JP2022140409A - 尿素崩壊性が増加されたソバ属植物 - Google Patents

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Abstract

【課題】デンプンの特性が変化したソバ属植物を提供する。【解決手段】ソバ属植物において、デンプン合成酵素(SSIIa)活性を欠損させる。このようなソバ属植物から得られるソバ粉は、尿素崩壊性が野生型に比較して1.5倍以上であり、糊化ピーク温度が、野生型に比較して95%以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、デンプン特性(尿素崩壊性およびまたはデンプンの糊化温度)が改変されたソバ属植物に関する。
タデ科に分類されるソバ属植物の栽培種には、ソバ(Fagopyrum esculentum)、ダッタンソバ(F. tataricum)、宿根ソバ(F. cymosum)がある。我が国では、ソバおよびダッタンソバが主に食品として利用されている。宿根ソバの利用は少ないが、湿害抵抗性が強いこともあり今後の利用が期待されている。また、自家和合性をもつソバ野生種(F.homotropicum)の利用も始まっている。さらに、これらの品種のいずれかの雑種、例えばダッタンソバと宿根ソバの雑種(F.giganteum)、普通ソバと野生種の雑種等も利用が始まりつつある。
一般に、穀物を食品に利用する際には、食品製造後の柔らかさの確保が重要な要素の一つであり、それらにはデンプンが大きな影響を与える。デンプンはグルコースが直鎖状に重合したアミロースと、枝分かれしたアミロペクチンに大別される。穀物においてはアミロペクチンの鎖長が短くなると、食品が冷めても柔らかさを保ち、糊化温度が低下し、凍結・融解時の離水が少なくなる。
アミロペクチン鎖長はデンプン合成酵素(Starch Synthase IIa; 以下SSIIa)により伸長される。コメ、カンショにおいてはSSIIaの発現が抑制されるとアミロペクチン鎖長が短くなり、調理後の食品が柔らかく保たれることが知られている。例えばインディカ米は基本的にSSIIaが生きているためアミロペクチン鎖長が長く、その結果として冷めるとボソボソになりやすい。ジャポニカ米はSSIIaが欠損しているためアミロペクチン鎖長さが短く、冷めても硬くなりにくい。イネのSSIIaに関しては、活性の制御方法等が知られている(特許文献1)。カンショにおいてはSSIIaが欠損している品種・こなみずきは、アミロペクチンの短い側鎖が多く(非特許文献1)、使用した食品が冷めても硬くなりにくいため、ワラビモチ等に適する(非特許文献2)。
SSIIaを変異させた植物体が報告されている穀物の多くは単子葉植物の中のイネ科作物である。具体的には、イネ、ムギ、オオムギ、トウモロコシ、モロコシ(ソルガム)、アワ、キビ、ハトムギである。コムギにおいては、2つのGBSSIと2つのSSIIaの酵素活性を欠損したコムギから調製された小麦粉、それを使用した食品(特許文献2~6)が知られており、またSSIIa変異体選抜のためのDNAマーカー開発、およびSSIIa変異体の澱粉特性の解析が行われている(非特許文献3)。双子葉植物では、ヒルガオ科のサツマイモについての報告がある(非特許文献4)。
特開2005-269928号公報 特開2013-188206公報(特許第6226165号) 特開2015-033357号公報 特開2015-033358号公報 特開2015-033361号公報 特開2015-0333562号公報
片山健二, 境 哲文, 甲斐由美, 中澤芳則, 吉永 優. サツマイモ新品種「こなみずき」の育成. 九州沖縄農業研究センター報告, 58, 15-36(2012) https://www.naro.affrc.go.jp/project/results/research_digest/digest_kind/digest_poteto/027255.html 新畑智也. コムギ澱粉変異体の作出とその特性に関する研究. 2014 (https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/8953018) Kenji Katayama, Seiji Tamiya1, Tetsufumi Sakai, Yumi Kai, Akiko Ohara-Takada, Toshikazu Kuranouchi and Masaru Yoshinaga; Inheritance of low pasting temperature in sweetpotato starch and the dosage effect of wild-type alleles.Breeding Science 65: 352-356 (2015) doi:10.1270/jsbbs.65.352 佐藤 弘一, 斎藤 真一, 吉田 智彦. 水稲糯品種の餅硬化性, 糊化特性および尿素崩壊性による選抜方法. 日本作物学会紀事, 74(3), 310-315 (2005) doi:10.1626/jcs.74.310
我が国では、ソバは麺として利用されることが一般的であるが、調理後の時間経過にともないデンプンが老化しやすく、食感が悪くなる(固く、もろくなる)。ソバではSSIIaが作用し、SSIIaを欠損しているジャポニカ米やカンショ品種のこなみずきと比較して、アミロペクチン鎖長が長いと考えられる。ソバ麺の副原料としてトレハロースや加工デンプン等を配合し、調理後の食品をやわらかく保つ技術はあるが、改善の程度が十分ではない。またソバが持つ特有の香りは重要な品質特性であるが、副原料の配合により食品中のソバ粉の配合割合が相対的に低下する。
これまで、ソバのアミロペクチン鎖長を短くする取り組みはなく、またソバにおいてSSIIaの発現抑制やノックアウトにより実際にデンプンの特性が変化するかどうかについての知見は存在しない。
デンプンのアミロペクチン鎖長が短くなっていることは、尿素崩壊性の差として、すなわち尿素の存在化でアミロペクチンが可溶化する程度の差として検出できる。つまり例えば2M尿素存在下でデンプンを崩壊(可溶化)させたとき、短鎖アミロペクチンは長鎖アミロペクチンよりも可溶化しやすいため、可溶性画分をヨウ素-デンプン反応で呈色し比較することで、アミロペクチン鎖長を測定することができる(非特許文献5)。
ソバの尿素崩壊性を増加させることができれば、調理後の食品を柔らかく保つことができ、その物性改変により麺以外の食品用途にも利用を拡大できると考えられる。
本発明者らは、今般、突然変異処理を行ったソバ属植物の中から、SSIIa遺伝子に変異が生じたことで野生型と比較し尿素崩壊性および糊化温度が低下しているソバ植物体を獲得し、本発明を完成した。
本発明は以下を提供する。
[1] デンプン合成酵素(SSIIa)活性を欠損した、ソバ属植物。
[2] SSIIa活性の欠損が、SSIIa遺伝子の、スプライシング変異、ストップコドン挿入変異、アミノ酸欠失変異およびアミノ酸置換変異からなる群より選択されるいずれかである、1に記載のソバ属植物。
[3] SSIIaが、SSIIa2である、1または2に記載のソバ属植物。
[4] 以下のいずれかのポリヌクレオチドを有する、ソバ属植物。
(a)配列番号2の配列からなるポリヌクレオチド。
(b)配列番号2の配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の配列同一性を有し、配列番号3の位置577~585に相当するヌクレオチドのいずれかに欠失のあるポリヌクレオチド。
[5] ソバ属植物が、ソバ(Fagopyrum esculentum)、ダッタンソバ(F. tataricum)、宿根ソバ(F. cymosum)、もしくはソバ野生種(F.homotropicum)、またはそれらのいずれかの雑種である、1~5のいずれか1項に記載のソバ属植物。
[6] 1~6のいずれか1項に記載のソバ属植物の、植物体。
[7] 6に記載の植物体、またはその後代を用いることを含む、ソバ属植物の育種方法。
[8] 7に記載の植物体の、収穫物、繁殖材料または加工品。
[9] 以下のいずれかのタンパク質の活性を抑制することによる、ソバ属植物の尿素崩壊性を増加させる方法:
(A)配列番号9~15のいずれか1つのアミノ酸配列からなるタンパク質;
(B)配列番号9~15のいずれか1つのアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつソバ属植物の尿素崩壊性を制御する機能を有するタンパク質;
(C)配列番号9~15のいずれか1つのアミノ酸配列において1~60個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列をコードし、かつソバ属植物のデンプンの尿素崩壊性および糊化温度を制御する機能を有するポリヌクレオチド。
[10] 9に記載の方法であって、タンパク質の活性を抑制することが、下記のいずれかのタンパク質の活性を抑制することである、方法:
(A’)配列番号9、11、および13のいずれか1つのアミノ酸配列からなるタンパク質;
(B’)配列番号9、11、および13のいずれか1つのアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつソバ属植物の尿素崩壊性を制御する機能を有するタンパク質;
(C’)配列番号9、11、および13のいずれか1つのアミノ酸配列において1~60個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列をコードし、かつソバ属植物の尿素崩壊性を制御する機能を有するポリヌクレオチド。
[11] 下記の少なくとも一方を満たす、ソバ属植物、またはその種実もしくは粉:
・尿素崩壊性が、野生型に比較して1.5倍以上である。
・糊化ピーク温度が、野生型に比較して95%以下である。
[12] 下記のいずれかのプライマー対、またはそれを含む、SSIIa活性を欠損したソバ属植物を判定するためのキット:
(a) 配列番号20の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーと、配列番号21の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーとの対;
(b) 15~30塩基長であり、配列番号20の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーと、15~30塩基長であり、配列番号21の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーとの対であって、配列番号2の全部または一部の配列からなるポリヌクレオチドを鋳型として増幅断片を増幅可能な対;
(c) 配列番号22の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーと、配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーとの対;
(d) 15~30塩基長であり、配列番号22の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーと、15~30塩基長であり、配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーとの対であって、配列番号2の全部または一部の配列からなるポリヌクレオチドを鋳型として増幅断片を増幅可能な対。
[13] 下記のいずれかのプライマー対を用いるPCR反応により変異型の増幅断片が検出されるポリヌクレオチドを有する、ソバ属植物、またはその種実もしくは粉:
(a) 配列番号20の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーと、配列番号21の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーとの対;
(b) 15~30塩基長であり、配列番号20の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーと、15~30塩基長であり、配列番号21の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーとの対であって、配列番号2の全部または一部の配列からなるポリヌクレオチドを鋳型として増幅断片を増幅可能な対;
(c) 配列番号22の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーと、配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーとの対;
(d) 15~30塩基長であり、配列番号22の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーと、15~30塩基長であり、配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーとの対であって、配列番号2の全部または一部の配列からなるポリヌクレオチドを鋳型として増幅断片を増幅可能な対。
本発明のソバ属植物により、改良されたソバ粒・粉を得ることができる。
本発明のソバ属植物から得られたソバ粒・粉は、改良された特性を活かし、様々な食品に広く用いることができる。
本発明により得られるソバ粒・粉により、トレハロースや加工デンプン等の副原料を配合しなくても、用いた食品は冷めても柔らかさを保ち、食品を保存した場合の柔らかさが向上されうる。
本発明により得られる改良されたデンプンは少ない加熱量で糊化しうるため、調理する際のエネルギーを省力化し、調理時間を短縮しうる。
変異ソバ植物「18AS29」のSSIIa2の配列(配列番号17)における野生型の配列(配列番号16)との相違。変異型18AS29では、SSIIa2遺伝子に欠失があり、その結果、推定アミノ酸においても欠失が生じる。 SSIIa2アミノ酸変異系統「18AS29」における尿素崩壊性。t検定において平均値に0.1%水準で有意差がある。 2021年春まき栽培(九州沖縄農業研究センター)におけるソバ粉あたりの尿素崩壊性の比較(野生型=1.0)。野生型36株、変異型53株、**:1%水準で平均値に有意差あり 2021年夏まき栽培(九州沖縄農業研究センター)におけるソバ粉あたりの尿素崩壊性の比較(野生型=1.0)。野生型10株、変異型10株、* * *:0.1%水準で平均値に有意差あり 野生型検出用プライマー、変異型検出用プライマーを用いた各遺伝子型の決定 変異部位を増幅断片中に含むように設計されたプライマーを用いた各遺伝子型の決定
[新規ソバ属植物]
本発明は、デンプン合成酵素(SSIIa)活性を欠損した、ソバ属植物を提供する。
また本発明は、下記の少なくとも一方を満たす、ソバ属植物を提供する。
・デンプンの尿素崩壊性が、野生型に比較して1.5倍以上である。
・デンプンの糊化ピーク温度が、野生型に比較して95%以下である。
(デンプン合成酵素(SSIIa)活性の欠損)
本発明に関し、植物においてデンプン合成酵素(SSIIa)活性を欠損した(SSIIaが欠損している状態)とは、植物体内で正常なSSIIa活性を有するSSIIaタンパク質が機能していないことをいう。なお本発明に関し、ソバ属植物についてSSIIaというときは、特に記載した場合を除き、SSIIa1およびSSIIa2を指す。
本発明に関し、正常なSSIIa活性を有するSSIIaタンパク質が機能していないとは、特定のメカニズムによりSSIIaの活性が抑制される場合に限られない。活性抑制は、SSIIaの酵素活性の抑制のほか、SSIIa遺伝子の発現抑制を包含する。より具体的には、活性抑制は、SSIIaの活性が阻害されることのほか、SSIIa遺伝子が変異して活性型のSSIIaが産生されなくなること、SSIIa の活性が低下すること、SSIIa遺伝子の発現調節領域(プロモーター領域、転写制御因子結合領域、等)に変異がありSSIIaの産生が抑制されることを含む。
SSIIaは、一般的にはアミロペクチン分岐鎖(α-1,6結合により枝分かれしたグルコース重合体)の合成、特に重合度が中程度の鎖(11から25程度の重合度をもつ鎖)の合成に関与していると考えられている。したがってSSIIa活性を欠損しているか否かは、正常なSSIIa活性を有するSSIIaタンパク質が機能している植物(野生型ということができる。)と比較して、含まれるデンプンのアミロペクチン鎖長が短くなっていることにより評価できる。また含まれるデンプンのアミロペクチン鎖長が短くなっていることは、後述するように、尿素の崩壊性が増加していること、もしくは糊化ピーク温度が低くなっていることにより評価できる。
本発明に関し、SSIIa活性を欠損した(SSIIaが欠損している)というとき、その変異の程度、またはアミロペクチン鎖長が短くなっている程度もしく尿素崩壊性の増加の程度は特に限定されない。例えば、デンプンの尿素崩壊性に関しては、野生型の1.5倍以上である場合には、その植物はSSIIaが欠損しているということができ、またデンプンの糊化ピーク温度に関しては、野生型の95%以下である場合には、その植物はSSIIaが欠損しているということができる。尿素崩壊性、および糊化ピーク温度の測定・算出に関しては後述する。
好ましい態様においては、ソバ属植物は、SSIIa1遺伝子とSSIIa2遺伝子の少なくとも一方において変異を有する。好ましくはSSIIa2遺伝子において変異を有する。なお、配列表には、配列番号1としてソバSSIIa2(野生型)遺伝子の配列、配列番号2として本発明者らが得たソバSSIIa2(変異型)遺伝子の配列、配列番号3としてソバSSIIa1(野生型)cDNAの配列、配列番号4として本発明者らが得たソバSSIIa2(変異型)cDNAの配列、配列番号5としてダッタンソバSSIIa2 cDNAの配列、配列番号6としてダッタンソバSSIIa1 cDNAの配列、配列番号7として宿根ソバSSIIa2 cDNAの配列、配列番号8として、宿根ソバSSIIa1 cDNAの配列が示されている。
ソバ属植物が有しうる変異は、アミノ酸変異を伴う変異(アミノ酸置換、アミノ酸挿入、アミノ酸欠失、ストップコドン挿入)、スプライシング変異(スプライシングシグナル変異、イントロンの変異によるスプライシング変異を伴うゲノム変異)、非翻訳領域における変異(核酸のメチル化含む)による遺伝子転写産物の発現量変異等を含む。具体的な例としては、SSIIaのスプライシングシグナル部位に突然変異が生じ、遺伝子転写産物にストップコドンが挿入され、SSIIaのタンパク質の蓄積が減少し、結果として尿素崩壊性の変化を引き起こす遺伝子変異を上げることができる。
好ましい態様の一つにおいては、ソバ属植物は、SSIIaにおいて、配列番号2に示したような変異、すなわち推定cDNA配列である配列番号3の565の位置から597の位置に相当する部分に変異がある。より特定すると、配列番号3の位置577~585に相当する領域の一部または全部が欠失している。しかし、異なる位置の変異でも、同様の効果が得られる可能性がある。例えば、活性に大きな影響を与えるタンパク質の立体構造に関するシステイン残基を欠失または他のアミノ酸に置換するような変異、活性中心のアミノ酸を欠失または異なる極性のアミノ酸に置換するような変異、植物間で高度に保存されているアミノ酸領域に1または数個のアミノ酸を欠失または極性の異なる他のアミノ酸に置換するような変異であれば、SSIIaの活性が抑制されると考えられ、このような変異であれば、同様の効果が期待できる。一方、SSIIaのC末側がわずかに短くなった程度の変異では、SSIIaは本来の活性を発揮できるため、目的の効果がないか、または低いが、配列番号2の配列からなるポリヌクレオチドと高い同一性(例えば、80%以上)を有するかまたは配列番号2の配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号3の位置577~585に相当するヌクレオチドが欠失しているポリヌクレオチドを有するソバ属植物であれば、同様の効果が期待できる。
遺伝子に変異が導入されていることは、例えば下記の方法等で確認することができる。
サンガー法あるいは次世代DNA解析技術などの塩基配列解析方法による当該変異塩基配列そのものの解読、あるいは当該塩基配列を認識部位とする制限酵素を用いたゲノムDNAあるいはPCR増幅断片等の切断状況の差異、もしくはLGC Genomics社の KASP (Kompetitive Allele Specific PCR) ジェノタイピングアッセイ、高分解能融解曲線(HRM)解析、等の当該塩基配列の差異を検出する技術、あるいはPCR-SSCP(Single Nucleotide Conformation Polymorphism)等が挙げられる。また、当該変異塩基部分に連鎖するDNAマーカーを用いて検出してもよい。SSIIaタンパク質の欠失性を判断するためには、前記実施例に記載のSSIIaタンパク質の調査方法のほかに、活性を測定する方法、免疫化学的手法(イムノブロット法、イムノクロマト法等)が挙げられる。
SSIIa遺伝子またはその発現調節領域の変異は、種々の手段により行われていてよい。SSIIa遺伝子またはその発現調節領域が変異したソバ属植物の獲得方法の例として、突然変異処理株からの選抜による方法、遺伝子組換え手法、RNA干渉、ゲノム編集、人工ゲノム合成、ゲノムメチル化手法等が挙げられる。
好ましい態様においては、突然変異処理株からの選抜による方法が用いられる。より確実に植物体が作製できるからである。
ソバ属植物は、既存の品種・系統から育種されたものであってもよい。このようにして得られたソバ属植物は、既存の品種・系統とは、少なくとも含まれるデンプンのアミロペクチン鎖長が短いという特性、尿素崩壊性が大きいという特性、および糊化ピーク温度が低いという特性のいずれかにより区別性が認められる。
突然変異処理株の獲得の際に出発材料として用いられる品種・系統、および育種に用いられる品種・系統は特に限定はない。ソバの品種の例として、キタワセソバ、牡丹そば、キタユキ、階上早生、岩手早生、最上早生、階上早生、常陸秋そば、信濃一号、信州大そば、しなの夏そば、福井在来種、高知在来種、宮崎大粒、AOI、KOMA、NARO-FE-1、あきあかね、ガンマの彩、キタノマシュウ、キタミツキ、グレートルビー、コバルトの力、さちいずみ、サンルチン、そば中間母本農1号、タチアカネ、でわかおり、とよむすめ、なつみ、にじゆたか、ほろみのり、みやざきおおつぶ、ルチキング、レラノカオリ、夏吉、会津のかおり、開田早生、宮崎早生かおり、高嶺ルビー、高嶺ルビー2011、山形BW5号、出雲の舞、春のいぶき、常陸秋そば、信永レッド、信州大そば、長野S11号、長野S8号、島田スカーレット、飛越 1号、北海3号が挙げられる。ダッタンソバの品種の例として、信永イエロー、北海T8号、北海T9号、北海T10号、北陸4号、気の力、気の宝、気の豊、大禅、信濃くろつぶ、ダルマだったん、イオンの黄彩、満天きらり、西のはるか、イオンの黄彩が挙げられる。これらの多くは、種苗会社、または種苗関連団体等から入手することができる。
ソバ属植物において、SSIIaの活性の欠損により含まれるデンプンの性質が変わることは、本願が初めて開示する。
コムギは3つのSSIIa遺伝子を有するが、各アイソザイムで糊化温度への貢献が異なる。非特許文献2の表2-4によると、あるSSIIaを欠損させた場合に、残った(欠損していない)SSIIaアイソザイムの種類によって効果が異なっていた(type4,5,6間の比較において、To,Tp,ΔHが有意に異なっている)。そのため、実際にアイソザイムに変異を生じさせてみないと、残ったアイソザイムがどの程度の効果を発揮するかは、予想できない状況であった。
また、SSIIaのなかには葉で働くものもある。葉で働くSSIIaが欠損した場合、光合成生産物を蓄積できないことから、致死や重大な生育障害が生じる可能性がある。そのため、本願以前には、SSIIaを変異させたソバ植物は、SSIIaが葉と種子で共通である可能性があり、植物体としては作製ができない懸念があった。
さらに、SSIIaを変異させた植物体が報告されている穀物の多くは単子葉植物の中のイネ科作物である。具体的には、イネ、ムギ、オオムギ、トウモロコシ、モロコシ(ソルガム)、アワ、キビ、ハトムギである。双子葉植物では、ヒルガオ科のサツマイモについての報告がある(非特許文献4)。ただし、サツマイモは栄養繁殖性であるため種子生殖するソバ等の双子葉植物とは生殖様式が根本から異なり、またサツマイモは塊根における報告であり、ソバは種子を食することから、本願以前には、同じく双子葉植物の中のタデ科であるソバ属植物の種子におけるSIIa変異による結果は予想できず、致死となる懸念があった。
(尿素崩壊性・糊化温度)
本発明のソバ属植物は、含まれるデンプンの特性が改良されている、具体的には、従来のソバ属植物に比較し、アミロペクチン鎖長が短く、そのため尿素崩壊性が増加しており、また糊化温度が低下している。アミロペクチン鎖長の測定には特別な機器が必要であり、操作も比較的煩雑である。しかし、尿素崩壊性の評価は特別な機器は不要であり、差の程度が大きければ肉眼でも観察でき、また操作も簡単である。
本発明に関し、ソバ属植物について尿素崩壊性というときは、特に記載した場合を除き、対象となるソバ属植物から得られたソバ種子を、常法により製粉機で製粉して得たソバ粉(胚乳)の尿素崩壊性を指す。尿素崩壊性は、場合により、全粒粉のデンプン中の尿素崩壊性程度として表されるが、当業者であれば、適宜製粉機で製粉したソバ粉の場合として、適切な計算を行って、市場流通するソバ粉との比較により尿素崩壊性程度の差を求めることができる。なお一般的にソバ粉は、玄ソバ(子実)をロール製粉し、粉砕物をふるいで分別することにより製造される。
デンプンの尿素崩壊性は、ソバ粉を1~4Mの尿素で可溶化させたデンプンに対するヨウ素-デンプン反応を比色することにより定量できる。
より詳細には、例えばソバの種子の殻を取り除いた後、乳鉢で粉砕して調製したソバ粉約20mgを0.5mlチューブに秤量し、2M尿素1mlを加え、25℃にて、16時間しんとうし(200rpm)、上清20μLに対し180μLのヨウ素液(0.002%ヨウ素-0.02%ヨウ化カリウム溶液)を入れ、マイクロプレートリーダー(Thermo Scientific 社:Multiskan FC)で690nmの吸光度を測定することで検出できる。このとき、得られた測定の絶対値(吸光度をソバ粉重で割った値)で評価してもよいが、同時に対象ソバ粉(野生型から得られたソバ粉、一般流通しているソバ粉)を対照とした相対値により評価してもよい。
本発明のソバ属植物における尿素崩壊性の増加の程度は、当該ソバ植物を原材料に含む食品において、調理後の柔らかさの保持に影響を与える程度であることが好ましい。
具体的には、本発明のソバ属植物の尿素崩壊性は、野生型と比較し1.2倍以上、好ましくは1.3倍以上、より好ましくは1.4倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上であることが好ましい。本発明者らの検討によると、野生型ソバと比較し、本発明者らが得たソバ系統「18AS29」は1.61倍であり(実施例の項参照)、市場流通するソバ粉と比較し1.82倍である。
また、本発明の尿素崩壊性は、そのソバ属植物が由来する野生型に比較して大きい。本発明に関し、野生型に比較した尿素崩壊性程度を数値で表すときは、特に記載した場合を除き、野生型に対する崩壊程度の増大比の値である。
本発明のソバ属植物の尿素崩壊性は、市場流通するソバと比較し具体的には少なくとも1.2倍、好ましくは1.3倍以上、より好ましくは1.4倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上であるおとが好ましい。
コメでは、SSIIaが欠損することにより、尿素崩壊性が増加することが知られている(https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030928508.pdf)。したがって本発明のソバ属植物についても、同程度の尿素崩壊性の増加があれば、目的の効果が期待できると考えられる。
本発明に関し、糊化温度というときは、特に記載した場合を除き、対象となるソバ属植物から得られたソバ種子を、常法により製粉機で製粉して得たソバ粉(胚乳)について測定した値(℃)を指す。糊化温度は示差走査熱量測定(DSC)により測定できる。
より詳細には、例えばソバの種子の殻を取り除いた後、乳鉢で粉砕して調製したソバ粉
約10mgを秤量し、銀製パンに入れ、澱粉濃度が30%(乾燥重量基準、重量/重量)となるように蒸留水を加えたものについて、蒸留水を加えた密封パンを基準として使用し、スキャンを25℃から130℃まで、2℃/分の加熱速度で行う。より詳細な手法は、後掲Noda et al. 2004の方法を参考にすることができる。
本発明のソバ属植物における糊化ピーク温度の低下の程度は、当該ソバ植物を原材料に含む食品において、調理後の柔らかさの保持に影響を与える程度であることが好ましい。
具体的には、本発明のソバ属植物の糊化ピーク温度の低下の程度(対象ソバ属植物についての糊化ピーク温度(℃)/野生型の場合の糊化ピーク温度(℃)×100)は、98%以下、好ましくは97%以下、より好ましくは96%以下、さらに好ましくは95%以下であることが好ましい。本発明者らの検討によると、本発明者らが得たソバ系統「18AS29」の糊化ピーク温度は、野生型ソバと比較した場合、約95%である。
あるいは、本発明のソバ属植物の糊化ピーク温度は、71℃以下、好ましくは70℃以下、より好ましくは69℃以下、さらに好ましく68℃以下であることが好ましい。本発明者らの検討によると、本発明者らが得たソバ系統「18AS29」の糊化ピーク温度は、約67.7℃である。
(新規ソバ系統)
本発明により提供される、デンプン合成酵素(SSIIa)活性を欠損した、ソバ属植物、あるいは尿素崩壊性が、野生型に比較して1.5倍以上であることとデンプンの糊化ピーク温度が、野生型に比較して95%以下であることの少なくとも一方を満たすソバ属植物の例として、「18AS29」が挙げられる。
「18AS29」は、本明細書の実施例に記載の方法で得られた系統であり、下記の特徴を有する。
・科学的性質(形態的、栽培上の特徴、生理学的特徴等)
分類学上の位置:普通ソバ(Fagopyrum esculentum)の系統である。
一年生の直立分枝型植物であり、播種後に双葉が展開し、その後本葉が展開し、主茎および分枝に花房が発生の後、結実する。
・原産地:北海道農業研究センターにて突然変異育種により開発した。
・栽培条件:生存確認試験のための条件(発芽試験の条件)としては、種子滅菌のため70% エタノールに1分浸し、1%(有効塩素濃度)次亜塩素酸ナトリウム溶液中で、スターラーを用いて30分間攪拌し、滅菌水で5回洗浄し、暗所25℃(許容範囲22-28℃)にてペトリ皿内の滅菌水を浸したろ紙上に播種し、冠根が伸びた状態に至った実生を発芽したと判断する。発芽試験は12日間とする。植物体の屋外での気象条件としては、日平均気温13℃-18℃、日最高気温18℃-25℃、日最低気温10℃-18℃であり、水はけがよく、降水量が月あたり200-400mmであり、日照時間が月あたり100時間以上ある条件。
・種子の保管方法:5℃
[ソバ属植物のデンプンの改質方法]
本発明は、以下のいずれかのタンパク質からなる酵素の活性を抑制することによる、ソバ属植物に含まれるデンプンの改質方法(具体的にはアミロペクチン鎖長を短くする方法、尿素崩壊性を増加させる方法、または糊化ピーク温度を低くする方法)を提供する。
(A)配列番号9~15のいずれか1つのアミノ酸配列からなるタンパク質;
(B)配列番号9~15のいずれか1つのアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつソバ属植物の尿素崩壊性を制御する機能を有するタンパク質;
(C)配列番号9~15のいずれか1つのアミノ酸配列において1~60個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列をコードし、かつソバ属植物の尿素崩壊性を制御する機能を有するタンパク質。
本発好ましい態様では、下記のいずれかのからなる酵素の活性を抑制を抑制する。
(A’)配列番号9、12、および14のいずれか1つのアミノ酸配列からなるタンパク質;
(B’)配列番号9、12、および14のいずれか1つのアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつソバ属植物の尿素崩壊性を制御する機能を有するタンパク質;
(C’)配列番号9、12、および14のいずれか1つのアミノ酸配列において1~60個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列をコードし、かつソバ属植物の尿素崩壊性を制御する機能を有するタンパク質。
なお、配列表には、配列番号9としてソバSSIIa2(野生型)のアミノ酸配列、配列番号10としてソバSSIIa2(変異型)のアミノ酸配列、配列番号11としてソバのSSIIa1のアミノ酸配列、配列番号12としてダッタンソバのSSIIa2のアミノ酸配列、配列番号13としてダッタンソバのSSIIa1のアミノ酸配列、配列番号14として宿根ソバのSSIIa2のアミノ酸配列、配列番号15として、宿根ソバのSSIIa1のアミノ酸配列が示されている。
本発明に関し、ポリヌクレオチドについて「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」というときは、特に記載した場合を除き、いずれのポリヌクレオチドにおいても、ハイブリダイゼーションの条件は、Molecular Cloning. A Laboratory Manual. 2nd ed.(Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press)およびHybridization of Nucleic Acid Immobilization on Solid Supports(ANALYTICAL BIOCHEMISTRY 138,267-284(1984))の記載に従い、取得しようとするポリヌクレオチドに合わせて適宜選定することができる。例えば85%以上の同一性を有するDNAを取得する場合、2倍濃度のSSC溶液および50%ホルムアミドの存在下、40℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、55℃でフィルターを洗浄する条件を用いればよい。また90%以上の同一性を有するDNAを取得する場合、2倍濃度のSSC溶液および50%ホルムアミドの存在下、55℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1倍濃度のSSC溶液を用い、60℃でフィルターを洗浄する条件を用いればよい。
また、本発明に関し、アミノ酸配列について「1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列」というときの置換等されるアミノ酸の個数は、特に記載した場合を除き、いずれのタンパク質においても、そのアミノ酸配列からなるタンパク質が所望の機能を有する限り特に限定されないが、1~120個、1~60個、1~30個、1~9個または1~4個程度であるか、性質の似たアミノ酸への置換であれば、さらに多くの個数の置換等がありうる。このようなアミノ酸配列に係るポリヌクレオチドまたはタンパク質を調製するための手段は、当業者にはよく知られている。
本発明で塩基配列(ヌクレオチド配列ということもある。)またはアミノ酸配列に関し「(配列)同一性」というときは、特に記載した場合を除き、いずれの塩基配列またはアミノ酸配列においても、2つの配列を最適の態様で整列させた場合に、2つの配列間で共有する一致したヌクレオチドまたはアミノ酸の個数の百分率を意味する。すなわち、同一性=(一致した位置の数/位置の全数)×100で算出でき、市販されているアルゴリズムを用いて計算することができる。また、このようなアルゴリズムは、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215(1990)403-410に記載されるNBLASTおよびXBLASTプログラム中に組込まれている。より詳細には、塩基配列またはアミノ酸配列の同一性に関する検索・解析は、当業者には周知のアルゴリズムまたはプログラム(例えば、BLASTN、BLASTP、BLASTX、ClustalW)により行うことができる。プログラムを用いる場合のパラメーターは、当業者であれば適切に設定することができ、また各プログラムのデフォルトパラメーターを用いてもよい。これらの解析方法の具体的な手法もまた、当業者には周知である。
本明細書において、塩基配列またはアミノ酸配列に関し、同一性が高いというときは、特に記載した場合を除き、いずれの場合も、少なくとも70%、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97.5%以上さらに好ましくは99%以上の配列の同一性を指す。
[育種方法、ソバ属植物の製造方法]
本発明はまた、本発明のソバ属植物を用いた、新規なソバ属植物を育種する方法を提供する。本発明の育種方法は、本発明のソバ属植物、その植物体、またはその後代を育種素材として用いることを特徴とする。育種のための手法は特に限定されず、例として、交配、変異体の選抜、戻し交雑、遺伝子組換え、細胞融合、ゲノム編集等が挙げられる。
育種の目標は特に限定されず、例えば、多収化、生態型の改良、耐倒伏性、有限伸育性、耐湿性、高品質化(ルチン等の機能性成分の改良、タンパク質の改良、香気成分の改良、穂発芽性)等が挙げられる。
本発明はまた、アミロペクチン鎖長が比較的短いソバ属植物、尿素崩壊性が比較的高いソバ属植物、および糊化ピーク温度が比較的低いソバ属植物の製造方法を提供する。本発明のソバ属植物の製造方法は、ソバ属植物のSSIIa遺伝子を変異させる工程、またはSSIIa遺伝子を変異させたソバ属植物を繁殖させる工程を含むことを特徴とする。出発材料としては、種々のソバ品種、系統を用い得るが、例えば自殖性のソバ品種・そば中間母本農1号を公的に用いることができる。
[収穫物、繁殖材料、または加工品]
本発明に関し、植物というときは、特別な場合を除き、植物体、またはその一部の意味で用いており、また「その一部」というときは、特別な場合を除き、種子(発芽種子、未熟種子を含む。)、器官またはその部分(葉、根、茎、花、雄蕊、雌蘂、それらの片を含む)、植物培養細胞、カルス、プロトプラストを含む。植物には、遺伝子操作植物および形質転換植物が含まれる。植物には、収穫物および繁殖材料が含まれる。
繁殖材料は、特に記載した場合を除き、植物体の全部または一部で繁殖の用に供されるもの(種苗ということもある。)をいい、例えば、種子、苗、細胞、カルス、幼芽がある。本発明でいう収穫物とは、特別な場合を除き、通常の意味で用いており、植物体の全部または一部で繁殖の用に供されないもの、例えば、食品原材料としてのソバ種子、刈り取ったソバ 、ソバ殻、ふすまが含まれる。
本発明に関し、加工品というときは、特に記載した場合を除き、収穫物から直接的に生産される加工品をいい、具体的には、ソバ粒、ソバ粉等である。
ソバ粒またはソバ粉は、食品の原材料として用いることができる。そのような食品の例としては、麺、菓子類(クッキー、ビスケット、クラッカー、ボーロ、スナック、スポンジケーキ、まんじゅう、団子、せんべい、あられ、おかき等)、餅類、パン類(例えば、食パン、菓子パン、ベーグル、蒸しパン、およびバターロール等)、ピザ、酒、アイスクリーム、飴、チョコレート、)、ミックス粉(例えば、から揚げ粉、天ぷら粉、パン用ミックス粉、ホットケーキミックス粉、お好み焼きミックス粉、およびたこ焼きミックス粉等)、飲料(例えば、そば茶飲料、スープ類、青汁、スムージー)等が挙げられる。
[変異型を検出するためのプライマー等]
本発明はまた、下記のいずれかのプライマー対、またはそれを含む、SSIIa活性を欠損したソバ属植物を判定するためのキットを提供する。
(a) 配列番号20の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーと、配列番号21の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーとの対;
(b) 15~30塩基長であり、配列番号20の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーと、15~30塩基長であり、配列番号21の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーとの対であって、配列番号2の全部または一部の配列からなるポリヌクレオチドを鋳型として増幅断片を増幅可能な対;
(c) 配列番号22の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーと、配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーとの対;
(d) 15~30塩基長であり、配列番号22の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーと、15~30塩基長であり、配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーとの対であって、配列番号2の全部または一部の配列からなるポリヌクレオチドを鋳型として増幅断片を増幅可能な対。
本発明はまた、下記のいずれかのプライマー対を用いるPCR反応により変異型の増幅断片が検出されるポリヌクレオチドを有する、ソバ属植物、またはその種実もしくは粉を提供する。
(a) 配列番号20の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーと、配列番号21の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーとの対;
(b) 15~30塩基長であり、配列番号20の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーと、15~30塩基長であり、配列番号21の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーとの対であって、配列番号2の全部または一部の配列からなるポリヌクレオチドを鋳型として増幅断片を増幅可能な対;
(c) 配列番号22の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーと、配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーとの対;
(d) 15~30塩基長であり、配列番号22の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーと、15~30塩基長であり、配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーとの対であって、配列番号2の全部または一部の配列からなるポリヌクレオチドを鋳型として増幅断片を増幅可能な対。
配列表には、配列番号18として野生型検出用5'プライマーの配列の例、配列番号19として野生型検出用3'プライマーの配列の例、配列番号20として変異型検出用5'プライマーの配列の例、配列番号21として変異型検出用3'プライマーの配列の例、配列番号22として変異部位を含む断片を増幅するための5'プライマーの配列の例、および配列番号23として変異部位を含む断片を増幅するための3'プライマーの配列の例を示す。
PCR反応による増幅断片のサイズは、(a)または(b)のプライマー対を用いる場合は、約250 bpであり、(c)または(d)のプライマー対を用いる場合は、野性型は約125 bp 、変異型はそれより約9塩基少ない約116 bpである。
変異型の増幅断片が検出されるとは、該当するバンドが少なくとも1本検出されることをいう。具体的には、変異型検出用である上記の(a)または(b)のプライマー対を用いる場合には、増幅断片が検出されることをいい、変異部位を含む断片を増幅するためのものである上記の(c)または(d)のプライマー対を用いる場合は、欠損(例えば約9 bp)があるために野生型より短い増幅断片(例えば約116 bp)が検出されることをいう。変異型の増幅断片が検出されるとき、そのソバ属植物、またはその種実もしくは粉は、本発明のデンプン合成酵素(SSIIa)活性を欠損したソバ属植物由来であるといえる。
本発明に関し、配列同一性が高いとは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%の配列同一性を有することをいう。同一性の値は、2つの配列を最適な状態で整列させた場合に、2つの配列間で共有する一致した塩基の個数に基づく。すなわち、同一性=(一致した位置の数/位置の全数)×100で算出できる。同一性に関する検索・解析は、当業者には周知のアルゴリズムまたはプログラム(例えば、BLASTN、BLASTP、BLASTX、ClustalW)により行うことができる。
次に実施例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
[SSIIa遺伝子突然変異ソバ植物の獲得]
突然変異処理を行うため、ソバ(Fagopyrum esculentum、系統名IH3)種子100gを200mlのメタンスルホン酸エチル(0.1%~2.5%)に入れ、25℃等にて毎分150回転等の条件でかくはんした。2-16時間後に種子を取り出し、ポットや圃場(農研機構 九州沖縄農業研究センター(〒861-1192 熊本県合志市須屋2421)、または農研機構 北海道農業研究センター(〒082-0081 北海道河西郡芽室町新生南9線4番地)に播種し、結実した種子を株ごとに獲得した。株ごとに収穫した種子は再度ポットや圃場に播種し、葉や種子等からゲノムDNAを調製し、SSIIa遺伝子に関するゲノムDNA配列を決定した。ゲノムDNAの調製は市販のゲノム抽出キット等を用いて実施した。
SSIIa遺伝子に関するゲノムDNA配列は、当該遺伝子を特異的に増幅するDNAプライマーを用いてPCR法で増幅した。手法は、Katsu, K., Suzuki, T., Fujino, K., Morishita, T. and Noda, T. (2019). Development of a DNA marker for variety discrimination specific to'Manten-Kirari' based on an NGS-RNA sequence in Tartary buckwheat (Fagopyrum tataricum). Food Chem., 295, 51-57.を参考にした。得られた増幅DNA断片をサンガー法、または分析企業への外注により塩基配列の決定を行った。決定した塩基配列を、野生型の塩基配列、具体的にはBuckwheat Genome DataBase (BGDB)(http://buckwheat.kazusa.or.jp/index.html)から獲得した、Fes_sc0005785.1.g000003.aua.1(SSIIa1)およびFes_sc0000009.1.g000056.aua.1(SSIIa2)の配列と比較し、不足する部分をサンガー法によるゲノムシーケンスを実施すること等により、塩基配列に変異のあった株を把握した。次に当該変異をホモに固定するため、種子を再度播種し、自殖による採種と当該遺伝子変異有無の確認を繰り返した。当該遺伝子変異をホモに固定した時点でSSIIa遺伝子変異ソバ植物とした。その結果は下表のとおりである。
Figure 2022140409000001
[獲得したSSIIa遺伝子変異ソバ植物のゲノム上の変異部位]
野生型のSSIIa2遺伝子、および本研究で得られた変異型(「18AS29」)のSSIIa2遺伝子配列を、それぞれ配列表の配列番号1、および配列番号2、並びに図1に示した。
野生型および変異型(「18AS29」)のSSIIa遺伝子の変異は図1のとおりである。野生型のSSIIaが「AATTTGAATTTCTCTGAACTTGAAAATGTTTCT」(配列番号16)であるところ、変異型(「18AS29」)のSSIIa2は野生型に相当する9塩基の欠損があり、その結果アミノ酸残基の欠損が生じている。
[SSIIa遺伝子変異ソバ植物由来のソバ粉の尿素崩壊性増加程度]
上記変異が尿素崩壊性に与える影響を調査するため、「18AS29」の形質固定前の系統(突然変異体と野生型が存在するソバ集団)より、当該変異を持つ株と、当該変異を持たない株について、尿素崩壊性を調査した。尿素崩壊性は2M尿素で可溶化させたデンプンに対するヨウ素-デンプン反応を比色定量することで行った。
具体的には、ソバの種子の殻を取り除いた後、乳鉢で粉砕して調製したソバ粉約20mgを0.5mlチューブに秤量し、2M尿素1mlを加え、25℃にて、16時間しんとうし(200rpm)、上清20μLに対し180μLのヨウ素液(0.002%ヨウ素-0.02%ヨウ化カリウム溶液)を入れ、マイクロプレートリーダー(Thermo Scientific 社:Multiskan FC)で690nmの吸光度を測定した。
その結果は図2のとおりである。野生型と比較し、当該アミノ酸変異により尿素崩壊性が1.61倍増加している。t検定において平均値(N=6)に0.1%水準で有意差があった。
[SSIIa遺伝子変異ソバ植物由来のソバ粉の糊化特性]
また、Noda et al. 2004の方法を用いて示差走査熱量計(DSC)により糊化特性を測定し、比較した。
Figure 2022140409000002
[小括]
以上の結果から、SSIIa遺伝子に変異を導入することで、尿素崩壊性を増加させたソバ属植物体を作製でき、調理後の食品の柔らかさ関連する変化が生じることがわかる。
[春まき栽培での野生型および変異型の比較]
「18AS29」と「IH3」を交配し、F2分離世代の種子を2021年春に九州沖縄農業研究センターにて栽培し、株ごとに種子を収穫した。収穫種子は、前述の方法で尿素崩壊性を調査した。収穫した株の遺伝子型は、サンガーシーケンスにより判別した。解析には、野生型36株、変異型53株を使用した。
また、代表的な野生型3株・変異型3株について、前述の方法でソバ粉を調製し、DSCを用いて糊化特性を調査した。
結果を図3および下表に示す。開花後に隔離処理(袋かけ)はしていない。栽培時は周囲を野生型の花粉を持つ株に囲まれていたため、変異型系統はそれらの花粉を受粉した可能性がある(野生型の尿素崩壊程度が過少評価となっている可能性がある)。それでも有意差をもって尿素崩壊性に差があることを確認した(図3)。
Figure 2022140409000003
表に示したとおり、変異型は糊化開始温度、糊化ピーク温度、エンタルピーが有意に低下していた。
[夏まき栽培での野生型および変異型の尿素崩壊性の比較]
「18AS29」と「IH3」を交配し、F3世代の種子を2021年夏に九州沖縄農業研究センターにて栽培し、株ごとに種子を収穫した。収穫種子は前述の方法で、尿素崩壊性を調査した。収穫した株の遺伝子型は、後述のDNAマーカーを用いて判別した。解析には、野生型10株、変異型10株を使用した。なお、開花前に隔離処理(袋かけ)をした。
結果を図4に示す。有意差をもって尿素崩壊性に差があることを確認した。
[野生型検出用プライマーおよび変異型検出用プライマーによる遺伝子型の検出]
上記のF3世代の種子を用い、野生型、ヘテロ、変異型のゲノムDNAに対し、野生型検出プライマー、変異型検出プライマーを用いてPCRを行い、アガロースゲル電気泳動にて増幅断片を調査した。
(野生型検出用のプライマー配列とPCR条件)
5'プライマー:GAATTTCTCTGAACTTGAAAATG (配列番号18)
3'プライマー:GCATTATCCCCAGCAAGTGT (配列番号19)
PCR条件:98℃ 10秒, 60℃ 5秒, 68℃ 10秒, 35サイクル, ポリメラーゼ KOD one(登録商標)(東洋紡株式会社)
(変異型検出用のプライマー配列とPCR条件)
5'プライマー:TTGCAGAAAACTTGAATTTTGAA(配列番号20)
3'プライマー:CATCTCCAAGCCCACCTAAG (配列番号21)
PCR条件:98℃ 10秒, 60℃ 5秒, 68℃ 10秒, 33サイクル, ポリメラーゼ KOD one(登録商標)(東洋紡株式会社)
結果を図5に示す。該当するサイズのバンド(具体的には、野生型は249bp、変異型は530bp)の有無を指標に各遺伝子型を決定した。
[変異部位検出用プライマーによる遺伝子型の検出]
上記のF3世代の種子を用い、野生型、ヘテロ、変異型のゲノムDNAに対し、変異部位を内容するプライマーを設計し、PCRを行い、チップ電気泳動装置にて増幅断片を調査した。該当するサイズのバンドの有無を指標に各遺伝子型を決定した。
5'プライマー: CCGGTTCCAGTGCTAATTCAGG (配列番号22)
3'プライマー: GTCATCTGATGGCCAAGAAACA (配列番号23)
PCR条件:98℃ 10秒, 55℃ 5秒, 68℃ 5秒, 37サイクル, ポリメラーゼ KOD One(登録商標)(東洋紡株式会社)
結果を図6に示す。変異型は9塩基欠損しているため、野生型とバンドの位置が異なる。ヘテロは野生型、変異型両方の遺伝子型を持つため2本のバンドが生じる。増幅断片の大きさは、野性型は125 bp、変異型は116 bpである。
[実施例中で引用した文献]
Takahiro Noda, Shogo Tsuda, Motoyuki Mori, Shigenobu Takigawa, Chie Matsuura-Endo, Katsuichi Saito, Wickramasinghe Hetti Arachichige Mangalika, Akihiro Hanaoka, Yasuyuki Suzuki, Hiroaki Yamauchi (2004). The effect of harvest dates on the starch properties of various potato cultivars. Food Chemistry 86, 119-125.
本発明のデンプン合成酵素が変異したソバ属植物体は、野生型と比較し、尿素崩壊性が増加する。そのため、本発明の技術を用いることによって調理後の食品の柔らかさの変化したソバ属植物体の栽培が可能となり、消費者のニーズに答えられると考えられる。
配列番号1 ソバSSIIa2(野生型)遺伝子
配列番号2 ソバSSIIa2(変異型)遺伝子
配列番号3 ソバSSIIa2(野生型)cDNA
配列番号4 ソバSSIIa2(変異型)cDNA
配列番号5 ダッタンソバSSIIa2 cDNA
配列番号6 ダッタンソバSSIIa1 cDNA
配列番号7 宿根ソバSSIIa2 cDNA
配列番号8 宿根ソバSSIIa1 cDNA
配列番号9 ソバSSIIa2(野生型)
配列番号10 ソバSSIIa2(変異型)
配列番号11 ソバSSIIa1
配列番号12 ダッタンソバSSIIa2
配列番号13 ダッタンソバSSIIa1
配列番号14 宿根ソバSSIIa2
配列番号15 宿根ソバSSIIa1
配列番号16 ソバSSIIa2(野生型)遺伝子およびアミノ酸の部分配列
配列番号17 ソバSSIIa2(変異型)遺伝子およびアミノ酸の部分配列
配列番号18 野生型検出用5'プライマー
配列番号19 野生型検出用3'プライマー
配列番号20 変異型検出用5'プライマー
配列番号21 変異型検出用3'プライマー
配列番号22 変異部位を含む断片を増幅するための5'プライマー
配列番号23 変異部位を含む断片を増幅するための3'プライマー

Claims (13)

  1. デンプン合成酵素(SSIIa)活性を欠損した、ソバ属植物。
  2. SSIIa活性の欠損が、SSIIa遺伝子の、スプライシング変異、ストップコドン挿入変異、アミノ酸欠失変異およびアミノ酸置換変異からなる群より選択されるいずれかである、請求項1に記載のソバ属植物。
  3. SSIIaが、SSIIa2である、請求項1または2に記載のソバ属植物。
  4. 以下のいずれかのポリヌクレオチドを有する、ソバ属植物。
    (a)配列番号2の配列からなるポリヌクレオチド。
    (b)配列番号2の配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の配列同一性を有し、配列番号3の位置577~585に相当するヌクレオチドのいずれかに欠失のあるポリヌクレオチド。
  5. ソバ属植物が、ソバ(Fagopyrum esculentum)、ダッタンソバ(F. tataricum)、宿根ソバ(F. cymosum)、もしくはソバ野生種(F.homotropicum)、またはそれらのいずれかの雑種である、請求項1~5のいずれか1項に記載のソバ属植物。
  6. 請求項1~6のいずれか1項に記載のソバ属植物の、植物体。
  7. 請求項6に記載の植物体、またはその後代を用いることを含む、ソバ属植物の育種方法。
  8. 請求項7に記載の植物体の、収穫物、繁殖材料または加工品。
  9. 以下のいずれかのタンパク質の活性を抑制することによる、ソバ属植物の尿素崩壊性を増加させる方法:
    (A)配列番号9~15のいずれか1つのアミノ酸配列からなるタンパク質;
    (B)配列番号9~15のいずれか1つのアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつソバ属植物の尿素崩壊性を制御する機能を有するタンパク質;
    (C)配列番号9~15のいずれか1つのアミノ酸配列において1~60個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列をコードし、かつソバ属植物のデンプンの尿素崩壊性および糊化温度を制御する機能を有するポリヌクレオチド。
  10. 請求項9に記載の方法であって、タンパク質の活性を抑制することが、下記のいずれかのタンパク質の活性を抑制することである、方法:
    (A’)配列番号9、11、および13のいずれか1つのアミノ酸配列からなるタンパク質;
    (B’)配列番号9、11、および13のいずれか1つのアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつソバ属植物の尿素崩壊性を制御する機能を有するタンパク質;
    (C’)配列番号9、11、および13のいずれか1つのアミノ酸配列において1~60個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列をコードし、かつソバ属植物の尿素崩壊性を制御する機能を有するポリヌクレオチド。
  11. 下記の少なくとも一方を満たす、ソバ属植物、またはその種実もしくは粉:
    ・尿素崩壊性が、野生型に比較して1.5倍以上である。
    ・糊化ピーク温度が、野生型に比較して95%以下である。
  12. 下記のいずれかのプライマー対、またはそれを含む、SSIIa活性を欠損したソバ属植物を判定するためのキット:
    (a) 配列番号20の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーと、配列番号21の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーとの対;
    (b) 15~30塩基長であり、配列番号20の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーと、15~30塩基長であり、配列番号21の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーとの対であって、配列番号2の全部または一部の配列からなるポリヌクレオチドを鋳型として増幅断片を増幅可能な対;
    (c) 配列番号22の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーと、配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーとの対;
    (d) 15~30塩基長であり、配列番号22の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーと、15~30塩基長であり、配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーとの対であって、配列番号2の全部または一部の配列からなるポリヌクレオチドを鋳型として増幅断片を増幅可能な対。
  13. 下記のいずれかのプライマー対を用いるPCR反応により変異型の増幅断片が検出されるポリヌクレオチドを有する、ソバ属植物、またはその種実もしくは粉:
    (a) 配列番号20の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーと、配列番号21の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーとの対;
    (b) 15~30塩基長であり、配列番号20の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーと、15~30塩基長であり、配列番号21の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーとの対であって、配列番号2の全部または一部の配列からなるポリヌクレオチドを鋳型として増幅断片を増幅可能な対;
    (c) 配列番号22の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーと、配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーとの対;
    (d) 15~30塩基長であり、配列番号22の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーと、15~30塩基長であり、配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と少なくとも90%の配列同一性を有するオリゴヌクレオチドプライマーとの対であって、配列番号2の全部または一部の配列からなるポリヌクレオチドを鋳型として増幅断片を増幅可能な対。
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