以下、本発明に係る一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態のディスクブレーキ10は、キャリア(取付部材)11と、一対のパッドスプリング12,12と、一対の摩擦パッド13,13と、キャリパ14とを備えている。ディスクブレーキ10は、自動車等の車両に取り付けられるものであり、制動対象となる図示略の車輪とともに回転する図1,図2に示すディスク15に摩擦抵抗を付与して車輪の回転を制動するものである。なお、以下においては、特に記載がなければ車両への取り付け状態をもって説明し、その際のディスク15の径方向をディスク径方向と称し、ディスク15の軸方向をディスク軸方向と称し、ディスク15の回転方向をディスク回転方向と称す。
キャリア11は、図1〜図5に示すように、鏡面対称の形状をなす一体成形品である。キャリア11は、図1,図2に示す一対のディスクパス部20,20と、図2に示す取付ベース部21と、図1,図2に示すアウタビーム部22とを有している。
図1,図2に示す一対のディスクパス部20,20は、ディスク回転方向に離間して配置される。図2に示す取付ベース部21は、ディスク回転方向に延在しており、ディスク15よりもその軸方向一側で一対のディスクパス部20,20を連結する。図1,図2に示すアウタビーム部22は、ディスク回転方向に延在しており、ディスク15よりもその軸方向他側(取付ベース部21とは反対側)で一対のディスクパス部20,20を連結する。言い換えれば、キャリア11はディスク回転方向の両端位置に一対のディスクパス部20,20を有している。
キャリア11は、取付ベース部21がディスク15よりも車両の車幅方向の内側(以下、インナ側と称す)に配置される。また、キャリア11は、アウタビーム部22がディスク15よりも車両の車幅方向の外側(以下、アウタ側と称す)に配置される。そして、キャリア11は、一対のディスクパス部20,20がディスク15の外径側をディスク軸方向に越えるように配置される。
取付ベース部21は、そのディスク回転方向の両端位置に図3〜図5に示す一対のボス部24,24がアウタビーム部22に対し反対方向に突出するように形成されている。一対のボス部24,24には、それぞれに、図3,図4に示す取付穴25がディスク軸方向に沿って形成されている。よって、取付ベース部21には、そのディスク回転方向の両端位置に一対の取付穴25,25が形成されている。キャリア11は、これら取付穴25,25に挿通される締結部材によって車両の非回転部分に取り付けられることになる。
一対のディスクパス部20,20は、それぞれが、図3に示すように、取付ベース部21のディスク回転方向の端部からディスク径方向外方に延出するインナ側パッドガイド(パッドガイド)27を有している。また、一対のディスクパス部20,20は、それぞれが、アウタビーム部22のディスク回転方向の端部からディスク軸方向に沿ってインナ側に若干突出した後にディスク径方向外方に延出するアウタ側パッドガイド(パッドガイド)28を有している。さらに、一対のディスクパス部20,20は、それぞれが、インナ側パッドガイド27およびアウタ側パッドガイド28のディスク径方向の外端部同士を繋ぐ中間接続部29を有している。加えて、一対のディスクパス部20,20は、それぞれが、アウタ側パッドガイド28のディスク径方向の外端部からディスク軸方向において中間接続部29と反対方向に突出するアウタ側突出部30を有している。
言い換えれば、キャリア11には、そのディスク回転方向の両端位置に、一対のインナ側パッドガイド27,27と一対のアウタ側パッドガイド28,28と一対の中間接続部29,29と一対のアウタ側突出部30,30とが形成されている。アウタ側パッドガイド28,28は、それぞれが、ディスク径方向の内端位置にディスク軸方向アウタ側に突出する突出部28Aを有している。一対のアウタ側パッドガイド28,28の図5に示す突出部28A,28A同士を結ぶようにアウタビーム部22がディスク回転方向に延在している。
図6に一方のみを示すように、一対のインナ側パッドガイド27,27は、取付ベース部21とともにディスク15よりもインナ側に配置されている。また、一対のアウタ側パッドガイド28,28および一対のアウタ側突出部30,30は、アウタビーム部22とともにディスク15よりもアウタ側に配置されている。一対の中間接続部29,29は、ディスク15よりもディスク径方向外側にてディスク15をディスク軸方向に越えている。
図1に示すように、一対のディスクパス部20,20には、それぞれにガイドピン穴31がディスク軸方向に沿って穿設されている。よって、キャリア11には、ディスク回転方向両端位置に一対のガイドピン穴31,31が形成されている。一対のガイドピン穴31,31は、それぞれが、ディスクパス部20のディスク径方向外端位置に形成されている。一対のガイドピン穴31,31は、それぞれが、図3に示すインナ側パッドガイド27から中間接続部29およびアウタ側パッドガイド28を貫通してアウタ側突出部30の途中位置まで形成されている。
図1に示すように、一対のディスクパス部20,20のガイドピン穴31,31には、それぞれにガイドピン32が摺動可能に嵌合されている。よって、キャリア11には、ディスク回転方向の両端位置に一対のガイドピン32,32が摺動可能に嵌合されている。一対のガイドピン32,32は、それぞれが、ガイドピン穴31に嵌合する軸部33とガイドピン穴31よりも外側に位置する六角形状の頭部34とを有している。頭部34にはネジ穴35が形成されている。
また、一対のガイドピン32,32には、それぞれにブーツ36が被せられている。よって、キャリア11には、ディスク回転方向の両端位置に、それぞれがガイドピン32を覆う一対のブーツ36,36が設けられている。一対のブーツ36,36は、それぞれが、ディスクパス部20とガイドピン32の頭部34との間に、ガイドピン32の軸部33を覆うように介装されている。
図4に示すように、一対のインナ側パッドガイド27,27には、それぞれにガイド凹部40が形成されている。よって、キャリア11には、ディスク15よりもインナ側のディスク回転方向の両側位置に一対のガイド凹部40,40が形成されている。一対のガイド凹部40,40は、一方のガイド凹部40が、一方のインナ側パッドガイド27の他方のインナ側パッドガイド27側にこの他方のインナ側パッドガイド27から離れる方向に凹んで形成されている。また、他方のガイド凹部40が、他方のインナ側パッドガイド27の一方のインナ側パッドガイド27側にこの一方のインナ側パッドガイド27から離れる方向に凹んで形成されている。言い換えれば、一対のインナ側パッドガイド27,27には、それぞれのディスク回転方向対向面部分に、キャリア11のディスク回転方向中心から見てディスク回転方向外方に向けて凹むガイド凹部40が形成されている。
一対のガイド凹部40,40は、それぞれが、最もディスク回転方向の奥側にあってキャリア11のディスク回転方向中心側に臨む奥面43と、ディスク径方向の内側に位置してディスク径方向の外方に臨む内側面44と、ディスク径方向の外側に位置してディスク径方向の内方に臨む外側面45とを有している。
図2に示すように、一対のアウタ側パッドガイド28,28には、それぞれにガイド凹部41が形成されている。よって、キャリア11には、ディスク15よりもアウタ側のディスク回転方向の両側位置に一対のガイド凹部41,41が形成されている。一対のガイド凹部41,41は、一方のガイド凹部41が、一方のアウタ側パッドガイド28の他方のアウタ側パッドガイド28側にこの他方のアウタ側パッドガイド28から離れる方向に凹んで形成されている。また、他方のガイド凹部41が、他方のアウタ側パッドガイド28の一方のアウタ側パッドガイド28側にこの一方のアウタ側パッドガイド28から離れる方向に凹んで形成されている。言い換えれば、一対のアウタ側パッドガイド28,28には、それぞれのディスク回転方向対向面部分に、キャリア11のディスク回転方向中心から見てディスク回転方向外方に向けて凹むガイド凹部41が形成されている。
一対のガイド凹部41,41は、それぞれが、最もディスク回転方向の奥側にあってキャリア11のディスク回転方向中心側に臨む奥面47と、ディスク径方向の内側に位置してディスク径方向の外方に臨む内側面48と、ディスク径方向の外側に位置してディスク径方向の内方に臨む外側面49とを有している。
図4に示すガイド凹部40,40の内側面44,44と、図2に示すガイド凹部41,41の内側面48,48とは同一平面となるように配置されている。この内側面44,44、48,48を含む仮想の平面は、ディスク15の中心とキャリア11のディスク回転方向の中心とを通るディスク径方向の線に対して直交している。また、図4に示すガイド凹部40,40の外側面45,45と、図2に示すガイド凹部41,41の外側面49,49とは同一平面となるように配置されている。この外側面45,45、49,49を含む仮想の平面も、ディスク15の中心とキャリア11のディスク回転方向の中心とを通るディスク径方向の線に対して直交している。
また、図2,図4に示すいずれもディスク回転方向一側にある一方のガイド凹部40の奥面43および一方のガイド凹部41の奥面47は、同一平面となるように配置されている。この奥面43、47を含む仮想の平面は、ディスク15の中心線とキャリア11のディスク回転方向の中心とを含む中央面に平行をなしている。同様に、いずれもディスク回転方向他側にある他方のガイド凹部40の奥面43および他方のガイド凹部41の奥面47は、同一平面となるように配置されている。この奥面43、47を含む仮想の平面は、ディスク15の中心線とキャリア11のディスク回転方向の中心とを含む中央面に平行をなし、この中央面との距離が、この中央面と前記一方のガイド凹部40,41の奥面43,47を含む平面との距離と等しくなっている。
図3に示すように、一対の摩擦パッド13,13は、それぞれが、裏板51と、裏板51の支持面52に支持されるライニング53と、裏板51の支持面52とは反対側の背面54に取り付けられるシム板55,56と、バネ部材57を有している。裏板51は、図7に示すように、鏡面対象の形状をなしており、ライニング53が貼着される主板部63と主板部63のディスク回転方向(図7の左右方向)の両端部からディスク回転方向に沿って互いに反対向きに突出する一対の凸部(嵌合部)64,64とを有している。ライニング53も鏡面対象の形状をなしている。図4に示すようにシム板55,56は裏板51の主板部63に取り付けられている。図3に示すように、一対の摩擦パッド13,13のバネ部材57,57は、それぞれがディスク回転方向同側の凸部64に取り付けられている。バネ部材57,57は、具体的には、車両の前進時にディスク回転方向入口側となる凸部64に取り付けられている。
図7に示すように、一対の凸部64,64は、それぞれが、ディスク回転方向の外端部に位置する端面66と、端面66のディスク径方向内側(図7の下側)にあって端面66よりもディスク回転方向の内側に凹むように段差状をなす段差面67と、ディスク径方向外側(図7の上側)に位置する外側面68と、ディスク径方向内側に位置する内側面69とを有している。一対の凸部64,64は、外側面68,68同士が、裏板51の板厚方向に沿う同一平面となるように配置されており、内側面69,69同士が、外側面68,68と平行な同一平面となるように配置されている。また、一対の凸部64,64は、端面66,66が、互いに平行をなして裏板51の板厚方向に沿って形成されている。端面66,66は、外側面68,68および内側面69,69に直交する方向に沿って形成されている。
図4,図5に示すように、一対のパッドスプリング12,12は、一方のパッドスプリング12がディスク回転方向一側のディスクパス部20に取り付けられ、他方のパッドスプリング12がディスク回転方向他側のディスクパス部20に取り付けられている。
パッドスプリング12は、図8〜図11に示すようにディスク15の軸方向中心に対して鏡面対称の形状をなしており、一枚の板材から打ち抜かれ折り曲げられることで形成されている。パッドスプリング12は、一対の案内部71,71と、これら案内部71,71を連結する連結部72と、連結部72の一対の案内部71,71の間に位置する係止部73とを有している。また、パッドスプリング12は、いずれも一対の案内部71,71の相互反対側に設けられた、一対の端面ガイド部74,74、一対の内側面ガイド部(ガイド部)75,75および一対の径方向付勢部76,76を有している。さらに、パッドスプリング12は、一対の内側延出部77,77を有している。一対のパッドスプリング12,12は、それぞれ、図8(c),図9に示すように一対の案内部71,71がディスク15の両面に配置され、連結部72がディスク15の径方向外方に配置される。
案内部71,71は、図12に示すように、キャリア11のガイド凹部40,41に嵌合する。また、案内部71,71は、図2,図4に示すように、摩擦パッド13,13の凸部64,64を嵌合させて、摩擦パッド13,13の凸部64,64を案内する。図13に示すように、係止部73は、キャリア11に係止される部分である。端面ガイド部74は、パッドスプリング12への組み付け時に図7に示す摩擦パッド13の凸部64の端面66を案内する部分である。図13等に示す内側面ガイド部75は、パッドスプリング12への組み付け時に図7に示す摩擦パッド13の凸部64の内側面69を案内する部分である。図13等に示す径方向付勢部76は、図7に示す摩擦パッド13の凸部64の外側面68側に接触して摩擦パッド13をディスク径方向内方に付勢する部分である。
図8〜図11に示す一対の案内部71,71は、それぞれが、端面案内板部81と、内側面案内板部82と、外側面対向板部83と、図8,図9,図11に示す係止爪部84とを有している。言い換えれば、パッドスプリング12は、図8〜図11に示す一対の端面案内板部81,81と、一対の内側面案内板部82,82と、一対の外側面対向板部83,83と、図8,図9,図11に示す一対の係止爪部84,84とを有している。
図8〜図11に示す端面案内板部81は、図7に示す摩擦パッド13の凸部64の端面66を案内する部分である。図8〜図11に示す内側面案内板部82は、端面案内板部81のディスク径方向内方に配置されて図7に示す摩擦パッド13の凸部64の内側面69を案内する部分である。図8〜図11に示す外側面対向板部83は、端面案内板部81のディスク径方向外方に配置されて図7に示す摩擦パッド13の凸部64の外側面68に対向する部分である。図8,図9,図11に示す係止爪部84は、図12等に示すキャリア11に係止される部分である。
図8〜図11に示す端面案内板部81は、略矩形状をなしている。内側面案内板部82は、矩形状をなしており、端面案内板部81のディスク径方向内側の端縁部から端面案内板部81と直交するようにディスク回転方向に延出している。外側面対向板部83は、略矩形状をなしており、端面案内板部81のディスク径方向外側の端縁部からディスク回転方向の内側面案内板部82と同側にこれと平行に延出している。よって、案内部71は、ディスク軸方向に見てコ字状をなしている。
図8,図9,図11に示す係止爪部84は、端面案内板部81および外側面対向板部83を構成する部分に切り込みを入れることで形成されるものである。係止爪部84は、端面案内板部81と同一平面をなして端面案内板部81から外側面対向板部83の方向に延出するとともに先端側が鈍角をなして外側面対向板部83の方向に屈曲する形状をなしている。よって、係止爪部84は、先端部が外側面対向板部83よりもディスク径方向外側に突出している。
一対の端面案内板部81,81は互いに同一平面に配置され、一対の内側面案内板部82,82も互いに同一平面に配置され、一対の外側面対向板部83,83も互いに同一平面に配置されている。
図8(c),図9,図10に示すように、連結部72は、外側面対向板部83,83の端面案内板部81,81に対し反対側の端縁部同士を連結している。よって、連結部72は、一対の案内部71,71をディスク径方向外方部位で連結している。連結部72は、一対の外側延出板部85,85と連結板部86とを有している。一対の外側延出板部85,85は、それぞれが、矩形状をなしており、外側面対向板部83の端面案内板部81に対し反対側の端縁部から端面案内板部81と平行をなしてディスク径方向外方に延出している。一対の外側延出板部85,85は互いに同一平面に配置されている。連結板部86は、一対の外側延出板部85,85からこれらと鈍角をなしてディスク回転方向の外側面対向板部83,83と同側に延出している。連結板部86には、外側延出板部85,85側の外側延出板部85,85の間位置に、外側延出板部85,85から離れる方向に凹む凹状切欠部88が形成されている。連結板部86には、この凹状切欠部88に沿う形状の補強用のリブ89が板厚方向に膨出して形成されている。
係止部73は、連結板部86の凹状切欠部88の底位置から、連結板部86と同一平面をなして外側延出板部85,85側に延出した後、ディスク回転方向に沿って外側延出板部85,85から離れるように折り返されている。係止部73は、その先端部の両側に、図8(c),図9,図11に示すように一対の係止爪90,90が形成されている。
一対の端面ガイド部74,74は、それぞれ、案内部71の端面案内板部81からこれと同一平面をなして延出する基板部91を有している。また、一対の端面ガイド部74,74は、それぞれ、基板部91の端面案内板部81に対し反対側の端縁部から基板部91と鈍角をなして内側面案内板部82および外側面対向板部83に対し反対側に傾斜する傾斜板部92を有している。
一対の内側面ガイド部75,75は、それぞれ、案内部71の内側面案内板部82からこれと同一平面をなして延出する基板部95を有している。また、一対の内側面ガイド部75,75は、それぞれ、基板部95の内側面案内板部82に対し反対側の端縁部から基板部95と鈍角をなして案内部71の外側面対向板部83に対し反対側に傾斜する傾斜板部96を有している。つまり、一対の内側面ガイド部75,75は、一対の案内部71,71の互いに遠い側のディスク径方向内方部位からディスク軸方向に沿って互いに離れる方向へと延出している。基板部95の傾斜板部96に対し反対側には、厚さ方向の外側面対向板部83側に膨出する突起部97が形成されている。突起部97は基板部95の端面案内板部81に対し反対側の端部位置に形成されている。
一対の径方向付勢部76,76は、それぞれが、案内部71の外側面対向板部83からこれと同一平面をなして延出する基端板部101を有している。また、一対の径方向付勢部76,76は、それぞれが、基端板部101の外側面対向板部83に対し反対側の端縁部から基端板部101に対し鈍角をなしてディスク径方向外方へ斜めに延出する延出板部102を有している。さらに、一対の径方向付勢部76,76は、それぞれが、延出板部102の基端板部101に対し反対側の端縁部から湾曲しつつディスク径方向内方に折り返す湾曲板部103を有している。加えて、一対の径方向付勢部76,76は、それぞれが、湾曲板部103の延出板部102に対し反対側の端縁部から基端板部101のディスク径方向内方でこれと鋭角をなすように延出する当接板部104を有している。つまり、一対の径方向付勢部76,76は、一対の案内部71,71の互いに遠い側のディスク径方向外方部位からディスク軸方向に沿って互いに離れる方向へと延出してから折り返されて形成されている。一対の径方向付勢部76,76は、一対の案内部71,71とディスク回転方向の位置を合わせている。
一対の内側延出部77,77は、それぞれが、矩形状をなしており、内側面案内板部82の端面案内板部81に対し反対側の端縁部から端面案内板部81と平行をなしてディスク径方向内方に延出している。一対の内側延出部77,77は互いに同一平面に配置されている。
パッドスプリング12は、図12〜図14に示すように、同じディスクパス部20を構成するインナ側パッドガイド27とアウタ側パッドガイド28とに取り付けられる。つまり、図12に示すように、同じディスクパス部20を構成するインナ側パッドガイド27のガイド凹部40とアウタ側パッドガイド28のガイド凹部41とに一対の案内部71,71が嵌合する。また、図13に示すように、同じディスクパス部20を構成するインナ側パッドガイド27およびアウタ側パッドガイド28の間に係止部73が嵌合する。このようにして、このディスクパス部20にパッドスプリング12が取り付けられる。
このような取付状態で、インナ側の案内部71は、図14に示すように、端面案内板部81がインナ側パッドガイド27のガイド凹部40の奥面43に当接する。また、内側面案内板部82がガイド凹部40の内側面44に当接する。そして、外側面対向板部83は、係止爪部84の作用により、ガイド凹部40の外側面45に隙間をもって対向して配置される。このとき、図8,図9,図11に示す係止爪部84の先端が、インナ側パッドガイド27のガイド凹部40の外側面45に当接する。
同様に、アウタ側の案内部71は、図2に示すように、端面案内板部81がアウタ側パッドガイド28のガイド凹部41の奥面47に当接する。また、内側面案内板部82がガイド凹部41の内側面48に当接する。そして、外側面対向板部83は、係止爪部84の作用により、ガイド凹部41の外側面49に隙間をもって対向して配置される。このとき、図8,図9,図11に示す係止爪部84の先端は、アウタ側パッドガイド28のガイド凹部41の外側面49に当接する。また、図13に示すように、係止部73のインナ側の係止爪90がインナ側パッドガイド27に当接し、アウタ側の係止爪90がアウタ側パッドガイド28に当接する。パッドスプリング12は、係止爪部84,84および係止部73によってディスクパス部20に対する位置ずれが規制される。
上記取付状態で、図13に示すように、いずれもインナ側に配置される端面ガイド部74、内側面ガイド部75および径方向付勢部76が、インナ側パッドガイド27よりもさらにインナ側に延出する。これらインナ側に配置される端面ガイド部74、内側面ガイド部75および径方向付勢部76は、ボス部24のインナ側の端部よりはアウタ側の範囲内にある。
また、上記取付状態で、いずれもアウタ側に配置される端面ガイド部74、内側面ガイド部75および径方向付勢部76が、アウタ側パッドガイド28よりもさらにアウタ側に延出してアウタビーム部22のインナ側に向く内側端面(ディスク軸方向内側端面)22aよりアウタ側つまりディスク軸方向外側に延びる。より詳しくは、アウタ側の端面ガイド部74、内側面ガイド部75および径方向付勢部76は、内側端面22aの中で最もアウタ側に位置するディスク径方向外端位置よりもさらにアウタ側まで延びる。なお、これらアウタ側の端面ガイド部74、内側面ガイド部75および径方向付勢部76は、アウタビーム部22のアウタ側に向く外端面22bおよびアウタ側突出部30のアウタ側に向く先端面30aよりもインナ側つまりディスク軸方向内側の範囲内にある。
上記のようにして、一対のパッドスプリング12,12のうちの一方のパッドスプリング12がディスク回転方向一側のディスクパス部20に取り付けられ、他方のパッドスプリング12がディスク回転方向他側のディスクパス部20に取り付けられる。そして、この状態で、一対のパッドスプリング12,12のインナ側の案内部71,71にインナ側の摩擦パッド13が、一対のパッドスプリング12,12のアウタ側の案内部71,71にアウタ側の摩擦パッド13が、それぞれ組み付けられることになる。
この組み付けの際に、図15および図16にディスク回転方向一側を示すように、インナ側の摩擦パッド13は、まず、図15(a)に示すように、一対のパッドスプリング12,12のインナ側の径方向付勢部76,76の当接板部104,104に略沿うように斜めの状態でインナ側から挿入される。そして、インナ側の摩擦パッド13は、凸部64,64のそれぞれの内側面69と背面54との境界の角部がアウタ側の内側面ガイド部75に当接させられる。このとき、図示は略すが、凸部64,64の図7に示す端面66,66が一対のパッドスプリング12,12のインナ側の端面ガイド部74,74の間に挿入される。
そして、図15(b)から図16(a)に示すように、上記した角部を支点にしてインナ側の摩擦パッド13が内側面ガイド部75,75に垂直をなすように回転させられることになる。これにより、インナ側の摩擦パッド13の凸部64,64は、内側面ガイド部75,75でディスク径方向内方への移動が規制されながら回転する。すると、これらの凸部64,64は、インナ側の径方向付勢部76,76の当接板部104,104をディスク径方向外方に押し上げ、インナ側の径方向付勢部76,76の主に湾曲板部103,103を弾性変形させる。最終的に、これらの凸部64,64は、インナ側の内側面ガイド部75,75とインナ側の径方向付勢部76,76の当接板部104,104との間で、インナ側の内側面ガイド部75,75に略垂直をなして姿勢が安定する。このとき、インナ側の径方向付勢部76,76は全体としてディスク径方向外方に弾性変形しており、インナ側の摩擦パッド13の凸部64,64をインナ側の内側面ガイド部75,75に押し付ける。
この状態から、インナ側の摩擦パッド13の凸部64,64が図16(b)に示すようにアウタ側に移動させられると、これら凸部64,64の端面66,66がインナ側の端面ガイド部74,74を摺動しインナ側の案内部71,71の端面案内板部81,81を摺動してこれらの間に配置される。また、これと並行して、これら凸部64,64の内側面69,69がインナ側の内側面ガイド部75,75を摺動し突起部97,97を乗り越えてインナ側の案内部71,71の内側面案内板部82,82を摺動してこれらの上に配置される。さらに並行して、これら凸部64,64の外側面68,68がインナ側の径方向付勢部76,76を摺動して、インナ側の案内部71,71の外側面対向板部83,83に対向する状態になる。このようにして、インナ側の摩擦パッド13が、一対の凸部64,64をインナ側の案内部71,71に嵌合させて一対のパッドスプリング12,12に組み付けられる。その結果、インナ側の摩擦パッド13が、一対の凸部64,64をインナ側パッドガイド27,27のガイド凹部40,40に嵌合させてキャリア11に組み付けられる。
この組付状態で、図3,図5に示すように、インナ側の摩擦パッド13は裏板51よりもアウタ側にライニング53を配置している。また、図4に示すように、インナ側の摩擦パッド13の凸部64,64は、一対のパッドスプリング12,12のインナ側の案内部71,71内に嵌合される。また、インナ側の摩擦パッド13の凸部64,64は、端面66,66が端面案内板部81,81に当接可能に対向し、内側面69,69が内側面案内板部82,82に当接する。さらに、インナ側の摩擦パッド13の凸部64,64は、外側面68,68が外側面対向板部83,83に隙間をあけて対向するとともに径方向付勢部76,76に当接する。図3に一方のみを示すように、一対のパッドスプリング12,12のインナ側の径方向付勢部76,76が弾性変形して凸部64,64つまりインナ側の摩擦パッド13をディスク径方向内方に向かって付勢する。
以上により、図4に示すように、キャリア11のインナ側パッドガイド27,27のガイド凹部40,40が、インナ側の摩擦パッド13のディスク回転方向両端部の凸部64,64に凹凸嵌合することになる。そして、これらガイド凹部40,40と、これらに嵌合する一対のパッドスプリング12,12のインナ側の案内部71,71とが、インナ側の摩擦パッド13をディスク軸方向に案内する状態になる。
アウタ側の摩擦パッド13は、図12,図13に示すアウタビーム部22と、図12,図13に一方のみを示す一対のパッドスプリング12,12との間において、上記と同様に、一対のパッドスプリング12,12のアウタ側の径方向付勢部76,76の当接板部104,104に略沿うように斜めの状態でアウタ側から挿入される。そして、凸部64,64は、それぞれの内側面69と背面54との境界の角部がアウタ側の内側面ガイド部75に当接させられる。このとき、凸部64,64の端面66,66が一対のパッドスプリング12,12のアウタ側の端面ガイド部74,74の間に挿入される。
そして、上記した角部を支点にしてアウタ側の摩擦パッド13が内側面ガイド部75,75に垂直をなすように回転させられることになる。これにより、アウタ側の摩擦パッド13の凸部64,64は、内側面ガイド部75,75でディスク径方向内方への移動が規制されながら回転する。すると、これらの凸部64,64は、アウタ側の径方向付勢部76,76の当接板部104,104をディスク径方向外方に押し上げ、アウタ側の径方向付勢部76,76の主に湾曲板部103,103を弾性変形させる。最終的に、これらの凸部64,64は、アウタ側の内側面ガイド部75,75とアウタ側の径方向付勢部76,76の当接板部104,104との間で、アウタ側の内側面ガイド部75,75に略垂直をなして姿勢が安定する。このとき、アウタ側の径方向付勢部76,76は全体としてディスク径方向外方に弾性変形しており、アウタ側の摩擦パッド13の凸部64,64をアウタ側の内側面ガイド部75,75に押し付ける。
この状態から、アウタ側の摩擦パッド13の凸部64,64がインナ側に移動させられると、これら凸部64,64の端面66,66がアウタ側の端面ガイド部74,74を摺動しアウタ側の案内部71,71の端面案内板部81,81を摺動してこれらの間に配置される。また、これと並行して、これら凸部64,64の内側面69,69がアウタ側の内側面ガイド部75,75を摺動し突起部97,97を乗り越えてアウタ側の案内部71,71の内側面案内板部82,82を摺動してこれらの上に配置される。さらに並行して、これら凸部64,64の外側面68,68がアウタ側の径方向付勢部76,76を摺動して、アウタ側の案内部71,71の外側面対向板部83,83に対向する状態になる。このようにして、アウタ側の摩擦パッド13が、一対の凸部64,64をアウタ側の案内部71,71に嵌合させて一対のパッドスプリング12,12に組み付けられる。その結果、アウタ側の摩擦パッド13が、一対の凸部64,64をアウタ側パッドガイド28,28のガイド凹部40,40に嵌合させてキャリア11に組み付けられる。
この組付状態で、アウタ側の摩擦パッド13は裏板51よりもインナ側にライニング53を配置している。また、アウタ側の摩擦パッド13の凸部64,64は、一対のパッドスプリング12,12のアウタ側の案内部71,71内に嵌合される。また、アウタ側の摩擦パッド13の凸部64,64は、端面66,66が端面案内板部81,81に当接可能に対向し、内側面69,69が内側面案内板部82,82に当接する。さらに、アウタ側の摩擦パッド13の凸部64,64は、外側面68,68が外側面対向板部83,83に隙間をあけて対向するとともに径方向付勢部76,76に当接する。一対のパッドスプリング12,12のアウタ側の径方向付勢部76,76が弾性変形して凸部64,64つまりアウタ側の摩擦パッド13をディスク径方向内方に向かって付勢する。
以上により、図2に示すように、キャリア11のアウタ側パッドガイド28,28のガイド凹部41,41が、アウタ側の摩擦パッド13のディスク回転方向両端部の凸部64,64に凹凸嵌合することになる。そして、これらガイド凹部41,41と、これらに嵌合される一対のパッドスプリング12,12のアウタ側の案内部71,71とが、アウタ側の摩擦パッド13をディスク軸方向に案内する状態になる。
上記の組付状態で、図3に示すように一方のパッドスプリング12が、各摩擦パッド13,13のディスク回転方向一端側を弾性的に支持することになる。また、他方のパッドスプリング12が、各摩擦パッド13,13のディスク回転方向他端側を弾性的に支持することになる。さらに、一方のパッドスプリング12は、連結部72が各摩擦パッド13,13毎の案内部71,71を、案内部71,71のディスク径方向外方部位で連結することになる。また、他方のパッドスプリング12も、連結部72が各摩擦パッド13,13毎の案内部71,71を、案内部71,71のディスク径方向外方部位で連結することになる。
上記の組付状態で、一方のパッドスプリング12は、一対の径方向付勢部76,76が案内部71,71の相反する側のディスク径方向外方部位からディスク軸方向反対側に延出してから折り返されて形成され、各摩擦パッド13,13をディスク径方向内方に向かって付勢することになる。他方のパッドスプリング12も、同様に、各摩擦パッド13,13をディスク径方向内方に向かって付勢することになる。また、図3に示すように、摩擦パッド13,13は、それぞれが、バネ部材57をディスク回転方向入口側のパッドスプリング12の端面ガイド部74に当接させることになる。これにより、摩擦パッド13,13は、ディスク回転方向出口側に付勢されて、図4に示すようにディスク回転方向出口側(図4の左側)の凸部64の端面66をディスク回転方向出口側のパッドスプリング12の端面案内板部81に押し付けることになる。
図1に示すように、キャリパ14は、キャリパボディ110を有しており、キャリパボディ110に形成された一対の腕部111,111がボルト112,112によってガイドピン32,32に固定されている。腕部111,111には、それぞれに貫通孔113,113が形成されており、ボルト112,112は、それぞれがネジ軸部114と六角形状の頭部115とを有している。そして、一対の腕部111,111の貫通孔113,113に挿入されたボルト112,112のネジ軸部114,114がガイドピン32,32のネジ穴35,35に螺合させられる。これにより、ボルト112,112の頭部115,115とガイドピン32,32の頭部34,34とが腕部111,111を挟持する。その結果、キャリパ14は、ガイドピン32,32をキャリア11のガイドピン穴31,31で摺動させることにより、ディスク軸方向に摺動する。
キャリパボディ110は、シリンダ部118を有しており、このシリンダ部118から突出して上記した一対の腕部111,111が形成されている。シリンダ部118は、ディスク15に対しインナ側に対向配置される。キャリパボディ110は、ディスク15に対しアウタ側に対向配置される図2に示す爪部119と、ディスク15の径方向外側を跨いでシリンダ部118と爪部119とを接続する図1に示すブリッジ部120とを有している。よって、キャリパ14は、いわゆるフィスト型のキャリパとなっている。キャリパボディ110は、一対の腕部111,111、シリンダ部118、爪部119およびブリッジ部120を含んで一体成形されている。
キャリパ14は、キャリパボディ110のシリンダ部118内に摺動可能に収容されるピストン122を有している。上記のようにキャリア11に一対のパッドスプリング12,12を介して支持されたインナ側の摩擦パッド13が、このピストン122とディスク15との間に、裏板51をピストン122側にライニング53をディスク15側にして配置される。また、キャリア11に一対のパッドスプリング12,12を介して支持されたアウタ側の摩擦パッド13が、爪部119とディスク15との間に、裏板51を爪部119側にライニング53をディスク15側にして配置される。つまり、ディスク15の両面に一対の摩擦パッド13,13が配置される。
キャリパ14は、ピストン122が、シリンダ部118内に導入されたブレーキ液圧によってディスク15側に移動する。これにより、インナ側の摩擦パッド13をディスク15の方向に押圧しライニング53をディスク15に当接させる。また、この押圧の反力でキャリパ14がガイドピン32,32をキャリア11のガイドピン穴31,31で摺動させて爪部119をディスク15側に移動させる。これにより、爪部119がアウタ側の摩擦パッド13をディスク15側に押圧しライニング53をディスク15に当接させる。つまり、キャリア11に摺動可能に設けられたキャリパ14は、一対の摩擦パッド13,13を移動させてディスク15に押し付けることになり、ディスクブレーキ10は、このようにしてディスク15の回転を制動する。
また、シリンダ部118内には、図示略の駐車ブレーキ機構が設けられている。この駐車ブレーキ機構は、シリンダ部118の爪部119とは反対側に設けられたレバー123で入力が行われる。駐車ブレーキ機構は、このレバー123が回転させられることで、ピストン122を機械的に爪部119側に移動させる。これにより、ブレーキ液圧導入時と同様にして摩擦パッド13,13をディスク15に押し付ける。シリンダ部118には、レバー123に連結される図示略の操作ケーブルを支持するケーブルガイド125が取り付けられている。レバー123とケーブルガイド125との間には、レバー123を待機位置に戻すスプリング124が介装されている。
制動時には、ディスク15の回転中に、上記のようにして摩擦パッド13,13がディスク15に押し付けられる。すると、摩擦パッド13,13はディスク15とともに移動しようとして制動トルクを生じることになる。このような制動時の摩擦パッド13,13の制動トルクは、摩擦パッド13,13のディスク回転方向出口側の凸部64,64の端面66,66から、ディスク回転方向出口側のパッドスプリング12の案内部71,71の端面案内板部81,81に伝達される。摩擦パッド13,13の制動トルクは、これらの端面案内板部81,81から、さらにキャリア11のディスク回転方向出口側のインナ側パッドガイド27のガイド凹部40の奥面43およびアウタ側パッドガイド28のガイド凹部41の奥面47に伝達される。このようにして、摩擦パッド13,13の制動トルクは、車両の非回転部に固定されたキャリア11に受け止められる。言い換えれば、キャリア11に設けられたディスク回転方向出口側のディスクパス部20のインナ側パッドガイド27のガイド凹部40およびアウタ側パッドガイド28のガイド凹部41が、摩擦パッド13,13の制動トルクを受承する。
ここで、摩擦パッド13は、図7に示すように、制動トルクをキャリア11側に伝達する凸部64の端面66の中心Xが、ライニング53のディスク15への当接面53a(図7にハッチングを施した範囲)の図心Oよりもディスク径方向外方に配置されている。
上記した特許文献1のディスクブレーキは、ディスク径方向外方に抜ける段状のパッドガイド部にパッドスプリングを配置し、このパッドスプリングのパッド押圧片で摩擦パッドをディスク径方向内方に付勢するものである。このように、ディスク径方向外方に抜ける段状のパッドガイド部にパッドスプリングを配置すると、パッドスプリングがディスク径方向外方に動けることになる。このため、パッド押圧片による摩擦パッドのセット荷重にバラツキが生じてしまう可能性がある。
これに対して、本実施形態のディスクブレーキ10は、摩擦パッド13,13を案内するパッドスプリング12の案内部71,71が、キャリア11のインナ側パッドガイド27のガイド凹部40およびアウタ側パッドガイド28のガイド凹部41に嵌合して取り付けられている。このため、パッドスプリング12の案内部71,71の動きを規制することができるため、径方向付勢部76,76の位置が安定する。よって、これら径方向付勢部76,76による摩擦パッド13,13のセット荷重にバラツキが生じることを抑制できる。したがって、制動時の摩擦パッド13,13の摺動を安定させることができ、その結果、制動解除時に摩擦パッド13,13が後退しきれずにディスク15に接触した状態で車両の走行が継続される、いわゆる、引き摺りの抑制が可能になる。
とくに、径方向付勢部76,76の基端同士は、連結部72によって連結される位置に配置されている。また、径方向付勢部76,76の基端は、パッドスプリング12をキャリア11に対して固定するための係止爪90と係止爪部84との間に配置されている。このため、径方向付勢部76,76の基端自体の位置が安定するので、これによっても、径方向付勢部76,76による摩擦パッド13,13のセット荷重にバラツキが生じることを抑制できる。したがって、制動時の摩擦パッド13,13の摺動を安定させることができ、その結果、摩擦パッド13,13の引き摺りの抑制が可能になる。
また、図7に示すように、摩擦パッド13の凸部64,64は、ライニング53のディスク15への当接面53aの図心Oよりもディスク径方向外方に配置されている。このため、車両の前進時にディスク15が回転方向Rfで回転している最中にライニング53がディスク15に微圧接触すると、摩擦パッド13にはディスク回転方向出口側の凸部64の端面66の中心Xを支点として図心Oを中心としたディスク回転方向Rfとは逆向きのモーメントMを生じてしまう。このモーメントMが生じる結果、摩擦パッド13のディスク回転方向入口側の凸部64には、ディスク径方向内方の力Fが加わることになる。
これに関して、本実施形態のディスクブレーキ10は、径方向付勢部76が摩擦パッド13の凸部64をディスク径方向内方に向かって付勢している。このため、上記モーメントMによる力Fの方向が径方向付勢部76による付勢力の方向と一致することになる。よって、上記モーメントMによる力が、径方向付勢部76による付勢力の反力となることがない。つまり、径方向付勢部76が摩擦パッド13の凸部64をディスク径方向内方に向かって付勢することで、凸部64の内側面69をパッドスプリング12の内側面案内板部82に予め当接させている。そして、上記モーメントMによる力Fはこの当接を維持する方向になっている。このことから、図示せぬブレーキペダルに軽く足を乗せる程度で発生する液圧による制動時、いわゆる微圧制動時に、ディスク回転方向Rfとは逆向きのモーメントMによる力Fが摩擦パッド13に加わっても摩擦パッド13の挙動が不安定になることを抑制できる。したがって、従前の径方向外側に向かって付勢するパッドスプリングが設けられたディスクブレーキで発生しやすくなっている微圧制動時のブレーキ鳴き(いわゆる微圧鳴き)、本実施形態のディスクブレーキ10であれば、抑制することができる。
また、パッドスプリング12には、案内部71のディスク径方向内方部位からディスク軸方向へ延出し、先端がアウタビーム部22のディスク軸方向内側端面22aより外側に延びる内側面ガイド部75が設けられている。このため、アウタビーム部22があっても径方向付勢部76を変形させながらの案内部71への凸部64の嵌合が容易になる。つまり、凸部64を内側面ガイド部75に当接させれば、凸部64のディスク径方向内方への移動が抑制されることになる。そして、この状態で摩擦パッド13を回転させれば、凸部64で径方向付勢部76をディスク径方向外方へ押し上げて変形させることができる。その結果、支持なく凸部64を押し上げる場合と比べて、径方向付勢部76をディスク径方向外方へ容易に変形させることができる。したがって、アウタビーム部22が邪魔になって凸部64のディスク径方向外方への押し上げ作業が困難な場合であっても、容易に凸部64を内側面ガイド部75と径方向付勢部76との間に配置できる。そして、そのまま摩擦パッド13を移動させることで、凸部64を案内部71へ嵌合させることができる。よって、アウタビーム部22があっても摩擦パッド13の組み付け作業の作業性を向上させることができる。
また、パッドスプリング12は、内側面ガイド部75に加えて、端面ガイド部74および径方向付勢部76も、ディスク軸方向へ延出して、先端がアウタビーム部22のディスク軸方向内側端面22aより外側に延びている。このため、組み付け時に、案内部71に対しディスク軸方向に離れた位置から摩擦パッド13の姿勢を安定させることができる。その上で、摩擦パッド13を、他部品との干渉等を生じることなく案内部71に案内することができる。したがって、摩擦パッド13の組み付け作業の作業性をさらに向上させることができる。
上記実施形態は、ディスクの両面に配置される一対の摩擦パッドと、車両の非回転部分に取り付けられ、前記摩擦パッドのディスク回転方向端部に凹凸嵌合して該摩擦パッドをディスクの軸方向に案内するとともに制動時の前記摩擦パッドの制動トルクを受承するパッドガイドが設けられた取付部材と、該取付部材に摺動可能に設けられ前記一対の摩擦パッドを移動させるキャリパと、前記取付部材に取り付けられ各前記摩擦パッドを弾性的に支持するパッドスプリングと、を備えるディスクブレーキにおいて、前記パッドスプリングは、前記取付部材の前記パッドガイドに嵌合して取り付けられ前記摩擦パッドをディスクの軸方向に案内する案内部と、各前記摩擦パッド毎の前記案内部を、該案内部のディスク径方向外方部位で連結する連結部と、前記案内部のディスク径方向外方部位からディスク軸方向に延出してから折り返されて形成され、前記摩擦パッドをディスク径方向内方に向かって付勢する径方向付勢部と、を有している。このように、摩擦パッドを案内するパッドスプリングの案内部が、取付部材のパッドガイドに嵌合して取り付けられる。このため、パッドスプリングの案内部の動きを規制することができることになる。その結果、径方向付勢部の位置が安定する。よって、径方向付勢部による摩擦パッドのセット荷重にバラツキが生じてしまうことを抑制できる。したがって、摩擦パッドの摺動性を安定させることができ、その結果、摩擦パッドの引き摺りの抑制が可能になる。
また、前記摩擦パッドは、ディスク回転方向へ突出して前記案内部に嵌合される嵌合部と、前記ディスクに当接するライニングとを有し、前記嵌合部は、前記ライニングの前記ディスクへの当接面の図心よりもディスク径方向外方に配置されている。よって、偶力抜けのモーメントによる力が径方向付勢部による付勢力と方向が一致することになる。つまり、偶力抜けのモーメントによる力が径方向付勢部による付勢力の反力となることがない。したがって、微圧制動時のブレーキ鳴きを抑制できる。
また、前記取付部材は、前記パッドガイドが形成されディスク回転方向に離間して配置される一対のディスクパス部と、該一対のディスクパス部を前記ディスクよりも車両の外側で連結するアウタビーム部と、を有し、前記パッドスプリングには、前記案内部のディスク径方向内方部位からディスク軸方向へ延出し、先端が前記アウタビーム部のディスク軸方向内側端面より外側に延びるガイド部が設けられている。これにより、摩擦パッドを、ガイド部に当接させれば、そのディスク径方向内方への移動が抑制されることになる。その結果、この状態で摩擦パッドを回転させれば、ディスク径方向外方に押し上げなくても凸部で径方向付勢部をディスク径方向外方へ変形させることができる。したがって、アウタビーム部があっても、摩擦パッドの組み付け作業の作業性を向上させることができる。