潤滑剤タンクは、潤滑剤を冷却する冷却構造を備えていてよい。潤滑剤タンク内で潤滑剤を冷却することができるので、冷却された潤滑剤が歯車構造体に導入される。歯車構造体の内部の潤滑剤の温度を一層低くすることができる。
潤滑剤タンクが冷却構造を備えている場合、潤滑剤タンクは、潤滑剤タンク内の圧力変化を補償する補償構造を備えていてよい。潤滑剤の温度変化に伴って潤滑剤の体積が変化しても、潤滑剤タンク内の圧力を一定に維持することができる。歯車構造体と潤滑剤タンクとの間で、潤滑剤の移動をスムーズにすることができる。
潤滑剤タンク内に、潤滑剤の状態を検知するセンサ等が配置されていてよい。潤滑剤の状態を検知するセンサとして、潤滑剤の劣化を検知するセンサ、潤滑剤に含まれている異物を検知するセンサ等が挙げられる。このようなセンサを設けることにより、歯車伝動装置(特に、潤滑剤タンク)を分解することなく、潤滑剤の交換時期等を確認することができる。あるいは、潤滑剤タンク内に、潤滑剤に含まれている異物を除去する異物除去構造が配置されていてよい。歯車構造体を駆動することにより潤滑剤に混入した異物(鉄粉等)を、潤滑剤タンク内で除去することができる。歯車構造体に、清浄な潤滑剤を導入することができる。また、潤滑剤タンクは、外部から異物除去構造を観察することができてもよい。潤滑剤タンクを分解することなく、異物除去構造の状態を確認することができる。
図1は、産業用ロボット100の外観の概略図を示している。産業用ロボット100は、6個の関節を有している6軸ロボットである。産業用ロボット100は、第1関節2と、第2関節58と、第3関節54と、第4関節22と、第5関節28と、第6関節36を有している。産業用ロボット100の6個の関節は、歯車構造体で駆動される。歯車構造体の詳細は後述する。以下の説明では、第1〜第6関節を、第1〜第6歯車構造体と称することがある。なお、本実施例の第1〜第6歯車構造体は、偏心回転歯車を備える減速機である。
まず、第1〜第3歯車構造体について説明する。第1〜第3歯車構造体2,58,54は、産業用ロボット100の重力軸(基本軸と呼ばれることもある)を駆動する。第1歯車構造体2は、床に固定されているベース1に取り付けられている。第1歯車構造体2の出力部材に、第1部材64が固定されている。第1モータ4が、第1歯車構造体2に取り付けられている。第1モータ4が駆動することにより、第1歯車構造体2が、第1部材64を軸線CL1の周りに回転させる。第2歯車構造体58は、第1部材64に取り付けられている。第2歯車構造体58の出力部材に、第2部材56が固定されている。第2モータ62が、第2歯車構造体58に取り付けられている。第2モータ62が駆動することにより、第2歯車構造体58が、第2部材56を軸線CL2の周りに回転させる。第3歯車構造体54は、第2部材56に取り付けられている。第3歯車構造体54の出力部材に、第3部材12が固定されている。第3モータ52が、第3歯車構造体54に取り付けられている。第3モータ52が駆動することにより、第3歯車構造体54が、第3部材12を軸線CL3の周りに回転させる。
第1歯車構造体2と第2歯車構造体58は、潤滑剤流路6を介して接続されている。第2歯車構造体58と第3歯車構造体54は、潤滑剤流路8を介して接続されている。第3歯車構造体54は、潤滑剤流路46を介して、第1潤滑剤タンク48に接続されている。第1潤滑剤タンク48は、潤滑剤流路68を介して、第1歯車構造体2に接続されている。すなわち、第1歯車構造体2,第2歯車構造体58,第3歯車構造体54及び第1潤滑剤タンク48は、潤滑剤流路6,8,46及び68を介して連結されている。そのため、潤滑剤は、第1〜第3歯車構造体2,58,54及び第1潤滑剤タンク48の内部を移動することができる。第1潤滑剤タンク48は、床に配置されている。第1潤滑剤タンク48は、第1〜第3歯車構造体2,58,54,ベース1,第1〜第3部材64,56及び12と別体であり、これらと離れた位置に配置されている。そのため、第1潤滑剤タンク48は、産業用ロボット100が駆動するときの慣性モーメントを上昇させることはない。
詳細は後述するが、第2歯車構造体58の内部にポンプが設けられている。第2歯車構造体58が駆動すると、ポンプが駆動し、潤滑剤が第2歯車構造体58の内部から潤滑剤流路8に排出され、第3歯車構造体54に導入される。その結果、潤滑剤が第3歯車構造体54の内部から潤滑剤流路46に排出され、第1潤滑剤タンク48に導入される。第1潤滑剤タンク48には潤滑剤を冷却する構造が設けられている。第1潤滑剤タンク48で冷却された潤滑剤が、潤滑剤流路68を通って第1歯車構造体2に導入される。潤滑剤が第1歯車構造体2の内部から潤滑剤流路6に排出され、第2歯車構造体58に導入される。
すなわち、第2歯車構造体58を駆動すると、第2歯車構造体58の内部の潤滑剤が潤滑剤流路8から第3歯車構造体54を経由して第1潤滑剤タンク48に向けて排出され、第1潤滑剤タンク48からの潤滑剤が第1歯車構造体2を経由して潤滑剤流路6より第2歯車構造体58の内部に導入される。より具体的には、第1潤滑剤タンク48で冷却された潤滑剤が、第1歯車構造体2,第2歯車構造体58,第3歯車構造体54及び第1潤滑剤タンク48の間を一方向に循環する。
第4〜第6歯車構造体について説明する。第4歯車構造体22は、第3部材12に取り付けられている。第4歯車構造体22の出力部材に、第4部材26が固定されている。第4モータ14が、第4歯車構造体22に取り付けられている。第4モータ14が駆動することにより、第4歯車構造体22は、第4部材26を軸線CL4の周りに回転させる。第4部材26は中空であり、第4部材26の内部を、後述する第5歯車構造体28及び第6歯車構造体36を駆動するためのシャフトが通過している。
第5歯車構造体28は、第4部材26に取り付けられている。第5歯車構造体28の出力部材に、第5部材34が固定されている。第5モータ18が、第4歯車構造体22に取り付けられている。第5モータ18に連結している駆動シャフト(図示省略)が、第4歯車構造体22及び第4部材26を通過して、第5歯車構造体28にモータトルクを伝達する。第5モータ18が駆動することにより、第5歯車構造体28は、第5部材34を軸線CL5の周りに回転させる。第6歯車構造体36は、第5部材34に取り付けられている。第6歯車構造体36の出力部材に、ロボットハンド(図示省略)が固定される。第6モータ16が、第4歯車構造体22に取り付けられている。第6モータ16に連結している駆動シャフト(図示省略)が、第4歯車構造体22及び第4部材26を通過して、第6歯車構造体36にモータトルクを伝達する。第6モータ16が駆動することにより、第6歯車構造体36は、ロボットハンドを軸線CL6の周りに回転させる。
第4歯車構造体22と第5歯車構造体28は、潤滑剤流路24を介して接続されている。第5歯車構造体28と第6歯車構造体36は、潤滑剤流路32を介して接続されている。第6歯車構造体36は、潤滑剤流路38を介して、第2潤滑剤タンク42に接続されている。第2潤滑剤タンク42は、潤滑剤流路44を介して、第4歯車構造体22に接続されている。第4歯車構造体22,第5歯車構造体28,第6歯車構造体36及び第2潤滑剤タンク42は、潤滑剤流路24,32,38及び44を介して連結されている。第2潤滑剤タンク42は、床に配置されている。第2潤滑剤タンク42は、第4〜第6歯車構造体22,28,36,第4部材26及び第5部材34と別体であり、これらと離れた位置に配置されている。そのため、第2潤滑剤タンク42は、産業用ロボット100が駆動するときの慣性モーメントを上昇させることはない。
上記したように、第4部材26は中空であり、第5歯車構造体28を駆動する駆動シャフトが第4部材26の内部を通過している。その駆動シャフトにポンプが設けられている。第4部材26は、第4歯車構造体22の内部と連通している。第5歯車構造体28が駆動すると、第4部材26の内部の潤滑剤が、潤滑剤流路24を通って第5歯車構造体28に導入される。第5歯車構造体28の内部から潤滑剤流路32に排出された潤滑剤が、第6歯車構造体36に導入される。その結果、潤滑剤が第6歯車構造体36の内部から潤滑剤流路38に排出され、第2潤滑剤タンク42に導入される。第2潤滑剤タンク42で冷却された潤滑剤が、潤滑剤流路44を通って第4歯車構造体22に導入される。第4歯車構造体22の内部の潤滑剤が、第4部材26の内部に導入される。
第5歯車構造体28を駆動すると、第2潤滑剤タンク42からの潤滑剤が、第4歯車構造体22及び第4部材26を経由して潤滑剤流路24より第5歯車構造体28の内部に導入される。また、第5歯車構造体28の内部の潤滑剤が、潤滑剤流路32から第6歯車構造体36を経由して第2潤滑剤タンク42に向けて排出される。すなわち、第5歯車構造体28が駆動すると、第2潤滑剤タンク42で冷却された潤滑剤が、第4歯車構造体22,第5歯車構造体28,第6歯車構造体36及び第2潤滑剤タンク42の間を一方向に循環する。
図2を参照し、産業用ロボット100aについて説明する。産業用ロボット100aは産業用ロボット100(図1を参照)の変形例である。そのため、産業用ロボット100aについて、産業用ロボット100と同じ部品については産業用ロボット100と同じ参照番号を付すことにより説明を省略する。
産業用ロボット100aでは、第1潤滑剤タンク48が第2部材56に搭載されており、第2潤滑剤タンク42が第4歯車構造体22に搭載されている。上記したように、第3歯車構造体54から排出された潤滑剤は、第1潤滑剤タンク48に導入される。また、第3歯車構造体54は、第2部材56に取り付けられている。そのため、第1潤滑剤タンク48を第2部材56に搭載することにより、潤滑剤流路46の距離を短くすることができる。また、第1潤滑剤タンク48を第2部材56に搭載することにより、重力軸の外部の配管(潤滑剤経路)が乱雑になることを防止することができる。同様に、第2潤滑剤タンク42を第4歯車構造体22に搭載することにより、潤滑剤経路44の距離を短くすることができ、手首3軸の外部の配管等が乱雑になることを防止することができる。
なお、第1潤滑剤タンク48は、第2部材56以外の重力軸を構成している部品に搭載してもよい。第2潤滑剤タンク42は、第4歯車構造体22以外の手首3軸を構成している部品に搭載してもよい。また、第1潤滑剤タンク48は、重力軸を構成している部品の外部に取り付けてもよいし、内部に収容してもよい。同様に、第2潤滑剤タンク44は、手首3軸を構成している部品の外部に取り付けてもよいし、内部に収容してもよい。
第1〜第6歯車構造体について詳細に説明する。まず、図3を参照し、第2歯車構造体58について詳細に説明する。第2歯車構造体58は、内歯歯車75とキャリア70とクランクシャフト88と外歯歯車94を備えている。内歯歯車75は、ケース76と、ケース76の内周面に周方向に配置されている複数の内歯ピン74を備えている。内歯ピン74は円柱状である。キャリア70は、一対の軸受92によって、ケース76に回転可能に支持されている。一対の軸受92は、キャリア70がケース76に対してアキシャル方向及びラジアル方向に移動することを規制している。第2歯車構造体58では、一対の軸受92としてアンギュラ玉軸受を用いている。
キャリア70は、第1プレート70aと第2プレート70cを備えている。第2プレート70cは、柱状部70bを備えている。柱状部70bは、第2プレート70cから第1プレート70aに向けて延びており、ボルト98によって、第1プレート70aに固定されている。第1プレート70aと柱状部70b(第2プレート70c)は、テーパーピン72によって位置決めされている。
クランクシャフト88は、一対の軸受90によって、キャリア70に支持されている。一対の軸受90は、クランクシャフト88がキャリア70に対してアキシャル方向及びラジアル方向に移動することを規制している。第2歯車構造体58では、一対の軸受90として円錐ころ軸受を用いている。クランクシャフト88は、第1歯車87と2個の偏心体97を備えている。第1歯車87は、一対の軸受90の外側でクランクシャフト88に固定されている。2個の偏心体97は、一対の軸受90の間に配置されている。
第2歯車構造体58は、2個の外歯歯車94を備えている。2個の外歯歯車94は、内歯歯車75の歯数(内歯ピン74の数)と異なる歯数を有しており、内歯歯車75に囲まれている。偏心体97の各々が、円筒ころ軸受96を介して、各々の外歯歯車94に係合している。外歯歯車94は、クランクシャフト88を介してキャリア70に支持されている。
第2歯車78が、第2歯車構造体58の軸線CL2と同軸に配置されている。第2歯車78は、キャリア70及び外歯歯車94の中央に形成されている貫通孔内に配置されている。第2歯車78には、第2モータ62の出力シャフトが係合している。第2歯車78は、入力歯車の一例である。第2モータ62は、モータフランジ95に固定されている。モータフランジ95をケース76に固定すると、第2モータ62の出力シャフトが、第2歯車78に連結する。なお、モータフランジ95には、開口95aが形成されている。開口95aは、第2歯車構造体58の内外を連通している。第1歯車構造体2から排出された潤滑剤は、潤滑剤流路6(図1,2を参照)を通って、開口95aより第2歯車構造体58の内部に導入される。開口95aは、第2連通路の一例である。第2歯車78の外歯部分78aが、第1歯車87に噛み合っている。そのため、第2モータ62が駆動すると、クランクシャフト88が回転する。
クランクシャフト88が回転すると、クランクシャフト88の回転に伴って、偏心体97が偏心回転する。偏心体97の偏心回転に伴って、外歯歯車94が、内歯歯車75と噛み合いながら偏心回転する。外歯歯車94は、軸線CL2の周りを偏心回転する。外歯歯車94の歯数と内歯歯車75の歯数(内歯ピン74の数)は異なる。そのため、外歯歯車94が偏心回転すると、外歯歯車94と内歯歯車75の歯数差に応じて、外歯歯車94を支持しているキャリア70が、内歯歯車75(ケース76)に対して回転する。ケース76は第1部材64に固定されており、キャリア70は第2部材56に固定されている。そのため、第2歯車構造体58を駆動すると、第2部材56が第1部材64に対して軸線CL2の周りを回転する。
第2歯車構造体58について説明を続ける。第2歯車78の先端部は、筒体84の内側に配置されている。また、第2歯車78の先端部は、軸受86によって、筒体84に回転可能に支持されている。第2歯車構造体58では、軸受86として深溝玉軸受を用いている。筒体84の一部に、開口84aが形成されている。なお、第2歯車78の先端部とは、第2歯車78の第2モータ62が取り付けられる端部とは反対側の端部である。第2歯車78の先端部は、軸受固定部78cと、ポンプ固定部78bを備えている。軸受固定部78cの径は、ポンプ固定部78bの径より小さい。また、ポンプ固定部78bの径は、外歯部分78aの径より小さい。ポンプ固定部78bは、軸受固定部78cと外歯部分78aの間に設けられている。ポンプ固定部78bには、スプライン溝が形成されている。羽根ポンプ82が、ポンプ固定部78bに固定されている。筒体84は、キャリア70の中央に形成されている貫通孔に固定されている。開口84aは、第2部材56に形成されている開口56aに連通している。開口56aは、潤滑剤流路8(図1を参照)に連通している。開口84aは、第2歯車構造体58の内外を連通している。図3から明らかなように、開口84aは、開口95aと異なる位置に設けられている。
図4に示すように、開口84aは、筒体84の周方向の一部に形成されている。羽根ポンプ82は、羽歯車であり、開口84aに対向している。換言すると、開口84aが、羽根ポンプ82の径方向(回転軸に直交する方向)の端部に対向している(図3も参照)。筒体84の周方向の一部に開口84aが形成されており、筒体84の内部に羽根ポンプ82が配置されているので、第2歯車構造体58の内部の潤滑剤を開口84aから排出することができる。すなわち、筒体84と羽根ポンプ82が、第2歯車構造体58の内部の潤滑剤を排出するポンプとして機能する。筒体84は、ポンプケースということもできる。第2歯車構造体58の内部の潤滑剤は、開口84aから排出され、潤滑剤流路8を通じて第3歯車構造体54に導入される。開口84aは、第1連通路の一例である。
第2歯車78が回転すると、第2歯車構造体58の内部の潤滑剤が、開口84a,56aを通じて潤滑剤流路8(図1,2を参照)に排出される。潤滑剤が第2歯車構造体58の内部から排出されたことに伴って、開口95aより第2歯車構造体58の内部に潤滑剤が導入される。なお、ケース76とモータフランジ95、及び、キャリア70(第2プレート70c)と第2部材56は、隙間なく固定されている。そのため、ケース76とモータフランジ95の間、及び、キャリア70と第2部材56の間から潤滑剤が漏れることはない。また、ケース76とキャリア70(第2プレート70c)の間にはオイルシール89が設けられている。そのため、ケース76とキャリア70の間から潤滑剤が漏れることはない。第2歯車構造体58への潤滑剤の出入りは、開口84a及び95aのみから行われる。
図5を参照し、第1歯車構造体2について説明する。第1歯車構造体2の基本的な構造は、第2歯車構造体58と同じである。そのため、第1歯車構造体2について、第2歯車構造体58と実質的に同じ部品には、下二桁に同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
第1歯車構造体2は、内歯歯車175とキャリア170とクランクシャフト188と外歯歯車194を備えている。内歯歯車175は、ケース176の内周面に形成されている。キャリア170は、一対の軸受192によって、ケース176に回転可能に支持されている。クランクシャフト188は、第1歯車187と2個の偏心体197を備えている。第1歯車187は、第1モータ4の出力シャフト178と連結している。2個の外歯歯車194は、内歯歯車175の歯数と異なる歯数を有している。偏心体197の各々が、各々の外歯歯車194に係合している。
ケース176はベース1に固定されており、キャリア170は旋回フランジ195に固定されている。旋回フランジ195には、第1モータ4が固定されている。ベース1に開口1aが形成されており、旋回フランジ195に開口195aが形成されている。開口1aは潤滑剤流路68に連通しており、開口195aは潤滑剤流路6に連通している(図1,2も参照)。旋回フランジ195と第1部材64(図1,2を参照)は固定されている。そのため、第1歯車構造体2が駆動すると、第1部材64がベース1に対して軸線CL1の周りを回転する。ケース176とベース1、及び、キャリア170と旋回フランジ195は、隙間なく固定されている。ケース176とキャリア170の間にはオイルシール189が配置されている。
第1歯車構造体2の中央に、中空の筒体113が設けられている。筒体113は、ベース1,キャリア170,外歯歯車194及び旋回フランジ195を通過している。筒体113の一方の端部が、ベース1に固定されている。キャリア170及び旋回フランジ195が、筒体113に対して回転する。筒体113の他方の端部と旋回フランジ195の間に、オイルシール115が配置されている。そのため、筒体113と旋回フランジ195の間から潤滑剤が漏れることが防止されている。すなわち、第1歯車構造体2への潤滑剤の出入りは、開口1a及び195aのみから行われる。筒体113の内部を冷却水管111が通過している。冷却水管111は、給水管111aと排水管111bを備えている。冷却水管111の内部を冷却水が流れており、第1歯車構造体2の温度(特に、第1歯車構造体2内の潤滑剤の温度)を低くすることができる。冷却水として、水道水を用いることができる。
給水管111aは、ベース1の外部から第1歯車構造体2の筒体113の内部を通過し、第2歯車構造体58側に延びている。排水管111bは、第2歯車構造体58側から第1歯車構造体2の筒体113の内部を通過し、ベース1の外部に延びている。給水管111aと排水管111bは、1本の管である。給水管111aは水道に接続されている。水道から供給された冷却水(水道水)は、給水管111a及び排水管111bを通って第1歯車構造体2の外部に排出される。給水管111a及び排水管111bは、筒体113に接している。給水管111a及び排水管111bを筒体113に密着させることにより、第1歯車構造体2の温度を効率的に低くすることができる。なお、給水管111aと排水管111bは、互いに離れていてもよい。また、給水管111aと排水管111bのどちらか一方のみが筒体113の内部を通過しているだけでもよい。なお、筒体113の内部を通過する冷却水管は、1本の管でもよい。この場合、冷却水管の一端は第2歯車構造体58側で産業用ロボット100(100a)の外部に延びており、他端はベース1側で産業用ロボット100(100a)の外部に延びていればよい。冷却水は、第2歯車構造体58側から供給してもよいし、ベース1側から供給してもよい。
第1歯車構造体2は、第2歯車構造体58と異なり、潤滑剤を循環させるポンプを備えていない。また、第3歯車構造体54も、第2歯車構造体58と異なり、潤滑剤を循環させるポンプを備えていない。しかしながら、上記したように、第1歯車構造体2,第2歯車構造体58,第3歯車構造体54及び第1潤滑剤タンク48は、潤滑剤流路6,8,46及び68を介して連結されている。そのため、第2歯車構造体58が駆動すると、第1歯車構造体2の内部の潤滑剤が、第2歯車構造体58,第3歯車構造体54,第1潤滑剤タンク48との間で循環する。なお、第3歯車構造体54の構造は、潤滑剤を循環させるポンプを備えていないことを除き、第2歯車構造体58の構造と実質的に同じである。そのため、第3歯車構造体54の構造については説明を省略する。
図6及び図7を参照し、第1潤滑剤タンク48について説明する。第1潤滑剤タンク48は、第1室110と第2室104を備えている。第1室110と第2室104は、壁114で区画されている。第2室104は、第1室110を囲っている。第1室110内に潤滑剤が満たされている。また、第1室110内に磁石112が配置されている。第1潤滑剤タンク48では、第1潤滑剤タンク48の外部から磁石112を目視することができる。磁石112によって、潤滑剤に含まれている鉄粉を潤滑剤から除去することができる。磁石112は、異物除去構造の一例である。第2室104内には冷却水が満たされている。導入路102は、水道に接続されている。冷却水(水道水)は、導入路102から第2室104に導入され、排出路108から排出される。冷却水によって、第1室110内の潤滑材が冷却される。第2室104内の冷却水は、冷却構造の一例である。なお、磁石112に代えて、又は、磁石112に加えて、第1室110内に潤滑剤の状態を検知するセンサを配置してもよい。例えば、第1室110内に潤滑剤の劣化を検知するセンサを配置してもよい。あるいは、第1室110内に潤滑剤に含まれている異物を検知するセンサを配置してもよい。
第1潤滑剤タンク48は、第1室110内の圧力を一定に保つためのダンパ106を備えている。そのため、温度変化によって潤滑剤の体積が変化しても、第1室110内の圧力は一定に保たれる。ダンパ106は、圧力変化を補償する補償構造の一例である。第1室110には、潤滑剤流路46を通じて、第3歯車構造体54から排出された潤滑剤が導入される。第3歯車構造体54から導入された潤滑剤は、第1潤滑剤タンク48で冷却された後、潤滑剤流路68を通じて第1歯車構造体2へ供給される。
上記したように、産業用ロボット100では、第2歯車構造体58にポンプ(羽根ポンプ82,ポンプケース84)が取り付けられている。そして、第2歯車構造体58が駆動することによって、潤滑剤が、第2歯車構造体58→第3歯車構造体54→第1潤滑剤タンク48→第1歯車構造体2→第2歯車構造体58の順に一方向に移動する。しかしながら、本明細書で開示する技術は、歯車構造体の入力シャフトに羽根ポンプを取り付け、歯車構造体と潤滑剤タンクを直接または間接的に接続し、歯車構造体の駆動に伴って歯車構造体と潤滑剤タンクの間で潤滑剤を循環させることである。そのため、潤滑剤が第1〜第3歯車構造体2,58,54を移動する順番は、上記の順番に限定されない。以下、潤滑剤が第1〜第3歯車構造体2,58,54を移動する順番の例(歯車構造体と潤滑剤タンクの接続例)を幾つか記す。
(第1接続例)3個の潤滑剤タンク(例えば、第3〜第5潤滑剤タンク)を用意し、各々の潤滑剤タンクと各々の歯車構造体を直接接続する。この場合、第1〜第3歯車構造体2,58,54の入力シャフトの各々に羽根ポンプを取り付ける。第1歯車構造体2内の潤滑剤は、第1歯車構造体2→第3潤滑剤タンク→第1歯車構造体2の順に移動する。第2歯車構造体58内の潤滑剤は、第2歯車構造体58→第4潤滑剤タンク→第2歯車構造体58の順に移動する。第3歯車構造体54内の潤滑剤は、第3歯車構造体54→第5潤滑剤タンク→第3歯車構造体54の順に移動する。このように接続すると、例えば第1歯車構造体2が駆動し、第2歯車構造体58及び第3歯車構造体54が駆動していなくても、第1歯車構造体2の内部の潤滑剤を冷却することができる。
(第2接続例)3個の潤滑剤タンク(例えば、第6〜第8潤滑剤タンク)を用意し、第1〜第3歯車構造体2,58,54と第6〜第8潤滑剤タンクとを交互に接続する。具体的には、潤滑剤は、第1歯車構造体2→第6潤滑剤タンク→第2歯車構造体58→第7潤滑剤タンク→第3歯車構造体54→第8潤滑剤タンク→第1歯車構造体2の順に移動する。この場合、潤滑剤は、第1〜第3歯車構造体2,58,54に供給される前に潤滑剤タンクを通過する。そのため、第1〜第3歯車構造体2,58,54の内部の潤滑剤を効率良く冷却することができる。このように接続すると、第1〜第3歯車構造体2,58,54の入力シャフトの少なくとも1個に羽根ポンプを設けることにより、第1〜第3歯車構造体2,58,54の全てに潤滑剤を循環させることができる。
(第3接続例)2個の潤滑剤タンク(例えば、第9,第10潤滑剤タンク)を用意し、第2歯車構造体58と第9潤滑剤タンクを直接接続し、第3歯車構造体54と第10潤滑剤タンクを直接接続する。第1歯車構造体2は、潤滑剤タンクに接続しない。この場合、第2歯車構造体58と第3歯車構造体54の入力シャフトの双方に羽根ポンプを設ける。なお、上記したように、第1歯車構造体2の内部を冷却水管111が通過している。そのため、第1歯車構造体2に潤滑剤タンクが接続されていなくても、第1歯車構造体2の内部の潤滑剤を冷却することができる。
(第4接続例)2個の潤滑剤タンク(例えば、第11,第12潤滑剤タンク)を用意し、第2,第3歯車構造体58,54と第11,第12潤滑剤タンクとを交互に接続する。具体的には、潤滑剤は、第2歯車構造体58→第11潤滑剤タンク→第3歯車構造体54→第12潤滑剤タンク→第2歯車構造体58の順に移動する。第3接続例と同様に、第1歯車構造体2は潤滑剤を循環させない。この場合、第2,第3歯車構造体58,54の入力シャフトの少なくとも一方に羽根ポンプを設けることにより、第2,第3歯車構造体58,54の双方に潤滑剤を循環させることができる。
上記したように、第1〜第4接続例の場合、複数の潤滑剤タンクが必要であり、図6及び図7に示したタイプの潤滑剤タンクを複数用いてもよい。しかしながら、第1〜第4接続例の場合、1個の潤滑剤タンクに複数の区画を設けてもよい。図8及び図9を参照し、上記第4接続例のように第2,第3歯車構造体58,54と潤滑剤タンクを交互に接続する場合において、第2,第3歯車構造体58,54の双方を接続することができる潤滑剤タンク248について説明する。なお、潤滑剤タンク248において、第1潤滑剤タンク48(図6,7を参照)と実質的に同じ部品には、下二桁が同じ参照番号を付すことにより説明を省略することがある。
図8,図9に示すように、潤滑剤タンク248は、第1室210a,第2室210b及び第3室204を備えている。第1室210a及び第2室210bには潤滑剤が満たされており、第3室204には冷却水が満たされている。第3室204には、水道に接続されている導入路202を通じて水道水が供給される。冷却水は、排出路208から排出される。第2歯車構造体58から排出された潤滑剤は、潤滑剤流路234を通って第1室210aに供給される。第1室210a内では、潤滑剤が冷却されるとともに潤滑剤に含まれる鉄分が磁石212aによって除去される。第1室210aから排出された潤滑剤は、潤滑剤流路236を通って第3歯車構造体54に供給される。第1室210aには、第1ダンパ206aが取り付けられている。
第3歯車構造体54から排出された潤滑剤は、潤滑剤流路230を通って第2室210bに供給される。第2室210b内では、潤滑剤が冷却されるとともに潤滑剤に含まれる鉄分が磁石212bによって除去される。第2室210bから排出された潤滑剤は、潤滑剤流路232を通って第2歯車構造体58に供給される。第2室210bには、第2ダンパ206bが取り付けられている。潤滑剤タンク248を用いることにより、第2,第3歯車構造体58,54と潤滑剤タンクを交互に接続する場合でも、1個の潤滑剤タンクを用意するだけでよい。また、潤滑剤タンク248を用いて、第3接続例のように、第2歯車構造体58と第1室210a、及び、第3歯車構造体54と第2室210bを直接接続することもできる。
なお、第2接続例のように、第1〜第3歯車構造体2,58,54と潤滑剤タンクを交互に接続する場合、図10に示す潤滑剤タンク348を用いてもよい。潤滑剤タンク348は、第1室310a,第2室310b,第3室310c及び第4室304を備えている。第1室310a,第2室310b及び第3室310cには潤滑剤が満たされており、第4室304には冷却水が満たされている。第1室310a,第2室310b及び第3室310cには、各々磁石312a,312b及び312cが設けられている。潤滑剤タンク348では、潤滑剤が、第1歯車構造体2→第1室310a→第2歯車構造体58→第2室310b→第3歯車構造体54→第8潤滑剤タンク→第3室310cの順に移動するように接続する。潤滑剤タンク348を用いることにより、第1〜第3歯車構造体2,58,54と潤滑剤タンクを交互に接続する場合でも、1個の潤滑剤タンクを用意するだけでよい。
なお、潤滑剤タンク348は潤滑剤タンク248(図8,9を参照)と同様に、第1歯車構造体2の冷却水管111と第4室304を接続し、第1歯車構造体2で用いる冷却水を、第1室310a,第2室310b及び第3室310cを冷却する冷却水として用いてもよい。また、潤滑剤タンク348を用いて、第1接続例のように、第1歯車構造体2と第1室310a、第2歯車構造体58と第2室310b、及び、第3歯車構造体54と第3室310cを直接接続することもできる。
上記したように、歯車構造体と潤滑剤タンクの接続方法は様々な形態をとることができる。重要なことは、歯車構造体と潤滑剤タンクを直接又は間接的に接続し、歯車構造体と潤滑剤タンクの間で潤滑剤を循環させることにより、歯車構造体の内部の潤滑剤を冷却することである。また、潤滑剤を循環させるために、クランクシャフトを駆動する入力歯車に羽根ポンプを設け、クランクシャフトの回転に伴って歯車構造体の内部の潤滑剤を排出する(又は、歯車構造体の内部に潤滑剤を導入する)ことである。
図11を参照し、第4〜第6歯車構造体22,28,36について説明する。第4〜第6歯車構造体22,28,36は、産業用ロボット100の手首3軸と呼ばれることもある。第4〜第6歯車構造体22,28,36の基本的な構造は、第2歯車構造体58又は第3歯車構造体54と同じである。そのため、第4〜第6歯車構造体22,28,36については、具体的な構造の説明を省略する。第4歯車構造体22には、第4歯車構造体22を駆動する第4モータ14に加え、第5歯車構造体28を駆動する第5モータ18及び第6歯車構造体36を駆動する第6モータ16が取り付けられている。産業用ロボット100の先端部(第5歯車構造体28、第6歯車構造体36が配置されている部分)の重量を軽くすることができる。
第5入力歯車15が、第4歯車構造体22の内部から第4部材26を通過して、第5歯車構造体28まで延びている。第5入力歯車15は、第5歯車構造体28の入力歯車に相当する。第5入力歯車15は、第5モータ18のモータトルクを第5歯車構造体28のクランクシャフトに伝達する。第5入力歯車15は中空であり、内部を第6入力歯車17が通過している。第6入力歯車17は、第4歯車構造体22の内部から第4部材26を通過して、第6歯車構造体36まで延びている。第6入力歯車17は、第6歯車構造体36の入力歯車に相当する。第6入力歯車17は、第6モータ14のモータトルクを第6歯車構造体36のクランクシャフトに伝達する。
羽根ポンプ182が、第5入力歯車15の回転軸方向の中間で、第5入力歯車15に取り付けられている。羽根ポンプ182の構造は、羽根ポンプ82と実質的に同一である(図4も参照)。そのため、第5歯車構造体28が駆動すると、第4部材26の内部の潤滑潤が、潤滑剤流路24に排出され、第1連通路(図示省略)より第5歯車構造体28の内部に導入される。上述したように、歯車構造体22,28,36では、潤滑剤が、第4部材26→第5歯車構造体28→第6歯車構造体36→第2潤滑剤タンク42→第4歯車構造体22→第4部材26の順に移動する。しかしながら、重力軸(第1〜第3歯車構造体2,58,54)と同様に、潤滑剤の移動経路は様々な形態をとることができる。また、第2潤滑剤タンク42は、第1潤滑剤タンク48と同じ(図6,7も参照)でもよいし、図8〜10の潤滑剤タンクのように複数の区画を備えていてもよい。
上記実施例では、歯車伝動装置を多関節ロボットの関節に用いる例について説明したが、本明細書で開示する歯車伝動装置は、他の用途に用いることもできる。例えば、プレス間搬送ロボットを駆動するアクチュエータ、振子フィーダーを駆動するアクチュエータ等に用いることができる。また、上記実施例では潤滑剤タンクが水冷式であったが、潤滑剤タンクは空冷式であってもよい。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。