化合物をそのまま使用することも可能である。工程2で得られたボラジアジン系色素(1)は、化合物(5)の欄で詳述した各種精製手段によって精製するとよい。
<化合物(1)の第2の製造方法>
本発明に係るボラジアジン系色素(1)を製造する第2の方法について説明する。
(工程3)
工程3とは、ベンゾジピロリドン誘導体(3)のアミノ基を保護して、下記式(6)で表されるN保護ベンゾジピロリドン誘導体;
(式(6)中、R1及びR2は前記に同じ、R7は保護基である。)を製造する工程である。
アミノ基の保護基であるR7として適切な保護基は、例えば、T.W.Green,P.G.M.Wuts,"PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS",JOHN WILEY & SONS,Inc.を参照するとよい。具体的には、炭素数1〜20のアルキル基(より好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基);メタンスルホニル(Ms)基、トシル(Ts)基等の−SOOR8で表されるスルホン系保護基(式中R8は、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20の芳香環を有する置換基を表す);tert−ブトキシカルボニル(BOC)基、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)基等の−COOR9で表されるカルバメート系保護基(式中R9は、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20の芳香環を有する置換基を表す);アセチル(Ac)基、ベンゾイル(Bz)基等の−COR10で表されるアシル基を有する保護基(式中R10は、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20の芳香環を有する置換基を表す);ベンジル(Bn)基、p−メトキシベンジル(PMB)基、3,4−ジメトキシベンジル(DMPM)基等の、置換基を有していてもよいベンジル基を有する保護基;等の各種アミノ保護基が挙げられる。
工程3での反応は、保護基に併せて適宜反応条件を定めるとよい。
例えば、R7として炭素数1〜20のアルキル基を採用する場合には、ハロゲン化アルキルを用いた求電子置換反応を実施するとよい。前記ハロゲン化アルキルとしては、フッ化アルキル、塩化アルキル、臭化アルキル、ヨウ化アルキルが挙げられ、ヨウ化アルキルが好ましい。ハロゲン化アルキルの使用量は、ベンゾジピロリドン誘導体(3)1molに対し、当量以上が好ましく、より好ましくは1.5〜15molであり、更に好ましくは5〜10molである。保護反応は、溶媒存在下に行うのがよく、好ましい溶媒としては、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒が挙げられる。反応時間は、例えば、1時間〜48時間が好ましく、より好ましくは5〜30時間である。
また、R7としてスルホン系保護基を採用する場合には、スルホン酸ハロゲン化物を用いて、適宜保護反応を実施するとよい。スルホン酸ハロゲン化物としては、スルホン酸塩化物が好ましい。スルホン酸ハロゲン化物の使用量は、ベンゾジピロリドン誘導体(3)1molに対し、当量以上が好ましく、より好ましくは1.1〜5molであり、更に好ましくは1.5〜4molである。保護反応は、溶媒存在下に行うのがよく、好ましい溶媒としては、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン系溶媒が挙げられる。反応時間は、例えば、1時間〜12時間が好ましく、より好ましくは2〜5時間である。
工程3で得られたN保護ベンゾジピロリドン誘導体(6)は、工程1の欄で詳述した各種精製手段によって精製してもよい。
(工程4)
工程4とは、N保護ベンゾジピロリドン誘導体(6)を還元して、下記式(7)で表されるN保護ピロロインドール誘導体;
(式(7)中、R1、R2、R7は前記に同じ。)を製造する工程である。
工程4で用いる還元剤としては、ケトン基を還元できるものであれば特に限定されず、ヒドリド還元試薬が好ましい。ヒドリド還元試薬として、金属若しくは半金属の水素化物またはそれらの錯体を用いることができる。ヒドリド還元試薬としては、例えば、LiAlH4、LiAlH311、LiAlH211 2、LiAlHR11 3、NaAlH4、NaAlH311、NaAlH211 2、NaAlHR11 3、NaAlH2(OCH2CH2OCH32、Al23(OCH2CH2OCH33、R11 3N−AlH3、Et2O−AlH3等のアルミニウム水素化物の錯体(式中、R11は、アルキル、アリールまたはアルコキシ基を表す。);ジボラン(B26)、アルキルボラン、ジアルキルボラン、アルコキシボラン、ジアルコキシボラン等のホウ素水素化物;NaBH4、NaBH312、NaBH212 2、NaBHR12 3、NaBH3CN、NaBH3N(CH32、NaBH3(NH(t−Bu))NaBH33、NaBH2(SCH2CH2S)、LiBH4、LiBH312、LiBH212 2、LiBHR12 3、H3N−BH3、R122N−BH3、R12 2HN−BH3、R12 3N−BH3、THF−BH3、ピリジン−BH3、R12 2HP−BH3、R12 3P−BH3、KBHR12 3等のホウ素水素化物の錯体(式中、R12は、アルキル、アリールまたはアルコキシ基を表す。);Cl2SiH2、Cl3SiH、R13 2SiH2、R13 3SiH、((CH33Si)3SiH、ポリメチルヒドロシラン等のケイ素水素化物(式中R13は、アルキル、アリール、ベンジルまたはアルコキシ基を表す。);R14 2SnH2、R14 3SnH、Ph2SnH2、Ph3SnH、(n−Bu)2SnH2、水素化トリエチルスズ、水素化トリメチルスズ等のスズ水素化物(式中R14は、アルキル、アリールまたはアルコキシ基を表す。);などの各種ヒドリド還元試薬が例示できる。中でも反応性が良いことから、アルミニウム水素化物の錯体が好ましく、特に水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)が好ましい。ヒドリド還元剤は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ヒドリド還元剤の使用量は、特に限定されるものではないが、N保護ベンゾジピロリドン誘導体(6)1molに対し、0.01〜1molであることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5molである。ヒドリド還元剤の量が過剰になると、原料コストが高くなる。一方、ヒドリド還元剤の量が少ないと、N保護ピロロインドール誘導体(7)を収率よく製造することが困難となる。
工程4における還元反応は、通常、溶媒を用いて行われる。溶媒としては特に限定は無いが、出発原料であるN保護ベンゾジピロリドン誘導体(6)を溶解できるものが好ましい。溶媒としては、工程1の欄で詳述した各種溶媒を使用するとよく、中でも、エーテル類が好ましく、特に好ましくはTHFである。溶媒は、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。溶媒を用いる場合、N保護ベンゾジピロリドン誘導体(6)の濃度は、好ましくは0.01〜1M程度、より好ましくは0.02〜0.5M程度である。
ヒドリド還元試薬を用いた還元反応では、還元試薬の分解を抑制するために、窒素またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、還元反応の温度は、用いる溶媒などにも影響されるが、好ましくは0℃〜150℃、より好ましくは20℃〜120℃以下。還元反応の時間は、好ましくは30分〜24時間、より好ましくは1時間〜12時間、更に好ましくは2時間〜5時間である。
生成物であるN保護ピロロインドール誘導体(7)の収率を向上させるために、ヒドリド還元試薬を用いた還元反応の後に、反応混合物とプロトン酸またはアルカリとを混合することが好ましい。
プロトン酸を用いる場合について説明する。プロトン酸には特に限定は無く、有機または無機プロトン酸を使用することができる。工程4では、1種のみのプロトン酸を単独で、または2種以上のプロトン酸を組み合わせて用いることができる。還元反応後の反応混合物とプロトン酸とは、好ましくは−30℃〜30℃程度、より好ましくは−10℃〜10℃程度の温度で、さらに好ましくは氷浴などでの冷却下(0℃程度)で混合することが推奨される。
無機プロトン酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸;オルトリン酸、ピロリン酸等のリン酸;過塩素酸等の過ハロゲン酸;リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンタングストモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸等のヘテロポリ酸などが挙げられる。
有機プロトン酸としては、例えばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等のアリールスルホン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、t−ブチルスルホン酸等のアルキルスルホン酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、ピバリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の飽和脂肪族カルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、プロピオール酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、オレイン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸などが挙げられる。
次にアルカリを用いる場合について説明する。還元反応後に反応混合物とアルカリとを、好ましくは−30℃〜30℃程度、より好ましくは−10℃〜10℃程度の温度で混合することが推奨される。アルカリとしては、好ましくはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、モノカルボン酸塩(酢酸塩など)、ジカルボン酸塩(シュウ酸塩など);有機アミンなどが挙げられる。これらの中でも、強塩基であるアルカリ金属水酸化物(特にLiOH、NaOH、KOH)が好ましい。コストの観点から、NaOHがより好ましい。また有機アミンとして、ホウ素などと錯体を形成してヒドリド還元試薬残基の脱離を促進できるエタノールアミン、メチルアミンがより好ましい。これらアルカリの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ヒドリド還元試薬による還元反応の後、反応混合物から通常の処理工程により、精製したN保護ピロロインドール誘導体(7)を精製することが好ましい。例えば過剰のプロトン酸またはアルカリを用いた場合は、中和工程、水または食塩水などによる洗浄工程、抽出工程、濃縮工程、および精製工程を行うことが推奨される。本発明において精製手段には特に限定はなく、該技術分野で通常使用されている手段、例えば、工程1の欄で詳述した各種精製方法を採用するとよい。
(工程5)
工程5とは、N保護ピロロインドール誘導体(7)のN保護基を脱保護して、下記式(8)で表されるピロロインドール誘導体;
(式(8)中、R1、R2は前記に同じ)を製造する工程である。N保護基R7の脱保護は、保護基の種類に応じて適宜条件を設定するとよい。
(工程6)
工程6とは、前記ピロロインドール誘導体(8)と前記含窒素複素環誘導体(4)を縮合して、前記式(5)で表される化合物を製造する工程である。
縮合反応は、通常、酸の存在下で行われる。縮合反応に使用できる酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸およびトリフルオロ酢酸などの脂肪族モノカルボン酸;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;メタンスルホン酸などのスルホン酸;並びにZnCl2、BF3およびBF3・O(C252などのルイス酸を挙げることができる。前記脂肪族モノカルボン酸および/または前記ルイス酸は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。脱水環化のための反応温度は、溶媒にも依存するが、通常0〜140℃(好ましくは20〜120℃)である。
また、縮合反応は、通常、溶媒中で行う。使用できる溶媒としては、工程1で詳述した各溶媒を適宜使用するとよい。
なお、上述した第1の製造方法及び第2の製造方法において、原料に用いたベンゾジピロリドン誘導体(3)は、例えば、Weibin Cuiらの論文”Benzodiyrrolidones and Their Polymers (Macromolecules, 2011, 44, pp. 7869-7873)”に記載されているような、公知の方法で製造することができる。なお、スキームIにおいて、化学式(10)〜(12)におけるR1及びR2は前記に同じである。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
シアノ体のボラジアジン系色素の製造方法
反応容器にベンゾジピロリドン誘導体3を1.02g(3.02mmol)加え、N2ガスで置換した後、dry−tolueneを30ml加えた。次に、塩化ホスホリルを0.65ml(7.0mmol)加え、130℃で二時間還流した。還流後、dry−pyridineを0.4ml(5.0mmol)加え、更に2−ピリジンアセトニトリルを0.81ml(7.3mmol)加えて、四時間還流した。その後、ジイソプロピルエチルアミンを1.20ml(6.7mmol)加えた後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を0.80ml(6.6mmol)加えて、二時間還流した。反応終了後、室温まで冷却して、重曹水でクエンチした後、吸引濾過により固体を取り除いた。液相を重曹水、水、食塩水で洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥した後濃縮した。取得された固体は塩化メチレンで色がなくなるまで抽出を行い、重曹水、水、食塩水で洗浄した後、減圧濃縮を行い、乾燥させ、その後シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;塩化メチレン)で精製することにより、シアノ体のボラジアジン系色素1aを得た。収率は2.0%であった。
Mol. Form.: C36H20B2F4N6 (Exact mass: 634.19 Mol. Wt.: 634.21)
Appearance: blue powder
TOF-MS: 634.9998(M+)
UV: λabs=668 nm
実施例2
アザ体のボラジアジン系色素の製造方法
反応容器にベンゾジピロリドン誘導体3を719mg(2.13mmol)加え、N2ガスで置換した後、dry−tolueneを18ml加えた。次に、塩化ホスホリルを0.5ml(5.28mmol)加え、125℃で二時間還流した。還流後、dry−pyridineを0.41ml(5.00mmol)加え、更に2−ピリジンアセトニトリルを0.5ml(4.40mmol)加えて、四時間還流した。その後、ジイソプロピルエチルアミンを0.75ml(4.42mmol)加えた後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を0.63ml(5.1mmol)加えて、三時間還流した。反応終了後、室温まで冷却して、重曹水でクエンチした後、吸引濾過により固体を取り除いた。液相を重曹水、水、食塩水で洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。取得された固体は塩化メチレンで色がなくなるまで抽出を行い、重曹水、水、食塩水で洗浄した後、減圧濃縮を行い、乾燥させ、その後、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;塩化メチレン)で粗精製した後、さらに分取液体クロマトグラフィー(GPC)で精製し、アザ体のボラジアジン系色素1bを得た。収率は0.4%であった。
Mol. Form.:C32H20B2F4N6 (Exact mass: 586.19 Mol. Wt.: 586.17)
Appearance: purple powder
TOF-MS: 587.9257(M+)
UV: λabs=584 nm
実施例3
反応容器にベンゾジピロリドン誘導体3を351mg(1.04mmol)とt−BuOKを360mg(3.21mmol)加えて、N2ガスで置換した後、dry−DMSOを12ml加えた。その後、ヨードメタンを0.5ml(7.87mmol)加えて、24時間攪拌した。その後、水でクエンチし、塩化メチレンで抽出して、重曹水、水、食塩水で洗浄した後、減圧濃縮し、乾燥させた。その後、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;塩化メチレン)で精製して、N保護ベンゾジピロリドン誘導体6aを得た。収率は37%であった。
実施例4
反応容器に6aを100mg(0.27mmol)加えて、N2ガスで置換した後、dry−THFを5ml加えた。その後、氷浴下でDIBAL/Hexane(1M)溶液を2.7ml加え、三時間半還流した。還流後、加熱を止め、氷浴下でロッシェル塩飽和水溶液をゆっくり加えてクエンチし、セライト濾過をした。その後、クロロホルムで抽出し、重曹水、水、食塩水で洗浄した後、減圧濃縮し、乾燥させた。クロロホルム/ヘキサンで再結晶させ、精製して、N保護ピロロインドール誘導体7aを得た。収率は11%であった。
実施例5
反応容器にベンゾジピロリドン誘導体3を341mg(1.01mmol)とDMAPを264mg(2.2mmol)加えて、N2ガス置換した後、dry−pyridineを10ml加えた。その後、TsCl419mg(2.2mmol)をpyridineに溶かして1M溶液にして加え、三時間攪拌した。その後、1MHClを加えてクエンチして、塩化メチレンで抽出、水、食塩水で洗浄した後、減圧濃縮し、乾燥させた。その後、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;塩化メチレン)で精製してN保護ベンゾジピロリドン誘導体6bを得た。収率は8%であった。
本発明のボラジアジン系色素は、近赤外吸収色素として、近赤外線を吸収・カットする機能を有する半導体受光素子用の光学フィルター;省エネルギー用に熱線を遮断する近赤外線吸収フィルムや近赤外線吸収板;セキュリティーインクや不可視バーコードインクとしての情報表示材料;近赤外光を利用した太陽電池用色素;プラズマディスプレイパネル(PDP)やCCD用の赤外線カットフィルター;レーザー光を利用した熱変換材料として、レーザー製版、熱転写記録、リライタブル感熱、レーザー溶着、樹脂の熱硬化用の近赤外線吸収材料;サングラス等の保護眼鏡用材料;等に用いることができる。

Claims (4)

  1. 下記式(1)又は(2)で表されることを特徴とするボラジアジン系色素。
    [式(1)及び式(2)中、環Aは、R3又はR4に結合する炭素原子と、この炭素原子に結合する窒素原子を含む置換基を有していてもよい含窒素五員もしくは六員単環式複素環又はこの単環式複素環を含む縮合環、R1及びR2はそれぞれ置換基を有しても良い有機基、R3及びR4はそれぞれN又はCR5を表す。ここで前記R5は、水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、チオシアネート基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基又は前記有機基である。]
  2. 前記R1及びR2のうち少なくとも一方が環式炭化水素基である請求項1に記載のボラジアジン系色素。
  3. 前記R3及びR4はそれぞれN又はCR5であり、前記R5が、シアノ基である請求項1又は2に記載のボラジアジン系色素。
  4. 前記環式炭化水素基がフェニル基である請求項2又は3に記載のボラジアジン系色素。
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CN106117215A (zh) * 2016-07-11 2016-11-16 复旦大学 一类含有二吡咯酮并苯的电致变色材料及其制备方法和应用

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