JP2015037354A - 集合住宅共用部分の電力供給装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 電力系統停電時に集合住宅共用部分の負荷設備を長期運用する。
【解決手段】 電力供給装置は、集合住宅共用部分1の負荷設備L1〜L14に、太陽光発電装置3、風力発電装置5と、蓄電池7用のインバータ8を接続してなる回路9を、交流切替スイッチ12と配電盤11を介して電力系統10に接続し、更に、電力制御監視装置2を備えた構成とする。電力系統10の停電時に、蓄電池7のSOCが低下傾向にある場合は、電力制御監視装置2により、予め設定されている各負荷設備L1〜L14の稼働、運用の優先度が低いものから順に電力の遮断を行わせる。優先度が最も高い負荷設備L1〜L3に対する電力の遮断は、蓄電池7のSOCが、インバータ8の待機時損失電力と、太陽光発電装置3による発電が再開されるまでの待機時間との積の値よりも大きい状態で行わせることにより、インバータ8の待機状態からの復帰を確実に行わせる。
【選択図】図1
【解決手段】 電力供給装置は、集合住宅共用部分1の負荷設備L1〜L14に、太陽光発電装置3、風力発電装置5と、蓄電池7用のインバータ8を接続してなる回路9を、交流切替スイッチ12と配電盤11を介して電力系統10に接続し、更に、電力制御監視装置2を備えた構成とする。電力系統10の停電時に、蓄電池7のSOCが低下傾向にある場合は、電力制御監視装置2により、予め設定されている各負荷設備L1〜L14の稼働、運用の優先度が低いものから順に電力の遮断を行わせる。優先度が最も高い負荷設備L1〜L3に対する電力の遮断は、蓄電池7のSOCが、インバータ8の待機時損失電力と、太陽光発電装置3による発電が再開されるまでの待機時間との積の値よりも大きい状態で行わせることにより、インバータ8の待機状態からの復帰を確実に行わせる。
【選択図】図1
Description
本発明は、集合住宅の共用部分に設けられている施設管理及び維持用の各種の負荷設備に電力供給を行うための集合住宅共用部分の電力供給装置に関するものである。
一般に、集合住宅の共用部分には、施設管理及び維持のために、種々の負荷設備(電力機器)が設けられている。
前記集合住宅共用部分の各負荷設備については、停電時、特に、災害に伴われる停電時にも最低限の施設管理と維持を行い、更に、住民の移動や災害時の避難に備えるために、共用部分のエレベータや、通路の照明設備、集合住宅内で災害情報等の伝達を行うための情報伝達設備、給水ポンプ、セキュリティ設備等について、緊急時に特に必要とされないその他の負荷設備に比して優先的に稼働させることが望まれる。
そのために、集合住宅の共用部分の各負荷設備については、電力系統(系統電源)と連系可能な単数又は複数の分散型電源としてのガスコジェネレーション装置と、蓄電池を備えてなる電力供給装置とを接続した構成とすることが提案されている。更に、かかる構成については、電力系統の停電時には、前記蓄電池及びガスコジェネレーション装置からの給電能力の範囲内で、予め優先度が定めてある各負荷設備に対し、優先度の順序に従って給電を行うようにすることが考えられている(たとえば、特許文献1参照)
ところで、近年では、分散型電源の一つとして、太陽光発電装置や風力発電装置のような自然エネルギー(再生可能エネルギー)を利用して発電を行う形式の分散型電源が用いられるようになってきている。
この種の自然エネルギー利用の分散型電源を備えた電力供給設備としては、たとえば、太陽光発電装置(太陽電池)に接続されたパワーコンディショナと、蓄電池に接続されたインバータとを、電力系統の停電時にも稼働させることが望まれる重要な負荷(負荷設備)に対して並列に接続した回路を構成することが提案されている。該回路は、電力系統(商用電源)に、交流切替スイッチ(ACSW)を介して接続されている。更に、前記交流切替スイッチと電力系統との間には、非常用発電機を接続した構成のものが提案されている。
かかる構成によれば、電力系統に停電が生じた際は、前記非常用発電機の運転による発電と、前記太陽光発電装置による発電と、蓄電池の充放電により、前記重要な負荷への電力供給が継続できるとされている(たとえば、特許文献2参照)。
なお、太陽光発電装置や風力発電装置等の自然エネルギーを利用して発電を行う形式の分散型電源を、住宅等における負荷設備に接続すると共に、電力系統と連系させるようにした構成の電力供給設備については、太陽光発電装置や風力発電装置の気象条件と発電に関する実績データと、気象データと、負荷設備の電力需要に関する実績のデータとを基に、蓄電池の充放電や、電力系統との間での買電及び売電の計画を含む電力需要と供給の計画を立てて、前記負荷設備への電力供給を適宜行うことが考えられている。
ところが、前記特許文献1に示されたものは、電力系統の停電時に、ガスコジェネレーション装置の運転により発電される電力が、蓄電池から放電される電力と共に、集合住宅共用部分の優先度に応じた電力機器へ供給されるようにしてある。そのため、該特許文献1に示されたものでは、前記停電が災害と共に生じている場合等で、燃料の補給が滞ると、該燃料が枯渇した時点(燃料切れになる時点)で前記ガスコジェネレーション装置の運転が停止されるために、前記集合住宅の共用部分における各負荷設備の稼働を継続させることができなくなってしまう。
なお、特許文献2には、前記非常用発電機の燃料が枯渇して運転停止に至る場合であっても、前記重要な負荷への電力供給は、太陽光発電装置による発電と蓄電池が蓄電状態であれば継続されるという考えが示されてはいるが、その場合の電力供給の制御手法に関する具体的な記載はない。
そこで、本発明は、集合住宅の共用部分の負荷設備について、電力系統に停電が生じた状況の下でも、該負荷設備を、インバータを介して接続されている蓄電池、及び、パワーコンディショナを介して接続されている太陽光発電装置より供給される電力により長期に亘り稼働、運用できるようにするための集合住宅共用部分の電力供給装置を提供しようとするものである。
本発明は、前記課題を解決するために、請求項1に対応して、集合住宅の共用部分に設けてある負荷設備に、太陽光発電装置に接続したパワーコンディショナと、蓄電池に接続したインバータとを並列に接続した回路を備え、且つ該回路を、交流切替スイッチを介して電力系統に接続し、更に、電力制御監視装置を備え、且つ該電力制御監視装置は、前記電力系統による電力供給状態を監視する機能を有する電力系統監視部と、前記太陽光発電装置による太陽光発電出力を監視する機能を有する太陽光発電出力監視部と、前記集合住宅共用部分の各負荷設備について、蓄電池の充電率を基準として電力を遮断するための遮断指令を発するための設定値と、蓄電池の充電率を基準として電力を再投入するための投入指令を発するための設定値とを、前記電力系統の停電時における各負荷設備の稼働や運用の優先度の順位に応じた順序で設定するための停電時負荷制御設定記憶部と、前記蓄電池の充電率を監視する機能を有する蓄電池SOC監視部とを備えてなる構成とし、更に、該電力制御監視装置は、前記電力系統監視部により電力系統の停電が検出されている状況の下で、前記蓄電池SOC監視部により検出される前記蓄電池の充電率の値が、前記停電時負荷制御設定記憶部に負荷設備ごとに設定してある遮断指令を発するための設定値に達すると、対応する負荷設備用のコンタクタに対して、遮断指令を与え、又、前記蓄電池SOC監視部により検出される前記蓄電池の充電率の値が、前記停電時負荷制御設定記憶部に負荷設備ごとに設定してある投入指令を発するための設定値に達すると、対応する負荷設備用のコンタクタに対して、投入指令を発する機能を有する構成を有する集合住宅共用部分の電力供給装置とする。
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)請求項1に示した構成を有する集合住宅共用部分の電力供給装置によれば、電力系統の停電時に、蓄電池の充電率が低下する傾向の時には、集合住宅共用部分の負荷設備について、稼働や運用の優先度の低い負荷設備から順に、電力供給を停止させることができるため、稼働や運用の優先度が高い負荷設備に対しては、より長い時間、電力供給を行うことができる。
(2)蓄電池の充電率が更に低下するときには、すべての負荷設備に対する電力供給を停止させてインバータを待機状態とさせるが、このインバータの待機状態への移行は、該待機状態におけるインバータが次に太陽光発電装置による出力が再開される時間までの間に消費する電力以上の電力が蓄電池に残存している状態で行わせるようにしてあるため、太陽光発電装置による出力が再開されるときに、前記インバータを待機状態から確実に復帰させることができる。
(3)したがって、電力系統の停電時において、集合住宅共用部分の負荷設備を、途中で一時的に電力供給を停止させることがあるとしても、蓄電池や太陽光発電装置より供給される電力により、長期に亘り稼働、運用することができる。
(1)請求項1に示した構成を有する集合住宅共用部分の電力供給装置によれば、電力系統の停電時に、蓄電池の充電率が低下する傾向の時には、集合住宅共用部分の負荷設備について、稼働や運用の優先度の低い負荷設備から順に、電力供給を停止させることができるため、稼働や運用の優先度が高い負荷設備に対しては、より長い時間、電力供給を行うことができる。
(2)蓄電池の充電率が更に低下するときには、すべての負荷設備に対する電力供給を停止させてインバータを待機状態とさせるが、このインバータの待機状態への移行は、該待機状態におけるインバータが次に太陽光発電装置による出力が再開される時間までの間に消費する電力以上の電力が蓄電池に残存している状態で行わせるようにしてあるため、太陽光発電装置による出力が再開されるときに、前記インバータを待機状態から確実に復帰させることができる。
(3)したがって、電力系統の停電時において、集合住宅共用部分の負荷設備を、途中で一時的に電力供給を停止させることがあるとしても、蓄電池や太陽光発電装置より供給される電力により、長期に亘り稼働、運用することができる。
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の集合住宅共用部分の電力供給装置の実施の一形態を示すものである。
本実施の形態では、本発明の集合住宅共用部分の電力供給装置(以下、単に電力供給装置と云う)を、集合住宅共用部分1の一例として、以下の表1に示す如き負荷設備L1〜L14を備えた構成の集合住宅共用部分1に適用する場合の例について示す。
前記集合住宅共用部分1の各負荷設備L1〜L14は、図1に示すように、電力制御監視装置2からの制御指令に応じて該負荷設備L1〜L14ごとに投入(通電)と遮断が個別に切替操作されるコンタクタ(スイッチ)C1〜C14を介して、並列に接続されている。なお、図1では、図示する便宜上、負荷設備L4〜L12と、それに対応するコンタクタC4〜C12の記載は省略してある。
更に、本発明の電力供給装置は、図1に示すように、前記集合住宅共用部分1の各負荷設備L1〜L14に対し、太陽光発電装置3に接続されたパワーコンディショナ4と、風力発電装置5に接続されたパワーコンディショナ6と、蓄電池7に接続されたAC−DCインバータ(以下、単にインバータと記す)8が、並列に接続された回路9が構成されている。
前記回路9は、電力系統10に接続してある配電盤11に対し、交流切替スイッチ(ACSW)12を介して接続されて、系統連系されるようにしてある。
これにより、前記回路9では、太陽光発電装置3により発電されてパワーコンディショナ4を介して出力される太陽光発電出力、及び、風力発電装置5により発電されてパワーコンディショナ6を介して出力される風力発電出力と、前記蓄電池7よりインバータ8を介して放電される電力と、前記電力系統10より配電盤11と交流切替スイッチ12を経て買電(受電)する電力が、適宜選択されて、あるいは、適宜組み合わされて、前記集合住宅共用部分1の各負荷設備L1〜L14に供給されるようにしてある。
又、前記蓄電池7は、前記太陽光発電出力及び風力発電出力と、前記と同様に電力系統10から買電する電力により充電できるようにしてある。
更に、前記太陽光発電出力及び風力発電出力が、前記集合住宅共用部分1の各負荷設備L1〜L14での消費分を上回る場合は、余剰電力が生じる。この場合、前記余剰電力は、前記電力系統10へ交流切替スイッチ12と配電盤11を経て逆潮流させて売電することができるようにしてある。なお、この売電の際は、前記インバータ8では、蓄電池7を遮断して、該蓄電池7の充放電を行わせないようにしてあるものとする。
前記交流切替スイッチ12は、前記電力制御監視装置2からの制御指令に応じて、前記回路9側と電力系統10との間での買電量と売電量が制御されるようにしてあるものとする。更に、該交流切替スイッチ12は、前記電力系統10に停電が生じたときには、前記電力制御監視装置2からの指令に基づいて、直ちに前記回路9を、電力系統10より切り離すようにする機能が備えられているものとする。
なお、図示してないが、前記集合住宅の専有部分となる各住宅に設けられている一般負荷は、前記電力系統10に接続された配電盤11の下流側に接続される構成とすればよい。
以下、前記電力制御監視装置2の機能の説明に即して、本発明の電力供給装置による処理について説明する。
前記電力制御監視装置2には、電力系統監視部13と、太陽光発電出力監視部14と、風力発電出力監視部15と、停電時負荷制御設定記憶部16と、蓄電池SOC監視部17が備えられている。
前記電力系統監視部13は、電力系統10による電力供給状態を監視する機能を有するものである。該電力系統監視部13により前記電力系統10の停電による電力供給の停止が検出されると、前記電力制御監視装置2は、直ちに前記交流切替スイッチ12に、前記回路9を、前記電力系統10より切り離すための指令が発せられるようにしてある。又、前記電力系統監視部13により前記電力系統10の停電状態からの復帰が検出されると、前記電力制御監視装置2は、前記交流切替スイッチ12に、前記回路9の前記電力系統10に対する連系を回復させる指令が発せられるようにしてある。
前記太陽光発電出力監視部14は、前記太陽光発電装置3に接続されたパワーコンディショナ4を介して太陽光発電出力を監視する機能を有するものである。
前記風力発電出力監視部15は、前記風力発電装置5に接続されたパワーコンディショナ6を介して風力発電出力を監視する機能を有するものである。
前記停電時負荷制御設定記憶部16は、前記集合住宅共用部分1の各負荷設備L1〜L14について、前記表1に示す如き「負荷遮断時のSOC[%]」を設定するためのものである。該「負荷遮断時のSOC[%]」は、電力系統10に停電が生じている状況の下で、個々の負荷設備L1〜L14に稼働や運用が望まれる優先度(必要性)に応じて、蓄電池7の充電率(電池残量とも称す、以下、SOC(State Of Charge)と記す)がどの程度低下するまでそれぞれの負荷設備L1〜L14を稼働あるいは運用させるかという点について設定された値である。
たとえば、前記各負荷設備L1〜L14のうち、たとえ電力系統10の停電した状況下においても防犯対策は非常に重要であることから、警報装置、防犯カメラ、インターホン等のセキュリティシステムL1、及び、エントランスの自動ドアL2は、前記「負荷遮断時のSOC[%]」が10%に設定されている。
又、前記電力系統10の停電時であっても、災害に関する情報の伝達手段の確保は非常に重要なため、館内放送設備L3は、前記「負荷遮断時のSOC[%]」が10%に設定されている。
次に、前記集合住宅共用部分1自体の管理の重要性に鑑みて運用が所望される管理室の照明設備L4と、外部との情報伝達を行う手段の確保の重要性に鑑みて通電状態とすることが所望される、主として携帯電話の充電用に用いることを想定した共用部分におけるコンセント(15Aのコンセントを一口)L5と、各住宅における水の確保の重要性に鑑みて稼働が所望される給水ポンプL10については、前記「負荷遮断時のSOC[%]」が15%に設定されている。
次いで、住民の移動や避難が必要とされる可能性がある点に鑑みて、1階共用廊下の照明設備L6と、1階を除く各階共用廊下の床面を1ルクス以上の照度で照明するための照明設備L7と、集合住宅共用部分1に複数基のエレベータとして、たとえば、2基のエレベータが設けられている場合における第1のエレベータL12とについては、前記「負荷遮断時のSOC[%]」が20%に設定されている。
更に、前記集合住宅共用部分1の環境をできるだけ良好に保持できるようにするという観点から考えて、前記照明に関する負荷設備L4,L6,L7以外の共用部分の照明設備L8と、前記コンセントL5以外の共用部分のコンセントL9は、前記「負荷遮断時のSOC[%]」が25%に設定されている。又、共用部分の換気ファンL11は、前記「負荷遮断時のSOC[%]」が30%に設定されるようにしてある。
前記集合住宅共用部分1の各負荷設備L1〜L14のうち、残る第2のエレベータL13と、共用部分の空調設備L14は、前記電力系統10の停電時には、稼働や運用が特に必要とされるものではなく、電力に余裕がある場合にのみ運用することが望まれるものであることから、前記「負荷遮断時のSOC[%]」は80%に設定されるようにしてある。
なお、前記停電時負荷制御設定記憶部16にて、「負荷遮断時のSOC[%]」の最小設定値が10%とされているのは、以下の理由による。
すなわち、前記蓄電池7に接続してあるインバータ8は、前記電力系統10が停電している状況下にて、該蓄電池7より前記回路9に接続されている各負荷設備L1〜L14への電力供給を停止させるようにした待機状態であっても、電力の損失が生じる。
したがって、前記待機状態のインバータ8により消費される電力量は、次式で算出される。
(インバータ8の単位時間当たりの待機時損失電力)×(待機状態の時間) …(1)
ところで、前記太陽光発電装置3と風力発電装置5のうち、太陽光発電装置3は、日照により、毎日の昼間は或る程度の出力が安定して得られるものであることから、該太陽光発電装置3を主となる発電源として考えることにする。
かかる太陽光発電装置3では、日照がない夕方6時から翌朝6時までの約12時間の間は、出力が得られない。
そのために、前記太陽光発電装置3による出力が得られない間は、前記インバータ8を待機状態とさせて蓄電池7から各負荷設備L1〜L14への電力供給をすべて停止させた状態としても、該インバータ8の待機時損失電力は、前記蓄電池7からの放電によって賄う必要がある。
ところで、万一、前記インバータ8の待機時損失電力による電力消費によって、前記蓄電池7が完全放電した場合は、朝になって前記太陽光発電装置3による出力が再開されても、前記インバータ8を待機状態から再起動(復帰)させることはできなくなる。よって、この場合は、前記蓄電池7の充放電の再開や、蓄電池7から各負荷設備L1〜L14への電力供給を再開させることができなくなってしまう。
そこで、日照がない間(前記太陽光発電装置3による出力が得られない間)の前記インバータ8の待機中に消費される電力を、前記蓄電池7からの放電によって確実に賄うことができるように、前記「負荷遮断時のSOC[%]」の最小設定値は、次式によって算出される値よりも大きい値に設定されるようにしてある。
{(インバータ8の単位時間当たりの待機時損失電力)×(待機状態の時間)}/(蓄電池の容量)×100[%] …(2)
ここで、現在、一般に用いられている蓄電池7の容量と、該蓄電池7に接続するインバータ8との組み合わせについて考慮する。たとえば、蓄電池7の容量が20kWhである場合は、該蓄電池7に組み合わせて用いられるインバータ8では、前記太陽光発電装置3からの出力が望めない時間である前記約12時間分の待機中に消費される電力が、2kWhよりもやや小さい値になる。よって、この場合は、前記「負荷遮断時のSOC[%]」の最小設定値は、10%に設定すればよいことになる。
同様に、蓄電池7の容量が30kWhである場合は、該蓄電池7に組み合わせて用いられるインバータ8では、前記太陽光発電装置3からの出力が望めない時間である約12時間分の待機中に消費される電力が、3kWhよりもやや小さい値となるため、この場合も、前記「負荷遮断時のSOC[%]」の最小設定値は、10%に設定すればよいことになる。
以上のことから、本実施の形態では、前記「負荷遮断時のSOC[%]」の最小設定値は10%に設定させてある。これにより、朝になって太陽光発電装置3による出力が再開されると、前記インバータ8は、待機状態から再起動(復帰)させられて、蓄電池7の充放電を再開させることができるようにしてある。なお、前記インバータ8は、無負荷で運転している場合にも損失が常に発生するものであるため、その無負荷運転時の損失以上の発電量が確保されていないと、該インバータ8を再起動させても、蓄電池7の電力が無駄に消費されることになる。したがって、本発明では、前記インバータ8の再起動は、太陽光発電装置3の出力(発電量)が、該インバータ8の無負荷運転時の損失以上の電力となる状態が30秒以上継続するという条件の下で行うようにしてあるものとする。
なお、以上の説明から明らかなように、前記「負荷遮断時のSOC[%]」の最小設定値として設定している10%という値は、現在一般的に用いられている蓄電池7とインバータ8の組み合わせに依存して定められているものである。したがって、蓄電池7の容量と、該蓄電池7に組み合わせて用いられるインバータ8の待機時損失電力との関連性が前記したものから変化する場合には、前記「負荷遮断時のSOC[%]」の最小設定値は、前記式(2)で算出される値よりも大きい値となるようにされていれば、10%以外の値に設定されていてもよいことは勿論である。
又、厳密には、季節ごとに日の出から日の入りまでの時間は変化するので、その変化に応じて前記式(2)における「待機状態の時間」の値を変化させるようにして、前記「負荷遮断時のSOC[%]」の最小設定値として設定すべき値を求めるようにしてよいことは勿論である。
前記停電時負荷制御設定記憶部16では、更に、前記各負荷設備L1〜L14のそれぞれについて、前記表1に示すように、蓄電池7のSOCがどの程度まで上昇したら該各負荷設備L1〜L14へ電力を再投入(電力供給を再開)させるかというに点についての設定値として、「負荷再投入時のSOC[%]」が設定されるようにしてある。
前記「負荷再投入時のSOC[%]」の設定値は、前記表1では、各負荷設備L1〜L14のそれぞれの「負荷遮断時のSOC[%]」の値に対し、5%ずつ増した値に設定されている。これにより、本発明の電力供給装置では、後述するように、蓄電池7のSOCが前記表1に示した「負荷遮断時のSOC[%]」の値まで低下するときと、「負荷再投入時のSOC[%]」の値まで増加するときに,前記電力制御監視装置2からの指令を基に各負荷設備L1〜L14に対応する各コンタクタC1〜C14にて実施させる遮断と投入(再投入)の処理について、頻繁な切り替えを防止するためのヒステリシスを持たせることができるようにしてある。
前記蓄電池SOC監視部17は、前記インバータ8を介して前記蓄電池7のSOCを監視する機能を有するものである。
更に、前記電力制御監視装置2は、前記電力系統監視部13により電力系統10の停電が検出されている状態で、前記蓄電池SOC監視部17により検出される前記蓄電池7のSOCの実測値の変化に応じて、各負荷設備L1〜L14に対応する各コンタクタC1〜C14に遮断と投入(再投入)の指令を与える機能を備える。該機能では、前記蓄電池7のSOCの実測値が徐々に低下して、前記停電時負荷制御設定記憶部16にて前記表1の如く負荷設備L1〜L14ごとに設定されている「負荷遮断時のSOC[%]」の設定値に達する場合は、該各負荷設備L1〜L14に対応するコンタクタC1〜C14に対して、遮断指令が与えられるようにしてある。一方、前記蓄電池7のSOCの実測値が徐々に増加して、前記停電時負荷制御設定記憶部16にて前記表1の如く負荷設備L1〜L14ごとに設定されている「負荷再投入時のSOC[%]」の設定値に達すると、該各負荷設備L1〜L14に対応するコンタクタC1〜C14に対して、投入指令が与えられるようにしてある。
前記電力制御監視装置2には、更に、電力系統10が平常状態(停電を生じていない状態)の場合に、従来と同様に、太陽光発電装置3や風力発電装置5の気象条件と発電に関する実績データと、気象予報データと、前記集合住宅共用部分1の各負荷設備L1〜L14の電力需要に関する実績のデータとを基に、前記蓄電池7の充放電や、前記回路9と電力系統10との間で買電と売電の計画を含む電力需要と供給の計画を立てて、前記各負荷設備L1〜L14への電力供給を適宜制御する機能を備えるようにしてもよい。
以上の構成としてある本発明の電力供給装置によれば、電力系統10が平常状態(停電していない状態)のときには、太陽光発電装置3や風力発電装置5の出力と、蓄電池7の充放電と、電力系統10との間の売買電を適宜組み合わせて、前記回路9に接続されている集合住宅共用部分1の各負荷設備L1〜L14への電力供給が行われる。
その状態で、前記電力系統10に停電が生じると、前記電力制御監視装置2では、電力系統監視部13により該停電が直ちに検出され、該電力制御監視装置2からの指令に基づいて、前記交流切替スイッチ12にて、前記回路9が、前記電力系統10より切り離される。
これにより、前記集合住宅共用部分1の各負荷設備L1〜L14に供給される電力は、前記回路9に接続されている前記太陽光発電装置3及び風力発電装置5の出力と、蓄電池7の放電により賄われるようになる。なお、前記太陽光発電装置3や風力発電装置5の出力について、対応するコンタクタC1〜C14が投入状態になっている負荷設備L1〜L14での電力消費を上回る余剰分が生じる場合は、該余剰分の電力は、平常時と同様に、前記蓄電池7の充電に使用される。
一方、夜間、あるいは、昼間であっても天候の影響により日射が少ない等の要因により前記太陽光発電装置3や風力発電装置5の出力では、対応するコンタクタC1〜C14が投入状態とされている負荷設備L1〜L14の電力需要を賄いきれない場合には、その不足分の電力が、前記蓄電池7の放電により賄われるようになる。よって、この場合は、前記蓄電池7のSOCが徐々に低下するようになる。
前記のようにして前記蓄電池7のSOCが徐々に低下する際、該SOCが80%に達した場合は、前記電力制御監視装置2より、前記第2のエレベータL13と、前記共用部分の空調設備L14に対応するコンタクタC13とC14へ遮断指令が与えられる。これにより、前記第2のエレベータL13と、共用部分の空調設備L14への電力供給は停止される。なお、第2エレベータL13は、前記のようにして電力供給が停止された場合には、該第2のエレベータL13自体に装備されている専用の蓄電池により、最寄りの階まで移動して扉を開いた状態にすることができるようにしてあるものとする(後述する第1のエレベータL12への電力供給を停止する場合も同様)。
その後、前記蓄電池7のSOCが更に低下して、該SOCが30%になる場合は、前記電力制御監視装置2より、前記共用部分の換気ファンL11に対応するコンタクタC11へ遮断指令が与えられて、該共用部分の換気ファンL11への電力供給が停止される。
前記蓄電池7のSOCが更に低下して、該SOCが25%になる場合は、前記共用部分の照明設備L8と、前記共用部分のコンセントL9に対応するコンタクタC8とC9に対し、前記電力制御監視装置2より遮断指令が与えられて、該共用部分の照明設備L8とコンセントL9への電力供給が停止される。
前記蓄電池7のSOCが更に低下して、該SOCが20%になる場合は、前記1階の共用廊下の照明設備L6と、前記1階を除く各階の共用廊下の照明設備L7と、前記第1のエレベータL12に対応するコンタクタC6とC7とC12に対し、前記電力制御監視装置2より遮断指令が与えられて、該各階の共用廊下の照明設備L6,L7と、第1のエレベータL12への電力供給が停止される。
同様に、前記蓄電池7のSOCが更に低下して、該SOCが15%になる場合は、前記管理室の照明設備L4と、前記共用部分におけるコンセントL5と、前記給水ポンプL10に対応するコンタクタC4とC5とC10に対し、前記電力制御監視装置2より遮断指令が与えられて、該管理室の照明設備L4と、共用部分におけるコンセントL5と、給水ポンプL10への電力供給が停止される。
その後、前記蓄電池7のSOCが更に低下して、該SOCが10%になる場合は、前記セキュリティシステムL1と、前記エントランスの自動ドアL2と、前記館内放送設備L3に対応するコンタクタC1とC2とC3に対し、前記電力制御監視装置2より遮断指令が与えられて、該セキュリティシステムL1と、エントランスの自動ドアL2と、館内放送設備L3への電力供給が停止される。これにより、前記蓄電池7に接続されているインバータ8は、無負荷状態となることから、待機状態になる。
一方、朝になったり、天候の回復により前記太陽光発電装置3や風力発電装置5からの出力が開始されて、前記蓄電池7への充電が開始され、それに伴って徐々に増加する前記蓄電池7のSOCが、10%以下の状態から15%まで回復した場合は、前記電力制御監視装置2より、前記コンタクタC1とC2とC3に対して投入指令が与えられて、それぞれ対応する前記セキュリティシステムL1と、エントランスの自動ドアL2と、館内放送設備L3への電力供給が再開される。
同様に、前記蓄電池7のSOCが、15%以下の状態から20%まで回復した場合は、前記電力制御監視装置2より、前記コンタクタC4とC5とC10に対して投入指令が与えられて、それぞれ対応する前記管理室の照明設備L4と、共用部分におけるコンセントL5と、給水ポンプL10への電力供給が再開される。
又、前記蓄電池7のSOCが、20%以下の状態から25%まで回復した場合は、前記電力制御監視装置2より、前記コンタクタC6とC7とC12に対して投入指令が与えられて、それぞれ対応する前記各階の共用廊下の照明設備L6,L7と、第1のエレベータL12への電力供給が再開される。
更に、前記蓄電池7のSOCが、25%以下の状態から30%まで回復した場合は、前記電力制御監視装置2より、前記コンタクタC8とC9に対して投入指令が与えられて、それぞれ対応する前記共用部分の照明設備L8と、共用部分のコンセントL9への電力供給が再開される。
前記蓄電池7のSOCが、30%以下の状態から35%まで回復した場合は、前記電力制御監視装置2より、前記コンタクタC11へ投入指令が与えられて、前記共用部分の換気ファンL11への電力供給が再開される。
前記蓄電池7のSOCが、更に、80%以下の状態から85%まで回復した場合は、前記電力制御監視装置2より、前記コンタクタC13とC14へ投入指令が与えられて、前記第2のエレベータL13と、共用部分の空調設備L14への電力供給が再開される。
このように、本発明の電力供給装置によれば、電力系統10の停電時に、蓄電池7のSOCが低下する傾向の時には、集合住宅共用部分1の各負荷設備L1〜L14について、非常時における稼働や運用の優先度の低いものから順に、電力供給が停止されることになり、非常時における稼働や運用の優先度が高いものに対しては、より長い時間、電力供給が行われることになる。更に、蓄電池7のSOCが更に低下するときには、すべての負荷設備L1〜L14に対する電力供給が停止されてインバータ8が待機状態とされるが、この際、該待機状態のインバータ8が次に太陽光発電装置3による出力が再開されるまでの12時間の間に消費する電力以上の電力が蓄電池7に残った状態としてあるので、太陽光発電装置3による出力が再開されるときには、前記インバータ8は待機状態から確実に復帰されることになる。
したがって、本発明の電力供給装置では、電力系統10が停電した状況の下で、集合住宅共用部分1の各負荷設備L1〜L14を、途中で一時的に電力供給が停止されることがあるとしても、インバータ8を介して接続されている蓄電池7、及び、パワーコンディショナ4を介して接続されている太陽光発電装置3、更には、パワーコンディショナ6を介して接続されている風力発電装置5より供給される電力により、長期に亘り稼働、運用することができるようになる。
なお、本発明は、前記実施の形態にのみに限定されるものではなく、図1では、各負荷設備L1〜L14と、個別に対応する各コンタクタC1〜C14とを別体として示してあるが、該各コンタクタC1〜C14は、それぞれ対応する負荷設備L1〜L14に内蔵された構成とされていてもよい。
前記電力制御監視装置2は、図1では、図示する便宜上、電力系統監視部13と、太陽光発電出力監視部14と、風力発電出力監視部15と、停電時負荷制御設定記憶部16と、蓄電池SOC監視部17を分けて記載したが、それぞれについて前述した機能を果たすことができるようにしてあれば、個別の機器を備える必要はなく、たとえば、入出力装置を備えたコンピュータのような複数の処理が実施可能な機器に共通して実装させるようにすればよい。
本発明の電力供給装置の適用対象となる前記集合住宅共用部分1は、該集合住宅共用部分1の構造や設備に応じて、表1に示した負荷設備L1〜L14を必ずしもすべて備えている必要はなく、又、該L1〜L14として示した以外の負荷設備を備えた構成としてあってもよい。
又、集合住宅共用部分1の構造や設備に応じて、電力系統10の停電時に電力供給を行うことが望まれる負荷設備の優先度の順位は、前記表1の「負荷遮断時のSOC[%]」において示した優先度の順位より適宜変更してもよい。又、個々の負荷設備に関する前記「負荷遮断時のSOC[%]」の設定値は適宜変更してもよい。
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
1 集合住宅共用部分、2 電力制御監視装置、3 太陽光発電装置、4 パワーコンディショナ、7 蓄電池、8 インバータ、9 回路、10 電力系統、12 交流切替スイッチ、13 電力系統監視部、14 太陽光発電出力監視部、16 停電時負荷制御設定記憶部、17 蓄電池SOC監視部、L1〜L14 負荷設備、C1〜C14 コンタクタ
Claims (1)
- 集合住宅の共用部分に設けてある負荷設備に、太陽光発電装置に接続したパワーコンディショナと、蓄電池に接続したインバータとを並列に接続した回路を備え、且つ該回路を、交流切替スイッチを介して電力系統に接続し、
更に、電力制御監視装置を備え、
且つ該電力制御監視装置は、
前記電力系統による電力供給状態を監視する機能を有する電力系統監視部と、
前記太陽光発電装置による太陽光発電出力を監視する機能を有する太陽光発電出力監視部と、
前記集合住宅共用部分の各負荷設備について、蓄電池の充電率を基準として電力を遮断するための遮断指令を発するための設定値と、蓄電池の充電率を基準として電力を再投入するための投入指令を発するための設定値とを、前記電力系統の停電時における各負荷設備の稼働や運用の優先度の順位に応じた順序で設定するための停電時負荷制御設定記憶部と、
前記蓄電池の充電率を監視する機能を有する蓄電池SOC監視部とを備えてなる構成とし、
更に、該電力制御監視装置は、前記電力系統監視部により電力系統の停電が検出されている状況の下で、前記蓄電池SOC監視部により検出される前記蓄電池の充電率の値が、前記停電時負荷制御設定記憶部に負荷設備ごとに設定してある遮断指令を発するための設定値に達すると、対応する負荷設備用のコンタクタに対して、遮断指令を与え、又、前記蓄電池SOC監視部により検出される前記蓄電池の充電率の値が、前記停電時負荷制御設定記憶部に負荷設備ごとに設定してある投入指令を発するための設定値に達すると、対応する負荷設備用のコンタクタに対して、投入指令を発する機能を有する構成を有すること
を特徴とする集合住宅共用部分の電力供給装置。
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