JP2015033361A - 少なくとも2つのGBSSIと2つのSSIIaの酵素活性を欠損したコムギから調製された小麦粉を使用した糖を添加しない食品の製造方法 - Google Patents

少なくとも2つのGBSSIと2つのSSIIaの酵素活性を欠損したコムギから調製された小麦粉を使用した糖を添加しない食品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】パン等のベーカリー食品をはじめとするコムギ加工食品の食味・食感を向上させる新規な手段であって、大規模生産にも適した手段を提供すること。
【解決手段】GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を含む穀粉と、水と、前記穀粉に対し0%〜2%の量の糖類とを含む生地材料を混捏して生地を製造する混捏工程、並びに生地を28℃〜50℃で20分間〜120分間保温する保温工程を含む、コムギ加工食品の製造方法を提供した。
【効果】本発明によれば、特定の酵素欠損パターンを有するコムギ由来の小麦粉を用いて、従来のパン製造法におけるホイロのような穏やかな加温条件で混捏後の生地を加温することにより、生地中のマルトース含量を大いに高めることができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、少なくとも2つのGBSSIと2つのSSIIaの酵素活性を欠損したコムギに由来する小麦粉又はデンプンを使用し、糖の使用量を低減したコムギ加工食品の製造方法に関する。
デンプンは、グルコースがα-1,4結合で連なった直鎖状のアミロースとα-1,6結合を介して枝分かれ構造をもったアミロペクチンという2つの成分の混合物である。これら成分は種々の酵素の働きによって合成され、穀物においては種子の胚乳部分に蓄積される。
アミロースは、主に顆粒結合性澱粉合成酵素遺伝子にコードされる顆粒結合性澱粉合成酵素(Granule-Bound Starch Synthase; GBSS)によって合成され、コムギにおいては顆粒結合性澱粉合成酵素I(GBSSI)によって合成されている。異質6倍体である主要な普通系コムギの染色体には、同祖染色体であるA、B、Dの3つのゲノムが存在する。普通系コムギであれば、GBSSI遺伝子は3種類存在し(Wx-A1遺伝子、Wx-B1遺伝子、Wx-D1遺伝子; それぞれGBSSI-A1遺伝子、GBSSI-B1遺伝子、GBSSI-D1遺伝子といわれることもある)、それぞれ7A、4A、7D染色体上に存在する。これらの遺伝子から顆粒結合性澱粉合成酵素(GBSSI-A1、GBSSI-B1、GBSSI-D1)が発現している。ゲノムDNA上に生じた変異によりGBSSIの酵素活性が欠損した系統も存在する。例えば、公知のコムギ品種では、「ホクシン」がGBSSI-B1欠損型(アミロース含量がやや低い)、「チクゴイズミ」がGBSSI-A1、B1欠損型(アミロース含量が低い)、「はつもち」及び「もち乙女」がGBSSI全欠損型(モチ性、アミロース含量が極端に低い)である。GBSSIの欠損パターンを簡便に識別する方法としては、胚乳の各GBSSIタンパク質の有無を直接解析する方法や、ゲノムDNA配列を元にして調べる方法などが確立されている(例えば、特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照)。
一方、アミロペクチンは、複数の酵素の働きによって合成されている。この複数の酵素とは、(可溶性)澱粉合成酵素I型(Starch Synthase I; SSI)、(可溶性)澱粉合成酵素II型(Starch Synthase II; SSII)、(可溶性)澱粉合成酵素III型(Starch Synthase III; SSIII)、枝作り酵素(Branching enzyme; BE)、枝切り酵素(Debranching enzyme; DBE)などである。
コムギにおいて、アミロペクチンの分岐鎖合成に関わる酵素の1つとして知られる澱粉合成酵素IIa型(SSIIa)(SSIIa-A1、SSIIa-B1、SSIIa-D1)は、7A、7B、7D染色体上に存在する3種類のSSIIa遺伝子(SSIIa-A1遺伝子、SSIIa-B1遺伝子、SSIIa-D1遺伝子)によりコードされている。これらSSIIaに関しても、ゲノムDNA上に生じた変異により酵素活性が欠損した系統が存在し、公知のコムギ品種で例示すると、「Chosen57」がSSIIa-A1欠損型、「関東79号」がSSIIa-B1欠損型、「Turkey116」がSSIIa-D1欠損型である。SSIIaに関しても、欠損パターンを識別する方法が公知である(特許文献2、非特許文献4)。
デンプンは高度に結晶化した顆粒の形で植物に貯蔵されている。これに水分を加えて加熱することでデンプン粒は次第に膨潤し、ある一定の温度で結晶構造が崩れ糊状になる(糊化)。その後、冷却することで糊化デンプンは次第に粘性が増大しゲル化する。このようなデンプンの特性や、アミロースとアミロペクチンの含量比は、由来する植物種によって大きく異なる場合があることが知られている。
デンプンは植物における貯蔵物質で重要なエネルギー源であるとともに、ヒトにとっても重要なエネルギー源である。デンプンを摂取する際には、これを含む穀粒を加工し食品に利用するだけでなく、上記の膨潤や糊化の特性を利用し、増粘剤、保水剤、ゲル形成剤などの食品添加剤として使用される。一方、食品関連分野以外でも、糊やフィルムの原料として古くから利用されている。また、化学的、あるいは物理的に修飾を施した加工デンプンなどにも多くの需要がある。デンプンは貯蔵される器官(種子や塊茎)の重量の大部分を占めており、デンプン特性が変化すれば、これら器官を原料とした上記食品の食感、あるいはそのようなデンプンを使用した食品添加剤を加えた食品の加工性などに与える影響は大きいことから、多様な特性を持ったデンプンの開発に対する需要は高い。
前述したようにデンプンの特性は植物種によって大きく異なる場合がある。しかしながら、同一植物種内でのデンプンの多様性については、アミロース含量の違いによる物性の変化に負うところが大きい。例えば、GBSSIが全て野生型であるコムギのアミロース含量に比べて、ホクシン、チクゴイズミのアミロース含量は有意に低下し、うどん等麺用粉としての利用に優れているとされ、商業的にも広く栽培されている。また、イネやトウモロコシではアミロース含量が極端に低いモチ性デンプンを蓄積する系統が知られていたが、コムギでは中村ら(特許文献1)によって初めてモチコムギが育種され、通常のコムギを用いた食品に比べて独特の加工性や食感を有していることが知られている。
小麦デンプンにおいて、アミロース含量はデンプンの特性を現す指標の一つとしてよく議論されるが、アミロペクチンの構造については議論されることが比較的少ない。したがって、一般的に食品に使用されるコムギのデンプン特性の違いは主にアミロース含量の違いに起因するものに限られ、コムギデンプン特性における多様性は非常に限られたものとなっている。このため新たな特性をもったデンプンを蓄積するコムギを開発することができれば、従来とは異なった特徴を具える改良製品、あるいは新たな用途の開発が可能となることから、このようなコムギの開発は切に望まれている。
本願発明者らは、GBSSIとSSIIaの酵素活性制御により新たな特性のデンプンを蓄積するコムギを提供することを目的として、GBSSI-A1、GBSSI-B1、GBSSI-D1及びSSIIa-A1、SSIIa-B1、SSIIa-D1の6種の酵素の欠損の組み合わせ63通り(野生型を除く)のうちの特定の組み合わせで酵素活性を欠損したコムギ系統を作出し、デンプンの特性を解析した(特許文献3)。特許文献3には、GBSSI-A(-)B(+)D(-)/SSIIa-A(+)B(-)D(-)及びGBSSI-A(-)B(-)D(+)/SSIIa-A(+)B(-)D(-)という、2つのGBSSIと2つのSSIIaを欠損した2種類のコムギ系統を作出したことも記載されている。しかしながら、これら系統のデンプンの特性については、十分には検討されていない。また、3つのGBSSIのうちの2つを欠損し、かつ、3つのSSIIaのうちの2つを欠損した、特許文献3に記載された系統以外のコムギ系統については、その作出さえ報告されていない。
一方、製造工程の工夫によりコムギ加工食品の食味や食感を向上させる試みも古くから行なわれており、様々な手法が開発されている。例えば、パン等のベーカリー食品の分野では、ベーカリー食品の製造方法の一つとして湯種法が知られている(特許文献4、5)。湯種法では、材料として用いる小麦粉の一部に熱湯を加えて混捏して湯種生地を調製し、粗熱を除去した後、湯種生地に残りの小麦粉、イースト、常温の水、食塩、砂糖、脱脂粉乳、油脂及びその他の副材料を加えて混捏してベーカリー生地を作製し、これを用いてベーカリー食品を製造する。この湯種法によると、熱湯によりデンプンが糊化して、最終的に得られるベーカリー食品の食感がしっとり、もちもちとして、自然な甘みが加わり食味が向上することが知られている。
しかしながら、湯種法では通常熱湯が使用されるため、特に製パン工場等での大規模生産においては、燃料費の増大や作業現場での安全性の面で通常の製造方法と比べて不利である。原材料が高温にさらされるため、原材料中のタンパク質等の成分が熱により変性してしまうことも懸念される。
特開平6−125669号公報 特開2005−333832号公報 国際公開WO2006/118300号公報 特許第3167692号公報 特許第5178404号公報
Yamamori et. al., Theor. Appl. Genet (2000)101:21-29 Nakamura et. al., Genome (2002)45:1150-1156 Saito et. al., Mol. Breed. (2009)23:209-217 Shimbata et. al., Theor. Appl. Genet (2005)111:1072-1079
本発明は、パン等のベーカリー食品をはじめとするコムギ加工食品の食味・食感を向上させる新規な手段であって、大規模生産にも適した手段を提供することを目的とする。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギに由来する小麦粉が、従来の市販のコムギ品種等、異なる酵素欠損パターンを有するコムギに由来する小麦粉と比較して、混捏後の生地を穏やかに保温することにより非常に多くのマルトースを生地中に生成でき、生地材料として糖を使用しない場合でも、自然な甘みが加わり食味に優れ良好な食感を有するコムギ加工食品を製造できることを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を含む穀粉と、水と、前記穀粉に対し0%〜2%の量の糖類とを含む生地材料を混捏して生地を製造する混捏工程、並びに生地を28℃〜50℃で20分間〜120分間保温する保温工程を含む、コムギ加工食品の製造方法を提供する。また、本発明は、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物又は該収穫物を製粉して得られた小麦粉から分離されたデンプンと、穀粉と、水と、前記穀粉に対し0%〜2%の量の糖類とを含む生地材料を混捏して生地を製造する混捏工程、並びに生地を28℃〜50℃で20分間〜120分間保温する保温工程を含む、コムギ加工食品の製造方法を提供する。さらに、本発明は、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を含む穀粉と、水と、イーストと、前記穀粉に対し0%〜2%の量の糖類とを含む生地材料を混捏して生地を製造する混捏工程、生地を発酵させる発酵工程、並びに生地を28℃〜50℃で20分間〜120分間保温するホイロ工程を含む、イースト発酵食品の製造方法を提供する。さらに、本発明は、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物又は該収穫物を製粉して得られた小麦粉から分離されたデンプンと、穀粉と、水と、イーストと、前記穀粉に対し0%〜2%の量の糖類とを含む生地材料を混捏して生地を製造する混捏工程、生地を発酵させる発酵工程、並びに生地を28℃〜50℃で20分間〜120分間保温するホイロ工程を含む、イースト発酵食品の製造方法を提供する。さらに、本発明は、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を含む、糖の使用量を低減したコムギ加工食品の製造用の穀粉を提供する。さらに、本発明は、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉、又は前記収穫物若しくは前記小麦粉から分離されたデンプンを含む、糖の使用量を低減したコムギ加工食品の製造原料を提供する。
本発明によれば、特定の酵素欠損パターンを有するコムギ由来の小麦粉を用いて、従来のパン製造法におけるホイロのような穏やかな加温条件で混捏後の生地を加温することにより、生地中のマルトース含量を大いに高めることができる。湯種法のように生地を高温にさらすことがないため、タンパク質の変性を低減することができ、タンパク質の変性による食感への悪影響を抑えることができる。本発明の方法では、生地材料として糖を使用せずにコムギ加工食品を製造しても、食味・食感を損なうことなく、むしろ食味・食感に優れたコムギ加工食品を得ることができる。
各系統の小麦粉生地サンプルを製パンにおける発酵及びホイロを想定した処理条件に置き、生地中のマルトース含量を測定した結果である。 各系統の小麦粉中のβ-アミラーゼ活性を測定した結果である。 実施例で製造した食パンのクラム中のマルトース含量を測定した結果である。 実施例で製造した食パンの食味試験の結果である(弾力)。 実施例で製造した食パンの食味試験の結果である(粘り)。 実施例で製造した食パンの食味試験の結果である(モチモチ感)。 実施例で製造した食パンの食味試験の結果である(ソフトさ)。 実施例で製造した食パンの食味試験の結果である(しっとり感)。 実施例で製造した食パンの食味試験の結果である(甘さ)。 実施例で製造した食パンの食味試験の結果である(ぱさつき)。 実施例で製造した食パンの食味試験の結果である(香り)。
本発明において、「コムギ加工食品」は、小麦粉又はコムギデンプンを含む生地材料を混捏して得られる穀粉生地を少なくとも一部に用いた食品であれば特に限定されない。具体例としては、パン類、ピザ類、焼き菓子類を含むベーカリー食品;うどんや中華そば等の麺類;中華まん等の饅頭類;餃子、春巻き、焼売等の中華総菜類(皮に小麦粉生地を使用する)等を挙げることができる。また、食品材料として市販されるコムギ加工食品、例えばパイ生地、パン生地、クッキー生地等も本発明の範囲に包含される。とりわけ、本発明の方法で製造されるコムギ加工食品としては、生地材料としてイーストを使用し、イースト発酵を経て製造されるイースト発酵食品(パン類、ピザ類等のベーカリー食品の一部、及び饅頭類等)が好ましい。
本発明で用いるコムギ系統は、アミロースを合成する酵素GBSSI-A1, B1, D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、アミロペクチンの枝鎖を伸長させる酵素SSIIa-A1, B1, D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損した系統である。以下、本明細書において、2つのGBSSIと2つのSSIIaを欠損した系統を「2/2欠損体」、3つのGBSSIと2つのSSIIaを欠損した系統を「3/2欠損体」と呼ぶ。また、2/2欠損体及び3/2欠損体を総称して「2-3/2欠損体」と呼ぶことがある。
本発明では、2-3/2欠損体由来の小麦粉又はデンプンを使用し、砂糖(主にスクロース)等の糖材料の使用量を抑え、かつ、混捏後の生地を28℃〜50℃で保温する保温工程を行なうことを特徴とする。以下、本明細書において、2-3/2欠損体由来の小麦粉を用いる方法を「第1の方法」、2-3/2欠損体由来のデンプンを用いる方法を「第2の方法」と呼ぶ。
第1の方法で使用する生地の穀粉材料は、2-3/2欠損体由来の小麦粉のみであってもよいし、2-3/2欠損体由来の小麦粉に他の穀粉を配合したものであってもよい。他の穀粉とは、GBSSI及びSSIIaの欠損パターンが異なる他のコムギ系統(GBSSI及びSSIIaに欠損のない系統も包含される)に由来する小麦粉、又はコムギ以外の穀類から調製された穀粉(ライ麦粉、米粉、大豆粉など)であり得る。また、2-3/2欠損体由来の小麦粉は、2-3/2欠損体の複数の系統に由来する複数の小麦粉を混合して用いることができる。他の穀粉と混合して用いる場合、配合比率は特に限定されず、求める食味・食感、コムギ加工食品の種類や具体的用途等に応じて適宜選択することができる。通常、穀粉材料の10%程度以上、例えば20%程度以上、30%程度以上、又は50%程度以上が2-3/2欠損体由来の小麦粉となるような配合比率で用いれば、食味及び食感の向上という目的を達成できる。3/2欠損体由来の小麦粉には、他の穀粉と混合せず配合率100%でパンを製造した場合にボリュームが出にくくソフトさや口どけが不十分となることがあるが、この点を改善したい場合には、3/2欠損体由来の小麦粉に3/2欠損体以外の小麦粉(2/2欠損体由来の小麦粉、又は上記定義の通りの他の穀粉)を配合して用いればよい。3/2欠損体由来の小麦粉は、穀粉材料の50%程度以下、例えば20%程度以下の配合率で用いることとしてよい。
第2の方法では、2-3/2欠損体由来のデンプンを、小麦粉等の穀粉と組み合わせて用いる。穀粉、水、及び2-3/2欠損体由来のデンプンを含む生地材料を混捏し、混捏後の生地を保温する。下記実施例において具体的に示される通り、2/2欠損体及び3/2欠損体の小麦粉が生地中のマルトース含量を高めるという効果は、小麦粉に内在するβアミラーゼの活性の違いに起因しているのではなく、デンプンの性質の違いに起因している。従って、例えば生地の穀粉材料として通常の小麦粉を使用し、これに2-3/2欠損体由来のデンプンを加えて生地を混捏し保温することによっても、通常の小麦粉に内在するβアミラーゼの作用で2-3/2欠損体由来のデンプンが分解し、生地中に多量のマルトースが生成するので、第1の方法と同じ効果が得られる。
第2の方法で2-3/2欠損体由来のデンプンと組み合わせて用いる穀粉は、典型的には小麦粉であり、2-3/2欠損体ではないコムギ系統に由来する小麦粉を用いることができる。小麦粉以外の穀類から調製された穀粉(例えば、ライ麦粉、大豆粉、米粉など)をさらに含んでいてもよい。また、内在するβアミラーゼ活性が小麦粉と概ね同程度以上の穀粉であれば、小麦粉に代えて用いることも可能である。そのような、小麦粉と同程度以上の内在βアミラーゼ活性を有する穀粉としては、ライ麦粉、大豆粉、米粉等を挙げることができる。
第2の方法において、2-3/2欠損体のデンプンは、穀粉に対し3〜400%程度の量で生地材料に配合すればよい。1種類の2-3/2欠損体系統に由来する1種類のデンプンのみを用いてもよいし、複数の系統に由来する複数の2-3/2欠損体デンプンを混合して用いてもよい。複数種類のデンプンを混合して用いる場合、合計の使用量が上記の範囲内であればよい。
以下、第1の方法及び第2の方法で共通する事項について説明する。
生地材料としては、穀粉材料、コムギデンプン及び水以外の材料を用いてもよい。例えば、イースト発酵食品を製造する場合には、生地材料としてイーストも使用する。ただし、砂糖(主にスクロース)などの糖を使用する場合、穀粉材料に対し2%以下の使用量とする。糖の使用量は、例えば0〜1%であり得る。従来の製パン方法、例えば食パンの製造においては、砂糖の使用量は穀粉材料に対し4〜6%程度である。本発明では、このような従来法と比べて糖の使用量が低減されることを1つの特徴とする。また、生地材料として糖を使用する場合、マルトース以外の糖を用いることが好ましい。本発明においては、生地材料として糖を使用しないことがより好ましい。本発明では、混捏後の生地が保温工程を経ることで2-3/2欠損体由来の小麦粉(より具体的には小麦粉中のデンプン)から生地中に多量のマルトースが生成されるので、糖不使用でも食味・食感が損なわれることなく、むしろ、2-3/2欠損体以外の小麦粉を用いて一般的な方法で製造されたコムギ加工食品よりも食味及び食感に優れたコムギ加工食品を製造することができる。なお、本発明における「糖」とは、単糖又は二糖である。
混捏工程は、生地材料が上記の条件を満たす限り、従来通りの方法で実施することができる。例えば、一般的なパン製造法においては、捏ね上げ温度が27℃程度になるように常温で混捏を行なうが、本発明の方法によりパンを製造する場合には同様に混捏工程を実施してよい。
混捏後の生地を保温工程に付すことで、上述の通り、2-3/2欠損体由来の小麦粉(より具体的には小麦粉中のデンプン)から生地中に多くのマルトースが生成され、生地中のマルトース含量が上昇する。保温工程の温度は28℃〜50℃、好ましくは35℃〜45℃であり、例えば37℃〜42℃程度であり得る。保温工程における保温時間は20分間〜120分間、例えば30分間〜60分間である。保温時の湿度は特に限定されず、最終的に製造するコムギ加工食品の種類に応じて適宜設定することができるが、通常は70%〜90%の高湿条件とすることが好ましい。イースト発酵食品を製造する場合、この保温工程はホイロ工程として実施することができる。
保温工程は、混捏工程の後に実施すればよく、混捏工程と保温工程の間に他の工程を含んでいてよい。例えば、イースト発酵食品を製造する場合には、混捏工程と保温工程の間に発酵工程を実施してよい。コムギ加工食品としてパンを製造する場合、この発酵工程は、ストレート法における一次発酵および二次発酵工程、中種法における中種発酵工程などに該当する。
本発明による糖の使用量を低減したコムギ加工食品の製造用の穀粉は、2-3/2欠損体由来の小麦粉を含む。該製造用の穀粉は、主として上記第1の方法に用いられる穀粉である。該製造用の穀粉は、2-3/2欠損体由来の小麦粉のみからなっていてもよいし、他の穀粉(上述)をさらに含んでいてもよい。2-3/2欠損体由来の小麦粉自体も、1種類の2-3/2欠損体に由来する小麦粉のみを用いてもよいし、2種以上の2-3/2欠損体由来の小麦粉を混合して用いてもよい。
本発明による糖の使用量を低減したコムギ加工食品の製造原料は、2-3/2欠損体由来の小麦粉又はデンプンを含む。例えば、該原料は、(1)2/2欠損体由来の小麦粉と、2/2欠損体由来のデンプンとの両者を含む原料;(2)2/2欠損体以外の小麦粉若しくは小麦粉以外の穀粉と、2/2欠損体由来のデンプンとを含む原料;又は、(3)2/2欠損体由来の小麦粉と、2/2欠損体以外のコムギ由来デンプン若しくはコムギ以外の植物に由来するデンプンとを含む原料であり得る。(1)は第1の方法及び第2の方法に、(2)は第2の方法に、(3)は第1の方法に用いることができる。
2/2欠損体は、本願発明者らがGBSSIとSSIIaの酵素活性制御により新たな特性のデンプンを蓄積するコムギを提供することを目的として作出したコムギ系統である。9系統のうち、GBSSI-A(-)B(+)D(-)/SSIIa-A(+)B(-)D(-)及びGBSSI-A(-)B(-)D(+)/SSIIa-A(+)B(-)D(-)の具体例が、国際公開WO2006/118300号公報に記載されている。下記実施例に記載されている残りの7系統は新たに作出された系統である。また、国際公開WO2006/118300号公報には、3/2欠損体の具体例も記載されている。
上記の保温工程により生地中のマルトース含量が高まるという効果は、2/2欠損体及び3/2欠損体に共通の効果であり、本発明では2/2欠損体及び3/2欠損体の酵素欠損パターンは特に限定されない。第1の方法においては、穀粉材料として配合率100%で使用してもコムギ加工食品の食味・食感が安定して向上するという点では、2/2欠損体の方が3/2欠損体よりも製造工程が簡便で有利である。もっとも、第2の方法においては、2/2欠損体、3/2欠損体いずれを用いても製造工程の簡便さに差異はない。GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損したコムギの中では、例えばGBSSI-B1、GBSSI-D1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギを好ましく使用でき、GBSSI-A1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損したコムギの中では、例えばGBSSI-A1、GBSSI-D1、SSIIa-A1及びSSIIa-B1の酵素活性を欠損したコムギを好ましく使用でき、GBSSI-A1及びGBSSI-B1の酵素活性を欠損したコムギの中では、例えばGBSSI-A1、GBSSI-B1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギを好ましく使用できる。3/2欠損体の中ではGBSSI-A1、GBSSI-B1、GBSSI-D1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギを好ましく使用することができる。
コムギのGBSSI-A1, B1, D1及びSSIIa-A1, B1, D1の配列(ゲノムDNA、タンパク質)は公知であり、それぞれGenBankに下記のaccession番号で登録されている。これらの各配列を下記表1の通りに配列表に示す。
もっとも、配列表に示した配列は野生型配列の一例であり、天然に存在するコムギ(一般に流通しているコムギ品種も含む)には、各酵素タンパク質の活性は正常であるが塩基配列ないしはアミノ酸配列が一部相違するものも存在し得る。本発明において「GBSSI-A1遺伝子」「GBSSI-A1タンパク質」といった場合には、配列表に示した塩基配列又はアミノ酸配列と完全に同一の配列を有するものだけではなく、酵素活性を損なわない天然の変異を含む配列を有するものも包含される。他の酵素についても同様である。そのような天然の変異配列は、通常、配列表に示した各塩基配列又はアミノ酸配列と90%以上、例えば95%以上、あるいは98%以上の同一性を有する。
「酵素活性を欠損した」とは、植物体内で正常な酵素活性を有する当該タンパク質が機能していないこと、例えば、正常な酵素活性を有するタンパク質を発現していないことをいう。より具体的には、遺伝子配列の変異(一つ又は複数の塩基の置換、欠失、挿入、逆位、転座などの変異をいい、遺伝子領域全体の欠失も含む)、mRNA転写の欠損、タンパク質翻訳の欠損、コムギ植物体内での酵素活性の阻害などの態様が挙げられる。本発明においては、野生型の各酵素の活性の10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満にまで酵素活性が低下ないしは欠失していれば、いずれの態様であってもよい。最も好ましくは、2/2欠損体は、3種のGBSSIのうちのいずれか2つ、及び3種のSSIIaのうちのいずれか2つの酵素タンパク質を細胞内に蓄積せず、各酵素の活性が完全に失われたコムギであり、より具体的には、2つのGBSSI及び2つのSSIIaを発現しないコムギである。3/2欠損体の最も好ましい例も同様である。
SSIIaは、一般的にはアミロペクチン分岐鎖(α-1,6結合により枝分かれしたグルコース重合体)の合成、特に重合度が中程度の鎖(11から25程度の重合度をもつ鎖)の合成に関与していると考えられている。ゆえに、SSIIaの酵素活性は、基質となるADP-グルコースとアミロペクチンを認識し、ADP-グルコースからグルコースをアミロペクチン分岐鎖の末端に結合させる活性と考えることができる。一方、GBSSIは、基本的にはアミロース合成に関与していると考えられている。よってGBSSIの酵素活性は、基質となるADP-グルコースとアミロースを認識し、ADP-グルコースからグルコースを伸長途中のアミロースの末端に付加する働きであると考えることができる。
従って、GBSSI-A1, B1, D1及びSSIIa-A1, B1, D1の酵素活性については、常法により上記の活性を調べることでその強弱を確認することができる。一例を挙げると、当該酵素を種子から精製し、基質となるADP-[U-14C]グルコースやアミロースあるいはアミロペクチン、さらには反応条件を整えるための成分を加えることで反応を行う。一定時間の反応を終えたところで100℃に加熱することにより酵素を失活させ、陰イオン交換カラムを用いて未反応のADP-[U-14C]グルコースを除いた後、アミロースあるいはアミロペクチンに取り込まれた[U-14C]グルコースの量を、液体シンチレーションカウンターを用いて計測する。別の方法としては、種子より粗精製したタンパク質画分、あるいはデンプン画分(タンパク質含量にして5-10μg)について、未変成{通常のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)からSDSとβ-mercaptoethanolを除いた条件}でのポリアクリルアミドゲル電気泳動を行う。分離の終わったゲルを50 mM グリシン、100 mM 硫酸アンモニウム、5nM β-mercaptoethanol、5 mM MgCl2、0.5mg/ml 牛血清アルブミン、0.01 mg/ml アミロースあるいはアミロペクチン、4mM ADP-グルコースからなる溶液に浸し、4時間から12時間放置する。その後、0.2% ヨウ素、0.02% ヨウ化カリウムからなる溶液を加えることで染色を行い、酵素活性を判定する方法を用いても良い。
酵素活性が欠損しているか否かの確認は、例えば、酵素活性の測定、酵素タンパク質の蓄積量の測定、mRNA発現量の測定、ゲノムDNAの塩基配列の確認等により実施できる。
酵素活性の強弱の確認方法は上述の、基質となるADP-[U-14C]グルコースやアミロースあるいはアミロペクチン、さらには反応条件を整えるための成分を加えることで反応を行う方法の通りである。
酵素タンパク質がコムギ植物体細胞内で蓄積していないこと(より具体的には、酵素タンパク質が発現していないこと)の確認は、コムギ種子又は精製デンプンのSDS-PAGEや二次元電気泳動により行なうことができる。SDS-PAGEで確認されるバンドのサイズは、SSIIa-A1が115 kDa、SSIIa-B1が100 kDa、SSIIa-D1が108 kDaであり、非特許文献1に発現の有無を確認する方法が記載されている。また、GBSSIについては、GBSSI-A1、B1、D1ともにSDS-PAGEで確認されるバンドのサイズはおよそ61kDaであり、とりわけGBSSI-B1とGBSSI-D1のバンドの識別が困難な場合があるため、SDS-PAGEで発現の有無を判定するよりも、特許文献1に記載されているデンプン結合タンパク質の二次元電気泳動により確認する方法が適している。詳細な方法は特許文献1に記載される通りであり、野生型で現れる領域にスポットがあるか否かを確認すればよい。
また、酵素活性の欠損は、酵素活性を失わせるようなゲノムDNA上の変異があるかどうかを調べることによっても確認し得る。特に、酵素の欠損変異が放射線照射や変異原性化学物質への曝露等の変異誘発処理により生じたものである場合、1残基のみのアミノ酸置換を伴う変異が生じる可能性がある。こういった場合には、酵素タンパクの有無を調べるSDS-PAGEのような方法では識別することが困難な場合が多いため、DNA上の変異を確認する手法が適する。SSIIaの場合、酵素活性を失わせるようなゲノムDNA上の変異とは、酵素の基質となるADP-グルコースやアミロペクチンの認識・結合部位における変異、あるいはグルコースをアミロペクチンの非還元末端へ転移する活性中心部位における変異、あるいはN末端に存在するシグナル配列部位における変異等が挙げられる。GBSSIの場合、酵素活性を失わせるようなゲノムDNA上の変異とは、酵素の基質となるADP-グルコースやアミロースの認識・結合部位における変異、あるいはグルコースをアミロースの非還元末端へ転移する活性中心部位における変異等が挙げられる。
GBSSI酵素活性を失わせるようなゲノムDNA上の変異があるかどうかを調べるためのプライマーとしては、例えば、下記実施例で使用しているプライマー(配列番号13〜19)を挙げることができる。このことは非特許文献2および非特許文献3にも記載されている。酵素活性を失わせるようなゲノムDNA上の変異があるか否かの判定基準は下記実施例中の表2に記載される通りである。これらのプライマーを用いてPCR等の核酸増幅法を行なえば、公知のコムギ品種「もち乙女」(3つのGBSSIを欠損)が有する酵素欠損変異を検出することができる。従って、本発明の実施において使用する2-3/2欠損体のGBSSI欠損変異が「もち乙女」に由来する場合、ないしは「もち乙女」と同じGBSSI欠損を有するその他の品種に由来する場合には、配列番号13〜19のプライマーを用いて欠損を確認することができる。
また、SSIIa酵素活性を失わせるようなゲノムDNA上の変異があるかどうかを調べるためのプライマーとしては、例えば、下記実施例で使用しているプライマー(配列番号20〜25)を挙げることができる。このことは非特許文献4にも記載されている。酵素活性を失わせるようなゲノムDNA上に変異があるか否かの判定基準は下記実施例中の表2に記載される通りである。これらのプライマーを用いてPCR等の核酸増幅法を行なえば、公知のコムギ品種「Chosen57」(SSIIa-A1欠損型)、「関東79号」(SSIIa-B1欠損型)及び「Turkey116」(SSIIa-D1欠損型)が有する酵素欠損変異を検出することができる。従って、本発明の実施において使用する2-3/2欠損体のSSIIa欠損変異が上記品種に由来する場合、ないしは上記品種と同じSSIIa欠損を有するその他の品種に由来する場合には、配列番号20〜25のプライマーを用いて欠損を確認することができる。
2/2欠損体及び3/2欠損体は、下記実施例に記載されるように、6つの酵素を任意の組み合わせで欠損している公知のコムギ品種の交配により作出することができる。放射線処理(γ線、β線、X線、中性子線等)、化学物質処理(エチルメタンスルホン酸等)その他の変異誘発処理を行ない、所望の酵素欠損体を選抜して交配に用いてもよい。また、単子葉植物の形質転換体の作出方法が各種公知であり、目的遺伝子の機能を欠損させる遺伝子工学的手法も公知である。例えば、RNAiやアンチセンス法により目的遺伝子の発現を阻害する方法があり、また、植物において目的の遺伝子のみを破壊する遺伝子破壊法も公知となっている(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2010) June 29, 107(26): 12034-12039)。従って、本発明で用いるコムギ系統は、遺伝子工学的手法により作出することもできる。
2/2欠損体及び3/2欠損体では、GBSSIとSSIIaの酵素活性の欠損以外の遺伝的形質は特に限定されず、他の形質を導入したものも包含される。例えば、耐病性、グルテン適性、耐倒伏性、秋撒き性、春撒き性、多収性、低温耐性、穂発芽耐性、製粉適性などの有用形質と、2つのGBSSI及び2つのSSIIaの酵素活性の欠損とを組み合わせて有するコムギであってよい。
2/2欠損体由来の小麦粉及び2/3欠損体由来の小麦粉は、2/2欠損体及び3/2欠損体の収穫物(穎果、ないしは種子)を製粉してそれぞれ得ることができる。製粉方法は特に限定されず、従来のコムギ品種の収穫物から小麦粉を製造するときに用いられる一般的な製粉方法を用いることができる。小麦粉の形態は特に限定されず、例えば、通常の製粉工程を経て「ふすま」などの成分を除いた小麦粉でもよいし、分別しない全粒粉であってもよい。
2/2欠損体由来のデンプン及び3/2欠損体由来のデンプンは、それぞれ、2/2欠損体及び3/2欠損体の収穫物又は該収穫物を製粉して得られた小麦粉から常法により抽出分離して得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[コムギ系統の作出]
2つのGBSSIを欠損し、かつ、2つのSSIIaを欠損したコムギ系統は、下記の2系統を親系統として作出された。
親系統1:
「関東79号」(SSIIa-B1欠損型)と外国産品種である「Turkey116」(SSIIa-D1欠損型)、「Chosen57」(SSIIa-A1欠損型)の3品種を順次交配して選抜された、SSIIaを完全に欠損した系統。
親系統2:
もち乙女(GBSSI全欠損型、SSIIaタンパク質は野生型)と「Kestrel」を交配し、そのF5世代の種子から選抜された、GBSSIを完全に欠損した系統。
コムギの栽培、交配は定法に従った。上記の親系統1と親系統2を交配し、F1世代を得た。これを自家受精させてF2、あるいはそれ以降の世代を得た。これら後代の中から、PCRによりGBSSIおよびSSIIa遺伝子の遺伝子型の判別を行ない、所望のコムギ系統を選抜した。PCRによる遺伝子型の確認の具体的な方法は以下の通りである。
コムギの種子を発芽させ、幼葉からのゲノムDNAの精製をキアゲン社製DNeasy plant miniキットを用いて行った。発芽した種子の幼葉を100 mgとり、液体窒素中でパウダー状になるまですりつぶした。すりつぶしたサンプルを1.5 ml容チューブに移し、その後キットに添付のバッファーAP1とRNase solutionを加えて65度で10分間加熱した。次にバッファーAP2を加えて氷上で5分間放置した後、析出した沈殿物を遠心操作により取り除いた。上澄み液にバッファーAP3を加えて混合した後、全量をmini spin columnに供し、遠心操作を行いDNAをメンブランに吸着させた。バッファーAWによる洗浄を2回行った後、バッファーAEを加えて5分間放置し、遠心によりDNA溶液を回収した。
PCRには下記のプライマーを用いた。
GBSSI-A1遺伝子確認用プライマー:
AFC:TCGTGTTCGTCGGCGCCGAGATGG(配列番号13)
AR2:CCGCGCTTGTAGCAGTGGAAGTACC(配列番号14)
GBSSI-B1遺伝子確認用プライマー:
BDFL:CTGGCCTGCTACCTCAAGAGCAACT(配列番号15)
BRC1:GGTTGCGGTTGGGGTCGATGAC(配列番号16)
BFC:CGTAGTAAGGTGCAAAAAAGTGCCACG(配列番号17)
BRC2:ACAGCCTTATTGTACCAAGACCCATGTGTG(配列番号18)
GBSSI-D1遺伝子確認用プライマー:
BDFL:CTGGCCTGCTACCTCAAGAGCAACT(配列番号15)
DRSL:CTGTTTCACCATGATCGCTCCCCTT(配列番号19)
SSIIa-A1遺伝子確認用プライマー:
SSIIAF1:GCGTTTACCCCACAGAGC(配列番号20)
SSIIAR1:ACGCGCCATACAGCAAGTCATA(配列番号21)
SSIIa-B1遺伝子確認用プライマー:
SSIIBF1:ATTTCTTCGGTACACCATTGGCTA(配列番号22)
SSIIBR1:TGCCGCAGCATGCC(配列番号23)
SSIIa-D1遺伝子確認用プライマー:
SSIIDF1:GGGAGCTGAAATTTTATTGCTTATTG(配列番号24)
SSIIDR1:TCGCGGTGAAGAGAACATGG(配列番号25)
GBSSI遺伝子確認用のPCR反応は、10×Taq bufferを5μL, dNTPを終濃度0.2mM, Mg(Cl)2を終濃度1.5mM, プライマー各終濃度0.2μM, ゲノムDNAを終濃度2ng/μL、Taq polymerase(タカラバイオ社)を終濃度0.05 U/μLの組成で全量50μLで行なった。GeneAmp PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ社)を用いて、95℃ 5分−[95℃ 30秒−65℃ 30秒−72℃ 2分]×32サイクル−72℃ 7分の反応条件とした。
SSIIa遺伝子確認用のPCR反応は、10×LA Taq bufferを2μL, dNTPを終濃度0.2mM, Mg(Cl)2を終濃度2.25mM, プライマー各終濃度0.25μM, ゲノムDNAを終濃度1ng/μL、LA Taq(タカラバイオ社)を終濃度0.025 U/μLの組成で全量20μLで行なった。GeneAmp PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ社)を用いて、98℃ 5分−[98℃ 30秒−65℃ 30秒−74℃ 1分]×40サイクル−74℃ 5分の反応条件とした。
PCR増幅反応液は3%アガロースゲルによる電気泳動に供した後、エチジウムブロマイド染色を行い、増幅バンドのサイズに基づいて下記の通り遺伝子型を判定した。
以上の確認を行ない、様々な遺伝子型を有するコムギ系統を選抜した。以下の実験では、上記の通りに選抜されたコムギ系統及び公知のコムギ品種(表3)を用いた。
[小麦粉および全粒粉の調製]
収穫したコムギは水分が14%になるように加水し一晩放置した後、ビューラー社製またはブラベンダー社製のテストミルにて挽砕した。ビューラー社製テストミルで挽砕した場合には、1B、2B、3B、1M、2M、3Mの取り口から得られた粉を混合して小麦粉とした。ブラベンダー社製テストミルで挽砕した場合には、1等粉、2等粉を合わせて小麦粉を得た。また、収穫したコムギは超遠心粉砕機 ZM 200 (Retsch社) を用いて全粒粉に調製した。ロータ回転数は14,000 rpmとし、スクリーンは梯形孔の0.75 mmとした。
[小麦粉からのデンプン精製]
上記小麦粉よりデンプンを次のようにして精製した。小麦粉重量に対し、0.5倍の重量の水を加え、よく捏ねて生地を作成し、冷水中で1時間浸漬した。その後、水中で生地を捏ねてデンプンをもみだした。このデンプン懸濁液を2,070×gで10分間遠心分離し、上清を除去した。デンプンの上層に沈澱したペントザン等の夾雑物を除去した。この操作を繰り返してデンプンを洗浄した。このデンプンを凍結乾燥して精製デンプンを得た。また、精製したデンプンは水分含量を測定し、乾物重量を求めた。
[アミロース含量の測定]
精製したデンプンを用いてアミロース含量を測定した。AMYLOSE / AMYLOPECTIN ASSAY KIT (Megazyme社) を使用し、キットの手順書に従って測定を行った。結果を下記表4に示す。
[RVA測定]
調製した全粒粉を用いてラピッドビスコアナライザー (RVA) を用いた粘度特性の測定を行った。装置にはNEWPORT SCIENTIFIC 社製 model RVA-4を用い、測定法はアメリカ穀物学会の定める公定法 (AACC法76-21) の小麦粉用の方法に従い、STD3のプログラムで測定した。ただし、水の代わりに1 mM 硝酸銀水溶液を使用した。結果を下記表4に示す。
[生地中マルトース含量の測定]
上記で調製した小麦粉を用いて生地サンプルを作製し、製パン工程における発酵及びホイロを想定した温度・湿度・時間条件に置いた後、生地中のマルトース含量を測定した。小麦粉1gに水1mlを加え、捏ね上げ温度27℃になるように室温で混捏した。混捏後の生地を28℃、湿度80%、30分間の発酵条件に置いた後、室温に取り出し、次いで温度38℃、湿度80%、45分間のホイロ条件に置き、小麦粉生地を得た。この小麦粉生地を氷上で十分に冷却した後、80%エタノールを10ml加えよく撹拌し、密栓して沸騰水中で20分間加熱して酵素を失活させるとともに糖分を抽出した。これを氷上で十分冷却してから40%エタノールを30ml加えよく混合し、4℃で20分間振とうした。その後、容器内の溶液1.5mlを採取し遠心チューブに移し、4℃、17,800×gで5分間遠心分離し、上清200μlを新たな1.5ml遠心チューブに移し、濃縮遠心乾燥機で乾燥した。乾燥後に75μlの超純水を加えよく混合し、続いて75μlのアセトニトリルを加えよく混合した。これを4℃(17,800×g)で5分間遠心分離し、上清をPTFEフィルター(ADVANTEC DISMIC-3 0.5μm)に通し、その溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC, Waters社製 alliance e2695 separation module)を用いて測定した。検出には示差屈折率検出器(Waters社製 2414 Refractive Index Detector)を用い、75%(v/v)アセトニトリルを分離溶媒として、ASAHIPAK NH2P-50 3Eカラムを用いて分離した。あらかじめ標準物質を用いて作成しておいた検量線をもとに、マルトースのピーク面積から濃度を算出し、生地を構成する小麦粉乾燥重量あたりのマルトース含量を算出し、サンプル間の比較を行なった。
結果を図1に示す。2/2欠損体及び3/2欠損体の小麦粉は、2-3/2欠損体以外の系統の小麦粉に比べ、明らかに多くのマルトースを生地中に生成していた。
[β-アミラーゼ活性測定]
生地中にマルトースが生成するのは小麦粉内在のβ-アミラーゼの働きによる。β-アミラーゼは、デンプンの非還元末端からマルトースを切り出していく酵素であり、糊化したデンプンによく働く。特定温度条件で生地中にマルトースを多く生成するコムギ酵素2/2欠損体に関して、その特徴が小麦粉内在β-アミラーゼの活性の違いに起因しているのかどうかを確認するため、各系統の小麦粉中のβ-アミラーゼ活性を測定した。測定には市販のβ-アミラーゼ活性測定キット(Megazyme社)を使用し、キットの手順書に従って測定を行った。
結果を図2に示す。図1の結果との対比から、β-アミラーゼ活性はマルトース生成量と相関する結果ではないことが判明した。この結果は、マルトース生成量が高くなる原因が、小麦粉に内在するβ-アミラーゼ活性が元々高かったためではなく、デンプンの性質の違いに起因していることを示唆している。
[糖不使用パンの製造及び食味試験]
<糖不使用パンの製造>
材料として糖を使用しない食パンを製造し、食味試験を行なった。小麦粉は、系統(i)(2/2欠損体)、系統(x)(3/2欠損体)、系統(xii)及び系統(xvi)の小麦粉を使用した。配合率は、系統(x)は全小麦粉使用量の50%とし、それ以外の系統は配合率100%とした。材料は下記の配合とし、自動ホームベーカリー(エムケー精工株式会社)を用いて「食パンコース」プログラムで無糖パンを作製した。系統(xii)については、一般的な製造法通りの分量(下記の配合に砂糖20gを追加)で砂糖を用いたパンも製造した。
水 190 ml
小麦粉 280 g
塩 4 g
ショートニング 20 g
脱脂粉乳 6 g
ドライイースト 2.4 g
<クラム中マルトース含量の測定>
各食パンのクラム(耳の内部の白い部分)の一部を凍結乾燥させた後粉砕し、得られた粉砕物1gを80%エタノール10mlにそれぞれ添加してよく撹拌し、密栓して沸騰水中で20分間加熱することにより、酵素を失活させるとともに糖分を抽出した。これを氷上で十分冷却してから40%エタノールを30ml加えよく混合し、4℃で20分間振とうした。その後、容器内の溶液1.5mlを採取し遠心チューブに移し、4℃、17,800×gで5分間遠心分離し、上清200μlを新たな1.5ml遠心チューブに移し、濃縮遠心乾燥機で乾燥した。乾燥後に75μlの超純水を加えよく混合し、続いて75μlのアセトニトリルを加えよく混合した。これを4℃(17,800×g)で5分間遠心分離し、上清をPTFEフィルター(ADVANTEC DISMIC-3 0.5μm)に通し、その溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC, Waters社製 alliance e2695 separation module)を用いて測定した。検出には示差屈折率検出器(Waters社製 2414 Refractive Index Detector)を用い、75%(v/v)アセトニトリルを分離溶媒として、ASAHIPAK NH2P-50 3Eカラムを用いて分離した。あらかじめ標準物質を用いて作成しておいた検量線をもとに、マルトースのピーク面積から濃度を算出し、生地を構成する小麦粉乾燥重量あたりのマルトース含量を算出し、サンプル間の比較を行なった。
<食味試験>
10名のパネラーにより食パンの食味試験を行なった。下記の項目について5段階評価し、各項目の平均値を算出した。
弾力:弾力がない(1点)〜とても弾力がある(5点)
粘り:粘らない(1点)〜粘りが強い(5点)
モチモチ感:モチモチ感がない(1点)〜とてもモチモチしている(5点)
ソフトさ:ソフトさがない(1点)〜とてもソフトである(5点)
しっとり感:しっとり感がない(1点)〜とてもしっとりする(5点)
甘さ:甘さがない(1点)〜とても甘みがある(5点)
ぱさつき:ぱさつきがない(1点)〜とてもぱさぱさする(5点)
香り:香りがない(1点)〜とても香りが強い(5点)
<結果>
クラム中マルトース含量の測定結果を図3に示す。2/2欠損体である系統(i)及び3/2欠損体である系統(x)の小麦粉を用いた食パンでは、他の系統の小麦粉を用いた食パンと比較して10倍ないしはそれ以上の量のマルトースを含んでいた。
一般的な食パン製造時のホイロ条件は、温度28℃〜38℃、時間30分〜50分である。2-3/2欠損体の小麦粉を用いると、そのような一般的なホイロ条件で食パン中のマルトース含量が大幅に増加することが確認された。
食味試験の結果を図4〜11に示す。2/2欠損体である系統(i)及び3/2欠損体である系統(x)の小麦粉を用いた食パンは、糖不使用であっても甘さがあり、風味に優れていた。また、粘りやモチモチ感にも優れ、みずみずしさがありパサつきが少ない良好な食感であった。

Claims (16)

  1. GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を含む穀粉と、水と、前記穀粉に対し0%〜2%の量の糖類とを含む生地材料を混捏して生地を製造する混捏工程、並びに
    生地を28℃〜50℃で20分間〜120分間保温する保温工程
    を含む、コムギ加工食品の製造方法。
  2. GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物又は該収穫物を製粉して得られた小麦粉から分離されたデンプンと、穀粉と、水と、前記穀粉に対し0%〜2%の量の糖類とを含む生地材料を混捏して生地を製造する混捏工程、並びに
    生地を28℃〜50℃で20分間〜120分間保温する保温工程
    を含む、コムギ加工食品の製造方法。
  3. 生地材料として糖を使用しない請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記コムギ加工食品がベーカリー食品である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記コムギ加工食品がイースト発酵食品である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
  6. イースト発酵食品がパンである請求項5記載の方法。
  7. 前記収穫物は、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記収穫物は、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物である請求項7記載の方法。
  9. 前記収穫物は、GBSSI-B1、GBSSI-D1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物である請求項8記載の方法。
  10. 前記収穫物は、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記収穫物は、GBSSI-A1、GBSSI-B1、GBSSI-D1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物である請求項10記載の方法。
  12. GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を含む穀粉と、水と、イーストと、前記穀粉に対し0%〜2%の量の糖類とを含む生地材料を混捏して生地を製造する混捏工程、
    生地を発酵させる発酵工程、並びに
    生地を28℃〜50℃で20分間〜120分間保温するホイロ工程
    を含む、イースト発酵食品の製造方法。
  13. GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物又は該収穫物を製粉して得られた小麦粉から分離されたデンプンと、穀粉と、水と、イーストと、前記穀粉に対し0%〜2%の量の糖類とを含む生地材料を混捏して生地を製造する混捏工程、
    生地を発酵させる発酵工程、並びに
    生地を28℃〜50℃で20分間〜120分間保温するホイロ工程
    を含む、イースト発酵食品の製造方法。
  14. 生地材料として糖を使用しない請求項12又は13記載の方法。
  15. GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を含む、糖の使用量を低減したコムギ加工食品の製造用の穀粉。
  16. GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉、又は前記収穫物若しくは前記小麦粉から分離されたデンプンを含む、糖の使用量を低減したコムギ加工食品の製造原料。
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