JP2015021127A - 潤滑油用摩擦調整剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】特にエンジンにおける薄膜および/または境界層摩擦を改良するエンジンオイル用潤滑油の提供。【解決手段】多量の基油及び特定の構造で表されるイミド、アミドとカルボン酸或いは無水ジカルボン酸とから成る化合物又はそれらの塩を摩擦調整剤とする少量の添加剤パッケージを含有する潤滑油。イミド、アミド化合物として例えばリシンドデセニルスクシニミド、2−アミノ−5−(オクタデコ−9−エン−1−イルアミノ)−5−オキソペンタン酸、2−アミノ−4−(オクタデコ−9−エン−1−イルアミノ)−4−オキソブタン酸、2−アミノ−6−(3−(ドデコ−1−エン−1−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)ヘキサン酸、2−アミノ−6−(オクタデコ−9−エナミド)ヘキサン酸、2−アミノ−6−(3−イコソ−1−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)ヘキサン酸等が含まれる潤滑油。【選択図】なし

Description

本開示は特定のイミドまたはアミド基を含有させた添加剤組成物および潤滑油に向けたものである。特に、本開示は薄膜摩擦および境界層摩擦の片方もしくは両方を低下させる目的で特定のイミド、アミドまたはそれらの塩を摩擦調整剤として含有させた添加剤組成物および潤滑油に向けたものである。
エンジンの滑らかな作動を確保しようとする時、エンジンオイルがエンジン内の様々な滑り部分、例えばピストンリング/シリンダーライナー、クランクシャフトおよび連接棒のベアリング、バルブ機構(カムおよびバルブリフターを包含)などの潤滑で重要な役割を果たす。また、エンジンオイルはエンジン内部の冷却および燃焼生成物の分散でも役割を果たす可能性がある。エンジンオイルのさらなる可能な機能には錆および腐食の防止または軽減が含まれ得る。
エンジンオイルに関する作動原理の考慮はエンジン内の部分の摩耗および焼付きを防止することにある。潤滑油を差したエンジン部分は大部分が流体潤滑状態にあるが、バルブ系およびピストンの上部および下部死点は境界潤滑状態にある可能性がある。エンジン内のそのような部分と部分の間の摩擦は大きなエネルギー損失の原因になる可能性があり、それによって燃料効率が低下する可能性がある。エンジンオイルでは摩擦によるエネルギー損失を低下させようとして数多くの種類の摩擦調整剤が用いられてきている。
エンジンの部分と部分の間の摩擦を低下させると燃料効率の改良が達成される可能性がある。薄膜摩擦は、2つの表面の間の距離が非常に短い時に前記2つの表面の間を動く流体、例えば潤滑油などによって生じる摩擦である。エンジンオイルに通常存在するある種の添加剤は厚みが様々な膜を形成してそれが薄膜摩擦に影響を与える可能性があることは知られている。ある種の添加剤、例えばジアルキルジチオ燐酸亜鉛(ZDDP)などは薄膜摩擦を増大させることが知られている。そのような添加剤は他の理由、例えばエンジン部品の保護などで必要であり得るが、そのような添加剤によって引き起こされる薄膜摩擦の増大は有害であり得る。
また、エンジン内の境界層摩擦を低下させることでも燃料効率を向上させることができる。エンジン内の接触している表面の動きは境界層摩擦によって遅くなる可能性がある。境界層摩擦を低下させようとして時には非窒素含有、窒素含有およびモリブデン含有摩擦調整剤が用いられる。
オートマチックトランスミッション用潤滑油組成物が特許文献1に開示されている。その組成物は式:
[式中、R1は炭素原子数が5から250のアルキル基もしくはアルケニル基でありそしてmは0から6の整数である]
で表されるこはく酸アミドを含有して成る。R1は好適にはポリブテニル基または特にポリイソブテニル基である。その開示された潤滑油組成物に入れる任意成分は粘度指数向上剤、抗酸化剤、金属不活性化剤、消泡剤、洗浄剤、極圧剤および錆防止剤から選択可能である。
エンジンで用いるに有用な燃料洗浄剤として機能するスクシニミドが特許文献2に開示されている。そのスクシニミドは式:
[式中、Rは炭素原子数が2から4のアルキレンであり、R’は炭素原子数が平均で少なくとも12から30未満、好適には少なくとも14から28以下の実質的に直鎖のアルキルもしくはアルケニル基であり、R”は水素原子または炭素原子数が1から5のアルキルでありそしてnは1から10の範囲の整数である]
で表される。
エンジン用潤滑油が特許文献3に開示されており、それは式:
[式中、Rは炭素原子数が25から200のヒドロカルビル基であり、R1は炭素原子数が1から10の二価の炭化水素基であり、R2は炭素原子数が1から10のヒドロカルビル基であり、nは0または1の値を有しそしてXはハライド基である]
で表される第四級アンモニウムスクシニミドを含有する。また、その潤滑油に他の添加剤、例えば標準的流動点降下剤、粘度指数向上剤、消泡剤および補足的洗浄−分散剤を含有させることも可能である。
エンジン用潤滑油が特許文献4に開示されており、それは構造:
[ここで、各R1は独立してアルキル基、しばしば分子量が500−5000のポリイソブテン基でありそしてR2はアルキレン基、通常はエチレン基である]
で表されるスクシニミドを含有する。その潤滑油に入れる追加的成分には抗酸化剤および抗摩耗剤が含まれ得る。
プラスチック加工用の水が基になった潤滑油が特許文献5に開示されており、それはエチレン系不飽和結合を有する単量体(少なくとも無水マレイン酸を包含)の共重合体もしくはホモ重合体を含有する樹脂成分(A)、無機成分(B)および固体状潤滑成分(C)を含有して成り、前記固体状潤滑成分(C)は軟質で自身が滑りを示しかつプラスチック加工中にダイスと付属品の間の摩擦力を低下させる機能を有する。分子構造中に炭素原子数が11以上の炭化水素基を有するアミノ酸誘導体が成分(C)として使用可能である。具体例はN−ラウロイル−L−リシンであり得る。
近年、エネルギー効率をより高くする潤滑油、特に摩擦を低下させる潤滑油を用いる必要性が増してきている。本開示は薄膜摩擦および境界層摩擦の片方または両方を低下させる能力を有する改良潤滑油を提供するものである。
米国特許第6,232,275号 米国特許第5,122,616号 米国特許第4,338,206号 米国特許第8,093,191号 EP2450423A1
1つの面として、本開示は、多量の基油および少量の添加剤パッケージを含有して成る潤滑油を提供するものであり、前記添加剤パッケージは1種以上の摩擦調整剤を含有して成りかつ前記摩擦調整剤は式I:
で表される無水ヒドロカルビルこはく酸およびR−COOH[式中、Rは炭素原子数が約
8から約28の直鎖もしくは分枝、飽和、不飽和または部分飽和ヒドロカルビルである]で表されるカルボン酸から成る群より選択した反応体とリシンの反応生成物を含有して成る。例にはN−ラウロイル−L−リシンまたはN−オレイル−L−リシンが含まれ得る。
この上に示した潤滑油にはエンジンオイルが含まれ得る。
別の面として、本開示は多量の基油および少量の添加剤パッケージを含有して成る潤滑油を提供するものであり、前記添加剤パッケージは1種以上の摩擦調整剤を含有して成りかつ前記摩擦調整剤は式I:
で表される無水ヒドロカルビルこはく酸およびR−COOH[式中、Rは炭素原子数が約8から約28の直鎖もしくは分枝、飽和、不飽和または部分飽和ヒドロカルビルである]で表されるカルボン酸から成る群より選択した反応体とリシンの反応生成物のカルボン酸塩を含有して成り、ここで、前記カルボン酸塩はアルカリ金属、アルカリ土類金属、IIB族の金属またはアンモニウムカチオンであるカチオンを有する。
この上に示した潤滑油にはエンジンオイルが含まれ得る。
別の面として、本開示は多量の基油および少量の添加剤パッケージを含有して成る潤滑油を提供するものであり、前記添加剤パッケージは1種以上の摩擦調整剤を含有して成りかつ前記摩擦調整剤はグルタミン酸、アスパラギン酸またはこれらの混合物と式R−NH2[式中、Rはこの上で定義した通りである]で表される第一級アミンの反応生成物ばかりでなく前記反応生成物のカルボン酸塩を含有して成りかつ前記カルボン酸塩はアルカリ金属、アルカリ土類金属、IIB族の金属またはアンモニウムカチオンであるカチオンを有する。
この上に示した潤滑油にはエンジンオイルが含まれ得る。
別の面として、本開示は多量の基油および少量の添加剤パッケージを含有して成る潤滑油を提供するものであり、前記添加剤パッケージは式II、IIIおよびIV:
[式中、Rは炭素原子数が約8から約28の直鎖もしくは分枝、飽和、不飽和または部分飽和ヒドロカルビルでありそしてnは0または1である]
で表される1種以上の摩擦調整剤を含有して成る。いくつかの態様におけるRの炭素原子数は約10から約25であり得る。いくつかの態様におけるRの炭素原子数は約10から約20であり得る。いくつかの態様におけるRの炭素原子数は約10から約18であり得る。
この上に示した潤滑油にはエンジンオイルが含まれ得る。
別の面として、本開示は多量の基油および少量の添加剤パッケージを含有して成る潤滑油を提供するものであり、前記添加剤パッケージはこの上に示した式II、IIIおよびIVで表される化合物のカルボン酸塩である1種以上の摩擦調整剤を含有して成る。前記カルボン酸塩はアルカリ金属、アルカリ土類金属、IIB族の金属またはアンモニウムカチオンであるカチオンを有する。
この上に示した潤滑油にはエンジンオイルが含まれ得る。
前記添加剤パッケージに更に抗酸化剤、消泡剤、チタン含有化合物、燐含有化合物、粘度指数向上剤、流動点降下剤および希釈用油から成る群より選択した少なくとも1種の添加剤を含有させることも可能である。
この上に示した潤滑油にはエンジンオイルが含まれ得る。
本潤滑油またはエンジンオイルに更に少なくとも1種の金属ジアルキルジチオ燐酸塩を含有させることも可能である。前記少なくとも1種の金属ジアルキルジチオ燐酸塩は下記の式:
[式中、R’およびR”は炭素原子を1から18個含有する同一もしくは異なるヒドロカルビル部分であることができる]
で表される少なくとも1種のジアルキルジチオ燐酸亜鉛を含有して成っていてもよく、かつ前記ジアルキルジチオ燐酸亜鉛中の炭素原子の総数は少なくとも5である。前記R’およびR”基は独立してエチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、アミル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2−エチルヘキシル、4−メチル−2−ペンタニル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニルおよびブテニルから選択可能である。
前記少なくとも1種の金属ジアルキルジチオ燐酸塩のアルキル基は第一アルコール、第二アルコールまたは第一および第二アルコールの混合物から誘導可能である。
前記少なくとも1種のジアルキルジチオ燐酸亜鉛のアルキル基の100モルパーセントが第一アルコール基に由来するものであってもよい。前記少なくとも1種のジアルキルジチオ燐酸亜鉛のアルキル基の少なくとも75モルパーセントが4−メチル−2−ペンタノールに由来するものであってもよい。前記少なくとも1種のジアルキルジチオ燐酸亜鉛のアルキル基の80モルパーセント以上が4−メチル−2−ペンタノールに由来するものであってもよい。前記少なくとも1種の金属ジアルキルジチオ燐酸塩はアルキル基を2つ有しかつ前記アルキル基の炭素原子の総数が5以上であってもよい。本潤滑油またはエンジンオイルに少なくとも2種類の金属ジアルキルジチオ燐酸塩を含有させてもよく、1番目の金属ジアルキルジチオ燐酸塩は第一アルコールに由来するアルキル基を含有して成りかつ2番目の金属ジアルキルジチオ燐酸塩は第二アルコールに由来するアルキル基を含有して成る。
本潤滑油に少なくとも1種の分散剤を含有させてもよい。前記少なくとも1種の分散剤にポリアルキレンスクシニミドを含めてもよい。前記少なくとも1種の分散剤に数平均分子量が900以上のポリイソブチレンに由来するポリイソブチレン残基を有するポリイソブチレンスクシニミドを含めてもよい。別法として、前記少なくとも1種の分散剤に数平均分子量が約1200から約5000のポリイソブチレンに由来するポリイソブチレン残基を有するポリイソブチレンスクシニミドを含めてもよい。
前記ポリアルキレンスクシニミドにホウ素化合物、無水物、アルデヒド、ケトン、燐化合物、エポキシドおよびカルボン酸から選択した1種以上の化合物を用いた後処理を受けさせてもよい。そのポリイソブチレンスクシニミドにホウ素化合物を用いた後処理を受けさせてもよく、本潤滑油のホウ素含有量を約200から500ppmのホウ素にする。
前記少なくとも1種の分散剤に末端ビニリデンを50%以上有するポリイソブチレンに由来するポリイソブチレン残基を含有するポリイソブチレンスクシニミドを含めてもよい。
前記ポリイソブチレンスクシニミド系分散剤はトリアルキレンテトラミンおよびテトラアルキレンペンタミンから選択されるアミンから誘導可能である。
そのような分散剤の総量を本潤滑油の総重量の約20重量%未満にしてもよい。別法として、分散剤の総量を本潤滑油の総重量の0.1重量%から15重量%の範囲にしてもよい。
本潤滑油に少なくとも1種の洗浄剤を含有させてもよい。
前記少なくとも1種の洗浄剤は2種以上の洗浄剤を含有して成っていてもよい。1番目の洗浄剤の総塩基数を40から450にしてもよくそして2番目の洗浄剤の総塩基数を80以下にしてもよい。
前記少なくとも1種の洗浄剤にスルホネート、フェネートまたはサリシレートを含めてもよい。
前記少なくとも1種の洗浄剤にスルホン酸カルシウム、スルホン酸マグネシウム、スルホン酸ナトリウム、カルシウムフェネート、ナトリウムフェネート、サリチル酸カルシウムおよびサリチル酸ナトリウムから選択した少なくとも1種の化合物を含めてもよい。
前記少なくとも1種の洗浄剤に金属塩を含めてもよく、その金属をアルカリおよびアルカリ土類金属から成る群より選択する。
前記少なくとも1種の洗浄剤の総塩基数を約450以下にしてもよい。別法として、前記少なくとも1種の洗浄剤の総塩基数を約80から約350にしてもよい。
更に別の面として、本開示は互いに連動して動く接触状態の表面間の薄膜および境界層摩擦を改良する方法を提供し、この方法は、前記表面に本明細書に開示する如き潤滑油組成物を差す段階を含んで成る。いくつかの態様における前記表面はエンジンの中の接触している表面である。
更に別の面として、本開示は互いに連動して動く接触状態の表面間の境界層摩擦を改良する方法を提供し、この方法は、前記表面に本明細書に開示する如き潤滑油組成物を差す段階を含んで成る。いくつかの態様における前記表面はエンジンの中の接触している表面である。
更に別の面として、本開示は互いに連動して動く接触状態の表面間の薄膜摩擦を改良する方法を提供し、この方法は、前記表面に本明細書に開示する如き潤滑油組成物を差す段階を含んで成る。いくつかの態様における前記表面はエンジンの中の接触している表面である。
定義
本明細書で用いる如き特定の用語の意味を明瞭にする目的で以下の用語の定義を示す。
単数形“a”、“an”および“the”を本明細書および添付請求項で用いる場合、
それらに本文で明瞭にそうでないと指示しない限り複数形の意味を包含させることを注目すべきである。その上、用語“a”(または“an”)、“1つ(種)以上”および“少なくとも1つ(種)”を本明細書では互換的に用いる可能性がある。また、用語“含んで成る”、“含まれる”、“有する”および“で構成される”も互換的に用いる可能性がある。
特に明記しない限り、本明細書および請求項で用いる材料の量、特性、例えば分子量、パーセント、比率、反応条件などを表す数は全てあらゆるケースで用語“約”が存在するか否かに拘らず用語“約”による修飾を受けていると理解されるべきである。従って、反すると示さない限り、本明細書および請求項に示す数値的パラメーターは近似値であり、本開示で得ることを探求する所望特性に応じて変わる可能性がある。最低限でも、請求項の範囲に対する相当物の原理の適用を制限する試みとしてではなく、各数値的パラメーターは少なくとも報告する有効桁の数を考慮しかつ通常の四捨五入技術を適用することで解釈されるべきである。本開示の幅広い範囲を説明する数値の範囲およびパラメーターはおおよそであるにも拘らず、具体的実施例に挙げる数値は可能な限り正確に報告する値である。しかしながら、如何なる数値も本質的に個々の試験測定に見られる標準偏差の結果として必然的に起こる特定の誤差を含む。
本明細書に開示する各成分、化合物、置換基またはパラメーターは単独または本明細書に開示する他の成分、化合物、置換基またはパラメーターの各々の1つ以上および全てと組み合わせて用いる目的で開示すると解釈されるべきであると理解されるべきである。
また、本明細書に開示する各成分、化合物、置換基またはパラメーターに関する各量/値または量/値の範囲はまた本明細書に開示する他のいずれかの成分1種または2種以上、化合物1種または2種以上、置換基またはパラメーター1種または2種以上に関して開示する各量/値または量/値の範囲と組み合わせて開示すると解釈されるべきでありかつまた従って本明細書に開示する2種以上の成分1種または2種以上、化合物1種または2種以上、置換基またはパラメーターに関する量/値または量/値の範囲の如何なる組み合わせも本説明の目的で互いに組み合わせて開示すると理解されるべきである。
更に、本明細書に開示する各範囲の各下限は同じ成分、化合物、置換基またはパラメーターに関して本明細書に開示する各範囲の各下限と組み合わせて開示すると解釈されるべきであるとも理解する。このように、2つの範囲の開示は各範囲の各下限と各範囲の各上限の組み合わせによって派生する4つの範囲の開示であるとして解釈されるべきである。3つの範囲の開示は各範囲の各下限と各範囲の各上限などを組み合わせることによって派生する9つの範囲の開示であるとして解釈されるべきである。その上、本説明または実施例に開示する成分、化合物、置換基またはパラメーターの具体的量/値はある範囲の下限または上限のいずれかの開示であり、従って本出願の他の場所に開示する同じ成分、化合物、置換基またはパラメーターが示す範囲または具体的量/値の他のいずれかの下限もしくは上限と組み合わせることで当該成分、化合物、置換基またはパラメーターの範囲を形成すると解釈されるべきである。
用語“油組成物”、“潤滑組成物”、“潤滑油組成物”、“潤滑油”、“潤滑油組成物”、“潤滑組成物”、“完全配合潤滑油組成物”および“潤滑油”は同義語であると見なし、多量の基油に加えて少量の添加剤組成物を含有して成る完成潤滑製品を言及する完全に互換可能な用語である。
用語“クランクケースオイル”、“クランクケース潤滑油”、“エンジンオイル”、“エンジン潤滑油”、“モーターオイル”および“モーター潤滑油”は同義語であると見なし、多量の基油に加えて少量の添加剤組成物を含有して成る完成エンジン、モーターもし
くはクランクケース潤滑製品を言及する完全に互換可能な用語である。
本明細書で用いる如き用語“添加剤パッケージ”および“添加剤濃縮液”、“添加剤組成物”は同義語であると見なし、多量の基油ストックを除く潤滑組成物部分を言及する完全に互換可能な用語である。添加剤パッケージに粘度指数向上剤または流動点降下剤を含有させるか或は含有させなくてもよい。
本明細書で用いる如き用語“エンジンオイル添加剤パッケージ”、“エンジンオイル添加剤濃縮液”、“クランクケース添加剤パッケージ”、“クランクケース添加剤濃縮液”、“モーターオイル添加剤パッケージ”および“モーターオイル濃縮液”は同義語であると見なし、多量の基油ストックを除く潤滑組成物部分を言及する完全に互換可能な用語である。エンジン、クランクケースまたはモーターオイル添加剤パッケージに粘度指数向上剤または流動点降下剤を含有させるか或は含有させなくてもよい。
明細書で用いる如き用語“ヒドロカルビル置換基”または“ヒドロカルビル基”を通常の意味で用い、これは当業者に良く知られている。具体的には、それは分子の残りと直接結合している炭素原子を有しかつ主に炭化水素の特徴を有する基を指す。本明細書で用いる如き“基”および“部分”は互換的であることを意図する。ヒドロカルビル基の例には下記が含まれる:
(a)炭化水素置換基、即ち脂肪置換基(例えばアルキルまたはアルケニル)、脂環式置換基(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)および芳香族−、脂肪族−および脂環式置換芳香族置換基ばかりでなく環式置換基[環が分子の別の部分によって完成している(例えば2つの置換基が一緒になって脂環式部分を形成している)]、
(b)置換炭化水素置換基、即ち炭化水素ではない基[本開示の文脈において、当該置換基の主に炭化水素の特性を実質的に変えない(例えばハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、アミノ、アルキルアミノおよびスルホキシ)]を含有する置換基、および
(c)ヘテロ置換基、即ち主に炭化水素の特性を有するが、本開示の文脈において、炭素原子以外の原子をそれ以外は炭素原子で構成される環または鎖の中に含有する置換基[ヘテロ原子には硫黄、酸素および窒素が含まれ得、そしてヘテロ置換基にはピリジン、フリル、チエニルおよびイミダゾリルなどの置換基が含まれる]。
一般に、ヒドロカルビル基に存在する炭化水素以外の置換基は炭素原子10個当たり2個以下、例えば1個以下である。典型的には、ヒドロカルビル基には炭化水素以外の置換基は存在しない。
本明細書で用いる如き用語“重量パーセント”は、特に明記しない限り、列挙した成分1種または2種以上、化合物1種または2種以上または置換基1種または2種以上が組成物全体の総重量の中で占めるパーセントを意味する。
本明細書で用いる如き用語“可溶”、“油溶性”および“分散性”は、必ずしもではないが、化合物または添加剤が油にあらゆる比率で溶解、可溶、混和または懸濁し得ることを表す。しかしながら、上述した用語は、その成分1種または2種以上、化合物1種または2種以上または添加剤1種または2種以上が例えば当該油が用いられる環境中で意図した効果を及ぼすに充分な度合で可溶、懸濁、溶解または安定に分散し得ることを意味する。その上、また、必要ならば他の添加剤を追加的に添加することで特定の油溶性もしくは分散性の化合物または添加剤をより高い濃度で取り込ませることも可能である。
本明細書で用いる如き用語“TBN”は、D2896またはASTM D4739の方法で測定した時の総塩基数を示す目的で用いるものであり、それをmg KOH/gで表
す。
本明細書で用いる如き用語“アルキル”は、炭素原子数が約1から約100の炭素鎖を有する直鎖、分枝、環式および/または置換飽和部分を指す。
本明細書で用いる如き用語“アルケニル”は、炭素原子数が約3から約10の炭素鎖を有する直鎖、分枝、環式および/または置換不飽和部分を指す。
本明細書で用いる如き用語“アリール”は単および多環芳香族化合物を指し、それらはアルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシおよび/またはハロ置換基および/またはヘテロ原子を含有していてもよく、ヘテロ原子には、これらに限定するものでないが、窒素、酸素および硫黄が含まれる。
本説明の潤滑油、成分1種または2種以上または化合物1種または2種以上の組み合わせまたは個々の成分1種または2種以上または化合物1種または2種以上は様々な種類の内燃機関で用いるに適切であり得る。適切なエンジンの種類には、これらに限定するものでないが、大型車両用ディーゼル、乗用車、軽量車両用ディーゼル、中速ディーゼルまたは船舶用エンジンが含まれ得る。内燃機関はディーゼル燃料エンジン、ガソリン燃料エンジン、天然ガス燃料エンジン、バイオ燃料エンジン、混合ディーゼル/バイオ燃料エンジン、混合ガソリン/バイオ燃料エンジン、アルコール燃料エンジン、混合ガソリン/アルコール燃料エンジン、圧縮天然ガス(CNG)燃料エンジンまたはこれらの組み合わせであってもよい。また、内燃機関を電気または電池動力源と組み合わせて用いることも可能である。そのような形態のエンジンはハイブリッドエンジンとして一般に知られている。内燃機関は2気筒、4気筒またはロータリーエンジンであり得る。このような態様が適用可能な適切な内燃機関には、船舶用ディーゼルエンジン、航空用ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジンおよびオートバイ、自動車、機関車およびトラックのエンジンが含まれる。
そのような内燃機関にはアルミニウム合金、鉛、錫、銅、鋳鉄、マグネシウム、セラミック、ステンレス鋼、複合材料および/またはこれらの組み合わせの中の1つ以上を含有して成る構成要素1種または2種以上が含まれている可能性がある。そのような構成要素1種または2種以上は例えばダイアモンドのような炭素被膜、潤滑被膜、燐含有被膜、モリブデン含有被膜、グラファイト被膜、ナノ粒子含有被膜および/またはそれらの組み合わせまたは混合物で被覆されている可能性がある。アルミニウム合金には、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウムまたは他のセラミック材料が含まれ得る。1つの態様のアルミニウム合金にはケイ酸アルミニウム表面が含まれている。本明細書で用いる如き用語“アルミニウム合金”は“アルミニウム複合材料”と同義語であり、アルミニウムを含有しかつ詳細な構造に関係なく顕微鏡もしくはほぼ顕微鏡レベルで混ざり合っているか或は反応している他の1種以上の成分1種または2種以上を含有して成る構成要素もしくは表面を記述することを意図するものである。これにはアルミニウム以外の金属との通常の合金のいずれも含まれるばかりでなく非金属元素または化合物との複合材料または合金様構造物、例えばセラミック様材料などが含まれるであろう。
内燃機関用潤滑油組成物は、硫黄、燐または硫化灰(ASTM D−874)含有量に関係なく全てのエンジン用潤滑油として用いるに適する可能性がある。エンジン用潤滑油の硫黄含有量は、約1重量%以下または約0.8重量%以下または約0.5重量%以下または約0.3重量%以下であり得る。1つの態様における硫黄含有量は約0.001重量%から約0.5重量%または約0.01重量%から約0.3重量%の範囲であり得る。燐含有量は約0.2重量%以下または約0.1重量%以下または約0.085重量%以下または約0.08重量%以下または約0.06重量%以下、約0.055重量%以下または
約0.05重量%以下でさえあり得る。1つの態様における燐含有量は約50ppmから約1000ppmまたは約325ppmから約850ppmであり得る。総硫化灰含有量は約2重量%以下または約1.5重量%以下または約1.1重量%以下または約1重量%以下または約0.8重量%以下または約0.5重量%以下であり得る。1つの態様における硫化灰含有量は約0.05重量%から約0.9重量%または約0.1重量%から約0.7重量%または約0.2重量%から約0.45重量%であり得る。別の態様における硫黄含有量は約0.4重量%以下であり得、燐含有量は約0.08重量%以下であり得、そして硫化灰含有量は約1重量%以下であり得る。更に別の態様における硫黄含有量は約0.3重量%以下であり得、燐含有量は約0.05重量%以下であり得、そして硫化灰は約0.8重量%以下であり得る。
1つの態様における潤滑油組成物は(i)硫黄含有量が約0.5重量%以下、(ii)燐含有量が約0.1重量%以下および(iii)硫化灰含有量が約1.5重量%以下であり得る。
1つの態様における潤滑油組成物は2気筒または4気筒の船舶用ディーゼル内燃機関で用いるに適する。1つの態様における船舶用ディーゼル燃焼エンジンは2気筒エンジンである。
更に、本発明の潤滑油は1つ以上の産業仕様要求、例えばILSAC GF−3、GF−4、GF−5、GF−6、PC−11、CI−4、CJ−4、ACEA A1/B1、A2/B2、A3/B3、A5/B5、C1、C2、C3、C4、E4/E6/E7/E9、Euro 5/6,Jaso DL−1、Low SAPS、Mid SAPSまたは相手先商標製品の製造会社の仕様、例えばdexosTM 1、dexosTM 2、MB−Approval 229.51/229.31、VW 502.00、503.00/503.01、504.00、505.00、506.00/506.01、507.00、BMW Longlife−04、Porsche C30、Peugeot Citroen Automobiles B71 2290、Ford WSS−M2C153−H、WSS−M2C930−A、WSS−M2C945−A、WSS−M2C913A、WSS−M2C913−B、WSS−M2C913−C、GM 6094−M、Chrysler MS−6395または本明細書に挙げなかった過去または将来のいずれかのPCMOまたはHDD仕様などを満足させるに適切であり得る。いくつかの態様では、乗用車用モーターオイル(PCMO)用途の目的で、完成液中の燐の量を1000ppm以下または900ppm以下または800ppm以下にする。
他のハードウエアはこの開示する潤滑油と一緒に用いるに適さない可能性がある。“機能液”は様々な液を包含する用語であり、それには、これらに限定するものでないが、トラクターの油圧油、動力伝達液(オートマチックトランスミッション液、連続可変トランスミッション液および手動トランスミッション液を包含)、他の油圧油、ある種のギアオイル、パワーステアリング液、風力タービンおよびコンプレッサーで用いられる液、ある種のUTTSおよび伝動機構構成要素に関係して用いられる液が含まれる。各種類の前記液、例えばオートマチックトランスミッション液などの中には多種多様な液が存在することを注目すべきである、と言うのは、様々な装置/トランスミッションのデザインは様々であることから顕著に異なる機能的特徴を有する特殊な液の必要性が生じてきたからである。このことは機能液が行うように動力を発生または伝達する目的で用いられるのではない液を表す目的で用いられる用語“潤滑液”とは対照的である。
例えばトラクターの油圧油に関して、その液はエンジンを潤滑させる以外にトラクターのあらゆる潤滑用途で用いられる多目的製品である。このような潤滑用途には、ギアボックス、パワーテイクオフおよびクラッチ、後軸、減速ギア、湿式ブレーキおよび油圧アク
セサリーの潤滑が含まれ得る。
機能液がオートマチックトランスミッション液の場合、そのオートマチックトランスミッション液は動力伝達の目的でクラッチプレートに充分な摩擦を与える必要がある。しかしながら、そのような液の摩擦係数はその液が作動中に加熱されるにつれて温度の影響によって低下する傾向がある。そのようなトラクターの油圧油またはオートマチックトランスミッション液は高温で高い摩擦係数を維持することが重要であり、そうでなければブレーキ系またはオートマチックトランスミッションが故障する可能性がある。これはエンジンオイルの機能ではない。
トラクター用液、例えばSuper Tractor Universal Oil(STUO)またはUniversal Tractor Transmission Oil(UTTO)などは、エンジンオイルの性能とトランスミッション、差動装置、ファイナルドライブ遊星ギア、湿式ブレーキおよび油圧性能への1つ以上の適応を合わせ持つ可能性がある。UTTOまたはSTUO液を配合する時に用いられる添加剤の多くは機能の点で同様であるが、それらを適切に組み込まないと有害な影響が生じる可能性がある。例えばエンジンオイルで用いられるある種の抗摩耗および極圧添加剤は油圧ポンプ内の銅製構成要素を極度に腐食する可能性がある。ガソリンまたはディーゼルエンジン性能の目的で用いられる洗浄剤および分散剤は湿式ブレーキの性能に有害であり得る。湿式ブレーキの雑音を静める目的で用いられる摩擦調整剤はエンジンオイルの性能に要求される熱安定性が不足している可能性がある。これらの液は各々が、機能、トラクターまたは潤滑のいずれであるかに拘わらず、意図される目的に関連した特定かつ厳格な製造業者の要求を満足させるように考案されている。
本開示の潤滑油組成物は適切な基油に1種以上の添加剤を添加することで配合可能である。これらの添加剤を添加剤パッケージ(または濃縮液)の形態で基油と組み合わせてもよいか或は別法としてそれらを個別に基油と組み合わせてもよい。完全配合潤滑油は当該組成物で用いられる添加剤およびこれらの添加剤の個々の比率を基にして向上した性能特性を示す可能性がある。
本開示は、自動車用クランクケース潤滑油として用いる適するように具体的に配合した新規な潤滑油混合物を包含する。本開示の態様は、クランクケース用途で用いるに適していて下記の特性:空気連行、アルコール燃料適合性、抗酸化性、抗摩耗性能、バイオ燃料適合性、消泡特性、摩擦低下、燃料経済性、過早点火防止、防錆、スラッジおよび/または煤分散性および耐水性が向上した潤滑油を提供し得るものである。
本開示の追加的詳細および利点を一部ではあるが以下の説明の中に挙げそして/または本開示の実施によって学ぶことができる。本開示の詳細および利点は特に添付請求項で指摘する要素および組み合わせの手段で実現および達成可能である。上述した一般的説明および以下の詳細な説明は両方とも単に典型および例示であり、請求する如き本開示の範囲を制限するものでないと理解されるべきである。
詳細な説明
例示の目的で、様々な典型的態様を言及することで本開示の原理を説明する。特定の態様を本明細書に具体的に記述するが、同じ原理を等しく他のシステムおよび方法に適用することができかつそれらで用いることができることを通常の当業者は容易に理解するであろう。開示する態様を詳細に説明する前に、本開示を、適用の点で、示すいずれかの特別な態様の詳細に限定するものでないと理解されるべきである。加うるに、本明細書で用いる用語は説明の目的であり、限定の目的ではない。その上、本明細書では特定の順で示す段階を言及することで特定の方法を記述するが、多くの場合、これらの段階は、当業者が
理解するであろうように、如何なる順でも実施可能であり、従って、この新規な方法を本明細書に開示する段階の特定配列に限定するものでない。
本開示は潤滑油を提供するものであり、この潤滑油は多量の基油および少量の添加剤パッケージを含有して成り、前記添加剤パッケージは
で表される無水ヒドロカルビルこはく酸およびR−COOH[式中、Rは炭素原子数が約8から約28の直鎖もしくは分枝、飽和、不飽和または部分飽和ヒドロカルビルである]で表されるカルボン酸から成る群より選択される反応体とリシンの反応生成物を含有して成る。
別の面として、本開示は多量の基油および少量の添加剤パッケージを含有して成る潤滑油を提供するものであり、前記添加剤パッケージは1種以上の摩擦調整剤を含有して成りかつ前記摩擦調整剤はグルタミン酸、アスパラギン酸またはこれらの混合物とR−NH2[式中、Rはこの上で定義した通りである]で表される第一級アミンの反応生成物ばかりでなく前記反応生成物のカルボン酸塩を含有して成り、ここで、前記カルボン酸塩はアルカリ金属、アルカリ土類金属、IIB族の金属またはアンモニウムカチオンであるカチオンを有する。
本開示はまた多量の基油および少量の添加剤パッケージを含有して成る潤滑油も提供し、前記添加剤パッケージは式II、IIIおよびIV:
[式中、Rは炭素原子数が約8から約28の直鎖もしくは分枝、飽和、不飽和または部分飽和ヒドロカルビルでありそしてnは0または1のいずれかである]
で表される1種以上の摩擦調整剤を含有して成る。
いくつかの態様における添加剤パッケージは少なくとも2種類の異なる摩擦調整剤を含有して成る。他のいくつかの態様における添加剤パッケージは前記式II、IIIおよびIVで表される化合物から選択した少なくとも2種類の摩擦調整剤を含有して成る。
いくつか態様におけるRは炭素原子数が約10から約25または炭素原子数が約10から約20または炭素原子数が約10から約18の直鎖もしくは分枝、飽和、不飽和または部分飽和ヒドロカルビルである。
本開示で用いるに適した前記式II、IIIおよびIVで表される化合物には、例えばリシンドデセニルスクシニミド、2−アミノ−5−(オクタデコ−9−エン−1−イルアミノ)−5−オキソペンタン酸、2−アミノ−4−(オクタデコ−9−エン−1−イルアミノ)−4−オキソブタン酸、2−アミノ−6−(3−(ドデコ−1−エン−1−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)ヘキサン酸、2−アミノ−6−(オクタデコ−9−エナミド)ヘキサン酸、2−アミノ−6−(3−イコソ−1−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)ヘキサン酸、2−アミノ−6−(2,5−ジオキソ−3−(テトラコソ−1−エン−1−イル)ピロリジン−1−イル)ヘキサン酸、2−アミノ−
6−(2,5−ジオキソ−3−(テトラコシル)ピロリジン−1−イル)ヘキサン酸、2−アミノ−6−(3−イコシル)−2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)ヘキサン酸、2−アミノ−6−(3−(ドデコ−2−エン−1−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)ヘキサン酸、2−アミノ−6−(3−(ノノ−2−エン−1−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)ヘキサン酸および2−アミノ−6−ステアラミドヘキサン酸が含まれる。
この上に示した潤滑油にはエンジンオイルが含まれ得る。
式IIで表される化合物の合成は無水ヒドロカルビルこはく酸とアミノ酸であるリシンの反応で実施可能である。無水ヒドロカルビルこはく酸は
[式中、Rはこの上で定義した通りである]
で描写可能である。
いくつか態様におけるRは炭素原子数が約10から約25または炭素原子数が約10から約20または炭素原子数が約10から約18の直鎖もしくは分枝、飽和、不飽和または部分飽和ヒドロカルビルである。無水ヒドロカルビルこはく酸の製造方法は当該技術分野で良く知られている。
そのような無水ヒドロカルビルこはく酸はリシンのε−アミノ基と反応する。反応体である無水ヒドロカルビルこはく酸とリシンを不活性溶媒、例えば炭化水素溶媒(即ちヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)に溶解させた後にその混合物をスクシニミドへの変換が本質的に完了するまで還流させる。この反応を便利には高温、好適には前記溶媒の還流温度で所望のスクシニミドが生じるに充分な時間実施する。生成物が生じた後に溶媒を蒸留で除去する。
式IIIで表される化合物の合成はアミノ酸であるリシンとR−COOHまたはR(O)−Cl[式中、Rはこの上で定義した通りである]で表されるカルボン酸の反応で実施可能である。
式IVで表される化合物の合成はグルタミン酸、アスパラギン酸およびこれらの混合物から選択した1種以上のアミノ酸とR−NH2[式中、Rはこの上で定義した通りである]で表される第一級アミンの反応で実施可能である。
別の面として、本開示は、多量の基油および少量の添加剤パッケージを含有して成る潤滑油を提供するものであり、前記添加剤パッケージは1種以上の摩擦調整剤を含有して成りかつ前記摩擦調整剤は式I:
で表される無水ヒドロカルビルこはく酸およびR−COOH[式中、Rは炭素原子数が約8から約28の直鎖もしくは分枝、飽和、不飽和または部分飽和ヒドロカルビルである]で表されるカルボン酸から成る群より選択した反応体とリシンの反応生成物のカルボン酸塩を含有して成る。いくつかの態様におけるRは炭素原子数が約10から約25または炭素原子数が約10から約20または炭素原子数が約10から約18の直鎖もしくは分枝、飽和、不飽和または部分飽和ヒドロカルビルである。
別の面として、本開示は多量の基油および少量の添加剤パッケージを含有して成る潤滑油を提供するものであり、前記添加剤パッケージは1種以上の摩擦調整剤を含有して成りかつ前記摩擦調整剤は式I:
で表される無水ヒドロカルビルこはく酸およびR−COOH[式中、Rは炭素原子数が約8から約28の直鎖もしくは分枝、飽和、不飽和または部分飽和ヒドロカルビルである]で表されるカルボン酸から成る群より選択した反応体とリシンの反応生成物のカルボン酸塩を含有して成る。いくつかの態様におけるRは炭素原子数が約10から約25または炭素原子数が約10から約20または炭素原子数が約10から約18の直鎖もしくは分枝、飽和、不飽和または部分飽和ヒドロカルビルである。前記カルボン酸塩はアルカリ金属、アルカリ土類金属、IIB族の金属またはアンモニウムカチオンであるカチオンを有する。
別の面として、本開示は多量の基油および少量の添加剤パッケージを含有して成る潤滑油を提供するものであり、前記添加剤パッケージは1種以上の摩擦調整剤を含有して成りかつ前記摩擦調整剤はグルタミン酸、アスパラギン酸またはこれらの混合物と式R−NH2[式中、Rはこの上で定義した通りである]で表される第一級アミンの反応生成物ばかりでなく前記反応生成物のカルボン酸塩を含有して成る。前記カルボン酸塩はアルカリ金属、アルカリ土類金属、IIB族の金属またはアンモニウムカチオンであるカチオンを有する。
別の面として、本開示は多量の基油および少量の添加剤パッケージを含有して成る潤滑油を提供するものであり、前記添加剤パッケージはこの上に示した如き式II、IIIおよびIVで表される化合物のカルボン酸塩である1種以上の摩擦調整剤を含有して成る。前記カルボン酸塩はアルカリ金属、アルカリ土類金属、IIB族の金属またはアンモニウ
ムカチオンであるカチオンを有する。
この上に開示したカルボン酸塩に適したカチオンのいくつか例には、例えば一価カチオン、例えばナトリウム、リチウムおよびカリウムカチオンなどおよび二価カチオン、例えばカルシウム、マグネシウム、亜鉛およびバリウムカチオンなどが含まれる。
この上に示した潤滑油にはエンジンオイルが含まれ得る。
いくつかの態様では、本開示の潤滑油に2種以上の摩擦調整剤を含有させてもよく、各々を前記式II、IIIおよびIVで表される化合物およびこれらのカルボン酸塩から独立して選択する。前記カルボン酸塩はアルカリ金属、アルカリ土類金属、IIB族の金属またはアンモニウムカチオンであるカチオンを有する。いくつかの態様は潤滑油および例えばエンジンオイルの特定の特性を注文に合わせるに有用である。
本開示の1種以上の摩擦調整剤が本潤滑油組成物の総重量の約0.05から約2.0重量%または0.1から約2.0重量%または約0.2から約1.8重量%または約0.5から約1.5重量%を構成するようにしてもよい。そのような摩擦調整剤の化合物を添加剤パッケージに摩擦調整剤が完全配合エンジンオイルに適切な量で送り込まれるに適した量で混合してもよい。本開示の1種以上の摩擦調整剤が当該添加剤パッケージの総重量の約0.1から約20重量%または約1.0から約20重量%または約2.0から約18重量%または約5.0から約15重量%を構成するようにしてもよい。
1種以上の摩擦調整剤を組み合わせて用いる場合、それらを1:100から100:1、1:1:100から1:100:1から100:1:1または他の適切ないずれかの比率などで用いてもよい。
いくつかの態様では、本開示の添加剤パッケージに更に少なくとも1種の分散剤を含有させてもよい。その少なくとも1種の分散剤はスクシニミド系分散剤、例えばヒドロカルビル置換スクシニミドなどであってもよい。その分散剤は無灰分散剤であってもよい。
ヒドロカルビル置換こはく酸系アシル化剤を用いてヒドロカルビル置換スクシニミドを生じさせることができる。そのようなヒドロカルビル置換こはく酸系アシル化剤には、これらに限定するものでないが、ヒドロカルビル置換こはく酸、無水ヒドロカルビル置換こはく酸、ヒドロカルビル置換こはく酸ハロゲン化物(例えば酸フルオライドおよび酸クロライド)およびヒドロカルビル置換こはく酸と低級アルコール(例えば炭素原子数が7以下の)のエステル、即ちカルボン酸系アシル化剤として機能し得るヒドロカルビル置換化合物が含まれる。
ヒドロカルビル置換アシル化剤の製造は、適切な分子量のポリオレフィンまたは塩素化ポリオレフィンと無水マレイン酸の反応で実施可能である。同様なカルボン酸系反応体を用いてアシル化剤を生じさせることも可能である。そのような反応体には、これらに限定するものでないが、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、無水エチルマレイン酸、無水ジメチルマレイン酸、エチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、ヘキシルマレイン酸など(相当する酸ハロゲン化物および低級脂肪族エステルを包含)が含まれ得る。
オレフィンの分子量を無水置換こはく酸の意図した用途に応じて変えることができる。典型的には、無水置換こはく酸に持たせるヒドロカルビル基の炭素原子数を約8−500にしてもよい。しかしながら、潤滑油分散剤の製造で用いる無水置換こはく酸に持たせるヒドロカルビル基の炭素原子数を典型的には約40−500にしてもよい。無水置換こは
く酸の分子量が高い場合には数平均分子量(Mn)を言及する方がより正確である、と言うのは、そのような無水置換こはく酸の製造で用いるオレフィンには、低分子量のオレフィン単量体、例えばエチレン、プロピレンおよびイソブチレンなどの重合の結果としてもたらされる様々な分子量の成分の混合物が含まれている可能性があるからである。
無水マレイン酸とオレフィンのモル比は幅広く多様であり得る。それは例えば約5:1から約1:5または例えば約1:1から約3:1に及んで多様であり得る。数平均分子量が約500から約7000またはさらなる例として約800から約3000またはそれ以上のポリイソブチレンの如きオレフィンおよびエチレン−アルファ−オレフィン共重合体を用いる場合、無水マレイン酸を化学量論的過剰量、例えばオレフィン1モル当たり1.1から3モルの量の無水マレイン酸量で用いてもよい。その結果として得られた反応混合物から未反応の無水マレイン酸を蒸発させてもよい。
無水ポリアルケニルこはく酸から無水ポリアルキルこはく酸を生じさせる変換は通常の還元条件、例えば接触水添などを用いて実施可能である。接触水添の場合の適切な触媒は炭素に担持されているパラジウムである。同様に、ポリアルケニルスクシニミドからポリアルキルスクシニミドを生じさせる変換も同様な還元条件を用いて実施可能である。
本明細書で用いる無水こはく酸に持たせるポリアルキルまたはポリアルケニル置換基は一般にポリオレフィンから誘導可能性であり、そのポリオレフィンはモノ−オレフィン、特に1−モノ−オレフィン、例えばエチレン、プロピレンおよびブチレンなどの重合体もしくは共重合体である。その用いるモノ−オレフィンの炭素原子数は約2から約24、またはさらなる例として、炭素原子数は約3から約12であってもよい。他の適切なモノ−オレフィンには、プロピレン、ブチレン、特にイソブチレン、1−オクテンおよび1−デセンが含まれる。そのようなモノ−オレフィンから生じさせるポリオレフィンには、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、および1−オクテンおよび1−デセンから生じさせたポリアルファオレフィンが含まれる。
いくつかの面では、当該分散剤にイミド基を生じ得る第一級アミノ基を少なくとも1個有するアミンの1種以上のアルケニルスクシニミドを含めてもよい。そのようなアルケニルスクシニミドの製造は通常方法、例えば無水アルケニルこはく酸、酸、酸−エステル、酸ハライドまたは低級アルキルエステルを第一級アミノ基を少なくとも1個有するアミンと一緒に加熱することなどで実施可能である。前記無水アルケニルこはく酸の製造はポリオレフィンと無水マレイン酸の混合物を約180−220℃に加熱することで容易に実施可能である。そのポリオレフィンは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した時に約300から約3000の範囲の数平均分子量を有する低級モノオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、イソブテンなどの重合体もしくは共重合体であってもよい。
無灰分散剤を生じさせる時に使用可能なアミンには、反応してイミド基を生じ得る第一級アミノ基を少なくとも1個有しかつ追加的第一級もしくは第二級アミノ基を少なくとも1個および/またはヒドロキシル基を少なくとも1個有する如何なるアミンも含まれる。代表的な数例はN−メチル−プロパンジアミン、N−ドデシルプロパンジアミン、N−アミノプロピル−ピペラジン、エタノールアミン、N−エタノール−エチレンジアミンなどである。
適切なアミンにはアルキレンポリアミン、例えばプロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、ジ−(1,2−ブチレン)トリアミンおよびテトラ−(1,2−プロピレン)ペンタミンが含まれ得る。さらなる例にはエチレンポリアミンが含まれ、これらは式H2N(CH2CH2−−NH)nH[式中、nは約1から約10の整数であり得る]で描写可能である。これらにはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチ
レンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)などが含まれ、これらにはそれらの混合物も含まれ、その場合のnは当該混合物の平均値である。そのようなエチレンポリアミンは各末端に第一級アミン基を有することから、それらはモノ−アルケニルスクシニミドおよびビス−アルケニルスクシニミドを生じ得る。市販のエチレンポリアミン混合物には分枝種および環式種、例えばN−アミノエチルピペラジン、N,N’−ビス(アミノエチル)ピペラジン、N,N’−ビス(ピペラジニル)エタンおよび同様な化合物などが少量入っている可能性がある。そのような市販混合物のおおよその全体的組成は、ジエチレントリアミン対テトラエチレンペンタミンに相当する範囲内に入り得る。無水ポリアルケニルこはく酸とポリアルキレンポリアミンのモル比を約1:1から約3.0:1にしてもよい。
いくつかの面では、そのような分散剤にポリエチレンポリアミン、例えばトリエチレンテトラミンまたはテトラエチレンペンタミンなどと炭化水素置換カルボン酸もしくは無水物の反応生成物が含まれ得るが、それは適切な分子量のポリオレフィン、例えばポリイソブテンなどと不飽和ポリカルボン酸もしくは無水物、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸など(2種以上のそのような物質の混合物を包含)を反応させると生じる。
本明細書に記述する分散剤を生じさせる時にまた適切であるポリアミンには、N−アリールフェニレンジアミン、例えばN−フェニルフェニレンジアミン、例えばN−フェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,3−フェニレンジアミンおよびN−フェニル−1,2−フェニレンジアミンなど、アミノチアゾール、例えばアミノチアゾール、アミノベンゾチアゾール、アミノベンゾチアジアゾールおよびアミノアルキルチアゾールなど、アミノカルバゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノ−インダゾリノン、アミノメルカプトトリアゾール、アミノペリミジン、アミノアルキルイミダゾール、例えば1−(2−アミノエチル)イミダゾール、1−(3−アミノプロピル)イミダゾールなど、およびアミノアルキルモルホリン、例えば4−(3−アミノプロピル)モルホリンなどが含まれる。このようなポリアミンは米国特許第4,863,623号および5,075,383号により詳細に記述されている。
ヒドロカルビル置換スクシニミドを生じさせる時に用いるに有用な追加的ポリアミンには、米国特許第5,634,951号および5,725,612号に教示されている如き、分子中に第一級もしくは第二級アミノ基を少なくとも1個と第三級アミノ基を少なくとも1個有するポリアミンが含まれる。適切なポリアミンの非限定例には、N,N,N”,N”−テトラアルキルジアルキレントリアミン(2個の末端第三級アミノ基および1個の中心の第二級アミノ基)、N,N,N’,N”−テトラアルキルトリアルキレンテトラミン(1個の末端第三級アミノ基、2個の内部の第三級アミノ基および1個の末端第一級アミノ基)、N,N,N’,N”,N”’−ペンタアルキルトリアルキレンテトラミン(1個の末端第三級アミノ基、2個の内部の第三級アミノ基および1個の末端第二級アミノ基)、トリス(ジアルキルアミノアルキル)アミノアルキルメタン(3個の末端第三級アミノ基および1個の末端第一級アミノ基)および同様な化合物が含まれ、ここで、前記アルキル基は同一もしくは異なり、典型的には各々が含有する炭素原子の数は約12以下であるが、各々が含有する炭素原子の数は約1から約4であってもよい。さらなる例として、これらのアルキル基はメチルおよび/またはエチル基であってもよい。この種類のポリアミン反応体にはジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)およびN−メチルピペラジンが含まれ得る。
本明細書で用いるに適したヒドロキシアミンには、ヒドロカルビル置換こはく酸酸もしくは無水物と反応し得る第一級もしくは第二級アミンを少なくとも1個含有する化合物、オリゴマーまたはポリマーが含まれる。本明細書で用いるに適したヒドロキシアミンの例には、アミノエチルエタノールアミン(AEEA)、アミノプロピルジエタノールアミン
(APDEA)、エタノールアミン、ジエタノールアミン(DEA)、部分プロポキシル化ヘキサメチレンジアミン(例えばHMDA−2POまたはHMDA−3PO)、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよび2−アミノ−1,3−プロパンジオールが含まれる。
アミンとヒドロカルビル置換こはく酸酸もしくは無水物のモル比を約1:1から約3.0:1の範囲にしてもよい。アミンとヒドロカルビル置換こはく酸酸もしくは無水物のモル比の別の例は約1.5:1から約2.0:1の範囲であり得る。
いくつかの態様では、本潤滑油に後処理を受けさせた少なくとも1種のポリイソブチレンスクシニミドを含有させる。この後処理はホウ素化合物、無水物、アルデヒド、ケトン、燐化合物、エポキシドおよびカルボン酸から成る群より選択した1種以上の化合物を用いて実施可能である。米国特許第7,645,726号、米国特許第7,214,649号および米国特許第8,048,831号にいくつかの適切な後処理方法および後処理生成物が記述されている。
後処理は例えば当該分散剤に無水マレイン酸およびホウ酸を用いた処理を例えば米国特許第5,789,353号に記述されているようにして受けさせるか或は当該分散剤にノニルフェノール、ホルムアルデヒドおよびグリコール酸を用いた処理を例えば米国特許第5,137,980号に記述されているようにして受けさせることなどで実施可能である。
1つの態様では、ポリイソブチレンスクシニミド系分散剤にホウ素化合物を用いた後処理を受けさせることで、本潤滑剤のホウ素含有量を約200から約500ppmの範囲または約300から約500ppmの範囲または約300から約400ppmの範囲にする。
いくつかの態様において、本開示のポリアルキレンスクシニミド系分散剤は式:
[式中、R1は炭素原子数が約8から800のヒドロカルビル部分であり、Yは炭素原子数が2から3の二価のアルキレンもしくは第二ヒドロキシ置換アルキレン部分であり、Aは水素またはグリコリル、ラクチル、2−ヒドロキシ−メチルプロピオニルおよび2,2’−ビスヒドロキシメチルプロピオニル部分から成る群より選択されるヒドロキシアシル部分でありかつAで表される前記部分の少なくとも30パーセントは前記ヒドロキシアシル部分であり、nは1から6の整数でありそしてR2は−NH2、−NHAから成る群より選択される部分でありかつAはこの上で定義した通りであるか或は式:
で表されるヒドロキシカルビル置換スクシニル部分でありかつR1はこの上で定義した通りである]
で描写可能である。
他のいくつかの態様において、本開示のポリアルキレンスクシニミド系分散剤は式:
[式中、R1は炭素原子数が8から800のヒドロカルビル部分であり、これの数平均分子量は約500から約10,000であるか、或はR1の数平均分子量は約500から約3,000の範囲である]
で描写可能である。
いくつかの態様におけるポリアルキレンスクシニミドは、数平均分子量が約900以上または約900から約5000の範囲または約1200から約5000の範囲または1200から約3000の範囲または約1200から約2000の範囲または約1200のポリイソブチレンに由来するポリイソブチレン残基を有する。
他のいくつかの態様におけるポリイソブチレンスクシニミド系分散剤は、末端ビニリデンを約50%以上または末端ビニリデンを約55%以上または末端ビニリデンを60%以上または末端ビニリデンを約70%以上または末端ビニリデンを約80%以上有するポリイソブチレンに由来するポリイソブチレン残基を有する。そのようなポリイソブチレン残基をまた高反応性ポリイソブチレン(“HR−PIB”)と呼ぶこともある。本開示では特に数平均分子量が約800から約5000の範囲のHR−PIBが用いるに適切である。通常の非高反応性PIBが有する末端ビニリデン含有量は典型的には50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、または10モル%未満である。
数平均分子量が約900から約3000の範囲のHR−PIBが本開示のエンジンオイルで用いるに適切であり得る。そのようなHR−PIBは商業的に入手可能であるか或はイソブテンの重合を非塩素化触媒、例えば三フッ化ホウ素などの存在下で米国特許第4,152,499号および米国特許第5,739,355号に記述されているようにして起こさせることで合成可能である。HR−PIBを上述した熱エン反応で用いると反応変換速度が速くなるばかりでなく反応性が高いことが理由で沈着物生成量が低くなる可能性がある。
前記分散剤は本潤滑組成物またはエンジンオイル組成物の最終的重量を基準にしてそれがもたらす量が約20重量%以下であるほどの量で使用可能である。使用可能な前記分散剤の別の量は本開示の潤滑油またはエンジンオイルの最終的重量を基準にして約0.1重量%から約15重量%または約0.1重量%から約10重量%または約3重量%から約10重量%または約1重量%から約6重量%または約7重量%から約12重量%であり得る。
いくつかの態様では、本開示の添加剤パッケージに更に少なくとも1種の金属ジアルキルジチオ燐酸塩を含有させる。いくつかの態様では、そのような添加剤パッケージに少なくとも2種類の異なる金属ジアルキルジチオ燐酸塩を含有させる。そのジアルキルジチオ燐酸塩中の金属はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、錫、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅または亜鉛であってもよい。
当該金属ジアルキルジチオ燐酸塩が有する2個のアルキル基は同一もしくは異なってもよく、各々が含有する炭素原子の数は1から18または炭素原子の数は2から12または炭素原子の数は4から12または炭素原子の数は7から18である。油溶性を得る目的で、そのアルキル基中の炭素原子の総数が一般に約5以上になるようにする。いくつかの態様では、当該添加剤パッケージに入れる金属ジアルキルジチオ燐酸塩が有するアルキル基の炭素原子数が1−5であるようにする。
いくつかの態様では、少なくとも1種の金属ジアルキルジチオ燐酸塩が有するアルキル基の100モルパーセントが第一アルコール基に由来するものであってもよい。いくつかの態様では、少なくとも1種の金属ジアルキルジチオ燐酸塩が有するアルキル基の少なくとも約75モルパーセントが4−メチル−2−ペンタノールに由来するものであってもよい。いくつかの態様では、少なくとも1種の金属ジアルキルジチオ燐酸塩が有するアルキル基の80モルパーセント以上が4−メチル−2−ペンタノールに由来するものであってもよい。いくつかの態様では、4−メチル−2−ペンタノールに由来する少なくとも1種の金属ジアルキルジチオ燐酸塩の量が90モルパーセント以上、好ましくは100モルパーセントであるようにしてもよい。
そのような少なくとも1種の金属ジアルキルジチオ燐酸塩はジヒドロカルビルジチオ燐酸亜鉛(ZDDP)から選択可能であり、これらはジヒドロカルビルジチオ燐酸の油溶性塩であり、下記の式:
[式中、R’およびR”は炭素原子を1から18、例えば2から12個含有する同一もしくは異なるヒドロカルビル部分であることができ、それにはアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリールおよび脂環式部分などの如き部分が含まれる]
で描写可能である。前記R’およびR”基は炭素原子数が2から8のアルキル基であってもよい。従って、前記部分はエチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、アミル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2−エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルであってもよい。油溶性を得る目的で、ジチオ燐酸中の炭素原子(即ちR’およびR”)の総数が一般に約5以上になるようにする。
いくつかの態様では、少なくとも1種のジアルキルジチオ燐酸亜鉛が有するアルキル基の100モルパーセントが第一アルコール基に由来するものであってもよい。この開示の態様に従い、1種以上のジアルキルジチオ燐酸亜鉛成分が有するアルキル基の少なくとも約75モルパーセントは4−メチル−2−ペンタノールに由来するものである。別の態様では、1種以上のジアルキルジチオ燐酸亜鉛成分が有するアルキル基の80モルパーセント以上が4−メチル−2−ペンタノールに由来するものである。他の態様では、4−メチル−2−ペンタノールに由来する1種以上のジアルキルジチオ燐酸亜鉛成分の量が90モルパーセント以上、好ましくは100モルパーセントであるようにしてもよい。
そのようなジアルキルジチオ燐酸金属塩の調製は公知技術に従って最初にジアルキルジチオ燐酸(DDPA)を通常は1種以上のアルコールの反応で生じさせた後にその生じさせたDDPAを金属化合物で中和することで実施可能である。その金属塩を生じさせる目的で、如何なる塩基性または中性の金属化合物も使用可能であるが、最も一般的には酸化物、水酸化物および炭酸塩を用いる。ジアルキルジチオ燐酸亜鉛の製造は米国特許第7,368,596号に一般的に記述されている方法の如き方法を用いて実施可能である。
金属ジアルキルジチオ燐酸塩を生じさせる時に用いるに適したアルコールは第一アルコール、第二アルコールまたは第一と第二アルコールの混合物であってもよい。1つの態様では、添加剤パッケージに第一アルキル基を有するアルコールから誘導されたある金属ジアルキルジチオ燐酸塩と第二アルキル基を有するアルコールから誘導された別の金属ジアルキルジチオ燐酸塩を含有させる。別の態様では、金属ジアルキルジチオ燐酸塩を少なくとも2種類の第二アルコールから誘導する。それらのアルコールは分枝、環式または直鎖のいずれかを含有していてもよい。
いくつかの態様において、金属ジアルキルジチオ燐酸塩を生じさせる時に用いるアルコールは第一対第二アルコールの比率が約100:0から約50:50、例えば第一対第二アルコールの比率が約60:40の混合物であってもよい。そのアルコール混合物の一例はほぼClからほぼC18の第一アルコール含有量が約50から約100モル%でほぼC3からC18第二アルコールが約50モル%以下の混合物である。別の例として、その第一アルコールはほぼClからほぼC18アルコールの混合物であってもよい。さらなる例として、第一アルコールはC4からほぼC8アルコールの混合物であってもよい。また、第二アルコールもアルコールの混合物であってもよい。一例として、第二アルコールはC3アルコールを含有していてもよい。
1つの態様では、当該添加剤パッケージに第一アルキル基を有するアルコールから誘導された金属ジアルキルジチオ燐酸塩および第二アルキル基を有するアルコールから誘導された別の金属ジアルキルジチオ燐酸塩を含有させてもよい。
いくつかの態様では、前記少なくとも1種の金属ジアルキルジチオ燐酸塩をエンジンオ
イルに燐を約100から約1000ppmまたは燐を約200から約1000ppmまたは燐を約300から約900ppmまたは燐を約500から約800ppmまたは燐を約550−700ppm供給するに充分な量で存在させてもよい。
いくつかの態様における金属ジアルキルジチオ燐酸塩はZDDPであってもよい。いくつかの態様では、当該添加剤パッケージに2種以上の金属ジアルキルジチオ燐酸塩を含有させてもよく、その1つをZDDPにする。そのZDDPは約60モル%の量の第一アルコールと約40モル%の量の第二アルコールの組み合わせを含有して成っていてもよい。
いくつかの態様では、本開示の添加剤パッケージに更に少なくとも1種の洗浄剤を含有させてもよい。いくつかの典型的な態様では、当該エンジンオイルに2種以上の異なる洗浄剤を含有させてもよい。いくつかの態様における洗浄剤は硫黄を含有しない洗浄剤であってもよい。特定の状況下では硫黄を含有しない洗浄剤を用いる方が有利であり得る、と言うのは、硫黄は窒素酸化物除去用触媒にとって毒であることが知られておりそして亜鉛/モリブデンの燐酸塩は排気粒状物濾過装置を詰まらせる原因になる鍵となる一因であるからである。
いくつかの態様では、前記洗浄剤にスルホネート、フェネートまたはサリシレートを含有させる。更に、そのような洗浄剤はカルシウム、マグネシウムまたはナトリウムも含有して成る。例にはスルホン酸カルシウム、スルホン酸マグネシウム、スルホン酸ナトリウム、カルシウムフェネートおよび/または亜鉛フェネートが含まれる。
前記フェネートは少なくとも1種のアルキルフェノールから誘導可能である。フェノールにアルキル基を多数存在させることができる。アルキルフェノールのアルキル基は分枝もしくは非分枝であってもよい。適切なアルキル基が含有する炭素原子の数は4から50または9から45または12から40である。特に適切なアルキルフェノールはC12−アルキルフェノールであり、これはフェノールにプロピレン四量体によるアルキル置換を受けさせると得られる。そのアルキルフェネートにカルボン酸を用いた反応による修飾を受けさせることも可能である。
適切なアルキルフェネートの調製はアルキルフェノール、例えばオクチル、ノニル、n−デシル、セチルまたはジオクチルフェノールとアルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基、例えば水酸化バリウム八水和物などを反応させることで実施可能である。相当する過塩基フェネートを製造しようとする場合、フェノールを過剰量の塩基と反応させそして過剰分を酸性ガス、例えば二酸化炭素などで中和する。
フェネート系洗浄剤に硫化を受けさせてもよく、それの調製をアルキルフェネートと元素状硫黄を反応させて複雑な反応生成物を生じさせることで行い、その反応生成物に入っている遊離アルキルフェノールまたは揮発性物質を蒸気を用いた蒸留で除去してもよい。
スルホネート系洗浄剤はアルキル基を持っていてもよく、式R−SO3M[式中、Mは金属でありそしてRは炭素原子を約50から300または約50から250含有する実質的に飽和の脂肪族ヒドロカルビル置換基である]で表される。“実質的に飽和”は、炭素と炭素の共有結合の少なくとも約95%が飽和であることを意味する。不飽和部分があまりにも多いと分子がより容易に酸化、劣化および重合を起こしてしまう。
スルホネート系洗浄剤の他の適切な例にはオレフィンスルホネートが含まれ、これは当該技術分野で良く知られている。一般に、それらは長鎖アルケニルスルホネートまたは長鎖ヒドロキシアルカンスルホネートを含有する(炭素原子上に存在するOHは−−SO3−−基を持つ炭素原子と直接には結合していない)。通常、オレフィンスルホネート系洗
浄剤はそのような2種類の化合物が様々な量で入っている混合物を含有しかつしばしば長鎖のジスルホネートまたはスルフェート−スルホネートを一緒に含有する。そのようなオレフィンスルホネートは数多くの特許に記述されており、例えば米国特許第2,061,618、3,409,637、3,332,880、3,420,875、3,428,654、3,506,580などに記述されている。
更に他の適切なスルホネート系洗浄剤には、アルキルベンゼンスルホネート、例えば米国特許第4,645,623号に記述されているそれらが含まれる。
サリシレート系洗浄剤はサリチル酸または置換サリシレート[水素原子の1つ以上がハロゲン原子、ハロゲン原子、特に塩素または臭素、ヒドロキシ、炭素原子数が4から45の長さを有する直鎖および分枝鎖、または炭素原子数が10から30のアルキル、ヒドロキシアルキル、アルケニルおよびアルカリール基に置き換わっている]から誘導可能である。適切なアルキル基の例にはオクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ペンタデシル、オクタデシル、エイコシル、ドコシル、トリコシル、ヘキサコシル、トリアコンチル、ジメチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、メチルシクロヘキシルメチルおよびシクロヘキシルエチルが含まれる。
本開示で用いるに適した洗浄剤は金属塩、例えばアルカリまたはアルカリ土類金属塩などであってもよい。このような洗浄剤の金属はカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウムまたはこれらの混合物であってもよい。いくつかの態様の洗浄剤はバリウムを含有しない。適切な洗浄剤には石油系スルホン酸および長鎖モノ−もしくはジ−アルキルアリールスルホン酸(アリール基はベンジル、トリルおよびキシリルの1つであってもよい)のアルカリまたはアルカリ土類金属塩が含まれ得る。2種以上の異なるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属の混合物を用いることも可能である。同様に、また、2種以上の異なる酸の混合物または2種以上の異なる種類の酸の塩(例えば1種以上のカルシウムフェネートと1種以上のスルホン酸カルシウム)を用いることも可能である。
本開示に適した金属含有洗浄剤の例には、これらに限定するものでないが、リチウムフェネート、ナトリウムフェネート、カリウムフェネート、カルシウムフェネート、マグネシウムフェネート、硫化リチウムフェネート、硫化ナトリウムフェネート、硫化カリウムフェネート、硫化カルシウムフェネートおよび硫化マグネシウムフェネート[ここで、各芳香族基は炭化水素溶解性を与える脂肪族基を1つ以上有する]、この上に示したフェノールまたは硫化フェノールのいずれかの塩基性塩(しばしば“過塩基”フェネートまたは“過塩基硫化フェネート”と呼ぶ)、スルホン酸リチウム、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウム、スルホン酸カルシウムおよびスルホン酸マグネシウム[各スルホン酸部分は芳香核と結合しており、その芳香核は通常炭化水素溶解性を与えるように脂肪置換基を1個以上有する]、この上に示したスルホネートのいずれかの塩基性塩(しばしば“過塩基スルホネート”と呼ぶ)、サリチル酸リチウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸カルシウムおよびサリチル酸マグネシウム[芳香部分は通常炭化水素溶解性を与えるように1個以上の脂肪置換基で置換されている]、この上に示したサリシレートのいずれかの塩基性塩(しばしば“過塩基サリシレート”と呼ぶ)、炭素原子数が10から2000の燐硫化オレフィンの加水分解品または炭素原子数が10から2000の燐硫化アルコールおよび/または脂肪置換フェノール化合物の加水分解品のリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩、脂肪族カルボン酸および脂肪置換脂環式カルボン酸のリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩、この上に示したカルボン酸の塩基性塩(しばしば“過塩基カルボキシレート”と呼ぶ)および油溶性有機酸の他の同様な数多くのアルカリおよびアルカリ土類金属塩の如き物質が含まれる。
本開示の潤滑油に入れる洗浄剤は、中性、低塩基性または過塩基洗浄剤およびこれらの混合物であってもよい。適切な洗浄剤基質には、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサレート(calixarates)、サリキサレート(salixarates)、サリシレート、カルボン酸、燐酸、モノ−および/またはジ−チオ燐酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物およびメチレン橋渡しフェノールが含まれる。適切な洗浄剤およびそれらの製造方法は数多くの特許出願により詳細に記述されており、それらには米国特許第7,732,390号およびその中に引用されている文献が含まれる。
用語“過塩基”は、存在する金属の量が化学量論的量より多い金属塩、例えばスルホネート、カルボキシレートおよびフェネートの金属塩などに関する。そのような塩の変換レベルは100%を超えている可能性がある(即ち、それらは酸を“通常”の“中性”塩に変えるのに必要な理論的量の100%を超える量で金属を含有している可能性がある)。表現“金属比”[しばしばMRの省略形で示す]を公知の化学反応性および化学量論に従って中性塩中の金属の化学当量に対する過塩基塩中の金属の総化学当量の比率を表す目的で用いる。通常または中性の塩における金属比は1であるが、過塩基塩におけるMRは1より大きい。そのような塩を一般に過塩基、超塩基またはスーパー塩基塩と呼び、それらは有機硫黄酸、カルボン酸またはフェノールの塩であり得る。
過塩基洗浄剤は当該技術分野で良く知られていて、アルカリまたはアルカリ土類金属の過塩基洗浄剤であり得る。そのような洗浄剤の調製は金属酸化物または金属水酸化物と基質と二酸化炭素ガスの反応で実施可能である。前記基質は典型的には酸、例えば脂肪置換スルホン酸、脂肪置換カルボン酸または脂肪置換フェノールなどの如き酸である。
過塩基洗浄剤の金属比は1.1:1以上または2:1以上または4:1以上または5:1以上または7:1以上または10:1以上であり得る。
いくつかの態様における本開示の潤滑油に入れる洗浄剤は、エンジンの錆を軽減または予防するに有効である。1つの態様における洗浄剤が示すTBNは450以下、80から350である。いくつかの態様では、本潤滑油に2種類の洗浄剤を入れ、そして1番目の洗浄剤が示すTBNを40から450にしそして2番目の洗浄剤が示すTBNを80以下にする。いくつかの典型的な態様では、本潤滑油に入れる洗浄剤が示すTBNを約450以下または約80から350の範囲にする。
本潤滑油に入れる洗浄剤が本潤滑油の総重量の約0.1重量%から約15重量%または約0.2重量%から約10重量%または約0.3から約8重量%または約1重量%から約4重量%または約4重量%以上から約8重量%を占めるようにしてもよい。
本開示の添加剤パッケージおよび潤滑油に更に1種以上の任意の成分を含有させることも可能である。そのような任意の成分のいくつかの例には、抗酸化剤、他の抗摩耗剤、ホウ素含有化合物、極圧剤、他の摩擦調整剤(本開示の摩擦調整剤に加えて)、燐含有化合物、モリブデンを含有する成分1種または2種以上、化合物1種または2種以上または置換基1種または2種以上、消泡剤、チタン含有化合物、粘度指数向上剤、流動点降下剤および希釈用油が含まれる。本開示の添加剤パッケージおよびエンジンオイルに含有させてもよい他の任意の成分を以下に記述する。
この上に記述した潤滑油の各々をエンジンオイルとして配合してもよい。
別の面として、本開示は上述した潤滑油のいずれかを薄膜摩擦を改善または軽減する目
的で用いる方法に関する。別の面として、本開示は上述した潤滑油のいずれかを境界層摩擦を改善または軽減する目的で用いる方法に関する。別の面として、本開示は上述した潤滑油のいずれかを薄膜摩擦および境界層摩擦の両方を改善または軽減する目的で用いる方法に関する。これらの方法は本明細書に記述する全ての種類の表面の潤滑で使用可能である。
更に別の面として、本開示はエンジンにおける薄膜および境界層摩擦を改善する方法を提供するものであり、この方法は、前記エンジンに多量の基油および少量の添加剤パッケージ(本明細書に開示する如き)を含有して成るエンジンオイルを差す段階を含んで成る。適切な摩擦調整剤は上述した式I−IIで表される摩擦調整剤である。また、2種以上の摩擦調整剤の混合物も適切であり、各々を独立して上述した如き式I−IIから選択する。
更に別の面として、本開示はエンジンにおける境界層摩擦を改善する方法を提供するものであり、この方法は、前記エンジンに多量の基油および少量の添加剤パッケージ(本明細書に開示する如き摩擦調整剤を含有して成る)を含有して成るエンジンオイルを差す段階を含んで成る。適切な摩擦調整剤は上述した式I−IIで表される摩擦調整剤である。また、2種以上の摩擦調整剤をエンジンオイルで用いることも可能であり、各々を独立して式I−IIから選択する。
更に別の面として、本開示はエンジンにおける薄膜摩擦を改善する方法を提供するものであり、この方法は、前記エンジンに多量の基油および少量の添加剤パッケージ(本明細書に開示する如き摩擦調整剤を含有して成る)を含有して成るエンジンオイルを差す段階を含んで成る。適切な摩擦調整剤は上述した式I−IIで表される摩擦調整剤である。また、2種以上の摩擦調整剤をエンジンオイルで用いることも可能であり、各々を独立して式I−IIから選択する。
基油
本明細書に示す潤滑油組成物で用いる基油は、American Petroleum
Institute(API) Base Oil Interchangeability Guidelinesに明記されている如きグループI−Vに入る基油のいずれからも選択可能である。基油の5グループは下記の通りである:
グループI、IIおよびIIIは鉱油プロセスストックである。グループIVの基油は真に合成の分子種を含有し、それの製造はオレフィン系不飽和炭化水素の重合で行われる。グループVの数多くの基油もまた真に合成の製品であり、それにはジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリ燐酸エステル、ポリビニルエーテルおよび/またはポリフェニルエーテルなどが含まれるが、また天然に存在する油、例えば植物油などであってもよい。グループIIIの基油は鉱油から誘導されるが、これらの液に厳密な処理を受けさせることによってある種の真の合成物、例えばPAOなどによく似た物性を示すようにすることを注目すべきである。従って、グループIIIの基油から誘導された油は時には本産業で合成液と呼ばれることもあり得る。
この開示する潤滑油組成物で用いる基油は鉱油、動物性油、植物性油、合成油またはこれらの混合物であってもよい。適切な油は水素化分解、水添、水素化仕上げ、未精製、精製および再精製油およびこれらの混合物から誘導可能である。
未精製油は天然、鉱物または合成源から誘導された油であり、さらなる精製処理を受けたか或はほとんど受けていない油である。精製油は未精製油と同様であるが、但しそれらは1種以上の精製段階で処理されており、その結果として1種以上の特性が改善されている可能性がある。適切な精製技術の例は、溶媒による抽出、二次蒸留、酸または塩基による抽出、濾過、パーコレーションなどである。食用油の品質になるように精製された油は有用であるか或は有用でない可能性がある。食用油をまたホワイトオイルと呼ぶこともあり得る。いくつかの態様では、潤滑油組成物に食用油もホワイトオイルも含有させない。
再精製油はまた再生または再処理油としても知られる。このような油は精製油を得る時に用いられる様式と同様な様式で同じもしくは同様な方法を用いて得られる。しばしば、これらの油に追加的に使用済み添加剤および油分解生成物の除去に向けた技術を用いた処理も受けさせる。
鉱油には掘削で得られた油または植物および動物に由来する油およびこれらの混合物が含まれ得る。例えば、そのような油には、これらに限定するものでないが、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、落花生油、トウモロコシ油、大豆油および亜麻仁油ばかりでなく鉱
物性潤滑油、例えば液状石油および溶媒で処理または酸で処理された鉱物性潤滑油(パラフィン、ナフテンまたは混合パラフィン−ナフテン型)が含まれ得る。そのような油に必要ならば部分水添または完全水添を受けさせてもよい。石炭または頁岩から誘導された油もまた有用であり得る。
有用な合成潤滑油には、炭化水素油、例えばオレフィンの重合体、オリゴマー体または共重合体(例えばポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレン共重合体)、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、1−デセンの三量体またはオリゴマー、例えばポリ(1−デセン)など(そのような物質はしばしばα−オレフィンと呼ばれる)およびこれらの混合物など、アルキル−ベンゼン(例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼン)など、ポリフェニル(例えばビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル)、ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィドおよびこれらの誘導体、類似物および同族体またはこれらの混合物が含まれ得る。
他の合成潤滑油には燐含有酸のポリオールエステル、ジエステル、液状エステル(例えば燐酸トリクレジル、燐酸トリオクチルおよびデカンホスホン酸のジエチルエステル)またはテトラヒドロフラン重合体が含まれる。合成油の製造はフィッシャー・トロプシュ反応で実施可能であり、典型的には、ヒドロ異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素またはワックスであり得る。1つの態様では、油の調製をフィッシャー・トロプシュガス−ツー−リキド合成手順ばかりでなく他のガス−ツー−リキド油を用いて実施することができる。
存在させる潤滑粘度の油の量は粘度指数向上剤1種または2種以上および/または流動点降下剤1種または2種以上および/または他のトップトリート(top treat)添加剤を包含する性能用添加剤の量の合計を100重量%から差し引いた後に残る残りであってもよい。例えば、完成液に存在させてもよい潤滑粘度の油は多量、例えば約50重量%以上、約60重量%以上、約70重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上または約90重量%以上であってもよい。
抗酸化剤
本明細書に示す潤滑油組成物にまた場合により1種以上の抗酸化剤を含有させることも可能である。抗酸化剤化合物は公知であり、それには例えばフェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、燐硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えばノニルジフェニルアミン、ジ−ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ−オクチルジフェニルアミン)、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、アルキル化フェニル−アルファ−ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子抗酸化剤またはこれらの混合物が含まれる。抗酸化剤は単独または組み合わせて使用可能である。
ヒンダードフェノール系抗酸化剤は第二ブチルおよび/または第三ブチル基を立体障害基として含有している可能性がある。フェノール基は更にヒドロカルビル基および/または橋渡し基(2番目の芳香基と連結させる)で置換されていてもよい。適切なヒンダードフェノール系抗酸化剤の例には、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−t−ブチルフェノールまたは4−ブチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノールまたは4−ドデシル−2,6−ジ−t−ブチルフェノールが含まれる。1つの態様におけるヒンダードフェノール系抗酸化剤はエステルであってもよく、それには例えば2,6−ジ−t−ブチルフェノールとアクリル酸アルキルから誘導された付加生成物
などが含まれ得、ここで、前記アルキル基が含有する炭素原子の数は約1から約18または約2から約12または約2から約8または約2から約6または約4であってもよい。
有用な抗酸化剤にはジアリールアミンおよび高分子量フェノールが含まれ得る。1つの態様では、本潤滑油組成物にジアリールアミンと高分子量フェノールの混合物を含有させてもよく、その結果として各抗酸化剤を抗酸化剤の量が本潤滑油組成物の最終重量を基準にして約5重量%以下になるほどの量で存在させてもよい。いくつかの態様における抗酸化剤は、本潤滑油組成物の最終的重量を基準にした重量で表して約0.3から約1.5%がジアリールアミンで約0.4から約2.5%が高分子量フェノールである混合物であってもよい。
硫化オレフィンを生じさせる目的で硫化を受けさせることができる適切なオレフィンの例には、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセンまたはこれらの混合物が含まれる。1つの態様では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセンまたはこれらの混合物およびそれらの二量体、三量体および四量体が特に有用なオレフィンである。別法として、そのようなオレフィンはジエン、例えば1,3−ブタジエンなどと不飽和エステル、例えばアクリル酸ブチルなどのディールスアルダー付加体であってもよい。
別の種類の硫化オレフィンには、硫化脂肪酸およびそれらのエステルが含まれる。脂肪酸しばしば植物油または動物油から得られ、それらが含有する炭素原子の数は典型的には約4から約22である。適切な脂肪酸およびそれらのエステルの例には、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸またはこれらの混合物が含まれる。しばしば、脂肪酸はラード油、トール油、落花生油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種油またはこれらの混合物から得られる。脂肪酸および/またはエステルをオレフィン、例えばα−オレフィンなどと混合することも可能である。
1種以上の抗酸化剤1種または2種以上を本潤滑油組成物の約0重量%から約20重量%または約0.1重量%から約10重量%または約1重量%から約5重量%の範囲の量で存在させてもよい。
抗摩耗剤
本明細書に示す潤滑油組成物にまた場合により1種以上の抗摩耗剤を含有させることも可能である。適切な抗摩耗剤の例には、これらに限定するものでないが、金属のチオ燐酸塩、燐酸エステルまたはこれの塩、燐酸エステル1種または2種以上、ホスファイト、燐含有カルボン酸エステル、エーテルまたはアミド、硫化オレフィン、チオカルバメート含有化合物[チオカルバミン酸エステル、アルキレン結合チオカルバメートおよびビス(S−アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドを包含]およびこれらの混合物が含まれる。燐含有抗摩耗剤はヨーロッパ特許第0612 839により詳細に記述されている。
抗摩耗剤を本潤滑油組成物の総重量の約0重量%から約15重量%または約0.01重量%から約10重量%または約0.05重量%から約5重量%または約0.1重量%から約3重量%の範囲の量で存在させてもよい。
ホウ素含有化合物
本明細書に示す潤滑油組成物に場合により1種以上のホウ素含有化合物を含有させてもよい。
ホウ素含有化合物の例には、ホウ酸エステル、ホウ素化脂肪アミン、ホウ素化エポキシド、ホウ素化洗浄剤およびホウ素化分散剤、例えば米国特許第5,883,057号に開示されている如きホウ素化スクシニミド系分散剤などが含まれる。
ホウ素含有化合物を存在させる場合、それを本潤滑油組成物の総重量の約8重量%以下、約0.01重量%から約7重量%、約0.05重量%から約5重量%または約0.1重量%から約3重量%になるほどの量で用いてもよい。
極圧剤
本明細書に示す潤滑油組成物にまた場合により1種以上の極圧剤を含有させることも可能である。油に溶解し得る極圧(EP)剤には、硫黄含有および塩素硫黄含有EP剤、塩素置換炭化水素EP剤および燐EP剤が含まれる。そのようなEP剤の例には、塩素化ワックス、有機スルフィドおよびポリスルフィド、例えばジベンジルジスルフィド、ビス(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペンおよび硫化ディールスアルダー付加体など、燐硫化炭化水素、例えば硫化燐とテレピン油またはオレイン酸メチルの反応生成物など、燐エステル、例えばジヒドロカルビルおよびトリヒドロカルビルホスファイト、例えばジブチルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ペンチルフェニルホスファイト、ジペンチルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルホスファイトおよびポリプロピレン置換フェニルホスファイトなど、金属のチオカルバミン酸塩、例えばジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛およびバリウムヘプチルフェノール二酸など、アルキルおよびジアルキル燐酸のアミン塩(例えばジアルキルジチオ燐酸とプロピレンオキサイドの反応生成物のアミン塩などを包含)およびこれらの混合物が含まれる。
摩擦調整剤
本明細書に示す潤滑油組成物にまた場合により1種以上の追加的摩擦調整剤を含有させることも可能である。適切な追加的摩擦調整剤には金属を含有および金属を含有しない摩擦調整剤が含まれ得、これらに限定するものでないが、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシニミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミン酸化物、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスフォネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物およびオレフィン、ヒマワリ油および他の天然に存在する植物または動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと1種以上の脂肪族または芳香族カルボン酸のエステルまたは部分エステルなどが含まれ得る。
適切な摩擦調整剤は直鎖、分枝鎖または芳香族ヒドロカルビル基またはこれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有している可能性がありかつ飽和または不飽和であり得る。そのヒドロカルビル基は炭素および水素またはヘテロ原子、例えば硫黄または酸素などで構成されている可能性がある。前記ヒドロカルビル基の炭素原子数は約12から約25の範囲であり得る。1つの態様における摩擦調整剤は長鎖脂肪酸エステルであり得る。1つの態様における長鎖脂肪酸エステルはモノ−エステルまたはジ−エステルまたは(トリ)グリセリドであり得る。そのような摩擦調整剤は長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体または長鎖イミダゾリンであり得る。
他の適切な摩擦調整剤には、有機、無灰(金属を含有しない)、窒素を含有しない有機摩擦調整剤が含まれ得る。そのような摩擦調整剤には、カルボン酸および無水物とアルカノールの反応で生じたエステルが含まれ得、それらは一般に親油性炭化水素鎖と共有結合している極性末端基(例えばカルボキシルまたはヒドロキシル)を含有する。窒素を含有しない有機無灰摩擦調整剤の例はグリセロールモノオレエート(GMO)として一般に知
られており、それはオレイン酸のモノ−、ジ−およびトリ−エステルを含有し得る。他の適切な摩擦調整剤が米国特許第6,723,685号に記述されている。
アミン系摩擦調整剤にはアミンまたはポリアミンが含まれ得る。そのような化合物は直鎖で飽和または不飽和のいずれかまたはそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有する可能性がありかつ炭素原子を約12から約25個含有し得る。適切な摩擦調整剤のさらなる例には、アルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが含まれる。そのような化合物は直鎖で飽和、不飽和またはそれらの混合物のいずれかであるヒドロカルビル基を有する可能性がある。それらが含有する炭素原子の数は約12から約25であり得る。例にはエトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンが含まれる。
そのようなアミンおよびアミドをそのままか或はホウ素化合物、例えば酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタボレート、ホウ酸またはホウ酸のモノ−、ジ−またはトリ−アルキルエステルとの付加体または反応生成物の形態で使用してもよい。他の適切な摩擦調整剤が米国特許第6,300,291号に記述されている。
摩擦調整剤を本潤滑油組成物の総重量を基準にして約0重量%から約10重量%または約0.01重量%から約8重量%または約0.1重量%から約4重量%の量で存在させてもよい。
モリブデン含有成分
本明細書に示す潤滑油組成物にまた1種以上のモリブデン含有化合物を含有させることも可能である。油溶性モリブデン化合物は抗摩耗剤、抗酸化剤、摩擦調整剤の機能的性能を示すか或はこれらの機能のいずれかの組み合わせを示す可能性がある。油溶性モリブデン化合物には、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオ燐酸モリブデン、ジチオホスフィン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、キサントゲン酸モリブデン、チオキサントゲン酸モリブデン、硫化モリブデン、カルボン酸モリブデン、モリブデンアルコキサイド、三核有機モリブデン化合物および/またはこれらの混合物が含まれ得る。硫化モリブデンには二硫化モリブデンが含まれる。その二硫化モリブデンの形態は安定な分散液の形態であってもよい。1つの態様では、油溶性モリブデン化合物をジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオ燐酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩およびこれらの混合物から成る群より選択してもよい。1つの態様における油溶性モリブデン化合物はジチオカルバミン酸モリブデンであり得る。
使用可能なモリブデン化合物の適切な例には、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.のMolyvan 822TM、MolyvanTM A、Molyvan 2000TMおよびMolyvan 855TMおよびAdeka Corporationから入手可能なSakura−LubeTM S−165、S−200、S−300、S−310G、S−525、S−600、S−700およびS−710などの如き商標の下で市販されている材料およびこれらの混合物が含まれる。適切なモリブデン化合物が米国特許第5,650,381号および米国再発行特許番号Re37,363E1、Re38,929E1およびRe40,595E1に記述されている。
加うるに、モリブデン化合物は酸性モリブデン化合物であってもよい。それにはモリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウムおよび他のアルカリ金属のモリブデン酸塩および他のモリブデン塩、例えばモリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl4、MoO2Br2、Mo23Cl6、三酸化モリブデンまたは同様な酸性モリブデン化合物が含まれる。別法として、例えば米国特許第4,263,152、4,285,822、4,283,295、4,272,387、4,265,773、4,261,843、4,259,195および4,259,194およびWO94
/06897などに記述されている如き塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体を用いて本組成物にモリブデンを供給することも可能である。
別の種類の適切な有機−モリブデン化合物は三核モリブデン化合物、例えば式Mo3knz[式中、Sは硫黄を表し、Lは独立して当該化合物が油に溶解もしくは分散するようになるに充分な数の炭素原子を有する有機基を持つ配位子から選択される配位子を表し、nは1から4であり、kは4から7に及んで多様であり、Qは中性の電子供与化合物、例えば水、アミン、アルコール、ホスフィンおよびエーテルなどの群から選択されそしてzは0から5の範囲でありそして化学量論的ではない値を包含する]で表される化合物およびこれらの混合物である。前記配位子の有機基全部に全体で少なくとも21個の炭素原子、または少なくとも25、少なくとも30または少なくとも35個の炭素原子が存在していてもよい。適切な追加的モリブデン化合物が米国特許第6,723,685号に記述されている。
そのような油溶性モリブデン化合物を本潤滑油組成物中のモリブデンが約0.5ppmから約2000ppm、約1ppmから約700ppm、約1ppmから約550ppm、約5ppmから約300ppmまたは約20ppmから約250ppmになるに充分な量で存在させてもよい。
粘度指数向上剤
本明細書に示す潤滑油組成物にまた場合により1種以上の粘度指数向上剤を含有させることも可能である。適切な粘度指数向上剤には、ポリオレフィン、オレフィン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、ポリイソブテン、スチレン−イソプレンポリマーの水添品、スチレン/マレイン酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体の水添品、イソプレンポリマーの水添品、アルファ−オレフィン無水マレイン酸共重合体、ポリメタアクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、アルケニルアリール共役ジエン共重合体の水添品またはこれらの混合物が含まれ得る。粘度指数向上剤には星形ポリマーが含まれ得、適切な例は米国公開番号2012/0101017A1に記述されている。
本明細書に示す潤滑油組成物にまた場合により粘度指数向上剤に加えてか或は粘度指数向上剤の代わりに1種以上の分散性粘度指数向上剤を含有させることも可能である。適切な分散性粘度指数向上剤には、官能化ポリオレフィン、例えばアシル化剤(例えば無水マレイン酸)とアミンの反応生成物を用いた官能化を受けさせておいたエチレン−プロピレン共重合体など、アミンを用いた官能化を受けさせたポリメタアクリレートまたは無水マレイン酸−スチレン共重合体にエステル化を受けさせてアミンと反応させたものが含まれ得る。
粘度指数向上剤および/または分散性粘度指数向上剤の総量を本潤滑油組成物の総重量を基準にして約0重量%から約20重量%、約0.1重量%から約15重量%、約0.1重量%から約12重量%または約0.5重量%から約10重量%にしてもよい。
他の任意の添加剤
潤滑液に要求される1種以上の機能を遂行する目的で他の添加剤を選択することも可能である。その上、上述した添加剤の中の1種以上は多機能的であり得ることから本明細書に記述した機能に加えてか或はそれ以外の他の機能も示す可能性がある。
本開示に従う潤滑油組成物に場合により他の性能添加剤を含有させることも可能である。そのような他の性能添加剤を本開示の指定添加剤に加えて存在させてもよくそして/またはそれには金属不活性化剤、粘度指数向上剤、洗浄剤、無灰TBN推進剤、摩擦調整剤
、抗摩耗剤、腐食抑制剤、錆抑制剤、分散剤、分散性粘度指数向上剤、極圧剤、抗酸化剤、消泡剤、抗乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シールスウェリング(seal swelling)剤およびこれらの混合物の中の1種以上が含まれ得る。典型的には、完全配合潤滑油にそのような性能添加剤の中の1種以上を含有させる。
適切な金属不活性化剤には、ベンゾトリアゾールの誘導体(典型的にはトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾールまたは2−アルキルジチオベンゾチアゾール、消泡剤(アクリル酸エチルとアクリル酸2−エチルヘキシルと場合により酢酸ビニルの共重合体を包含)、抗乳化剤[トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドおよび(エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド)ポリマーを包含]、流動点降下剤(無水マレイン酸−スチレンのエステル、ポリメタアクリレート、ポリアクリレートまたはポリアクリルアミドを包含)が含まれ得る。
適切な消泡剤にはケイ素が基になった化合物、例えばシロキサンなどが含まれる。
適切な流動点降下剤には、ポリメタアクリル酸メチルまたはこれの混合物が含まれ得る。流動点降下剤を本潤滑油組成物の総重量を基準にして約0重量%から約1重量%、約0.01重量%から約0.5重量%または約0.02重量%から約0.04重量%になるに充分な量で存在させてもよい。
適切な錆抑制剤は、鉄含有金属表面の腐食を抑制する特性を有する単一の化合物または化合物の混合物であり得る。本明細書で用いるに有用な錆抑制剤の非限定例には、油溶性の高分子量有機酸、例えば2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、ベヘン酸およびセロチン酸ばかりでなく油溶性ポリカルボン酸(二量体および三量体酸、例えばトール油脂肪酸、オレイン酸およびリノール酸などから生じるそれらを包含)が含まれる。他の適切な腐食抑制剤には、分子量が約600から約3000の範囲の長鎖アルファ,オメガ−ジカルボン酸およびアルケニル基の炭素原子数が約10以上のアルケニルこはく酸、例えばテトラプロペニルこはく酸、テトラデセニルこはく酸酸およびヘキサデセニルこはく酸酸などが含まれる。別の有用な種類の酸性腐食抑制剤は、アルケニル基中の炭素原子数が約8から約24のアルケニルこはく酸とアルコール、例えばポリグリコールなどの半エステルである。そのようなアルケニルこはく酸の相当する半アミドもまた有用である。有用な錆抑制剤は高分子量の有機酸である。いくつかの態様では、本潤滑油組成物またはエンジンオイルに錆抑制剤を含有させない。
錆抑制剤を本潤滑油組成物の総重量を基準にして約0重量%から約5重量%、約0.01重量%から約3重量%、約0.1重量%から約2重量%になるに充分な量で用いてもよい。
一般的用語として、適切なクランクケース潤滑油に添加剤成分1種または2種以上を以下の表に挙げる範囲で含有させてもよい。
この上に示した各成分のパーセントは、最終的潤滑油組成物の総重量を基準にした各成分の総重量パーセントに相当する。当該潤滑油組成物の残余または残りは1種以上の基油で構成される。本明細書に記述する組成物を配合する時に用いる添加剤を基油に個別または様々な副次組み合わせとして混合してもよい。しかしながら、添加剤濃縮液(即ち添加剤に加えて希釈剤、例えば炭化水素溶媒)を用いて成分1種または2種以上の全部を同時に混合する方が適切であり得る。
以下の実施例は本開示の方法および組成物を例示するものであり、限定するものではない。本分野で通常遭遇しかつ当業者に明らかである様々な条件およびパラメーターの他の適切な修飾形および適応形は本開示の範囲内である。
スクシニミド
500mLの樹脂製ケトルに塔頂撹拌機、Dean Starkトラップおよび熱電対を取り付けて、それに100g(0.25モル)の無水C20-24こはく酸および36.5g(0.25モル)のリシンを仕込んだ。その反応混合物を真空下160℃に3時間加熱した。次に、その反応混合物を132gのプロセス油で希釈した後、濾過することで247.4gの生成物を得た。
スクシニミド2
実施例2では実施例1と同じ反応条件を用いたが、112.2g(0.4モル)の無水ドデセニルこはく酸および58.5g(0.4モル)のリシンを反応体として用いた。その反応混合物と152.2gのプロセス油で希釈した後、濾過することで289.1gの生成物を得た。
アミド1
500mLの樹脂製ケトルに塔頂撹拌機、Dean Starkトラップおよび熱電対を取り付けて、それに53.2g(0.4モル)のアスパラギン酸および200gの水を仕込んだ。その反応混合物を窒素下で撹拌しながら80℃に加熱した後、153.6g(0.4モル)のArmeen(登録商標) OL(Akzo Nobelから入手可能なオレイルアミン)を滴下漏斗経由で加えた。その反応混合物を199.6gのプロセス油で希釈しそして水を留出させた後に130℃に16時間加熱することで379.2gの粘性のある黄色油を得た。TAN(D664) 50.4(理論値56)。
表3に示す混合物で用いる基礎の潤滑油組成物は、摩擦調整剤を用いないで配合したSAE 5W−20 GF−5品質の油であった。比較実施例Aに含有させたのはこの同じ基礎の潤滑油組成物のみであり、如何なる摩擦調整剤も添加しなかった。本開示に従う潤滑油の一例の調製を実施例1で調製した組成物を摩擦調整剤として用いて実施した。
前記潤滑油にHigh Frequency Reciprocating Rig(HFRR)試験および薄膜機能(TFF)試験を受けさせた。PCS InstrumentsのHFRRを境界潤滑型摩擦係数の測定で用いた。SAE 52100金属ボールとSAE 52100金属ディスクの間の摩擦係数を130℃で測定した。前記ボールに4.0Nの負荷をかけてそれを前記ディスクを横切る1mmの路に渡って20Hzの振動数で振動させた。当該潤滑油が境界層摩擦を軽減する能力は測定境界潤滑型摩擦係数で示された。
薄膜摩擦試験ではPCS InstrumentsのMini−Traction Machineを用いて薄膜潤滑型摩擦係数を測定する。これらの摩擦係数の測定をANSI 52100鋼製ディスクとANSI 52100鋼製ボールの間に35Nの負荷をかけながら油を500mm/秒の連行速度で接触ゾーンに通して引き込みつつ130℃で実施した。測定中、前記ボールとディスクの間のスライドツーロール(slide−to−roll)比を20%に維持した。潤滑油が薄膜摩擦を軽減する能力は測定薄膜潤滑型摩擦係数で示された。
この実施例で得たHigh Frequency Reciprocating Rigおよび薄膜摩擦試験結果を表3に示す。本開示の摩擦調整剤を用いた潤滑油の方が摩擦調整剤を全く用いなかった潤滑油に比べて境界層摩擦の摩擦係数および薄膜摩擦の摩擦係数が有意に低かった。これらの結果は、本開示に従う潤滑油は摩擦調整剤を用いなかった潤滑油に比べて薄膜摩擦および境界層摩擦の両方を有効に低くする能力を有することを示している。
試験混合物2−3および比較実施例B−C
表4に示す混合物で用いる基礎の潤滑油組成物は、摩擦調整剤も分散剤も用いないで配合したSAE 5W−20 GF−5品質の油であった。比較実施例BおよびCにはその示した分散剤を用いたが全く摩擦調整剤を添加しなかった同じ基礎潤滑油組成物を含めた。本開示に従う潤滑油の混合物の調製ではスクシニミドを摩擦調整剤として用いてそれを分散剤と組み合わせた。混合物2−3で用いたスクシニミドは実施例1のスクシニミドであった。これらの実施例の潤滑油にはまた分散剤、即ち2100−2300MWのスクシニミド(分散剤1)および1300MWのホウ素化スクシニミド(分散剤2)を含有させた。示す分子量は初期のHR−PIB反応体の分子量を指す。比較の目的で、また、摩擦調整剤を用いない潤滑油の調製も実施したが、各々でそれぞれ試験混合物2および3で用いた分散剤と同じ分散剤を用いた。
前記潤滑油にHigh Frequency Reciprocating Rigおよび薄膜機能試験を受けさせた。前記潤滑油が示したHigh Frequency Reciprocating Rigおよび薄膜摩擦試験結果を表4に示す。スクシニミドを用いた潤滑油の方が摩擦調整剤は全く用いなかった同じ潤滑油に比べて境界層摩擦の摩擦係数および薄膜摩擦の摩擦係数が有意に低かった。これらの軽減度合はいずれの分散剤を潤滑油で用いた時にも同様であった。本開示に従う潤滑油の方が摩擦調整剤を用いなかった分散剤含有潤滑油に比べて分散剤含有潤滑油における薄膜摩擦および境界層摩擦を有効に軽減し得ることは明らかである。
試験混合物4−7および比較実施例D−G
表5に示す混合物で用いる基礎の潤滑油組成物は、摩擦調整剤を用いないで配合したSAE 5W−20 GF−5品質の油であった。比較実施例D−Gにはその示した洗浄剤を用いたが全く摩擦調整剤を添加しなかったこの同じ基礎潤滑油組成物を含めた。本開示に従う潤滑油の混合物の調製では実施例1の摩擦調整剤をその示した分散剤と組み合わせて用いた。これらの潤滑油で用いる洗浄剤に過塩基スルホネート(OBスルホネート)、
中性スルホネートおよびサリシレートを含めた。試験を受けさせた洗浄剤はカルシウムを含有していた。比較実施例には同じ潤滑油および洗浄剤を含有させたが、摩擦調整剤は含有させなかった。
潤滑油にHigh Frequency Reciprocating Rigおよび薄膜機能試験を受けさせた。これらの潤滑油が示したHigh Frequency Reciprocating Rigおよび薄膜摩擦試験結果を表5に示す。実施例1と洗浄剤を含有させた潤滑油の方が洗浄剤を用いたが摩擦調整剤を全く用いなかった同じ潤滑油に比べて境界層摩擦の摩擦係数が有意に低かった。加うるに、また、実施例1と洗浄剤を含有させた潤滑油の方が過塩基洗浄剤を用いたが摩擦調整剤を全く用いなかった潤滑油に比べて薄膜摩擦の摩擦係数も低かった。
本明細書および本明細書に開示する態様の実施を考慮することで本開示の他の態様が当業者に明らかになるであろう。本明細書および実施例は単に例示として見なされるべきであり、本開示の真の範囲を以下の請求項で示すことを意図する。
本明細書に記述するあらゆる資料は引用することによって全体が本明細書に組み入れられるか或はそれらが具体的に頼る開示を与えるためのものである。
この上に示した態様は実施の点でかなりの変形を受け易い。従って、本態様は本明細書の上に挙げた具体的例示を限定することを意図するものでない。むしろ、この上に示した態様は添付請求項の精神および範囲内に入るものであり、それには法の問題として得ることができるそれらの相当物が含まれる。
本出願者らは開示した態様の全てを公に捧げることを意図するものでなく、開示した修飾形および変形のいずれかが文字通り請求項の範囲内に入らなくてもその度合でそれらは相当物の原理の元で本発明の一部であると見なす。

Claims (28)

  1. 潤滑油であって、多量の基油および少量の添加剤パッケージを含有して成っていて前記添加剤パッケージが式II、IIIおよびIV:
    [式中、Rは炭素原子数が8から28の直鎖もしくは分枝、飽和、不飽和または部分飽和ヒドロカルビルでありそしてnは0または1である]
    で表される化合物およびそれらのカルボン酸塩から選択される1種以上の摩擦調整剤を含有して成りかつ前記カルボン酸塩がアルカリ金属、アルカリ土類金属、IIB族の金属またはアンモニウムカチオンであるカチオンを有する潤滑油。
  2. 前記添加剤パッケージが少なくとも2種類の摩擦調整剤を含有して成る請求項1記載の潤滑油。
  3. 前記添加剤パッケージが式II、IIIおよびIVで表される少なくとも2種類の摩擦調整剤を含有して成る請求項1記載の潤滑油。
  4. Rの炭素原子数が10から25である請求項1−3のいずれか1項記載の潤滑油。
  5. Rの炭素原子数が10から20である請求項1−3のいずれか1項記載の潤滑油。
  6. Rの炭素原子数が10から18である請求項1−3のいずれか1項記載の潤滑油。
  7. 潤滑油であって、多量の基油および少量の添加剤パッケージを含有して成っていて前記添加剤パッケージが1種以上の摩擦調整剤を含有して成りかつ前記摩擦調整剤が式I:
    で表される無水ヒドロカルビルこはく酸およびR−COOH[式中、Rは炭素原子数が8から28の直鎖もしくは分枝、飽和、不飽和または部分飽和ヒドロカルビルである]で表されるカルボン酸から選択される反応体とリシンの反応生成物およびこれのカルボン酸塩を含有して成りかつ前記カルボン酸塩がアルカリ金属、アルカリ土類金属、IIB族の金属またはアンモニウムカチオンであるカチオンを有する潤滑油。
  8. 前記反応体が式I:
    で表される無水ヒドロカルビルこはく酸である請求項7記載の潤滑油。
  9. 前記反応体がR−COOHで表されるカルボン酸である請求項8記載の潤滑油。
  10. 潤滑油であって、多量の基油および少量の添加剤パッケージを含有して成っていて前記添加剤パッケージが1種以上の摩擦調整剤を含有して成りかつ前記摩擦調整剤がグルタミン酸、アスパラギン酸またはこれらの混合物とR−NH2[式中、Rは炭素原子数が8から28の直鎖もしくは分枝、飽和、不飽和または部分飽和ヒドロカルビルである]で表される第一級アミンの反応生成物またはこれのカルボン酸塩を含有して成りかつ前記カルボン酸塩がアルカリ金属、アルカリ土類金属、IIB族の金属またはアンモニウムカチオンであるカチオンを有する潤滑油。
  11. 前記基油がグループI、II、IIIおよびIVの基油およびこれらの混合物から選択される請求項1−10のいずれか1項記載の潤滑油。
  12. 前記添加剤パッケージが更に少なくとも1種の金属ジアルキルジチオ燐酸塩も含有して成る請求項1−11のいずれか1項記載の潤滑油。
  13. 前記少なくとも1種の金属ジアルキルジチオ燐酸塩が式:
    [式中、R’およびR”は炭素原子を1から18個含有する同一もしくは異なるヒドロカルビル部分であることができる]
    で表される少なくとも1種のジアルキルジチオ燐酸亜鉛を含有して成りかつ前記ジアルキルジチオ燐酸亜鉛中の炭素原子の総数が少なくとも5である請求項12項記載の潤滑油。
  14. R’およびR”基が独立してエチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、4−メチル−2−ペンタニル、アミル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2−エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルから選択される請求項13記載の潤滑油。
  15. 前記少なくとも1種のジアルキルジチオ燐酸亜鉛のアルキル基の100モルパーセントが第一アルコール基に由来する請求項12記載の潤滑油。
  16. 前記少なくとも1種のジアルキルジチオ燐酸亜鉛のアルキル基の少なくとも75モルパーセントが4−メチル−2−ペンタノールに由来する請求項12記載の潤滑油。
  17. 前記少なくとも1種のジアルキルジチオ燐酸亜鉛のアルキル基の80モルパーセント以上が4−メチル−2−ペンタノールに由来する請求項12記載の潤滑油。
  18. 前記少なくとも1種の金属ジアルキルジチオ燐酸塩がアルキル基を2つ有しかつアルキル基の炭素原子の総数が5以上である請求項12−17のいずれか1項記載の潤滑油。
  19. 少なくとも2種類の金属ジアルキルジチオ燐酸塩を含有して成っていて1番目の金属ジアルキルジチオ燐酸塩が第一アルコールに由来するアルキル基を含有して成りかつ2番目の金属ジアルキルジチオ燐酸塩が第二アルコールに由来するアルキル基を含有して成る請求項12−18のいずれか1項記載の潤滑油。
  20. 潤滑油がエンジンオイルである請求項1−19のいずれか1項記載の潤滑油。
  21. 前記添加剤パッケージが更に抗酸化剤、消泡剤、チタン含有化合物、燐含有化合物、粘度指数向上剤、流動点降下剤および希釈用油から成る群より選択される少なくとも1種の成分も含有して成る請求項1−20のいずれか1項記載の潤滑油。
  22. 更に少なくとも1種の分散剤も含有して成る請求項1−21のいずれか1項記載の潤滑油。
  23. 更に少なくとも1種の洗浄剤も含有して成る請求項1−22のいずれか1項記載の潤滑油。
  24. 前記添加剤パッケージに分散剤および/または洗浄剤が含まれていることで分散剤および/または洗浄剤を全体で少なくとも5重量%含有して成る請求項1−21のいずれか1項記載の潤滑油。
  25. エンジンにおける薄膜摩擦および/または境界層摩擦を改良する方法であって、前記エンジンに請求項1−24のいずれか1項記載の潤滑油を差す段階を含んで成る方法。
  26. 改良された薄膜摩擦および境界層摩擦が前記1種以上の摩擦調整剤が存在しない同一の組成物を基準にして測定したものである請求項25記載の方法。
  27. 少なくとも前記境界層摩擦を改良する請求項26記載の方法。
  28. 少なくとも前記薄膜摩擦を改良する請求項26記載の方法。
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